転生したら最強の魔術師になっていました。~「お前の魔力、全部よこせ!」と言われても困ります!
あずま悠紀
第1話
「えぇ~っ!? ちょっと待ってくれよぉ~!!」と叫ぶ声が聞こえたが無視する。まぁ俺の事を呼んでるんだろうけどさ。そんなことよりも、だ。俺は自分の身体を見下ろす。そこには、白い服に金色の装飾品がついた、いかつい格好をしたオッサンが立っているのだ。どう見ても俺の趣味じゃないし、「おい、こらっ!」と言っているから間違い無く目の前のコイツは俺の意識の中に居る人物に違いないだろう。だが、何が何なのか全然分からないんだよな。
「だから、まずは落ち着こうぜ?」
とりあえず俺はそのオッサ―――おっさんに話しかけてみたのだが、相手は何も言えず口をパクパクさせているだけだ。
そういえば昔、友達と一緒にVRMMOのゲームやった時に似たような経験したことあるぞ。たしかそのゲームだとキャラクターを操作しているプレイヤーがNPCと話してる時は操作できない仕様になってて、それで俺もそいつらも操作できなくて焦った記憶があるなぁ。まぁ結局それは俺達が操作するプレイヤーのキャラがログアウトしてただけっていうオチで笑ったんだけどね。あれ?ってことはやっぱりこれって夢なのかしら。それならいいか。なんか変なことに巻き込まれてる気がするしさっさと目を覚まして現実に戻ることにしよう。きっと今頃現実の世界では家族が朝ごはん作ってくれてるはずだしね。
「ちょっと待ちなさいって!貴方ねぇ~人の話を聞いてなかったわけぇ!?」
すると、今度は女性の声が頭の中で響き渡ってきたのである。あぁん?何だいきなり。人がせっかく夢の世界へ逃避行しようと決意したってのに邪魔しないで欲しいものだね。ま、とにかく俺は無視して寝なおすことにして目を閉じることにした。だってしょうがないじゃん。こういうのよくあるパターンだよ、夢なんだし少しくらい楽しんだって別にバチは当たらないよね? そう思った矢先の出来事であった。何かが頬に触れたような感触を感じたのと同時に鋭い痛みを感じる。慌てて目を開けてみるとそこには一人の女の顔が間近にあった。彼女は驚いた顔で俺を見つめているようだった。長い髪の間から大きな二つの眼と小さな口元が見えており、肌の色白でとても可愛らしい容姿をした子だった。服装こそ現代風だったが明らかに外国人ぽく、背は高くスタイル抜群だったのだ。
「あら、意外と冷静そうな感じね?」
その女の子はとても不思議そうに小首を傾げながら俺を見て言ったのである。しかし俺はと言うと「あぁびっくりしました。突然目の前に現れた美人な女の子のお陰ですね、はい。ありがとうございました。これで目が覚めますわ」などと素直にお礼を言う気にもなれず、ジトッとした表情のまま彼女のことを睨みつけてやることにした。だが不思議なものでそんな事をされても彼女は一向に怯む様子を見せず俺のことを見続けていたのであった。まるでこちらの心の中まで覗き込むかのような真っ直ぐな視線に耐えられず俺は目をそらしてしまう。それでも彼女の強い瞳は俺を捉え続けたままだったのだ。一体、なんということだ。この状況を簡単に説明してくれ!!俺がそう思うと、また例の女性の声が流れ込んできた。
(仕方ないから教えてあげる。貴女は私達が管理している世界の人間の一人なのよ)
なるほどそういう設定ですか、理解できましたよっと。俺は大きくため息をつく。そして改めて目の前にいる彼女を観察する事にした。年齢は高校生から大学生あたりかな。かなり整った顔立ちをしており綺麗という言葉がよく似合うと思う。でもこの人何処かで出会ったことがある様な気がするんだよな。それも割かし最近なような。
そんな事を考えつつ俺は彼女をまじまじと見つめ続けている。すると彼女が「うっ」と言って顔を赤らめた後すぐに「えいっ!」といって抱きついてきたのだった。
ちょ、ちょっと何やってんだこの人ぉ~!?いくら何でも急にこんな事されれば普通ビックリするでしょ!でもそんな俺の事など御構い無しに「うぅっ~っ!会いたかったんだからっ!」といい、胸に顔を押し付けてグリグリとしているのだ。
おいおい待てよ。何だか様子がおかしいぞ。俺は目の前の女の行動の意味がわからず困惑してしまったのである。だってそうだろ。見知らぬ人にいきなり「ずっと探していた」とか言われながらハグされたら、誰でも驚くし意味が分からなくなってパニックにもなるってば。とりあえず俺は「えぇーと、あのっ!どちら様でしょうか?」なんていう間の抜けた質問をするしかなかった。だがその言葉を聞いた瞬間に彼女の目からは大粒の涙が零れ落ち始めるのだった。そしてその勢いは止まるところを知らないようにどんどん増えていってしまった。これはまずいと俺は慌ててしまう。泣かれるような事は言ってないしするつもりもないんだけど、なにしろ俺には女性経験というものがない。だから、どう対応したらいいのか全く分からないんだよ。だから、とりあえず謝ってみるしかないと思ったんだ。だって他に思いつかないんだもん。なので俺は必死になって頭を下げたのである。
するとその途端、目の前の女の子の目つきが変わった。そして先程までの泣き顔はどこへ行った?と言いたくなるくらい不敵な笑みを浮かべ始めたのである。こ、怖いぞっ!?な、なんだこいつ。さっきとはまるで別人格だ。俺はこの豹変っぷりに戸惑いを感じつつも警戒レベルを上げる。だってさ、どう見ても普通じゃねーんだもぉ~ん!!俺が混乱していると彼女はゆっくりと近づいてきて俺の腕を掴む。しかも笑顔で。だがしかし目だけは笑ってなくて怖かったのだ。何が言いたいかというと、彼女はとても怒っているように見える。それなのに腕に込められた力はとても弱々しく感じられるのだ。
まぁそれはともかくとして。俺はさすがにここまでされると自分の身の危険を感じていたのでなんとか抵抗を試みた。するとあっさり拘束を解くことができたのだ。だがその時だった。いきなり後ろの方でドサッという物音が聞こえたのと同時に誰かが倒れる気配がしたのである。何だと思って振り返ってみると俺が先程立っていた場所のすぐそばに男が倒れていたのだ。よく見ると男は苦しそうにもがいているように見えた。それを見た時俺は一瞬何が起きたのかわからなくなったのである。何故なら、さっきまで何も無かったはずなんだけどなぁ~。
まぁそんなことは良い。それよりコイツだよコイツ。
「あぁ、やっぱり貴方も来ちゃったんだね」と女は呟く。俺は状況を把握しようと彼女に向き直った。そしてその次の言葉を待っていたのだがいつまで経ってもその続きはなかったのだ。俺は仕方なくもう一度倒れた男を確認するために視線を向ける。だがそこには誰も居らず床に一枚の小さな白い紙切れが落ちているだけなのであった。それを拾い上げて見てみるとそこに書かれていた文章に思わず驚いてしまう。
"この世界に来たということは貴殿も転生者に違いない。残念ながら私はもう時間切れのようだ。だが大丈夫。きっといつか会えるはずだ" 何なのこれ?何のヒントもなく俺を置いていくなっ!って感じなんですけどぉ~っ!俺は頭を抱えたくなりながらも必死になって考えることにしたのだった。だけどいくら考えたところで俺が知り得る限りにおいて該当する答えを見つけることはできなかったのである。俺は頭を掻きむしるしかできなかったのだ。
まぁとりあえず俺は気を取り直すことにして、目の前に立っている女性に声をかける。
「あ、あのですねぇ?えぇっと貴方の名前を教えて貰ってもよろしいでしょうか?」
すると女は不機嫌そうに「え、なんで?」と言う。そりゃそうでしょうね、うん。俺だってそんな風に言われたら何がなんだかさっぱり分かりませんから。だって、知らない女性に対して「名前何ですか?」って聞いただけですぜ。それなのにそんな言い方するなんて酷すぎるだろ。
俺はため息混じりに「えっとですね。まず貴方が何者なのか分からないんで自己紹介してほしいんですよ。だってお互い初対面じゃないですか?」と答えると、彼女は少し悩んだ後こう言ったのだった。
「う~ん、分かったわ。確かにそのとおりだし。私の名前はアスタ。それでこっちで転がってるのはユウキ。ちなみにこの世界に召喚したのはこの国の王様なんだよね。あと、その服なんだけど私の手作りなの。気に入ってくれたかな?それじゃぁ、また会いましょう。次はもっと楽しい時間を過ごせたらいいな。じゃあね、ユウちゃん」と言って去っていったのである。俺には全く訳が分からなかったが一つ確かな事があった。俺は何故かまたここに戻らないといけなくなりそうだって事だ。でも俺の勘だと恐らくここに戻ることは避けられないと思うんだよな。なんとなくそう思えたのであった。
まぁそれは置いといて。俺ってさぁ本当に異世界とやらに来てしまったわけなんだね。信じられない話だよな。まさか自分がそんなことになるだなんて思ってもみなかったし。
いや、待てよ?そもそもの話なんだよな。どうして俺なわけ? こういう場合、勇者に選ばれし少年だったり美少女ハーレムが待っているような気がするじゃん?だって俺って別にイケメンでもない、スポーツ万能でも無いし成績だって中の上くらいだよ。そんなどこにでも居る普通の高校生が勇者に選ばれたっていう展開もおかしいよね。
それになによりさ。この身体ってば全然鍛えられてないんだよ。はっきり言うけど今の時代の若者の平均的な肉体よりも劣ってるんだぞ。この状態で戦いに行くって、どう考えてもそれは無いと思うんだよね。というよりさ、むしろ戦う前に殺される可能性すらありそうなんだけどさぁ。マジやばくない、これ。いや待て待て待て待て、そんな簡単に諦めるなよ俺っ!何かあるはずじゃないか!例えば、なんか超強力な武器を持ってたりするとかだ!そう思った俺は、とりあえず立ち上がって辺りをグルリと見回した。だけど目に映るものと言えば真っ白な部屋と俺に付いてきていたはずの美女だけだ。その女が、なんだろう、あの子に似ている気がする。
俺の記憶の中に微かに残る、その記憶の中の人物。
「あーっ!!そういえば俺ってばあの子にお礼を言う為に探しているんだよ!思い出したっ!」俺は声を張り上げながら叫んでいたのである。だが、すぐにハッとした顔になり慌てて口を閉じた。そして恐る恐るその女を見ることにする。
女はその美しい瞳を大きく見開き驚いた表情のまま固まっている様子だった。俺はその隙を突いて逃げようと思ったのだったが。
「わ、私に会いたかったの?」と嬉しそうにはしゃぐのを見て俺は動けなくなってしまう。なんだよこれ。俺は一体どうしたらいいんだ!?どうも上手く行く気がしないんだよな。ま、まぁいい。このままここで突っ立っていてもどうにもならないのは明らかだからな。ここは一旦外に出て状況を整理しなおすことにしよっか。でもその為には出口を探してこの女と対峙する必要があるのは確実だな。さて、一体どうやってこの場から逃げ出すべきだろうか? するとその時、彼女がいきなり俺に向かって抱きついてきたのである。「えへへっ!やっと捕まえたんだから」とかなんとか言いながら頬擦りをしているのだ。
「う、うひぃ~!離せぇ~っ!」と叫ぶが、当然のごとく聞いてもらえるはずもなかった。そしてその次の瞬間。「えへへぇ、もう逃がさないんだからぁ~」と言いながら今度は口付けをしてきそうになったのである。俺が慌てて避けようとしたその時だ。いきなり視界が変わったかと思い目をパチクリさせる。俺は気付くと先程までの真っ白い部屋に居たのだ。だがそこには彼女の姿も、ついでにあの男も居なくなっていた。俺は何が起きたのかがさっぱり理解できていなかったが、ただひとつ分かること。それが俺はあの白い部屋には居なかったという事実である。だがそんなことは今はどうでもいいのだ。問題はあの女である。俺は再び彼女を確認してみたのだが、そこに立っている女の姿は先程とはまるで違う姿をしていたのだ。俺はその女を見つめたまま暫く固まるのである。そして、ふと我に返ると女の方から話しかけて来た。
「な、何なのよこの服。どうなっているのよっ!!」と喚くのを聞いて俺はホッと胸を撫で下ろすのであった。そして「えっと、その服装のことなら気にすることないんじゃないかなぁ」と一応アドバイスをしたのだった。するとその途端、俺の言葉を聞いた目の前の女の顔がみるみると青ざめていったのである。それはまるで恐ろしいものでも見たかのような表情に変わっていくのだった。「そ、それ本気で言ってるの?」と怯えるような口調で言われてしまう。「もちろん本気ですよ?というかさっきまでそういう感じの服を着ていたでしょ」と言い返したら彼女は俯いてしまい何も喋らなくなってしまったのだ。そして俺は、さっきまでは普通に白い服を着ていたのに何故いきなりこんな格好になったのだろうと不思議に思うのである。
まぁとりあえず。彼女はさっきまで白い服を着ていて、今はとても露出度の高いドレスを着ている状態だということになるのかもしれない。そんなことを思っていた矢先の事である。女が「あんたねぇ~!!よくそんなことが言えるわね!この服って凄く特別な魔法が施されている服なんだけどぉ~?」と詰め寄って来た。その言葉を聞いた俺は驚いてしまい、そんなに大事な物ならそんな風に扱うんじゃねぇよと思うのであった。
「それじゃあその服を着てたら大丈夫なんですか?」と尋ねる俺。
「そうだけど、なんであんたが知ってるの?」と言われてしまったので素直に「実はこの世界で目が覚めた時に目の前にいた女の子がこの世界のことを色々と教えてくれたんです」と答えたのだった。それを聞いた彼女は「その子ってどこ行ったの?まさか私みたいに連れて来られちゃったのかな?もしそうなら絶対助け出さないといけないよね」などとブツブツと呟いている。どうやらかなり動揺してしまっているようである。だがそのお陰もあってなのか、なんとなくこの世界の仕組みが見えて来て俺は内心ほくそ笑む。俺はとりあえず自分の持っている知識と目の前の彼女についての情報を元に考える事にしたのであった。
「とりあえずさぁ。君の名前を教えて貰えないですか?」と尋ねてみると。女は自分の事を語り始めたのである。それによると、名前はアスタ。歳はまだ20才らしい。職業が魔王だということだ。うん、それ完全にウソだね!俺にはそんな情報で信じろって方が無茶だって分かってるからね。しかも魔王だってよ?いやいやありえないから。そもそも俺は前世の記憶があるから知っているんだよ。異世界モノの作品に出てくる魔王って、なんか悪い奴のイメージしか湧かないからな。
そもそもさ、こういう作品だと魔王って勇者によって倒されるべき存在って相場が決まっているもんなんだ。つまりさ、アスタが言っていることが全部嘘ってのもあり得ないってことなんだよな。だってこの人さ、すっごく分かりやすい反応してくれるんだもの。まず最初に驚いた表情をする。で、次に俺に名前を聞くわけ。これはきっと名前を知られたらマズイと思ってるに違いない。それくらい誰だってわかるよな?あとさ、最後に俺を抱きつこうとするんだよね。これもきっと、どうにかして逃げることが出来ないかと考えてると思うんだよね。そんな事したって無駄だけどね。だって俺のスキルが勝手に俺を守ってくれるはずだから。でも、ちょっと可哀想な気がするから説明だけはしてあげることにした。「あのね、君の考えている事は全て間違っているんですよ」と言うと彼女は俺に質問を投げかけてくる。
「どういう事な訳? 詳しく教えてくれるよね」と言われたが俺は敢えてこう答えたのだ。
「そんな事よりさ、これから何処へ行くつもりなのさ。早く決めないと手遅れになるかもしれませんよ?」と言ったのだが、「それは、そのっ、えっとさ。とにかくあんたには関係ないでしょ?っていうか、なによ偉そうにして。生意気よっ!」と言って睨みつけて来る。だがそんな事を言われたって困ってしまうだけだ。
そもそも俺はこの人の言うことを真に受けてるわけじゃないし。それに本当にヤバい事態になってるってのなら俺はこの人を説得する必要があると思うわけよ。という事で、なんとか話を逸らせようと「ところでこの辺りには何も無いようですけど?街へ行って情報収集した方が良いんじゃないでしょうか」と提案する。
しかし、それでも「私達を舐めてるの?ここから一番近い場所っていっても結構距離あるのよ。そこまで移動する間に敵に襲われたらどうするのよ。私の配下なんてほとんどいないのよ?そんなことになったら一溜りもないんだからね」と反論されたのだった。確かに彼女の話にも筋は通っている。だからこそ余計に面倒なことになっているんだ。このままでは、俺の話に耳を傾けてくれないばかりか俺を置いて行こうとすら言い出しそうな勢いである。そんな事されてたまるかっての!俺にだって譲れないことがあるんだぞ!このまま放っておいたらマジで置いて行かれそうな予感がする。というより、ほぼ確実にそうするつもりだと思うんだよ。そうなった場合は、俺一人でなんとか切り抜けるしかないってことになるんだよ。だから俺も意地になったのだろう。絶対に一緒に行くって言い張るのである。俺が折れずにずっとそう主張し続けるので結局は根負けしてしまうのだ。
「わかったわ。私も覚悟を決めるわ。私も行く。で、私を連れてってくれるんでしょ?」と彼女が言ってきた。「あ、ああ、はい。そうですね。わかりました。お願いしますね」と、俺はついつい彼女の言葉に乗せられてしまうのだった。こうして俺たちは歩き出したのである。
そして暫く歩いた後、森の中に小さな村を発見することが出来た。
「あれっ!?どうしてここにこんな建物が?おかしいな。ここは私が管理していた土地だし誰も入ってこられるはずがないのに」
などと意味不明な発言をしていた。それを聞いた俺は(ん?なんだよコイツ、いきなりどうしたんだ?)などと思っていたのだが、その発言の意味がすぐに判明することになったのである。その村は廃墟になっていたからだ。家はすべて焼け落ちており、まるで隕石でも落ちたかのように崩壊している箇所さえもあったのである。それを目にしてしまったせいでアスタの顔色はどんどん悪くなっていく。彼女は俺に向かってこう言ったのであった。
「あの、ごめんなさい。私さっきのところへ引き返さないといけないような気がしてきたんだけどダメかな?」
まぁ彼女の気持ちもわからないではない。なんせ俺もこんな惨状を見せられたのなら間違いなくショックで立ち直れなくなっていること間違い無しだもの。だがここで俺は気付くのだ。
(待てよ。こんな酷い状態になっているのに何故こんな場所に誰か住んでいるのか。いや住めるはずが無いんだけど)
俺はそんな疑問を感じながらも彼女に問いかけるのである。「うーん、あのぅ。どうでしょう。一応聞いてみただけですよ。とりあえずここを調べてみる必要はあると思うんですけどね。それで何も見つからなかった場合なんですが。一旦この場所を離れていた方がいいと思うんですよ。だって嫌な予感しかしないじゃないですか」と言い返すと「そ、それもそうね。それならこの建物跡の中を調べるから、あんたはこの周辺を調査してもらえる?」と指示されてしまった。仕方ないのでその通り行動する事に決めたのだった。そうして俺が周囲を探索し始めた直後のことである。
目の前に何かが現れていたのである。それは全身が銀色に輝く巨大なサソリであった。大きさとしては人間と同じ位の大きさなのだ。その外見はとても美しく、神々しいまでの輝きを放っていたのだった。だがそれが魔物であることは明らかだったのである。俺は咄嵯に鑑定を発動させ相手のステータスを見極める事にした。そうすると案の定だったのであろう。そこには恐ろしい事が書いてあったのである。
名称:シルバーサラマンダー
性別;雄 レベル;1億3千 体力 188京7800兆/285京2600兆 攻撃力 238億 防御力 20億 敏捷力 112 魔力 100万 魔防 129万 知 力 40 運 85 魅力 531 能力:剣術S級,槍術SSS級,魔法A級+上級,再生S++ 特殊能力;土魔法EX級,水魔法EX級+上級,火魔法C++,風魔法B-
毒耐性,物理ダメージ軽減,魔法吸収 弱点;氷魔法,雷魔法,聖魔法等,光魔法以外すべて無効化。炎魔法でのみダメージを与えることが出来る 詳細説明:全長10メートルを超すほどの巨体を誇る。普段は大人しい性格をしており基本的に襲ってくることは無いが怒ると攻撃的な性格へと変化すると言われている。またその巨大さと、圧倒的なまでの強さが故に倒す事は不可能であり近づくことすら難しい。
俺が見た限りでも凄まじい強さだという事は分かった。だが俺の持っているスキルの中にはこいつに勝てそうな奴がいるんだよな。例えば俺の『完全防御』『超高速回復』のコンボとかを使えばなんとかなる可能性はかなり高いと思っているわけだよ。だが問題はその方法が思い浮かばないということだ。だからとりあえずは時間を稼ぐことにしようと思った。だがその考えは甘かったのである。
突然シルバーサライダーの体が震え始め、次の瞬間とんでもない衝撃波が発生してしまう。そのせいで俺は後方に吹き飛ばされてしまったのである。さらにシルバーサライダーの周囲には、いつの間にか大量の石が浮遊しており、それらが俺に襲いかかって来た。俺はそれらの攻撃を何とか回避することに成功したのであるが、その代わりにかなりの傷を負ってしまうのであった。
しかし、それだけの攻撃を受けてもまだ俺は生きていた。俺は自分のHPが減らないように自動回復し続けているから、ダメージを受けているにもかかわらず怪我の方は直ぐに完治してしまうという、おかしなことになってしまったわけだ。それを見て焦りを覚えたのかシルバーサライドが、さっそく本気モードになり始めたのである。奴の周りに無数の岩石が出現していき、そして一斉に俺に目掛け放たれていくのであった。俺は必死になって避ける。避け続けるのだが、それでも完全には避けきれずに何度か命中してしまった。俺が受けた衝撃から考えても、奴の放った岩は普通の奴がくらったらひとたまりもないだろうと思われたのである。
そして再び奴の周辺に大量の石の集合体が出現する。だが今度は今までとは様子が違った。俺を仕留めるために、奴の周囲にあった岩石をすべてぶつけるつもりのようだった。それに気付いた時には遅かったのだが俺は咄嵯に剣を取り出したのである。
そしてその武器を使って奴の繰り出してきた技を全て叩き落としてやったのだ。すると俺の攻撃により一瞬怯むような動きを見せた。俺はそこに隙があると判断したので、一気に接近を試みるのである。
そして渾身の一撃を叩き込むために力を溜め始める。
その時、シルバーサライダ―の腹部の一部が盛り上がりそこから一本の細長い物体が出てきたのである。俺はそれが蛇である事を理解した。それはまるで生きているかのようにウネっていたのだ。そんな光景を目の当たりにした俺は思わず足を止めてしまう。だが、その直後だった。俺は強烈な打撃を受けて吹っ飛ばれてしまったのである。そして意識を失ってしまうのだった。そしてそのまま死んでいく事になるのだった。だがそれは仕方のない事なのである。相手は明らかに格上過ぎるし俺に出来ることは殆ど無かった。だから死んだとしても後悔はなかったのだ。
しかし、それは予想外の展開になる。俺は何故か気がつくとさっきとは別の空間に移動していてしかも先程の場所より少し離れた場所に居る事に気づくのである。そしてそこで気絶していた女の子が俺に向かって駆け寄ってきたのだった。俺は咄嵯に彼女を庇おうとして抱き寄せようとしたが、そんな行動をする事もなく彼女の行動の方が早かったようだ。彼女は俺に話しかけてくるのである。
「ねぇ大丈夫?しっかりして!」
その声に反応して、俺はゆっくりと目を開けたのだった。だが目が開けてみて初めて分かる事があった。彼女の瞳が金色に染まっているのである。そう彼女は人ではなかったのだ。つまり俺の仲間になったはずの女性の正体が魔物であるということが判明したのである。その事実を知った時俺はかなり戸惑ってしまったのだった。まさか自分が魔物の仲間になっていたなんて思わなかったから当然の反応かもしれない。だけど今はそんなことを言ってる場合じゃないよな。そんな風に思って、まず最初にすべきことを行うことにした。俺は目の前にいる少女のステータスを確認したのである。すると、やっぱり予想通りの事が書かれていたのだった。そして俺は彼女の種族名が"悪魔公女(ディアブロデリア)であることを確認する。俺はその姿を見て絶句してしまった。
その美しさに心を奪われてしまい言葉が出てこなかったからである。
「あ、あのぅ、どうかしたのですか?私の顔をじろじろ見つめてきて」と尋ねられると、俺はハッとしたのだった。そう言われてみれば俺、彼女の顔を見続けていた。俺は恥ずかしくなって視線を外そうとする。だが出来なかったのである。あまりにも彼女が美しかったせいだ。こんなに綺麗な存在を見たことがないと思ってしまったほどなのである。
そんな事を考えていたせいでつい俺は、彼女に対してこんな質問をしてしまっていた。「どうして君は人間の姿をしているの?」
俺がそう言うと目の前の女性の表情が一変したのである。まるで信じられないものでも見るかのように、大きく目を見開いてこちらに注目するのであった。俺は何か気に触るような事を言ってしまったのだろうかと考え込んでしまいそうになったのである。だが彼女の口から出てきた言葉は俺の考えを大きく裏切るものだった。
俺が彼女に問いかけたのは純粋な疑問に過ぎなかったのである。だって気になることだししょうがないじゃないか。俺は今までの人生でここまで美人にお目にかかったことはない。それにこれだけ綺麗な姿をした女性なら、さぞかし美しい魔物なんだと思っていたからこそ、彼女は何の魔物なんだろうって不思議に思っただけだもん。それがこんな答えになるとは誰も思うまい。まぁ確かに魔物にも美少女とか美女みたいなのがいるっていうのには驚いたんだけどね。だからこの女性がそういう類の存在だとしか考えられないと思ったんだよね。まぁ、それは間違ってなかったんだけどさ。ただ、それが想像以上すぎたというだけの話でさ。
だってそうだろ?だってこの世界に来て、あんなに強いボスと戦って死にかけ、その後、助けてもらった恩人を仲間にしてもらったのにその人は人間ではなく、正体不明の謎だらけの怪物だったんだぜ。俺だって最初は目の前に立っているこの女性が人間なのか魔物なのかを判断できなかった。それくらいに現実味が無さすぎる出来事が起きたんだもの。そりゃ誰だって動揺して当たり前だよな。
だが俺の問いに対する女性の反応を見る限りじゃ、どうやら俺が今聞いた質問に彼女は凄まじい驚きを感じている様子なのだ。一体どうしたというんだろうか。俺は彼女の反応を見て首を傾げてしまう。すると彼女は恐る恐る俺に近づき、こう問いかけてきたのだった。
名称:ディアブロデリア 性別;女性 種族;上位悪魔族 レベル;1 体力;3兆7千8百億/3兆7千8百億 攻撃力;7億2千6百 防御力;5兆4千3百万 敏捷力;10億2千2百 魔力;5千8億8400万 魔防;5千5百2万2千 知 力;9京1258兆3210億 運;100万
魅力;800万 詳細説明:魔族の国を支配する六体の最上位に位置する公爵の一人。悪魔の王であり魔王とも呼ばれる存在。
「私に貴方のステータスを表示させてくれませんか?」と言われるので俺は彼女の指示に従うことにする。そして俺は自分の能力を数値化した能力値を見せる。それを見るとディアブロさんがかなり驚いているように見えたのである。俺も改めて自分の能力を確認してみた。その結果、やはり驚くべき内容が表示されていることに気がついたのである。俺の能力はこんな感じだった。
詳細説明:スキル『自動HP回復』の応用による超速自己再生能力により、HPが自動的に回復する。自動で再生するため肉体的な損傷は直ぐに治るが精神は癒えない為、精神的苦痛によってダメージを受け続けることになり、徐々にダメージを受けていくが肉体への損傷は無いので痛みは殆ど無い状態になっている。ただしその苦痛から逃れる為に自殺してもその魂は天に召されず地獄へ堕ちてしまうので永遠に苦しまなければならないことになる。
「う、嘘ですよね。これ、本当ですか?」と言われてしまったので、俺は素直に本当のことだと告げる。俺の能力を聞いて、ディアブロさんの表情がみるみると青ざめていき絶望感を漂わせるようになっていった。そして俺はそんな彼女に追い打ちをかけるような事を言い放つのである。
俺が彼女に言った事は本音ではあった。だけど俺は自分の発言に嘘をついたのであった。それは、俺は彼女の質問に対して自分の能力を正直に伝えただけなのに、勝手に勘違いをされた挙句、怯えたように逃げられてしまうのが嫌だったからだ。
俺から距離を取ったまま、まるで何かを恐れているかのような表情を浮かべている彼女の様子を見ていると、なぜかとても胸が痛くなるのだった。俺としては彼女の事をもっと知りたかった。だから俺は思い切って声を掛けてみることにしたのである。「ねぇ君の名前はディアブロでいいんだよな。俺は如月信二だ。君の主人にさっきなったばかりの者だよ。だからそんなに警戒しないでくれないかな」と言ったのだが返事はなかった。仕方がないので俺はそのまま話を続けようとしたのである。
「俺、まだ全然こっちの世界のことが分からないから色々と教えてほしいことがあるんだよ。俺、今までずっとゲームの中でしか遊ばないで生きてきちゃったからさ。現実世界の常識とか何もわからないんだよ。
あと、俺と一緒にいた女性達の行方も探していきたいと思ってる。あのまま放りっぱなしにしておくわけにはいかないしね。もし見かけたら保護してあげて欲しいと思ってるんだ」
そうやって話しかけ続けているうちに段々彼女が心を許せる相手になってくれればいいなと思い、積極的にコミュニケーションを図る事にしたのだ。そんな事を思っている間にもディアブロが近づいてきた。だけどやっぱり少しビクビクしていて怖そうにしていた。それどころか俺との距離を空けようとしているようだった。俺は彼女にそんな態度を取られてしまう理由が分からず戸惑ってしまったのだ。俺は何か失礼な事をしてしまったのかもしれないと思うと少し不安になってしまった。だがその気持ちは、次の彼女の行動によって完全に払拭される事になるのである。
ディアブロは俺に向かって頭を下げたのだった。
そして俺は彼女が発した言葉の内容を聞いて驚かされることになったのである。「申し訳ありませんでした。私が不甲斐なさ過ぎてこんな状況に陥ってしまったのです。全て私の責任です。ごめんなさい、本当にごめんなさい」と泣き出しながら必死に謝られたのだから。
彼女は何度も謝罪を繰り返し続けた。俺はそんな風にされると逆に居心地が悪くなる気がして仕方がなかった。それで思わず苦笑いしてしまうのであった。
俺はとりあえず彼女を落ち着かせることにした。
するとしばらくして落ち着いたのか彼女は深呼吸をして冷静さを保とうとしていたのが見えた。それからしばらく無言の時間が流れ、その間に彼女の瞳の色は元に戻っていた。それを確認した俺はようやくほっとすることができたのである。俺はまだ彼女との会話を続ける事に決めた。俺の方からも気になったことを幾つか聞いておきたいことがあったから。そういえば彼女の事を何と呼べばいいんだろうか。さすがに名前を呼び捨てにはできないよなと思ってしまう。でもディアブロなんて呼び方は呼びづらいし変だよな。そう考えてると、彼女が俺の顔を見ながら口を開く。
「どうかしましたか? なにか気になる事でもあるんですか?私のこと、ちゃんとディアブロって名乗ってましたよね」と聞かれたので、やっぱりあれは本名じゃないよなと思えた。だけどやっぱり女の子に対していきなりお前とか貴様とかは良くないだろうし、それになんだか照れ臭い感じがある。それに見た目的にも年齢的に言ってお姉さんっぽいし、ここは年上の人として接しようと俺は心に決めて彼女のことを「ディアブロお姉さん」と呼ぶことにするのであった。まぁ本人を前にしたら絶対に言えないんだけどね。恥ずかしすぎてさ。
でも彼女の方が年上に見えるのは間違いないから、そういうのは大事にしようと思っているのであった。俺は彼女の名前をディアブロと呼ぶ事にした。すると彼女は嬉しかったのか、「ありがとうございます。嬉しいです!えへへ、お姉さまですか~♪そう呼ばれたらなんだかくすぐったいというか何というかね」と言っていたので、俺はお世辞じゃなくお姉さんと呼んだのが良かったみたいだと安心した。それを見て俺はさらに思ったんだ。こんな素敵な女性とお付き合いできたらいいなと。
そう思って改めて見ると彼女はとんでもない美人だった。こんな人とデートとかできちゃうといいなぁ、とかつい考えてしまうほどだ。しかもこんな可愛い女性が俺の彼女になったらと想像すると凄く幸せな気分になってニヤついてしまいそうだった。ただその前にやるべき事がある。それは俺の仲間達を捜すことだった。そのためにまずこの世界で生きるための情報を手に入れる必要もあったので、俺はディアブロに相談する。
俺達は今後の方針について話し合うことになった。それはこの世界の事や仲間の捜索の仕方などについての話し合いだった。その最中は俺はこの世界に転生するまでの事、仲間がどうなったかを彼女に説明していった。俺の説明が終わると今度は彼女が俺達にどんな力を持っているかを話してくれる番となった。
俺が聞いたところによるとディアブロさんの能力はかなり高いという事がわかったのである。
「私に掛かれば貴方の望みを叶えることなど容易い事でしょう。
なので貴方のお仲間たちはきっと無事にいるでしょう。ですが貴方が死ねば彼らの安全も保障されませんのでくれぐれも慎重にお願いします。彼らは魔王軍の重要戦力なんですよ。簡単に失うわけにはいきませんので。それと、貴方も自分の命を守る事を第一に考えてくださいね。死んでしまえば何もかも終わりですから」
そう言われてしまった俺は内心で冷や汗をかいていた。俺だって別に死ぬつもりはないし、みんなを助ける為なら自分の身を犠牲にするつもりはないからね。俺の返答を聞いた彼女は少し不思議そうな顔をしていた。どうして自分が危険なのに皆を助けようとするのかという事に疑問を感じていたらしい。だけど俺は、みんなの為だからこそ俺は死にたくなかったのだと言う事をわかって欲しかった。その思いが通じたかどうかはわからないけどね。
「うふ、分かりましたわ。私はもう貴方の言う事に逆らったりしないで従いますね。そうしないとまた怒られちゃうし。だからこれからはちゃんとお話合いしてお互いに意見を尊重し合える関係になりたいなと思います。
私から貴方に伝えなければいけない事は以上です。
それでですね、私からちょっと提案なんだけども、このままだとお互いの事を全然知らない状態でしょ。だからまず自己紹介しません?」
確かに彼女の言っている事は正論だと思う。だから俺もその提案に乗る事にした。そこでお互いが順番に自己紹介する事になった。最初に名乗り出たのは彼女だ。
「はじめまして。アスタと言います。職業は魔王やってまーす」と明るく言い放つのだった。俺はその発言を聞いてかなりびっくりさせられた。なんせ俺よりもかなり歳上だし。まぁそのせいで俺も緊張せずに接することができたのかもしれない。俺はディアブロさんの冗談とも取れる発言を真に受けずに軽く聞き流した。
俺達がそんなやり取りをしていたその時、俺達の背後から何者かの声が響いたのである。
詳細説明:HP自動回復による自動HP回復の効果は自動で行われるため使用者は意識して発動したり解除したりすることは出来ない。HP自動回復の効果には痛みを和らげたり体力の回復速度を上げたりする効果も含まれているがそれらの痛みによる苦痛が強すぎる場合は回復効果が発揮されないことがある。
俺のスキル説明が終わった後、ディアブロさんは信じられないというような目つきをしながら俺の事を見ていたのである。そして震えた声で話しかけてくるのだった。「そ、そんなはずありません。私の『鑑定』能力では貴方のレベルとMPしか見ることが出来なくて、その他のステータスは全て隠されているって表示されていたんです。だからおかしいなと思っていたのに。なのに、なのに何故?」
俺からしたらレベルが高い方が凄いと思ってもらえるかなと思ったのでそうしただけだ。それにしても俺のステータスを見た時の反応が面白かったのでついつい俺は意地悪をしてしまっていたのである。それで、俺はさらに驚くように仕向けるために嘘をついてみる事にした。
「え?あ、あのさ。俺の本当の名前とか年齢とか教えないと駄目なのか?俺はそんなものに興味ないんだよ。
だから俺には教えたくないし教える必要もないと思ってるんだ。そもそも俺が異世界から来たとか意味不明な話を信じられるのか?そんなわけがない。そうだろう」とあえて俺は突き放してみることにしたのである。
すると彼女は少し悲しそうな表情を見せた後、諦めて話をする事に決めたようだ。俺としては少し申し訳ないことをしたなと思いつつもこれで良かったのだと自分を正当化することにしたのである。なぜなら俺は今の状況にあまりいい気持ちを持っていなかったからなのだ。俺は自分のせいで俺の仲間に危険が及ぶかもしれない状況になっている事をどうしても受け入れきれなかったのだ。
俺はその感情を抑え込みながら彼女に質問していくことにしたのであった。
まずは現状の確認である。俺がここに召喚されたのは二ヶ月くらい前の事だったはずだ。その時にはまだ俺達は全員無事だったのだがその日の夜に魔物の大軍に襲われてしまうのである。
俺はその戦闘の中で運悪く敵の攻撃を受けて倒れてしまったのだ。だが幸いにも攻撃自体は軽傷で済んでいた。しかし俺はその時、致命傷を負っていてそのまま俺は絶命してしまったはずだったのであった。だけどなぜか気が付くとこの場所に転移していて生き返っていたというわけだ。俺は最初それを信じられなかったがどうやらそれが真実だという事も後に判明することになったのである。なんとその日からちょうど十日前に、再び俺は同じような場所に転移させられていたからだ。つまり俺達はこの十日間の間に同じことを何度も繰り返していたという事になるのである。俺はこの世界に何度も呼び出されては何度も殺されたということになるわけである。それを知った時は俺自身もショックを少なからず受けたものだった。
俺はこの事実に怒りを覚えていたが、冷静に考えてみればそれは俺が悪いわけじゃないと思うことにしたのである。俺が殺されても復活するということが他の誰かの所に行っても起こりうる事ならば俺だけの問題ではないと考えたのだ。俺の場合は俺以外に俺の仲間がいたからそうはならなかっただけであって俺一人で行動している状況だったら俺の仲間のところに行きついた可能性はあるので、そういう点を考えれば悪い事じゃないんじゃないかなと思うようになっていたのだった。でも俺にとって大切な仲間が危険な状態になるような事を平気で行うのは俺には理解できなかったし、俺が死んだことで俺の家族に不幸があったのであれば俺にとってはその敵に対しての怒りは抑えられなくなるほどだったのである。俺の両親は早くに亡くしているから家族といえるのは妹の彩夏だけだった。俺達は二人兄妹だったんだ。でもその妹とも離れて暮らしているので、今の俺は天涯孤独の身になっていた。俺はそのことが本当に寂しく感じていたのだった。だからその俺の妹が酷い目にあわされる可能性があるなんて考えたくもなかったし絶対に許せないとさえ思っていたのであった。俺はそのことを彼女に伝える。
「うぅ、それは辛かったですよね。ユウキさんが死ねば仲間の方がどんなに苦しまれることか私でも容易に想像できますよ。私ならきっと耐えられないでしょうね。でも、でも私達魔王軍が全力を尽くせば大丈夫です。だから安心してくださいね」
彼女は真剣な眼差しでそう言ってくれた。俺はこの人に付いていこうと改めて心に誓う。そうすれば少なくとも俺達の命は助かるかもしれないと思えたので安心することが出来た。俺が彼女に「ありがとうございます。そう言って貰えると心強いです」とお礼を言った。
彼女は俺の言葉を聞くと嬉しかったのか照れくさそうに顔を背けたのだった。その後俺達が話し合っているところに王様がやって来た。俺は彼に魔王と二人で話があるのでしばらく席を外して欲しいというと快く応じてくれたのだった。
そしてディアブロさんが「私の部屋に行こうか」と言って俺の手を繋いできた。俺は彼女に連れられ、部屋へと向かったのだった。俺はそこで彼女にこの国についての話を聞き、それから今後どうするかを話し合うことになったのである。その話は割愛するとして。とりあえず俺はこの世界に来た理由であるこの世界の人間に会わなければならない事を伝えた。その上でディアブロさんの協力を得るために彼女に事情を説明することにしたのである。
ディアブロさんはその説明を静かに最後まで聞いてくれる。ただ彼女なりの考えもあるらしく、その意見が通れば俺の頼みを聞いてもらえることになるみたいだ。俺はその彼女の案に賛成することにした。それは彼女に協力するという意味だ。ただし彼女の要求がどんなものでも従う覚悟で俺は話を聞いてもらうことにする。だって俺はみんなを助ける為なら何を犠牲にしても構わなかったからな。たとえその犠牲が自分の人生であっても後悔するつもりはなかった。そんな思いを抱えつつ俺がディアブロさんの返事を待つ。すると彼女は少し考え込む様子を見せる。
「うんわかったわ。それじゃあ早速その件に関しては準備を始めるね。でも、まだ色々と調べたい事があるし、それにあなたにお願いしたいことがあるからしばらくは保留にさせて。それでお願いって言うのはね。私がお願いした事以外は絶対しないでほしいっていう事なの。もちろん危険な事をしろと言っているわけじゃないんだけど。まぁそんな感じの事なんだけど。それでもお願いしてもいいかな?」
「わかりました。その条件を受け入れましょう。だけど一つ聞き忘れていたのですが。俺はこれからどうやって生活していけばいいんでしょうか?俺がもしそのお願いを聞いたら何かしら報酬があるって言うのはわかるんですが、何も知らない世界でお金も無いまま生きるのは厳しいんですよね。なので出来れば仕事の紹介などしてくれるとありがたいという事を言いたかっただけです。あともう一つだけいいですか?俺の仲間の所在を調べてもらっても構わないですが、その場合俺はどこに居るかわからなくなりますよね。そうなった場合、俺の事は放置していただいても結構なんですが、もしお時間のある時だけでもいいので探す協力をしていただくことは出来るのでしょうか?」と質問をしてみた。すると、彼女からは意外な答えが返ってきた。
「うーんごめんなさい。私としてはなるべくあなたに協力してあげたいとは思ってるの。それに貴方のお仲間の方は全員生きていられるから安心していいわ。その証拠を見せてあげる」と言うと彼女は俺の手を取っていきなり目を閉じ始めたのである。一体何が起きるんだと俺は警戒していたが特に何かが起ころうとしている雰囲気はないようだ。しかし次の瞬間、目の前の景色が変わったのである。俺達は一瞬のうちに城の謁見の間の中に立っていたのだ。これには驚いた。なんせさっきまで俺は王都に居たというのに今いる場所は完全に見覚えのない場所なのである。俺は驚きながらも彼女に尋ねる。「こ、ここは何処なんですか?」と。だがその問いかけに対する回答は無く、代わりに彼女は「もうお分かりいただけたかと思いますが、私の能力によって転移して来られたのがここになります。では私はそろそろ失礼いたします。ではまた後日連絡をお待ちしております。それとユウキ様の事は勇者様にお任せしましたので心配なさらないでください」と言い残し姿を消したのである。
突然現れて唐突に去っていくディアブロさん。俺は混乱しつつもこの世界に来た本当の目的を叶えるべく行動をすることにしたのだ。ちなみにこの場所がどういう場所であるかというとこの国は俺達の住んでいた国の隣国である。そして隣には巨大な帝国が存在しているので、もしかしたらそちらの国と同盟を組んでくれてこの問題を解決する手伝いをしてくれたりしてくれないかな~という希望的観測もあったりするわけなのだ。だけど俺は俺の目的を優先することにした。なぜなら仲間に危険が及ぶかもしれないと思ったからである。だから俺は俺の目的が果たせるまではこの国に迷惑をかけない事を心がけようと思っている。その決意のもと俺はまずは情報を集めるために街へと出掛ける事にした。
俺が街中の情報を少しでも集めようと歩き回ろうとした時のことである。突如俺の前に黒い霧が現れたのだ。その異変に気づいた通行人が声を上げ、その声で街の人が集まってくる。だが、すぐにそれは収まり、集まった人たちも次第に元の仕事に戻るためその場を離れていったのであった。俺は気になることがあったので近づいてみる。しかし誰もいない。
あれ?確かにそこに居た気がするんだが、気のせいだったのかと思いつつも一応気になってそのあたりを見渡す。だけどそこには何の変哲もないいつも通りの町並みしか存在していなかった。そのことに俺は違和感を覚えつつもあまり気にしないようにしようと思い、その場を離れたのであった。
俺は情報収集の為とりあえず街を見て回ったのだが、特にめぼしいものを見つけることはできなかった。というのも、そもそもこの街自体、そんなに規模が大きいわけじゃないのにこれといって特徴がなかったからだ。この国は他の大陸にも国を広げていて貿易が盛んなのだが、この国にある都市は港町が一箇所あるだけである。しかもこの国の港はかなり小さく、貿易船はあまり多くは無いらしい。つまりはそこまで発展していないのだ。だから特産品とかそういったものは見つけられなかったというわけである。ただこの国の人達が優しいということはわかった。俺の事情を説明して何とか受け入れてくれるように頼むとその人たちは親切に色々な話をしてくれて、俺の事をとても良く扱ってくれたのである。俺はそれを感じ取りすごくありがたく思うと同時に俺の気持ちも高まっていったのである。俺はそんな人達のためにも早く仲間と合流して魔王軍を倒し、この世界の平和を取り戻さなければならないと改めて決心したのである。
そうは言ったものの俺一人でこの世界を旅することなんてできるのだろうかと疑問を感じたのだ。それに仲間を探す為にもこの国以外の場所に足を運ばなければならないだろうし、移動方法の確保なども考えなければならなかったので、色々と考えることが多かったのだった。でも、いつまでも考えてばかりでも仕方ないので、今は一旦頭の片隅に置いておくことにしよう。そう考えた俺は宿に戻ってゆっくりと休むことにする。そうして翌朝を迎えたのだった。
翌日。俺は再び街に出ることにする。そこで仲間の情報を集めてみるつもりだった。昨日は街に泊まることが出来たのでとりあえずは安心したが。問題は俺一人しかいないということである。でも俺だって伊達にこの世界にやって来たわけではないから、それなりに戦う術を身に着けているからその点に関してはなんとかなると思っていたのだった。そんなことを考えていると早速トラブルが起きてしまった。というか俺は巻き込まれ体質なんじゃないかと思う。なぜなら朝早くから俺の前に現れたのはガラの悪い男たち数人であった。おそらく盗賊団か何かだろうと推測した俺は面倒事にならないように素直に道を開けた。しかしそれが間違いであった。奴らは何故か俺のことを追いかけてきたのである。俺は走り続けるも徐々に追いつかれそうになる。すると、俺の後ろを走っていた男達は何かを話し合っているようだったが。どうやら標的を変えたみたいで俺の方へ迫ってくるのがわかった。そして俺はその勢いで壁にぶつかってしまう。すると彼らは壁際に俺を追いやったのである。俺は逃げられないと悟り観念した。すると男はこう言ったのだった。
「お前、大人しく金を出せ。痛い目に合いたくないならとっとと言うことを聞けよ」と脅してきたのである。俺は正直なところお金を持っていなかったので抵抗するつもりで身構えると男が襲いかかってきた。俺はその動きをしっかりと目で捉えていたので簡単に避けるとそのまま殴り飛ばす。すると彼は吹っ飛んでいき倒れ込んでしまった。他の連中もそれを見ると慌てて逃げ出していく。俺はそれを呆然と眺めていたが、やがて俺自身も冷静さを取り戻し、急いでその場を離れる。俺はどうにか窮地を脱した。だけどこのままここに留まってはまた同じことが起こる可能性があったのである。そこで俺は街を移動することにした。幸いこの国は俺達が住んでいた国の隣国にあたるので移動自体はそんなに難しくないはずだと思ったから。俺は早速街を出ようとするも出口の門には衛兵がいるのが見える。俺はすぐにどうすればいいのかわからなくなった。
しかしここで立ち止まっていても意味が無いと判断した俺は、ひとまず隠れながら外に出ることにして身を潜めたのである。そして少し様子を見てみると。その衛士たちは揉め事を起こしていたみたいだ。その内容は商人風の人物が襲われておりその護衛の人間と何かしらの口論をしていたのである。その様子を見ていた別の人間が助けに入ろうとしていたみたいなのだが。その人は俺の視界に入る事は無かった。そして俺はそれを確認するなり素早くその現場に向かう。その人物はちょうど襲撃者を倒したところで周りを警戒している様子であったが。
俺はその人に近づき、事の一部始終を話す。俺が事情を説明すると「君のおかげで命拾いした。私はロレンス。もし良ければ私と共に王都に向かってみないか?」と言われたので、俺は二つ返事で了承する。それからは一緒に行動する運びになったのだった。俺はロレンさんの馬車に同乗させて貰うこととなり王都に向けて出発したのである。俺達は王都までの道程でいろいろな話をしながら目的地に向かった。そしてついにたどり着いた。俺はようやく自分の目的を叶えることができるのだと思い嬉しくなるのであった。
俺たちはその町に入って行く。この町は商業の街として発展した町である。この町の特徴はその商業の中心地に城があるということで。その城は別名商売の城とも呼ばれているくらいに立派な作りとなっているらしい。なので俺の予想だがこの国の王様は商売上手なのではなかろうかという予感がしている。というのもこの国の王は代々商売に携わっているという話を聞いているからである。だから、何かしらの情報を得られるのではないかと淡い期待を抱いているのであった。俺がこれから先について考え込んでいるとロレンさんが話しかけてくる。
「ところで君の名はなんというんだ?」と。その質問に俺は一瞬言葉が出てこなかった。なぜなら今までは偽名を名乗っていたのである。俺の名は神童優斗。だけど今となってはそれを名乗るつもりはなかったのだ。何故なら俺が本当の名前を名乗った場合、俺の過去が知られてしまう恐れがある。そうなれば勇者としての使命を放棄することになりかねないのではと考えてしまったからだ。俺はそのことを伝える。しかしそれでも問題無いと言ってきたので、結局本名は明かさないことにしてしまったのである。そして、俺はこれからどうするべきか悩んでいた。というのも、今の俺は身分証を持っていないのだ。それはこの国に来るまでの過程で既にわかっていたことだ。
つまり、この国の王に直接会うことが出来なければこの国を出ていけなくなってしまうかもしれないということだったのである。そこでこの国は身分証明ができるものがないと入場する事が許されない。そのため俺達は王に会うまでは滞在することになるだろうと思ったのであった。しかし俺達がこの国に入った時点で、王への面会はすぐに出来るとのこと。
それは俺達の持つ特殊な能力が関係しているらしく、普通だとこの国の王の元まで辿り着く事ができないのだが。今回だけは特別措置が取られると聞いたのだ。その理由はこの国の治安を維持する為なのだが、詳しくはわからないまま話が進んでいく。俺は一体どんな風にこの国の王に説明されたのだろうと考えていた。もしかすると俺は勇者であることは伏せられているかもしれないと、その時ふと思ったのだ。俺のことを詳しく知らないこの国の王はおそらく、この国に蔓延る魔物を倒せるだけの実力者がいればすぐに会ってみたいと思っているはずなのだから。そのことはロレンさんにも確認してみたがやはり同じような考えであった。
俺達はその後しばらく街中を見て回ることにした。すると、街の雰囲気が何となくおかしいことに気づく。そのことについて俺は聞いてみることにすると、この街は元々こんな感じではないのだという。その証拠に、いつもより明らかに人が少ないように思える。さらに、この辺りではあまり見ない人ばかりだと言われ、俺は違和感を感じるも。それ以上深く詮索しないことにした。俺はこの街を見て回る中でこの国の現状が大体理解できたのである。まずは、この街ではあまり犯罪が行われていない。それは衛兵たちがしっかり取り締まっているのもあるが。何よりもこの街の住民の殆どが自分の生活で精一杯であり、他所に構う余裕などないのだろうと思われるのだ。それにしても、ここの王はとても賢い人だということはわかった。その理由としてこの街が成り立っているのは王の力が働いているからこそなのだと実感することができたからだ。そんな話をして回っていると、突然一人の男が俺達の方へ駆け寄ってきた。そしてその男の口からは思いもしなかった内容が告げられたのである。この国から逃げるんだと。しかし理由が思い当たらなかった俺に、この男は俺の事を救世主と呼んだのだった。それを聞くと、俺達はただ困惑することしか出来なかったのである。
男は必死に語りかけてくるも俺にはいまいち伝わっていない。なぜなら俺はそんなこと言われる覚えがないから。でも男は俺の事を知らないのは仕方がないだろうと言った。なんでも、その前に立ち寄った町でこの世界を救ったとされる人物の話を聞かされていたようで。それが俺だという。この男はその町の町長と顔なじみだったので、俺の特徴を教えてもらったのだという。俺はこの世界での服装は目立ってしまうと、ロレンスさんの服を借りていたので、男もその事を伝えてくれたおかげで俺の素性がバレなかったらしいのだ。でも、それがどうして逃げ出すことになるのかと、俺はまだその事に気付かないままでいたのである。
俺は訳が分からないので詳しい話を聞いたのだが。この国には、とある魔道具があって、その力によって外の世界の様子がある程度分かるらしい。その事を知ったこの国の住人は自分達の国が危ない状況にあることを知らされるとすぐさま逃げ出そうということになったのである。
しかしその話はあくまでも噂話のような内容だった。俺はそのことに疑問を感じながらもとりあえず男の提案に従うことにする。理由は簡単でこの国から出て行かなくてもいい方法が一つだけあるからと、この男が言ってきたからである。しかもこの方法を使えば俺の目的を達成することができるかもしれないとも言ってきたのだった。
その方法とは。実はこの国は、俺達がいた世界に干渉できるという代物があった。これは俺達もまだよくわかっていないことで、この国がなぜこの技術を持っているかもわからないというのだ。しかし今はそれよりも重要なのは。この国は、外の世界の状況を把握する為にこの技術を秘密裏に使用しているという。俺はそれを聞いていたので、男の発言に対して少し驚いたものの、男を信じるほかないので素直に従った。そして男はある一点を指さすとこう言い放つ。
そこには巨大な城のようなものが見えるのである。その大きさはこの街のどの建物を見ても足元に及ばない程の大きさであった。そしてその城の中には様々なものが設置されている。その中でも大きなものとして、この場所一帯を覆う結界を発生させる装置があり。この機械を動かすことによって、この場所を守る事ができる仕組みになっていたのだ。俺がその事を理解するのに時間はさほどかからずにいた。というのも、男が俺の反応を見て笑っていたからだ。それで確信を得た俺は、あの城に近付く必要があると感じ。あそこに俺の仲間が居るのではないかと思い始めていた。そう思わせられていたのだ。俺の直感は的中しておりあの城は間違いなく仲間達がいる場所であると確信した俺は、男にお礼を言うとその足で向かうのであった。そして俺は遂にたどり着く。城の中に入ることができたのだ。
俺が城内を歩き回っている間に俺はあることを考えていた。もしかしたらこの城を管理している人間なら仲間の所在を知っているのではと思い至ったのだ。俺はすぐに近くに居た人間に話しかけてみることにした。その人は、俺の言葉を聞きすぐに案内してくれるという。どうやらこの城は関係者以外の出入りを禁じているらしく。部外者の侵入を防ぐ為なのか。城の周辺には厳重な警備が施されているらしい。
だがその人物は、自分が許可されている範囲の場所ならば自由に行き来する事が許された人間であると言い出した。その人物が言うには。城の中にある研究区画と呼ばれる場所の入口までしか立ち入る事は出来ないという事らしい。その人が俺を連れて来た場所はその部屋の前に到着する。そこで俺の持っていた認識票を確認すると、問題ないという判断が下り俺は中に入ることが許されたのである。俺がその部屋に入るとその光景を見た俺は驚きで目を丸くしてしまった。
なぜならそこには大量の書物と、見た事もないようなもので溢れ返っているように見えたからだ。その中には俺の知る魔法に関するものもあったのである。俺はすぐにその書物に手を伸ばす。そこで気づいたことがある。なぜか俺の知識の中にその知識が刻み込まれており、すぐに使い方を習得することができてしまうということを。
俺はそれを使って色々な本を読み漁りながら情報を収集することにした。すると一つの気になる情報を見つける。どうもこの国では俺の住んでいた世界で起こっていた出来事についての情報がかなり残されているようである。俺がその内容について調べようとした時だ。俺の背後に何者かが現れた。そしてその声の主を見るとそれはロレンスさんだったのである。そこでロレンスさんは自分の正体を明かしてくれるのだった。彼は、どうもこの町を治めている人間の使いらしい。それもかなり上の立場の人物であるとのこと。俺達はそんなロレンスさんに連れられ。王の所まで連れて行かれることになったのであった。
俺は目の前にいる人物を見ながら考える。一体どんな人間が、王様と呼ばれているのかということと、この国を統治していた存在の正体を、だ。その答えが今わかると思った時に、扉の向こうから女性の声で呼びかけてきた。ロレンスさんによると、どうも女性の声の持ち主というのは王妃さまであり。先ほど紹介したこの国の統治者であるということだった。俺は自分の予想とあまりにもかけ離れた人物の登場に驚愕してしまい、つい反射的に失礼なことを口にしてしまった。しかしそれは致し方のない事だと思うのだ。だって、一国の統治する人物とは思えないような格好をした女性が姿を現してしまったのだから。
俺が言葉を失うのは当然だとロレンスは苦笑いをしながら、こちらを見てくる。そこで俺達が自己紹介を終えると。女性は俺が想像していた通りの容姿ではなく、なんとも言えない美しさを持っていたのだった。
この国に存在している建物の中でもかなりの高レベルの建築技術で作られた建造物が建ち並ぶこの王都の中で、さらに一段高い場所に建てられているその宮殿はまさしく王と呼ぶにふさわしいほどの荘厳さを纏っており。まるで神が住むために建てられた神殿にも見えるほどだった。
そして俺達はそんな建物の内部に招き入れられており、現在謁見の間へと通されていたのである。
「ようこそおいでくださいました、勇者様。私は、この街を納めさせていただいていますミリーと申します」
「はじめまして。俺はこの国を救うためにやってきた、神童優斗です。これからよろしくお願いしますね、えぇーと、そのぉ~っ!」
「ミリーとお呼びくだされば結構ですよ?」
俺は一瞬躊躇するも。すぐにその考えを取り消し。
この場にはこの世界の事情を知る為に来たんだと改めて考え直す。
そんな事を考えつつも、俺は頭を下げたのだが。その時俺の後ろからロレンスさんとライルさんが挨拶を始めた。すると二人は俺が今まで出会ってきた中でも、かなり偉い地位に就いている人物であろう。その二人の態度に驚いてしまった俺は、思わずその場で固まることになってしまったのだ。そして二人に続いて俺も頭を下げるのだが、その際にチラッと顔を上げ相手を見てみた。するとそこには、見た目だけで判断してしまうと子供のようにも見えなくはない容姿を持った美しい女性の顔がそこにあった。その事に少し驚いたものの。俺はすぐに頭を深く下げることにしたのである。そして、俺はこの世界での出来事を思い出すことにした。
俺はその言葉の意味が理解できずにいた。この国で起きていた現象を、俺はその事実に驚くしかないのであった。
「その話は真ですか? その、あなたは、いえ。貴方が、この国で起こっていることの犯人だと仰るのですね?」
「はははははは、面白いことをおっしゃいますねぇ。どうして私がそんなことをする必要があるのですかね。それこそありえないことです。なぜなら私は、この国の国王ですから、私にその責任を押し付けるとは愚行も愚か、極刑に値する行為ですよ。それにしてもまさかここまで馬鹿者が居るとは思ってもいませんでしたよ。はぁ、嘆かわしい限りです。やはり、あの者達に任せるべきではなかったかもしれません。私の失態、本当にお詫びさせていただきたいと思っております。それにしても貴女方が、あの忌まわしき者達を退けてくださって良かった。もし奴らに勝てる人材などこの世界に存在しなかったでしょう。なので貴女方にこの世界の命運を託したく思います。どうか世界を救って下さい。そうすればきっと元の世界に帰ることができるようになるはずなんです。それが我々の悲願でもあり希望でもあるので」
「あ、はい。その、ありがとうございます。えっと、まずはこの世界の状況を詳しく教えていただけると助かります」
俺はいきなりとんでもない事を言われてしまい動揺を隠せないでいた。だがその言葉を聞いていたロレンスは、表情を変えることも無く冷静に対応をしていたのだ。俺はロレンスさんのその姿を見て感心している場合じゃないなと思い気持ちを引き締める事にした。それから俺が質問した事に全て丁寧に答えてくれたその人物は、ミレーと言う名前のようだ。彼女はその容姿から、この国でも有名な美人姫と呼ばれる存在である。その噂はもちろん俺達の耳にも届いており。そして彼女が実は男だという事も知っていたのだ。
俺達が知っているこの国の情報とは比べものにならないぐらい詳細な情報を教えてくれて感謝しているのだが、俺としてはそれよりも気になっちゃう事があったのだ。その情報には俺の知っている事柄と微妙に齟齬が生じている部分が存在したから。
どうやら俺は魔王を倒す為にこの世界に呼ばれたのではなく。俺を召喚してこの世界を平和にしようと願った人物が居たのだというのだ。しかも、その願いの力が強すぎて異世界からの召喚が成功してしまったとか。俺にはまだ実感がわかないんだが、とにかくその人物がその事に対して謝りたいという内容が記されていた手紙と共にある品物が置かれていたという。その事が気になった俺達はその人物がこの国に残した物を捜索する事にする。だが、その手がかりすら見当たらず。この国で一番の力を持つ人に頼るほか無いという結論に至ったのだ。だが俺はその人物に会いに行くよりも先にすることがあると考えた。俺が知りたかった事の一つである。ロレンスとロナについての情報を入手するために、行動を開始することにする。そして俺はこの国の歴史に関して調べることにし。俺は図書館へと向かう。だがその場所へたどり着く前にロレンから呼び出しを受けた。俺は何だろうと思いながら彼のいる部屋へと向かったのだ。そして、ロレンスに呼ばれて部屋へと入っていく。そしてそこでロレンスが説明してくれた内容を聞き俺が抱いていた疑問が氷解していった。
ロレンスは、ロレンのことを信頼しておりこの国の重要事項や秘密などを相談するほどの信頼をおいているということだ。そして俺とロレンスの話し合いにより、この国が現在抱えている問題を全て把握し。俺達はその問題を解決するための手段を考え始めたのである。
その話をする前に一つ。俺達にとって大きな問題が浮かび上がってくる。その問題は、勇者が俺しかいないということだ。勇者とは基本的に一人であり。複数の勇者がこの世に存在し、同時に存在することは絶対にできないという法則があるのだそうだ。つまりどういう意味なのかといえば、勇者という存在は複数存在していることがおかしいとの事である。だから俺はそのことを告げられてしまった時。俺は自分のステータス画面を確認した。そこにはしっかりと職業として表示されている欄が存在していたのだった。そしてそこには確かに俺は、職業の所に聖剣士と書かれていたのだった。
ロレンスさんは俺と二人で話したいことがあると言われ。ロレンスと別れて別の場所に移動することになり、案内された場所は俺がこの世界で目を覚ました部屋であった。どうも俺はここに眠っていたところを発見されたらしく。そしてその身体からは神々しい光が放たれていたという事だ。俺がその光についてロレンスさんに尋ねると、彼はこう答えてくれた。その光がなんだったのかわからないと。そして俺が意識を取り戻した時。俺の隣に剣が置いてあったらしい。
ロレンスさんから話を聞いた俺は。その部屋に残っていたと思われる武器を、アイテムボックスの中に入れてもらう。ロレンスさんは俺が何をする気なのか理解していなかったが。特に何も言うことなくそれをさせてくれたのであった。ちなみにロレンスさんが俺のために色々としてくれていたお陰で、お金に関してはそこまで必要ないという事で俺は安心する。まぁ実際俺の懐はかなり暖かいのだが。
とりあえず俺はその部屋にロレンスを残しロレンスが用意をしてくれるという馬車で城に向かうことに決める。その後ろ姿を見送った後。俺はこの世界についての情報収集を行うことにした。まず俺は王都の街に出る事にしたのであるが、その途中にある建物の中からは大勢の人々の歓声の声が響き渡ってきたのだ。その声を聞いて俺は少し興味を持ってしまった。そしてその声の出所を探してみると、そこは大きな闘技場みたいな場所で多くの人が詰め掛けていた。俺はその様子を眺めながら歩いているうちに闘技場の前に到着していたのだった。するとそこで受付の人が俺に話しかけてきたのだった。俺はなんだろうと首を傾げながらも、その人の話を聞く。するとこの国で開かれる武術大会が開催されるという話を聞かされた。そして俺が参加するには予選を抜けなければならないが、それに参加するには最低でもAランク以上の実力を持っている者のみだという事だ。
その話を聞いた俺は、もしかしたらレベルを上げれば俺が大会に出場できるようになるのではないかと予想する。なのでその予想を試してみることにしたのである。俺は受付の人にお礼を言うとその場を離れる。
次に俺は冒険者ギルドに行ってみる事にした。俺はこの世界に飛ばされてからすぐにこの王都にやって来た。その為俺は王都にどんなものがあるのかという事に全くと言っていいほど知識を持っていないのだ。なのでこの機会に王都の冒険者登録を行っておけばこれからの旅に役立てられるのではないかと考えての行動でもあった。そして到着した俺はすぐに依頼掲示板を確認する。そこに貼り出されている依頼を見つめるのだが。どうも俺の目には良いように思える内容の物は見つけられなかった。そんな中俺はふとある張り紙を見つける。
『護衛募集! 報酬は1日あたり小銀貨10枚! この国を牛耳る商会の主が、大事な娘様が攫われてしまい。今から数日の間娘の救出に協力してもらいたいとのことです。どうかご協力ください。詳細はこの場で話す事はできませんが、詳しい内容は後日こちらに来られた際に詳しくお話しします。また、報酬に関しても期待していてもらって構いません』
その文章を読んで俺は迷うことになる。正直俺はあまり戦闘には自信がない。それに相手は誘拐犯でおそらく犯罪者なのだ。いくら金払いが良くても犯罪の片棒を担ぐような真似はあまりやりたくないなと。だけど俺はその張り紙の内容が頭から離れなかったのである。俺はその事を不思議に思いながらその事を考えて歩き出すと。目の前で困っている人を発見する。その人物は若い女の子のようだが、見た目がとてもかわいらしい女性であった。そんな彼女は何かに怯えた様子で辺りを警戒しており、そして誰もいない事を確認してから俺のところへやってきたのである。
「お願い、助けてください!」彼女は涙目になりながらそう叫ぶ。だが、彼女の格好を見た瞬間。俺の思考は止まってしまったのである。なぜなら、彼女は薄汚れたローブしか身に纏っておらず。肌が見えている箇所は、無数の傷痕があり。しかも服に隠れていない場所にまで火傷の跡がある。さらによく見るとその顔は、酷い虐待を受けていたようで腫れあがってしまっていたのだ。それなのに、何故か彼女は美しいままの状態を維持しており。普通であれば不自然に見えるその容姿も、今のこの状況だと逆に美しく見えるのは不思議な感じだった。俺はその姿を見て心の底が震えるような衝撃を受け、彼女を助けることを決める。そしてその事を告げると彼女は心から嬉しそうな笑顔を見せた。俺はその姿を見て守らないといけないなと思ったのだ。だってこんな表情を見せられてしまえば当然のことだろ?俺の心は既に決まっており、もう迷いは無かったのだから。
俺は彼女に自己紹介を行い、その少女が誰なのか教えてもらう事にした。その結果俺は驚く事になる。この国の第一王女であるリリアナという名前を持つ人なんだそうだ。どうしてそのような高貴な身分の方々に知り合いが出来たのかといえば。そのリリアナが俺のことを召喚したのが理由らしい。なんでも召喚の儀式が上手くいかなかった為。その儀式に参加した王族の一人が怪我をしてしまったんだとか。俺はその話を聞いたときに思わず顔を手で覆う事になった。どうも、それは間違いなく俺が原因だと思うから。本当に申し訳ない気持ちになってしまって。そして俺は彼女が落ち着くまでの間一緒にいてあげようと決め、俺達はまだこの王都を散策してみたいと口にし。この子の案に乗り町を見て回ることになったのである。
俺が王都の案内を頼むと彼女は喜んで案内を始めた。その最中、彼女は俺に対して色々な事を教えてくれる。その言葉の一つひとつはとても優しくて温かいものだったのだ。だからこそ俺はその事に驚いていたのである。何故なら俺はこの世界に転移する前までは平凡な学生でしかなかったんだぞ。それがいきなり姫とか言われても全然実感がわかないんだよな。だからか知らないけど。俺としては姫というよりは友人感覚でしか接していないのだ。
だが俺達の会話の中には、やはりどうしても隠しきれない単語が存在してくるわけだ。そしてそれを目にする度に彼女は寂しげな表情を見せていたのである。だからだろうか、彼女は時折俺に抱きついてきたりしてきた。どうも不安になってしまうと俺を頼る事にしたそうだ。まぁそれだけ信頼されているということでもあるから。俺は素直に受け入れることにしたのだ。そして、俺は彼女と仲良くなるためにあることを決行しようと考えたのである。俺はまずは彼女を抱きしめ返し、頭を撫でながら安心させるように努めたのだ。だがそこで思わぬ出来事が起きてしまう。突然俺の頭に誰かの記憶が流れ込むようにして入ってくる。どうやら俺に宿っていた記憶は。ロレンスという青年と、ロナという女性がこの世界へやって来る前の物だったのである。
その二人の女性は俺が今この国に滞在している原因である勇者と賢者と呼ばれる存在であったのだ。勇者は剣の師匠と出会い勇者として成長していき魔王を倒す旅に出るのだが。勇者であるにも関わらず彼は、自分の力で人々を守ることができない事に悩み苦しんでいた。そんなある日。彼は旅の途中で出会ったロレンスさんに出会い。彼の生き方と強さに惹かれ。二人はお互いを意識し始める。
そして彼らはロレンスさんの紹介で同じ村出身の仲間達と合流し、この世界を救いたいという願いから。三人はこの世界を救うために動き出す。この世界でも有名な魔法使いの女性。彼女は回復魔法の使い手であり、様々な薬を作れる薬師でもあるらしい。そしてこの人は俺の世界にいた時の幼馴染でもあった。そしてその仲間の男の娘さんは、剣の達人でありながら剣の技を磨き続けているらしく。俺と同じ世界からの転生者であるということがこの人達がロレンスさんと出会う前に分かってしまうのだ。その事でロレンスさんは、彼らに自分達の目的を話してくれて協力を求める。そしてロレンスさんがこの国の王様であることと、そしてこの世界が今危機にさらされていることを伝える。この世界を救う為に力を貸してほしいと懇願する。最初は断られるかと思われたロレンスさんの申し出だったが。結局はその申し入れを受けることにしたようだ。こうして四人の男女がこの国を守るために戦う事を決意してくれたのである。
だがそこで問題が持ち上がった。実は勇者さんは、この世界に飛ばされた時。まだ幼い少年だったらしいのだ。そんな状態で魔王と戦うなど無謀だという判断でロレンスさんは彼を鍛えることを決意する。彼はそれに従い、まずは基礎体力の向上の為にこの国の中で修行を開始するのだが。ここで俺はある問題が発生したことを知ることになる。その件は後に説明することにしよう。
それから勇者は順調に成長していく。その過程で賢者は彼と共に戦いたいと思うようになり、二人の間には恋心が生まれ始めていたのであった。そして、ある日のこと。この世界の平和は一人の男がこの国に訪れたことで破られる。その男は黒い髪に鋭い眼差しの男。名前はユウキと名乗っていたのである。
その男の圧倒的な存在感に圧倒された国王達は警戒を行う。そして勇者は、彼に戦いを挑みその圧倒的な実力差に絶望してしまう。そして彼がその気になれば自分を殺しこの国を支配することもできるだろうと理解できたのだ。だが、そこで救世主が現れた。この国に存在するもう一人の聖女様の登場である。その人は回復魔法を使うことができる。その力を行使できる彼女はユウキと戦いその圧倒的な実力を見せつけたのだった。結果ユウキは負けを認め降参したのである。
その事をきっかけにユウキと賢者と、勇者の三名は意気投合することになる。特に三名の中にあった壁を取り除いてくれたユウキに感謝するようになっていった。その後。勇者がこの世界での生活を続けることを決めた時にロレンが同行することに決まったのだが。そこに何故かこの国の第一王女であるリリアナが現れて強引に着いてきてしまったのである。
俺はその事実を聞いて驚愕してしまった。まさか、俺以外の人物がこの世界にやって来たことがあるなんて思わなかったからな。でもこれで疑問が全て解けたのだ。なんでこの国にやってきた勇者があんなにボロボロの状態で倒れていたのかって事が。俺は彼女の頭を軽くなでながら大丈夫だと声をかける。そしてその言葉を耳にした彼女は少し恥ずかしそうな顔を見せるのであった。そしてしばらく歩いて行くうちに俺達は城に到着する。どうも城に何かしらの用事があるようだった。そして門番に話をした瞬間、俺は驚きの表情を見せてしまう。だってこの国にはもう一人異世界から訪れた人物がいるからだ。その事を知った俺は内心とても興奮しているのだった。
城の客室に通された俺はその部屋に入るなりベッドの上に倒れこんでしまう。なぜなら、この部屋にたどり着いた時には、もう疲れ果てて動けなかったからなのだ。しかし俺はなんとか起き上がりその部屋を調べ始めた。だがその時俺はあるものを見つけて驚いてしまったのだ。その本を手に取った途端。頭の中に映像が流れ込んでくるのを感じたからである。俺はそれを見てすぐに確信した。それは間違いなくこの部屋の元の持ち主が体験した出来事の映像なのだと。
「あの時は凄かったよな」そう言ってその男は楽しそうな笑顔を浮かべる。俺はその笑顔を見て一瞬見惚れてしまい。その事をごまかすように口を開く。
「ああ、確かにあれはすごかったよな。でもさ、俺はもっと凄いことを見たんだぜ?」俺は自慢げにそう言う。するとその言葉を聞いたそいつの顔は悔しそうな表情へと変わっていったのである。そんなやり取りを続けながら俺は目の前の光景を見続けていた。それはまさに奇跡と呼べるものであった。なぜならそこにはこの世界で出会った大切な人達が笑顔を見せているから。そしてこの幸せな空間を作り出しているのは俺の大事な親友であるロレンスがこの場にいるからなんだと分かったのである。そして、俺はその映像を眺めながら幸せを感じている自分に気が付いていく。だけど、それと同時に胸が締め付けられるかのような痛みが走るようになったのだ。その理由は俺にも分からなかった。だが、何故か心の中では悲しみに似た感情を抱いているのは確かである。一体何故だろうな。自分でもよくわからないんだが。この感情が何なのかを知る必要があるのかもしれない。俺がその答えを探すことを決意しかけたときだった。急にある場所の場面が変化してしまう。その場所での出来事を見て俺の体は勝手に震え始めていく。そして俺の視界には信じがたいものが映し出されていたのである。その映像とは、俺とリリアナと、この世界に来てしまった勇者であるロナの姿が映っているものなのである。どうもこの場所で何が起こったのか。そして何故このような事態になっているのかが俺の記憶に流れ込んできたのでわかったのである。その記憶によれば。どうも俺達が王城へ来る前に起きた出来事らしいのだ。俺はその事を知り動揺を隠せなくなっていた。そしてその衝撃的内容とは。
「えっとですね。ロナさんにお願いがありまして」ロレンスさんが困ったような顔をして俺に頼みごとを口にし始めたのだ。俺は嫌々ながらその内容を聞き続ける事にすると、その話の内容を理解できてしまう。その結果、俺としては納得がいかないことが分かり、ロレンスさんのお願いを受け入れないことにする。
俺はこの世界に来るまで。普通の男子高校生をやっていたんだ。それが今では姫と呼ばれる少女の護衛役になってしまった。それだけで十分大変な状況に置かれていると言えるだろ?なのに、さらに勇者と呼ばれる存在に召喚されて、挙句に一緒に旅をしてこいと言われたんだよな。しかもだ。いきなり剣の訓練を始められる事になったのだ。この剣というのはこの世界には存在しない技術なんだとかで。俺の師匠となった人物はかなり腕利きの剣士であり。その人に教えてもらえる事を素直に喜んだのだが。どうも師匠が弟子に行う特訓というのが俺には全く合っていないようで。俺は何度も吐血してしまい意識を失ってしまい。それでも無理矢理訓練に付き合わされたのだ。だが、そんな地獄のような時間を乗り越えたからこそ今があると思っている。だからこそ師匠との修行が無駄ではなかったのだと思うことにしたのである。それに、師匠の厳しい指導があったおかげで。俺は自分の実力を上げることが出来た。つまり師匠のおかげで今の俺がここいるわけであって。
この世界の人々には感謝しているわけである。だからと言って師匠の弟子としてこの世界の人々を救わないといけないかと言われると微妙なところではある。だが俺としても、自分の力が及ぶ範囲であればこの国の為に頑張ろうとは思えたのである。そして俺の力は師匠が鍛え上げてくれたおかげあって。それなりに強くなっていると自負している。それを証明する為に、先ほどから俺は魔物を相手に戦っていたのだが、やはりと言うべきか。俺の力はまだまだ弱いようだ。でも俺は諦めず必死になって修行を続けることを決意する。そのせいもあって。俺はこの国を守れるぐらいの力を得られたらとは思い始めているのである。
ただこの国には問題が存在しているのだ。それを解決しないことには俺も安心して生活することができないのは事実なのである。この国の問題。それは俺がここに呼ばれた理由であり、この国の第一王女であるロリアのわがままが原因なのである。俺とロナはなぜかお互いを異性だと意識していて。恋人になったらどうなるんだろうかとか、キスしたら気持ち良さそうだとか、いろいろと考えていると。どうも恥ずかしくなって何も言えなくなってしまう。
俺はこの国の第二王子であるルクス。その護衛役を任されてしまってかなり困り気味であった。だが、こんな俺の態度を見てもこの国の第一王女であるロリアさんは、優しく接してくれる上に、その綺麗な瞳を潤ませて俺を見つめてくる。俺はその顔を見るとドキッと心臓が高鳴ってしまうのだが、これは恋ではないはずだと心に言い聞かせて。何とか落ち着こうとしているのである。正直なところ、この国に居座る理由はない。
なので早々に国を出て行きたかったのだが、ロリアさんの願いでしばらく滞在するはめになっていたのだ。ただ、この城に滞在している間に俺はとある問題を解決することに成功している。俺は、この城の中で起きている問題を知っていたので。それを解消することで城の人々に好感を持ってもらえるように行動を開始したのである。
まず手を付けたのは料理だ。これに関してだが俺は師匠から様々な料理を教わっている。そこでこの世界の人達がどのような物を好んで食べるのかを確認していたのである。結果、肉料理が好きだと判明したので、俺は城の料理人達を集めて料理を作り、試食させることに決めた。そこで俺が作った料理を食べるなり、彼らは涙を流しながら喜んでくれる。その様子はとても嬉しくて俺は感動してしまった。それから俺は料理人達にいろいろな食材について説明をし、どんな調理方法を行うべきなのかを話していくと、彼等は驚く程の速度で習得していったのだった。そしてその結果俺はこの国に住む人々の口に合うような食事を作ることに成功したのであった。
だがこれで全てが終わったわけではなかった。なぜなら、その美味しい食事の噂を聞きつけてやってきた人がこの城内にはたくさん存在していたからである。だがここで問題が発生したのだ。それは俺と、第一王女であるロリア様の仲が良く思われていないという事が分かってしまったことである。
この原因はおそらくロリア様が俺の事を好きなのではないかという噂が流れたことが原因であった。俺自身はその気が全く無い。俺の心は、あのロレンの事が忘れられないでいる。
ロレン。俺が初めて好きになった人。だけどこの世界では男と女が結ばれることは普通じゃないみたいで、その常識がどうしても頭に引っ掛かって。ロレンへの告白ができないでいた。この世界で俺だけが異分子で、この世界の住人の輪に入り込もうとすると迷惑をかけてしまいそうな気がしていたからだ。俺はこのままロレアンと共にこの国を離れて行こうかと考え始めることになる。しかしそう思った時だ。突然この国の兵士達が現れて俺を捕まえようとしてくるのだった。
その瞬間俺は驚きの声を上げてしまう。なぜ俺がそんな目に会わなければならないのか全く理解できなかったからである。しかもだ。この兵士達の中には俺の友人もいた。彼は兵士になりこの城を守ることを選択した人間の一人だったのだ。それを知った瞬間俺は激しい怒りを覚えたのだった。そして同時に、どうして自分がこのような状況に追い込まれているのかが分からなくなり困惑していると、兵士達が襲い掛かってきた。
だがその攻撃はあっさり避けられてしまい、兵士達は驚いた表情を見せてしまう。
俺はその一瞬を逃さず全力で走り出す。そして、この国から脱出する為に、門番に見つかる事が無いような場所に辿り着くと、魔法を使う事にしたのであった。俺が得意とする風魔法。その中でも威力のある魔法を、この城に放ち門を吹き飛ばすことに成功する。そして城が崩壊する中、俺は城から逃げ出していったのである。
城から脱出した俺はその後森に隠れ住むことにした。幸いにも金品を盗み出していたのでしばらくはお金の心配をする必要はないだろうと思った。でもこれからどうしようかなと思っている時に俺の前にあの人達が現れたのだ。
「久しぶりね。私達がいなくなった後は寂しかった?」そんなことを言いながら俺に声をかけてきた女性がいたのである。彼女の名前はユノと言い。俺がこの世界で初めて出会った人物であり。俺の師匠でもある。
この人は俺に戦い方を教えてくれて。この世界で生き抜くために必要な技術を惜しみなく教えてくれた人である。その技術のおかげで俺は師匠に出会うまでは生きることに余裕ができていたんだ。そのお陰で俺はこの世界でもそこそこ強いと思うんだけど。この人はそんな俺よりも遥かに強くて。しかも師匠にはこの世界を滅ぼせる力もあると言われてしまっている。だから師匠と一緒に行動するだけで俺はこの世界を滅ぼす事が出来るのかもしれないんだよな。まぁ、さすがにこの人に頼んで俺の代わりにやってもらえばいいなんて思えないけど。師匠にはこの世界の行く末を見守りたいと言っていたのでその意見を尊重したいとは思っている。だからもし、本当に何かが起これば俺は迷わずこの人の下へ駆けつけるつもりである。
「ああそうだよ」師匠の言葉を聞いて、この人がこの世界に現れた意味を考えると俺の体が勝手に震えてしまう。だが俺は必死になって冷静になろうとしたのである。この震えは、恐怖からくるものなのか、それとも歓喜によるものか分からないが。俺は今目の前にいる人物のことを考えながら、師匠と言葉を交わすことにしたのだった。
俺達がこの異世界にやって来た理由はよくわからないが。俺がこの世界に呼ばれ、ロリア姫と婚約させられた理由はわかるんだ。その目的についてはなんとなく察している。それは俺の持つ勇者としての力を使って世界を支配しようとしてたんじゃないかと俺は思ってる。つまり、俺を利用しようとしている連中の策略にはまり、この世界にやって来てしまったということなのだ。
その事に気がついたのは、この世界に来た初日のことである。その日は疲れ切っていたこともあって、そのままベッドの上で寝たんだよな。目が覚めたら俺の傍に一人の女の子がいて、俺を看病してくれている最中であった。俺はその少女が誰なのかを確認すると。どうもその少女は、俺に好意を寄せているらしく。そんな少女を、俺はどう扱えば良いかわからなかったのである。だが、その日から数日経って、ロリア王女とその姉である第1皇女と、この世界を支配するために送り出された使者の3人と俺は遭遇したのであった。俺はその人達を見て。ロリア王女のことを好きだと思ってしまい、それが相手にばれて俺はロリアさんと強制的に結婚させられそうになったのである。そして俺とロリアさんが無理やり結ばれようとしたその時。突如、この国にある教会が襲撃され、俺達4人をさらっていこうとした人物が現れたのだ。その人物は黒装束に身を包み、素顔をフードを深くかぶっていて確認する事が出来ないのだが、それでもかなりの美人だと分かる程美しい女性であった。
その女性がロリアさん達を連れ去ろうとするのを見た俺が、咄嵯の判断でその女とぶつかりロリアさんを助けようとするも、相手の方が強く。あっけなく捕まってしまっていたのである。それからしばらく牢屋のような場所に入れられることになった俺は、自分の置かれた状況を改めて考えてみて絶望していた。だがそこに師匠が現れることになる。俺は師匠の顔を見るなり安堵してしまい、涙をこぼしてしまう。
それから俺は、自分の身に起こった出来事を説明しつつ、自分の無力さを嘆いていたのだ。
俺の説明を聞いた師匠は、俺を責めるような真似はせず、逆に褒めてくれたのである。それから俺はしばらくの間、この世界の情勢をある程度把握するために行動を開始した。それはこの世界の人々に聞き耳を立てていたのだ。この世界は大きく分けて3つの勢力が存在していることが分かった。
1つは、ロリアさんの率いる、国を平和に導く為の人達が集まった集団。
2つ目は、他国から侵略を受けている人達の集まり。
最後に、国のトップに立ち人々を奴隷のように扱う支配者達の集う国の者達。これらの国々がある中でロリアさんが率いる組織が一番力を蓄えており、その勢力を増そうと暗躍をしているのは間違いないと思っていたのである。そこで俺はまず手近にいた人々と話をしてみたのだが誰も信じてはくれなかったのである。なので仕方がないので、少し離れた所まで行き情報収集を行ったのだがそこで問題が起こったのだ。
俺に近づいてきたロレアさんの姉のリアナと名乗る人物が突然襲いかかってきたのだ。その理由は不明であり、彼女は俺を殺そうとしていたように見えたが結局何もせずに去っていった。だが俺はロナに守られ命を失うことは無かったのである。その事が分かってからはとりあえず警戒を解いているが、ロレアの姉の行動だけは気になるところがあったな。ただロレアの姉にはロリアの婚約者という情報を伝えた途端、急に俺に対する興味をなくしてどこかに行ってしまったんだよな。何が狙いなのかまったく分からない相手ではあった。ただ俺にとっての最大の不安要素が取り除かれたことで安心してしまった俺は、その後再び眠りにつくことになった。
そして目覚めたのは夜中だ。それからこの国の兵士達に見つからずに城を脱出できるかどうかを確認してから行動をすることにしたのであった。その結果俺はこの城からの脱出に成功して。この国を出ることに成功したのだった。
この国を出た俺は森の中に入り込んでいったのだ。そこで数日間過ごしながら今後の身の振り方を考えていた。だがここでまた問題が起こっていることが発覚した。その問題というのは。この国に召喚された俺の友人の一人であるユイという人物についてである。
彼はロリア王女の護衛をしていたのであるが、この国の国王にその力を認められて王女の騎士となったらしいのだ。そのせいで俺の事を快く思っていなかったらしいが。それはまだ理解できる。しかしなぜロリア姫の方はユイを気に入っているのかという疑問が出てくる。その事に思い当たった時ふと俺の心の中に嫌な考えが浮かんでしまう。俺はその可能性を否定するために急いでロリア姫がいるであろう城の様子を見に向かった。
ロリア城に向かうとそこはもうすでに崩壊しており、城の中の人間は一人残らず消えていたのである。そして俺は、城の崩壊に巻き込まれながらもロリアの姿をなんとか発見することに成功した。
俺は、ロリアを抱きかかえる。その体は小さくて華奢な体付きをしていたが、何故か温もりを感じたのであった。だがその直後だ。突然この世界の住人ではない気配を感じ取った俺は、即座に振り返るとそこにはユイナと名乗ったロリアと同じ顔の人物が俺に向かって魔法を行使してきたのだ。その魔法を食らった瞬間。全身に強い衝撃を受けるとともに。激しい激痛が俺を襲う。だがそれで俺の意識が失われることはなかった。そしてそのお陰で俺は自分の状態を理解することができたのである。
どうやらとてつもないダメージを負った事で、俺は一時的にではあるが死ぬ寸前の状態になってしまったようであった。おそらくあの攻撃を受けていなかったとしても長くはなかったのかもしれないが。
この世界で死んだ場合俺は本当に死んでしまう可能性が高いだろう。だからこそこの世界を救うために俺は生き抜くことを決心するのと同時に。その目的のためにこの世界で生き延びることを選択したのである。そのためにはまず、俺の命を奪う事を目的としたロザリーという女性に勝つ事を考えたのである。だがその方法は一つしか思いつくことができなかった。
それは、魔法を使って彼女の魔法をかき消しながら近づくことだ。その為に俺はロレアに頼み込んで俺に魔法を教えて欲しいと頼んだのである。ロリアには俺の考えは筒抜けのようで「私の弟子になれば死は免れないけどいいのね?」と脅すような感じではあったがそう言われてしまったが俺は構わなかったのである。そして、俺がこの世界で初めて魔法を習得することになる。その魔法の名は風神。風を司る女神の祝福を受けし者に与えられる魔法で、風を自由に操る事ができるのである。だが、ロリアの教え方はかなりスパルタなものであった。俺はすぐにこの世界に存在する属性を扱えるようになるが、それでもまだまだ未熟だということを何度も叩き込まれる日々が続いたのである。そしてその訓練は2年間続きようやくこのロリアから合格を言い渡されたのだ。だが、この2年間は辛い時間であったがそれ以上に充実していた。俺はその期間の間にロリアのことをロリア師匠と呼び、弟子入りしてからは毎日ロリアの下で厳しい修行に励んだのである。だが、俺の成長速度は尋常ではなくあっという間に師匠に追いついてみせたのだ。すると、そんな俺を見ていたロレアが俺に対して嫉妬するような目を向けてくるようになったのである。俺はそれに気がつかないフリをしながらこの世界の為に頑張ることを決意していたのであった。
俺が師匠に弟子入りして10年の歳月が流れた頃である。この世界に勇者が現れた。その男の名前は、ヒデオと言う名だそうだ。この世界の人族は、魔族に追い詰められていて。このままではこの世界は滅ぼされてしまうと恐れられていたのだが、そんな中現れた勇者が彼である。俺は彼がどのような人物なのか知りたくて、師匠の手伝いを名目にして彼の元を訪ねてみた。だがその時に彼はなぜか俺に攻撃を仕掛けて来たのであった。俺はいきなりの攻撃に驚いてしまったが、冷静さを取り戻すことで対処する事ができたのである。その事からこの人はもしかしたら俺がこの世界の人間でないことに勘づいているのかと思い始めたのだ。なので彼に俺が異世界人であるということを明かしてみるとあっさりと信じてくれたようであった。
そしてヒデオとの話が終わった後に師匠の元に帰ると、師匠と話をしている女性がいたのだ。その女性の外見を見た瞬間。俺はこの人がこの世界の創造主ではないかと予想していたのである。だから彼女に対しては失礼な態度をとらないようにしようと決めていたんだけどやっぱりそんな必要は全くなかったようだ。彼女は見た目通り、とても優しくて良い人で、俺はロリアに言われた通りに自己紹介をしようとしたところで、彼女が先に話しかけてきたのだ。
「はじめまして、私はこの世界を管理する神様の一人でアスタって言います」なんて言うものだから、俺は驚きを隠せなかったよ。でも考えてみれば納得できなくもなかったのだ。何故なら、俺はこの世界の人間では絶対に持ちえないはずの力を有していたからね。その力こそが風神の力である。つまりは俺は、風の精霊と契約を結んだことになるのである。
そしてその力のお陰で俺は、普通の人間が習得するのに数十年はかかるといわれている風魔法の最上級に位置する【神風】をマスターできたのであった。これは風を司る最強の魔法だと言われており。これを使えるのは世界でたったの三人と言われているのだ。そして俺は、ロリアにそのことを伝えるために、ロリアの元に駆けつける。ロリアはすぐに、自分の力で確認をすると言ってくれたので俺もそれに従うことにしたのである。それからしばらくしてロリアは戻ってきたのである。彼女は自分が管理していた世界が崩壊しているという事実を受け入れられず絶望していたが、そこにいる俺を見て安心したのか涙を流すのであった。それから、俺の事を抱きしめてくれた彼女に、俺はロザリーという女の事を伝えておくことにする。その話を聞いてからロリアの表情が曇りだしたが俺は気づかない振りをしてこの国の問題を解決するために行動するのであった。
この国では現在奴隷として扱われている人々が沢山存在していた。だから俺達はこの国の奴隷解放に向けて行動を起こすことを決めたのである。俺はまずこの国の王に、奴隷制度は廃止すべきだと言いに行ったのであるが、その時にこの国はロリアによって支配されているという話を聞かされて驚愕してしまう。だがそれは嘘ではなさそうで、王は確かに自分の意思を持っていないかのように見えたのだ。なのでこの国の王はもうこの国に存在している意味はないと判断することが出来たのである。なのでまずはロレアの所へ行ってみる事に決めたのであった。そこでどんな話し合いが行われる事になるか分からないのでロレアを護るために俺とロレアが一緒に向かう事になったのである。
俺は今王城の応接室にロレアと二人きりになっていた。俺はこの場を仕切っているのがロレアだと知る。だがそこで突然ロレアは俺の事が好きになったと言い出したのである。そして俺と婚約をしたいだと彼女は言って来たが、それを俺の婚約者であるユイが阻止したのである。そしてロレアの事を敵として認識するようにまでなっていしまった。俺は二人の仲を取り持つために、俺は俺の事を慕ってくれていたロリアの婚約者にロレアの事を気に入らないという感情を捨ててロリアの味方になるよう頼んでみるが無駄だった。どうしたらいいのか困ってしまったが。とりあえずは、ユイの事は無視することにして今はロレアと二人で話をする事にしたのであった。
そして話をしているうちに俺はこの世界では一夫多妻制という制度があることを知る。そして俺はこの国を俺の力で乗っ取ることに決めた。そのためにロリアにも協力してもらうことにしたのである。
そしてその準備に取り掛かる為に、この国にいる奴隷達の救出を行うことになった。俺はその作戦を実行する前に一度ロレアと一緒にこの国で生活している人達の状況を知ろうと街の様子を見て回る事にした。だがそこで見た光景に思わず愕然としてしまった。街での生活環境はあまりにも酷いものだったからだ。この街で生活している人の半数以上が病気で寝込んでおりそのせいでまともに動けず働かされてはいないが食事すら与えてもらえていないという悲惨な状態だったのである。その事を知った俺はロレアと相談した結果。まずはこの国の現状をなんとかする必要があると判断し。奴隷達を解放するのを一旦保留にするのであった。その事に俺はほっと安堵する。ロレアにこれ以上負担をかけたくないと考えていたからである。俺がそんな事を考えている間も、ロレアとユイナの間で口論が続いていたのである。
そしてロザリーという女性が突然ロリアの前に現れて、いきなり襲ってきたという事らしいので俺は急いでその場所に向かってみると、ロザリーはもう既に死んでしまっていて俺はロリアと共に彼女の遺体を弔ったのであった。そしてそのあと俺はロリアの口から驚くべき言葉が発せられるのである。なんとその言葉は俺に対してロザリーを殺した罪を許して欲しいという内容のものなのだ。俺はその言葉をすぐに理解できなかった。何故俺にロザリーの事でロリアが謝る必要があるんだろう。その答えは彼女の口からすぐに告げられたのであった。どうやら俺がこの世界でこの世界の人族ではないことには薄々感づいていたようで。それが原因で俺を殺そうと考えたという。俺はそれに納得する事が出来なかったのである。だが、そんな事を思ってしまうくらい彼女は追い詰められていたという事も理解できる為、俺の怒りを静めることにしたのであった。
だがその直後である。突如この世界の住人ではない気配を感じ取った俺はすぐさま振り返るとそこには先ほど倒したはずの男が立っていたのである。その男からはとてつもない殺気が溢れ出していたので俺は咄嵯の判断で男の攻撃を防ぐことができた。そしてその男の容姿はまるで死神のように見える男であった。俺はこいつがこの世界にやって来た魔王だということに気づくと。そいつに戦いを挑むことにする。するとその男は笑いながら魔法を乱射してきたのであった。そして魔法が直撃しないように避け続ける。しかし、いつまでも避け続けることなんて出来るはずがなく俺はダメージを受け始めてしまったのである。そして俺はロリアを後ろに下げてから攻撃を開始するがその魔法が当たることはなかったのである。そして俺の攻撃を避け続けていたその男はいきなり攻撃を仕掛けてきて俺にダメージを与え続けたのであった。その攻撃により、俺が立っているのが難しくなるほどダメージを受けてしまう。それでも何とかして耐えていた俺だったが、ついに倒れてしまう。その隙を逃すこと無くその男はとどめを刺そうとしていたのである。だが俺はそんな事をさせまいと全力を振り絞って立ち上がり。剣を突き立てる。だがそれが相手の胸に突き立つことは無かったのである。俺はそのまま吹き飛ばされて地面に叩きつけられてしまう。
「よくやった。これでお前を殺す事ができるな」
そう言い放ったのは今まで姿を隠していやロリアの影の中に潜んでいたであろう魔導師だった。彼はロリアの事が邪魔に思っていたらしく、殺すつもりでここまで着いてきていたのだそうだ。俺は必死に起き上ろうとするものの体に激痛が走り力が入らなかった。その時だ、俺は背後から何者かに襲われるような感覚を覚えるが後ろを確認する前に意識を失ってしまう事になってしまったのである。
俺は気がつけば見知らぬ部屋に横たわっていたのであった。そこはベッドに、テーブルに椅子などが置かれただけの簡素な作りの部屋だ。
すると、そこに一人の女性が現れて俺の体を心配するような声色で俺に話しかけてくるのである。俺は一体どういう状況なのか全く把握できていなかったのだが、その女性の話しによると、俺はあの後ロリアがこの女性を連れて来て看病をしてくれていたのだという事を聞いたのであった。
それから、この世界では女性は男性が守る存在で。その男性を治療できる回復魔法の使い手は希少だということを教えてもらうのである。なので俺の体はまだ万全ではなく安静にしなければならないと言われたのだ。なので俺にはこの女性とこの部屋を貸してもらって、ロリアに俺の事をよろしくお願いしますと言うしかなかったのである。
その時に俺は自分がどうしてここにいるのかを思い出した。俺がこの世界に来てからどれ程の時間が経過しているのだろうかと考えたのである。もしそれほど経っていないなら俺の知っている人がまだこの国に生きている可能性は高いはずだ。そう考えた俺は、この世界の人たちから情報を集めようと行動を開始するのであった。俺はこの国の王に会うためにロレアを呼んでもらい、この国の状況を聞く事にしたのであった。そこで分かったことは。この国で現在奴隷として扱われているのは大半を占める獣人と人間の混血種であるという。そして奴隷として扱われて苦しんでいるのは人間でも同じであり。彼らを救う手段は無いかと俺は必死になって探すことにする。だがその方法を俺は見つけられなかったのだ。そんな中俺はこの国が奴隷にされている原因はこの国を支配しているロリアに有るのでないかと疑うようになっていたのである。だから、この国から奴隷制度を廃止するべきだと思った俺は。それをこの国の王に進言することにしたのである。
だが俺の言葉が聞き入れられることは無かった上に。俺を殺そうとまで考え始める始末。この国の王は、この国の王としては正しい行いをしていたのかもしれないが人としては完全に腐り果ててしまっているようであった。その事を確認した俺は。奴隷を解放し、その者たちを保護すれば奴隷扱いされていた人々の生活は良くなり。そして国も発展すると、この世界の人々に伝える事を決めたのであった。その言葉がどれだけこの国に影響を与えられるかは分からないがやってみるしかないと思った俺は。この国にある奴隷達が住むという地区へと足を運んだのである。
この国に存在する奴隷制度というのは国が管理する施設にて奴隷達は生活を営んでいいる。この国はロリアによって管理されており。王都以外は全てロレアの支配下に置かれていたのであった。だから、ロレアはこの国の管理を全てロレアに任せて欲しいと言い出したのである。俺はこの国に奴隷制度が存在する理由を尋ねると。それはかつてこの国を支配していた魔王を倒した時に、その魔王に仕えていた家臣たちの一人が。魔王の力を奪い取り自らの力としようとしたらしいのだ。その結果、ロザリーは暴走しこの国の民に呪いをかけて自分の配下としたのだという。ロザリーが暴れたことで国は荒れ狂い多くの人が死に追いやられてしまったのだという。俺はそんな話を聞き。どうにかしなければと考えるが現状ではとても俺の力で解決できるようなことではないという事に気がついたのである。そしてロレアと話し合いをした俺は彼女からある提案を受けるのであった。その方法は奴隷として生きることを諦めてしまった人々が、奴隷としての扱いに耐えられなくなってしまった人達が逃げ出した先の国で暮らしやすいようにする為に俺に協力してもらいたいというものだった。俺もその意見にとても賛成だったのでそれを受け入れたのである。
ロリアと話し合いを終えたあと。俺は、俺達と行動を共にしたいと言っている人達を集めて、彼らの受け入れ態勢を整えることにしたのであった。その中には俺の仲間である、ユウキとカグヤ、コハクの姿もあった。そして俺達はロリアに案内されてこの国の支配する区域に向かうのであった。
俺がロレアに連れられるままに付いて行くと。そこには大きな建物が建っておりそこの最上階に連れて行かれたのである。そこにはロザリーとその部下達がいた。その建物の内部を見て回り。この城がこの国の王と謁見をする為の場所で。この場所の警護を行う者達の住居や、この城の見回りの警備を行う者達の住まいなどが作られていた。そしてこの国の政治を担う者達は地下にある牢屋で奴隷の様に働かされるのだという事を知らされてしまうのである。そしてこの城をこの国の王族であるロザリーが支配するようにロレアが指示を出しているということも教えてくれたのであった。その事について俺はロレアに尋ねてみることにしたのである。するとどうやらこの国の王がこの城に住む事を認めてくれず。ロレアも無理やり自分の物にすることができなかったという。その事に少しだけ安心した俺であったが、その話を聞いた俺に対してロレアはその事について説明してくれたのである。この城には元々このロレアの父親が住んでいたという事だ。だが、ある日を境に突然その人は姿を消してしまったらしい。その理由をロレアは知る由もないらしいが。何か嫌な予感がしているという。俺もロレアのその気持ちはよく分かる気がした。
その後、俺は仲間と共にこれからの事を考えるため一旦解散することにして俺は宿に戻ることにして。そして翌朝。ロザリーの部下に拘束されてしまったのであった。どうやら俺達の話を立ち聞きしていたようで、俺たちに危害を加えるつもりはなかったのだが。その行動に驚いてしまったロザリーの逆鱗に触れてしまい殺されかけたのであった。俺は必死に抵抗するとなんとかして逃げることに成功し、逃げ切った先でロレアと出会い、彼女を説得することに成功した。
だがその直後、ロザリーはまた姿を現して俺を殺しに来ると。ロリアはそんなロザリーを倒すべく動き出すのだった。それを知った俺は急いで二人に合流する事にしたのである。二人は俺の話を聞いてくれて協力を申し出てくれたので心強かった。そんな時だロゼリアの様子がおかしくなって、俺を殺そうとしてくるのだ。その時だ、なんとこの国の兵士がいきなり襲って来て、俺は身を守る為に剣を手に取ってしまったのである。するとなんと、俺が持っている武器から魔力が溢れ出して俺の体が輝き始めたのだ。
俺の体はどんどん大きくなり、その変化にロリアは自分の命を懸ける事になってしまったが。俺はその力をコントロールする事に成功し。ロリアを助ける事ができた。俺はロリアを助けてから兵士を気絶させるのと同時にロゼリアの体を縛ったのである。そして俺達は城に向かって移動を始めた。その道中で兵士達に襲われてしまう。しかしロリアの能力によりその兵士たちの体を縛り上げていったのであった。俺はこの機会を利用して城内にいる人達を救出することを決める。そして俺はその作戦を皆に話してから行動に移る。まず俺とロゼリア、そしてロリアが一緒に行動する事になったのである。
俺達がまず向かったのは奴隷となっている人達がいるとされる建物だった。だがその建物は厳重な警備がされており俺達は近づく事すらできなかったのである。仕方なく俺達は他の建物の中に入っていったのだが。そこには大勢の人間が囚われていた。しかもロレアに歯向かうような行動をすれば容赦なく殺されるというので。俺達も下手に動くことができなくなってしまい。ロザリーがいつどこで何を企んでいるのかを探るしかなくなってしまったのだ。そこで俺はある人物に協力を求める事に決めたのである。
その男とは俺が最初にこの世界に転生した時から世話になった人物であり、その男の事は、俺は先生と呼んでいる人物である。俺の師匠的な存在の人でこの国について詳しかったのだ。だから俺は彼の知恵を借りる為に彼に会いに行くことに決めたのである。
ロレアの提案で俺は今、ロリア、ロゼリア、ロレアと一緒に、俺が最初に来た場所に来ていたのだがその途中俺は自分の体に起こっている異変を感じ取ったのである。そして、俺の視界には何やら数値のようなものが現れていてそれが徐々に増えていっている気がするのである。そしてとうとう限界を超えた数値が出てきてしまいそうな感覚を覚えてしまったのであった。俺は慌てて自分のステータスを確認してみた。そこに現れた数字を見た俺は驚愕してしまう。なぜなら今まで見たこともない程の膨大な数値が並んでいたからである。これは間違いなくバグに違いないと思ってしまう程の数字が表示されているからだ。一体何故こんな事が起きているのか不思議に思ったのだが。
その答えは意外な形でわかることになる。
「あーやっと追いついたよ」
そう言いながらこちらに近づいてきたのはユウキであった。実は俺達はこの国に到着した時点ですでにユウキとは合流しており、彼には事情を話してある。それで彼はこの国の王様から依頼を引き受けてくれることになっていたのだ。そしてその依頼というのは、奴隷にされている人達を解放して。ロザリーを倒し、奴隷制度を廃止してロリアがこの国の支配者になるように働きかけるというものだった。そしてその作戦の為に俺達は奴隷が居るとされる建物へと向かっている最中なのだ。
その途中でユウキと合流することができたわけである。俺の仲間は全員揃っているわけではないがとりあえず全員がこの国に辿り着くことが出来ているので。ロレアの言っていた俺に協力すると言ってくれた仲間の何人かに俺の考えを話すことにする。もちろん俺のこの力について話すつもりはないが、奴隷の人たちを救いたいとみんなに説明して俺達は目的地へと向かうのであった。そしてその場所に着くと俺はロレア達を置いて建物の中に入るのである。そしてロリアが案内してくれた部屋に入ると俺は一人の男性に迎えられた。この人がロレアの師匠でこの国の王である。その人はとても優し気な雰囲気の老人であり、その見た目からはとても想像がつかないほどの強者だということが感じられた。その人に挨拶を済ませた後。俺はこの国の王に相談をする。俺のスキルについての事だ。俺はこの国に召喚された際になぜかこの世界にはないはずの俺の知識がインプットされており、俺の中には前世の俺が経験した出来事の記憶が残っていて、それが原因で俺は勇者としてこの国に召喚されたのではないかと考えていたのだ。だからその記憶を頼りに俺はこの国を変えようと決意したのだった。
その事を俺がこの国の王に話してみると、その王は驚いた表情を見せたがすぐに冷静さを取り戻したのであった。
俺はそんな王にロザリーの目的と俺の力が目覚めるに至った原因などを話した上でこれからロザリーと戦うことになるかもしれないと告げたのである。そして俺はその時にこの力を使ってもいいか?と尋ねてみたが。その前に一つだけ確認したい事があると言われて。俺はその言葉に従いその質問の内容を聞いたのである。その王からの問いかけに俺は正直に応えると王の態度が変わったので俺も緊張してしまった。その質問の内容は、もしもロレア達の命を俺が奪うようなことがあればどうするかというものだった。俺はこの世界の人間ではないので、たとえどんなにひどい目に合わされた相手でも、ロリア達を殺すことはできないだろうと答えると。王は俺の言葉に感動したらしく、是非俺に協力して欲しいとお願いしてきたのであった。
そして俺は仲間とロザリーとの決着をつけるために準備を整えるのであった。まずこの国を支配する立場にいる者達を仲間に加える必要がある。俺はまずロゼリアに頼みこの国の権力者が集まる建物があると聞いていたのでそこへ向かうことにしたのである。そして建物に到着するとその入口の扉は厳重に閉ざされていたが。その扉は簡単に開くことが出来た。
そして中に入り奥へ進んで行くとその先にある部屋にたどり着いた。そこには豪華な椅子に座って優雅にしている一人の少女の姿が見えたのであった。どうやらあの少女が、ロザリーと呼ばれている人間のようだ。彼女の方も俺の存在に気づいて俺が入ってくると警戒し始めた。すると彼女は俺に向かって攻撃魔法を放ってくるので俺はそれを無効化することにしたのだ。しかし、彼女が放った攻撃を俺はあっさりとかき消したのである。それを見て俺はこの国で強い権力を持っているのであろう彼女に自分の実力を示す事にしたのであった。
俺とこの国を支配している支配者が一対一の戦いをする事になった。そして俺の方はこの場にいないロゼリアに頼んで、ここに来る途中に助け出した奴隷たちを連れて来てもらったのである。俺の目的は彼女達に戦う力を身に着けてもらいたかったからだが、奴隷たちに戦いの訓練をするのは俺の本意ではないのだ。だからまずは彼らに武器を持たせて戦ってもらう事にしたのである。俺はその訓練が終わるのを待つことにし、その間俺は一人で、彼女を相手にするつもりだった。
だが俺はロゼリアから聞いた話を聞いて少し不安になっていたのである。それはこの国の国王の事だ。彼はもうすぐ死んでしまう運命だそうだ。そしてその話を聞く限りではロザリーという女はおそらくその国王に操られているのではないかとロゼリアは言うのである。その話を聞いた時俺は嫌な予感がしたのでロザリーを止めなければと思ったのだった。だがその前に、目の前の相手に勝つ必要があった。
その戦闘の前に俺はロゼリア達奴隷に自分の力で生み出した魔導具を手渡す。それは身体能力を大幅に向上させる効果を持つ装備だった。これを身につける事でロゼリア達の能力を飛躍的に上昇させる事が可能になるはずなのだ。しかしこれにはデメリットがあって、このアイテムを起動させている間は使用者が魔力を吸い取られ続けてしまうのだ。なので、あまり長時間使用する事はできないだろうと思っている。そのせいで俺は全力を出せない状態で相手をしなければならなかったのだ。しかもロザリーはこの国の王族だというから驚きだ。そんな相手がまさか俺のクラスメイトの一人で。しかも俺の初恋の女の子だったという事もあって。
俺は内心複雑な心境でロザリーと向かい合ったのである。
「あなたは何者ですか?」
「ただの通りすがりの一般人だよ」
俺がそう答えると彼女は一瞬目を丸くして、その後微笑みをうかべながら話しかけてきたのである。
「そのようね。通りがかりの一般市民にしては随分と腕が立ちそうですね」
「ありがとう」
褒められても別に嬉しくはなかったが。とりあえず俺はお礼を言う事にした。
「それで、私を倒すという目的は達したのですか?」
「いや、君を倒した後に、この国も変えるつもりだけど。それが一番早いから」「なるほど、やはり私の予想通りの答えを導き出しましたか。まぁ、この国がこのまま滅びるのは困るのですけど。だからといって私がこの国のトップに立つつもりはないですよ。だって、この国の支配者が誰なのか、あなたは知っているのでしょう?だとしたら私がここの支配者になっても仕方ないではありませんか。だからあなたが私を倒して、この国を変えて下さい。私はここであなたの事を待っていますよ」
その言い方に違和感を覚えながらも、とりあえず俺は目の前の相手の話に乗る事にしたのであった。
俺とロゼリア達は建物を出て外で待っているロリア達に合流する。そして俺の仲間が連れて来てきれた奴隷の人たちにはこの場で待機してもらうことにした。俺達はそのまま城へと向かうことにしたのである。
その途中で、俺は仲間たちと相談しながら今後の作戦を練っていくのであった。
まず俺達が狙うのは、ロザリーの身柄である。この国の支配者がロザリーに変わってしまえば。他の人間は逆らうことができないらしい。なのでロザリーがこの国の王になることに反対は出来ないと言っていた。だからこの国は今や、完全にロザリーの支配下に置かれており、俺がこの国の王になろうとすればロザリーと戦うことになる。そうなれば必然的に俺とロゼリア達との戦いになるだろうから。できればその前になんとかしなければならないのだ。俺は、奴隷たちの解放は俺にまかせて欲しいと言ってみたが、ロザリーを俺に任せてもらえないか交渉をしてみたいので、俺の作戦がうまくいくように、この国の兵士になって欲しいと頼むと。ロレア達はその話に乗り気だったのだ。その作戦を成功させるために、この国の王様の協力が必要になるためその話をすると快く承諾してくれたのであった。
城の門まで到着した俺達は兵士から歓迎されて城内に入る事ができたのだが、その時に、王様がどこに居るのか聞いてみると、どうせなら会いに行ってみればどうかと勧めてくれたので、俺は案内されるがままに王の居室へと連れて行かれたのである。その部屋はとても広かったのだがその中央に大きな椅子が置かれていて、その椅子には王が座っていたのであった。俺はそこで初めて彼の姿をしっかりと確認したのだが。なんとなく見たことがあるような顔だと思いじっと見つめてみると、そこにいたのは紛れもなく俺の前世の父親の姿であったのである。そして俺に話しかけてくる父親の姿を見た俺は思わず動揺してしまい固まってしまったのである。なぜ、父親がこの国に存在しているのかという疑問もあったが。それより前にまず。どうして自分が死んだ後の世界であるこの場所に俺の父親と母親がこの世界に生きているんだ?と不思議に思ったのである。そして、俺の両親はロレアとクロアのことを知っており、彼女達と親しげに話しだしたのであった。
「どうやら無事に辿り着くことができたようだね」と俺の父親は言ってきた。そしてこの国に召喚される前にあった事を全て説明してくれたのだ。この国に来て俺と再会した事をとても喜んでくれていたようだ。その事はとても嬉しかった。しかし問題はここからであった。俺の母親は父親の横に座って俺の方を見据えると突然こう告げてきたのである。
「それで、これからどうするつもりなの?私達に何か頼みたい事があるのではないですか?貴方がロゼちゃんに頼まれたのって多分この事でしょ?」と。その言葉で、俺の頭の中にあの夢の内容がフラッシュバックしてくるのを感じた。俺はその時ある事実を思い出したのだ。ロゼリアはロザリーの妹であり、そしてそのロザリーもまた俺と同じ世界の出身であるという事に。その事から、彼女が何を考えていたのか察した俺はこのタイミングでロザリーに会いに行くことに決める。だが俺の両親はこの国ではそれなりの地位についている人物のため、二人には俺に協力してもらう必要があると思ったのだ。
その協力を得るための手段としてまずロゼリアをこの国の支配から解いてあげたいという事と。この国から逃げ出したい人達のために、ロゼリアが用意してくれた魔導具を使って兵士達に化けてもらい、それをもってロザリーの元へ行こうと思っていることを両親に伝えると。その話を聞いて二人はすぐにロザリーの元へ向かうべきだと判断したようである。そして、この国の支配から逃げるための手伝いをしてくれと頼み込んできたので俺は引き受ける事にしたのであった。俺は自分の力だけで何とかできるとは思っていなかったし。その方法についても心当たりがあったためである。
それから数日の間俺は準備を整えていく事にした。そして、いよいよロザリーが待つ場所に向かうために、ロザリーが統治している街へ向かう事にしたのである。その移動中は兵士たちが襲ってくることはなかったが。街の中に入った途端大勢の兵士がこちらに向かって走ってきて。その手にはそれぞれの武器を持っており、俺に向かって攻撃を開始したのだ。だが当然俺の能力の前にその攻撃は無力と化してしまうのであった。俺はこの場にいる全員を眠らせることにして、その後この国を乗っ取ろうと企んでいる奴がいることを伝える事にしたのである。
この国を乗っ取ろうと考えている人間がロザリーだということを説明すると。兵士達はすぐにロザリアの方へ向かって走って行ってしまう。俺は慌ててそれを止めようとしたが、俺の言葉に耳を貸さずに行ってしまったのだ。俺は急いで追いかけようとしたのだがある事に気がついて立ち止まってしまい。その場に残ることにしたのである。
そして俺の方も準備を整えることにしたのである。ロザリアを味方に引き込む為の準備だ。彼女の事はロゼリアとクロアとリリィしか知らなかったので、俺はその三人を探しに行ったのだった。ロゼリア達は俺の事を見つけて、俺の方へ駆け寄って来てくれた。そしてその事にホッとしながら。彼女に事情を話す。するとロゼリア達は納得した表情を見せ、そして俺の計画を手伝う事に同意してくれたのである。ロゼリアが仲間になった事に喜びを感じながら。俺はロザリーがいると思われる王城へと向かったのだった。その道中で、俺が助け出した奴隷たちを連れて来てくれるようにロゼリア達に頼んでおいたのである。
俺は一人で城の中へと入って行きロゼリア達が奴隷たちを誘導しやすいようにと。城内の案内係を呼びつけて道を聞きだすことにする。そして、俺は玉座の間の前までたどり着くことが出来たのであった。そこには二人の男女が立っており俺の事を睨みつけてきている。
一人はロザリアで、もう一人は知らない人間だったが、俺の顔を見るなり目を大きく見開き驚愕の眼差しで俺のことを見てきたのである。そして次の瞬間ロザリアが声を荒げて俺に質問してきたのだ。「貴様!どうしてここに来た!」その反応から俺はこの二人が同一人物なのだと確信を持つことができたのである。そして俺はその事を告げると、ロザリアと俺の父親らしき男が驚きのあまり口を開けたまま呆然とする姿が目に入ってきた。
「どういうことだ。お前達は私が召喚した者達だろ?」その問いかけに俺は黙ったままだったがそれを答えと受け取ったロザリーは。再び大声で俺を怒鳴りつけるようにして叫ぶ「一体何をしたんだ!」その怒りの声は今まで聞いたことのない程大きなものであり、ロレアは恐怖の余り涙を浮かべてしまっていたのであった。
そして俺は自分がこの国の王になるつもりでこの国を支配しているロザリーを倒しにきたと告げると。彼女は冷静さを取り戻そうとしたのか大きく深呼吸した後、少し間を置いてからこう言い返して来たのである。それはまるで俺が自分を殺しにきたと言い放つようなもので、その発言を聞いた俺はその事に驚いてしまう。どうやら彼女は俺が前世の記憶を持っているという事も、自分が死んでからの世界でのことも全て把握していて、今の発言をしたのだと悟ったからだ。そして俺の方はと言うとそんな事よりも彼女がロザリーであることと俺の父親である事をロザリアが知った時。その顔がどのように変化するのかという事が心配になっていたのである。その事が原因でまた俺達と戦う事になるんじゃないかと思っていたのだが。意外にもその可能性は低いようだった。なぜなら。「まぁ、今は良いでしょう。とりあえず私の方から提案させてもらいますが。私は今ここで、貴方達を殺すつもりはありません。ですので貴方達はここで待機してもらおうかと思います」
ロザリアは俺達がここにやって来た目的は理解しているようで、ロザリアからの提案に対して俺は断る理由がなかった。ロゼリア達が人質となっているわけだし、下手に逆らうのは得策ではないと考えたからだった。俺達が素直に従うことを告げるとロザリアは嬉しそうに笑っていた。そして彼女は俺に近づいて来ると俺に顔を近づけてきてきて。突然キスをしてくる。それも舌を入れてきていたので俺は驚いたのだが。どうせならと思い俺もそれにこたえるようにしていく。そしてしばらく時間が経ったところでお互いが離れたのだ。
「これは挨拶ですよ、それとこれからの戦いのね。それでは、これからよろしくお願いしますね」と言って俺の手を握ってくる。それに対してロゼリアが「姉さまずるい」と言って俺の方へ抱き着いてくるので。ロゼリアと唇を重ねてしまう。俺としたことがこんなに大胆な行動をした自分に驚きながらも。この行為によって緊張や焦燥感などが取り除かれていくような感じになっていった。だが、その前に言っておかなければならない事があったのだ。俺は彼女達に伝えるべき事があるのを思い出す。そしてロゼリア達から離れてもらい彼女達に告げたのであった。
「君達を助けに来る際にこの国を支配するための鍵をいくつか見つけることに成功したんだ」と。
ロゼリアとクロアの二人と合流した俺達は城の奥深くまで進むとロザリアの部屋に到着する。そして部屋の中でロザリアの姿を確認した後俺はロザリアを説得することにしたのだ。その前に俺達の方は、この城の兵士達がこちらに向けて進軍してくる足音が聞こえる。俺はそれを止めるために動く事にした。
ロゼリアと俺が二人で兵士の方へ向かい。クロアとロザリアにはこの部屋に残ってもらい。俺はこの場にいる兵士たちを全員眠りにつかせる事に成功した。これで、この部屋の安全が確保されたのである。そして俺はこの城で起こっている事を全てロザリアとロゼリアに伝える事にしてみたのだ。この国では現在反乱が起こっておりロザリアはそれを抑えようと奮闘していた事と、俺がロザリーである事を伝え、ロザリーがこの国の王様だという事を伝えた。すると彼女達は驚いた表情をしていたが特に取り乱すことはなかった。だが、これからどうするつもりなのか?俺の方から問いかけると、二人は俺に協力をしてくれるとのことだった。なので。俺の味方となってくれるロザリアには協力してもらうとして。俺はロゼリアに協力してもらうためには彼女にも俺が元いた世界の話をしなければならないと、考えていた。だからロゼリアの方を見ると俺は彼女の耳元でこう囁く。「君はもうロザリアさんが本当のお姫様だって気がついているんじゃないのか?」その言葉を聞いたロゼリアの体がビクッとなり一瞬動揺したのが見て取れる。
ロゼリアの反応を見たことで俺はこの子が本当に王女であると察することができたのだった。やはりあの時はロゼリアの方に気が行っていて、俺の話に集中できず。しかも俺から距離を取り始めた事から俺は違和感を感じていたのだ。
その事を俺の方から伝えると、観念した様子でロゼリアが話し出す。俺はそれを聞くために一旦離れることにした。ロゼリアの話を聞いた俺だったが、その話があまりにも衝撃的な話だったのである。
俺はロゼリアから話を聞き終えると直ぐにロザリアに視線を向ける。
「さっきはあんなことを言ったが、改めて話したいことがあるんだ。聞いてもらえるかな?」
「な、何でしょうか?」俺の真剣な表情を見て戸惑っているようであった。
そして俺はまずは謝罪の言葉から口にすることにして。まず最初に俺は、自分の前世が男であった事実と、俺の父親がこの国の支配者でありロゼリアの父親であった事実。俺が転生者であることなどを伝えることにしたのだ。そして最後に俺はこの国の王になるために、父親を倒すためにここまでやってきたのだとロザリアに告げたのである。その事にロザリアはかなり混乱しているようだ。俺はこの世界に来る前の前世の記憶は持っていたものの、ロザリアがこの国のお姫様であるという事実を知った時のショックの方が大きすぎたのだ。その事のせいで今までずっと隠していたことを忘れていたくらいだ。
そして俺の口からロザリアがこの国のお姫様だと聞かされた事で、彼女の方からも俺に対して色々と質問される。俺がどうしてロザリーの振りをして生活しているのかとか。なぜ女性のような振る舞いをしているのかと。ロザリアの質問に俺は答えてあげながら俺は自分がどうしてこのような口調と立ち居振舞いをしていたのかという説明をした。その理由を聞いてロザリアが驚いていたのだが。ロゼリアは俺の説明に納得してくれたようだった。その時に俺はロゼリカの事をロザリアと呼ぶのを止めてちゃんと名前で呼ぶことに決める。そして彼女のこともクロアと呼び、俺達で協力してロザリーを止めようとすることになる。俺は彼女にロザリーをどう思っているか聞く事にする。彼女はロザリーとはあまり関わりがなかったようなので、はっきりした意見が聞けなかったからだ。その問いかけにロゼリアが少し考えるそぶりを見せてくれたのである。そしてしばらくしてから口を開くと「正直申し上げますと。わたしはまだ姉様の事は信用できない部分がございます。姉様はいつも一人で何かをなさろうとする方ですから」と俺の問いのこたえとは違う言葉を返してきた。俺としてはその返答だけでも十分な情報を得ることが出来たと思っている。ただその事を本人に伝えても意味がないだろうと判断する。俺の考えている事が正しいかどうかは分からないのだが。俺に言えることは一つだけである。ロゼリアはおそらくまだロザリアに騙されているという可能性があるかもしれないと俺は考えた。そしてロザリアが王となる為の準備が全て整う前に、俺とロゼリアとクロアの三人がロザリアを打倒すれば問題ないと。そこで俺達はこの部屋を出て、俺とロゼリアはクロアの先導のもと。クロアの父がロザリアに殺された部屋に向かう。そこは先程までいた場所とは明らかに違う雰囲気になっており。部屋の中にあった血痕などはそのままになっていたのである。その状況から俺が殺したロザリアは偽物で。この部屋にいた男がロザリーだということが分かり、この男がロザリーを騙してこの国に王になろうとしているのだという結論に達した。俺はロザリーがこの城で何をしようとしているのか探る事にしたのである。そしてクロアがロザリアの死体がある場所に近づくのはまずいと判断したため、俺は先に他の部屋を調べていく事にする。するとこの部屋の隣の部屋には大量の魔法陣が存在していたのである。それを見た俺の脳裏に嫌な考えが生まれたのだ。その瞬間。隣の部屋から激しい爆発音が聞こえて来たのだ。もしかしたらロゼリーがこちらに攻めてきたのではないかと考えた俺達は、急いでその場所に向かい。俺達は扉を開けるとロゼリーは、床の上に倒れている男性の姿を確認する事ができたのだった。
その倒れた男性が俺達の目の前で倒れていて生きているとは到底考えられなかったので、念のために回復薬を彼に使用すると意識を取り戻した。俺はすぐにロゼリアとクロアを呼び、俺の回復魔術とクロアのポーションと、そして彼が目覚めるまでに飲ませた水を彼の体に入れ。彼の命を救ったのである。目覚めた彼はこの城の警備兵をしていてこの部屋に入ってきたらロザリアに捕まり、その後殺されてしまったという。それを確認してから部屋を出ることにしたのだ。そして俺達3人は先程のロザリーが殺された場所に辿り着くと俺はロザリーの死を確認してから、この部屋には用がなくなり別の場所に移動することにした。
俺達が移動した場所は地下に存在する隠し部屋である場所で。ここには大きな宝箱が存在し。その中に一冊の本が入っている。それを確認した俺はロザリアと別れ、クロアと俺だけで、その中身を確認したのだ。そしてその本の内容が俺にとっては最悪なものになった。
俺はその内容を読んだ後。ロゼリアと一緒に地上へ帰還することにした。この城に居る理由はもうないからである。この国は今にも崩れ去ろうとしており。この国が俺達の世界から消え去る時が近いのだ。俺はロゼリアと二人っきりになりたい気分だったので、彼女に声をかけようとしたところだ。俺は彼女が手に手紙らしきものを大事そうに持ち抱えている事に気付き声をかけようとしたが、その前に彼女は突然泣き出してしまったので、俺はそんな彼女を慰めるしかなくなってしまった。彼女の様子を見て、この国を治めるための鍵を見つけたので。この国を滅ぼすのを手伝ってほしいと言われてしまい。断る理由もないので、彼女の頼みを受け入れることにする。
ロザリアは、その事に喜んでくれたのか。俺の手を取り握りしめてきたのである。その行動に対して俺の胸は高鳴りを覚えたのだが、俺は気をしっかり持とうと思い直していた。
俺とロゼリアの二人が城の外へ出て城を見上げたところで。ロザリアからある提案をされることになる。その提案の内容を聞いた俺が驚くと。俺とロゼリアが一緒に行動する許可を貰えないかと言われたのだ。俺は別にそれは構わないので。俺から了承をもらうと嬉しそうな表情で微笑むロゼリアの顔を見て、俺は心が癒される思いを抱くのである。だが俺はこの世界で生きる為には目的を果たす必要がある。だから俺は、この世界を旅する事を決意した。
この世界に何が起きたのか? そしてこの国に起こった異変の正体を知る事。
そして俺をこの世界に送り込んだであろう人物に会うこと。それが俺の目的だったのである。その目的の事を考えるとロゼリアの側にいる事はできない。だからロゼリアが悲しまないように。俺の目的を達成したら直ぐに戻ってくると伝えてあげたのであった。
俺がこの異世界に来て、数日が過ぎた頃だった。この異界の地には俺が元いた世界ではありえないような光景がいくつもあった。俺はロゼリアが暮らす街を散策したりして過ごしていた。
そんなある日の事である。俺は冒険者ギルドと呼ばれる組織に訪れると、俺はロゼリアに内緒で、その冒険者のパーティーに加わらせてもらえないかを頼んでみた。その結果。その申し出はあっさりと承諾してもらうことが出来たのだった。俺はロゼリアを危険な目に合わせたくないから。彼女の側を離れようと考えている。それにロゼリアと行動を共にして俺の存在がばれた場合、彼女に危害が加わる恐れがあると思ったからだ。そして俺に付いてきてくれているこの女性達も、いずれロゼリアの敵となる可能性が高い。
この異世界に飛ばされた当初はこの国を支配する事が俺の夢でもあったが、ロゼリアに出会い。俺はこの国の人達が幸せに暮らせるような国を造っていこうと考えを改めることになったのだ。そして俺が目指すものはあくまでも平和な暮らしであって。他国と争ったり、この国の民を傷付けるつもりは一切なかったからである。ただ俺がロゼリアから離れるのと同時に、この国を支配しようとしている連中が現れれば、この国に戦争が起きる可能性が非常に高いとも思うのだ。ロゼリアがこの国を統治するのには、あまりにも時間と人材が足りなさすぎる。
そして俺がロゼリアから離れようとしている本当の理由、ロザリーを裏切ってロザリアが統治するまでの時間を稼ぐ事である。俺はこの国の事を何も知らないのは事実なので、この国に詳しい人の協力が必要なのである。そしてその人にこの国の真実を知ってもらいたい。そして俺に協力してほしいと考えていたのだ。俺に出来る事は限られている。だからこそ俺がこの国の人々にこの世界は俺の知っている世界ではないと伝えることで少しでもこの世界の人々を救うための行動を起こす。俺はそう決めたのだった。そして俺はまずこの国の現状とこれから起きえるだろう事を、その組織のトップと思われる人に相談をすることにした。
そして俺の話を聞いた相手が驚いていたが。俺はこの国がどうなるべきかについて話す。この国はこのままの状態だと遠からず滅びを迎える事になるかもしれない事を。この話を信じた組織の長から協力を求められることになる。それについては問題なく受けいれた。俺はその組織のリーダーと、この国の王や貴族の不正の情報を集め。ロゼリアに伝える事にしたのだ。
それから俺はロゼリアと別れてから暫くの間は、ロゼリアから貰ったお金を使って。俺が元居た世界で見たことがある道具などを売っているお店で買い集め。自分の力を高める事に力を注いだ。この世界での常識も知らなければいけないので、色々な本を読み漁ったりもしている。
ロゼリアの話ではロゼリアは国王になる準備は整ったという。後は彼女が即位するだけという段階になったらしい。俺としては彼女の事を気にしながらも、今はロザリーに復讐する為に準備を進める事にしたのである。ロザリーは自分が死ぬ直前に魔法陣に魔族が封印されていたとロゼリアが言っていたと言っていたが、俺はロザリアの言葉を全く信じていない。俺が殺したのが偽物のロザリアだったという可能性の方が高いとさえ考えている。なぜならば俺はロザリーから渡されたあの紙の中に、この世界の理から外れた術式の内容が書いてあった事を確認したのだ。あれはこの世界に存在するはずのない文字で書かれた物だったのである。
そして俺はロゼリアに頼まれてこの国の王族達を調べ始めた。この国では現在。王位継承戦と言うものが行われていて、第一王女であるロゼリアと。第ニ王女であるクロアという二人の女性が王位を狙って争っていたのである。この国は元々は貴族達の治める国で、代々その貴族たちが王として君臨していたのだが、今現在の王は、貴族達に賄賂などを贈り。その貴族たちが王の権力を私欲のために使っていた。
この国の王族は皆同じ種族であるのだが。実はこの世界には本来存在しないとされている、亜人の一族である獣人と、人間との間に出来たハーフという存在であると。この国は遥か昔からそのような嘘を言い伝え、自分達が王家の血を引きながらも、他種族であると周囲に言い続けてきた歴史があるのだというのだ。そしてそれこそが、この国が他の国々との交易を拒んできた理由でもあるのである。その事からもこの国が歪んでいる証拠だと言えたのである。
ロザリーもクロアも。元は人間であるのだ。しかし彼らは本来ならばこの世界に生まれるはずがなかった命であり。何者かが彼らを召喚したことでこの異界の地に生まれ落ちてきたというわけなのだ。そして彼らがなぜそんな事になったのかといえば、それは俺の知るところではなかったのだが。おそらく俺がロザリーを殺したからであろう。そしてそのロザリーを殺害した俺の行動を、この国に住む人々と一部の権力者は危険分子と判断して、俺を殺そうとしてきたのだ。俺はこの国にいる間は、ずっとロゼリアが守ってくれていたので安全に過ごすことができたが。ロゼリアがいない時を見計らって俺を殺そうとする者達が現れたのである。そしてその中には、俺をこの国に呼んだ人物がいた事も判明したのだ。
その人物はロゼリアに暗殺者を差し向けるように指示を出し。俺を暗殺しようと企んだ。だがそれは失敗に終わり、俺を襲ってきた連中を皆殺しにした。そしてロゼリアからこの世界についての話を聞けた事で俺は確信を持った。やはり俺をこの世界に送り込んだのは、この国の貴族の仕業であったと。俺を送り込んだ奴の名前はロザリエルという女性だという事がわかった。
その事に俺はロゼリアには内緒で、ロザリエルの行方を探すことにしたのである。ロザリエルを見つけ出し。俺は彼女を説得する事で。彼女を救い出してあげる事が俺の目標になる。ロザリーもロゼリアと同じように、その心まで完全に支配されているわけではないような気がするので。俺はロザリエルの心を解きほぐすことが出来れば。ロザリーがこの世界を治めるようにできるかもしれないと思ったのである。そうする事でロゼリアは心労を負うこともなくなり。平穏無事に生活が出来るようになるかもしれないからだ。
ロザリアと別れた後。俺はすぐにでも彼女の元に戻ろうと思っていたが。まずこの国の状況を把握する必要があると考え、その事に集中しようと考える。俺はこの街で一番大きな宿屋に宿泊することにした。俺がその宿で食事をしていた時に。その男が現れるのであった。
俺がロゼリアに内緒で行動を始めようと決めた翌日。早速行動を開始する事にしたのである。そして俺はこの国の現状を知るため。俺はロゼリアの住む街へと訪れた。この国の王が住む城は、街の中央にありその周りを囲むようにして、貴族たちが住んでいる地域が存在している。この国の中心にある城に住まう事ができる人間は限られており。この城に入る事を許されたものは、この国の重要な役職に就くか。もしくはその親族か、または国に仕える騎士の家柄の者である。そして城の周囲は城下町になっており、そこの住民たちは城の周辺に住居を持っているが。それ以外は大体が城下街で暮らす事を許されている。
そしてこの国にはギルドが存在し。このギルドで登録をすれば、この国での身分証明書代わりとなり、この国で活動するための身分証明にも利用できるようになっている。
この国の国民が全員、冒険者に登録をしているわけではなく。その数はそこまで多くは無い。冒険者ギルドとは言うものの。この国では冒険者というのは仕事斡旋所のような側面が強く、冒険者の活動範囲は広く。国の内部だけに留まらず、国外に冒険者が向かうような仕事を請け負うことで、他国の人々と交流し商売をする者たちも存在しているのである。その事はロゼリアからも聞かされていて俺は知っていたのだ。この国の人々の職業や職種は大まかに分けると、商人、農民、職人の三つに大別されるようだ。その事についてはロゼリアに詳しく教えてもらっている。ロゼリアがこの国に来て、この国を支配する為に必要な事を教えてもらったりもした。
そして俺の泊まる事になった高級な宿もその一つなのであるが。俺はその日も一人で部屋でゆっくり休むつもりだった。俺にはまだお金を稼がなければいけないのだから、その稼いだお金でロゼリアへのお土産も購入しなければと考えているのである。俺はその日に食べた夕食を片付け。風呂に入ってさっぱりとしたところで寝ようとしたその時である。部屋のドアをノックされる音がしたので俺が返事を返すと、そこから一人の男が入ってくるのだった。男は黒ずくめの格好をしていて、俺をどこかの組織の人間だと勘違いしているのか。警戒して俺の事を見るが。俺は何もしていないとアピールするために両手を上にあげて何もするつもりはない事を示すと。男は俺に話しかけてくる。「あんたは何者で何の目的でこの国にやってきた?」その言葉を聞いた俺はこの国の人間に俺が疑われたのだと思い。俺は即座に答えた。
俺がこの国の出身ではない事と、旅の途中で立ち寄っただけだと言うと、その男の人は俺の話を聞いてくれて。少しだけ納得してくれたようである。そして彼は自分がこの国ではそこそこの有名人なので、自分を訪ねてくる客人が居ると伝えてくれる。そして俺にこう言ってくれたのだ。この国の王族であるクロエ姫を暗殺者から救ってほしいとお願いされたのである。俺は何故そんな話が出てきたのか疑問に思ったのだが。この国の王は以前から黒い噂の絶えない人物であったので、今回の一件も王自らが指示を出して行った可能性が高いのでは無いかという情報を彼が掴んでいた。
この王はこの国の第二王女であり。ロゼリアの実の姉である人物。その彼女は王位継承戦に参加しているのだが、この国の王女であり、なおかつこの国で一番力のある貴族の娘である彼女をどうにかしようと画策しているらしいのである。そこで彼女の暗殺を目論んでいるのではないかと俺は推測したのだ。俺がそう考えていると、その男はさらに続けて。この国が最近。隣国との貿易を断っていた事を話し始める。
それは王が何かを隠そうとしていたために、その証拠を手に入れるためにロゼリアを呼び寄せ。証拠を手にいれさせたのだというのだ。俺はその話を聞きながら。この国に呼ばれた時のロゼリアの様子を思い出した。そしてあの時、俺はロゼリアの様子がいつもと違う事を疑問に思っていたのを思い出す。あの時ロゼリアーロの口調は普通であったが。その表情から違和感を感じ取って俺は、このロゼリアが本物ではなく。偽物であると判断したのである。その偽物のロゼリアから受け取った紙の中には確かに、ロザリエルとかいうじいさんの名前と。この国の歴史と、現在の状況などが記されていたのである。その紙の内容はこの国の秘密に関わっていて。俺はロゼリアから教えられるまでは全く知らない情報であった。
そして俺はロゼリアが俺に伝え忘れていた、この国の状況と、その裏で糸を引いている存在の正体を知れるかも知れないと思うと、その暗殺者を始末するのは容易いだろうと考えたのである。そしてこの男に協力を仰いで暗殺者を殺すことに協力することに決める。俺は彼に、その暗殺者の名前はロザリアという人物であると告げる。
するとその男の人は俺の言葉を信じなかったようで、俺をこの部屋に監禁しようとして俺の拘束を試みてきたのだ。俺はその手から逃れようとしたが。俺は何故かその男の人に押さえつけられてしまい、動けなくなってしまったのである。その事に俺が驚いて、どういうわけだと俺が尋ねるとその男に対して、どうせ逃げられないのならこのまま捕まえてしまった方が安心できるというわけで。そのまま大人しくしてもらうと言い。その男から質問を受ける事になった。そしてロザリエルの容姿について俺は答えるが、やはり俺の言葉は信じて貰えず。
そして俺がどうしてこの国にやってきたのか。その目的がわからないのならば、ロザリエルがどんな人物であるのかも俺が知っているわけがないと答えてやる。すると、その男はそんな嘘が通用するかと言って俺の首を絞め始めてきたのだ。
この俺を殺そうとしてくる相手の目的は分からないが。その人物がロザリアの事を探っていることは間違いないので、ロザリアの身を守るためにもこの場で俺は殺されてしまうのは非常に都合が悪いと思い。俺を殺そうとする相手の攻撃に耐え続けることにする。しかし、俺が耐えきったことで。俺を締め上げ続けていた男のほうが体力的に限界を迎えたみたいで。その瞬間に俺はその隙を見て、反撃をしようとするが。相手がすぐに気づき。その攻撃を俺に行おうとするが、その男よりも早くに俺が動く。
俺は相手に急接近する。その俺の行動にその男は焦る様子を見せるが。俺の方が一枚上手のようであった。そして俺はその男を気絶させ、ベッドへと放り投げると俺は急いでロゼリアの元へと戻る事にしたのである。
俺はすぐにでも行動に移る事にしたのである。その行動というのがロザリエルを探し出し、この国から連れ出すことである。そのために俺はその男を使って。この国で俺がロザリエルの事を探していたことを、ロゼリアに知らせることである。そうすれば俺が動きやすい環境を作れると思ったので俺はそうすることにしたのである。
そういえば、俺にこのロゼリアを操ろうとしていた黒幕の話をしてきた人物はロザリアという名前の人物が、暗殺者であることを俺に伝えるように言ってきたんだっけ?ロザリアって名前の暗殺者はロゼリアしかいないはずなのに。なぜそいつはロゼリアの名前を出さなかったんだろうかと俺は疑問に思った。だけど俺はそんな事を考える余裕もなく、ロゼリアを探すためだけに行動をすることにしたのだ。
そして俺はロゼリアの部屋へと向かうことにした。そして俺は、俺にロゼリアのことを助けて欲しいと言った男が。ロゼリアのことを暗殺者に仕立て上げるための刺客であると俺は理解できた。
そしてその刺客に俺の事がばれていない事も。この宿の人間たちが俺をこの国の関係者ではないと判断して疑うことなく、宿泊を許しているからである。俺はロゼリアの元へ戻るために。俺を捕らえようとする男たちに抵抗しながら移動した。そしてその宿を出て俺はこの国の中心にある城の方に足を向けるのだった。
この国の王が住む城に向かって歩いていた俺だったが。途中にある城下町で俺の前に一人の女性が立っていた。その女性はロゼリアと同じぐらいの年頃の少女だった。
少女は黒ずくめの服を着ていて。長い髪も黒く染められていたので顔はよく見えなかったが。背が高く。どこか威圧感があり。普通の人ではないような雰囲気を醸し出している女の子であった。そしてその女の人の方を見るとその女は突然俺に向かって話しかけてきたのだった。「あなたは一体誰なの?」その問いはまるでロゼリアのような声だった。だが俺はその言葉を喋っている人間の外見は間違いなく。その女性とは別人だったのに俺は、何故かロゼリアが話しているような感覚に襲われたのだ。だから、ロゼリアの声に似ていると感じ。一瞬、俺が混乱しそうになると、また例の女性の感情が流れ込んできた。俺はロゼリアのその一言で目の前にいる人間がロゼリアで無い事と。俺の正体に気づいたのだと思い俺は身構えたが、もうすでに遅いと俺は気づく。
その女の人がロゼリアの口調で話す事で俺が少しの間、混乱してしまったために、その一瞬でロゼリアに変身したと思われる女性は、俺の後ろに回り込み。そして俺の首にナイフを当ててきたのである。俺は後ろを取られて。そして完全に不意をつかれたせいで、何もできないでいると。俺は背中に冷たい刃物が当たられていることに気づき。この人は俺の命を奪うつもりなのだと、ここでようやく気がついたのだ。そうして俺はそのナイフを突きつけてきた人物の方を向いたのだった。
俺は首に何かを添えられたのが分かったのと同時に後ろに気配を感じ。振り向くと。そこには黒ずくめの格好をした。長い黒髪をしたロゼリアに良く似た女性が居たのである。俺は驚きながら「え、な、なんですか?」と思わず聞き返してしまうほど驚いたのだ。そしてその女性は俺の言葉を聞くと、こう答えてくれたのである。
「私に聞かれても、分からないよ」と困り顔をされてしまったのである。
すると彼女はロゼリアの姿になり「私が誰か教えてあげるね。私は、あなたの知っている人では無いけれど。一応説明をしておくわね。私の名前はね。ロゼリアだよ。ロゼリア=アーニャ。私のことはロゼリアと呼んでね」と自分の名前を名乗るとロゼリアと名乗る女性の口調や態度から俺が知っているロゼリアでは無い事は分かるが。俺は彼女が本当に別人なのか判断がつかなくなっていたのである。
そして俺は彼女に「それで俺に何用があってここに来たのかな?あと君はもしかしてこの国を牛耳っていた王様の娘さんかい?」と言うと、そのロゼリアは、俺の言葉を聞いて笑いながら、俺の方を見ている。そして彼女の口から信じられない言葉が出てくるのであった。
俺はそのロザリアと言う暗殺者が、自分が本物の王女であると言うのである。その言葉には驚かされたのである。だってロザリエルとか言う人物の情報を教えてくれようとしていた人物が、その情報を偽物だったとはいえ。偽物に情報を与えたことになるから俺はそのロザリアという男を信じられなくなったので、信用できなくなったから。まず最初に俺は目の前に現れた人物がロザリエルという人物について、詳しく知っているのかを確かめる事にしたのだ。
「君の知っているロザリエルっていう人物はどんな奴なんだ?」と俺は聞いてみると。ロゼリアと名乗ったその女性は「う~んと、あのねこの国に伝わっている話だと、彼は魔王と呼ばれてるんだけど。本当の所は分からないけど。この国の初代の王と、一緒に戦ってくれた勇者のパーティーの一員で、この国に危機が訪れると何処からともなく現れる正義の味方みたいな感じで呼ばれてるんだよ」と答えたのである。
そのロザリアが語った内容は全て、この国に伝わる話で。この国の民ならば子供から老人までが知っている常識的な情報であった。なので、俺はこのロゼリアの言葉が真実か偽りかを判断することが出来ずにいて戸惑ってしまったのだ。だがもしこれが事実だとするなら何故ロザリエルと言う人間は偽名を名乗っているのか不思議で仕方なかった。それは、普通なら本名を名乗った方がメリットが多いはずであると俺なら思うのだが、わざわざそんな嘘をついている意味が全くわからないでいたからである。でもとりあえず俺はこの場をどうにかして乗り切らなければいけないと考えてしまった。それにまだ俺は彼女から重要な事を一つも聞くことが出来ていなかったのも問題だったので、この国についての情報収集を優先することにすることに決めた。するとそのロゼリアと名乗った女性は続けて「ねぇ、ユウキはこれからどうするつもりなの?あの子を助けに行くの?」と尋ねてきたので俺はどう返答しようかと考えている時に、ロゼリアが続けて俺に話しかけてくるのである。
「もしさ、君が私に協力するって約束してくれるのならばさ。あの子の所に行ける道を作ってあげられるけど、どうする?」と俺はその言葉で。俺の事を嵌めようとした相手は、俺の事を利用してロゼリアの事を殺そうとしていたのではないかと俺は考えたのだ。そしてその俺の考えは正解だと思った。だってロゼリアがこんなことを言って俺に近付いてくる理由なんてそれ以外考えられない。そう思い。俺はまだロゼリアに対して疑いを持っていた。しかし、俺はここでその提案に乗ってもいいのではとも思っていたのである。なぜならロザリエルを裏で動かしている黒幕がいる可能性が高く、そしてその黒幕はこの国で何かをしているに違いないと俺には分かっているのである。そして俺がその黒幕の企みを止める事が出来る可能性が少しでも高くなる可能性があるとしたら、俺はその提案に乗るしかないと思っていたのだ。そう思ったのには、黒幕の存在以外にも。俺には、ロゼリアの提案をのむ以外に、この国の人間たちに疑われないようにするためにはそうするしか方法が無かったというのも理由であったからだ。
俺が黙り込んでいる様子を見ていたロゼリアと名乗る女性は俺が考えていることが大体分かったのであろう。俺に向かって、「やっぱりそうだよね。でも安心して。私はあの子には何もしていない。むしろ助けたいと思っているくらいだからね。でもあなたが協力してくれたお礼として。あの子を助けられる場所まで案内をしてあげようと思うんだけれど。どうかな?私に協力してもらえる?」と言ってきたのである。そこで俺はその申し出を受ける事にした。俺としても、早くロゼリアを見つけ出して、俺はロゼリアの所に行き。ロゼリアを助ける事ができればと俺自身も思っている。だからロゼリアの言葉を信じて、このロゼリアという女性に協力することにしたのだ。
そのロゼリアが言う、ロゼリアが隠れていそうな場所に俺は連れて行ってもらうことになったのである。
俺がそのロゼリアと名乗る暗殺者に連れられて、城に向かって歩いて行くのと同時に俺は、そのロゼリアにロゼリアがこの城に忍び込めるようにして欲しいとお願いしたのだ。するとその女性はロゼリアの姿になり、俺をある建物の地下に連れて行ってくれたのである。
そこは牢屋だったのである。
その部屋を見て俺は、俺の目の前にいるロゼリアが、本物のロゼリアではなくて。俺のことを騙すために姿を変えているだけだと、その瞬間で理解したのである。そしてロゼリアは俺をその牢獄の中に閉じ込めると、どこかへ消えていったのであった。そして俺はその部屋に取り残されて。しばらくするとロゼリアの格好をした人物が現れて。その人はロゼリアの顔をしていたのだけど。口調が全然違っていて。俺はまたその人に質問をすることにしたのである。
俺の前に突然現れたその女はロゼリアと名乗っているが。俺にはロゼリアの口調や態度とは少し違ったものを感じ取れた。
だが俺はその目の前にいるロゼリアという女の言っていることの全てを信じていないので、俺はこの女をロゼリアのふりをさせている奴では無いのかもしれないが。俺としてはどちらでも同じ事だと思い。ロゼリアと名乗るその女性に俺が持っている情報を少しばかり渡すことにしたのである。するとそのロゼリアを名乗る女性は俺の話を聞くとその女性の正体がなんとなく分かってきてしまい俺は驚きながらも「まさか、本当に?いやそんなわけない。そんなはずはない。あの人は死んだはずだ」と思いつつも俺は自分の知っている情報が間違いではないと信じて、その女性から聞いた話と、そしてロザリアが話してくれなかった、ロザリアと、その父親が魔王と戦った時の話を思い出せた範囲で伝えてみた。
俺は自分が覚えていることと違う点があれば。その女性は、すぐにそれについて訂正してくるのだろうと予想しながらその女性が話してくれるのを待つことにして。そして俺は彼女が何かを喋り始めるのを待っていたのである。でもなかなか話し出そうとしない。しかも彼女の顔はだんだん険しいものに変わっていくのだ。その変化に気づいた俺は、その女性の言葉を疑わずに、俺はその言葉を聞きながら。そして、そのロゼリアの真似をする女の言葉を信じる事にして、今は彼女の言葉を聞くしかなかったのである。しかし俺には彼女のその言葉が信じても良いのか悪いのかの判断がつかなくて困っていたのだ。すると彼女は「私はあなたの言葉を信じていいのか分からなくなって来た」と言い出す始末である。その言葉に俺が「なぜ、そう思った?」と尋ねると「あなたの話に嘘があるかどうかを判断する方法が今の私には無いからです」と答えたのである。そして、その女性は続けて「もしかしてあなたは私が、今ここに居る私が本物か偽物なのか見破ろうとしていたのかしら?」と言ってくる。俺は正直に話すのが最善策だと考え。俺の知っている情報を全て教えようと決意して俺はロザリアの本当の名前と、ロザリアの父親の名前を伝えたのである。するとロゼリアと名乗った女は、「やっぱりね。私の事を騙していたんでしょうね。それにしてもその名前を知っていたということはもしかしたらあなは、あの人と知り合いなの?」と尋ねてきた。俺はどう答えるべきか迷ったのであるが。ここは、嘘の情報を言うのが正しいと、判断したので。俺は、俺の知る限りロザリアの父親と俺は知り合いであると答えておく事にしたのであった。そしてそのあと俺は、俺自身の事を簡単に説明してからロゼリアの父親のロザリアの事について彼女に色々と尋ねた。でも俺の質問にロゼリアの母親は答えてくれないで黙っていたのだ。俺は、その反応を不審がりながら、俺がロザリアの親父の事をロザリアの母親に聞こうとしていると。ロゼリアの母親が突然、ロゼリアに変身し始めたのである。
俺はその様子を見て驚いてしまって固まってしまっていたのだ。その姿を見ていたロゼリアは俺に話しかけてきて「ユウキ。これが真実だよ」と言ったのである。
俺はそんなロゼリアに対して何も言い返すことができなかった。なぜなら、この人が、ロゼリア本人だと思ったからである。俺が黙り込んでいるとロゼリアの母親は「この子はね、あの人の子供なんだ」といきなり衝撃的な発言をしたのである。俺はそんなことを言われると思っていなかったので、驚いたのだが、それよりももっと驚く出来事が俺の身に降りかかったのだ。その俺が出会ったロゼリアは、急に光出したのである。そのロゼリアの変化を見ながら俺はどうしたら良いか悩んでいると、光が収まった時には。俺の知っているロゼリアに戻っていて。そして俺の知っているロゼリアは、俺の方に駆け寄ってきて、泣きそうな表情をしながら。「今まで騙していてごめんなさい。でもこれでユウキには信用してもらうことができると思う。それでなんだけどさ。お願いだから私に協力してほしいの。あの人の願いを叶えるために。でも、ユウキならきっと力になってくれると私は信じてるよ。あの人の願いを聞いてほしいのお願いします。ユウキ」と言うのであった。だが俺はそんなロゼリアの願いに「無理だな。お前に協力する気は一切ない」とはっきり断った。
でも俺がそう言ったら、ロゼリアは、「どうしてなの?あなたもあの人を救ってあげたいでしょう?」と食い下がってきたのだ。そこで俺は、俺の考えと、そしてこの国を潰すつもりでいることを説明した。ロゼリアはそれを聞いた時も。やっぱりそうなのかって顔をしていた。
それからロゼリアに何故俺がこの国を潰すために動くのか理由を説明してあげることにした。まず最初に俺の目的を話す前にロゼリアの事を知りたかったからだ。だから俺の方からロゼリアの事を聞くことにした。すると彼女は素直に俺の質問に全て答えるのだ。俺の疑問になんでも答えてくれたのである。俺がロゼリアの生い立ちとかを聞くとロゼリアは自分の事を教えてくれ。そしてこの世界に来る前の事も話してくれたのである。俺にはまだ信じられなかったが。この世界にロゼリアがやってきた経緯やこの世界でロゼリアがどのように過ごしていたのかを知る事ができたのであった。俺がこの世界にやってきた理由はよく分からなかったので聞いてみるとロゼリアは「実はね。私は、ある男によってこの世界に召喚されたんだよね。で、その男のやろうとしたことは。この世界の魔力を集めて、その魔力を使って。別次元の扉を開いてそこに存在する魔獣達を呼び寄せて、この世界を襲わせようとしていたらしいの」と言っていた。
俺はその話を聞いた時に、その男がこの世界を支配しようとしているというのであれば、やはりこいつらをどうにかするしかないと思ったのである。俺はこの国に住む人たちのためにも、俺の家族たちを守る為にも絶対にこんな事は止めさせないと改めて決意したのだった。
ロゼリアの過去については大体理解することができた。なので今度はロゼリアがどうやってここにやって来たかという話になったのだ。そこで俺はロゼリアに俺に会えるまでの話を聞きたいとお願いしたのである。俺はこのロゼリアの話を信じる事にしていたのだ。なんとなく嘘じゃないような気がしたから俺は信じることにしたのだ。するとその話の内容なのだがとても悲しい内容だったのだ。その話は俺にとって胸が痛くなるほどつらい話であった。なんとロゼリアが言うにはロゼリアは元々はこの国の姫だったそうだ。
そのお城にはロゼリアの他にあと二人の女の子が住んでいた。それはその二人が双子であり。二人共、とても仲の良い双子の姉妹で、その二人はロゼリアをとても慕ってくれていた。でも、ある日突然そのロゼリアのお城に敵が攻めて来たのである。
そしてその敵の大将は、その城にいるロゼリアたちの姉である王女を殺すために、城に攻撃を仕掛けてきたのである。そしてロゼリアの目の前でロゼリアの双子の妹が殺されてしまい。ロゼリアはその妹を自分の手で殺してしまったことで心を閉ざしてしまうことになったのである。ロゼリアの父親はロゼリアが壊れてしまう寸前で助け出してくれた。だがその事で、ロゼリアの父親も敵に捕らえられてしまった。そしてロゼリアの父親が捕まる前の最後の手紙が、ロゼリア宛に届いたのである。その手紙を読んだロゼリアは、自分の父親を助けに行くと決めて城を後にしようとしたのである。そんな時。突然ロゼリアの体が光り出して気が付けば俺が居た部屋の前にロゼリアが現れたのだと言う。そしてロゼリアがロザリアに姿を変える魔法を使う事を覚えて、その力で俺はここに来たみたいである。
その話の中で、俺は一つだけどうしても分からない部分があったので質問をした。俺がこの世界に来ているのならば俺の父親がこの国にまだいる可能性は十分にあるだろうと思ったので俺はそのことを尋ねてみたのだ。その質問の答えはすぐに帰って来た。俺の両親はすでにこの国から脱出していて、もうしばらくすれば合流するはずだった。でも、途中で何かあったのか連絡が取れなくなっていたのだという。だからロゼリアたちは両親を探すことにして、俺は一人寂しくこの世界に残ったのだと言う。俺がそれについて聞くと「もしかしたら、あの人は私の事を探してくれているんじゃないかと思えて仕方がないんだよ。だって私はずっとあの世界から抜け出したいと思っていたから。でもね、あの人を残して私だけがこの世界に来るなんて、やっぱりできないって思ったの」と言ったのだ。
そんな話を俺に聞かせてくれた。そしてロゼリアの願いを聞く代わりに俺にロゼリアの父親を救うのに協力して欲しいとロゼリアは頼んできたのである。でも俺は、俺には俺のやることがあると伝えると、俺も一緒に手伝うと言ってくれて、その気持ちを俺は受け取る事にしたのであった。
ロゼリアの父親を助けるためには俺のスキルが使えると便利だと分かったので、俺はそのロゼリアの父親との繋がりを確かめることにした。そのために俺は、ロゼリアに俺にその父親の名前をフルネームで教えてほしいと頼む。そうするとロゼリアは、「あなたのお父さんの名前は」と口にしてその名前を言う前になぜか黙ってしまったのである。そしてロゼリアの顔を見ると顔色が悪くなっていた。ロゼリアがどうして黙ったのか俺は理由がすぐにわかった。俺はその人の名を知っている。でもロゼリアの口からその名前を聞くのは初めてだったので驚いた。でもその驚いた表情を見せるわけにはいかないと必死に冷静さを保つことに努める。そうしている間に、そのロゼリアは黙り込んでしまったので、ロゼリアが心配になる。
そんな様子を見ていたのか、俺に話しかけて「ロゼリアは、今何を言われたのかな? その人のことをロゼリアは知っているようだね」とロゼリアの母親に話しかけられたのである。俺は慌てて、「ロゼリアは、どうして黙ったんですか?」と聞いたのだ。そうするとそのロゼリアの母親は「ユウキ君に、そんなことを話してもしょうがないだろう。今はそんな話よりもロゼリアとユウキ君の関係についてだ」と言いだしたのであった。そんなロゼリアの母親が俺を問い詰めようとした時に、俺のステータスプレートが急に光始めたのである。
俺は、なんだこれと思い、その光りだしたものを確認すると、なんと俺の名前が変わっていてしかも職業欄が変になっていたのであった。俺はそれに驚いて、どうなっているのか分からなくて慌てふためく。その変化に驚いたのはロゼリアの母親も同じようで「何が起きたんだ。一体これはなんだ」と驚きの声を上げていたのである。
そして俺は、その光っている部分に指を当ててみると画面が変わったのだ。そこに書かれているものを見たら。その画面には、ロゼリアの父親の名前が書かれていて、俺はその名前に見覚えがあって、その名前の横に、レベルとか、能力とかも書かれていた。その画面を見ていて俺に衝撃的なことが書いてあったのである。そこには「この人の事を娘さんがご存知のはずです」と書かれてあったのだ。そして俺がその言葉に気付いてしまう。俺は、その表示された文字を見つめた。見間違いなんかじゃなく間違いなくロゼリアの名前が表示されてあったのであった。
俺が名前を確認したのがいけなかったのだろうか?その俺が見た名前の部分をロゼリアが目ざとく見つけて俺が見ているその部分と同じところを見る。そのロゼリアの反応を見て、俺が見た名前の部分を、ロゼリアも同じように確認し終えたようである。そのロゼリアが俺の方を見てくる。俺もそのロゼリアの目線に気づくが目をそらしてしまう。ロゼリアの目に少し涙が出ているように見えてそれが悲しげな様子を感じさせたのだ。ロゼリアは何も言わずにその場から立ち上がり部屋から出て行ったのだ。それを見ていた俺が声をかける前に出て行ってしまう。
その後ロゼリアは部屋に帰ってこない。結局戻ってこなかったので俺達はロゼリアの部屋をそのまま放置する事にしたのであった。そしてロゼリアが出て行って、しばらくして、部屋のドアを開けてきたのはロゼリアの母親のリリスである。そしてロゼリアがいない事に気付き俺達にロゼリアのことを問いかけたのである。そしてその話の中で、この国の現状を改めて知りたいので話を聞くことにする。その説明で分かった事は、やはりこの国は他国からの侵略で危機に陥っていることが伺えた。
俺達のいる国の名前はこの国の言葉で『アーシア』という名前なのだが、アーシアン大陸という場所に存在していたのである。その大陸は魔王のいる危険な場所でこの国に存在している勇者と呼ばれる存在で、その勇者がこの世界を救ってくれるという物語が存在しているらしく。その勇者が俺達の世界でいうアニメみたいな感じらしい。
そしてこのアーシア大陸は、他の場所の人達からは、『暗黒地帯』『死海魔の領域』『死者の森』『呪われた大地』等と言われて恐れられている場所である。なので普通の人が住んでいる場所は限られているらしい。そしてこの世界の国々はこの大陸の覇権を巡り争っているのだという。なのでその勇者が現れてくれる事を皆期待していた。その話の流れで、その物語の主人公と思われる少年の名前を言われてしまった。それはこの国の第一王女様の子供の名前なのだと言う。
そしてこの国の姫であるはずのロゼリアの父親の名前は『ロゼス=アゼド王国第二王女、リーファシス』という名前だという事を知った。俺はその事を聞いて俺はその話に出てくる人物が本当にこの国に存在しているのか疑問を抱いたのである。
ロゼリアのお母さんに俺とロゼリアの関係性を聞かれたので、正直に話したところ。ロゼリアのお母様には信じて貰えなかったので俺が異世界人であるということを明かすことにした。すると、案外すんなりと俺の言っている事を信じてくれたのだ。そしてその事をきっかけにロゼリアの両親の信用を得たような気がする。俺もそんな感じがして嬉しかった。そこで俺はそのロゼリアが言っていた物語の事が気になって仕方がなかったのである。その話を聞いたときに俺はロゼリアが言っていた話が本当だと思えて仕方がなくなった。その話というのはこうである。この世界で悪さばかりしているある悪い魔法使いがいるという話である。その魔女の名はマジェスタと言う名の人で。実は俺も、その人の名前を聞いたことがあった。なぜなら、その人と俺は会ったことがあるからだ。そしてその人は俺が子供の頃に魔法を教えてくれた先生でもある。
俺はロゼリアにそのことを告げてみる。その話を聞いたロゼリアは俺の言葉に驚いたようだった。その話を俺は、以前聞いたことがあるのだと言ったら、ロゼリアがその人のことを、俺が出会った時の姿とは違うので別人ではないか? と言われたのである。そしてその話は俺も本で読んだことはあったが、ロゼリアの話では、実際にこの世に存在しているのだという。
そしてその魔女が俺に何かを伝えようとしていたという言葉を口にする。その時に俺は嫌な予感がして背筋がゾクっとなる感覚を覚えたのだ。そしてその言葉を言った後で、急にロゼリアの顔色が悪くなったのである。そんなロゼリアの様子に気付いたロゼリアの母親が、ロゼリアのことを気にかけていたのだがロゼリアは、自分の体調の変化が自分でもよく分かっていないのか「だるくはないよ?」とだけ言ってその後は特に何も無かったかのようにいつもの笑顔を見せたのだ。でもその顔は青白かったと思う。でもそれ以上は特に変わった様子がないので、俺とロゼリアの関係は一旦保留にされてしまった。そして、俺は俺にできる事をしようと考えることにしたのである。でもその前にこの国を救う為に俺が出来ることはどんな事なのかを考えていく必要があるだろうと考えたのだ。
まずこの世界では俺達が生きていた日本とは違い、科学文明が発達していない代わりに魔法の文化が盛んになっているらしい。俺はそういう世界に来てしまったわけだが、どうも実感がわかないところがあった。俺はスマホとかが使えないので不便を感じると思っていたらそうでも無い。そもそも俺は今まで使っていたものよりかなり性能の高いものが使えてしまうので問題が無いと言えば無いんだけど。それに便利なものに慣れてしまっていたせいか、スマホで調べられない情報についてはあまり困ってはいなかったのである。そんな俺に対してロゼリアは俺と話をするためにわざわざ会いに来てくれたみたいだ。ロゼリアが「あの時の話の続きがしたい」と言ってきている。
「あなたにどうしても聞いて欲しいの」と真剣な顔をしながらロゼリアはそう言い放ったので俺は「うん」と言ってロゼリアの話を聞くことにした。
「私は小さい頃から、私に力がある事は知っていました。でも私の力は制御ができないのです。だから誰にも知られてはいけないと思いずっと隠してきたのですよ。私が暴走したら大変なことになりますからね。そんなときユウキが私を助けてくれましたよね。あれからもうずいぶん経つけど今でも忘れませんよ。そしてそのあとで、貴方が助けに来たんですよ」と俺に向かって話してくれた。俺はその時のことを思い出す。ロゼリアに言われた通り確かに俺は彼女を助けたのだ。ただロゼリアに言われてみて俺は不思議に思う。だってロゼリアの力は強力すぎるのだ。もし俺が居なかったとしても、彼女は自分の中にある力に勝てなかったのではないか?と思ってしまったのだ。俺の表情を見たのかロゼリアが言う。「えぇ~それならそれでよかったんですけどね。あの時は力が強すぎたのですよ」とロゼリアが口にしたので、俺はどういうことだ? と思ったのであった。ロゼリアにその理由を尋ねてみたもののロゼリア自身に分からないようで。そんな風に言われたところで俺にはなんの事か分からなかった。
「ユウキはどう思いますか? 私自身の力を」
「俺はよく分かんないけど、俺にそんなことを聞いてどうするつもりなの?ロゼリアのその力が、ロゼリア自身を傷付けていたんじゃないの?」
「ふふ、その事ですか、やっぱり分かるものですね。私の心は昔から変わってはいませんでしたから、それが今分かりました。その言葉の通りなんですよ。ユウキに言われなければ自分の力なんて、一生知らずにいたと思いますし」
「俺の何が分かったんだ? 教えてほしいよ」
俺の言葉を聞き終えたロゼリアが話し始めた。この国の王族の血筋に生まれた者は、特別な能力を持って生まれてくる者が多いらしい。そしてその能力の殆どは生まれたときに分かってしまうのだと言うが、ロゼリカの能力の場合は少し特殊だったそうだ。この国の第二王女として生まれたのはいいものの、彼女の持つ特殊な能力は危険極まりないものであり。それをロゼリア自身が理解していなかったという。その為、周りからも気味悪がられていて誰も彼女に近づこうとはしなかったのだという。そしてその事を知っていた国王陛下がロゼリアを守るために彼女を隔離させたのだと言っていた。しかし、ある日を境に彼女が普通ではないことがばれてしまい。その事実を、父親から聞いたという。
そしてそれからというものロゼリアは自分の本当の名前を忘れるようになっしまい。『マジェスタス』と名乗っている。ロゼリアがその名前を名乗っているのは、ロゼリアがロゼリアだと気付かれないためなのだという。ロゼリアという名前から、すぐに自分がロゼリアだという事に気付く人もいるかもしれないからだと言うので俺はなるほどなぁと思ったのであった。ロゼリアはマジェスタとして生きているうちに。ロゼリアの持っている能力をある程度抑え込めるように訓練して、その力に飲み込まれないように努めてきたので、ロゼリアはその努力をしてきたのだろうと分かったのである。そしてそのロゼリアの努力が実を結び今ではその能力を完全に抑えられるようになったのだと言う。その事を話し終わると、また話し始める。その話の内容によると、このアーシアン大陸の各地で、魔族による侵攻が始まったらしくて、魔王復活が近いという噂も流れているらしいのだ。この国は、この世界で魔族の住む場所に近い場所に存在している。そのためこのアーシアン大陸の中では魔族は人間にとっては敵とされているらしい。なのでこの国が魔獣に襲撃を受けないように、勇者のいるこの国の騎士団が戦ってくれたらしいのだがそれでも防ぎきれなかったようだ。なのでこの国の騎士達だけではなく他の国からの支援を受けて何とか防衛に成功したのだという。
しかしロゼリアの話を聞いた限り。俺はそんな話をどこか他人ごとのように聞いていたのである。それは俺には何も関係ない事だと思いこんでいたからだ。俺はロゼリアからいろいろと話を聞いた。ロゼリアの話によると。その魔王というのは、俺の世界にも出てくる『魔物』の元になったと言われている存在なのだと言う。つまり俺がこの世界に転生したときに出会ったあの巨大な怪物のような化け物達は元は普通の生物だったという事になる。
そんな事を聞いた俺だったがロゼリアに質問を返すと、俺が元いた世界ではその生き物のことを『動物』と呼んでいると教えるとロゼリアも同じようなことを考えているとのことだった。そして俺はそんなロゼリアに俺は疑問を尋ねることにする。
「俺はそんな危険な世界には行きたくないかな。でもそんな俺を召喚してしまったっていうことは俺に何かしてほしいってことでしょ?」
俺の言葉にロゼリアは静かにうなずく。ロゼリアに聞こうとしていたこと。この国を助けるためには俺の力が必要って事だよな。
「ユウキが異世界人なのは間違いないことだし。私の力についても知っています。だからこそお願いしたいのですよ。この世界を救いたいのです。だから協力してくれないでしょうか」
俺にとってこの世界の事なんか関係の無い話だったはずだ。だけど、目の前で苦しんでいるロゼリアの姿を見てしまった俺はその事を放っておくことなどできなかったのだった。だから俺はロゼリアの言葉に対して答える。
「うん、俺がこの世界に転移させてしまった責任もあると思うし。ロゼリアの役に立てる事があるのなら俺にできることは何でもするよ。それにロゼリアに会わなかったとしても俺はいずれその力を使ってみたいとも思っていたから。俺の魔力なら使いこなせるってロゼリアが言っていたし。だからその事は気にしないでいいよ」
「ユウキはやっぱり優しいですね。私のせいでこの世界に呼ばれてしまったのに。この世界に愛着がある訳でもないのに、この世界に生きる人々の為に力を使おうと言ってくれるなんて」とロゼリアが言う。そんな風に言われても俺にはまだこの世界に対する思い入れなどはないのだが。俺はロゼリアに言う。
「俺は元の世界でもそんなに大層な事を考えていたわけじゃないから。別に正義の味方になりたいわけでもないし、誰かの為になることをしたいだとか考えたことはないんだよ。だからこの世界に来たときも俺に出来る事をしただけなんだ」
俺の言葉にロゼリアが微笑んで俺に言う。
「ふふふ、やっぱり貴方は変わってますね。でもありがとうございます。私にはとても嬉しかったです。貴方のおかげで救われました」とロゼリアが笑顔で言ってくれた。俺がそんなロゼリアの笑顔を見ていると。俺はロゼリアが俺の方をじっと見つめている事に気が付いて、少しドキッとしてしまい。そんな感情を隠すために「お腹空かない? 俺、何か食べ物買ってくるよ」と言ってその場を離れるのであった。
俺は、村の市場まで足を運んでみたが、やはりそこは中世ヨーロッパの街並みをしているような感じの作りになっていて。建物の多くは木造建てだ。だが村の中に、レンガで出来ている家が一軒だけあることに気付き俺はその家の扉をノックしてから、ドアを開けてみる事にした。中から出てきたのは若い女の子で俺の姿を見て怯えるかのように固まってしまう。
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」と俺が優しく声を掛けるが、女の子は震えながら俺に助けを求めてくる。「たすけて、おかあさん! ここに怖い人が居るよ!」俺はその子に「ちょっと落ち着いて下さい。俺に何もする気はありませんよ」と言い。女の子のお母さんと思われる人物を探したが見つからなかったので、俺が「君のお母さんはいないの?」と尋ねてみると、女の子は「出かけてるの」と答えたので。「じゃあお姉ちゃんの所に一緒に来てください」と俺は言ったのだ。俺に妹が居ればこの子の歳くらいだろうなと思って俺はつい口走ってしまったのだ。するとその子は、俺の言葉を信じたようで、俺に抱きついてくると、「わたしをさらいにきたの? 助けて」と言うものだから俺は慌てる事になってしまったのであった。
俺がそんな風に困っていると、ロゼリアがやってきてくれて、俺の代わりに事情を説明してくれたのである。ロゼリアは、自分がマジェスタスだということは隠していたようであったが。俺に説明するように言われたのかマジェスタスであることを名乗り。自分がこの子に害をなす存在では無いということを説明する。
「ユウキにこんな小さい子が居るのですか?ユウキの子供にしては幼すぎますよね」と俺に問いかけてくるロゼリア。俺は自分の子供がどんな見た目になっているか知らない。そもそも結婚すらしていなかったのだから。ロゼリアがそう思う理由がよく分からなかったが、俺は一応反論する事にした。「いやその子よりは年上だよ」と俺の年齢がいくつであるのかを伝えると、ロゼリアが驚いて「そうなんですか? ユウキってそんな歳で、子持ちになっていたんだ。でも子供が出来ていたら私達に教えてくれても良かったんですよ。ユウキが隠したい気持ちもよく分かりますけど、私はずっとユウキと一緒に暮らしていたのに。そういう話は聞いていなかったのでびっくりしたのです」と言うので俺は説明を始めた。
まず俺は転生者でありこの世界に転移してきたということを説明することにした。しかし俺は前世の記憶がほとんど無い状態で転生したので、自分が何者でいつどこで生きていたかという記憶が曖昧だと伝えると、ロゼリアは驚いた顔をして黙り込んでしまう。そしてその後、ロゼリアが言うには、その事は俺の能力のせいではないかと言い出す。俺の能力の影響によって、この世界で生きていくための力が足りなかった為、この世界で生きた経験が無くなってしまい、その結果前世の事が思い出せないのではないかという。
それを聞いた俺は何も言えない状態になってしまう。俺が自分の能力を改めて見直す事にしたのは、その時の事だった。今まで特に深く考えることも無かったが、俺は自分の能力に違和感を覚えたのだ。俺はそんなに頭が良くない。それは自分で分かっている。だからこそ今の状況を理解したくても出来ないのだ。その事を考えていると、俺の心の中で俺の意識とは別の人格が話し始める。
《マスター。どうなさいました? 先程までは冷静な様子でしたのに》
(俺は冷静だった。だけどお前が余計なことを言うからだ)
《それは失礼しました。しかし、今の貴方は混乱しているのではありませんか。だからこそ貴方は自分一人で考えようとしてしまった。しかし、今の貴女はこの世界での生みの親のようなものなのですから。そんな事は許されません。私にも相談してほしいものですが》確かに俺は混乱していたのかもしれない。この世界に転生してから今日までの出来事を思い出す。
この世界で生まれて、物心がつく前に、両親は死んでしまい。孤児院で暮らすことになる。しかしそこに魔獣が現れて孤児の子供たちが犠牲になった。俺も死ぬ運命にあった。そんな時に俺はロゼリアに命を助けられたのである。そしてロゼリアに連れられてアーシアン大陸に行き、その大陸でロゼリアにいろいろと指導を受けることになった。
そしてある日。ロゼリアが俺の力を使ってほしいというので俺が魔法を発動させた。俺は魔力を使う事に成功したのだが。その事がきっかけでロゼリアに俺の魔力が吸収されてしまう。俺としてはその事は特に嫌な事では無かったが。その事が原因でロゼリアに俺が魔力を持っていることを気付かれてしまったのである。そして俺にロゼリアの加護が掛けられて、それが理由でロゼリアは神族の長から追放されてしまい俺と行動を共にすることになった。その後は二人でこの世界を救う旅に出ることになって旅を続けていたのである。
俺にロゼリアが加護を与えたことによって、俺はこの世界の言語を喋ることが出来るようになった。それからロゼリアと二人だけの時はロゼリアは俺の事を、ユグドラシルと呼ぶようになり。俺もそれを受け入れていた。俺達はお互いの正体を知らないまま過ごしていたが、ロゼリアが突然に俺にプロポーズをして。俺は戸惑いながらも承諾したのだった。
俺がそんな事を思い出していると、俺の中から別の俺の声が聞こえてくる。その言葉を聞いて、俺はその言葉を信じられずに、思わず否定の言葉を口に出してしまう。
「俺の能力は、俺自身の成長と共に変化するって言っていたよな? でもロゼリアが俺の体に入った時も、今も変化が起きている感じは全くない。だからこの力は変わらないんじゃないかと思うんだよ」
俺の言葉を聞くと、ロゼリアが言う。
「それは違うと思います。貴方は自分の魔力を使いこなす事が出来るようになっているはずです」
ロゼリアが何を言っているのか理解出来なかった俺はその質問をする。
「どういうことだ?」
すると、ロゼリアは真剣な表情で答えてくれる。
「ユウキに最初に掛けた魔法、私の力の一部が貴方の中に残り続ける効果を付加する。それが私の与えた魔法の効果です。その効果が発動する条件が、その魔法を使った相手、つまり私が傍にいる事です。もし離れてしまった場合は私の力が少しずつ消えていき。最後にはその魔法自体も消えるでしょう」
なるほど。確かに俺の中に力が残っているのであれば、この世界にきてからも成長し続けていてもおかしくは無い。だが、ロゼリアはこう言うのだ。「ただしこの世界に召喚される前の状況に戻ればまた元の無能に戻ってしまう可能性があるのです」と言う。俺がその事を聞き返す。
「元の体に俺が戻るっていう事?」
「いえ。ユウキは元々この世界に存在していた人です。この世界に転移した時の状態に、という意味です」と俺は言う。
「元々いた俺の状態に戻る?ってどういう意味だ?」
「ユウキがこちらの世界にきたのは、私の力で強制的に呼び出されたためです。ですが貴方が元の場所、元の肉体、本来の魂に戻った瞬間。再び貴方はこっちに戻ってくることになります」とロゼリアは言い切った。それを聞いた俺は疑問に思ったことがあるのでそれを口にする。
「俺はなんでロゼリアと会う事になったの?俺の体はどこにいるんだ?そもそも、俺のこの体は俺のものであって俺のじゃないのか? じゃあ一体この俺は誰の体を乗っ取っているんだ?それにこの体の本来の持ち主が居たはずだ。俺を呼び出したのは、その人の許可を得ていないわけで、俺は本来許されない存在だ。そんな俺をロゼリアが匿っていることがばれたら大変な事になるんじゃ無いのか?」
俺は気になっていた疑問を次々と投げかけていく。だが俺が気になっているような事には触れてはくれなかった。そしてロゼリアは俺にある提案をしてくるのであった。
ロゼリアが俺の事を心配してくれているのがよく分かったが。しかしロゼリアの話では俺に元の世界に戻れば、俺はもうこの世界には戻ってこれなくなる。それは、今の俺にとってこの世界で生きている意味があるからこそ。
俺にとっては元いた場所に戻るのが正しいのかもしれない。
そう思って俺は自分の能力に問いかけてみる。すると俺の中で、何かが語りかける声がする。《私は貴方に幸せになる権利があります》《貴方は私と一緒に居るべきなんです》と、まるで洗脳されているかの様に聞こえる言葉が頭に流れ込んでくる。しかし、俺の意思は変わらないし、そんなものに騙される事はない。すると、今度は《この子達も助けてあげてください。このままだとこの子が壊れてしまうわ。早くなんとかしてちょうだい!》と俺に訴えかけてきてくるのだった。俺の心の中の叫びに反応するように。俺はロゼリアの肩を掴み、その手を自分の胸に持っていった。
ロゼリアが驚いて俺を見つめているが、俺はそんな事は気にせずに自分の想いを告げる。
「俺には、俺のことを心配してくれる仲間が居る。その子達の気持ちを無視することはできない」と言うと。《ありがとう》とロゼリアから感謝の念を感じることができた。しかしそこで俺は思うのだ。《本当に俺は帰らなければならないのだろうか?》という事を思う。
しかし、俺は今この世界では、神族と呼ばれる立場にあり、アーシアン大陸で魔王と呼ばれているロゼリアと対等の立場で会話をしている。そして、ロゼリアに力を貰ったおかげで俺はこの世界で生きていけている。そう考えると俺の存在はまだ必要であるように思えてきたのである。しかし俺はロゼリアの話を思い出して、この世界に転生する前に言われた言葉が頭を過る。
『私はずっとあなたと一緒にいます。この世界を平和にしてみせるまで、絶対に死なせない。貴方には、まだまだ頑張ってもらわないと、いけないんだから』という言葉。この言葉を思い出すと俺は自分がまだやれる事があると実感する。俺には帰るところなんて無いし。そんな場所は元より無い。俺が自分の考えを整理できている間も、俺に抱き着いていたロゼリアも黙って俺の言葉を聞いてくれていた。俺の考えている事を読み取ってくれたのか、何も言わずに待ってくれていたのである。そして、しばらく経った後に、ロゼリアが話し出した。
「わかった。でも、最後にお願いがあるの」と言ってロゼリアが俺の顔をじっと見ながら、お願いの内容を告げてくる。
「この先、私が死ぬかユウキが死んだ時。その時は必ず私の願い事を一つだけ叶えてほしいの。これは貴方の命と私の命をかけた約束だからね。忘れちゃだめだよ!」と真剣な表情でお願いをしてくるのだった。
俺達はそれから少しの時間、この場で話し合いをした。しかし時間がない事は分かっている。なぜなら俺はこの世界でロゼリアによって生き返らせてもらった命を、再び捨てようとしていたからだ。それは、ロゼリアからもらった能力を封印するために俺はあることをしなければならないからである。ロゼリアに頼めば簡単に済ませることは出来るだろう。だけど俺にも意地があった。だからこそ自分でその方法を探すことにした。俺の心の中でもう一人の俺の声が響いている。
【そんなこと無駄なのに】と呟くのだ。そんな事は自分でもよく分かっていた。だから余計にもどかしいし辛い。
でもそんな事を考えていたら俺の心に語り掛けてくる言葉がある。
「お前の力があればきっと見つかるさ」
と自分に言い聞かせるように俺は言葉を返した。
そんなやり取りをして俺達がこれからどう動くかを二人で決めてからロゼリアと別れた。ロゼリアと別れる際にロゼリアがこんな話をしてきた。
「私も協力させてくれないかな? 貴方が一人でやるより効率が良いと思うけど」とロゼリアが言うのである。しかし、俺はその申し出を断った。ロゼリアの事は信頼しているのだが。それでも俺は、自分の力でこの問題を解決したかったのである。そして、それは自分なりの考えでありロゼリアは俺の提案を快く受け入れてくれたのである。俺は心の中から、もう一つの人格に話しかけた。
『なぁ、俺に話しかけてるって分かるよな?』
俺の中の一人が答える。《ああ。よく分かったなお前。それで俺に話しかけるって事の意味を理解した上で、俺に話したんだろうな? 俺達はお互いに干渉できないんだぞ》と返事をしてくる。それに対して俺はこう返答する。
『もちろん理解した上で話したんだが、お前なら協力してもらえると思ってさ。頼む、力を貸してくれ!』
と、俺に頼まれると、俺の体の中にもう一人がいる感覚があり。その後暫くして言葉を発した。《まあ、俺にできる事は少ないが手伝わせてもらうよ》と了承してくれたのであった。
俺がロゼリアと相談した後、早速行動に移るために動き出す。だが、その前に確認しておきたいことがいくつかあったのでそれをまずロゼリアに聞くことに。するとロゼリアが俺に説明を始めた。俺の体が異世界で召喚される直前に、俺はこの世界に呼ばれており。この世界に来る前はロゼリアの城で、ロゼリアに魔力供給のために力を奪われ続けていたのであった。
それだけではなく。召喚されてからの期間もこの世界のロゼリアと過ごした時期も全く同じ。つまり、ロゼリアの知っている過去の記憶がそのままこの世界でのユウキの記憶として引き継がれているというのである。つまりこの世界のユウキはこの俺と同じ存在ということだな。そして俺はその話を聞く事でこの世界で起こった様々な出来事をロゼリアの説明を聞く事なく思い出していたのだ。この世界に召喚される直前の事も俺は思い出したのである。しかし、この事を話すということはつまり俺の正体を明かすことになるということでもあるため。ロゼリアはその辺りの事に関してはあまり話す気が無いようであった。そして話は本題に戻るのであった。ロゼリアの話から俺の現状を知る事が出来たわけだが。問題はこの後の事だ。
今の俺は神族の力を使う事が出来るが、本来であれば使えないはずなのだ。そしてロゼリアによると、俺は元の世界に帰りたいと強く願う事で神族になる資格を得ると言っていたので、とりあえず元の世界に戻ろうと決心をするのである。俺としてはロゼリアと一緒にいたいという思いもあったが。しかし俺の目的はあくまでこの世界を救うことである。
その為にロゼリアの側にいる事は邪魔にしかならないと思ったのである。それに元の体に帰れれば俺はもう一度人生をやり直すことが出来るし、そうすれば今度こそは本当の意味で皆と分かり合えるのではないかとも思ったのだ。それ故に俺はロゼリアから離れ、この世界の平和を取り戻す為の戦いに身を置こうとする。
それにしてもこのロゼリアの力は異常だった。ロゼリアは確かにこの世界でも最強クラスの力を持っているらしいのだが。その力とロゼリアの能力を組み合わせて俺はこの世界で生きるための力をもらうことが出来たのだと思っていた。しかし実際に能力を使ってみたところ自分の中の魔力は減らないしむしろ増えた気がするのである。それだけでなく身体能力なども格段に上がった感じがしたので、俺には正直この能力は必要ないんじゃないかとも思っていたのだ。だがそんな事よりも気になったのは。俺はこの世界に来た直後にロゼリアによって生き返ったという事と、この世界に召喚された時に俺に力を譲渡したのは俺ではないという事の二つだった。
しかし、この世界に呼ばれたばかりの頃俺は神族では無かった。ならばこの俺の体は俺のものでは無く別の人間のものだと俺は気付く。この俺の体の本来の持ち主に何が起きたのかを知りたかった。だが、今のこの体の持ち主に聞けないのでロゼリアに聞くしかなかったのだ。俺はそんなことを考えながらこの世界から元の場所に戻れる方法を探し始める。この世界で俺はこの体を手に入れた。この体の元の人間はどこに行ったんだと疑問に思うが。しかし、今はそれよりもこの世界で俺はやらなければならない事があるのである。
「ロゼリア、ありがとう」と言って俺はロゼリアの元を離れることにしたのである。ロゼリアには色々と助けてもらったからお礼を言いたかったのだが。俺の目的を考えると、もう二度と会えない可能性もあると考えたのだ。俺はロゼリアとの会話が終わると直ぐに移動を始めるのである。
この空間から出た後。この空間に入った時の状態のままで時間が止まっているようなので。急いで元の世界に戻ろうとした。ロゼリアの話だと、神族は自分の神族の力で世界を移動すると、元の世界に帰らなければならなくなるという話を聞いたことがあったので。俺は神族の力を使うことを避けたのだ。だから俺は、この世界に飛ばされる前の俺が使っていたと思われる剣を拾って元の世界に戻ったのだった。俺はロゼリアとの話を終え元の場所へと戻る事にする。この世界に来て最初に来た場所がこの城の中庭だったために、そこを通れば元の世界に戻れるかもしれないと考えていた。
しかし、そこには見たこともない光景が広がっており俺は言葉を失う事になった。この城は魔王城でありロゼリアが支配しているはずだと、俺は勝手に考えていたが、俺の目に飛び込んできた光景は全く知らない景色だったのだ。そこは砂漠地帯なのか地面がむき出しになっており草木などはほとんど生えていなかった。しかも砂ぼこりが凄く目や口に入ると咳が止まらなくなったのである。俺がこの場所に来る時は夜中であったが、まだ外が暗くなかった事もあり太陽の高さから、ここが日中の時間帯であることはなんとなく予想がついていた。
「えっ! なんだよここは!」と俺は戸惑いながら独り言を言うのである。なぜなら俺が居たのは夜のはずだったからだ。しかし、周りを見渡してみる限りこの城があるようには見えないし街らしきものも見当たらないからだ。だがここで諦める訳にもいかないので俺はこの場から離れる事にしてこの城を後にする事にした。
暫く歩き続けるとその途中で一人の男を発見することになる。しかし様子がおかしかったのだ。この男は先程出会った男と同じように仮面を被っていたからである。俺は警戒しつつ近づいてみると、男がいきなり倒れて意識を失ったように見えた。だから俺は声をかけることにしたのだ。「おい大丈夫か? しっかりしろって」と男の肩を掴んで揺すぶってみたが返事がないようだな。どうしたものかと思っていると突然目の前にウインドウのようなものが現れ俺に語り掛けてきたのであった。
<特殊クエスト>「謎めいた仮面の男を救い出せ!!」
内容
男を助ける 成功報酬: 無し 失敗条件 死亡 クリア特典 称号 特殊アイテム(マスク)を贈呈します 俺はこの文字を見た時かなり動揺していた。なぜなら俺はこの謎の男の素顔を既に知っていたからなのだ。それはこの俺が転生してきた際に一緒に送られてきた写真の人物と瓜二つの容姿をしていた。だがなぜこんな場所で寝ているのかが全く分からない。
俺はどうしたらいいのかわからなかったので。ひとまずこの男の事は放っておいてこの場から離れてみることにした。そして暫くして後ろを振り返ると、そこにはまださっきの男がいるようだったが、どうも様子がおかしいようである。その事に気付いた俺は駆け寄っていく。その途中でも俺は何度かこの男に話し掛けたのだが、そのたびに同じ返答しか帰って来なくて俺は完全に無視されていたのである。だけど俺の方は何故か気になってしまう存在でもあったので見捨てる事が出来なくなってしまっていた。俺はとりあえず、さっきの俺がこの男を助けようと近づいた時に出て来たあのウインドウの事を試すことに決めていた。俺はとりあえずその画面に表示された説明文を読んでみることにした。
「ふぅ~、なるほどね」
この文章を簡単に説明するとこうだ。俺の前に表示されているウインドウの文字に触れるとゲーム画面のようなメニュー画面が表示されるのであった。そしてそこからさらに詳しい情報を確認する事が出来る。俺はそこで確認してわかったことが一つだけあった。実はこの世界はこの男の記憶の中で出来ており。俺はその記憶の中の人物に干渉する事ができるのだと知ったのである。そしてその事実を確認した俺はとりあえず、この記憶の中から抜け出せるかどうか確認してみることにして実行に移したのだが。その結果、あっさり成功し俺は元の場所に戻って来る事が出来たのであった。
それから俺は、この男が何者で何故このような行動をとったのかを探るためにも行動を起こす事を決めるのであった。だがその時俺は気が付くことになる。先程まで俺と一緒に居たはずの女の姿がいなくなっていることに。だが俺は焦ることなくロゼリアを探すことにする。まずはこの辺りの情報を手に入れるのに街の様子を見に行くとするかと思い俺が再び城に向かって歩いていると。そこに俺に助けを求めて来た少年が現れたのである。この世界の事を知るにはこの世界で一番信用されているであろう王都のギルドに行って依頼を出すのが一番早いと判断し俺はこの少年に付いて行ってみる事にする。この世界について少しでも知ることが出来れば、ロゼリアを見つけやすくもなるだろう。
それに、この世界で生きていく為の資金も稼がなければならないしな。俺はこの世界で冒険者になろうと考えている。俺にはチート能力として神族の力が使えるからな。お金をいくらでも生み出す事もできるはずだが。やはりこの世界で生活していくにはお金が必要になっていくだろうと俺は考えている。その為には俺の力を利用して商売をする必要があると俺は考えたわけだ。この世界では貨幣制度があり、銅貨1枚=100円 鉄貨1枚=1,000 銀貨1枚=10,000 金貨1枚 =1000,000 という事になっているそうだ。そして物価としては、日本と比べるとそこまで高いとは思わないが。ただ俺が住んでいた日本の東京の都心と地方都市を比較すると同じような感覚になる。ちなみにこの世界での通貨は、魔硬貨,神硬貨,宝硬貨の3種類がある。これはそれぞれ100倍の価値を持っており神族は魔硬貨が、その他の人はそれ以外の通貨で流通しているのだ。
俺が最初にいたのが魔王城ということもあって魔王城の近くの街は一番治安が良いらしく、また冒険者も集まりやすい場所だという。だからこの世界での常識や冒険者のシステムなども教えてくれるかもしれないと思ったのである。まぁロゼリアの事を考えれば一刻も早く見つけたいという気持ちは強いのだが。それでも今すぐにどうにかしたいという問題でもなかったしな。この世界で生きるための基盤を作る為に必要な知識は、自分で手に入れていくしかないと考えた。
それに俺にはロゼリアがくれたこのマスクもある。ロゼリアが俺の為に作ってくれた特別なアイテムだからな。それに、ロゼリアの話では俺には俺が生き返った際にこのマスクを渡したいと思っていたという事だったので。きっとこれには意味があるに違いない。そう思いつつ俺は、これから会うことになる少年に心躍らせながら歩みを進めるのだった。そして暫くして俺の視界に巨大な建造物が見え始める。どう見てもそこがこの街の城だった。俺が城の前に着くと門番らしき人に話しかけられ事情を聞かれたのだった。
俺の話を真面目に聞いてくれるか不安だったけど、どうも俺が助けた男の子の父親だったようでなんとか理解してくれたようだった。この人、かなり良い人だった。俺の質問に対して一つ一つ丁寧に答えてくれて。最後には、もし良かったら城で食事をしていきませんか?と言われたのだ。しかも俺の分だけではなく俺を呼んで来た子やその父親の分までご馳走になるとの事である。なので遠慮せずに俺もその言葉に乗る事にした。
城の料理はなかなかのものだった。俺は久しぶりに味のある食事にありつけて幸せを感じていた。
「お父様、凄いですね!」とその子が嬉しそうな表情をしながら、そんな感想を述べると。父親は笑顔で「うん。そうだな」と答えていた。俺もこの親子が本当に仲が良く微笑ましい光景だと眺めていたのだった。するとその父親から話を切り出された。
「君のおかげで娘が助かったんだ! 何か私に出来る事があったら何でも言ってくれよ! 報酬を渡さない訳にはいかないからな」と言われて俺は「ありがとうございます。ならお願いがあります」と伝え、ある依頼を受けて欲しい事を伝えると、その男は快く承諾してくれ、俺は報酬を貰える事になったのだった。この男からの依頼を受けた後は、俺がこの世界に来て最初に来た場所へ戻ろうと思う。だが今はロゼリアが居ない状態だし。まだ俺が居なくなった事で混乱が続いている可能性もあるなと考え、しばらくこの城に滞在することに決めた。
「なら今日はこれで失礼します。この依頼については日が沈んでから実行するのでよろしくお願いしますね?」と俺は伝える。「おう! まかせろって、なっ! お前も手伝ってやるといいぞ! なっ!」と言って息子さんの頭を撫でていた。俺はその姿を見て羨ましく思っていた。俺は家族というものがいなかったから、少しだけそういう関係に憧れているんだよ。俺も妹が欲しいとか思った事もあるし、姉が欲しかったとも考えていた事もあったし、両親が健在だった頃は両親に沢山甘えていた時期だって当然あったさ。だけど俺はこの世界に飛ばされてから今まで、誰かに愛されることもなければ必要とさえされてこなかった。それが今の俺にとってどれだけ孤独か分かるか?分からないだろう。
この世界に俺を転生させた張本人であり、この世界を創世したという女神であるロゼリアーデは。俺のことを見捨ててしまった。俺の事を最初から居ても居なくてもどちらでも構わないと思ってるのかもしれんな。だからこそロゼリエの事が気にかかるのである。あの時は俺と彼女は敵同士で、戦うことになってもおかしくはなかった状況なのだが。なぜか俺は彼女に勝てる気がしなかったのだよ。だがこの世界に存在する他の神々達には俺は勝つことが出来ると思っている。
この異世界を支配しようと考えているのは俺だけではないから、いつかどこかの勢力同士が衝突することになってしまう事は避けられない運命にあると俺は感じていたのだ。だが俺にはまだやるべきことがあるのだ。俺が生きていく為にはまだまだ金が必要になるのでそれを貯めなければならないし、それに、このマスクの使い方も探る必要があるからな。
俺は、ひとまず城の中に居る間は安全だろうとの考えの元この城に世話になることにした。それから数日の間、俺はこの城のメイドさんたちに可愛がられた。特に猫ちゃんが人気だった。この世界では猫は神の使いと言われているらしいのでとても大切にしているのだそうだ。俺はそんな猫たちを抱っこしながら癒しの時間を過ごしていたのである。だが俺の心の中はまだモヤっとしていたのであった。
俺がこの世界で生きていこうと決意してから早くも2ヶ月が経っていた。そして俺はようやくこの城を出る決心をしていた。この城に滞在している間に、この国のことやこの世界全体の事を大体だが把握することができた。そして俺のやりたい事の準備も全て整ったのである。
この国の名前は ガルス と言うようだ。この国は王制をとっているようで王を国王陛下と呼ぶ。王都はガルスと名前が付いているが首都ではなく王都となっているので。おそらく王が居を構える王城がある所こそが本当の王都なのであろうと思われる。そしてこの国は大陸の東側に位置していて気候は比較的穏やかだという事がわかった。そしてここの王様はとても優しい人のようであるという事もわかった。俺が最初に居た魔王城の周辺にあった街はこの王国の領土の中でも端の方に存在し。魔王城はここから北に向かって約5万キロメートル離れた場所に位置しているという事だった。そしてこの魔王城の周囲にはモンスターが生息しており危険な領域として指定されているという。俺が最初の時に出会ったような奴らもいるということも教えてくれた。この世界の生物は人間の他に亜人と魔獣という種族がいるらしくその数は圧倒的に魔族の方が数が多いとのことだ。ちなみに人間は亜人に比べて力が強く。魔獣は逆に弱いという事である。魔族は人間の事を嫌っており滅ぼそうと企んでいる。だから魔族の王 つまり魔王であるロゼリアが魔都を離れ旅をしているという事実に驚きを隠せないのであった。魔族はこの世界の頂点に立っている種族だから魔都を動くことが無いと思っていたのだ。だがロゼリアはその常識を打ち破ったのである。俺はそれを聞いてもなお。彼女の事を信じたかった。だが信じたいのに疑ってしまうこの心の矛盾が嫌になってくるな。だが今は俺に出来ることはこの世界で冒険者として生計を立てていくことくらいだろう。俺はそう思い冒険者登録を済ませる為にギルドへと向かったのだった。そこで俺は受付の人から、ある依頼を受ける事になり。依頼の場所へ向かうのであった。
目的地に着くまでに、色々な人達に声をかけられ俺が困っていると、その人たちは助けてくれようとしたのだが。やはり、見た目が怖くて俺もビクビクしてたので。正直かなり怖い思いをしたのである。そんなこんなで目的に着いた頃には精神的に疲弊しきっていたのだった。そこに待っていたのが俺を呼んできた少年と父親だったのだ。依頼内容はこの近くにある遺跡の調査だったのだ。そこには古代の宝箱などが存在するというのだ。この宝探しがこの世界での初めてのお仕事となるのだった。宝の地図を手に入れた俺だったが、肝心の宝の内容についての情報は何も書いてなかったのである。まぁこの世界に何が有るのかもわからない状態なのであまり期待してもしょうがないのだが。とりあえず行くしか無いので向かうことに決め。俺のこの初クエストが幕を開けるのだった。
このダンジョンに辿り着くまでに多くの戦闘があったのは言うまでもない。その戦いの途中に俺はある事実を知ることになるのだった。この仮面は、俺以外の人が身に付けるとその者の生命力を吸い取ってしまい死に至るという恐ろしい能力が備わったマスクなのである。俺はこのマスクを身に付けると自分の中の何かが変わっていくような違和感を感じていたのである。恐らく俺の中の何かが変化し始めているのではないかと推測するがその真相は不明である。ただ言えることは、このマスクに頼り切らず。自分一人でどうにか出来る部分はなるべく自力で解決できるようにしようと心掛けるのだった。そしてついに俺の求めていた宝を見つけたのだった。その中身を見た途端に俺の中で喜びや悲しみといった感情が生まれ。それらがごちゃ混ぜになった状態で爆発してしまったのである。何故俺がそんな状態に陥ってしまったかというと。それはこの宝物庫で見つけたアイテムがあまりにも衝撃的だったからである。そのアイテムとは 賢者の石だったのである。俺の求める物が、まさかこの世界に存在するとは思ってもいなかったので嬉しさ半分不安な気持ちで一杯になってしまったのである。このアイテムを手放した方が良いのか、あるいは、これから先の為に大事にとっとくべきなのかと悩んでしまうのだった。俺はどうしたら良いかわからず混乱してしまい、結局何も決められなかったので 今はとりあえず一旦置いておこうと思い。その部屋を後にすることにしたのだった。
それから数日後。
俺は、あの部屋がまた開く日が訪れたら再びそこへ行こうと考えていたところ。案外早くその時は訪れたのである。その扉は再び開いたのだった。俺は、今すぐにその部屋に直行するのも良いと思ったのだが。まずはこの国に有益をもたらす物を持ちかえることが最優先だと考えてその事は保留にしていたのだった。俺はまずこの国の王に頼まれた仕事を終わらせた後。俺を呼び出した本人に報酬をもらいに行かなければならないのである。報酬といっても報酬額を貰ったのではなく、この国にある宿屋の1室を貸してくれることになったのである。
俺が借りることになった宿の名前は『銀の翼』と言い、とても雰囲気の良い店で、料理の評判がとても良かったのだ。そして、俺が一番気になっていた事といえば食事が凄く美味しいということなのだ。俺が今まで食べてきたどの店の料理よりも遥かにうまいので毎日でも通いたい気分なのであるが、流石にそこまで贅沢をする余裕は無い為 一日置きに通おうと考えているのだ。
その日の夜、早速俺をこの店へ呼びつけた男つまり国王から依頼されていた用事を済ませようと思っているのだ。俺は、この王都へ来る途中に遭遇した盗賊達のアジトに乗り込んだ時に偶然手に入れた宝石を取り出したのである。そしてその価値を調べようと、その辺の店員に鑑定を依頼した結果 なんと、国宝級の貴重品だとわかったので、その価値はとんでもない事になるはずだと思ってるんだが、俺は一体どんな風に思われるのだろうか。そんなことを考えながらその店をあとにしたのだった。
「さっ!今日はここで一泊することにするからな!」と言って、目の前に見えた大きな城が王都の城だと言われ俺は少し驚いたのである。だが俺も一応勇者と呼ばれるような存在である。王城の中に簡単に入れてしまう事に、若干の罪悪感を感じながらも俺は城内へと侵入する事に成功するのだった。
そして城に入った俺を待っていたものは、王様からの熱烈な歓迎であった。そして俺は王様との謁見が許されると王様の口から俺は正式に勇者として任命されるのであった。俺は、その事を素直には受け入れることが出来なかったので、まずは俺のスキルを確認して欲しいと王様に伝えてみると。俺の望み通り 俺の持っているすべての情報を確認する事が出来たらしい。だがそのスキルの内容が、あまりに強力過ぎるため、王都のギルド本部にて管理して欲しいとのことだと言われたのだ。そしてこの王城の地下に俺がこの城に入るときに使った転移魔法陣があるのでそこから、いつでも好きな時にこの城に来ることが出来るらしいので 俺が暇を持て余したときに遊びに来て欲しいという伝言を残して王様はこの城を去っていったのだ。
それから数日が経ち俺は城の地下で生活を始めていた。この地下はとても居心地が良い場所で しかも王都の街が見える場所にあった。なので俺にとってはこれ以上に無い最高の物件なのかもしれないと思うほど気に入ったのだ。そして俺の生活スタイルはこの王城の中で自由に過ごして。そしてたまに王城にあるギルド支部に顔を出す生活を始めたのである。俺はこの時初めて王都に着てからの数日間で様々な人と出会っていた事を自覚していなかったのである。そして俺が冒険者になってから数ヶ月経った頃、俺はこの国一番の強さを持つ存在になるのであった。だがまだ俺の冒険者ランクはまだFだったのである。
俺は、王城で暮らすようになってからはや2ヶ月が経過していた。その間に俺は冒険者になってギルドの仕事を受けまくり金を稼ぐという事を繰り返していると、いつの間にかかなりの有名人になっちゃってました。そして、この世界に転生してきてから約半年くらいの月日が流れていた。
そんな俺にとある出来事が起こった。
それは俺がこの異世界 ロズワール で冒険者として名を上げ始め、この世界の事を学び始めてから約1年程が経過した頃の話である。ある日の夕方頃、突然俺の家の扉をドンッという音が鳴り響いて誰かが俺の家を叩いたという感覚があった。
この家の鍵を持っている者は俺ともう一人だけしかおらず、俺はこの家に訪れる人は一人しかいないので誰が来たのか直ぐにわかる。俺の家に訪ねて来たのはやはり幼馴染のロゼリアだった。ロゼリアは最近俺の家で暮らし始めたので俺の家に住んでいるのだ。だからこの時間なら確実に居るはずなのに何故か今日は姿が見えないのだ。
そのせいもあって俺は妙にそわそわしてしまっていた。何か嫌な予感がしたので急いで玄関に向かい扉を開ける。そこには予想通りロゼリアの姿があったのだが その姿を見て絶句してしまう。彼女の様子が明らかにおかしかったからだ。俺はすぐに何が起きたのだろうと察知すると彼女に近づいていき話しかけたのであった。
彼女は今かなり危険な状況にあるようだ。
彼女が何故このような状態になっているのか? それを知るためには時間を数日程巻き戻す必要がある。そう。俺とロゼが出会う前 つまり彼女と会う前までの話をしなくてはならない。
俺と彼女が出会い、この世界を救うという目的の為に行動を共にするまでに色々と面倒なことが起こってしまった。それを今から話すとしよう。
この世界に召喚されてから1週間くらいたった時だった。あのクソ王子が俺に
『貴様のような役立たずなど この世界にいらない!』と叫び散らしながら 剣を振り回して俺に斬りかかってきたのである。
もちろん俺は、この世界で生きていく為の術を学ぼうとしているのにいきなり邪魔をされたら困るとばかりに反撃を試みるが相手の方が動きが良く。俺はあっけなくやられてしまう。そこで俺は、自分の力がどの程度なのか知る為にこの王都に存在する闘技場へと向かったのである。そこには多くの強そうな奴らが俺の相手をしてくれた。俺の力はなかなか強く、特に俺が好んで使用する雷魔法の威力が凄かったのである。そんなこんなで、俺はこの国の最強の戦士と言われる存在と戦いたいと思っていた。そんな時 一人の女の子がこの国で一番強いと言われている人物と戦うという噂が流れてきたのである。俺はその話が本当なのか気になり その対戦相手に立候補したのだった。だが、俺がいくら挑戦しても 相手にすらされなかったのである。その時俺は 絶対にこいつより強くなりたい と思ったのだった。その次の日も俺は戦いを申し込んだのだが結局ダメだったのである。だが、それから暫くしてからようやく 俺はその国の最強の男に認めてもらうことが出来た。
その男はこの国の最高権力者の息子だった。俺はその男の人から 自分が使う武器 そして戦いかたを教わる事になった。
その日から俺の修行が始まったのである。それからというもの 俺に襲いかかってくる魔物や 悪い奴を片っ端からボコす日々を過ごし、 この世界について詳しく学ぶことにしたのだ。その勉強の合間には 国の最強である男とその人の娘であるロズと言う女性との稽古も行なっていたのである。ちなみにこのロズという名前は、 この国の人達にとって英雄であり伝説的存在となっている ロズのお父さんの名前を拝借させて貰っている。
ロズは本当に優しくて可愛くて頭も良かったから俺はつい見惚れてしまうほどだったのだ。俺はロズに対して特別な感情を抱き始めている事を自覚し始めた頃に俺はその日が訪れるのを待つ事になる。
そして時は流れとうとうその日を迎えるのだった。その日とは、なんとロズがその人のお嫁さんになるべく 試練を受けることになった日である。その日 その人のお供に成り済ましロズと二人で街を歩いていたが途中で俺は人攫いに遭い ロズだけその人に連れ去られてしまったのだ。その時俺は、 その人が噂に聞く勇者であることは間違いないと確信をした。だがその人も勇者でありながらロズが大好きらしくて、 ロズを取り返そうとしたら殺されてしまいそうだと感じた。
俺は、どうすれば良いかわからず焦ってしまったが、取り敢えず この国から脱出するために転移魔法陣を使える場所に行こうと思いその場所に向かったのだ。そして、そこに辿り着いた時に丁度よく 例の人がこの王都に到着したという情報が入ってきていたのだった。その情報を得た俺は 一先ず ロズを救いに行く事を決めたのであった。
俺が転移魔法陣がある建物から外に出ようとする直前 俺に戦いを挑んで来た者がいた。それはロズに恋をしている その国の男 その男の名前はラスターというらしい だが俺はその男を瞬殺してしまったのである。
その男にロズを助けて欲しいと頼まれたが その前にその男からロズを拐った相手の情報を得なければならないと考えたのでその事をその男に尋ねたのであった。そして俺はその男の口から直接 俺が倒すべき敵の名前を聞くことができたのである。そして俺は直ぐにその場から立ち去る事にした。だが 俺がこの王都を去る直前に俺は、 俺よりも少し歳上ぐらいの女の人と出会ってしまい この女の人との会話に付き合わされることになってしまった。そして俺はその時にロズを助けるためにこの国に来たことを伝えると俺がこの王都にやって来た理由は既に知っていると言われてしまったのだ。
それから数日後に ついに俺はロズと再会を果たすことに成功する。だが なんということだろう。ロズにはもう俺の事を覚えていないようだったのだ。
そして俺はロズを俺の家に連れ帰り。
これからのことを考える事にするのだった。そしてその日の夜 俺は王都の街に出て一人で飲んでいたのだ。俺は酔うのが早い方で、一杯目を飲み干したところで俺は酔い始めて二杯目を注文しようと店に入って行った時だった。急に店の外で悲鳴が響き渡って店内にいた全員が慌てて外へ出ていったのだ。その騒動の中、一人残っていた俺の元に一人の少女が俺の元へ駆けつけて来た。その少女は王都の衛兵だったようで俺を逃がそうとしていた。
そんな状況を見て、俺は直ぐに俺達を襲ってきた奴を懲らしめにいこうと考えていたが、それは止めた方がいい と言われたのだ。なぜなら ロズを誘拐しようとした奴らは恐らく魔王の手下の魔族の可能性があるらしい。それを聞いた俺は 確かにそんな連中を相手にするのは危険だなと 納得してしまい、この一件については諦めて帰ろうとしたところ 俺の目の前に突然現れた ロズの幼馴染を名乗る男が助けてくれたのである。その男の名前は、リリア と言い。彼はロズに好意を寄せている とのことだ。俺は彼に協力して貰おうと思いロズを取り戻す為に行動を共にすることにしたのだった。
だがその男は かなり強かった。その力の差を見せ付けられ そして、 俺が弱いという事実を突きつけられてしまったのである。そして その事実を受け入れられなかった俺は無我夢中で戦うが その攻撃は全て簡単に防がれ そしてあっさりやられてしまった。その光景を目の当たりにしていた俺達は全員言葉を失うほど唖然とするしかなかったのであった。それから俺が意識を取り戻したのはその日が終わる少し前で。そしてその時には既に全てが終わった後で。ロズはその男に抱き締められて涙を流しながら喜んでる姿を見て 俺は自分の無力さを思い知り絶望することしかできなかったのである。
その後 俺の家にリリア達が来て 俺は ロゼからこの世界で生き残るための戦いかたを学び始めた。それから約半年が経過した頃に ロゼに呼ばれて彼女の部屋にいったら。そこには何故かあのリディアと、俺と同じような年齢くらいに見える 俺と同じ世界の人間である黒髪の美少女の姿があったのだ。そして 俺はこの世界に来て以来 初めての自己紹介をすることになる。俺は彼女に名前を聞かれると正直に俺の本名を教えようとしたが、俺の名前があまりにも普通過ぎてつまらない名前だったので。
俺は自分で自分の新しい名前の名付け親になることにしたのである。俺は この世界を征服するつもりだし。だから 俺はこの名前を付けることに決めたのだった。
この世界に存在する言語を全てマスターした今 俺はある事に挑戦しようとしていた。この世界の言葉を使ってこの世界で生活してみようと。だが当然俺はまだ子供なので。この国の中でなら 大人に保護して貰えるはずだと思い。俺はこの国の最強戦士と、その奥さんの元で暮らすことになったのである。それから暫くは平和で何事も起こらない穏やかな毎日を送っていた。俺は この世界に召喚されてから約1ヶ月半が経とうとした頃 遂に俺の人生を変えてくれる出来事が起こったのであった。
ある日 この国に最強と呼ばれる存在が現れたのである。その者は俺とロゼの命を奪おうとしたのだが。俺もロゼもその人物に命を奪われずに済んだ。その人物が あの時の男であることを悟った俺は急いでそいつの所にいき戦いを挑むが 軽くあしらわれてしまい、 結局またやられてしまう始末だったのだ。だけどそこで俺は運良くロゼが持っている神槍を手にすることができた。その神器のお陰か分からないけど俺は、そいつに反撃することができ、見事に勝利したのである。その時にロズを拐いこの国の王になった勇者は、俺が倒したはずなのだ。だが 俺が戦った勇者とは明らかに強さのレベルが違うことを俺は思い知らされた。そして俺はこの国では最強の男を倒したことで英雄として認められ。その国の王様とロズの親父さんから直々に俺に称号を与えることになった。そして俺が最強の存在を倒すのは当たり前だと皆が思っていて。その為 その勇者を倒して最強の存在になると、そう思った奴らが俺に次々と戦いを申し込んで来るようになったのである。それから俺は、ロズを救う旅を始める前に まず 自分が強くなる必要があると考え、この国で一番偉い存在に鍛えて貰うことを決意したのである。その人は俺にこう言ってくれた。「強くなりたいなら私がお前を強くしてやる」俺は、その人が師匠と呼ぶ人に弟子入りし 修行を開始した。その人はこの国最強で 更に凄く強く とても厳しい人だった。その人の元で俺が強くなったかどうかはわからない。ただ その修行中に俺は 自分の本当の力が目覚め 新たな能力を得ることになる。それは、どんなに傷付いても回復するという再生能力であり。それは、 どんな攻撃を受けても痛みを感じることなく行動することができる。というものだったのだ。それを知った俺は、その人にお願いをして俺と本気で勝負をして欲しいと頼んでみた。するとその人も 俺の力を試したいと思っていたのか 俺の提案を受け入れてくれ 全力で俺と戦ってくれようとしたのである。俺はその人を圧倒してしまい そのまま気絶させてしまう。そして俺は、そんな俺を見て呆れた顔をしているロズを抱きしめ 俺に抱きついてくるロズと一緒に その場から消えた。それからロズと二人で楽しく過ごしているとロズが、その人が起きてきた。
その人に俺は事情を説明したが、信じて貰えなかった為。俺とロズの力で証明するために、ロズが怪我をする度に回復をし続け 俺とロズを死にかける程まで追い詰めて欲しいと言うと その人は了承してくれたのだった。そして俺は 死ぬギリギリまでロズを回復させたのであった。そして俺は 俺の言う事が本当だということを理解してもらえたので 俺はロズを家に帰らせることにしたのである。その時にロズは、 何かあったらいつでも俺の家に遊びに来ると言って去って行くのだった。俺は、これからどうしようかなと考えていたらロズを家に戻らせてくれた例の人の使いだという者が現れ その人の家に連れていってもらう事になり その人の家に着くなり俺はその人と、俺をこの国に呼んでくれるように頼みこんだのだ。その人曰く。俺に会わせたい人達がいるそうだ。そして俺はその人と二人っきりで話が出来る環境を整えてもらい、その人と対面したのであった。
だがその男は、俺の期待した反応を示してはくれなかった。その男の態度は、まるで俺に興味がないとでも言いたげな態度であった。そして俺を元の世界に戻すことは出来ないが別の世界に連れて行くことはできる。と言われて。俺は その男に連れられてこの異世界から違う世界に行くことに決めて 俺はこの男に、その世界の名前を聞くとその男が 異世界の名前を言うと。俺がこの男にこの世界にはどれくらいの時間いることができるか聞いた所 俺達がいたこの世界の時間は、俺達がこの世界にやってきた時に止まったままらしいのだ。つまり俺達は時間という概念が存在しない場所でこの世界でずっと暮らしていけるらしい。そして俺は 俺の知らない場所へ行く為に。
その男と握手を交わしたのだった。だが、俺はその手を離すことができなかった。
俺は、この世界を離れる事に決めた後。ロズに別れを告げようと思った。だが俺は、 彼女に嫌われたくなかったのである。だが俺は、彼女が俺に話しかけてくるのを待ち続けた。しかし一向に彼女は俺に話を振ってくれず。俺に近寄ろうともしなかったのだ。そして俺はそんな彼女を見て不安になってしまい。俺は、ロズの事をロズと呼び、 俺の事をリディアと呼んで欲しい と言い。
それからはロズとは 今まで通り仲良く話すことができて、俺も嬉しかった。だが俺は そんな楽しい日々を過ごせたお陰なのか、 俺は少しの間だけ ロズに甘えてしまったのであった。俺はそんな俺のわがままに付き合ってくれるロズに感謝した。そして俺達三人の旅が幕を開け。その旅の途中で俺達は様々な困難に立ち向かう事になる。俺はロゼと、リリアの事を仲間にしてからロゼにロズと呼ばれていたが。俺はリリアにもロズと呼ばれている。
そんなロズを俺は、この世界で俺に唯一優しくしてくれる女性だと感じて。その優しさに俺は 俺は心の底から惹かれてしまったのだ。ロズの側にいたいとそう思うようになっていたのだ。
リリアとの出逢いによって 俺は、ロズと共に魔王を倒しに行こうと考えていたのだ。そして魔王城へ向かう途中のとある村に立ち寄った時 その村は魔物に侵略されてしまっていた。そして その村に住んでいた一人の女性が、リリアと俺達に助けを求めていた。俺達が駆けつけるとその女性はもう虫の息になっていて。俺は その女性の願いを聞き届けるためにロズに この女を助けられるだけの力が自分には残っているかどうか確認したのだが。リリアが俺の目の前で突然光り出し。そして俺とロズ以外の全ての人がリリアが放つ光を浴びたせいか気を失ってしまい そしてリリアはその女性に対して回復魔法を発動させたのである。すると、その女性は助かったらしく、目を覚ますと、俺達がいることに気付き驚いていた。
俺達がこの女性を助けるためにここにやって来たと伝えると。俺とリディアとロズを 助けてくれた その感謝を俺に伝えようとしてくれて。俺に頭を下げてきてありがとうございます。私は、貴方の役に立ちたかったのです と言う。そんな言葉をかけられてしまうと、俺は 思わずその女の事が好きになってしまったのだった。
俺のこの世界の人間としての第二の人生が終わりを迎えた日、俺の魂はあの世へ送られていくのだと勝手に思い込んでいた。俺はその世界での記憶を全て思い出してしまったからだ。
その記憶の中に俺は、前世?の頃の俺が生きていた世界での 幼馴染みの女の子の事が好きで。その子は とても可愛いんだけど、何故か性格に問題があり。
とにかく俺は 彼女の事を好きになった事でその問題だらけの彼女のことを助けたいと願った結果、俺は 彼女と仲良くなることができ、彼女に告白をしたのだが。俺の言葉を信じて貰えず、結局ダメになってしまう。そして、その時の出来事が原因で俺は、自分を変えなきゃと思って今の自分になっているんだよね。
で、俺は、その女の子のことを諦めることが出来ず、何度も あの子に会う度に、あの子のことが好きだということを伝えて あの子が、振り向いてくれるように頑張った。でも、その努力は全く報われないで、とうとう俺は、その子に相手にすらしてもらえなくなって 俺は それから俺は何をしても無駄なんだと思い始めて 諦めることを選んだのだった。
それで、俺は、自分が生きている間に、自分が本当に幸せにしたいと思った人と出逢うことができたのに。
その相手と 結婚することができないまま死んでしまって 後悔しながらこの世界へと生まれ変わったのだった。そして、俺はその人のことが大好きで仕方がなく、その人と一緒に居られることが何よりも幸せなことだったから。
その人と結婚することを望み続けていたんだ。だから、 俺の本当の気持ちに その人が応えてくれた瞬間。嬉しすぎて俺は泣き出したほどだった。そんなことがあった翌日 俺はその人の家で その人のお母さんやお父さんに紹介され その家族と、この家で暮らすようになったわけだけど。
その日の夜 ある夢を見たんだよ。その夢の内容は この世界の俺が死んだ日の事だったんだ。で、夢の最後に俺はこう言われている。「 お前に、本当の力を与えた この世界にはまだまだ沢山の強い者達が存在している。だからそいつらを倒して、お前にもっと強くなる為の力を与えてやる 」その言葉を最後に、俺はその人の家から目が覚めたのである。その人が 俺の本当の強さを教えてくれてから俺はその人に鍛えて貰うことにしたのだった。それからその人の元で修行を始めたのだった。それから数日経っても、その人から修行をつけてもらう事は出来ず。
修行の相手が見つからず 途方に暮れていると そこに現れたのは、この家の家主である俺の両親であり、俺に剣を 教えてくれている人物であり、俺のことを可愛がってくれてる二人の親でもあるのだ。その二人が いきなり家を訪ねて来たかと思うと、俺はその二人に 俺と手合わせをして貰えることになり。俺の実力を測ろうと言う訳である。その二人はかなりの腕前の持ち主なので、その人達と手を合わせるのは、俺にとっても貴重な経験となり。俺の今後の成長の為のいい機会となった。
俺は その人のお姉さんとその人に勝負を申し込んだのである。その人の家は、剣術の名門として有名な一族らしいのだが、その人の姉の方は俺の師匠と互角の強さを持っていたため 俺は本気でその人に挑むことに決めたのだ。
俺が勝てたら弟子にしてほしいと言うと。その人は笑顔で受け入れてくれたので、俺はその人に挑んだ。
結果は、俺の負けだった。その人のお兄さんの一撃を喰らってしまい、そこで気絶して。気が付けば朝を迎えていて、俺は昨夜起きた事を思い出していたのであった。俺の事を心配するその人と、その人の両親の優しさに触れながら、俺はその人達に、これからも宜しくお願いしますと言ってから 家に帰ることにした。
そして、それから数日間 その人達と、俺は楽しく生活することができた。俺がその人達の家族になれたことを俺は 心のそこから喜ぶことが出来たのであった。
だが、俺にはまだやらなければならないことがあるので、その人達の元を去る事にした。俺は その人達に別れを告げ この世界から立ち去ることにしたのである。俺は、自分の住んでいた家に戻り この世界での思い出を振り返ることにすると。自然と涙が出てしまい その感情をどうすることも出来なかったのである。それから少し経つと、俺は落ち着くことができて、 俺は、元の世界に帰る前に、もう一度リゼに会って この世界で俺を救おうとしてくれたリゼに礼を言いにいこうと考えたのだった。そして、俺が再びロゼに会いたいと考えているとその考えを見透かすかのように ロゼとロズが現れたのだった。リリアに話を聞くとロズは今頃ロゼの体を使ってこの世界にいないらしい。つまり俺はこの世界に一人きりになって 孤独を感じてしまう。だが俺は寂しいという感覚に戸惑いを覚えながらも、俺はその世界から脱出する為に。
リリアの手を握ると俺はその世界から抜け出すことにして。
そして、気が付いたら、俺達は森の中に居て。リリアが、近くにいるとリリアが言ってきていたので。俺は、 リリアの事をリディアと呼んで欲しいと言われて、リディアはロズの体を乗っ取っている状態であると、説明をしてくれて。
俺は そんな状況であるにもかかわらず。リディアが側にいてくれたおかげで安心した俺は、少しの間だけ甘えさせて貰うことにしたのである。そして、俺はリディアをリディアと呼ぶことにして。俺はリディアの事をリディアと呼び捨てで呼ぶ事にしたのであった。そして、俺達はその森の中にいると、リリアが突然姿を消して。その事に驚いた俺は慌てて周りを探し回ると。リリアは無事だったみたいで一先ず俺は安堵するが その後、リリアを叱りつけることになる。リリアを危険に晒した罰だと伝えて。リリアを叱りつけて。俺は少しの間リリアの事が信じられなくなったくらいだ。
だが、リリアは俺のその態度にショックを受けたのか泣いてしまう。そしてリリアは俺に向かって抱きついてきたのだが そんなリリアが愛おしくなり 俺はリリアを抱き寄せてしまったのである。そしてリリアに もう二度とあんな危ないことはしないでほしいとリリアに伝えると リリアに わかった。もう絶対にあんなことはしたくない。だから許してくれると嬉しいなと リリアに言われたが それじゃぁダメだと思い 今回のことでリリアが危険な目にあったのだから、暫くの間は反省するようにとリリアに伝えて 俺は しばらくリディアを側に置き ロディアと一緒に過ごすことに決めたのである。
俺は リザレスと別れるとロズと共に行動を開始した。ロズと俺は共に行動する中、俺はリザレスに貰った魔道具を使い、ロズと一緒に魔物の気配がある方へ向かって歩いていくと。そこには巨大なゴーレムの姿があり、ロズがその姿を見て、あれは何ですか?と尋ねてくると。俺は、恐らく魔王軍の兵器だろうと予想を立てるが、ロズはその答えに疑問を抱いたようで首を傾げて そうなのかと考え始めるロズ。そして俺が ロズにこの事を伝えようと口を開こうとするが先に口を開いたロズは。
ロズがその言葉を口にした後、ゴーレムはその大きな右腕を振り上げると。俺達に襲いかかってきた。
そして 俺は、目の前に迫ろうとしていた拳に対して、避けようとするが 体が言うことを聞かず避けることができずに。その一撃を受けてしまいそうになる。しかしそんな時に、ロズが俺の前に飛び出してきて、そのまま攻撃を受けて吹き飛ばされてしまい。地面の上へと倒れてしまう。
その光景を見て、俺は思わず叫んでしまい、そして、怒り狂った状態でゴーレムに立ち向かうが、相手はかなり頑丈であり。しかも相手の方が俺よりも強く。俺では 敵わずにいたのだった。だが このまま負けるわけにはいかない。せめて リディの仇を取るまでは。そう思い。俺は どうにかして倒せないかと考えていると。
ロズが起き上がってきて 俺の隣に並んで 戦うと言ってくる。俺一人でも何とか戦えるだろうと考えていたのだが。ロズのやる気に満ちた目を見ているとそれを言うことが出来ず。
仕方なく俺は 二人で一緒に協力して倒すことにして。そして、俺達が力を合わせても 簡単にその巨大な体に傷をつけることはできなかった。俺とロズは互いに背中を合わせながら戦闘を続けていくと。ロズに魔力の残りが少なくなっていることを伝えられ。どうするかを考えなければいけなくなるが。その時に俺は一つの案を考えた。それは俺が魔法を使って ゴーレムの足を潰してしまえば、この巨体の動きを止めることができるかもしれないと考え 俺は実行に移した。
まず最初に俺は 風系統の魔法を使ってゴーレムを吹き飛ばすことを考えた。そして俺達に向けて放たれたその風の刃に俺は意識を集中させ、魔法の力を上昇させると その刃を消滅させることに成功する。
だが その直後。別の方向から俺と向かい合っていたはずの、ゴーレムが放ったと思われる岩石が俺の方へ飛来してくると、それに気が付くことができた俺は、その攻撃を間一髪のところで回避する。
すると今度はその隙を狙ってきたかのように。再びその拳を 俺に向け振るってくると。俺達の視界にその姿が映し出されていたのである。それを見ていた俺は 咄嵯の判断により、ロズを抱え込むとその場から走り出して離れる事に成功した。そして俺は 今の一撃を食らっていれば、死んでいたかもしれなかった。という恐怖感を覚えると。
冷や汗が流れ落ちるような気持ちになる。そして俺はそのゴーレムを睨みつけながら。今のは流石に油断をしていたから、死ぬところだったと、自分自身に言い聞かせて 今の一瞬の出来事を忘れて冷静さを取り戻そうとすると。俺はここで、ロズが俺の腕の中からいなくなったことに気付き 何処に行ったんだと思い。
ロズのいた方向に視線を向けてみると、ロズは 先程 自分が立っていた場所の近くにおり。そして、そこに立っている、自分の腕を眺めながら不思議そうな顔をしているロズを見つけるのであった。俺がその様子を伺っていると そんな俺の方に顔を向けると。
どうして 私の事を助けてくれたのですかと俺に向かって尋ねてきてくれて。
「どうしてって言われてもさ。ロズを庇わなければいけないって思って。その事を俺は自然にやっただけだ」
俺のその言葉に、ロズは何も言わずに 何故か頬を赤めるだけで何も答えてくれなかったが、そんなやり取りをしている間に あのゴーレムは動きを止めており。その事に違和感を感じた俺だったが、俺はロズと共にこの場から立ち去ろうとするが。
ロズは、俺にこの場所に留まっていてほしいと言い始めて。そしてロズは。その巨大な存在と向かい合うと、ロズの瞳から光が消え去り 無表情になってしまう。そしてロズの手に持っていた剣が地面に落ちてしまうと、そのロズはまるで糸で吊られている人形のように 不自然な歩き方で移動し始めると。そしてその体は宙に浮かび始め その上空へと浮かんでいくのであった。俺はその様子を見ていて ロズの様子が変なことに気付いた。そしてそのロズは。自分の意思で動いていないことは直ぐに分かったが。俺も何をすれば良いのか全く分からず その場で立ち尽くしていると。そんな俺に、そのゴーレムが攻撃を仕掛けようと 両腕を大きく広げると。そこから岩を飛ばして 俺に直撃させようとしてきたのである。
俺がその攻撃を避けられないと感じ取った直後。俺の体を何か暖かい物が包み込み。そして俺を敵の攻撃から守ってくれたのであった。俺を包んでくれた温かい物の正は俺の肩を後ろから掴んでいる リゼの手だと気づくのにそれほど時間は掛らなかったのである。俺はリゼの顔を見ることはできない。何故なら彼女は、俺に抱きついたままの状態でいるからだった。俺は、リゼに感謝を伝える為に声を掛けようとするが、その前にリゼから声をかけられて 俺は言葉を発することが出来なかったのである。そしてリゼは、その温もりから、今すぐ俺から距離を取ってほしいと伝えてきて 俺はそんなリゼの言葉に従うように、リゼから離れたのだった。それからリゼにお礼を言い 今起こっている状況を詳しく聞くことにすると。ロズがそのゴーレムに体を奪われて操られてしまい。ロズの魂が 今は体の中に閉じ込められている状態であるということを説明される。俺はそれを聞くと すぐにリディアと連絡を取り合って。リディアにリリアの体を借りることが出来るかどうかを聞いてみた。その結果、リザレスに頼めば、その問題はすぐに解決するとのことで。その言葉に安堵した俺は、その方法を行ってくれるよう リリアとロズにも伝えてもらいたい事を伝えてもらうと リリアは快く受け入れてくれた。リディアは少し考える時間が必要だということで、俺の頼みを受け入れると その方法を実行するためにリリアの体から出ていき そして、ロズの側にリリアが降り立った後、俺が ロズを抱きしめるようにしてください。リリアに言われたとおりの行動を行い。俺の目の前にいるリナは ロズの事を抱きしめ始める。その瞬間 俺達全員にリリアから説明を受けた時のような情報が俺の中に入り込んできて その情報を理解できるようになった俺は ロズの事を任せるとリリアに伝えた。その直後、リリアと入れ替わるような形で リリアの体に戻ったリリアはそのままロズの体に覆い被さり リリアの体から抜け出すようにしてロズの体内へと侵入していく。そしてロズはリディアに体を乗っ取られた状態になったが。
その直後 ロズは リディアによってロズの精神世界に連れて来られた。その後 リリアの体に入ったリディアがロズに話しかけると。俺の想像通り、ロズはその言葉に対して 否定の返事をするのだった。そしてリディアの口から、その事が事実だということがわかる言葉を告げられると その真実を知ってしまったロズは完全に心が壊れてしまい。その状態のまま俺の前に姿を見せることはなく。俺達は、ロズに掛けるべき言葉を探すのであったが。俺にはその言葉が見つからずに その日は解散となったのだった。そして次の日の朝になり 目を覚ましたロズと、そして、まだ目を開けない状態のロズと入れ替わったリシアと一緒に朝食を取っていると。
ロズが 私のせいで迷惑をかけてすみませんでしたと謝ってきたが。それに対して俺はロズは気負う必要はないと答え そしてこれからも 一緒に冒険者として行動して欲しいと告げると ロズは ありがとうございます。と頭を下げてきたのだった。そして朝食を食べ終えて ギルドへ向かう準備を整えた後俺達が集合場所である 広場に行くと。
そこには既にロズが待っていた。そして俺達に気づくと。
こちらの方へ歩いてきて。俺達の目の前までやってくると。おはようと挨拶をした。
「おはよう ロズ」
俺がそう言うとその隣のリナも それに合わせる形で、
「お、おはよう ロズさん」
そう言いながら 恥ずかしそうにしているのだった。
だが その隣にいたリザレスはそんな俺達の姿を見ていたせいなのか 顔を赤らめてしまうのである。
するとロズも何となくではあるが、今のリザレスが俺に好意を抱いているということに気が付いたようで 微笑ましい目をしながら その光景を眺めていたのであった。俺はその光景を見ながら ロズに視線を向けるのだが。その時 突然、視界の右端の方に何かが現れたと思ったら 俺にぶつかってこようとしていた。俺がそれに気が付き避けると同時に。そいつは俺に体当たりを仕掛けて 吹き飛ばせてそのまま地面に転がったのである。俺がその事に驚いて そっちの方向を向いていると 今度は左から何かが迫ってきていたので 今度は避けることができたのだが。そんな感じで次から次に攻撃を繰り返して俺を攻撃してくる者の正体を確認する為 俺が視線を向けると そこには俺に攻撃を繰り出してきている奴の姿が見える。
それは先程から 何度も攻撃を仕掛けてきてはいるのだけど 全て避けられてしまっているので、苛立ってしまったのか 更に攻撃が激しくなってきていて。その人物の額に角があるのが見えたことで、その者が魔族だということを確信することができたのである。その魔族は、見た目こそ 二十代後半くらいの女性の姿をしており髪色は綺麗に整えられている銀髪。そして服装は 白を基調としている騎士風の甲冑を身に纏っていて。背中に 一振りの大剣を背負っている。その女性の顔を見た俺は。一瞬誰かに似ていると思えたが。思い出せなかったため。取り敢えずこの女性は敵として対処することにして 俺を襲おうとしてくる女と戦おうとするが。そんな戦いを繰り広げようとしている俺たちの元に。
リデアが現れて。その魔族の女性に向かって蹴りを放つと その衝撃により、その女性が後ろに吹っ飛ばされていく。そして俺とリデアの戦いが始まると。ロズはリリアを自分の体に呼び戻し。
ロズに抱きついているリザレスの相手をすることにしたのであった。リザレスは 先程まで自分の気持ちを抑えきれなかったらしく リリアと入れ替わりで出てきたリリアに。思いっきり抱きついてきて。その行為にリリアは とても戸惑っていたようである。リデアの一撃を食らい 地面に激突してしまった女性の魔族は、ゆっくりと立ち上がりながらリデアスに怒りをぶつけてはいたが リアナに怒られているのが効いているのかどうかはわからないけど 俺に対して攻撃をすることは無かった。
そのリデアと俺はというと戦いが始まってからはお互いに相手の様子を伺い合うだけで。どちらかと言うと戦う前からお互いの実力を理解し合っているといった雰囲気だと感じた。俺がそんな風に思っていながら相手の出方を伺っていると そのタイミングを見計らうように その女が攻撃を仕掛けてきたため。
俺もその動きに合わせてカウンターの攻撃を仕掛けると。女は、俺の攻撃を避けることができず その攻撃を受けたので俺はすかさず 反撃に出るが、女はそれを大剣で受け止めて、そのまま力押しに持って行こうとした。俺はそれを受けて立つつもりは無かったのですぐに後方に飛んで距離を取ろうとするが。その女も直ぐに追いついて来ようとしたため 再び距離を取った。それからも暫くの間 攻防を繰り返すが どちらも決定打になるような攻撃を受ける事が出来ない状態で。
このままでは 勝負がつかないと判断して俺は魔法で決着をつける事にしたのである。
俺はその女を確実に倒すために、氷属性の魔法を発動させることにしたのだ。そして、その女の足元に、氷を発生させ その足場を不安定にさせていった結果。俺は、その場から飛び上がり。
俺の体を覆っていたオーラが槍状へと変化し その矛先が女へと向かっていくと。俺の技に対して 咄嵯に防御の体勢を取ってきた女だったが。俺の放った槍状のエネルギーの直撃を受けた後 かなりのダメージを受けてしまったのか その場に倒れ込むのだった。
そして俺は リディアの意識が戻ると。
俺の方に視線を送ってくるのだった。そして俺は リディアの体に宿っていたリディアと交代する形でリリアの体に戻ると リザレスの方へ歩いて行き。リザレスのことを抱きしめた。そしてリザレスのことを解放した後 俺達はそのまま街へ向かい。そしてギルドに向かうのだった。
その後、受付に並んでいる人達の後ろに並んで 俺達が順番に呼ばれていくまで待っている間に 俺の事をチラチラ見ている冒険者の姿が何人か見られた。そしてその度に リリアが俺に何か言いたそうな顔を向けてくるのが分かるが。俺は敢えて気づかないフリをしておくのだった。そして、ついに俺達の番になると。まず最初にロズが自分のランクとステータスを教えてくれと言われたので 俺達もそれに続いてステータスを伝えていくと。その事について質問してきたのは ロズだけじゃなくてリリス達も同じ反応を見せた。そして俺達は 自分達の能力の高さについては特に説明しなかったが。受付の人に「凄くお強いんですね。それで今日はどのようなご用件でしょうか?」と言われると リザレスの事でギルドマスターの所に行かせてほしいことを伝えたのである。その受付は ロズのランクがDなので、少し不安に思ったが。俺とリリアとロズに俺とリディアはB以上の冒険者であり。俺とリリアがC。リディアがDであり リザレスに至ってはまだギルドに入っていないFの初心者であるため 俺達が一緒に居れば問題無いだろうと判断したようだ。その結果、俺はギルドカードを渡される前に そのギルドカードには偽造防止用の特殊な細工がされていると説明され 更に、ギルドカードの裏面にある情報欄に記載されている 俺の情報についても教えてもらった。そしてその事を知ったリディアとロズは 驚きながらも俺の事をじっと見つめていた。まぁ 当然の事だが、リディアは 自分の持っている知識には無い事柄ばかりだったので、物珍しそうに リデアと二人で俺のことを観察し続けていたのだった。そしてロズは ロズの持つスキルで俺達が 本当にAクラスの実力者かどうかを確かめる為に 鑑定のスキルを使ったようで。ロズはその結果を見てかなり驚いているのだった。そしてギルドの職員にロズとギルド職員が 一緒に奥へ連れていこうとしていたが。俺がロズに、これから俺達はどうすればいいんだ? ロズが付いてこいと言ったから素直に付いてきてはみたが。この後俺はどうすれば良いのか 分からなかったので ロズが俺の事を ロズの自宅まで案内してくれたらそこで解散するつもりで ロズにそう告げると。俺が今居る場所からロズの家までは 徒歩で10分くらいの距離だったので 歩いて帰ることにしようとした。その事にロズが、それならば 私の家に来るように言ったので。仕方なく その言葉に従って俺はロズの家に寄っていくことになったのだった。
「さっきも確認したとは思うけど。一応もう一度、自己紹介しておこうと思うんだけど。
私はロズ 年齢的には23才なの。私ってこんな性格だから、みんなから良く勘違いされやすいのよね。でも こればっかりは自分ではどうしようもないと思っているのよ。
そして職業の方なんだけど 私は聖騎士の称号を貰っているわ」
俺が、そんな話を聞いていたらロズって23歳だったのかと。内心で思ってしまったが 見た目が、俺よりも3つ4つは年上な感じにしか見えないんだよな。
そして、俺も改めてロズに向かって自己紹介することにする。そして、俺は自分の名前を名乗ったのだが 俺がこの世界の住人じゃないという事も話しておいた方が良いかと思って 俺は自分が元居た世界の人間で ある理由で、こちらの世界に飛ばされてきた事を説明したのだが。俺がこの世界に召喚された理由はリザレスが関係していることや 元の世界に未練はないことや 今の暮らしに不満があるわけではないということなどを俺が話すと その事を信じてもらえるように俺は全力で訴えたのだ。俺のそんな必死な様子に。最初は半信半疑の状態だったロズなんだけど 俺の話を聞き終わる頃には俺が真剣に語っていることが分かったのか その表情が段々と柔らかいものに変わっていった。それから、俺が何故ここにやって来たのかということについて詳しく説明したところ。俺の話し方が上手くなったり。身振り手振りが大きくなって、一生懸命伝えようとする姿を見ているうちに 俺のことを信じてくれたのか。それとなく俺が言ってきた事は本当なのかと聞いてきたりした。俺は、その質問に正直に答えるしかなかったので。その通りだと俺が言うと 俺が嘘をついていると疑われたり 何か裏でもあるのではないかと疑われると嫌だった為。その質問に対して 正直に全て答えたのである。
その事がきっかけとなってロズは俺に質問をし始めたのである。俺が、リザレスに気に入られたのは何故かと そして、どうしてそんなに強い力を持っていられるのは何かと聞いてくると俺は、その問いに丁寧に回答をした。すると、ロズは俺に抱きついて泣き始めてしまうのだった。
そして、俺はそのロズの背中に手を回し優しく撫でながら、暫くの間慰め続けることになる。
その後 俺は落ち着ついたロズに連れられて。彼女の家に寄り、リザレスを連れて帰ったのだった。それから リザレスのことは、ギルドに連れて行った時と同じメンバーに任せて。
リザレスの今後の扱いに関しては俺が口出しするわけにもいかないと思ったので 俺が勝手に決めるよりは、リザレス本人の意見を聞いて決めたいと思っていたので。とりあえずリデア達に、任せることにして、俺とリディアが 俺達の自宅に戻ってくると。リデア達がリザレスの部屋で リリアに魔法の勉強を教えているところだった。
俺が帰ってきたことに気づいたリデアは 俺に、少し付き合えと言ってきたため。リデアと一緒に庭に出ることにしたのである。それから俺は リデアに魔法の事を聞かれたので 俺が持っている魔法に関する知識で 知っていることを、出来る限り教えたのであった。それから 暫くの間、リデアに俺が教えられる範囲内の魔法について教えていた時に。リデアが俺のステータスをみたいと言い出してくると。俺は、その要求に応じてステータスを見せてあげた。それを見たリデアはかなり驚いで
「まさか、こんなに強い人が居たなんて。
それにレベルだって凄く高いのに。何で今までギルドで見かけたことが無いの? 」と、言われてしまい。俺自身も、その疑問については俺も同じことを考えていたので そのことを口に出すと。そのことについては俺の持っている固有スキルに理由がありそうだと リデアは言い始めるのだった。俺はその事に 俺が持つ固有スキル【異世界からの贈り物】について話すと。その内容について興味を持ったらしく。俺が持っているスキルについてももっと知りたいと言われて俺はその質問に一つ一つ丁寧の答える事にしたのである。その事にリデアは俺のことを信用してくれて俺が 自分に対して嘘をつくことはないと判断してくれるのだった。その事に俺は 嬉しく思うと同時に。俺は、俺自身の事をそこまで信頼してもらえたのが初めてのことだったので 凄く感動してしまうのだった。俺の事を、リデアは信じてくれているようだった。その事によって俺は 初めて、自分の事を受け入れてもらえた気がしたのだった。
それから、その事がきっかけで 俺とリデアとリリアは 一緒に過ごす事が多くなったのである。俺はリデアが俺の事を見込んで 一緒に過ごしてくれていることを理解していたため。
リディアの面倒を見ることはもちろん リリアが、俺の事を頼ってくる時には、可能な限り リリアの事を優先する事にしている。そしてリデアの用事がある時は俺はその手伝いをするといった感じに過ごしていた。そしてリデアは ギルドでは受付の仕事をしていて。リデアは、リデアの持っているスキルの中に、鑑定系のものがあるらしく。ギルド職員の仕事をしていると、相手の事を調べるために必要になってくることがあるようだ。リディアもリディアなりに頑張ってはいるのだが。まだ小さいこともあって リデアのサポートがどうしても必要なようで 俺が手伝うときも結構あった。リザレスについては。リザレスのスキルは特殊過ぎる上にあまりにも規格外すぎる能力を持っていることもあり 他の人達の目もあることから 基本的にはリディア一人に任せる事にしたのである。そのため俺は、俺にしかできないような仕事を引き受けることにした。それは 俺にしかできないことは意外と多かったので、それをこなす事で、お金を稼ぐことができるから一石二鳥なのだがな。そんな訳で、俺は リデアがギルドの職員として働くときには、一緒に働いて。リデアが受付を担当するときは一緒に ギルドの仕事を手伝うことにして。
そしてロズの場合には 俺とリデアとリリアの3人でギルドのカウンターに立って。リディアの面倒をみる事にしたのである。そうやって俺たち3人はギルドで働くことになった。そして俺は、リデア達と協力して、俺にしか出来ない仕事を率先して受け持つようにしているのである。そんな生活を俺はしていたのだが。リデアが俺に対して、俺のスキルが 他人と比べて異質過ぎて 余り人に見せない方が良いかもしれないと言った。確かにそうかも知れないな。リデアがそう言うからには、そうなのだろうし。俺はリデアの言葉に納得してしまった。
リデアから言われたことが事実だと証明されてしまった以上。俺はその言葉に従っておくことにするしかないと思い リディアにあまり他人の前に出て目立つことを控えるように伝えた。それから 俺達は、ギルドで働いている間はなるべく目立たない様にしようと相談することにした。そして俺はリディアに対して自分が持っているステータス画面やスキルを見せないようにして。リディアが誰かに見られて問題になりそうになった場合には 俺の方で対応するとリデアと二人で決めたのである。
その話を、リデアから聞いた俺はリデアの提案を素直に受け入れて。
俺自身が 自分のステータスやスキルに関して極力表に出さないようにしようと考えたのである。まあ、元々ステータスもスキルも普通じゃあり得ないぐらいの数値なんだけどな。それでも この世界で、その数値の高さから注目されると、俺が俺であると言う事を隠そうとするリデアの立場が危なくなってしまうので それだけは絶対に避けなければならない。リデアに迷惑をかけることになるんだったら、俺は自分の身を削ってでも その事を防ぐようにする覚悟だ。リデアが俺を信じてくれたことで俺は 自分が自分で思っていたよりも遥かに嬉しいと感じた。俺みたいな存在を受け入れてくれる人がいるという事は本当に奇跡的なことだと思っているのだ。だから、俺もそんな人たちの為に頑張ろうと心の中で思っている。俺はこの世界に来て良かったと思う。そして俺は そんな思いを感じながら、ギルドで働き始めた。そのギルドでの毎日の生活は、とても充実したものだったと言えるのである。そして俺がロズと出会ってからは、ギルドに俺目当ての女性冒険者が集まって来るようになった。そんな女性たちを ギルドに来店してくれたリデアが追い払うという場面を目にする機会が増えていくのであった。だが そのおかげもあって ギルドを訪れる女性の冒険者が、かなり減った。それから俺とリデアがリデアの部屋に居座るようになったのを見て、俺に惚れてしまったリデアが リデアに告白してくる女性が増えたりするのだが。俺がモテ期到来な状態になっていたので、俺にとっては 嬉しい限りで、別に断る理由もなかった。俺は俺のことを大切にしてくれる人にだけ 誠実に接するべきだと思っていて。俺の内面を知って、それでもなお俺に愛想をつかさないでいてくれた人となら結婚を考えても良いかなと思って 告白してきた人を全員断わっていたのだ。
そんな中 俺に告白をしても、断られることがわかっていても。俺に思いを寄せる女性は増え続けていたのである。
そんなある日 俺に対してのアプローチが激しくなってきており その対処にも困ったため リデアに助けてもらう為に俺は、ギルドに向かうことにした。
そしてギルドに向かったのだが ギルドに俺が入って行ったとたんに。俺が、いつもと違う格好をしているので。俺は注目の的になってしまう。それから俺は、リデアの姿を探した。ギルドの中は広く。探すのに少し時間がかかった。そして俺はようやく見つけたと思ったが なぜかリデアと一緒にリデアの妹のロズまで居たのである。俺が二人を見つけると向こうから声をかけてきたのだった。
「あら?やっと私と会ってくれたね。ずっと待っていたんだからね?まあいいわ。今日はそのおかげで良いものを見ることが出来たんだし。それで私のお願いを聞いてくれる気になったの? 」と ロズは笑顔で言ってくるので。リデアと妹の方にも挨拶をしておかなければと思い。俺はリデア達に近づいて行き 軽く挨拶をする。俺とリデア達が、お互いに自己紹介をし終えると。そのタイミングで受付にいたリデアが、受付に戻ってきた為、俺が、リデアに会いに来た用件を話す。俺が会いにきた用件の話が終わるとロズが 俺のことをじっと見つめてきて。何か言いたげな表情をしていた。俺は一体何を言われるのかと思っていたら。いきなりリデアに、俺のことについて色々と質問してくるのであった。それから俺はロズに俺についての事について、俺の知っていることを包み隠さず正直に伝えたのである。それを聞き終えたリデアは。ロズの言っている事が、全て本当であると判断したようで リデアと妹は 真剣に俺の話を聞いてくれた。
そして リデアとリデアの妹とロズの三人が話し合った結果。俺が、この国の王都に行っている間の 俺の身柄の安全を保証する代わりに 俺のステータスについて秘密を守ってほしいという話で落ち着いたのである。
その話し合いが終わった後に。俺のところに俺のファンの女性が押し寄せて来たのだが。俺のステータスを見たことがない人が殆どだったようで。俺の強さを目の当たりにして俺を一目見ただけで、その女性達は俺を諦めてくれていたのだった。俺はそのことにほっとしたのだった。俺はその日、無事にギルドの依頼を受けることができて 俺はリデアと一緒に、リデア達が住む家に戻ってくる。リデアが俺に対してお風呂の準備ができていてると言い出したので。俺とリデアは、一緒にそのお風呂に入ることにしたのである。俺としてはリデアと一緒のお湯に入っても全く嫌ではないどころか むしろご褒美に近いのであるが。俺は さすがにそれは不味いと、自分の理性を保つ努力はするべきだろうと考えて我慢している状態である。
それから、俺は、ギルドでの依頼の報告を終えた後。俺は リデアとリデアの家族と一緒に食事をしてから、その日を終える。それから数日後、俺は、リデア達の住む家から旅立っていったのである。俺は俺の故郷に戻ろうかと一瞬考えたのだが。まずはこの国に、俺が今どんな状況になっているかを自分自身の目を使って確かめたかった。だから俺は 一度この国から出る事にする。
リデアとリデアの二人の家族に、また遊びに来ると伝えてから。俺は国を出て、それからは 俺は俺の目的を果たすために、俺の生まれ故郷を目指すのである。そしてその目的を果たし終わった俺は。再び、リデアやロズのいるこの国に戻りたいと考えている。
そうして、俺は自分の故郷の街を目指して移動を始めた。それから、俺はモンスターとの戦闘もそこそここなせていたので、道中で襲ってきた魔物達を相手にしながら。俺は俺が住んでいる街の周辺にまでたどり着くことができたのである。
そして 俺が暮らしていた町が見えてくると、懐かしい気分になるのだが。そこで俺が目にした物は。俺が住んでいた時とは全く違って。廃墟のようになっていて。俺は言葉を失ったのであった。俺が生まれ育った家があった場所は、既に瓦礫と化してしまっており。
もう、そこには かつての俺が過ごしていた頃の思い出が詰まっていたあの家の跡形もなくなっていた。俺がその景色を見ていることしかできなかったのは 今の俺はこの世界の俺であって。この世界の俺とは 何も関係がないからである。俺は、この世界に生まれ変わってから この世界を好きになっていた。リデアと出会ったから、リデアとロズという仲間ができたから。リデアや、ロズや、そしてこの国の人たちが俺に優しくしてくれたから、俺はこの世界に生まれてこれた事を感謝し この世界で幸せになりたくて 頑張って生きていこうと思っているのだ。そして俺には大切な人がいる。そんな人達がいる限り 俺は絶対にこの世界で生きる事を諦めたくないと思っている。だから、俺は諦めずにもう一度。この場所で 俺の生まれ育った家で生活できる方法を何とかして探そうと決心して その場所を離れようとした時に俺は何者かによって、俺は攻撃されそうになり それを、間一髪避けることだけは出来たのであった。すると俺は後ろを振り向いたらそこに居たのは、見知った相手であった。
「お前 こんなところで何をやってんだよ?」
「久しぶりだなぁ 元気にしてたか?」
とその男が言ったので。俺も 男に話しかける。そして 俺が、その男の顔を久しぶりに見ると その顔立ちからして その男は俺の兄であると確信できたのである。それから兄に事情を説明しようとするのだが。
「今は説明している暇はない お前も、この世界で生き残っていたんだな。だが残念ながら ここで俺は お前を殺す」
「はっ!?」
「何がなんだかわからないが。まあそういうことだ じゃあな!」
俺は 突然目の前に現れた、俺の兄弟と思われるその男が俺に向かって、いきなり俺を殺そうと攻撃を仕掛けてきたため。俺は、その攻撃をかわすことは出来たが。それでも俺は、その兄弟をなんとか説得しようと その男を説得しようとしたが。
俺のその願いは聞き入れてもらえず その兄弟は俺に襲いかかって来るので。俺は仕方なく、そいつを倒すことにする。俺は その男の魔法を避ける際に、俺が持っている杖で。俺の弟に一撃を入れることが出来たので。俺が弟に対して反撃しようとした瞬間。弟の体の中から黒い物体が出現して、それが大きな化け物のような姿に変貌していったのだった。俺は それを見て 驚いたのである。
そんな状態のその怪物に俺が驚いて動きが止まったその隙を突かれて、弟にその俺を殴り飛ばされてしまい。俺は意識を失ってしまったのであった。それから、気がついた時には 俺はどこか分からない場所で横たわっていて 目が覚めると。そこには ロズとリデアとロズの妹と、それと知らない女性が立っていた。
俺はその女性に助けてくれたお礼を言いたい気持ちでいっぱいなのだが。その女性が誰なのか分からなかった。その女性に 俺はどうして、ここに連れて来られたのかを聞いてみたところ どうやら俺は、その女性の奴隷になったらしく その女性は その女性に命令されるままにその女性が住んで居る屋敷に連れて行かれたのだった。その後、その女性と話をしていると、俺も女性のことを色々と聞いてみたのだが。その女性は、俺には何も教えてくれないので困っていた。だが、女性は、その俺の疑問に答えてくれなくて。
結局、俺は。自分についての情報を手に入れることはできなかった。それから数日、その女性は忙しいみたいで俺の前に姿を現すことはなかったので 俺は俺で勝手に情報収集をしたりしていて。そんなある日の事、俺が、いつも通り情報を集めようと 外をうろついていると 俺は俺の幼馴染で。そしてこの国でも人気の高い美人で有名なリディア王女と偶然出会う。俺はリディアと話す機会が得られた為 リデアに頼まれた事について聞くと。彼女はリデアが頼んできたことを俺に伝えるのだが その内容というのがリデアは、ロズから俺がロズの妹のリデアと婚約をしていないと知って 妹との交際を進めようとしているので。妹のためにロズに協力して欲しいと言っていたようなので。俺はリデアに協力しようと思い リデアに、リデアの妹のロズに会いに行く約束を取り付けることに成功する。それからしばらくして 俺がリデアの家に訪れてロズに会うことになるが 俺はそこで衝撃的な光景を見てしまう。ロズは、ロズの部屋の中で、ロズの妹のリデアに、服を脱がされている最中であったのである。ロズは 抵抗していたが 俺の存在に気づくと。俺のことをリデアだと勘違いをして そのまま俺の前でリデアはロズに無理やり脱がしていた服を着せると。ロズは気絶してしまい そのあと俺はロズの妹であるリデアの事を、少しばかり怒ってしまう。俺はリデアのことを 自分の恋人として見ている。それに俺のリデアに無理矢理こんなことをさせたリデアの妹であるリデアが、許せなかったのである。リデアはその俺の言葉を聞いて 申し訳ない事をしたと思っていた。
そのあとリデアは、ロズに服を着せた後に ロズが目を覚ますまでリデアのベットに寝かせて 俺に謝った後 リデアは自分の部屋に帰り ロズの看病を始めるのだが その日以来 ロズがリデアの婚約者になったという話は聞かなかった。俺がロズに対して怒ったことがリデアには堪えていたようである。リデアは俺の事が大好きらしいのだが 俺の事を異性として見れていなかった。そして、それは 今もそうであるようだ。俺はリデアに リデアが俺のことに対して異性として好意を抱いてくれていることを伝えてみると リデアも 自分がなぜ俺のことを好きなのかという理由を理解していない。ただ 一緒にいると落ち着くというか。一緒にいると楽しいと感じるから好きであると言ったのである。それから リデアは、俺とロズの姉妹とリデア達三人と一緒に食事を取ることになり リデア達と一緒に夕食を食べる事になったのであった。そして俺は、そのリデア達と一緒に食べている時に あることに気付いたのである。俺はリデアにそのことを聞いてみることにする。
