第二十二話『武器と事故』
「ありあとっしたー」
「はー。碌な装備が無い」
パールの一戦を見届けた俺は、黒いナノマシンに対抗すべく武器を買うため街にまで降りてきた。だが碌な装備が今のところ見つかっていない。俺の作り出す武器は、確かにすぐ壊れるが、武器としては一級品である。
ここまで色々な店を回ってきたが、それ以上の物が一つも散見できないという訳だ。銀に作らせれば?と思った人、銀はあくまでBA専用であり、武器は他の専門家がいます。
「チクショー。このままじゃダメだな」
「……」
そう言えば、今日はあの事件からちょうど七十年前か。俺も詳しい事は知らないけど、このデパートの中で爆破テロが起きたんだったっけ。死人はいなかったらしいけど、かなり悲惨な事件だったせいか、こうして毎年、黙禱をしているんだと。
「ん」
なんか花を添えている奴がいる……。ん?今の写真に爺ちゃんが映ってたような……?ちょっと声かけてみるか。
「あのー」
「ん、あぁ。この花に関しては気にしないでくれ」
「まぁその、色々あったそうですね」
「そうだな。これはその手向けなのかもしれんな」
「……」
にしちゃ、若い気がするが。爺さんがこのテロに巻き込まれたのかな?そう言えば七十年前と言えば、俺の爺ちゃんが二十歳くらいの時か。
「その写真はなんです?」
「あぁ。これは
にしちゃやっぱ若いんだよなぁこいつ……。写真に写ってる時まんまの人間がここにいるみたいな、そんな感じだ。ちょっと気持ち悪いなぁ。
「さてと。童の名前は『
「そうですか……」
「……ところで、キミはいわゆるBAに乗っている者なのかね?」
「え、どうしてそう思うんですか?」
「そうだな……。しいて言うなら、その手を見ればわかる。それはBAに乗っている奴の手だ」
「まぁそうですね。言わないでくださいね?」
「はなから誰にも話す気などは無いわ。ただ気になっただけだ」
はぁ……。それはそうとして、武器を探すとするかな。このデパートに武器は売ってなさそうだし。しかしまぁどうするべきか……。
「ところで。武器が必要かね?」
「……何?武器がある場所を知っているのか?」
「もちろん。と言っても童の店だがね」
よく分からないが……。この人は、何かを知っているようだ。まぁ付いて行っても構わないだろう。それにまだ時間はあるんだからな。
「ここが童の店だ」
「凄い古そうな店ですねぇ」
「それが売りだからな。それでどのような武器が必要だ?」
「……次の戦い、相手は自分を犠牲にするようなパーツを着ているんです。俺はそれを破壊したい。出来るなら、無傷で」
「ふむ。ではこの槍はどうだ?常時は剣としても使えるモノだ」
「ほぅこれはなかなか……」
中々いい槍だな。ちょっと使ってみよう。と言うかこの店練習場あるのか。まぁ一応武器店だからなぁ。
「ちょっと試させてもらいますね?」
「あぁ、問題ないぞ」
「じゃあ遠慮なく!」
おっ、この槍短い状態から一気に伸ばす事が出来るんだなぁ。これなら相手の不意を突けるし、パーツだけを破壊することも出来るかもしれない。少なくとも武器として強いからなぁ。
「けど黒いナノマシンを撃ちぬけるかどうか……」
「ふむ、今黒いナノマシンと言ったかね?」
「どわぁ!?」
「ぬおっ、危ないではないか」
「いきなり後ろに立つからですよぉ?!」
あっぶね!今全力で構さんの事殺しに行ってた!武器持ってる時に人の後ろに立つなって分かんないのか?!と言うか今のよく避けたなぁ。中々反射神経が凄いらしい。
「ところでなんで黒いナノマシンの事を知ってるんですか?」
「うむ、その黒いナノマシンとやら、聞いたことはある。と言ってもよく分からぬがな」
「はぁ……、俺は全く知らないので、情報があるなら教えてほしいのですが」
「では一つ教えよう。使った時点で黒いナノマシンは装着者の体と一体化していてな。破壊しようとするならば、本気で殺しに行かなければ壊せんぞ」
「……ですか」
まぁ、なんとなく察していた。あんな馬鹿げたパーツが、まともな物な訳が無い。だがまさか一体化しているとは思っていなかった。
「ところでなんで知ってるんですか?」
「え?あ、あぁ。一応開発者と知り合いだからな。うん。一応な」
「と言う事は俺の爺ちゃんの知り合いですか?」
「そ、そう言う事だな!それはタダでいいから今日はもう帰ってくれ」
追い出されちゃったよ。まぁ武器は手に入れたから特に何も言わないけどな。それにしても一体どういう関係だったんだ?特に黒いナノマシンは爺ちゃんの知り合いしか知らないって言ってたけど……。
「あー、考えがまとまらないなぁ。まぁいいや帰ろ」
さて、間違いなく明日は殺し合いになるだろう。だから瑠璃に来てもらった。この闘技場で、瑠璃に相手になってもらう。
「よっ。全く、私を呼びつけるとはねぇ」
「あぁ。ところで瑠璃はどうだったんだ?」
「もちろん勝ってきたよ!と言うか、まともに戦ってあんた以外に負ける気ないんだけど?」
「そうだよな。で、今回お前を呼びつけた訳なんだが……」
「そう言うのは聞きたくない。あたしらがやる事なんて……。戦い以外にないでしょ?」
本当に瑠璃は良い奴だ。何も聞かないで対戦相手になってくれるんだから。多分だが、パールの強さは黒いナノマシンを使っている時に限っては瑠璃を越えているだろう。だがそんなものはまやかしだ。本当の強さじゃない。
「正直、あんなことがあったから、強さを求めるのは分かる。だけどそれは正しい強さじゃない」
「何のこと?」
「こっちの話だ。……殺す気でかかってこい!」
「もちろん!こんなところで死なないでよねぇ!」
~side銀~
「うーん……」
アレから、黒いナノマシン……長いからクロナノって略して呼ぼ。とにかくそのクロナノに関して調べてみたんだけど、どうも変なナノマシンを使ってるって事が分かった。
Rに聞いてみたけど、そんなの知らないって言ってた。……って事は、誰かが意図的に付けたパーツって事になる。
それでクロナノに関して具体的に言えば……、まるで人間の肉体を再現してるような、そんな感じ。私の機体でも人みたいなモノを作るってだけなのに、これはほぼ人間の肉体を再現できている。いったいどういう技術があればこんなものが作れるんだろう。
「でもなんで人間に寄せる意味があるんだろ」
BAをわざわざ人間レベルの弱さに落とす必要は無いと思うんだけどねぇ。無駄じゃないそれ?そんなことわざわざしなくてもよくない?何か重要な理由でもあるのかなぁ?
「うーん、でも普通に肉体に鋼鉄レベルの強化を施してるって意味では強いんだけどなぁ」
でもやっぱり、それならもっと簡単で安全な物が作れるし、パールちゃんが使ってるような酷い物じゃ……。
「待って。私アレいつ作ったっけ?」
あれ?そもそも私は黒いナノマシンを作ったんだよね?作った……よね?思い出せない。明らかに違う。そうじゃない。
「何かが……変だ」
作ったって言うなら、作った素材の残りが出るはずなのに、それが無い。じゃあ今パールちゃんが使っている黒いナノマシンは……何?誰が作った物なの?そもそもパールちゃんに出会って……。
「……」
る。出会ってる。確かに一度、ナナシを通して。
「……」
そしてそのナナシは、今ここにいる。
「ねぇ。ナナシ。BA相手に話しかけるなんておかしいと思うけどさ」
もし私の考えがあってしまっているなら。
「私はお前の爆破スイッチを持っている」
それを否定してほしかった。
「もうちょっと潜入出来ると思ってたんだけどなぁ」
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