才能や個性はお金では買えない

NOTTI

第1話:判断基準のズレ ①

 今の日本はどちらかというと人材に恵まれているにもかかわらず、それらを生かせていないように感じる。特に、成長過程において全て数字で評価されてきたことで、関わる人も物も数字で評価してしまう。その結果、人気が出る等するとその人を過剰なまでにおだてて、数字を得るという行為をしてしまうのだ。


 これは、1つ間違えると大変なことになってしまう。なぜなら、おだてた相手があなたを個人的に評価しているか?信頼性を築けているか?など本人の心の中でしか知る事のない情報を他者が理解できている訳ではないからだ。特に、会社などの場合は先輩社員から社内での人間関係を構築する術を学ぶが、これがかなり難しい問題になっている場合も少なくない。よくあるのが、役職者と社員の温度差だ。これは、各部署にいる役職者同士がきちんとコミュニケーションを取れているのか?部下である社員とのコミュニケーションやフォローは出来ているのか?などいわゆる社内循環効率の話である。これらが構築できるだけで案件の進捗や企画の成立スピードなどが格段に違ってくる。


 そのため、企画会などで社員から吸い上げる意見も十人十色だが、出てきた意見の中で上司の顔色を伺いながら発言しないといけない状況や意見書を出してもダメ出しをされてしまうなどその中でお気に入りにならないと成績が上がらないという状態では本人のモチベーションが上がらないだけでなく、場合によっては働く意味が見えなくなる可能性もある。そして、人によるが成績を上げなくてはいけないという焦りが生まれて余計なミスが増えていくことになってしまう。これらの行為が循環してしまうと完全に負のスパイラルに陥り、大切な人材を失うことになる。


 これは、会社だけに留まらず、全ての職種に言えることだが、日本には上下関係があり、それらの関係性が厳しい業界が多いことで世界的に有名だ。しかし、上下関係があるにもかかわらず自殺や休職率など他国に比べて明らかな汚点がたくさん出てきていることは反省しなくてはいけないだろう。


 これは私見だが、皆さんと考えてみたい問題がいくつかあるが、その中の1つを挙げてみたいと思う。これは、私が大手商社の社長として就任し、初めての採用試験と面接が行われることになった。そこで最低採用人数を1000人とすることだけ伝えて人事担当者に一任した。


 人事担当者Aは入社20年目のベテランで人事部長、人事担当者Bは中途採用で7年目だが、前社で6年間を現場業務、4年間を人材育成部門で従事していた。今回の採用試験では20人の採用担当者がいるが、ベテランもしくは経験組はこの2人で残り18人は各部門の主任や中途採用、新卒などの中から社長自ら選んだ。これは、1つの部署の主観が入ってしまうことで人材の偏りが生まれてしまう可能性があり、適正な人材を見極めることが出来ないからだ。そして、全国からたくさんの応募があった。中には全く関係の無い学部・学科を卒業した学生もいた。そして、選考会議が開かれ1人1人の提出書類を丁寧に見ていった。というのは、採用人数に対して今年は2万通の応募があったが、1度目の面接までは1ヶ月半をもらっていて、グループ分けをすることになる。今回は2万から7000まで減らし、事前提出書類を提出してもらい面接を受けることになる。


2週間かけて全応募者の書類に目を通し終わり、面接へ進む学生が6800名、保留が200名いた。


 ここで多くの人はなぜ、200名の保留が出たのだろうか?と疑問に思うだろう。そこには納得の理由があった。それは、“この保留者200名で新会社を設立したい”という人事部長の判断だった。実はこの200人は留学経験者、海外ボランティア経験者、教育ボランティア経験者が全体の6割にあたる120人いた。つまり、海外進出を検討していた企業側にとってはメリットが大きい人材だったのだ。社長も今海外事業部にいる30歳の主任が就任する事になっていたが、人材の確保に時間がかかっていた。現時点で異動者が200人おり、定年退職や年度内定年退職予定者が約400人いるため、新会社設立のための人員200人を採用するには新規採用者を合わせて最低採用人数が1200人ということになる。つまり、最低採用人数が1000人だとしてもその枠に収めるのではなく、会社の状況に応じて採用数を上下させることも重要だろう。これは、新卒採用の事例だが、中途採用であっても同様に行うことが大事だと思う。現在の採用事情としては可能な限りブランクが少なく、一定年数以上の経験を持っている人を求める傾向にあり、長期間離脱している人や短期転職が経歴として残っている人は疑われやすいのだろう。実際、私自身も短期間に何度も転職しているため、新たな就労先を見つける事は容易ではなく、場合によっては年齢制限(上限)に引っかかる場合もあるため、なかなか難しい就職活動の事情を経験してきた。

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