第21話

 いきなり霧が出現したことに、民衆はわいていた。おそらく、何かの演出だとおもったのだろう。だが、霧が晴れると民衆の熱が戸惑いに代わった。


バルコニーにいたのは、ギギだったからである。


ギギは霧が晴れるとすぐに狙撃犯を見つけて、バルコニーから飛び出そうとしていた。俺は、それを必死に止める。


「ここ三階だぞ。怪我なんてするわけないだろ」


 ギギはそういうが、彼の言い分を俺は信じられなかった。普通は、三階から落ちれば怪我をするからだ。


 いくらギギの運動神経がよくても、今の体はイヴである。三階から飛び降りたら、下手したら死んでしまうかもしれない。ギギは俺の腕からするりと抜け出して、バルコニーの手すりに足をかけた。


「じゃあ、先に行っているけどついて来いよ」


 ギギはそう言って、バルコニーから飛び出した。


「イヴ!!」


 俺はバルコニーから下を見ると、ギギは華麗に受け身を取っていた。


それを見て、俺はほっとする。思い出せば、ギギはイヴのことも鍛えていた。きっとこういうことが起きるかもしれないと思って、彼女の体を鍛えていたのだろう。止めてほしいけど。


 俺は、すぐに踵を返した。


おびえて他の部屋に入って休憩していた貴族たちのことも忘れていた。頭の中は、イヴの安全のことでいっぱいだった。


途中でイヴの父親が、俺を呼び止める。俺は「ギギが町のほうに行った」と伝えるので精一杯だった。俺は王宮の庭から出て、さっそくつまずいた。ギギがどこに向かったのか、分からないのだ。


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