第95話
私が「
実力順でほぼ満場一致で私が団長と推薦されたが正直に言って私は断ることができたら最初から断るつもりだった。
でも断れなかった理由はただ一つ。
「何と言ってもゆうなはあの「雷の槍」の使い手だから。あい以外は手合わせできないくらいにね。やっぱり団長って強い人がやるのがいいじゃん?
それに団長になると特典もりもりだぞ?」
「そうだ。「百花繚乱」の団長になるとめっちゃモテるんだぜ?そういうの好きだろう、お前。」
団長になると女の子をいっぱい抱くことができるという先輩達からの説得にうまく丸め込まれて
「じゃあ、やります!」
その一言で私は柄でもない統率役を引き受けてしまった。
父から譲った女好きの性格。
本によって違うが古い昔、村の女を生贄として捧げられた風習が未だに残っているせいか「
今は血も大分薄くなり世間の目もあるからそれなりに自重しているがお父さんは周りから放って置かないタイプの人だったからいつも新しい女を連れてきた。
だからお父さんの評判はあまりよくなくて子供達にもあまり優しくしてくれる人ではなかった。
そんなお父さんのことを一族の皆は「クズ」とか「ろくでなし」とかで罵った。
でも剣士としての腕は確かだった。
「
それに比べて私は全く才能のないポンコツで
「お前は失敗作だ。」
その挙げ句、面と向かってお父さんからそう言われるほどダメダメのダメ剣士だった。
それに子供の時は体が偉く弱かったゆえ、まともに外にも出られなかった。
覚えたのはただ一つ、「雷の槍」壱の型「一閃」だけ。
一瞬で爆発的な瞬発力を発揮し、閃光のように敵を両断する必殺の技。
単純で基本とされる技だがそのシンプルさの故、ボロが出た時、他の技より抜かりが目立ってしまう。
それに一歩間間違えてしまったら防御手段や次の手が備わっていないと逆に返り討ちにされる可能性があるため実戦での有効性は極めて低かった。
私はその一つの技を極限まで鍛えてきた。
まさにバカの一つ覚え。
でもその一つで私はお父さんと同じく「勇者」になって「結日」家の次を繋げるようになった。
私はそのことを誇らしく思っていてお父さんも、一族の皆もそれを認めてくれた。
でもそれが
「今日からこの家にあの失敗作はいない。一族の皆はお前に期待にしている。」
たった一人の
団長になって最初は自分なりに頑張ったと思う。
退屈な事務作業も、厳しい訓練も真面目にこなした。
それから「百花繚乱」の雰囲気も少し緩くさせるために色々工夫もした。
「最近の子はそういうの嫌だから。堅苦しい空気とか。女の子だしちょっとぐらい可愛くてもいいんじゃないかしら。」
っと後輩ちゃん達にも気を配ったあいちゃんの言う通りに私もどうせやるのならもっと楽しい雰囲気がいいと思った。
怖い副団長殿だけは最初にめっちゃ反対したが
「勝手にしろ。」
最後には渋々承知してくれて私達代の「百花繚乱」は先輩達と比べて随分賑やかになった。
でもそれもセシリアちゃんが生徒会長になったこそできることだった。
私達の代と違って先輩達の時は「百花繚乱」どころか学校中の雰囲気が険悪だった。
下級生に対する上級生からの横暴。新入生といっても例外はなかった。
当然私達もそのような理不尽とさ差別を散々受けてきたしそれは遠い昔から続けられてきた「伝統」という名前の古い悪癖でどこから手を付けたらいいのか分からないほど生徒達に蔓延していた。
それを断ち切って根絶やしにしたのが今の生徒会長であるセシリアちゃん。
セシリアちゃんのおかげでこの学校はなんとか平和を取り戻した。
でも事態は急変した。
「「合唱部」は神界の生徒達の入部、並びに活動を禁止します。」
突然の「合唱部」からの神界に向けた通告。
そしてそれを指示したのが現合唱部の部長であるあの「
学校は一向に変わらなかった。
上級生とのことが片付いたと思ったら今度は生まれた世界を隔てにして学校が真っ二つに分かれてしまった。
合唱部からの開戦宣言の直前に起きたうみちゃん狙いの集団イジメ事件。
首謀者は私とあいちゃんと同じ神界の「黄金の塔」所属の生徒で一緒に行動した子達も同じ所属の生徒だった。
セシリアちゃんの不在に乗じて起きたその事件で「黄金の塔」の威信は地に落ち、あいちゃんはその代表として全ての責任を取らなければならかった。
当然私を含めた「百花繚乱」の上層部もそれなりの処罰を受けなければならなかった。
そのことで私はお父さんから実に久しぶりに面と向かって
「この役立たず!」
っと言われてしまった。
うみちゃんの意図は大体神界への仕返しと考えられている。
