第99話

「みらい…?」

「桃坂さん…!?」


突然のみらいちゃんの登場に驚きを禁じえないすみれちゃんとあいちゃん。


「い…一体どこから…!?」


驚きすぎて言葉すら上手く出てこないような可哀想なあいちゃんだがさすがのみらいちゃんというか…


「そ…そんなの、マミーは許しませんから…!」


うん。全く空気が読めない。


いくらあの「幽霊少佐」と呼ばれるあいちゃんでもみらいちゃんみたいな民間人に危害を加えたりはしない。


「私は守るために力を振る舞うだけなの。人を傷つけたりすることはしない。」


っと常に皆の味方にいてくれた優しいあいちゃん。

たまにその鋭いツリ目と威圧的な口調のせいで誤解されることはあるが根はすごく優しくて自分の役目は人を守ることだと決めている正義感の強い子であることは私が保証する。


「パンツ見せて欲しいですって?嫌よ、絶対。」


まあ、私からの頼みは一度も聞いてくれなかったがそれは別にいいや。


むしろ心配なのは


「アバババ…!」


絶賛壊れてしまったおもちゃみたいに強張って思いっきり吃っているあいちゃんの方だ。


無理もない。

あんなことを誰かに見られちゃったら誰だってそうなってしまう。私は別に気にしないけどな。

相手さえいればいかなる場所、いかなる時でもその場で始められる。

対外的に立場が悪くなるから控えているだけだし。


とにかくそういうのに全く耐性がないあいちゃんにしては今の状況、相当やばいかも。


「私はどうしようかな…」


もうすっかりどどめ色になって慄いているあいちゃんのことはすごく心配がここはひとまず様子見ってことにした私はそうやって草むらの中に隠れてあそこに集まっている3人の観察した。


今でも死にそうな震えているあいちゃん。

いきなり飛び出してあっという間にとてつもない修羅場を作り上げたみらいちゃん。

そして


「み…みらい…私が説明するから…」


かろうじて理性を保ってなんとかこの場の出来事について説明しようとするすみれちゃん。

こんな状況で何だが


「お…面白い…!」


なんだかこの状況…!すごく興味深い…!


「これはなんというか…」


さすがのすみれちゃんでもこういう時に限っては戸惑っちゃうんだ。

だがそんなに隠す必要はないと私個人ではそう思う。

だって性欲は誰にでもあるものだしまして好きな人と一緒に気持ちよくなるなんて極普通なことだと私はそう思うから。

むしろ不健全なのは私みたいに割りと頻繁に多数の女と体を交わる方だと自分なりに自覚を持っているし。

とにかくあそこまで焦っているすみれちゃんの顔はなかなかの見物に間違いない。


普段のすみれちゃんはもっとこうー…


「…あ、うん。分かった。頼む。」


ってあまり喋るの得意ではなく、要件だけを手短く伝えるタイプだから正直びっくり。

表情だって普段目立つ変化がないから何考えているのか正直私にも分からない。

ただすごく友達思いで「共存」という「神樹様」の教えを誰よりも律儀に実践しているというのは私も、皆もよく知っている。

しかしまさかあのすみれちゃんがあいちゃんとこういう関係だったとはこれっぽっちも思えなかったのが私の本心。


無口で無愛想だが本当は心優しくて頼もしい真っ暗な「鬼」のすみれちゃんとやや高圧的で神秘的な雰囲気を持っているが根はとてつもない心配性で引っ込み思案っぽいところもある真っ白な「ファントム」のあいちゃん。

ぶっちゃけて言ってこれ以上は存在しないと言ってもいいほど二人の相性は抜群だと私は確信している。


二人共確実な身分。お互いの世界における立場と社会的な地位。

成績優秀、眉目秀麗。

何一つ欠くこともなく完璧な完璧超人カップル。

世間に知られたらきっとたくさんの人々から祝福されて妬まれたり憧れられたりだろう。

だがこんな形で誰かに知られるのは決してよくないと私は知っているつもりだが…


「アバババ…!」


どうしよう…♥あんなアホっぽいあいちゃん、初めてだからなんか興奮してきちゃったかも…♥


あいちゃん、いつも私には


「ゆうなって確かに破壊力や突進力だけはすごいけどやっぱり「一閃」だけなら攻撃が少し単純で読みやすいって感じがするわね。」


っとか偉そうに上から目線なのにいざとなった時は今みたいに見てられないほど慌てちゃうんだね。

私、あいちゃんのこと、少し侮っていたかも♥こんなに面白い反応ができる子とは全然思わなかったよ♥


「私達、去年から付き合っていた。」


だがすみれちゃんは相変わらずあっさりしたすみれちゃんのままだったようだ。


多少悩みはしたようだが言い訳や誤魔化しもつけず淡々とありのままのことをみらいちゃんに伝えるすみれちゃん。

どうやらあいちゃんは私にも秘密にして去年からすみれちゃんと交際していたらしい。

なんだかそれはそれで寂しい気分って気分がするな…


うち副団長みたいな幼馴染って言わないまでもあいちゃんとも知り合ってから随分時間が経ったのに今まで一度もすみれちゃんとのことを言ってくれなかったあいちゃん。

ほぼ間違いなくうみちゃん絡みのことがきっかけだったとは思うがそれでも別に私にまでは秘密にしなくてもいいと思う。

やっぱりあいちゃんみたいな「姫様」ともなるとあまり他人のことを信用できなくなるのかな…


「それは違うわ。ゆうな。」


って私、バレた!?


