『ブレイブ・アーミー』女性しか着れないはずのパワードスーツを着る事が出来る俺、色々言いたいところはあるけれど、今日も元気でやっていくぞ!
常闇の霊夜
序章『彼は選ばれた』
第一話『倉庫に隠されていたモノ』
ブレイブ・アーミー。かつて俺の爺ちゃんが開発し、発明したパワードスーツの名称。なぜか女性しか着る事が出来ないとされたスーツにより、女尊男卑と言う世界になってしまった。
俺としては別に関係のない事ではあるが、あのスーツを着てみたかったなぁ。と思っていた。ペンを口に咥えながら、俺が着る機体を考えてみたり、どんな風に使うかとか考えていた。どうせ着ることは出来ないのだが。
「あー『
「なんですか先生?」
「いやな、お前の祖父が亡くなったって今家族から報告があってな?」
「あー……。爺ちゃん、もう98歳だったもんなぁ」
「で、その祖父の遺品整理って訳で家族が来てんだ、今日は帰っていいぞ」
爺ちゃんが死んだあの日までは。
車に揺られる事数時間。既に辺りは真っ暗になっていた。そんな俺ら家族を迎え入れてくれたのは親戚の一行であった。
「あら!久しぶりじゃない元気してた?」
「こっちこそお久しぶり!大丈夫よこっちは」
母さんと親戚の叔母さんが話しているけど、俺には何が何だかさっぱりである。もう夜も遅いので、寝るために二階に上がった。
「ふん、来たのね!今日こそ私と戦いなさい!」
「いや無理、眠い」
「そ、そう……。だったらさっさと寝なさいよ、寝室はあっちだから」
二階には叔母さんの娘である『
「明日こそ戦いなさいよ!」
「はいはい」
そして俺は夜飯が出来上がったと言うタイミングで起こされ、飯を食う事になった。叔母さんと母さんが作ったらしい。
「あの人がなぁ」
「ですね。それにしても『
「あいつなら来ねぇよ。連絡来てた」
なんだか小難しい会話を始めた大人たち。酒臭いので早々に退散する。すると部屋の外では瑠璃が待ち構えていた。なんだお前。一緒に入りたいとか言うのか。
「一緒にお風呂入るわよ!」
「あー、いいよ」
「どっちが長く入ってられるか勝負ね!」
どうやら一緒に風呂に入りたいらしい。別に断る意味もないので、一緒に入ることにした。しかしこいつには羞恥心が無いのか。無いんだろうなぁ。多分色仕掛けも使ってくるだろうよ、俺を倒せるって言われれば。
「来年で小学六年生になるけどさ、そっちはどうだ?」
「全然大丈夫!そっちこそ、なんか言ってたじゃない」
「あー。ブレイブ・アーミーの事?」
「そ!着たい着たいって言ってたけど、女の子にしか着れないのよ!つまり私の勝ちね!」
「はいはい」
そう。俺が着れない以上、瑠璃は着る事が出来るのである。別にそれがどうという訳ではないが、正直内心、かなりガッカリしている。既に瑠璃はブレイブ・アーミーの専門学校に行くことが確定しており、そのためのトレーニングもしているのだと言う。
「……。ねぇ」
「なんだよ」
「ホントは辛くない?」
「……辛いさ。メチャクチャ」
対する俺は、何もできないのである。俺には着る資格が無い。だから、諦めるしかないんだ。……諦めた事なんて、人生で一度もなかったのに、諦めざるを得なくなるなんて。
「……悔しいさ。ホントは」
「やっぱり?」
「あぁ」
「……だったら約束しよ!白銀が作ればいいじゃん!すっごいブレイブ・アーミーを!」
「……俺が?」
「そうだよ!」
成程。目から鱗が落ちるとはこの事なのだろう。確かに、着る事は出来なくとも作ることはできるかもしれない。それを瑠璃に着てもらって、戦ってもらうと言う事は出来る。それならば、俺にもかかわる事が出来る。
「そうだな、なんかやる気出てきたぞぉ!」
「その調子!ふっふっん。もし作れるってなったら、その時には私の専用機を作る許可をあげる!」
「よーし!じゃあまずは寝るか!」
そして俺は風呂から上がると、さっさと寝た。爺ちゃんが死んだと言う事もあり、何故か静かな部屋だった。なんだか凄く、寂しい気持ちになった。まるでポッカリと穴が開いたようだ。
そして翌日。俺は母さんに言われて、蔵の中を掃除していた。内部は埃まみれで、まともに掃除をしていないことは丸わかりである。まぁ俺でもこんなところは掃除したくない。
「あー、瑠璃。お前はあっちで叔母さん達の手伝いしてな」
「えー、なんで?」
「そりゃ危険だからな」
「はーい」
渋々帰る瑠璃を尻目に、俺は蔵の掃除を始めた。とは言っても、そんなに荷物は無かったので、特に問題は無かったが。わざわざ瑠璃を返す必要は無かったか。でも埃塗れだからなぁ。あいつに吸わせちゃ悪いか。
「はー……。疲れた。これで全部だ!」
そして蔵の中全てを片付けた俺は、ある物を発見した。地下につながる道である。あの爺ちゃんなら、何か凄い物が隠されているだろう。好奇心に負けた俺は、誰にも言わずに早速入っていくことにした。中はやけに機械機械している道。
「どこにつながってるんだこれ?」
奥にたどり着くと、そこはラボと言うような場所であった。謎のケースに謎の機械、そして目の前にはブレイブ・アーミーが一着。なんなんだろうと足を踏み入れた瞬間、いきなりクラッカーの音が鳴り響く。
「えっ何!?何の音!?」
『サップラーィズ!ガハハ!』
「えっ、お爺ちゃん!?」
そしていきなり爺ちゃんが出てきた。ビックリしつつも、家に帰るぞと手に触れようとするが、その手はすり抜ける。映像だけがそこに表示されているようであった。
『よぅ!この映像を見ていると言う事はもうワシはこの世にいないんじゃろうな!』
「ま、まぁそうだけど……」
『ここはワシが選んだ最後の場所。そしてこれがワシが最後に作るブレイブ・アーミーじゃよ』
爺ちゃんから聞いたことがある。ホログラムという奴なのだろう。それが今、俺の目の前で動いて喋っている。爺ちゃんが指さしている先には、かなりゴツゴツとしたブレイブ・アーミーが存在していた。俺が知っている物とは違いすぎる。
あの防御出来ていると思えない位露出が強い奴ではなく、これぞ男のロマンと言うモノをこれでもかと詰め込んだ、まさしく爺ちゃんが作りそうな一作。着る機械兵器とはこうあるべきである。まぁ爺ちゃんに言ったら兵器じゃねぇよ!って言われるだろうけど。
『どれ、適当な奴でいいからこれに触れてみ?ん?』
「じゃ、じゃぁ遠慮なく……」
そして俺は、爺ちゃんに勧められるままブレイブ・アーミーに触れてしまった。その瞬間けたたましい警報が鳴り響き、俺の体にその機体が吸い込まれていく。そして静まり返った時、俺の目の前に残っていたのは俺と爺ちゃんのホログラムと、手の甲に表示された『ブレイブ・アーミー』の資格者の証であった。
『どうじゃ?凄いじゃろう!まーこいつを発明した経緯は省くとしてじゃな。それはワシが最後に誰かに作ったブレイブ・アーミーじゃ。存分に使うといいぞ!ワハハ!』
「じ、爺ちゃん……!」
『あ!最後にもう一つ』
「な、何?」
『このビデオテープは爆発する』
そう言った瞬間、ビデオテープと、上の方にあったカメラが爆散、そして爺ちゃんも消えていく。やると思った!このクソジジイ!そう言う奴だよお前は!
「えっ、えぇー……?」
『ガハハ!死ぬときくらい派手に逝かせてもらうぞ!……それと』
「まだあるの?」
『……強く生きろよ、我が孫よ』
……まぁうん、そう言い残して、爺ちゃんは完全に消えてしまった。俺はこの事を言い出す事も出来ずに、五年間経った今でも胸の中に仕舞っている。言ったらなんかヤバそうだし……。
ただ、爺ちゃんが言っていたブレイブ・アーミーは、間違いなく俺の手の中にある。いつでも着る事が出来るし、脱ぐことも出来る。母さんにだけは言っておいた。一応。
「……今日で中学生活も最終日だなぁ」
小学五年生から、中学三年生になっていた俺。その間、俺はブレイブ・アーミーの使い方を自力で習得していた。初めは空を飛ぼうとすると地面に着地したり、武器の威力がデカすぎて警察騒ぎになったりもしたが、今は問題なく使う事が出来る。
「はぁ……」
「どうした『
「女の子にいじめられるのもこれで最後かと思うと悲しくて……」
「そうか。くたばれクソマゾ野郎」
「あぁっっ……!も、もう一回いいかな?」
こいつは中学の同級生である絵夢。変態である。見た目だけなら普通の巨漢と言う感じだが、中身はクソマゾド変態野郎である。とは言えそれを言うとまた興奮しだすので言わないが。
さて。爺ちゃんの死後、どうやらこの五年でブレイブ・アーミーが出回った結果、かなり女尊男卑が大きくなったようで、俺たち男は肩身の狭い学校生活を歩んできた。
「ちょっとー。そこ私らが使うんですけどー」
「そうか。悪い」
「えっじゃあ僕をどかしてみてくれないか!?さぁ!全力で蹴り飛ばしてくれても殴り飛ばしてくれても構わないよ!」
「うわキッショ……。止めとくわ」
こいつは抑止力として優秀である。こいつの近くにいれば、良くも悪くも女は近寄ってこない。男もだが。なお絵夢はなぜこうなったのか分かっていない模様。アホか。
「……なんで?」
「自分の行動を顧みろ」
こいつは悪い奴じゃないんだけどな。だいぶちょっとアレなだけで。色々。いや、ホント。うん。
「そーいやさぁ。この後なんかブレイブ・アーミーの適性検査が行われるらしいよぉ?」
「なんでだ?」
「さぁ?俺が知る訳無いじゃん。でもなんか詳しく話を聞くとだなぁ。どっかで男のブレイブ・アーミー適合者が見つかったって噂で」
へー。……でも、爺ちゃんが言うには俺が持ってる奴が爺ちゃんが作った最終機体って言ってたよな?今更発見されたとは思えないし、検査とかする必要あるかな?
「おっ、チャイムじゃん。んじゃ、さっさと行きますかね!」
「おう、そうだな」
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