自分をひどい目に遭わせて普通な学校生活には戻れないようにした神界への復讐として自分と同じ気持ちにするためにと。
でも私はただそれだけはないとなんだかそう薄く感じていた。
その後、合唱部だけではなく魔界絡みの全ての部から神界の生徒が強制的に脱退させられた。
そのことでそれまで頑張った子達の努力が全て無駄になって
「そっちがその気ならこっちだって受けて立つわ。」
当然神界代表である「百花繚乱」も神界の生徒の保護という名目でその派閥争いに参戦することになった。
当時の私はあいちゃんのその意見に反対の主張を示したがまもなく私の考えは揉み消されて案件はそのまま進むことになってしまった。
この学校に来てやっと再開できた妹のゆうきちゃん。
でも私の方からいくら訪ねてもまともに相手してもらえなかった。
「彼女はもう止めません。速水さんのことをどうにかする方が手っ取り早いでしょう。」
そんなゆうきちゃんから珍しく先に話を掛けてくれた日、
「ごめん…私…何の力もなくて…」
私はそれまで自分の無力さをあれほど思い知らされたことはなかった。
あいちゃんは「黄金の塔」の首長として、そしてうみちゃんはうみちゃんなりの理由でこの学校で再び戦争を起こした。
ただの兵隊である私にはあいちゃんへの発言権も、いじめられていたことに気づいてあげられなかったうみちゃんを止める資格も何一つ残されていない。
そう思う私にできることなんて何もなかった。
ついに「
魔界の子達は皆うみちゃんのカリスマに完全に魅了されて盲目的に従っていて「Scum」の部長である「
それをなんとかしたかったようなゆうきちゃんだがこの期に及んではゆうきちゃんもまたうみちゃんの兵隊の一人。
ゆうきちゃんは「Scum」は自分と紫村さんだけで動ける部ではないということをよく知っていた。
私も同じ。
私一人じゃ「百花繚乱」は維持できない。
「百花繚乱」にはいつだって頼れるリーダーが求められていてあいちゃんこそそれにふさわしい真のリーダーだと私はそう信じてやまない。
私なんて精々喧嘩だけが取り柄でただの性欲マシーンだから皆を完璧に率いることなんてできない。
世界政府公認の「勇者」と大層な肩書がつけられてはいるが私はあいちゃんに比べたらポンコツで半人前の出来損ないにすぎない。
だから私にはあいちゃんの選択を信じてそのまま進むことしかなかった。
その後の状況はみらいちゃんもよく知っている今の有様。
セシリアちゃんとかなちゃんみたいな元の学校に戻りたいって思ってくれる子達がいくら頑張っても坂道で下に向かって転がり始めた蟠りの雪玉は止まりはしない。
転がるたびに悪い感情や影響を何度も重ねてどんどん大きくなったそれはやがて遠い昔、この星を滅びかけた大災害、もしくは大疫病に準じる災いになって再び私達を、この星を脅かすだろう。
私はそれを恐れていた。
でも一番納得出来ないのはそのことを一番知っているのは今回の争いを最初に繰り広げたうみちゃんとあいちゃんであることであった。
何が二人をあそこまで追い詰めてしまったのか、私の視線は自然に
「ゆうなちゃん…?」
悲しい目で私の話を聞いていた桃色の髪の毛を持ったとてつもない大きさの胸を誇る私の友人に向かうだけであっ…
「みらいちゃんって本当におっぱい大きいね!」
「ええ…!?なんですか…!?急に…!」
その凄まじい大きさでへそのそこら辺まで垂れている爆乳。
私の意識は既にその暴力的な胸に飲み込まれて身動きが取れなくなっていた。
「私、あいちゃん以外にこんなに大きい胸は初めて見たよ!何度見てもすごいね!」
「ゆ…ゆうなちゃんだって大きんですから別に私から探さなくてもいいんじゃ…!」
爆発寸前の胸を精一杯抱えて私からその大きい爆弾を隠そうとするみらいちゃんの恥じらう顔。
それを見た瞬間、自分の中から何か湧き上がることに気づいた私は
「もう!ダメじゃん!みらいちゃん!そんな危険物を持って歩いたら!爆発物処理は「Scum」の仕事なんだけどこういうことなら私にもできるよ!」
「ゆ…ゆうなちゃん…!服、破れちゃう…!引っ張んないで…!」
「うわぁ!乳輪でっか!すごいよ!本当!」
「ゆうなちゃん…!」
今まで自分が何を話していたのかさえすっかり忘れて自分だけのおっぱい感想会をおっ始めてしまった。
もちろんその後、
「やり過ぎ!」
セシリアちゃんのところに呼び出されてめっちゃくちゃ怒られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます