第二十三話『過去』


「ハーッ……」


「やっぱり強いね!で、ここまでにする?」


「そうだな。もうこれでいいだろう」


 やっぱり瑠璃との戦いは楽しいなぁ。さてと、じゃぁ銀の所にでも行くとしますか。考えてみれば元々は奴のせいだからな。黒いナノマシンなんか作りやがって……。んでRもRだからな!一発殴ってやろうか……。


「おーい銀……。何だこれ」


「……白銀。私の敵が、やって来た」


「……敵?何のことだよ!?と言うかなんで天井に穴が開いてるんだよ!?機材もこんなにばらばらになって……!」


「ごめん。……何も、言えない」


「銀?銀!?」


 か、髪で見えなかったけど腹に穴が……ッ!いったい何があったんだよここで!いや考えている場合じゃない!


「今すぐ救ってやるからな!」


 だがこのまま病院に行ってもダメだ!既に大量の血を流してる、今から止血しようとしても、腹に穴が開いてるんだからどうしようも……。


「いや待て。これがある」


 黒いナノマシン……。銀曰く、こいつは肉体を再生させるのが主な機能なはずだ。だったらこれを俺に付けて、そのまま銀の体を修復するしか……ない!


「黒いナノマシンを!」


「止めておけ。わらわがやる」


「校長!?」


「お主にそのような物を使わせる訳にはいかん」


「い、いや確かにそれも出来ますけど、校長……。あなたは大丈夫何ですか?」


「構わん。それに、ある理由から問題はない」


 えっある理由って何?あっそこは教えてくれないんだ……。そして黒いナノマシンが銀を直して行くよ。よかったなぁ……。けど、いったい誰にこんな傷をつけられたんだよお前……。


「ん……」


「大丈夫か!?」


「えぇい話しかけるでない!とにかく応急処置だけは済ませた!ここからは病院に任せる!それと、今回の事件は探るでないぞ!」


「えっでも」


「探るなよ!」


「はい……」


 こんなに怒らなくていいのに……。だが、明らかに何かあったんだろう。ちょっとだけ確認してみようっと。


「ん、ナナシが無い?」


 あんなデカい機体が消えるって事があるか?それに最悪アレを着て、防御すればいいし……。と、言う事は?ナナシが怪しいって事だ。外部からハッキングでもされたんじゃねぇのか?


「とにかくナナシが怪しいな。だがさっき探るなって言われちゃったし……」


 ま、流石に分からんだろ!こっそり探っちゃお!


「一応言っておくが童はネットに強いからな」


「あっハイ」


 釘さされちゃった……。じゃあしょうがないな。銀を襲った野郎をぶちのめしてやろうと思ったんだが、こうも情報が無いとなぁ……。それに、今はパールの事も気がかりだし。


「銀は大丈夫だろう。俺がやるべきことはパールを止める事だ」


 もう、迷わない。銀は結構ああ見えて強いんだ。それに俺にはどうしようもない。今は出来る事をして、助けられる命を助けるだけだ。


「よし!行くぞ!」


 何があっても明日は準決勝。負ける訳にはいかないんだよ!という訳で俺はもう寝る!流石に眠い!


「しかし俺の部屋に入った奴が大体酷い目にあってんな」


 呪われてんのかこの部屋……。なんかあったのかよこの部屋……。俺はなんともないんだけどな。そう言う意味でも呪われてそうだなこの部屋。今度は瑠璃に何かあるのか?


「……」


 いや、あいつは強い。そんな事が起こる訳がない。さ。寝るか。


「はい朝!」


 速いなぁ朝来るの!よーしパール、止めてやるからなぁ!


 ~side銀~


 ……。私、生きてた。明らかに腹を貫通されたのに。運がよかったのかな。


「目覚めたか銀」


「あっ校長先生……」


 校長先生が運んでくれたのかな?


「何があった?」


「……それが、覚えていないんです」


 そう。実は覚えていないのだ。何かで腹を貫かれて、その後と前の記憶が全部なくなっている。だけど何か重要な記憶だったような気がする。


「そう言えば白銀はどうしてますか?」


「ん?あぁ。あ奴なら、とりあえず探ることを禁止させている」


「今回の犯人を……。ですか?」


「あぁ。奴はあぁ見えて一度殺すと決めた相手には本気で殺しにかかる。……童はあ奴に人殺しをしてほしくない」


「……ですか」


 確かに、この前の死神騎兵との戦いで、白銀は中身が機械だからと分かったら即壊しに行った。アレはつまりそれだけ殺意が本気だったって事だ。アレが普通の人間に充てられたとなったら……確実に人が死ぬ。


「私も、白銀に人を殺してほしくない」


「じゃろ。だから今回の事件は何を言われても答えるな。恐らくまだお主を狙っている奴は、まだお主を狙っている。記憶が無かろうがあろうが、もし来たなら殺しに来るじゃろう」


「……」


「故に、何もしゃべるな。これはお主の為でもある」


「……うん。分かってる」


 校長先生、帰って行っちゃった。しょうがないよね。今日は決勝戦。いないと何やってるんだって言われちゃうし。それにしても何があったんだろ、私の体に……?アレ?こんなの私持ってたっけ?なにこれ?


「チップ……?」


 でも、何のチップなんだろ?映像を記憶する奴だって事は分かるけど……。まぁ見るだけ見てみようかな。病院って何も無いから暇なんだよね。じゃあテレビに入れてっと。


「うーん、特に何も映ってないね」


 何にもないね。よく分かんないね。でも、何かある気がするんだよね。わざわざ私が握ってたんだから。


「……?ループしたみたい」


 何だろこれ。特に問題ない映像なのかな。


「うーん……ん?」


 よく聞くとなんか音が聞こえるような……。ちょっとヘッドホン付けよ。小さくだけど、なんか音が鳴ってるよさっきから。凄く小さく、ヘッドホンで最大音量でも聞き取れるか怪しい音量。


「これ、もしかして」


 そして一定のリズム、トンとツーで出来てるこれは……。


「モールス信号」


 これなら解読できる、何を伝えようとしていたのか分かる。この位は解読しないとダメだ。けど、文字に起こすとなんだか分からない文字になっちゃった。


「よん、ろく、はち、なな、いち、に、さん。か」


 文字に直しても4687123って言うだけの数字だし……。考えすぎなのかな?でもこの数字、どこかで……。


「そう言えば……お爺ちゃんがよく色んな話をしてたっけ」


 今となっちゃ覚えてないけどね。確か歌詞は~


「……あっ」


 お爺ちゃん……。そう言うこと!?だとしたらどれだけ回りくどい伝え方なの?!お話の中に、歌があった!その歌の中には何節がある!


うそかがや

 嘘吐うそつきして

 きょある

 いえなき

 これ

 くら

 うろすみ

 おもてあるくに

 ない』


「確かこんな感じ……!」


 お爺ちゃんから聞くたびに、変な歌だなぁって思ってたけど!これ暗号だったんだ……!今わかったよ、どうして家に行くたびにこの歌を歌ってたのか……!


「……でも、今は言わないでおこう」


 誰に見られてるともわからないこの状況で、わかったからって大声を上げたら今度こそ始末されかねない。それに、お爺ちゃんがわざわざこんなふざけたメッセージで送るって事は、何か重要なモノが隠されているに違いない!


「……今は、この胸に秘めておくね」


 今は白銀の戦いを見届けるのが最優先だから。


「這ってでも見に行くからね」


「それをするくらいならおれと一緒に見に行くか?」


「え?」


 なんかまた変な人がやってきました……!


「あー!そう慌てるなって!俺はお前の爺ちゃんの知り合いだ」


「お爺ちゃんはこの前死にました」


「だろうな。だから童も目覚めたんだよ」


「……どういうことですか?」


「とにかくだ、その状態では這っても試合を見に行くことは出来んぞ?大人しく童の言う事を聞いた方がいいぜ」


「……なんだか釈然としないけど、仕方ないから付いてってやる」


「OK!」

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