第25話 決意を胸に

 いつも周りを巻き込んで生きてきた。

だからこそ、自分は疎まれているのだと

望まれない子だったのだろうと

そう信じていた。


自分の価値を下げ

自分の存在を吐き捨てる事で

この世界にいても問題ないように

思うことにしていたんだ。


両親の愛情を拒絶し

セレンの好意も見て見ぬ振りをして

クレナさんからの友情を偽物だと畏怖した。


この世界に存在する

目に見えない関係を

全て信じずに生きてきた自分。


周囲が

どんなに迷惑をかけようとも

これから先の未来を生きて欲しいと

精一杯に生きて欲しいと望んでいたことも知らずに。


 この繰り返す世界で

周囲の望みに触れて

俺自身の存在が望まれていると知って


『生きたい』

『生きなくちゃ』と

そう思うようになった。


それでも、心の奥底では


『本当は違うんじゃないか』


『上辺だけの言葉じゃないのか』と


そう感じているのも事実で


きっとこの少年は

俺がそう思ってきた今までの過去と


現在そう感じてしまっている自分自身の思いが投影されたのだろう。


 昔から、自分が嫌いだった。

思いをうちに秘めたまま


生きる希望など持っていないと


望むものなどないのだと


そういい聞かせて


周囲にもそれを話そうとはしなかった。


伝えたいことを伝えず

自分にはその言葉を伝える価値などないのだと

自分自身に言い聞かせて

伝えることをそもそも諦めていた。


そんな意気地のない俺が大嫌いだった。


心に積もっていく思いは


伝えきれなかった残りは


後悔となって心に蔓延り

確かな重みとなって

そこから動かなくなる。


そうして黒い重荷を背をって

前に進む事すら、諦めてしまうんだ。


 両親の愛情を拒絶し続けた代償は『時間』

家族として過ごせる時間を無駄にした。

無償の愛で成り立つ、この世界で唯一の場所を

自ら捨てたんだ。


 クレナさんの友情を信じれなかった代償は『広がる世界』

様々なものに触れ、多種多様な人種と関われる機会を捨てた。

自分1人で、世界が完結するはずがないのに。


セレンの好意を見て見ぬふりをした代償は『命』

もっと早くにセレンの好意を認めて

自分の思いも伝えておけば

あの時セレンを失うことは無かったかも知れない。


突き飛ばされたセレンを


引き留められた手を振り払って


迎えに行く事ができたかも知れなかったのに。


過去ばかり思い出して

後悔ばかりが募っていく。


でも、このままじゃいけないんだ。


今度こそ、伝えたい思いはちゃんと伝えなくちゃ。


そうして生きることが


俺が精一杯生きる事が


みんなの


セレンの望みだと言うのであれば


君の為に

俺は生きるよ。

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