少し考え込んでいる間にいつの間にか私の方に回ってきた話。

どうやらみらいちゃんへの現状説明はとっくに済ましたようだ。


「体、大きすぎるのよ。あんた。」

「あはは…ごめん…」


盗み聞きは良くないと多少の説教はあったが


「私がゆうなに言わなかったのはただゆうなの性格を私が必要以上に知り尽くしているだけ。決してゆうなのことを信じないってわけではないわ。」


それでも私のことを信用できないとは決して言わないでくれた優しいあいちゃんであった。


「ゆうなは性格に自分の剣術ように真っ直ぐで素直なところがあるから。こんなの聞いたら絶対動揺するしすぐバレちゃうでしょう?」

「ひ…否定できない…」


単純で分かりやすい性格。

だがそれがまた私の長所だとあいちゃんはそう言ってくれた。


「私もお姉ちゃんみたいに自分の感情を素直に言える人になりたいです。」


いつだったんだろう。

昔大事な人が同じことを言ってくれた覚えがある。

体が弱かったせいでずっとベッドの中にいた私のことを一生懸命見守ってくれたすごく大事な人。

私みたいに頭の上に角が生えていて後ろに大きな鱗の尻尾を持った赤い髪の女の子。

金と赤のオッドアイがすごくきれいだったその子はもう私の傍から離れてしまったがその大切な記憶だけは今もこの胸に生きている。


「この際、ゆうなにもちゃんと話すべきだよね?ごめんなさい。あなたにひどいことをしてしまったわ。」


その後、あいちゃんはちゃんと私に謝ってこれまでのことを私にもきちんと話してくれた。

すみれちゃんとの出会い、告白、二人の間に結ばれた絆や「アイちゃん」のことも。

そして今日私とみらいちゃんが見た月光の下で行われた交わりのことまであいちゃんは隠さず全部話してくれた。


「あいちゃんって最初から生でやったんだ!大胆!」


だが残念ながら今のところ記憶に残っているのはそれだけしかなかった。


「あんたね…」


っとあいちゃんは明らかにドン引きな様子だったが正直あいちゃんっててっきりそういうのに結構うるさいタイプだと思いこんでいたのが私の本心。


「ゴム無しじゃ絶対しないわ。ほら、つけてあげるからじっとしてなさい。」


っとかでむしろ自分の方から律儀に世話をするタイプだとそう思っていたがまさか初っ端から生だったとは。

だがさすがの私でもここは経験における先輩としてきちんと指導してあげなければならなかった。


「でもすみれちゃんの言った通りに避妊具はちゃんと使った方がいいよ?病気も防げてくれるし使用済みのゴムで飾り付けたりしたら楽しくなるよ!きっと!

ゴムと言っても色はたくさんあるしすっごく彩ってクリスマスツリーみたいに絶対決まるって!

それともすみれちゃん、服作り好きだから「コンドームスカート」とか髪留めとかもありかな?腰蓑とかもいいかもー

そりゃ生の方が気持ち良くて相手のことをより深く理解できるかも知れないけどそんなに焦る必要はないよ!」

「そ…そうです!健全な交際はもっとお互いのことを考えるべきだとマミーはそう思います…!

ってゆうなちゃん…?飾るって一体何を…?それに何かすごく不穏な感じしかないんですが…」


っと猛烈な勢いで恥ずかしがりながらも言いたいことはことごとく話してしまうみらいちゃん。

どうやらみらいちゃんの目にはあいちゃんが自分の体を少々おろそかにするように見えたようだ。


「わ…分かったわ…付けばいいんでしょう…?」


そしてそんな私達の気持ちを分かってくれたように今後ちゃんと避妊することを約束してくれるあいちゃんであった。


「っていうかあんたってなんでそんなに詳しいってわけ…?」

「え?私?」


再び私の方に回ってきた話題。

そんなあいちゃんの疑問に答えるために


「まあ、聞くより見るのが早いかなー」


私は快く自分のスカートを捲って


「「竜人ドラゴニアン」ってよく雌雄同体って誤解されるけど本当はただ勃起できるだけなんだ。このさんがね?」


その中に眠っていた自分の分身を自ら起こしてここの全員に披露した。


「やり過ぎ!」


そしてこのことも含めて後でみらいちゃんに何見せたのかとセシリアちゃんからめっちゃくちゃ怒られた。

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