するとリデアは 俺の言っていることは間違っていると言い張るので 俺の考えが正しいということを、その俺の考えで証明するために。リデア達が食事をする時に座っている場所を教えてもらったのだが その位置があまりにも俺にとって好都合な位置にリデア達は居たのだ。だから俺は、俺がそのリデア達と一緒に食事をすることになった時 ロズの正面には俺の席があり ロズの斜め後ろに俺の妹の リデヤの席が配置されていた。そして俺とリデアの間に リディアの椅子があったのだが その席に誰か別の人間が座り その人物の後ろの場所に リデアの従者である、メイドの女性のイスが配置されていると。
つまり 俺はリデア達に気付かれないように。その席の配置を利用すれば。誰にも悟られずに、俺の背後を取ることができるということだ。
俺は それを利用して 俺はリデアの後ろの方の席から リディアに俺の背後に移動するようにとお願いした。その事に最初は戸惑っていたリデアだったが。最終的にはリデアが折れて俺の指示通りに動いてくれたのである。
そして リデアは、そのリデアの動きによって。ロズの後ろに移動することになるわけだが。
俺がリデアにそうやって指示したのは、その方が よりリデア達の行動を把握しやすく 俺に攻撃が当たりやすいと思ったからだ。その俺の考えは的中して。
俺は そのロズ達の行動を確認できたので。俺がロズを不意打ちして、気絶させることには成功したが。俺はロズを気絶させるだけではダメだと感じていたので、とりあえずは俺がこの国の人達に俺のことを殺そうとしている事を伝えるために。その証拠を、俺自身が持っていた方がいいと判断して。気絶してしまったロズを その場に放置しておくことにする。俺は すぐにその場を離れようとしたのだが。リディアから話があると言われて リディアの家に戻ることにしたのであった。
リディアの話というのはリデアと、俺を別れてほしいという話で俺はそれを断った。するとリディアも俺に 何かを隠していて。そして、その隠し事を 今すぐ言えと要求してきて。俺はそれを拒否する。
それから俺とリディアが睨み合いになっている所に なぜかリデアが現れ その事がきっかけで俺は リデアとリデアが連れて来た姉妹二人に殴られたり 蹴られたり 色々とやられてしまったのである。
それで結局俺は負けてしまい。その事が原因で、この世界での俺は、ロズとリデア、リデアの妹のロナの三人ともが付き合っているという状態になってしまう。そしてこの世界での生活では、この国で生活する上で、この国に滞在するための身分証明書を発行されて それが俺の首輪とリンクしているようで。この世界に来る前から俺の仲間であった、あの四人の勇者達も俺と同じ首輪を付けられているのだと知った。そして俺は、俺を裏切った元勇者のレイフを仲間にするかどうかを聞かれたのだが 正直言って俺にとってはどうでもいい奴だったので。そんなことをわざわざする必要性を感じなかった俺は その提案を断って 俺に付いて来たいと希望してきた勇者を、俺は受け入れることにする。俺は その俺の決断に対して、何も言わなかった。
その日の夜、リデアの妹であるリデアに、俺の恋人にして欲しいと言われるが。リデアに俺とリデアの気持ちは通じ合った事を伝えたら、納得してくれて。それから俺はロズの家にリデアを連れて帰ってから。リデアをロズの部屋の前まで送ってから、俺はリデアの妹のロズにも 自分の気持ちをしっかりと伝えたら。ロズもその告白を受けて ロズは、リデアの妹のロズと正式に交際を始めるのだった。それから俺は、ロズと二人で夜を過ごすことになったのだが。その日を境に、俺はロズの妹のリデアと 妹のリデアの二人と。この世界にきてからも仲良くなっていくのだが。
それは、この世界の王の命令でもあって。この国で、ロズ達姉妹と。それから、リデアと、リデアの妹のロナも。この世界で生活をすることになっていたので。
俺はその事を、俺はロズに伝えておいた。
その後 俺はリデアとロズが、この城の中に住んでいる貴族達と交流を持つための交流パーティーに参加して、俺以外の男性に絡まれていたリデアを助けた事で。
俺とその女性との恋愛の噂が一気に広まる事になる。俺はそのことを面倒に思いつつも、俺はそのリデアとの関係が、さらに深まることになるのであった。その噂を聞きつけたロザリー様が、リデアに婚約してほしいと言い寄ってきて。リデアはそのことについて俺に相談してきて 俺は、ロディアから言われたことを、改めて思い出す。確かにロディアに言われるまでは気付けなかったが 俺がもし本当に好きな相手と結婚する場合なら リデアとの結婚を考えてみてはどうかということなのだと思うのだが。今の段階では俺にはロディアしか考えられない。でも それはロディアが言ったように今は結婚を考えていなくてもいい。ただ俺の事を好きなだけなのか?それとも、俺に好きな人が居ないから 誰でもよくなったから とりあえず結婚したいと言っているのかが、わからないので そのこともリデアに伝えたら 彼女は真剣に考えてくれて それからしばらくしてから、ロズの妹のロナと、リデアの妹のリデアも、ロザリー様に言われて俺との交際を申し込まれて。
それから、そのことでリデアが悩んでいたので。俺としては 別にリデアが他の人間と結婚してもかまわないと思っていた。それに ロザリー王女との婚約も考えていたし その事は俺がリデアの婚約者になれば解消されることであるからだ。だけど、その事をリデアに説明したら。俺が、自分との事をそこまで想ってくれている事が嬉しかったと言って。俺はそのことにリデアは少しは俺の事が好きになってくれているのではないかと感じていた。
それから、俺達は俺の住んでいた町にリデアと一緒に向かう事にする。その途中で俺はリデアと一緒に食事をするのだが。そこで俺は、あることをするのである。
「あ、ありがとうございます。リデアお姉ちゃん」
その俺の言葉に対して リデアが微笑んだので 俺は 自分の考えた作戦は成功してよかったなと 安心したのだ。
それから俺は、食事を食べながら。俺はリデアに、ロズの妹であるリデアのことを聞いた。俺がロズと一緒にリデアに質問していたので。リデアとリデアの妹のリデアの二人が俺のことを見ていたので。
それから俺は 俺が、ロディアに頼まれて、リデアの婚約者になるということを告げて リデアは驚いた表情をして その話を、俺は否定しないと言ったが。ロザリーがリデアの婚約者に俺をと言った時には。俺は断ると、ロザリーは、どうしてと俺に聞いてきたのである。その問いに対し俺はロディアに婚約者にしてくださいと言われただけで 俺の婚約者にロズの妹のロナがいるからであると説明したが。リデアは、その俺の説明を聞いても 俺と、その、私達が、結婚しても、構わないと言うので。俺は、その事に戸惑いを覚えるが。俺はその言葉を受け入れようと決めるのであった。だがそれでも、俺は、リデアを愛そうと決めたのだ。
なぜなら この異世界に来た俺は この異空間の中で、この異世界の人と、俺なりに接してきた結果 このリデアという女性のことを守りたいと感じてしまったのである。リデアが、リデアのお兄さんであるリデアが殺されて。そしてリデア自身も、リデアは命を落としてしまったと聞いていた。それだけではなく リデアが俺達を裏切ったのも事実だった。だが俺も、リデアと同じように リデアに命を奪われてもおかしくなかった立場でもある。そしてリデアと同じような境遇で。俺はリデアと出会えた。そして俺は、その運命的な出会いからリデアに惹かれていき。今ではリデアのことが大好きになっていた。そのリデアが、リデアの妹のリデアのことも、守ろうと思っているのだから。その気持ちは もう止まることはなかったのである。
それから俺は ロズの住んでいる街に到着するが。その途中、モンスターに俺は遭遇してしまうが。リデアのおかげで助かったが。その事でロズに怒られる俺。
そのあと 俺はロナの家に行き ロナのお母さんから ロナから ロナは俺の事が好きだという話を聞かされる。だが、リデアの妹のロナは そんな事はないと言っていたのである。その話に対して俺は リデアから俺に対して告白をされて その事に対して 俺は、答えを返せなくて 俺はリデアに もう少し時間を欲しいと告げた。その事についてロズからロナと、リデアの妹のリデアに説明すると ロズは納得してくれる。それから俺はロズにリデアの妹のロナに俺への告白をさせたいと頼んだのだが。そのことは、まだできないと言われて その理由を聞くと。リデアが許さないからと言われてしまう。その事に関して 俺にはどうしようもなかったが リデアに、リデアと俺とが婚約していることを話した方がいいと思って俺は、そのことをロズに伝えると。
ロズは、それでリデアの事をあきらめるとは思えなかったと俺に言い出して。そして、そのリデアの事を ロズがリデアに伝えようと考えていたら リデアは それを察知していて リデアと、その、妹と、その恋人の三人は リデアの家に行ってしまい。ロズは その事を伝えられなくなってしまう。そしてリデアのその様子にロズが落ち込んでいる所を、俺は見てしまって。俺はリデア達を追うことにするのだった。そして、俺が追いついた時に、俺がリデアにロナの妹のリデアと ロズの妹のロナに求婚されている事をロズに伝えようとしたが。その前に、ロナがロズを殴って、そのことでロズに 俺の事は忘れろと言われてしまい その場を離れようとするロズ。そんなロトを引き止めようとしたのだが。ロナの事をお願いされて、俺は引き止めることができなかったのである。
ロズと別れて俺は ロデアが泊まっている宿に向かうのだが。ロデアの事を探そうと思ったのだが。この城の中の人に声をかけても ロデアが何処にいるかは分からなかった。そこで俺は、ロデアの妹のロナーの部屋に行こうとしたら その部屋の扉の前には兵士がいた。俺は事情を話すと ロデアはロナの部屋に行ったらしいので そちらに案内をしてくれたのである。俺は部屋に入った瞬間にロアナの姿を見たのであった。
「お兄様 どうしてこちらに?」
ロアナに尋ねられたので。俺はロナからロナの妹のロナーに用があると伝えると。俺がここに居ることを不思議に思ったようで その件については、リデアから手紙が届いたのだという嘘をついておいた。すると、それならば、と、ロデアは納得して それから俺に話しかけてきたので。ロデアと、リデアの妹のロナの二人に求婚された事をロデアに言うと ロデアは驚きながらも、俺に返事を求めてきた。俺としては、ロナに告白する時のようにはいかなかったが。ロディアに頼まれたという理由も加わって 俺も、リデアのことが好きで、結婚するつもりだと答えると ロデアは少し考え込んだような顔をしてから。その事に関しては俺には何にも言えませんと言ってくれた。そしてロデアが俺がここに来てくれたお礼に 夕食をご馳走させてほしいと言うと 俺は断ろうとするのだが。ロディアに、よろしく頼むと、頼まれたからには しっかりと役目を果たすことにした。それからしばらくしてロデアは、妹のロナが待っているのでと言い出した。
俺が、リデアの妹のロナにプロポーズしたいと思っていることを言うと。ロナはそれなら 明日、リデアお姉ちゃんが帰ったらすぐにお父様と話をしようとロデアが言った。その言葉に 俺が困惑していると ロデアから、俺がリデアのことを好きで リデアとリデアの妹のロナと、その二人の妹も好きなんだろうということを言われて 俺は、どうしてわかったのか尋ねると そのことに対してロデアは 自分の母親と似たようなことを言っているなと思いましたからねと 言われたのだ。その事について リデアの妹であるロナに ロデアの母と同じようなことを俺はロディアに言われて、それからロナの事も気になった。
その後 俺達は一緒に食事をして ロデアは また会いましょうと言って 俺の元を離れて 自分の家に戻って行ったのである。そして、その途中で ロデアは 兵士の人達に何かを言い出す。俺は何を話しているのだろうと、思いながら、兵士達の方を見ていると ロデアが俺を見て手招きをしているので 俺はそれに従うと 兵士達にロデアが何をしようとしているかを俺は尋ねた。そしてロデアは俺に、ロナは今、体調が悪いと聞いていますから。もし、あなたが来たことを知ったら、あなたの事をきっと心配してしまうだろうと思いますからと。そのことについては 俺がリデアと二人で、リデアの妹のロナと、その妹の恋人であるロナの二人と話をしてきますと伝えたのだ。それから、俺達が城に帰ってみると。ロデアは ロナが寝込んでいることを知っていて 俺達が来るのを待っていてくれたようだ。そして俺にロナとロナの妹に会わせて欲しいと言うのであった。そのことにロナは賛成してくれたが。ロディアに頼まれたことを伝えていないのにいいのだろうかと俺が考えている間にも、そのことはもう決まっていたらしく。俺は、仕方なく、そのことに関して承諾するしかないと思う。そして俺がロディアにそのことを相談するために帰ろうとした時に 俺に、そのことに関して、後で詳しい事を聞きたいから 今日、ロデアと会う前に。私の部屋に寄り道をしてちょうだいと言うのだ。俺はその事に対して了承をするが なぜ、そのことが大事なことなのか聞いてみる。
すると この国をこれから救う為に必要なことなので ロズや、リデア達に知られたくないことなのだと言うのである。その話を聞いて、俺の頭に、あることが浮かんだが。その話は、ロデアが俺と二人っきりの時しか言えないというので。ロデアは俺と一緒に 俺達が住む街に戻ることになるのであった。そして俺達が戻る道中 ロデアが俺にある質問をして来て。それに俺は 正直に答えたのだった。
それからロナとロナは 元気そうな様子を見せていたのである。それからロデアと、リデアの妹のリデアの二人が、この国に残ってくれることになったので 俺はロデアに、リデアの妹のロナとロナと、俺達の国の方に戻ろうと誘ったが ロデアは、もう少し、ここに居て、リデアの妹のロナが、本当に俺を好きになってくれるかどうか、確認してから帰ると、そう言うのである。その事に対して 俺がリデアの妹であるロナに対しての答えを出す前に 他の人を口説いている俺が言うべき事じゃないかもしれないが 俺はロデアに、まだ、リデアの事を諦めないのか? と聞くと。彼女は、その答えに答えを返してくれなくて。それから俺は ロディアからロナのこともよろしく頼むと言われた事を 思い出すのだった。だが俺は 俺は リデアのことだけじゃなくて ロディアのことも好きだという気持ちはあるから 二人を平等にはできないし。リデア達も、ロデアのことは、あまり良く思っていないのではないのかという事を伝えると。
それでも構わない。ロデアにとって大切なのは お母様とお父様の言いつけだけだから お母様と、お父様の願い通りに ロズやリデアと仲良くしてほしいとロデアは、俺に伝えてくる。そして、リデアとリデアの両親と、この国が、平和に過ごせるのならば 私の存在は邪魔でしかないから 私は、リデアの傍にはいてはいけない人間なんだと言うので。俺はそんなことはないと言ったのだが。ロデアは自分の事は、自分で決めるから。俺が決めるべきことではないと言って。俺の言葉を遮った。そして俺達三人はリデア達と合流すると 俺は、リデアにロデアのことを頼み込んで。俺のお願いを聞いたリデアは。ロナと、リデアの妹のロナーに俺の事は任せてと、ロデアに言ってくれた。
その事に安心をしたロデアは、俺にお礼を言うと 自分の家に帰っていったのである。その後 俺達は 俺の家に帰り着くと。ロデアから聞いた 俺と、ロナとロナの姉妹の話をロズに聞かせて。それから俺がリデアの妹であるロナーに告白した事を ロディアから頼んでおいたのだと、そう説明したのであった。その事でロズも納得はしていたが。俺がリデアの妹である二人のロナと ロナの恋人であるロナと 三人の女性を娶るという事がどういう事かをしっかりと理解していて欲しいと、ロズが俺に言うのであった。しかし俺は そんなことは覚悟の上だし 俺だって 一人ではなく二人と 結婚したいと、はっきり伝えていたのだが。その言葉を ロデアの前で 言ってしまったせいで。ロデアが勘違いをしてしまうので、それはまずいと思った。それから その話を終わらせようとした時。突然俺の部屋の中に 一人の女性が入ってくる。そして、リデアの母親だという人が部屋に入り込むなりに。娘を助けて欲しいと言ってくる。そのことでリデアの母親が 娘のロデアの体に触れながら ロデアの病気は呪いのようなものだから治せないのだと俺に言ったのである。
そのことに、ロデアの母親は それではどうしようもないのよと言う。それからリデアの母は俺に助けを求めるようにして、ロデアを助けるために力を貸して欲しいと頼むので。俺はロデアが ロアナとロナが俺の嫁になることを受け入れてくれたら。俺はそのことに協力しますと答えた。そしてロデアは 自分の体に起こっていることを聞かされて混乱をしている様子であったが、しばらくして落ち着きを取り戻して。自分の体を気にせずに俺が、リデア達と一緒に幸せになれるなら 俺は受け入れたいと、そう、俺に伝えるのであった。俺はその言葉を聞いて 俺は俺が、今すぐには無理だけれども。俺とリデアと、それからロディアの全員で幸せになる道を探し続けるので それまで待っていてくれと言うと。その言葉でロデアは 涙を流し始めた。その事に、俺とリデアが困惑していると リデアの母が あなたがロズの王子だということを知っているから。
それで娘に同情して涙が出てきたのだと教えてくれるのであった。俺はそれから リデアが俺が王になった後にロナと結婚するという話を聞いているのなら。俺がリデアと結婚できるように。その手伝いをしてくださいとリデアの母に、お願いすると。その言葉を聞くまでもなく 俺の願いを聞き入れて。リデアの母も 俺に協力すると言い出すのである。そして俺はリデアと、それから俺の婚約者であるロデアの三人と その恋人である、リデアのもう一人の妹のロデアと 俺の嫁である、ロディア。そしてロリアと それからロズと、俺の妻になったリゼと、リデア。この九人で幸せな生活が送れればいいのにと思うのであった。
俺が目を覚ますと。そこは知らない部屋の中だった。確か昨日俺は、この世界に転生させられてきて、それから初めて泊まった宿で。そこで眠ったはずなのにどうしてこんな場所にいるんだろうと思っていると。俺が起きたことに気付いたらしいリデアが俺に話しかけてきた。
「あ、あなた。起きられたのね」
そう言うと、彼女は笑顔を見せてくる。すると俺が起き上がる前に、その部屋に入ってきたのは、俺をここまで連れてきてくれた女性だった。彼女は、俺が目を開けていることに気付くと。慌てて俺に駆け寄ってきて俺の顔を見つめてくる。
「良かった。目が、覚めたんですね。このまま意識を取り戻すのが遅かったらどうしようと思っていましたが。大丈夫なようですね」
そう彼女が言うので俺は、一体ここはどこなのかを尋ねると。女性は微笑みながら。俺が泊まっていた宿屋とは離れた場所に有る家だと言うのだ。
「私がここに、ロディアを連れ帰ってきた時に、丁度ロデアさんから事情を聞いたところでしたので。ロディアは私とリデアさんのところにいます。それから、ロデアがこの場にいる理由は、ロデア自身が説明すると思いますので 今は、ロディアに会いに行きましょうか?」そのように言われて俺は。
リデアと、リデアの妹であり、俺の花嫁となるはずの女の子が 無事だった事を嬉しく思うのだった。
それから俺と、その女性は一緒にこの家の一階に降りていく。この家の中にはリデアの両親である、ロズとその妻のリデアとその子供である、ロナ、ロアがいるという。ロナやロディアに会う前に俺は その前にロデアの母親である、リデアの母親の、その美しい姿を改めて眺めていると。リデアの母親がこちらを不思議そうな表情で見ていて。
「どうかしましたか? そんなに私の顔をジッと見つめられまして。何かついていてますでしょうか?」
少し照れたような感じでそんなことを言う。なので俺の目の前の綺麗なお姉さまに質問をしてみた。その質問に対して彼女は答えてくれて俺の方を見ながら、俺を抱きしめると優しく接してくれたのである。その抱擁によって、リデアの母親に抱きつく形になり。そして彼女の柔らかい肌の温もりを感じて。思わず俺は緊張してしまったのであった。だがそんなことをしても意味がない。俺は俺を抱きしめて離さない、この女性の事を知りたいと思ったのである。俺はそう考えリデアの母親がなぜここに居るのか理由を尋ねたのであった。
「え? 私は、あなたが倒れていたので 急いでここに運んできただけですが。もしかしたら怪我でもされて、気絶していたのかと思って心配したのですけど、違ったのですか? それとも私を見て何か疑問が浮かんだんですか? もし、そうならば。そう言って下さい。そうすればあなたの悩みを、私は解決できるかもしれないですから。あなたは リデアの、お兄様なんですよね。それに、あの子はあなたのことをお父様と呼んでいたし。リデアがそう呼ぶということは、あなたはきっと。ロデアとロアナの父親なのだと私はそう思っていたのだけども、間違っていたのかな? それとも違う人なのかしら?」
その問いかけに俺はリデアから、リデア達の父親のことを聞いた事を思い出す。その話によるとリデアの父である国王の名前は、ラデウス=フォン=ロズワルドというそうだ。その事実を思い出した俺の頭には、あることが思い浮かぶ。この世界の人間の血族に関係が無い限り。普通ならばあり得ないことだからだ。
俺はリデアとリデアの両親が俺が元の世界からこの世界に来た経緯を話すと。彼女は、リデアやリデアの家族が俺と同じ日本からやってきたということと、それからリデアの妹であるロデアがロアナの恋人だということを知って驚いたのであった。そしてロデアの両親は、俺のことをロデアの兄だと認めて。そしてリデア達が俺の妻になるという事も認めると言い出してくる。
俺はロデアが、リデアの両親の娘であることを知って そして俺に好意を持ってくれたことも理解した上で。俺達はお互いに結婚相手を探す必要があると言って。それからしばらく話をした後に。ロデアと、その両親の三人から俺と、リデア、リデアの三人が結婚した後で、ロデアと結婚するのを認めてもらえれば、ロディアは俺の嫁になっても良いと言った。その言葉に俺は喜んで承諾することにする。すると突然ロデアは涙を流し始める。その事に俺は驚くことになる。ロデアが、まさか泣き出したりするとは思わなかったのである。
それから俺はロデアが、なぜ涙を流したのだろうかと疑問に思って聞いてみると。俺の事が嫌いだから泣いたのではなく。自分の命よりも大切にしたいと思える男性が現れた事が嬉しかったからだとロデアは言った。それからロデアは、その事を口にした直後に恥ずかしくなったらしくて。慌てて部屋を出て行ったのである。俺はそんな様子のロデアに。これからどうするのかという質問をしたのであった。その問いに、ロデアはしばらく考えたあとで ロデアは自分が幸せになれる道を歩んでみたいと、俺に伝えてきたのであった。そして、その後俺はロデアから俺がこの世界で目覚めてからの出来事を教えてもらったのだが。ロデアはそのことで俺は本当に大変だったのだと思う。
俺は目が覚めるとロアナに俺がこの世界にやって来た経緯を説明したのだ。すると、その話を聞いた、俺の妻になるはずだったリデアとリデアの母親は泣いて俺の事を抱きしめてくれたのである。それからしばらくの間俺は彼女達との話し合いを行って。ロデア達と一緒にロデア達の家に暮らす事になった。リデアの母であるリデアの母が俺の事を気に入ったという事もあったが。俺としても、まだ俺の事を良く思っていないロデアとロデアの二人に嫌われるわけにもいかなかったのである。
俺とリデアと、ロデアは俺を迎え入れてくれた、リデアの母親の実家で暮らす事になる。その家はとても大きくて、中は広く庭もあるので、そこに小屋を作ればいいのではという話になる。
「リデアの母よ。すまないが俺と、リデアにその屋敷の一部を使わせて欲しい。リデアの母が言うには ロデアと、ロナの二人は、ロディアの部屋で暮らして欲しいと言うことだったからな。それから、俺とリデアとロデアは俺の家で一緒に暮らすことにする」俺は、そのようにリデアの母に告げたのであった。すると彼女は、少し困った表情を浮かべながらも俺の意見を聞き入れてくれる。
俺はまずリデアと共にその実家の屋敷の一室に住むことを決める。それから、俺の家からリデアの両親に荷物を取りに行き。リデアに手伝ってもらいつつ。その作業を済ませて。俺とリデアと、リデアとロデアの三人は、この国の王が住む城まで行き。この国を統治するロズワイル王に謁見を求めたのである。すると彼は俺達にロディアの事と、それからロナの事を頼むと言われた。そこで俺は、この国の王女であるロディアがこの世界にやって来たときに、一緒に付いてきていた少女ロナも、俺が保護している事と、その少女と、俺の娘のロナとの関係を説明すると。その事に関して王は、納得してくれたようだ。
だが問題はここからである。ロディアと、俺の妻のリデア。リデアの妹であり、リデアの母親の娘であり。俺の妻となるはずだった女の子の ロデアと 俺の妻になるはずのリデアの妹であり。リデアが妹として育ててきた娘である その三人の子供である リデア、リデアの母親のロデア、ロデア、リデアの三人に。俺とリデアの結婚の許可を求めることにしたのである。すると当然のことだが、その許可を王がくれるとは限らなかったのだ。俺はそう考え、緊張しながらその時が来るのを待つ。すると、そんな俺の様子に、何かを感じ取ったらしい、リデアが優しく俺の手を握ってきた。俺はそれで落ち着きを取り戻したのである。そうして俺は、ロディアとリデアと、それから、俺の妻となるはずのリデアの両親に許可を得ることができた。そうやって、この世界に来た時と同様に、この国に厄介になりながら過ごすことになるのかと思ったら。そうではなくて、リデアの母親も一緒についてくると言う事だった。リデアとロデアはリデアのお母さんと一緒に住むことが決まって、リデアのお母さんが、この家に移り住むことになりそうだなと思っていた。
俺はリデアのお父さんに挨拶をした後で俺達は家に帰るためにリデアの実家を出る。俺はそんなに疲れているわけではなかったので一人で帰ろうかと思ったのである。そのように考える俺にロデアの母親が提案してくれたので 俺はその好意に甘えることに決める。そうしてから俺は、リデアの母親の肩を抱き寄せたままリデアの家へと向かうのである。俺はその途中で、リデアの母親であるリデアに 俺が元居た場所の話をしたり ロディアやロデアに 俺の元の世界の話で盛り上がりながら歩くのであった。そうしてリデアの自宅にたどり着くと、リデアが先に家の中に入り。俺に中に入るように指示してきた。そして俺が中に入ると。リデアの両親は俺に深々と頭を下げたのである。そしてリデアとロデアの両親は俺にこう伝えてきたのだ。俺はもう、家族の一員であると それからしばらくして、リデアの両親も俺がロデアの父親である事を受け入れてくれたのである。
俺の住んでいたマンションにたどり着いた俺は。そのマンションを目にしたときに驚いたのである。なぜなら俺が住んでいた部屋の扉が半壊しており。それからその破壊された部屋に入ろうとする人間が居たことに気がついたからだ。それからその人物を見た瞬間に俺は驚いて固まってしまったのだった。そういえばこの世界に飛ばされる直前に俺を驚かそうと企んでいた人物が一人いたことを俺は完全に忘れてしまっていた。そう、それはロナだったのである。そのロナはというと、その半壊してしまった扉の破片の中にいた。どうやらそのロナは、俺がこの世界で暮らしていると聞いたロデアが。ロディアの住んでいる部屋から、リデアの家に居るロデアに、連絡を入れて呼び寄せたということだそうだ。その事を知ったロナも 俺がここに来ていることを知っているから、この場所に来ていたのだという。
俺がここに来た目的は 俺の知り合いで この世界の事情に詳しくて なおかつ、この世界を平和に導く為に協力してくれそうな存在が他にいないのなら ロアナに頼んで この世界の人間と仲良くなってもらおうと考えていたからだ。その話をする前に俺はリデアの父親と母親にロアナに、これからの事をお願いした方がいいのではないかと言われてしまう。その話をするとロナが、俺と話をするために自分の部屋に案内したいと言い出したのである。俺はそれに従うとロナは自分の部屋に招き入れた後で俺をベッドに腰掛けさせる。それから、俺と対面するような形で床の上に座ったのである。そして彼女は俺に、何か話があるのですか? と質問して来た。俺はそれに、俺はロアナに頼みたい事があると言うと。ロアナはそれを引き受けると言った。すると俺はすぐに彼女に俺の妻のロデアの妹であるロデアが この世界に呼び出されて勇者のパーティーの一員として活動しているという話を聞いたという事をロアナに説明した。ロアナはそれに対して俺と同じように驚く。
俺はそれからこのロアナという女性は俺が想像していた以上にこの世界のことを熟知しているんだと思う。それから、俺はこのロデアが 俺の妻であるリデアの妹であるという事と それからロデアが 俺の事を好きである事をロアンに告げたのであった。俺はロデアから告白されて戸惑っていたのである。その事に対して、ロナにロデアから俺の事をどう思うと聞かれて 正直に言えば 俺としては可愛いと思っていて。だからロデアが俺の事が好きな気持ちに答えられないとロデアに伝えると。俺はロデアの想いにちゃんと答えてほしいとロデアは俺に言うのであった。そんな俺達のやり取りを、リデアの父親は微笑みながら見つめていて ロデアの母親は リデアが、妹の恋が成就するように祈りながら見ていたのである。そしてロデアは 俺の返答に満足をした様子で それから、リデアが俺の事が好きだと聞いて嬉しく思っている事を俺に伝えた。俺は、その事を告げられた時に嬉しかったのだが。ロデアは俺の妻であるリデアの妹でもあるから複雑な心境でもあった。そこでロデアは俺にリデアと結婚する意思がないのか聞くと。リデアの両親とリデアの母親は俺がこの世界に飛ばされた経緯を聞いているので。二人が幸せになってくれればそれでいいという。ロデアはその言葉に少しだけ安心をしていたのである。それから俺はロデアがリデアと姉妹だと知る前にも、何度かリデアとロデアは俺の家で一緒に食事をしている。その事もあり俺は二人と食事を共にすることがよくあるのだ。
俺とロデアが一緒に居るところを見て リデアが不機嫌になることもあり、ロデアは そんな姉の態度を不思議がっていた。
ロデアにロディアが俺の事が好きで、 俺はそのリデアの好意を無下にすることができないで リデアと結婚をすることはないと言っても 彼女は諦めないと言う。その事にロデアは疑問を感じていたが。俺は その事は気にしないように言った。そして 俺は ロデアがこの国にやって来て ロディアと、共に暮らすように なると言うことを、ロデアに話すと彼女は納得してくれた。
ロデアがリデアと一緒に暮らすことになったため ロナの部屋にある、俺が以前に住んでいた場所へのゲートを使わせてもらえることになったのである。それから俺はロデアの両親にも挨拶をしに行くことにしたのである。それから俺は、俺の家族と一緒に、リデアとロデアがこの世界に来て 一緒に住むようになるかもしれない事を告げに行ったのだった。ロナと、ロデアとリデアは お互いの事を紹介し合って仲良さそうにしている様子を見ると。この二人は気が合うのかなと感じた。そのようにしてお互いに自己紹介を終えたロナとロデアは、それからは二人で会話をしているようだった。その二人の姿を見ると ロナとロデアは まるで双子みたいだなと俺は感じたのである。
俺とロデアはリデアの父親の家に行き。それから、リデアと、ロデア、リデアの母親のロデアとその母親のロデア。そしてリデアの弟であり、ロデアの父になるはずの人物。リデアの弟のロデアと、その弟であり、リデアの双子の兄のロデアに。俺の娘のロディアが この世界で暮らしていくことを報告することにしたのである。ロデアがロデアのお父さんに報告をした後で、俺が、この家にお世話になることを伝えると リデアのお母さんは、俺が家族の一員になったようで 嬉しいと言っていた。それから俺はロデアの父親に娘ができたようだなとか言われてしまい。俺の妻となる女性の娘が娘になるという事を聞かされたロデアとリデアの父親も 俺の妻となるリデアの母親と 俺がリデアの夫となることを受け入れるのだった。
俺はこの世界に来たとき 俺は、リデア達に会う前に出会ったこの世界では有名人の三人の男性。リデアの父親と、その父親であるリデアのお祖父さん、そして この国で一番の力を持った剣豪と言われる剣士 それから、俺の元の世界からの転生者という共通点がある男性 その人達に会い。その人達とリデアの父親の家に行って リデアとロデアの両親の許可を得ることに成功する。そうして 俺のリデアとの婚姻を認めてもらった俺は、その翌日から、ロディアの両親に頼まれて、その手伝いのために動き始めることになる。
俺がリデアの父親の家に住み始めてしばらく経った頃。俺は、俺達が元の世界に帰るときに俺を案内してくれたメイド長に呼ばれていた。それから俺はメイドに案内されて。その屋敷の中へと入る。そうして俺は、屋敷の中で働く人達に指示を出して回るのである。そんな中、一人の女性が俺に声をかけてくる。その女性は、ロデニアの母であるリデアの母親のリデアとそっくりである。そしてその人が その容姿に似合わない男言葉で話しかけてきたのだ。俺は、ロアナと会った時と同じで、最初はその人物がリデアに似ているとしか思えなかったが。彼女が俺をロアナの母親であると理解したのは、俺に挨拶をして来たからである。そして、リデアの母親と俺は挨拶を交わす。それから俺はその女性の案内で、ロデアの母親にリデアの母親を紹介した後に 俺はリデアの母親が俺の妻になりたいと言っている事を知ったのである。俺の妻となりたいと申し出てくれたその女性は 俺に あなたを気に入ったと言い リデアのお母さんを妻にしてほしいと言い出したのである。その話を聞くと リデアの母親と 俺が出会った時に なぜあんな場所に居たのかが分かり 俺と出会って一目惚れしてしまったから、リデアを呼び出し、ロデアをこちらに連れてきたのだということも分かったのである。リデアのお母さんは俺の事が気になり、会いたくなっていたから リデアを呼び出して 俺に会わせたかったのだという事である。
俺の妻となって ロデアの母親として ロデアと一緒に、この世界を平和にする為に協力したいと 俺に伝えてきたのだ。その言葉を耳にしたロデアの両親は、 自分達が認めた相手になら ロデアとリデアの母親を任せられると判断して 二人共、俺とロデアの母親の関係を認めて祝福してくれるのであった。こうして俺は、俺とリデアが結婚することを 正式にロデアとリデアの父親と、その妻のリデアに認めてもらうことができたのである。その後で、俺は 自分の仕事に戻り ロアナと、それからリデアの両親と共にこの世界の平和を守る為に活動する事になったのだった。それから俺が リデアの父親と、ロデアの父親の補佐役として働くことが決まったのだが。俺は、自分が元いた世界の、自分の家族とも仲良くしていたいと思っていたのである。俺は自分の妻とロリアとリディアの4人でこの世界の各地を回り、この世界の各地に散らばって暮らしている人達と話し合い、俺達の世界の技術を教え、この世界の住人にその技術を広めていく活動をした。その結果、この世界には、俺達の世界の道具や文化が広がり始めたのである。そのおかげで この世界の住民の生活もかなり改善されるようになっていったのである。俺が、リデアと一緒に 世界中を巡りながら、世界を救う旅を続けると。俺の住んでいる世界では勇者の帰還の噂が流れていた。俺はその事を、勇者である俺が ロデアと一緒に暮らすようになってからしばらくして知ったのである。俺とリデアは俺の故郷で暮らすためにこの世界での仕事を終えて元の世界に帰って来ることにするのであった。そして、リデアと一緒に、俺達の家族がいる俺が以前に住んでいた家の前まで戻ってくると、そこには、俺の妻達全員が出迎えに来ていたのだ。それから俺達は 俺の住んでいた家に戻ってきて。それから、ロナが俺達に リデアと一緒に暮らせるようになったことを報告してくれた。それからロナが、俺の妻になったロディアを紹介してから、俺がこの世界にやって来た時に俺の面倒を見てくれていたという、その恩人を紹介する。それからその人にお礼を告げると その人は、俺に感謝の言葉を述べたのだった。それから俺とロデアはロデアがこの世界でリデアと暮らすための支度を整えることにしたのである。俺は リデアがこの家で住むための部屋を用意する。ロデアは俺の家に引っ越してきたのである。その日からロナがこの家に残り。俺の家族全員で一緒に暮らす生活がスタートしたのだった。そうしているうちに俺はロデアとリデアとの間に生まれた双子の女の子と男の子の双子を引き取る事にしたのである。それから双子がある程度成長するまで 双子を育てながら俺の両親に手伝ってもらって、子供達の面倒をみた。そして子供達が大きくなるまではこの家に居座ることにし、リデアはその間ずっとここに滞在することにしたらしいので、家事などは全てロナとロデアとで分担し 皆で協力することになったのである。こうしてロナはこの家で住み込みで働く事になって、さらにこの家に暮らしたいという他の仲間の女性も現れることになり、そんな彼女もこの家の家事を手伝うことに決まったのだった。そしてロナは子供が生まれたばかりなので 子育てに専念するようになり俺は一人になってしまう。だが俺はロナ以外の誰かがこの家に住み着くことはないと思うんだよな。それからしばらく経って 俺は、自分の娘であるリディアが産まれた時の事を
転生したら最強の魔術師になっていました。~「お前の魔力、全部よこせ!」と言われても困ります! あずま悠紀 @berute00
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