俺の彼女は魔法使い~彼女のために最強の武器を作ろうと思ったのだが?~

あずま悠紀

第1話

ジャンル:異世界ファンタジー

タグ:異世界転生.主人公最強.剣と魔法.戦記.美少女.ライトノベル.ハイファンタジー.バトル

タイトル:俺の彼女は魔法使い~彼女のために最強の武器を作ろうと思ったのだが?~


主人公は普通の会社員だったが突然異世界に召喚されてしまう。その世界で彼は勇者に選ばれるが魔王に殺されてしまう。

しかし彼はその直前に神様に出会い、自分が勇者として異世界を救うことを頼まれる。そして彼がこの世界で手に入れた能力は"魔法具製作能力"というものだった――――


「いい武器を作ってあげるよ!」

 俺は彼女に約束をした。異世界で出会った魔法使いの女の子に恋をしたからだ!

「本当に?!嬉しい。それじゃあ、魔法の家で待っているわ」

 俺は早速、〝最強の武器〟を製作するために、究極の材料を探しに行った。

 それは世界最高の鉱物であるオリハルコンという素材である。


【錬金術師ギルド本部】

「また、とんでもないものを探そうとしてるな」

 オリハルコンはその伝承の通り、伝説上の金属であり、この異世界において本当に希少なものであった。

その金属が使用されているものは、やはり《神造兵器》と呼ばれ、神話上や英雄たち、ひいては、建国の英霊たちが使っていたり、王室などが秘密の隠し金庫に保管しているようなものである。


 国家ですら、その現物の保有が叶っておらず、これらを保有しているのは、魔術師ギルドにおいても歴史に名を刻んでいるような、魔術師たちが共同で管理しているといったところなのである。


「まあ、でも、“当て”はあるぞ」


伝説の鍛冶職人でドワーフ族の長でもある親父ならば持っているはずだ。それに、このギルド本部の地下深くには鍛冶場があるはずなのでそこで見せてもらえばいいのだ。ただ、そんな場所に行くためには許可が必要だろうから、まずはそれを手に入れることが最優先になる。

ただ、親父の居場所を探すのが一番の問題だった。親父は滅多に表に出てくることがないため、どこにいるかわからない。そもそもギルドの職員すらも知らないのではないだろうかと思うほどだった。一応、冒険者時代に通っていた店の店員なら顔を覚えている可能性があるだろうし、そこを訪ねてみるのもいいかもしれない。とりあえず、行ってみることにするか。

よし、今日はもう遅いので、明日にするか。明日になればギルド職員の中に顔見知りが何人か見つかるはずだから聞いてみよう。

俺は宿に戻る前に一度店に立ち寄ることにした。というのも武器の製作に必要な道具を買うためだ。さすがにこのまま何もない状態というのはまずい気がするし、最悪、今からでも材料探しに行けば間に合うかもしれなかったからだ。もしそれができれば、すぐにでも取り掛かりたいし、そのためにも必要なものがいろいろあるわけなのだが、ここで購入するしかないだろうと思っている。ちなみに、俺は今は何もできないが金を持っているのだ。

というのも親父が生前、お守りと言って渡してくれた小遣いと、ギルドからの依頼達成時の報酬などでそこそこの金額を持ってきていたのだ。もちろんこの世界の通貨ではあるが、これのおかげで当面困らないだろうと思っていた。だが、実際にこうして買い物をしていると、なかなかどうして大変である。そもそも物の名前とかがわかんないし、何がなんだかさっぱりなのだ。こういう時に鑑定スキル的な何かがあれば便利そうだよなーなんて思っていたら目の前のカウンターに置かれた剣を見た瞬間に頭の中に浮かんできた文字群があったのである。そこには《名匠が鍛ちあげた一振り。品質★5》などと書かれているではないか。しかも詳細を見ると《製作者の名匠の遺作》とあった。なるほど、これはありがたいなと思いつつ、それを購入した。

それからしばらく歩き回って道具を購入していった。最後に買ったものは大きな木箱である。その中に色々な鉱石類を入れて運ぼうとしていたのだ。これでひとまずの準備ができたと思ったところでちょうど宿に着いたのだが、その時であった――

(あのぉ、ちょっといいですか?)

どこかから声をかけられた。あたりを見回しても誰もいないのであるが、よくよく見ると足元に小さな女の子がいることに気がついた。

俺に声をかけてきたのはこの子だったらしい。というかなんだこの子は?なんとなく人とは違う雰囲気を漂わせているように感じるのだが、一体どういうことなのだろうか?俺が困惑して黙っているのを見るや否やその幼女(見た目的にはそうにしか見えない)は再び話しかけてきたのである。

(あ、あぅ~ごめんなさいです!無視しないで欲しいのです!!えっとそのですね。私は妖精族のルーラって言いますです。よろしくなのですよ。あ!でも私、あなたと契約するつもりはないのですよ。だからそんなに警戒しなくてもいいのだよ?むしろ契約してくれるとすごくうれしいのです!でもその前にあなたの名前を教えて欲しいのだよ)

俺はますます混乱した。妖精族? 妖精と言えば背中にある半透明の大きな羽が特徴のファンタジー定番キャラである。しかし目の前にいるそれはとてもではないが、普通の人間のようにしか見えなかった。

(俺は佐藤健っていう名前なんだけど、君の名前は?)

(ふぇ!?あ、はい。私の名はルチアと言うのですよ。この国で言えばルシアに近い発音だと思うのだよ。えへへ、あなたの好きな響きになっているといいのだけど、でもそれは今は関係ないのだよ)

そう言った彼女は顔を真っ赤にしてうつむいた。どうも感情が顔に出やすいタイプなようだ。というかこんな感じの子に今まで会ったことはないし見たこともなかったのでかなり戸惑う。ただでさえ状況についていけてないというのにさらに追加されるとさすがの脳ミソでは処理能力がオーバーヒートを起こしそうになる。それでも何とか言葉を絞り出した俺は改めて質問をしてみることにした。

(それでだな、まずはここはどこで、君はなぜここにいるんだ?そもそもどうやって入ってきたのかさえわからないぞ)

俺は当然の疑問を投げかけた。すると今度はなぜか申し訳なさそうな顔をしつつ話を始めた。

それによるとここはまだ、精霊の森と呼ばれる領域であるとのことだった。そして、彼女によると自分は精霊であるらしい。つまり妖精であるわけだ。そして俺が倒れていたところを見かけて、声をかけたのだそうだ。確かに俺がいた世界には妖精というものはいなかったなと思いながら、この子が言っていることを素直に受け止めるとするなら、妖精に好かれているということになる。ただこの子の場合は他の妖精とは違い、俺に興味津々の様子だった。ただ俺から言わせれば、異世界に来て、妖精に出会うことになるとは思っていなかったので驚きで頭がパンクしそうである。それに彼女の言うことは本当の事だとしたらこの森の外にはとんでもない化け物がたくさんいるということである。それを考えると恐ろしくなってきてしまった。それに俺は武器を作ってやりたい女の子がいるのだ。ここで立ち止まるわけにはいかないし、早く帰らないといけないという思いでいっぱいになっていたのである。俺は少し焦りを感じつつ彼女に聞いた。

(あぁ、いやすまない。俺の住んでいたところが遠くにあってな、帰り道がわからないんだ。それに急ぎで作らないとならない武器があるんでね。急いで帰りたいんだ。悪いが出口まで案内してくれないか?)

そういうとルチアは少し考え込む仕草をした。その後こちらを見てにっこりと微笑んできたのだ。何ともかわいらしい笑顔についドキドキしてしまった。そして次の瞬間、目の前の女の子の瞳から光が消えた。それと同時に周囲の気温が急速に低下していくような感覚に襲われ、体が震え始めたのである。これはいったい何なのかと思っているうちにその光のない眼がまた元の色を取り戻していったのである。同時に、体の震えが止まっていった。そのあとに聞こえたのは笑い声だった。先程よりも大きくなっているように聞こえるのは気のせいではないと思う。

(ウフッ。あはははっ。なーんちゃって。あはははは!驚いたでしょ?私を本気にさせようったってそうはいかないのよ!もうわかったわ。あなたに付いて行ってあげる!感謝しなさいよね。ただ、条件がありますからねぇ~。あ、先に言っておくけど別に変なことしようとか、企んじゃだめよ?もしそれを少しでもやったら即刻追い出しちゃうんだから。いい?ま、せいぜい私のために働きなさいよね。それと武器を作るのを手伝ってくれるのなら、私がいろいろと教えてあげるから安心しなさい。さ、そうと決まったらさっさと行きましょうかね!じゃあいくわよ。ついて来なさい)

その言葉と共に目の前の幼女の背に大きな光の玉のようなものが現れたのだ。それが一瞬輝いた後、俺は思わず目を閉じることとなった。そしてしばらくしてから再び目を開けた時には見知らぬ場所へとやってきていたのである。そこには一本の道が続いていて、そこからは魔力のような力を感じることができたのである。これが俗にいう魔法の力なのだろうかと思っていると背後から声が響いたのである。

(ほら行くわよ!急がないと日が暮れちゃうでしょ?早くして頂戴。あ、それからちゃんとお仕事してくれたらいくらでも構って上げるから頑張りなさい。いいわね)

そんな風に言い放った幼女がまた笑っていた。だが今度はどこか寂しげな雰囲気を感じた。きっとこれは勘違いではないのだろうなとこの時思った。この子もまたひとりぼっちだったのかもしれないとそう思ってしまっていたのである。そう思うだけでどうにかしたいという気持ちが強くなっていく。だからこそ俺には何としても武器を作ってやりたいという思いが芽生え始めてくるのであった。

ただ問題は彼女が俺に協力してくれるかどうかだったのだが、今のところそれはうまくいっているようで、特に拒否される様子もなくここまで来ることができているのである。そんなことがあって俺は、もしかしたら妖精族の長かなんかなのではと思っていたりするのだが、実際は違うらしい。彼女は自分のことをただの妖精だと言い張っており、それ以上の情報は一切与えてくれなかったのだ。なので結局のところは何もわからないままだったのである。

そんなことを考えているうちにようやく目的地に着いたようである。そこは、いかにも何かが出そうな薄暗い森の中にある大きな洞窟のようだった。

(やっと着いた。あんまり遅いから疲れちゃうじゃないのよぉ。ほんとに使えない男ねぇ~。はやく入ってきな)

俺のことを罵りながら中に入っていくルチア。俺もそれについて行ったのだが、入った瞬間、肌寒さが一気に襲いかかってきたのである。どうもこのあたりはかなり寒い気候のようだった。というかそもそもこんなところに鍛冶場みたいなものがあるなんて普通では考えられないことだった。そうして俺は、この妖精族の少女に連れられてきた場所に驚愕することになったのである。その光景に圧倒されてしまった。そして俺は自分が何をすればいいのか理解することができた。

なぜならそこにはとんでもない量の鉱石類があったからである。

これはすごいなと感動していた時、ルチアから声がかかった。

(なに突っ立ってるのよ!はやく取り掛かりなさい!!)

相変わらず俺に対しての当たりが厳しいのでちょっと悲しいのだが今は我慢である。それよりも俺はこれからの工程を考えなくてはならないのだ。

そこでまず俺は、親父が生前よく言っていた言葉を頭の中で反駁していった。するとそこにはこうあったのである。

『お前ならできる!!お前の好きな武器を作って見せろ!!』

(そうだ。俺は俺にできることをやるだけだ。やって見せるさ)

そう心に強く思いつつ目の前にある鉱石を手に取った。すると《名匠の鍛ちあげた一振り。品質★5》の詳細が浮かんできた。《製作者の名匠の遺作。品質★10》と出ており、これに関してはあまり期待しないほうが良さそうだった。

次に俺は鉄鉱石を取り出した。この素材を使って作る武器には2つの特徴があるのである。

それは1つは通常の武器と違って魔法が付与されているという特徴があり、さらに特殊な能力を付与することができるということである。この世界では通常ではありえないくらい強い力を持つことができるようになるのだそうだ。

2つ目は非常に硬く頑丈になるということだ。つまり壊れないというメリットがあるのである。

ただし、俺が今回欲しいものは、硬すぎるのではなくて、丈夫なのである。だからその点を考慮に入れて武器を作ることが必要なのであった。そしてそれはかなり難易度が高いことであるというのもわかっているので、気を引き締めていく必要がある。

まず、普通の金属を使う場合は熱を加えれば、加工することは容易である。

しかし今回の場合、この世界の物質とは違う性質を持ったものを鍛える必要がある。

俺は、それに必要な道具がどこにあるかを考える必要があった。

(そうか。俺も知らないものが多すぎて、こういう知識の足りないところが出るのだろうな。仕方ないな。ここはひとつあいつに頼るとするか。あの子が知っていたとしたらかなり運がいいんだな)

俺はとりあえずこの空間から外に出ることにした。

(お~い、そっちにいけば外に出る扉が開けるか?)

そういうとすぐに返答が来た。

(あら、もう気づいたのね。ええっとそこをまっすぐに進めばすぐ外に繋がるはずだからそのまま進んでみなさい。そうしたらいいわよ。あ、一応注意しておくけど、そこから先は魔物の巣窟になっているから覚悟しときなさいよ?でも、私の言うとおりにしたご褒美に私が守ってあげるけどね。あと私のこともちゃんと連れてきてくれたら褒めてあげるし甘やかしちゃうんだからぁ~。まぁせいぜい死なないように頑張りなさ~い)

そんな捨て台詞を残していったルチアであったが、その言葉は嘘ではなかったようだ。この辺りには強力な魔物がウヨウヨしており襲い掛かって来たのだった。ただ幸いだったのは、まだこの洞窟にはあまり強い奴はいないらしくそれほど苦労せずに済んだという事である。

そしてなんとかこの洞窟の出口まで来ることができたのだった。ただ出口付近にいる敵が厄介そうだったのである。

「おい、この先の道は危険だから俺に続けよ」

(あ?あ?あぁ?なんだとコラァ!!!ぶっ殺されてぇかてめぇ!?あぁ?調子こいてんじゃねぇぞオラ!)

(あ、すみません。そんな怒らないでください。怖いです。あ、じゃあいきますね。ついてきて下さいね。絶対遅れちゃダメですよ?)

そういうと俺の目の前にいたやつはいきなり俺に向かって殴りかかってきた。しかも素手だ。俺はその攻撃を避けようとしたものの、あまりにも速いため反応できなかったのである。

そのせいで俺はその一撃を食らってしまった。しかしなぜかその拳は空を切ることになったのである。

(あ、あれ?俺がここにいるのはおかしいよな?な?なに?なにが起きてるんだよ!!!あ?なんだ?まさか?い、いや、あり得ない。こいつがそんなことをするはずが。そんなことがあるわけねぇよな?な?な?はははっ、んなことある訳がねぇよ。な?だよな?だって俺を殺せばあいつらは困ることになる。そうだよな?俺をわざわざ殺しに来る馬鹿なんているわけねぇよな?あ?でも、だとしたら、俺の幻惑は破られたというのか?な?あり得ねえよな?いやいやいや、そんなことは、絶対に)

俺はその言葉を言い終わらないうちにその男の胸倉を掴み上げて睨んでみたのだが、相手は全く気にしていない様子で笑い始めたのである。

俺は、その時にようやく確信した。

あぁ、こいつは本物だ。偽物などではないということを。だからこそ俺は全力をもって対処しなければならないと思ったのである。そうしないと確実に殺されるとわかったからだ。

それからしばらく俺は戦闘を続けることとなった。だが相手の実力はやはりかなりのものだったようである。なかなか隙を見せてくれず攻め倦ねることが多かったのだ。

それから俺は何度もその男と戦っていたのだがとうとう相手が折れる形となった。

「あ~もうわかったよ。降参しますぅ~。はい。これでもう良いっすよね?はやく俺を殺してくだせ~。まじ勘弁してくださいよ。これ以上戦っても無意味だと思うんですけどぉ~?」

(ま、ま、待ってくれ!ま、ま、まず俺が先に行くからついて来てくれ。そうしてくれないと話にならない。頼む!そうしてくれないなら俺は、お前の頼みを聞けない!頼むから早く来てくれ)

俺はそんなことを言ったのだが、それでもなお渋っていたようだったがようやく承諾してもらって一緒に来てくれるようになったのである。

それから俺が通ってきた道をそのまま戻るようにして進んでいくとそこに大きな門があった。それをくぐった後俺はその先にあった景色を見て驚愕していたのである。そこは、巨大な街が広がっていた。俺が知っているような町よりも遥かに発展しているように感じたのである。そしてなにより、ここには人の数が圧倒的に多い。そのことが何を意味しているのか俺にも予想ができた。

俺には今更隠すことでもないと思っていたので、俺はここが自分の住んでいた国であり元の世界だということを説明した。だが、そんなこと信じられないだろうと思いながらも説明してみると、あっさりと理解を示してくれていた。

そしてここから少し離れた場所には俺の家族も住んでいるということを教えてもらった。

(なるほどねぇ~あんたがそうなのかぁ~ふ~む。よし!決めたぜ俺はお前に協力することにするわ!!あ~いやマジだぜ!!だからよ俺を雇っちゃくんねぇかねぇ?あんたんところは鍛冶屋をやってんだろぉ~。だったら、その腕前を見せてみやがれ!って話になるだろう?どうだいどうだいどうだいぃ?ま、断るって言ってもこの国の王様に直談判して、無理矢理お願いしにくるだけなんだけれどね。はっはっはぁ~どう?いい案だろう?なぁ?)

ただこの男がとんでもない奴だということがわかったのだ。そうでなければここまでのことはできないと思うからな。それにこいつの力はそれだけで十分に価値のあるものだと言える。俺としても仲間が増えて嬉しい気持ちでいっぱいになったのだが、その前に俺は自分の目的を果たすべく行動することを決めたのである。

それは鍛冶場を作ることであった。

そのためにはこの男に力を借りるのが良いと判断したのだ。しかし問題はどこに作ればいいかということである。そこで考えたのは街の外れにある大きな森の中であった。ここは魔物の巣窟になっていた場所だったので俺にはちょうど良かったのだ。

俺がそこに向かう間もルチアと一緒にいるあの男が何か言いたげな視線を俺に向けてきていたがあえて気づかないフリをした。

なぜなら、俺はこいつに勝てそうにもなかったから、余計な揉め事は避けるべきであると判断することができたからである。ただこいつはルチアの言うことだけはしっかり聞いていたのが救いではあった。ルチアのほうから俺に話しかけることは一度もなかったが、そのことについては何も言われていないようで安心することができたのである。

(お~い、ルチアさん?ルチアさーん!ルッカ!どこに行ってたのよ~!!もぉ心配したじゃない!!ルッカ!もう離れないでよね~!!もう!!あ、そういえばさっきなんか怪しいやつがいたんだけどさ、このあたりに巣窟があるみたいなの。この子たちはみんな強いけどさ。さすがにあの数を相手にするのって難しいかもしれないでしょ?そういう時のための私の力ってことでしょう?うん。私は賢いのよ。そういうのは任せておいてよね)

その言葉に甘える形で俺は鍛冶を始めることにした。そしてその日はかなり集中していたのもあってかなり深い時間になってしまったのである。そして俺は、この工房の主人として、ここに俺専用の工房を作ると宣言したのだった。しかしここで問題が発生した。この男は俺の話を最後まで聞くと俺のことを殴り飛ばそうとしたのである。それもかなり本気で。

しかし俺はそれを避けることができず直撃を受けて吹き飛ばされてしまっていた。

俺にはその理由が全く分からなかったので、どうしてこうなったかを必死で考えようとしたものの思いつくことはなかったのだ。ただその時に聞こえてきた声はルチアのものだけであり、それ以外は何も言わなかったからおそらくこれが原因であろうと考えていたがそれを証明する術はなかったのだった。

(うぅ~ひどい目に遭った。こんな扱い受けるなんて思わなかったぞ~?これじゃあ俺、完全に嫌われてんじゃんよ~?え?え?あ?あぁぁぁぁ!!)

それからその男は、その態度を一変させてなぜか急にへりくだってくるようになっていた。まぁ理由はよくわからなかったが、こちらに敵対する意思がないということだけでも十分過ぎる程分かったためそれで良しとすることにした。それからはお互い情報交換をするという名目でこの辺りのことや世界情勢などを簡単に話すことになったのである。

(ほ~そういうわけだったのか。うん。そりゃ納得したぜ。だってこの国はそういう仕組みで動いているみたいだしな。俺もそのことは知っていたからな。まぁ、俺が知っていて、お前が知らないことがあるのはしゃーねぇけど、そこのところだけはしっかりと覚えておいた方がいいと思うんだぜ?あぁ、あとはそうだなぁ~、この世界で生きている連中のほとんどはこの世界の真実について詳しく知っているやつは少ないと思う。だから、お前はもっと他のやつに優しく接することをお勧めしておくよ)

それからというもの、その男は頻繁に俺の家に来るようになっていた。最初は俺の作る武器に興味を持ってのことかと思っていたのだが、俺の話を聞きに来ているらしい。

それからというもの、その男の話はいつも楽しくて時間が経つのを忘れてしまっており、気づくとすでに夜になっているといったこともしばしばあるほど楽しいものだったのである。そしてその男とはいつしか親友と呼べるほどの仲になってきていたのである。そしてある日俺はその男に、これからやろうとしていることを話し始めたのである。その話を聞いた男は驚きこそしたもののすぐに賛同してくれており、協力すると申し出てくれたのである。ただその前に一つ試しておきたいことがあったためそれを実行しようと考えていた。

(はぁ~い!は~いはいはいはいはいはいはいはい!!ちょいと俺に任せちゃあくれねぇか?俺の力が本物だって証明してみせっからよ!な?いやいや大丈夫!俺はやれば出来る子なんだよなぁ~!んじゃ行くか)

俺がそんなことを言うとその男がまた勝手に行動を始めようとしていた。だがその言葉には妙な自信があったようでもあったのでとりあえず見守ることにする。

(まぁ見てなってぇ。いくぜ~!!!)

そう叫ぶと、男の体に変化が起きたのである。

その姿は徐々に変わっていき、やがて巨大な竜へと変化した。俺は、そんな光景を目の前で見せられていたのである。しかもその男はその姿を変えただけではなく、空に向かって雄叫びをあげていたのである。その瞬間、俺の頭の中に情報がどんどん流れ込んできている感覚に襲われた。その男の言っている意味を理解することができたのだ。

つまりは、今俺の脳には、その男に関する情報が大量に送り込まれているのだ。だがその量はあまりに多くその情報を俺は整理することが難しい状態だった。俺はその作業を終えるまでにかなりの時間を要していた。その男が言ったように俺の力を試そうとしていただけなのだろう。

ようやく終わった頃には俺は、疲れ果てていた。だが、それと同時に、今の自分のステータスを確認しなければと思ったのである。

俺の名前は天城一馬。元の世界では、ごく普通の会社員として働いていた。年齢は二十八歳、身長は百八十センチ、顔はいたって普通だと思う。体型は、いわゆる筋肉質のがっちりした体型で、髪は黒く短く刈り上げている。目は細めの三白眼であり、その瞳の色は茶色でややつり上がっているのが特徴だ。その見た目の印象からよく怖がられることが多いのだが、俺はそこまで怖くないはずなのだがな。そして俺はそんな容姿で、会社の同僚からは親しみをこめてカグちゃんと呼ばれていたこともある。そして仕事でミスをした時などは、あいつをイジるのは俺の仕事だと言われ、笑いものになっていたこともあったな。そんなことを言われるようになったのは俺のあだ名が『お人好し』というものであり、『お節介』、『騙されやすい性格』『流され易い性格、空気を読むことに優れている、優柔不断で頼りない男』などと同僚たちに陰口を叩かれているせいなのかもしれない。そして極めつけに俺は今まで女運がなかった。だから俺はいつまで経っても彼女いない歴=年齢のまま三十歳を迎えてしまったのだった。

俺は、そのことに対して焦っていたわけではないが特にモテたいという願望もなかった。だからといって彼女が欲しいと強く思っていたわけではなかった。俺としては結婚できるならしたいが相手さえ見つかってくれたらそれでよかった。もちろん子供ができればうれしいだろうが、子供を作るということは責任を持つことでもあると思っているからだ。しかしそんな俺でもこの年になれば結婚したいとか子供ができたらいいという考えは自然と生まれてくる。それに俺は家族との団らんに憧れを持っているのだ。そのためにもこの国を出ることが何よりも優先される。

そういえば自己紹介がまだであったな。すまない。少し話が長くなってしまったようだ。俺の名前はルチア。この世界に召喚された異世界人である。種族は妖精族の生き残りで、年齢は二十歳の人間だ。

さて、今日も鍛冶仕事をしよう。俺の家にはその道に詳しいドワーフの職人がいるからな。その人の力を借りることが出来るので助かっている。まぁその人に俺の作った武器の鑑定をしてもらうのが一番の目的なのである。そのためにはお金を稼ぐ必要がある。俺は金欠状態に陥っているから何とかしないとな。

さてと、そろそろ店に顔を出さなければならない頃合いのはずである。最近は毎日来てくれているが、やはり一人で寂しい思いをしているのだろうか。だとしたら可哀想なことをしてしまったと思う。だが今はそれよりも先にやることがあった。それは工房を作るために街の外へ出る必要があったのである。そこで俺は男に協力を求めたのだ。その男の名はザルード、通称ルチアの保護者兼相棒を務めている人物で、その男との出会いはこの世界にやってきた初日のことだったのだ。その時はただ、俺の剣に驚いていて呆然と立ち尽くしていたが、我に帰るとすぐに俺のことを勧誘しようとしてきたのである。しかしルチアが俺のことを守ろうとして間に入ってきてくれていたためにその勧誘はすぐに終わり、そのまま別れたのだった。

しかし俺のその考えは次の日になっても変わることがなかったようでしつこく話しかけてきては、一緒に旅に出ないかと言ってきたのである。俺は正直にその誘いを受けることはしなかったのだがそれでも彼は諦めずに俺のことを誘ってくれたのだった。それが彼の人柄なのかもしれなかった。結局のところ俺は、彼を連れて行くことを決めたのだがその前に彼には自分の本当の力を知ってもらうことにしたのである。

それから俺の工房を作るための道具を集めるため、街にある鍛冶屋へと向かっている途中の出来事だったが、一人の少年と出会うこととなったのだった。その子を見た瞬間俺はそのあまりのかわいらしさに見とれてしまい固まってしまっていたのだった。しかしその子が近づいてくるにつれてなぜか体が震え始めたのである。そして俺の顔を見て怯えるように逃げ出そうとしたのだ。だが俺にはそれを引き留める理由があったため、それを追いかけたのである。そしてなんとか捕まえると俺は必死に謝ったのだった。するとその子は泣いて許してくれた。

俺は安心してその場にへたり込んでしまった。しかしまだ問題が解決していなかった。その子を家に送り届けようとしても頑なに帰ろうとしてくれないのだ。仕方なく俺は、その子に家に帰りたくないのかを聞くと素直に首を縦に振ったのである。

その理由を聞いてみたが、家の人たちは自分に無関心でいつも殴られたりするため、とても怖いのだという。俺はどうすればいいのかを考えた。そしてある一つの提案をしてみる。その女の子が良ければ俺と一緒に暮らしてはどうかというのだった。俺は、この子の親になりたいと本気で思っているからその提案を行ったのであるが彼女は俺と暮らすことを喜んで了承してくれていた。そして俺は彼女の名前を聞いたのだが、その時に俺には聞き慣れた言葉が聞こえてきたのである。

(はっはー!お前ってやつは、ホントに面白えなぁ~。こんな状況で俺と一緒のことを考えてやがるなんてよ!だがその心意気は買うぜ。よし!お前を気に入ったぞ!!だからお前の力を貸してやんよ。その代わり俺のことも守ってくれよ?これから俺達は一蓮托生の関係になるんだしな。これからよろしくな)

その言葉と同時に俺は膨大な情報量を頭に一気に流し込まれていき頭がくらむような衝撃に襲われ気を失ったのである。

俺は目を覚ました時にはなぜかベッドの上に寝かされていたのである。そして目の前にいるこの女性に助けてもらったと教えられた。そして俺の体の変化については、この世界に来た影響ではないかと教えてくれたのである。

俺の名前は天城一馬、二十八歳。この世界の勇者でありこの世界で最強の存在であると自負しているが、俺は別に自分が特別だとは思ったことはない。確かにこの世界の誰よりも身体能力が高いということには間違いはないとは思うが俺だってできないことくらいあるだろうと思っている。だからといって、自分は特別な存在だと思い込みたいわけでもないのだがな。ただ、この世界に召喚された時俺は自分には何か使命のようなものがあると思っていたのだが、今のところは何もなくて、俺としては拍子抜けしているのが本音だ。

ただ、何もしないというわけにもいかないだろうと思いこうしてこの世界で生きていくために必要な知識を身に付けるために日々情報収集を行っていたのである。そんな生活の中で俺はあることに気がついていた。この街はどこか歪んでいるように感じる。この国の王族がやけに俺の邪魔をしている感じがするのだ。俺はそのことがどうしても引っかかり、俺がこの国を出る前にやるべきことなのかを考えることにしたのである。だが結論はすぐに出ることになった。この国に魔王が出現したからである。俺は、そのことを知った時すでにこの国を去っており王都にはもういない。だが、もしこのままこの国が魔王の手に落ちるようなことになった場合おそらく多くの人が命を落とすことになってしまうだろうと俺は考えているのだ。だからこそ俺は今からでもその行動をとるつもりなのだが、俺の目の前に立ちはだかる障害が立ちふさがってきたのだ。それは聖教国という国からやって来た聖女と名乗る女性の存在であった。その人は、自分についてこれば必ず救ってみせると言っているのだ。

俺は当然のことながら最初は信じていなかったのだがその人の真剣な表情を見てその言葉を信じるようになっていたのである。だがその人が嘘をつくような人でないことを俺は知っていた。なぜなら俺は彼女に救われたことがあるからだ。その当時彼女はまだ十六歳の少女で俺は二十八歳だったが彼女と初めて会った時の俺は二十七歳でかなり大人げない行動をしていて彼女を困らせてしまった。だからそのことを気に病んでいて罪滅ぼしの意味もあって協力したいと思ったのだ。そんな気持ちもあり俺は彼女に協力することを決意したのである。

そして俺はこの世界において必要な武器を手に入れるためにとある工房へと向かう途中、一人の男に出会ったのだ。そして彼は、自分の実力を証明するために勝負を仕掛けてきていたのだった――

私はルチアだ! 私の名前はルチアだ!大事なことだから何度でも言っておくぞ。

私はルチアなんだ!! なぜ自己紹介をしているかというと、今日出会った少年のことが気になっているからなのだ。彼が私の名前を聞いた途端急に苦しみ出して倒れたのだ。それで私が看病をしていたという次第である。そんなこともあり、なかなか彼の様子を見に行くことができなかった。でも、そろそろ頃合いなのではないかと思い部屋を訪ねてみるとそこには私の知らない顔がいたのである。それも美形の青年であった。そしてその男は私のことをじっと見つめてくると「かわいいな」と言って頭をなでてきたのである。その時に顔が赤くなってしまったので恥ずかしくなってしまい思わず彼から離れてしまったのだった。

そんなこともあって、さらに話しかけにくくなってしまったが意を決してもう一度部屋に入ろうとしたらまたも見ず知らずの女性がやってきたのである。しかも彼女は、私よりも小さいくせに上から目線でものすごい態度を取ってきたのだ。そのことでムカついた私は、怒りをぶつけるように喧嘩を吹っ掛けようとしたのだがあっさりと負けてしまい私は彼の家に連れてこられてしまっていたのである。

その家はすごく広くてまるでホテルの一室みたいな場所だった。そのことについていろいろ聞いてみたのだが結局何もわからなかった。だけどそこでも彼の優しさに触れることになり少し安心することができたのだった。その後すぐに夕食に呼ばれ彼と二人きりになってしまった。私は彼に料理を食べさせてもらうという行為に恥ずかしさを感じてずっと下を向いていたが、その途中で突然彼にお風呂に誘われたのだ。そして一緒に入ろうと誘われて断ることはできなかったのである。私は服を脱ぎ始めて彼の視線を感じる度に体が熱くなりながらも、脱ぐことを止めなかった。

そういえばどうしてあんな風にお風呂に誘ってくれたんだろうか?それに食事の時も、なぜかあの子が私のことをジロジロ見て来ていて落ち着かなかったなぁ~。そういえば私に抱きついて来た子もいたしなぁ。なんかちょっとドキドキしたけどなんだったんだろうか? とにかく今は、その男の人に会うしかないみたいだし行ってみるしかなさそうだよね。うん。よし行こう! コンコン 返事はなかったのでとりあえず入ってみることにした。

ガチャ

「おっ!起きたんだね。体調の方は大丈夫かな?」

いきなり声をかけられたのでびっくりしたが何とか返事を返すことができた。

そして俺はその子の顔を見て驚いた。その容姿があまりにもきれいでかわいらしいものだったからである。しかしそれと同時にある疑問が浮かんできたので俺はその子に向かって尋ねてみることにする。まず、名前を教えてほしいと頼んだのだが、その子は首を横に振るだけだった。そこで俺はその子が名乗るのを拒んだのかと思いそれ以上深く追求しなかったのだが彼女は俺のことをじっと見たまま動こうとしないので俺はその子がどう思っているのか気になり始めてきたのである。

するとそこでようやく彼女が喋ってくれたのである。名前はルチアという名前で見た目通りの妖精族で年齢は十四歳の人間だそうだ。それからルチアちゃんがここに来た理由について話してくれたのだが俺は彼女の言っていることがよくわからなくて困惑してしまった。なんでもこの子は俺に助けを求めてきたのだが、その理由がこの世界の歪みについて調べたいと言っていたのでその目的のために協力してほしかったとのことだったのだ。俺は、その説明を受けた時に、俺とこの子が似通った部分があることに気がついていた。その理由というのが、その子の服装だったのだ。その子はなぜか黒いマントのようなものを身に着けている。それがどういうものなのか俺には分からなかったがなぜか気になってしまい、俺はそれを外してくれないかと言ったのだ。

だが俺はその時あることに気づいたのである。

その子の頭に角のようなものがあったのだ。そして俺はそれが本物なのかを確かめるためにその子の頭に触れた。そして俺の手がその子の角に当たるとそこから光が溢れ出したのである。その現象を見た俺は驚きその子の体を触って確かめていった。すると背中の部分に違和感を感じたので、その部分の衣服を引き裂いていくとそこには明らかに俺のとは違う鱗のようなものが存在していたのである。そして俺がその光景を見た後にその子の顔を見上げるとその子の顔が赤くなっていることに俺は気づいたのである。俺は慌ててそのことに触れないように謝罪するとその子はなぜか顔を俺から背けていた。その仕草から俺と同じような感情を抱いているのではないだろうかと感じ取った俺は彼女の名前を聞くと、どうやら彼女は、俺と同じで苗字がないと言うのだ。

だが、この世界に来てからというもの、この国の住人のほとんどの人に苗字があることを知った俺はこの子のことがどうしても気にかかってしまい質問して見たのだ。すると彼女は聖教国の出身であり、自分は、勇者様のパーティメンバーの一人だという。そこで俺はこの子の話を疑ったのだが実際にステータスを確認することができてしまって、さらには、スキルの中に【勇者の仲間】なるものがあることを知ってしまったのである。

それを見た瞬間に、俺は目の前の少女に好感を抱いたのだった。だからか、ついつい俺はこの子を気に入ってしまうことになりその気持ちのままに彼女を俺の家へと連れ帰ることを決めたのであった。その行動については、ルリアナが何か言いたげだったが特に口出しすることなく、俺の後についてくる形となっていた。

そして俺達は宿屋に戻ってきて部屋に入りこれからのことを考えたのだがここで問題が起こっていたのである。俺は女の子の扱い方がよくわからないためどのように接すればいいのかわからなくなってしまった。そのため俺は彼女に対して緊張してしまい思うように話すことができず、俺は自分の気持ちを素直に伝えられない自分が嫌になった。そしてそのせいで俺達の距離は少しずつ縮まらなくなっていき俺は彼女に嫌われたくないと思い始めたのである。俺は、そんな自分にイラつき思わず強く当たってしまった。

すると彼女はそんな俺に対しても変わらず優しい言葉をかけてくれたのである。だが俺にはそんな言葉をかけられる資格はないと思った。なぜなら俺は彼女を騙してこの世界へ連れてきてしまったのだから、だから俺はそんなことを言われてはいけないのだと思ったのだ。だから、この世界に残るように言った。俺の勝手な理由でこの世界に呼び出してしまったのにもかかわらずこんなにも優しい子だからこそ俺はこれ以上関わらない方がいいのではないかと思っての発言だったのだ。でも俺の考えとは正反対にこの子に説得されてしまい俺達の関係はまた少しだけ近づくこととなったのである。

それから俺はこの子ともっと親しくなりたいという欲が出てしまい一緒に入浴することにした。そして恥ずかしさから俺は自分の裸を見せるのを拒んでいたが、なんとかその欲求を抑え込むことに成功したのだった。

その後食事をすることになり俺は彼女に料理を作ることにしたのだがそのことでルチアに料理を作らせてしまったということに気づき、申し訳ない気分になっていたのだが彼女はそんな俺に対し謝らないで欲しいとまで言ってくれた。そして彼女は料理がうまいということをアピールするように作ってくれたのだ。

俺は正直あまり美味しいとは言えない出来だと思っていたのだが彼女は、自信満々な様子だったので食べてみるとこれが意外においしく感じられたのである。

そして俺は彼女と一緒に風呂に入ることに決まったのだ。そして俺は、この子に対して失礼にならないような振る舞いをしていかなければならないと思った。俺はそう思った時にある事を思い出したのだ。それはルチアと出会ってすぐのこと、ルチアが俺の名前を聞いた時のことだ。彼女はなぜか自分の本名を名乗った途端に苦しみ出したのだ。そして俺はその時のことを思いだしもしかしたらと思い俺は彼女を自分の力で調べようと思ったのだ。そして結果はやはりだった。彼女は普通の妖精族の女ではなくて魔王だったのだ。そのことを聞いた俺は驚くしかなかった。だってそうだろう?俺はこの世界に来る前、普通に生活していた一般人なんだからな。それにこの世界では俺の世界にいた時に使っていた言葉がそのまま通じるのだ。つまり俺は異世界の人ということになるんだがどうしてそんなことになったのかさっぱりわからなかったのである。でも俺はそんなことは関係なくこの世界で一生懸命生きていけばよいと決意を新たにすることが出来たのである。そうすることで俺も前向きにこの世界で頑張っていきこの子を守っていきたいと思うようになったのだ。

そして、ルチアがなぜ俺を必要としてくれているのかを教えてもらった。その理由を聞いた俺は思わず嬉しさのあまりに泣いてしまっていた。だって彼女はずっと一人で苦しんで来たのだ、それもその苦しみは今も続いているのだ、俺にはそんな経験がないため、どんなにつらいことなのかは想像することもできないのだ。でも俺は、そんな状況の中でもこの子はずっと耐え続けているんだとわかったのである。俺はその時の彼女のことをとてもすごいと感じたのだ。俺は自分にはそんなことができるはずもないと分かっていた。だがそれでも、俺には力になれるかもしれないという思いがこみ上げてきたのである。そして、俺と彼女が二人で協力できれば、きっとこの世界を救えると、この時俺は信じ始めていた。俺はこの子とならば、不可能なんてことはないと信じたのである。俺は、ルチアに言われたとおりに自分の持っているすべての力を尽くしていくことを決めたのだった。

そういえば、俺はこの子のことをいつルチアと呼ぶようになったのか思い出せなかった。だがこの子はもう俺にとって大切な存在なのだということははっきりしていることだった。この子は今まで誰にも助けてもらえずにずっと苦しんできたんだ。俺は、そんなこの子の助けになるなら、俺のこの命を捧げてもかまわないと思えるくらいに、この子のことを大事にしてあげたいと本気で思っていたのだった。そう思うようになっていたのは彼女の性格が理由だった。俺は彼女の笑顔を守りたいと思ったのだ。

その晩俺はベッドの上で寝ることにしたのだがなぜかルチアが抱き着いてきて、さらに俺に甘えてきているのだ。どうやら、この子は誰かがいてくれるだけで安心することができるらしくて俺を頼ったということだったのだ。そしてその話を聞いて、俺もこの子に頼ってもらいたいと感じていたので俺の方からも彼女を抱きしめた。するとそのことが安心できたのか、そのまま眠りについたのだ。

翌朝になって俺は起き上がったのだが、昨日のことが夢ではないことを確かめるために自分の体を触って確かめる。するとそこには角が生えた少女がいる。だがその角を見て、この子は確かに俺の目の前に存在しているのだと確信した。なぜならその少女の顔が俺のすぐ隣にあったからだ。俺はその姿を見て驚きのあまり心臓が止まるかと思ったのだ。だがすぐに我を取り戻し、とりあえず落ち着くために、水を飲みに行ったのである。

俺は、深呼吸してから、もう一度鏡を見たのだがそこに映っている姿に俺は愕然とした。

なんと、俺はこの世界に来た際に黒髪と黒い瞳をしていたのだが、この子がやってきた影響なのか銀色の髪色へと変化していて目の色は真っ赤に変色してしまっていたのだ。そして顔つきに関しても変わっていて俺はなぜか幼く見えるほどに小さくなっていたのだ。

だがそこでふと気付いたのはなぜか身長が伸びていたということだ。おそらくこの世界に転移する際に俺にはなんらかの変化が起きたらしい。

だが俺はなぜかそれがうれしかったのだ。その理由はなぜかわからないのだが、俺はこの世界の人達と見た目が近いほうがいいと思ったのである。この見た目で変な目を向けられると俺は精神的にかなりダメージを受けていたはずだ。俺は今度この容姿に関していろいろ調べてみようと心に決めていたのである。

そして着替え終わった後、俺は改めてルチアと向き合ったのだ。そして俺はこの子に俺の力が必要かどうかを尋ねるとどうやらルチアにも俺と同じような能力が発現していて、俺の力と合わせればもっといろんなことが可能になるかもしれないと言われた。それで、俺達はお互いに協力し合って何かをするという話をした。その時、俺はこの子を守れる力が手に入るのだと、そして一緒にいればお互いに幸せになれたはずだった。だから俺はこれから一緒に行動しようかと考えたのだが、ルチアは突然こんなことを言ってきたのである。なんでも俺がここにいる理由はこの国にいる魔術師ギルドのメンバーと接触したかったのだという。だから俺達はこの国を出て次の目的地に向かうことになったのだ。俺は正直驚いたのだ。

だが俺はそれに関しては反対することはなかったのだ。だって俺はただこの子を助けたいと思ったからこの子を連れて来ただけであって、この子の気持ちを無視したわけではなかったのだ。むしろ俺は俺自身のこの気持ちを優先したくて連れて来たようなものだ。でもルチアはこの国に残りたがっていた。それは自分が魔王であるということを隠すためであり、そのことは俺は知っていたのであえて何も言わなかった。でもそのあとに告げられたのは自分の力のせいで国が危なくなる可能性があるという事だ。でも俺はその言葉を聞いた時あることに気が付いてしまったのである。

それはルチアは俺のために魔王であることを黙っていてくれたのではないかという考えに辿り着いたのだ。だから、ルチアにそのことを言う必要はないと伝えたのだ。そして俺は、ルチアを信用できる人間であると認識してもらいたいと思い、自分の本当の目的を伝えた。すると、どうやら俺は俺自身よりも信頼されてしまったようだ。その結果俺に仲間になりたいと言ってきたので快く受け入れることにしたのである。

そういえばこの子にはまだ自己紹介してもらっていない。まぁそれは俺がしてあげるか。俺はそんなことを考えながら彼女に名前を告げようとしたのだ。

でも、その前に、この子の名前を呼んでもいいか聞こうとした。そうしなければ、俺と彼女の間に距離ができてしまうと思ったから。だが、俺はその瞬間にある事を思い出すことになった。この子は確か自分には名前がないと言っていたのを思いだしたのである。

なので、俺はこの子の名前を考えることにしたのだ。だがここでまた俺は悩み始めてしまったのである。俺は正直なところネーミングセンスなんてものはないし、こういうのが得意な友達もいなかった。だがそれでも一生懸命に考えてなんとか名前を決めることが出来たのである。

俺が考えた名前は「ラピス」というものだった。由来はそのまんまで宝石の名前である。そして意味としてはこの子との出逢いに感謝するという想いが込められている。そしてもう一つ俺の個人的な願いが込められていたのだ。それはこの名前で呼ぶことによって、この子の存在を身近に感じられるようにしたいと思っていたのである。

この世界に来て初めて出会った女の子の名前がルチアという子でその子と一緒の部屋に泊まっているのだが、実は俺は彼女と出会ったことで自分の中で心境の変化が起こっていたのだ。その理由はやはり俺は元の世界に戻ることができないということが、頭の中では分かっているものの、どこか心では割り切れていなかったような感じだったのだ。しかし、俺はルチアと一緒にこの世界で過ごしていくことを決意した時に、自分の中で何かが変わっていったのを感じ始めていたのである。そしてこの子が俺にとっての救いの女神だということに気がついたのであった。だからこの子とはできるだけ一緒にいたいと思うようになっていたのである。俺はそう思うようになってからは彼女との距離感を考え始めて、そして気づいた時にはもう遅いという状況だった。そして今こうして二人っきりになっているのだ。

さすがに俺はこの年になっても異性との交際というものを経験していないため、自分が何を意識してしまってどういう対応を取ればいいのか分からなくなっていたのである。でもそんなことは全く気にせずにルチアに話しかけてみた。彼女は俺と出会ってから笑顔を見せてくれることが増えたが今日はさらによく笑うようになっている。やはり一人旅というのはこの子にとっては大変なものだと思う。この世界での彼女はずっと独りぼっちだったので余計にそうなのだろう。だからこそ俺のような人間が側にいてあげられることが彼女の支えになるならそれでいいと思えたのだ。

それに彼女はこの世界に来る前はずっと一年間孤独の生活を送っていた。それがどれだけつらいのか俺にはわからない。だが俺には、そんな彼女が少しづつだがこの世界に居場所を見つけたかのように明るくなって来ていることにとても安心した。俺達は宿を出ると町へと出て行った。まずは冒険者になるためにはギルドに行って登録しなければならない。そのためには身分証明が必要なのである。だからまずは役所へと向かったのだ。そこで俺は、受付にいたお姉さんに自分の素性を説明しなければならなかった。なぜなら俺は今自分の持っている力を証明するものを持ち合わせていなかったからだ。だからその証明する力があるかと聞かれたら素直に答えた方がいいと思って、そのことについて話そうとしたのである。

でも、それを止めたのがこの子だった。この子は、なぜか俺の言葉に納得できないようで、いきなり職員に反論しはじめたのだ。だがそれでも相手の職員は俺に対しての態度を変えることはなかった。だがそこで俺はルチアの行動に違和感を覚え始めたのである。だって、今までなら俺に危険が及ばない範囲でしか意見を言わなかったこの子が、今回は明らかに俺の身を案じているかのような発言をしたのだった。

俺に何かあるのではないかと心配しているようだったが、どう見ても俺が不利になる状況だった。だがそこに助け船を出してくれたのは他でもないルチアだったのだ。この子は、俺がギルドに申請してもいいと言い張ったのである。

俺としてもそれはありがたい話だった。なぜなら、俺はギルドに入るためにはどうしてもそのギルドで働いている人の紹介で入るというのが条件になっているのだった。そうしないとこの子の力を利用するために俺を騙してギルドに加入させる可能性があるからである。

だが、ルチアは俺の力を使って無理やり入りたくないといったのである。そのこと自体はすごく嬉しかったのだ。でも、どうしてこの子はこんな事を言っているのかが気になった。そしてその理由を聞いてみると、どうやら俺がこのままこの世界に留まれば、魔王の力が他の国に知れ渡ってしまい危険な存在だと認識されかねないということを言われたのだ。俺はその時は理解できなくて聞き返してしまったのだ。

そして俺がその事について質問するとこの子は自分が魔王であることを明かすとともに俺の力を利用して自分が魔王であると知られることを防ごうとしていることがわかったのである。だがこの子はそれを望んでいないことも分かったのだ。

俺はそれを聞くとすぐに決断したのだ。たとえ相手が勇者じゃなくても、ルチアはきっと誰かを助けようとするに違いない。俺はルチアのことが好きだ。だがそれは俺個人の気持ちの問題だ。俺の好きな人は誰なのかと、改めて思い返すと俺はルチアのことが大切だと思い始めていることに気づいたのだ。そして俺はこの子を幸せにしてあげたいと思ったのだ。だから俺は、この子のお願いを聞くことにする。それが俺にとっても最善の方法だと思うからだ。そしてこの子の言う通りにすれば、おそらく俺は魔王であるこの子の味方で居続けられるはずだと思ったのだ。

だから俺はその話を断ることに決めたのである。ルチアはなぜか驚いていたが、その理由は俺にはまったく理解することができなかったのである。

だが俺はその後ルチアが言っていた、自分の力を利用したり悪用されるようなことがあるかもしれないという言葉の意味を理解した。なぜなら、目の前のこの国の王様と思われる人物とルチアとの間には何かしら因縁のようなものを感じたのである。

そしてルチアが俺と二人でいるのは俺のそばにいると安全だと感じたからだと聞かされてようやく俺は納得することができたのだ。でも俺はそんなことよりもなぜこの国でルチアがこんなにも恐れられているのかという疑問が生まれた。でも俺はすぐにその理由を知ったのである。それは、俺達がギルドに登録するための用紙を書いていたときだった。俺がギルドでの仕事を受けるのに必要な職業を《戦士》と記入した時だった。だがそれは間違いだったのだ。俺の職業を見たこの国の人々は一斉に俺達に向かって石を投げたり、武器を持ち出すような事態に陥ったのである。

その時に、俺はやっと気づいたのだ。この子の正体に。

俺はこの世界に来た時にこの世界のことをあまり知らないからという理由をつけていた。そのことに嘘はない。ただ一つ隠し事があるとすれば、この世界の常識が全くと言っていいほどないからという理由であったのだ。だから俺はあえて《戦士》ではなくて違う職を書くことにしたのだ。

そうして俺達は何とか誤解を解くことに成功した。そう思っていたが、そう簡単にはいかなかったのだ。そしてギルドに行こうとするとそこにはさっきまでの光景はなかった。でも、ルチアはこの事に関してまるで当たり前のように振舞っていたのだ。だがそれは俺には到底信じられるようなものではなかった。でもそれが本当ならば、この子は本当に何者で一体どういう経緯で今のような扱いを受けているのだろうかと疑問を抱くのであった。

するとここで俺の頭によぎってきたことがあったのである。この国は何かおかしいのではないのか、という事に。この子がここまで嫌われているという事は相当な理由がなければ考えられないからだ。そして俺はこの子のためにできる限りの事をしてあげたいという想いが芽生えはじめている。なので、まずは彼女を救ってくれたという恩人にお礼をするべきだと思ったのだった。俺は、ルチアルと共に王城の前までやって来た。

そこで俺は初めてルチアナ王女の姿を見ることになる。その姿はとても可愛らしく思わず抱きしめたくなってしまうほどだった。

そしてこの世界に来て俺は一番驚いたことは、ルチアと同じぐらいの身長の子がいたことだ。

だがルチアとこのルチアという少女は明らかに年齢も容姿も違ったのだ。俺からすればルチアもかなり可愛いのだがこの子の場合はなんと表現すべきか迷うところがあった。なぜならルチアも確かにかわいいのだがこの子の方が何歳も幼く見えたからである。

でも、この子と会えたことだけは幸運だと思っているのだ。というのもこの子がこの城で暮らしていけるということはこの世界がそれほど危険じゃないという証左であるからである。それにこの子は普通の人間なのだと思えるのだ。そしてこの子と出会えてよかったと本気で思うことができたのである。俺はそんなことを考えながら、ルチアと手を繋いで城内に入った。そうすると俺達の姿を見て兵士達が慌ただしくなったのがわかる。だがそれでも、俺にはもう関係ないことなのだ。俺はルチアを守ると決めたんだから。

だから俺は堂々としていた。俺達に敵意がないということを行動で表すために、わざとゆっくりと歩いているのである。でもこれは俺にとっては賭けだったのだ。この世界の住人は俺の世界と違って魔力を感じることが出来る者がいるのである。だからこそ俺が普通に歩いていても向こうは警戒するはずなんだがこのルチアに関してはまったくそういう反応をしない。

俺達はそのまま受付へと向かうと、俺達は無事に冒険者として登録を済ませることができた。そしてこれから俺は早速冒険者に依頼されている仕事を受けることにしたのだ。その仕事というのは鉱山に巣食っている魔獣を討伐するというもので俺にとっては初めてのクエストとなったのである。

ちなみにルチナは最初付いてこようとしたが、ルチアが「あなたは休んでなさい」と言ったことで、この子はあっさりとその指示に従って部屋に戻っていった。俺としてはこの子には危険な目に遭わせたくなかったのであるが、この子は意外に押しが強いようでなかなか俺の言うことを聞き入れてくれなかったのだ。それで俺はこの子には何を言ってもほとんど意味が無いと判断して渋々ではあるが従うことになったのである。だがそれは俺にとってみればありがたいことでもあった。なぜなら俺はこの世界ではまだ魔法を使うことができない。だが、この子が近くにいてさえくれればその力を引き出すことができるかもしれないと思えてきたのだ。それにこの世界はゲームみたいに魔物と会話をすることが出来る可能性だってあり得ると思ったからである。そんな風に考えていたら俺は自然と笑みが溢れた。なぜならルチアと一緒にいることを考えるだけで心の底からワクワクしたからだ。

俺はこの時初めて誰かを守れる男になりたいと願ったのである。

そしてそれからしばらくして俺は依頼を受けることになったのだ。その内容は、最近頻繁に出現しているゴブリンと呼ばれる緑色の小さな小人の集団である。そいつらが村に現れ、食料や生活品を奪って行くということが頻繁に起こっているのだと説明してくれたのである。俺はその話を聞いて思ったのだ。それは明らかに盗賊の仕業である。だがこの国の人たちはそのことを全く信じていないようだった。だがそれは当然のことでもある。もし仮にゴブリン達が犯人だとしても証拠がないし、それどころか村人が襲われているのでその人達が被害を訴えているにもかかわらずその人たちを疑うことはしたくないようだ。

つまりこの国の人達が考えていること、それは盗賊の被害に遭ってしまった村の人が悪いのではないかということである。もちろん俺は、その村人が無実だとは言わない。むしろ俺だってその被害者だと決めつけてやりたいくらいだった。なぜなら俺は、今まで自分の人生は他人の手によって翻弄されているのだから。でもだからといって俺の人生を他人の手で勝手に操作されるのは許せなかったのだ。俺は俺の人生に誇りを持っていたのだ。だからそのせいか俺はこの国の人々を見て怒りが湧きあがってきて仕方が無かったのだ。だがその気持ちを押し殺して俺はルチアを連れてその場所へと向かっていく。

そして到着した場所には、数十匹のゴブリンの群れが現れたのである。

俺はこの光景を見ると、やはり盗賊による仕業だと確信した。そして俺はすぐさま剣を構え、攻撃を開始するのであった。でも相手はかなり弱っていたのでそこまで手ごわい存在ではなかったのだ。そして俺とルチアがこの洞窟での戦いを終えて外へ出ると、外にいた兵士が俺に声をかけてきた。

だがその時の様子がおかしかったのである。俺に対しての態度が変わったと言うべきか。だが俺はその理由がわかっているので特に何も感じること無く無視することにした。だが、そんな俺の様子を見たルチアはこの国が俺のことをよく思っていないことが理解できないようで首を傾げていた。その様子を見かねた俺はとりあえず宿屋へ戻ることにする。だがここで、この子にはもう少しだけ待っていてもらう必要があるだろうと思ったのである。俺は一人で、あの兵士のもとへ向かった。

その目的は他でもないこの国の兵士たちに対する不信感を取り除くためである。そしてこの国の現状を詳しく教えてもらうように交渉するためだった。だが俺はこの国のトップと思われる人物との面会を申し込んだところで、俺はその場で待つことになったのだ。その途中で俺はルチアと別れたのだ。

俺はその間暇だったので、その部屋の隅に積まれた本を読んでいた。そこにはこの世界の情報が書かれていたからだ。そうしてしばらく待っているとようやくその人物がやって来たのである。

その人物は見た目からかなりの強者のオーラを発しており、いかにも偉そうな格好をしていた。

「君が私に会いたいという冒険者か?ふむ。どうもお前さんからはただの冒険者には感じられないな。それにあの王女殿下のそばにいるだけのことはある。で、だ。君は一体誰なのかね?」

「俺はこの国の王であるバルス様とお会いするためにここへ参りました。ですので俺の正体など気にしないで下さい。俺はただ、あなた方の力になれるような話を持ってきたんです。どうか話を聞いていただけませんでしょうか?」

俺がそう言い終えると王は一瞬だが顔を歪めたのだ。おそらくは俺のことを疑い始めているんだろうな。でも、俺はそんな事は想定内である。

俺はそのあとこの世界の情報を知りたいと伝え、そしてこの国の現状について質問をした。

だが俺の思っていたとおりこの国は相当腐っているようだった。そして、この国の住民の多くは俺の想像以上に馬鹿であり、無知であるらしい。まぁこの国で生きていくなら、それもしょうがないと言えるかもしれないが、だが俺からしたらそんな連中ばかりだということに嫌悪感を抱いていたのだ。

俺はこの国を救うつもりでいたのだがこの調子ではこの国を救うことなど出来ないのではないかと考え始めていた。そうこうしているうちに俺の部屋に戻ってきたのだ。

俺がこの世界に来たのはこの国に復讐をするためであるが俺はそれだけではないと思っていたのだ。なぜなら俺にはとても大事なことを思い出させてくれるきっかけになってくれた恩がある。

それはルチアの存在だった。俺が彼女を助けたことで、俺は自分を見つめ直すことが出来始めたのだ。だからこそルチアを助けられるようになるためには俺は強くなければならない。

俺はこの世界に来てからもひたすら努力してきたつもりだった。でもそれが本当に実力になっていたかどうかはわからないままだった。

だが、ルチアと出会ったことによって俺は改めて決意を固めたのだ。ルチアのためにもこの世界を変えようと、だからその為には力が必要だったのだ。でも今の俺の力じゃ、いくらなんでも力が足りなさすぎるのも事実だった。でも俺にも一つ策が思いついたのだ。

その方法はこの世界には俺の住んでいた場所にはないスキルがあることを思い出せたのである。俺はこの世界に来るまでずっと、ゲームの世界に憧れていてRPGとか大好きだったためその記憶ははっきりと残っている。そしてこの世界はまさに俺が憧れて止まなかったゲームの世界そのものなのである。

そこで俺の考えはこうだった。つまり、俺がこの世界で最初に手に入れた武器、そしてその使い手が、この世界でも同じように存在している可能性は十分にあるはずだと考えたのだ。

この世界が俺が憧れて止まなかった世界とほとんど同じだと思っている理由の一つがこの世界に魔法が存在すること。でもこの世界で使える者はそれほど多くはなく限られている。そしてそんな状況下の中で、魔法を使わずに戦闘をするとなると俺の思い浮かべる限り剣術を使う以外になかったのである。だから俺はまず最初にこの世界がゲームに似た世界だと確認した後すぐにそのゲームをやろうと行動を起こしたのだ。俺はゲームが好きだったが現実問題として俺は今高校生だったわけだからゲーム機なんて持てるはずもなかった。

でも俺はどうしてもやりたかった。だからゲームを起動するための道具を手に入れてこの世界に来て以来常に持ち歩くようになった。だが俺は結局そのゲームのソフトを買うことができずに未練タラタラな状態でいたのである。

そのせいで俺は毎日のようにその夢を見ることになり苦しんでいた。そんな時に俺の願いが叶ったかのように俺はこの世界に来た。最初は信じられなかったがこの世界の俺が勇者だったことは間違いないようである。なぜならルチアと会うことができているのだから、俺のこの仮説が間違っているとは考えられなかった。そして、俺がこの世界で得たチート能力はやはりそのゲームの技だった。しかも俺はなぜかこのゲームに出てくる主人公と同じ能力を最初から手にしているようだった。そして、そのおかげでこの世界でもなんとか生きていけているのである。

だから俺はその可能性にかけることにしたのだ。そしてその剣を使いこなすにはこの国の騎士達を倒さなければならない。でもこの国にはその剣の使い方を知る者がいない。いや、もしかしたら騎士の中にも知らない者がいるのかもしれない。もしそうだとすれば俺は絶対に勝つことはできないのである。

でもこの世界にはこの世界の剣というものが存在する。その情報を手に入れる必要があったのだ。だがその手段がなかったのが正直言うと悩みどころでもある。なぜなら俺はルチアからもらった大金を持っているもののこの国の貨幣がどのようなものかも分からないため買い物をすることができなかったからだ。そして、俺が知っているのは自分が使っていた剣だけである。

そして俺はこの国から出ると森へと向かったのである。

森の中に入ってしばらくすると大きな広場があった。そこはこの国で一番の広さを誇る訓練場になっているのだ。そこでは兵士や、この国の騎士団に所属する者たちが剣の練習を行っているのだ。俺はこの機会を利用して少しでもこの国について調べようと思ったのである。だがここで俺の考えていた最悪の事態が起きてしまったのである。その最悪な出来事が起きたのはこの国の兵士たちと戦わなければいけなくなった時だ。俺はその前に一度この国の兵士たちと戦ってみることにしたのである。

その兵士たちと戦った結果、この国の現状を垣間見ることになってしまった。

それはこの国のトップ、王や大臣がこの国の民を騙しているということだ。この国の国民はこの国の上層部によって支配されている。つまり彼らは国民の税金を使って自分たちの生活を守ってもらっており、自分たちはその恩恵を受けているので文句を言えない状態なのである。

でもそんな生活を続けているのにも関わらず、この国の人間は不満を一切口にしないのである。

俺はそんな彼らの姿を見て疑問を感じた。なぜなら俺が暮らしていた日本の環境と比べてしまえばここは恵まれすぎているほどなのだ。なのになぜこの国の人は現状を受け入れるのかと。俺がこの国の現状に疑問を抱いていると突然兵士が攻撃を仕掛けてきたのだ。そして、俺はそいつらの相手をしてあげた。

それからしばらく経った後に俺はこの国がどうしてこのようになっているのかということを知ったのである。

この国がここまで腐ってしまったのは、この国の貴族たちが自分たちの権力欲しさの為にこの国が建国されてから一度も訪れたことがないこの土地でゴブリンたちが悪さをしているのだと嘘の情報を伝えたことが発端だったらしい。

確かにその話を聞いただけではまだ俺はこの国がそこまで腐敗した国だと判断することはできない。だけどこの国の人たちの話はあまりにもお粗末だった。そして俺はこの話を聞きながら思ったのだ。それはやはりこの国の人たちは貴族に逆らえない立場であるからこそこの国の現状を受け入れてしまっているのではないかと。でもこのままでは俺の復讐が完遂するどころかこの国の人全員を殺す必要が出て来てしまう可能性があった。だからこそ、俺はこの国が滅んで欲しいとは思っていないのだ。

そうして俺のこの国の人たちに対する不信感は高まっていったのである。俺はそんなことを考えていると、ふと思ったのだ。そういえば俺がまだレベル一だったころ、この国の兵士たちを倒したら俺はいきなり強くなったような気がしたのである。そう考えた俺は自分の能力について考察してみると案外簡単にその答えにたどり着くことができた。その結論から導き出された答えは、そのレベルの人間を殺せば殺した者より強い者に殺されるということが言えるのではないかと考えたのだ。でもこれはあくまで推測であり実際にそうなるかどうかを確かめるためには、もう一度あの時の経験を繰り返さなければならない。つまり、あの王と戦う必要があったのだ。

「おいお前たち」

俺は先ほどの王が発していると思われる言葉を拾い上げていった。

そうやって言葉を発していれば俺の方へと向かってくることは予想できていた。

だが、それでも俺に攻撃を仕掛けてきたのだから俺としては遠慮する必要はなかった。

それにしてもこいつは俺が話しかけたというのに返事の一つもしなかった。

だからそのことについて少しばかりイラついてしまった俺は問答無用で殺してしまっていたのである。

こうして俺はまた強くなって行ったのであった。だがそんな俺が気になったのが今の王は誰なのかと言うことである。

俺には王の居場所がわからなかった。というかそもそもこの国に王は存在するのかさえも分からなかったのだ。そんな時にこの国では俺が倒した兵士達と同じような格好をした男が現れて何かを話し始めていた。その男はおそらくは将軍と呼ばれているような存在であるのだろうと俺はそう思うとその場から立ち去った。

俺の頭の中では一つの疑問が生まれ始めていたのだ。

それはこの国に勇者と呼ばれる存在はいるのか、そして、もしいた場合俺と同じようにこの世界に召喚された勇者はこの国に恨みを持ってこの国に復讐をしようとしているのだろうかといったものだ。

でもその勇者に関しては今は考えなくてもいいだろうと思うことにしたのである。というのも今すぐにでもこの国の王に会わなければならないからだった。そして俺はついに見つけたのだ、王様を。

その王は城の謁見の間にいた。その王は見るからに強い威圧を放っており一目見ただけでもその男がただものでないということは分かった。その男は玉座に座り、この国をどうしようと思っているのかを考えていたのである。その男の年齢は40後半くらいに見えるのだが顔からは若々しい力を感じることができたのだ。そして何よりも目を引かれた部分、それは彼の額だった。そこには特徴的な形をした角が生えていたのである。その特徴は鬼族のそれに近い特徴だったため俺はすぐに気づいた。彼が俺と同じ世界から来た人であることに。でもこの世界に来てから俺は鬼族を見たことはなかった。つまり彼はこの世界での異世界人で俺と同じく転生していることになるのだ。

でも俺と彼との大きな違いは彼もゲームをやり込んでくれていたというところだったのだ。

なぜなら、このゲームは俺がかなり時間を費やして攻略してきたものだったからである。

だから当然この世界の人が、こんなにも上手く剣技を習得できるはずがなかったのだ。

そしてその証拠にその剣を振るっている姿はまさしくゲームで主人公が剣を使っていたときの姿そのものなのである。だが一つだけ俺は違和感を覚えていた。その理由はやはりその見た目だった。なぜだかその王からは全く覇気が感じられない。俺が最初に出会った時は、なんとも言い表せない迫力みたいなものを感じ取ることができた。しかし、この王はそんなオーラは一切なかったのである。

だがそれでも、今の状況においてこの世界の頂点に君臨する者で間違いはないはずだ。

その証拠に、周りにいた兵たちは彼に怯えて動こうとしないのである。そしてその王が放つプレッシャーが俺にはわかったのだ。なぜなら、俺はその圧力の感覚を知っており、俺がその世界に行った時いつも味わっていたものだったからだ。そして俺はこの王の正体がようやく分かり始めた。俺の考えは的中した。その正体とは魔王なのである。俺は目の前にいるこの人物が、この国の王だと確信した。俺の予想通りなら間違いなく俺と同じ日本出身の人に違いない。

俺はそんなことを思っているとあることに気づいたのだ。この国の兵士のレベルが軒並み上がっていた理由に。

俺はその真相に気づくことができ、その方法を考えようとしたその時である。俺が王を鑑定するとステータスが見れることに気づいてしまいそのせいで、今まで隠していた俺の能力値が全て暴かれてしまったのである。そして俺はその結果を見て思わず声を上げそうになった。いや、もしかしたらあげてしまっていたかもしれないがなんとかその叫びを呑み込むことに成功しそのままその場を去ろうとした。

俺はその行動を起こすまでが精一杯だったのだ。

そうしないと俺の存在が知られてしまう恐れがあったためである。

俺にはある仮説を立てていたのだ。もし、この世界にやってきた元日本人たちがこの世界の人間を倒せば倒すほどに強くなり、最終的に元の世界に帰っていく。つまりはそういうことだったのだ。俺はその話を誰かにしたかった。なぜなら、元の世界に帰りたいと願う者が一人でもいたならば俺の仮説は立証することができるからだ。だがそれをするためには俺と対等に渡り合える存在でなければならない。だから俺はこの国で一番の実力があるとされている人物に会うことに決めたのである。

そして俺は再びこの王城へやってきていた。そこで、王から呼び出されたために、こうして俺は王の目の前にまでやって来たのだ。だがここで俺は思わぬ出来事に見舞われることになる。

それは王の隣に座っていた女性の存在にあった。

俺は彼女のことが気になっていたのだ。そして彼女はなぜか、こちらのことを睨みつけてくるのである。でもそれはほんの一瞬のことであり、俺はその表情の意味を読み取ってしまう。それは俺を警戒するものだということだ。それもそのはず。なぜなら彼女もまた俺と同類だったからなのだ。

でも彼女が俺を警戒している理由はおそらく違うものだと思う。俺を睨みつける視線が明らかに他の者を見る目とは違っているから。でも、それだけで俺は確信したのだ。やはりこの少女も俺と同郷の人である可能性が高いということを。でもなぜ、ここに来て俺以外のこの国の人間がこの世界にやってきたのかについては疑問を抱くばかりだった。

「まずは貴様に問おう、なぜお前はこの世界に来た?」

俺はその問いかけに即答できなかった。

俺は、自分の意思ではない、神と名乗る男から強制的にこの世界に連れてこられたと伝えようと思った。

でもその答えを口にしようとして俺は止めたのだ。

なぜなら、その答えをそのまま伝えたとしてもこの王が信用しないのではないかと感じたからである。そしてその答えが嘘であることに気づかれれば俺の命は危ないと悟ったのだ。でも、俺は本当のことを言うことにした。

そうしなければ、俺は本当にこの世界に存在する唯一の同郷であるはずの彼女に敵として認識されてしまうからである。

「その問いには答えられません」

俺はそう言って話を変えたのだった。そうすると今度は王の方から話しかけてきたのである。

「なるほどのぉ。では次に問うぞ?貴様はここがどこか分かっておるのじゃろうか」

俺はその質問に答えることができない。というか、正直わからないというのが俺が今思っていることであり俺の本音でもあった。でもそんなことを言えば俺を殺すための準備を始めるかもしれないと俺は思ったのだ。だから何も言えないまま俺は口を閉ざすしかなかったのだった。でもそんな俺の様子を見て王は察してくれたようですぐに俺の疑問に答えてくれた。それはやはり俺の思っていたとおりだった。

王は、やはり俺とは違う方法でこの世界にやってきたらしく俺とは少し状況が違って、その説明を聞いている時にふと思ったことがあった。この国の王の名前は何なのか、俺はその答えを知ることができた。そして俺は驚きの声を上げてしまったのだ。でも俺はそのことを顔に出すような愚行は侵さなかった。

でも王は俺の反応を見逃してくれていなかったのだ。王はまるで俺の心を読んでいるかのように言葉を続けた。

「ほほう、どうやら私の考えていることがわかるようだの。まあ、それが分かるということはそれほどお前さんもこの世界で長い月日を過ごしているという事なんじゃな。私はまだ生まれてから一年程度しか経ってはいないがそれでも、この世界の成り立ちについてよく知っている」

一年前ということは俺よりも早くに転生してこの世界へとやって来ていたのかと俺は思うのだった。それにしてもこの世界についての情報をかなり持っていそうな王に対して俺は色々と尋ねたい気持ちでいっぱいだったが、今の状態ではそんなことはできないだろうと思い黙ることにした。

「そういえばお前の名前を聞いていなかったな。名はなんと言うんだ?」

俺は王から話しかけられて内心焦りながらも、どうにか答えることに成功したのである。

「俺の名前は天上翔と申します。以後お見知りおきを。それであなたのご名前を教えていただきたいですがよろしいでしょうか」

王はしばらく考えてからこう口にした。

「そうだな。私がこれからするべきことを考えるために、今のうちにお互いの情報を共有するのがいいかもしれん。とりあえずこの話は後回しにしておこうかの。だが一つ約束しておくが私はお前のことを全面的に信じることはできんからその点については承知して欲しいのだよ。それともう一つ大事なことを伝える。今この場では、互いに殺し合うことは控えてもらいたいのじゃよ。もしも殺し合ってしまえば、お前さんの力を知ってしまうことになるからのぅ。でもそんなことは、普通であれば起こらないと思うが念のために言わせてもらったのさ。もちろんこれは命令ではなくお願いだ。どうだろうか。この場での戦いを止めてはくれないだろうか?」

俺にはこの言葉に隠された意味にすぐに気づくことができたのだ。それは俺と戦わない代わりにこの国から手を引いてくれと言っているのだと。俺はそんなことでいいのかと思う反面、俺としては戦いを避けてくれるというのは嬉しい限りだったのだ。なぜなら俺は元の世界に戻るためにこの世界にいる者たちを全て殺すつもりでこの世界にいるからだった。そのことに罪悪感を覚えないわけではないのだが仕方のないことだと思っている。

そして俺は、王の言葉を受け入れることを決めたのである。それを聞いた瞬間、俺は安心してしまった。だからかつい口からその言葉が出てしまっていたのだ。でもその言葉で王はさらに興味を示されてしまったらしい。そのせいで結局戦うことになってしまったのだ。でも、その時の王の強さは明らかに尋常ではなかった。だから俺は全力を出すしかないと感じて戦った。そして俺の攻撃によって王が気絶するまで攻撃を加えたはずだったのに何故か王はすぐに復活して俺に立ち向かってきたのである。その時俺はもうダメかと思った。しかしその時である。王が何かに気がついたように俺に向かって言ったのだ。

「おい!貴様一体なんなんだその魔力の密度は!!どうしてそんなに強力な魔法が使えるのだ!!」と俺に尋ねてきたのである。

そして王は自分の強さを確かめると俺と本気で勝負したいと言い出したのである。

俺は当然のように拒否したが王の命令を無視すれば殺されるかもしれないという可能性を感じ取ってしまい渋々受け入れることになったのだ。そしてその王との戦闘は想像を絶するものとなっていた。

そして結果は俺の勝利で終わるのであった。

俺はこの世界に召喚されて以来初めて負けを経験してショックを受けていたのだ。しかもこの世界最強の男と呼ばれる人物相手に完膚なきまでに負けたのだ。そのことが俺のプライドを大きく傷つけていた。でも俺が王に勝つことができたのはスキルの力が大きいのだ。その力はまさしく神の力と言わざるを得ず俺は王の前では隠し続けていた力を使うことを決意していた。でも、王はそんなことを微塵も気にしていなかった。むしろ嬉しそうにしていたのだ。そして俺は王の口から俺に頼みごとがあると言われたのである。俺はこの時嫌な予感に襲われてしまい断った方が身のためになると思ってしまった。でも俺は、断れば殺されてしまうかもしれないと思い断ることができなかったのである。そして王が俺に頼みたかった内容はとんでもないものだった。それはこの国にある伝説の武具を俺が作り上げて欲しいという内容だった。

俺はその要求を聞いて驚いたが同時に納得することができた。なぜ俺のような存在が現れた時にその対応を王が考えていたのか理解できたからである。つまりは、この国の宝物殿には神より与えられたという宝剣があるはずなのでそれを俺に作成しろということなのだろうと。そしてこの国の国宝であるあの聖女の武器についても俺なら作れるだろうからそれを献上しろと言われてしまったのだ。

でも王はその前にこの国に起きている異変を調べて欲しいと俺に依頼してきたのである。その依頼には俺も興味があったので素直に引き受けることに決めた。だから俺はそのついでにその願いを叶えることにしたのである。その方法だが俺の持つスキルの創造という能力を使えば可能だったのでその方法は使わせてもらうことにする。

そして俺が王の言うとおりの行動をする前に王からは注意を受けた。そして俺はその忠告に従い王の城から姿を消したのである。だが、そのあとで王は俺の気配を探っていたらしく俺の居場所を突き止めていたのだ。そのことが俺には分かったので急いで俺はその場所へと向かったのである。そこで俺を待ち受けていたものそれは俺がこの国へやってきて一番最初に出会った少女の姿とその周りにいた大勢の人々の姿。俺はその光景を見て俺は驚きを隠すことができないでいたのだ。その少女とは、勇者のパートナーとして名高い聖女だったからだ。

そして聖女たちがこの国に現れた理由も俺と同じようなものだと思っていたがどうやら違っているみたいだった。俺は彼女達に事情を説明をするように言われたが正直困ってしまうばかりである。なぜなら俺は、自分以外の同郷人を探したいという自分の目的の達成に全ての行動指針を決めているから、この世界の人達を助けようという考えが全く無かったのだ。でもここで、彼女達の誘いを断ることはできないと感じた俺は仕方なくこの世界を救うために戦うことを決意する。

そんなわけで、彼女達と共に戦うことが決定したのであるが俺にはすでにやりたいことがあるのだ。それは王から頼まれたある仕事についてだ。その任務を達成するためには俺は王の依頼を達成しなければならない。でもこの世界で最高の鉱物オリハルコンを手に入れなければならないのだ。だから俺はこの王からの任務を果たすためにも俺の持っているこの国の情報を最大限に利用してやるつもりである。そのためにはまずはこの世界のことを知っている者が必要だ。それも信用できてこの世界の情報をたくさん持つ者がいれば尚更いいのである。そんな人間を見つけることができるかといえば俺は一人だけその可能性があると思われる人物が思い当たるのだ。

「えっと。じゃあそこの君でお願いするよ」

「は、はい。分かりました」

俺は王城のとある一室へと足を運んでいた。そしてその部屋に居たのは俺をここに呼び出してくれた少女だった。俺は彼女と会話を交わしながら彼女に質問することにした。

「じゃあいくつか質問するけれど君はどこから来たの?」

「私は異世界の日本という場所からこちらの世界にやってきました」

やはり彼女がそうなのかと思った。

「やっぱりそうなんだ。じゃあなんでその女の子を連れて来たの?」

「私がその子を助けた時には既にその状態でした。その子は私の力では治せない病気を持っていたのですが私の持っていたこの薬のおかげでその子は助かりました。ですから、私にできることは彼女を元の世界に返すことだと判断したからです。だから私はここに戻って来ることができたんです」

「なるほどねぇ~でも君の話を聞く限りではかなり難しいんじゃないかな?俺だって同じ方法で戻ってきたんだしさぁ~」

「はい。だからといって、諦めることはできないですから頑張ってはみますが、でも私には無理かもしれないです。ごめんなさい。あなたにもこの世界を救うことに協力して欲しいのは山々なんですが私にはそんな時間はないと思います。ごめんね、助けてあげられなくて」

俺は彼女の表情を見ていて心の底からの本音だと感じることができた。

「じゃあ、せめて一つお願い聞いてくれないかな。この世界のことを俺に教えてくれないか?」

「はい、いいですよ。まずこの世界の名はエルドラドと言います。この世界の人々は私たちの世界とは違い魔族が支配しているんです。だから普通の人間が暮らすことのできる国はここ以外には存在しないとさえ言われています。それともう一つは私たちは今魔王が封印されたダンジョンを攻略中です。それで今は四つ目の試練の最中です。私はここまでで五回くらい死んでしまいましたが仲間に助けられてようやくここまで辿り着きました。それで次の六つめでおそらく私は死ぬでしょう。私はそれが怖いです。ですから私が死ぬ前に私は必ずあなたの元へ訪れますから。ですから、待っていてください。きっと私があなたを救い出しにくるまで生きていてください。絶対に約束です。さようならまた会える日を楽しみにしておきますからね!」

そして彼女は俺の目の前から消え去った。俺の意識は覚醒していった。そしてそれと同時に激しい後悔に襲われることになったのであった。それは、自分が情けなさすぎると感じたからである。俺は結局何もできなかったと自分自身のことを卑下してしまう。でも俺は自分にできることをやったのだと必死になって自分に言い聞かせてどうにか立ち直ったのであった。ただその代償はあまりにも大きく、俺の手の中にはあるものが握られているのだがこれは何としても作り出さなければならないと思うのである。だから俺がやるべき事は決まったようなものであるのだが俺が本当に作ろうとしているのは、この世界最強と呼ばれる武器なのだ。俺はそれをこれから創るために必要な道具を探すことにした。この世界にその類のアイテムが存在しているかどうかは分からないのだが。だからとりあえずその辺りを散策することにしよう。そして、俺は早速動き出そうと思っていたのだが、どうもこの建物内はとても寒くて俺の体が持つかわからない。なので、俺としては早急にどこかの洞窟の中で作業をしたいのだ。そしてその場所はすぐに思いついた。

「そういえば、確かここからかなり近い場所に地下迷宮があったはずだよな。よしっ、そこに行ってみるか」

そうして俺は、この建物の外に出て行ったのである。

「はあっ!せい!!」

「ぐわぁああー!!なんだお前!!俺様を本気で殺す気か!!こんな攻撃を食らえば俺様の自慢のお肌が台無しになるだろうが!!」

俺はそんなことを言ってきた男に対して、手加減しながら戦っているため問題ないだろうと思ってそのまま攻撃を繰り出していく。でも男はそんなことを口走ったくせにしっかりと回避をしているようで俺の攻撃を避け続ける。まあ避けきれないと思えば防げばいいだけだと思うんだけどもね。でも男は自分のお腹の肉に衝撃が走ってもなおその言葉を発することは止めない。そんな男の言動には正直イラッとさせられるもののそんな男も俺の攻撃を全て受けきれていないみたいだ。

俺は自分の持っている武器を使って相手を倒していた。その武器は俺が自分で製作したものである。この世界に存在しない鉱石を加工した素材を使ったものだ。それには名前があるんだけれども今は伏せておくことにするよ。そして、俺はその刀に【聖剣】という名前をつけているのだ。なぜその名前にしたというとそれは、この世界で最強の存在であると言われている剣の名前が、その【エクスカリバー】だったからであるのだ。

俺がどうしてこの武器を作ろうと考えたのか。そもそも俺が最初に王都に来た目的は自分の能力を活かすための手段を考えるために王城に出入りしていた。その時にたまたま見た王の執務室にあったのがその伝説の宝具である【エクスカリバー】があったからだ。それを見た瞬間に俺の心は揺れ動いてしまった。それはまるで憧れの先輩を見つけた時のような気持ちになったのだった。

俺にはまだやりたいことがあったのだ。この世界の人間に俺の持つ技術の使い方を教えてあげたかったのだ。だから俺は、俺が今まで見てきたアニメの主人公のような人物たちのような人間を作りたいと思ったのである。俺はそのために武器を作ることを第一目標としたのだからこの武器には絶対名前を付けなければならないと思ってつけたのが【聖剣 ホーリーソード改 聖剣エクスカリバーレプリカモデル改】だ。

俺がこの剣を作ることを決めたきっかけは単純である。その剣の名前は【聖騎士伝説】に出てくる主人公の持つ聖槍のモデルになった剣と同じ名前なのだ。その聖槍のモデルは俺がゲーム中に使用していた聖斧をモデルに作り上げたものであるのだ。だからこの剣の名前を決める時にはとても迷ったが、最終的に俺はこの剣には俺が一番好きな作品のキャラの技の名称を当てはめようと思っていたのだ。俺が初めてこの世界で見た作品で、一番俺のお気に入りの作品のキャラクターが使う必殺技の名を冠したのである。それは、この世界に存在する全ての属性魔法を組み合わせた大魔法の名であり、この作品の主人公たちが使える究極の大魔法の名前でもある。この世界の全ての存在を殺すことが可能とされている魔法をその作品内では【無の波動 ゼロブレイク】と呼んでいるのだ。だから俺が今からこの世界でやろうとしていることはこの聖剣に名前を付けることとほとんど変わらないと思っているのだ。

そして俺はこの世界で初めての友達とでも言うべきこのルチアと共にダンジョンの最下層へと向かっていた。ちなみにこの世界にあるこの国の地下にはダンジョンと呼ばれるものが存在しているのである。そしてダンジョンは、基本的に深いところへと進んでいくほど階層数が増えていき魔物が強くなっていく傾向にあり、この王城が作られている場所より下の部分は、まだ誰も足を踏み入れたことのない未踏破領域となっておりその存在を認知されているダンジョンの数も少なくなっているというわけである。そのためこの王城は地下十階ほどしか深くない場所で作られておりそこまで深いというわけではないのだ。

そして俺はそんな地下一階の中ボスとして存在していたミノタウロスを倒した後にルッチが突然言い出した言葉を聞いたのである。その内容は俺が思っていたよりも深刻だった。

「ねえ、コウガは、この世界のことを知っているんでしょ?だったらなんで私を助けてくれなかったの?なんで私だけが死ななければならなかったの?あなたは知っていたはずなのに私を見殺しにしたの?」

俺にそんなこと言われても困ってしまうのだ。俺だってあの時は生きるのに必死だったから他の人間を救おうという考えは全く浮かばなかったということもあるし俺にだって余裕が無かった。それに俺が助けたかった人間は、この目の前にいる少女ではないのだ。もっと俺が大切に想っている人であってルチアとは全然違う人間だったのだ。その少女が生きていたという可能性を潰してしまったことを後悔しない日は無いくらいである。しかしだからといって目の前の少女を慰めてあげるような言葉を俺は掛けることができなかった。俺は彼女に謝ることはできたがそれ以上のことはできなかった。だってその行為は彼女をさらに苦しめることになるから。俺がした行為のせいで彼女の心に傷をつけてしまいそうだったから、俺にできる限りのことをしようとは思っていた。だけどそれ以上俺には彼女にかけることのできる言葉はなかったのである。俺にできるのは彼女のそばにいることだけであるとわかっている。ただ俺が何もできなかったという事実を変えることは誰にもできない。だからこそ俺は自分のできることを最大限にやらなければいけないと思ったのであった。

そして今現在俺達はダンジョン内を移動中である。ただこの王城の地下に広がっているダンションはかなり広い。なので俺はダンジョンのマップを作成しながら進んでいた。俺達の前に立ちふさがってくる敵を蹴散らしながら進んでいるのであるがそれでも敵が多いから少し厄介ではあるのだ。

俺が前世でこの世界にやって来た時にはレベルという概念がなくって俺自身の能力値で戦う必要があった。なので俺はその時の経験から今の俺ならこの世界の冒険者たちと肩を並べられると自覚しているのである。そしてこの世界にも経験値システムが存在してそのシステムは、倒した魔物によって得ることができるようになっているらしいので俺にとっては都合の良い仕様だと感じている。そしてこのダンジョンを進み始めて数時間が経過しているが俺が倒してきた魔物の種類と数もかなり多くなっている。そのおかげかレベルが上昇していて今は21になっているのである。

ただ、ステータスの方は、未だにあまり変化がない。おそらくレベルアップをすることで俺に備わるはずの力がまだ備わっていないのであろうと考えられる。俺は自分の持っている武器の力を存分に引き出すことができればおそらく俺のステータスは化け物級まで上昇するだろうと予想はできているのである。まあ俺が今持っている武器は普通の人が扱えるようなものじゃあ無いのだが。その辺のことを考えて俺はこの世界で俺が目指そうとしていたことを達成できるように全力を尽くしていくしかない。

そしてこのダンジョンに出現する魔物の強さは普通のものであればこの世界の人間でも対処することができるくらいである。ただこの世界には普通に存在しているはずのないものも存在している。このダンジョンにはその魔物が出現するエリアも存在していており、そこにはS級のランクに相当する強力なモンスターが出現してくると言われている。俺達が向かっている最下層付近にはそういったレベルの魔物が現れることになっているようだ。その出現率は1万分の一程度であるため遭遇することはなかなか無いのだが稀に遭遇してしまうことがあるのだ。そしてそういう時の為に冒険者ギルドの人たちが討伐隊を組んでその脅威に立ち向かうということが行われるようである。

俺がそんな風に思考をしながら歩いているといつの間にかに最下層付近まで到達することができていた。そこで俺達の前には一人の老人が立ち塞がったのである。見た目からは只の爺さんにしか見えないがその存在感は明らかにおかしいと思わざるを得なかった。俺はすぐにその老人に対して鑑定を使ってみたのだが、俺はその瞬間に自分が認識を改めないといけないことを痛感させられた。

—― 神 名 不詳(?)

族 人族 職 業 不明 体力 計測不可 筋力 解析不可能 敏捷 計測不能 魔力 無限 魔防 計測不能 知力 解析不可能 スキル詳細: 特殊スキル一覧に表示された項目はそれだけしかなかった。だがそんなものは関係なく俺はこの老人に対して畏怖のようなものを覚えてしまう。それほどまでに俺に威圧をかけてきているのだ。

そんな俺はこの世界で生まれて初めて自分の力が通用しない相手に出会ったのだと感じたのである。だから俺は即座にその場から退避することを選択していた。そして俺は一目散に逃げた。俺は背後に何かを感じてすぐさま回避行動を取っていた。その直後のことだった。一瞬遅れて轟音が鳴り響いた後その場所を見て俺は驚いた。地面が広範囲にわたって吹き飛んでしまい、その範囲にいたすべての生き物がその衝撃波だけで殺されてしまっていたからだ。その破壊力は今まで出会ったどんな生物と比べても圧倒的であり想像を絶するものであったのだ。俺はそんな光景を目に収めた後、この場で俺が生き残っている理由がわからなかったのだ。なぜならこの老人は間違いなく俺に攻撃をしたはずなのだから俺もこの爆風に巻き込まれて死んでいてもおかしくは無かったはずだからだ。

俺は自分の命が助かったのがどうしてなのか理解できないままとりあえず地上を目指して走ることに集中することにしたのだった。そしてなんとかこの地下迷宮から抜け出すことに成功した。それから王都に向かって歩き出していたところで俺達は、俺が先程逃げ帰ってきた場所の方向から、凄まじい爆発音を何度も聞き続けた。その後しばらくして王都に戻ってきてから宿屋へと向かい宿泊手続きをした時にルッチと一緒に泊まることになったのだ。

俺達は現在王城内の会議室にて会議をしていた。俺としてはさっさと武器を作ってあげたいんだけどなーと思っていたところ、どうやらこの王城には鍛冶ができる人材がいるらしくてその人物に来てもらうように依頼を出してくれているのである。だからしばらく時間がかかるみたいなんだよなぁと思っているところでその人物が到着したとの連絡を受けたのだ。そして俺達は会議室から出て指定された部屋に向かったのである。そこには白衣を着てメガネをかけた黒髪の男性が待っていた。その男性を視界に入れたルッチはいきなり泣きついてしまったのだ。

「ああ、あなた様が来てくだされば私は、もう何も思い残すことがございません。お願いです!私のことを好きにしてください!!」

そう言い放ち俺の背中に隠れるようにして体をくねらせる彼女を見た俺は思わずドン引きしそうになっていた。だってこんな美少女が男に対して身体を押し付けるような動作をしていてそれを男は受け入れようとしていたのだ。俺には信じられない光景が今目の前で展開されていたのである。

俺の後ろからこちらを見てきた男が言うにはルチヤはこの国の中でも優秀な研究者であるらしくこの王城に滞在させてもらうことを条件に研究費の援助を受けていたのだという。その話を聞いたルッチはルチやが本当に優秀であることと俺のためにそこまでやってくれたことに感謝を告げてから俺を彼の前まで引っ張っていった。

(この方こそ、我が国の最高技術を持って作り出した究極の大聖剣エクスキャリバーを作り上げた、伝説の大天才錬金術師、【エルク】殿である!!私のような女を救っていただいた恩人の剣を一振り作るために彼は王城にやってきたのだぞ!!!この方がいなかったらコウガは死んでいたのだからな?この方に報いなければならないのだから、しっかりとした武器を作るのだ)

そう言ったあと俺を指差した彼女はそのまま部屋を飛び出して何処かへ消え去って行ったのである。俺は彼女のその様子からなんとなく察することができた。おそらくまた新しい男のところに行ってしまったのではないかと俺は考えることにした。

そんなことよりも今は目の前の人物と向き合うことに専念しなければならないだろうと思って気を引き締めることにするのであった。俺に視線を向けている目の前の男性の顔をよく見てみれば確かに整っていてイケメンと言ってもいい顔をしていたのである。そして俺はルクスからもらった服の中から適当に見繕って身に着けると俺は自己紹介を行ったのだ。その際にルックスが変わっていたこともあってその男性は戸惑っているようだったけどそこは気にせず話を進めたのである。

そして彼が口を開いて出てきた第一声はこうだった。

(お、お前は誰なんだ!?俺のことを知らないのか?それにあのバカ女は何処に行ったんだ?おいこっちに帰ってこい。仕事の時間だ。それにそいつを早く渡せ、そのクソ武器のせいで何年費やしたか忘れたんじゃないよな?)

そんなことを言ってきた彼に対し俺は困惑を隠せないのであった。だってその顔は俺を心底軽蔑しているような目をしていてさらに言えば殺意に近いものを感じるほどのものだったのだから。しかしここで取り乱すことだけはしてはならないと自分にいい聞かせて俺は平常心を装う。するとそんな時突然部屋の外から大きな声で、叫び出すような女性の声が聞こえてきて俺はびっくりしたのである。俺は慌てて部屋の外に出てみると、そこに広がっていたのはまさに阿鼻叫喚というべき光景だった。

そこにはたくさんの兵士たちと、おそらく騎士であろうと思われる男たちの死体が転がっているという、地獄絵図のようになっていたのだ。その悲惨な現状に唖然としてしまった俺は、俺を睨み付けてくる目の前の青年に恐怖を抱きつつも話しかけようとした時であった。急に現れたこの国で一番の有名人であり英雄と呼ばれることになった存在に、その人物は話し掛けたのである。それは、まるで友達同士であるかのようなフランクな雰囲気だったのだ。そして俺を指差しながら、彼に語り掛けていたのである。

「あんたがここに来ているってことはあれが完成してしかも成功したみたいだねぇ。それで?この武器は何なのか聞いてみても良いかい?」

「はい。それが今回俺が打ったこの武器なんですがね、名前が無いっていうんで付けてやろうと思ったんですよ。そうした時にコイツの名前の候補がこれしかなくて。なのでこれをこの名前にしようかなと思うのですが。どうでしょうかね」

そうして見せびらかしてきた武器を見た俺は驚愕することになった。

—― 神 名 不詳 種 族 神造人 職 業 人族(?)

体力 無限 筋力 解析不能 敏捷 解析不能 魔力 解析不能 魔防 解析不能 知力 解析不能 スキル 固有 全言語理解 創造 全アイテム作成 スキル一覧表示 称号詳細表示世界初!最強の神造人――神が創り出した最高傑作

神の力の一端に触れられる 製作者に加護 特殊スキル 特殊武具 スキル詳細:《所有者権限:使用者限定》特殊スキル発動条件:不明 装備者のみスキル使用が可能 装備者以外が使用した場合 対象の命を代償に使用可能になる ただしその代償を支払うことによって使用できる可能性あり

――これは世界最強の称号を得たもののみが手にできるとされている武器の一つである。使用者に圧倒的な力と万能性を約束するものであり、この武器を手に入れたものが魔王となる運命を持つとも言われている。この世界の理から外れた存在である神にも対抗することができる武器であるといわれているため所持しているものは世界に数点存在するのみである そんな説明が浮かんできた俺は、まさかこれが神に作られたものだと言われると、流石についていけずに困惑するしかない。俺が困惑するのを見て何か思うところがあったのかもしれない。俺の前に立っている人物たちはお互いに何かを話し合っているようである。それから数分後。俺はルチヤの作ったエクスキャリバーを受け取るためにここに連れてきてもらったのを思い出したのである。俺はそれを受け取りつつ、先程の人物に鑑定スキルを使わせてもらうことにしてみたのだ。だが、なぜか表示されなかった。そこでもう一度鑑定スキルを使ったのだが結果は変わらず表示されないままである。そこでこのエクスキャリバーを試しに振ってもらえないかという話になってそれを俺が受け取ったのだ。そして軽く素振りをしてみたのだがその時の俺はその剣の異常性を感じ取ることができていなかった。そして俺が剣を鞘から抜き放ち上段に構えて振り下ろそうとした時だった。

俺は、突如として発生した激しい衝撃に耐えられず吹き飛ばされてしまったのである。吹き飛んだ俺の体はすぐに起き上がることはできずに地面に倒れたまま動けないでいたのだ。それからようやく体が動き出せるようになったのはそれから一分ほど経過した後の事である。それから俺が立ち上がったと同時にルッチがこちらに向かって駆け出していた。

そんな彼女の表情を見た俺には彼女が俺を心配そうな眼差しで見ていることに気づいたのである。彼女はすぐに俺のところまでやってくると抱き付いてきたのである。俺はそんな彼女にありがとうと言ってから頭を撫でてあげた。

「すまないなルッチ、少しだけ油断したようだ。それにしても、凄い剣だよこれ。とんでもない切れ味に加えて攻撃力も抜群だ。それにしてもこれどうやって使うんだろうかな?なんか特殊な方法とかがあるんだったりして?とりあえずちょっと使ってみたいな。そうだ!この城の中にあった闘技場を借りてみるのはどうだろう?」

俺のその言葉に驚いた様子の彼らは、これからその武器の性能を測ろうとしているらしいので是非協力して欲しいとのこと。俺としてもせっかく武器をもらっているのだ。この機会を利用して色々と確かめておくことにしたのである。そして俺はその施設を使う許可を取ることに成功した。ちなみに俺と一緒に行動してくれるのはなんとあのルッチさんであった。なんでも彼女はこの王城内にある騎士団の副長という立場にいるらしい。つまりは結構偉いのだ。俺と彼女以外にこの国では有名なあの人物がついてくることになっていたのでその人は今この場にはいないがそれは置いておくことにする。それからルクス達からもらった装備を整えた俺は彼女と二人っきりで地下へと潜って行ったのである。その途中でルッチが、ルクスから預かった素材をくれたおかげで俺には、新しくスキルと称号が追加されたわけだ。俺の頭の中にはこんな感じの文字が表示されている。

—―コウガ 種族 亜神龍人族 年齢 18歳 体力 無限大 筋力 計測不可能 敏捷 測定不可 魔力 無限 魔防 ∞ 知力 999999999 保有魔法 闇属性系統 火 水 土 風 氷結 光 聖属系派生系全般←new 無属性系統 時空間系列←new 精神系攻撃系→NEW《状態付与》NEW《能力付与》NEW《全能力向上》《絶対貫通》NEW《状態異常付加》NEW 身体強化関連→UP↑ その他 →NEW《ステータス開示》NEW《スキル一覧表示》NEW《スキル統合》《熟練度システム+》【獲得経験値10倍】←new *New【アイテムボックス内時間遅延化】←New *【完全耐性】【物理耐性】【斬撃無効】【打撃無効】【刺突無効】【火炎吸収】【凍結吸収】《超速再生回復/HP&MP/SP回復/欠損部位修復可能》【全毒分解】【呪殺浄化】

《状態異常解除

極 呪い解除》【全言語自動翻訳】《経験値取得2倍化+α:LvMAX】*【限界突破LV3:LvMAX】

固有ユニークスキル【成長速度100倍化(任意制御)

経験値1000倍化(任意の者に限る)

ステータス改竄 隠蔽偽装 並列思考 並列意思(1人)

多重結界 魂操作 不老不死 万物創造 生命の根源の種 錬金術師の秘法 鍛冶神の至高の一品☆☆】← 【創造】★★★【錬金】星☆☆☆【神装兵器 武器創造(神製)】

称号詳細説明 〈世界初!最強〉神が創り出した最高の人造人間であり神造人である。その証である武器を所持している存在でもある。その力は神にすら匹敵すると言われている —―俺の称号はともかく。彼女のそれは完全に人外じみていたのだ。俺はそんなことを思い出しつつ彼女に話しかけてみる。

「それでさ、俺としては、このエクスキャリバーを使ってみたかったりするんだよ。だけど、その前に一度ルッチと手合わせがしたいと思っているんだけどダメかな?」

俺の言葉を聞いて嬉しそうにしている彼女。それから俺が、ルッチにお願いして了承を貰うことが出来た。そんな時、先程いた場所からここまで来れるように通路のようなものを繋げてくれた。

そんな時俺の横の地面からいきなり大きな音を立てて巨大な腕が生えてきたのだ。そしてそこから一人の男が姿を現す。全身筋肉隆々でまるでゴリラのような風貌をしている。そして現れたその男を見てルッチの目が輝く。その男を俺が鑑定したところこう出た。

――名

前:ウドガルド

性 別:♂

年 齢:355歳以上

種 族:超人

職 業:格闘家 体力 計測不能 筋力 解析不能 敏捷 計測不能魔防

計測不能 知力 500未満 運 :測定不能 武技系統 拳撃 脚撃 体術 気功弾 発氣砲(衝撃波 衝撃 雷鳴波 烈衝波動 轟爆震破 天駆蹴等含む)

固有武術 我流格闘 スキル詳細 《所有スキル一覧表示》 《所有者のみ閲覧可能》 —―この男の能力は凄まじく。今まで出会った中で最強だと断言できるようなそんな雰囲気を感じさせるのである。

それからその男の一撃を俺に叩き込んだことで彼は俺を認めてくれるようになった。それから彼と手を合わせたのだが、彼から教えてもらったことをすぐに理解することができたのだ。俺はそれから何度か彼の動きを見ながら自分の体に馴染ませていったのである。それから俺達はお互いに本気を出した戦いをすることに決めたのだった。

それから俺はまずは武器の性能を確認させてもらおうと思って剣を抜いて構える。それからルッチに声をかけた。

――

ルッチ頼む!本気でこい! そんな言葉と共にルッチに向かって剣を振り抜いたのである。しかしそんな時、ルッチが目の前に現れていて剣と槍がぶつかり合っていた。そんな状況でもなお俺は目の前の相手に集中を欠かさずに戦っていた。それから数分後なんとか剣が相手を押し切ることに成功したのだった。そんなルッチが地面に膝をつく姿を見た。そして次の瞬間には彼女の背後にいた。

――俺は彼女の後ろをとった後。そのまま彼女の首を斬り落としたのである。俺は彼女の体が地面に倒れる直前にそれを空中でキャッチする。その後、エクスキャリバーに血を一滴たらしたのであった。それからしばらく待つと、彼女は起き上がってきたのだった。俺の腕の中で目を覚ました彼女の姿を見て驚いたのだが、どうやら無事のようだった。ただその首元からは、かなりの出血をしていたため止血だけしておくことにしたのである。そして俺は彼女に謝ったのだが。何故か彼女が急に怒りだしてしまったのである。

俺のせいなのかと困惑したのだがよく考えると俺は何もしていないことに気づいたのである。

「あれっ!?」

俺が突然素っ頓狂な声を上げるものだから驚いた様子を見せる二人だが、俺はそれに気づくことなく慌ててしまったのだ。

「ルッチ!ルッチ!ごめんよ。俺は一体何をしていたんだ?なんか記憶が抜け落ちてるような気がしててさ、本当にごめん!」

俺の謝罪の言葉を聞いた彼女は笑顔を見せてくれた。俺はそれにほっとした。

そんな感じで俺とルッチの会話は続いていたがその間ずっと彼女は俺のことを見ていた。そしてしばらくして彼女の方も落ち着いてくれたようでいつものように話せるようになっていった。

そして彼女の言葉から、どうやら彼女が怒ってしまった原因は俺の記憶がない時にやろうとしていたことにあるようだということもわかったのである。俺は、なんでそんなことになってたんだろうと考えながら。彼女にそのことについて詳しく聞くことにした。そしてその理由に驚愕した。

ルッチは俺と初めて戦った時に負けたのを相当悔しがっていみたいだ。なので彼女は俺と戦う前に少しでも強くなっておきたいと思いあの場に現れたのだと言う。つまりはそういうことだった。俺はそれを聞くとなんだかいつまで経っても子供のままの彼女に笑ってしまう。そして俺は彼女を落ち着かせるために抱き寄せたのである。するとルッチの頭の上には、?を浮かべたまま固まってしまっていた。まぁそれも無理もない。こんな風に誰かに抱きしめられたことなどなかったのであろうことは簡単に予想がついた。そんな時彼女は急に大人しくなり、顔を赤くしながら恥ずかしがっているのがわかってしまった。だからといって離したりしないのが今の彼女にとって必要なことなのだと思うからだ。

それから俺達の間に流れる時間が少しゆっくりになっていることに気づく。これは恐らく、エクスキャリバーのおかげなのだろうと勝手に推測している俺がいたのであった。そんなこんなでルッチに訓練をしてあげていると、そこにもう一人の人物が現れたのである。見た目的にはかなり幼い印象を受ける少女がそこにはいた。そしてその小さな女の子は、こちらに向かって走ってきたと思ったらいとも簡単にジャンプしてきたのだ。そのことに驚いていたら案の定俺の頭の上で着地したのである。しかもなぜかお姫様抱っこの形で。そして頭から伝わるこの柔らかさが実に気持ちいいのであるが今はそこじゃないだろ俺と突っ込むしかないわけで。

そしてこの女の子の鑑定を行うと。

――名前:ミル

性 別:♂

年 齢:5歳以下

種 族:妖精王

職 業:戦士(レベル220)

力:250000/252000(+10000×15+0)

(2)

力:264000(+66000)

久:10(+405000+100)

魔力:39000(+27000)

防:1(+50)

力:50(+460500)

速さ:153000

(+7300)

:28000 【スキル一覧】

【固有スキル】

【全武器適正】

【武器強化LV99】【武具創造LV9】

【固有武術】【闘技】【超再生回復LV9】【全耐性】【超全耐性】【無詠唱】【身体強化LV90】【気配感知LV80】【危険予知LV70】《ステータス隠蔽偽装》《隠蔽鑑定LV20》《偽装鑑定LV30》 《超隠蔽》《神鑑定》《アイテムボックス内収納物リスト化》《アイテム鑑定詳細表示》《偽装詳細表示》《状態偽装》《虚偽報告》《完全言語翻訳》《絶対探知領域》 【武技系統】

〈気弾〉 —―そんな感じのスキルを持っていた。というか俺がこの世界で会っていない人の中でもかなり強い部類に入っていると思われる。しかし問題はそこではないだろうと俺が思う理由はやはり称号に《最強の人間兵器》があったから。この世界では最強と言われる種族に勝ってしまったのである。そのことで俺は改めてこの世界について理解できないということを悟ったのだった。それから俺の腕の中から脱出したミルが話しかけてきた。

「あなたすごいね。さっきから私の攻撃受け流してるもん。私の攻撃は当たらなかったでしょ?」

「ああ確かに当たらないようにしていたよ。君の戦い方がとても綺麗だったから見惚れてしまったというのが理由だけど、そんなことは関係ないよね。君はどうしてそんなに強いのか聞いてもいいかな?」

「えへへー。やっぱりバレてたかぁ。そうだよ!私実はめちゃくちゃ強いんだよ!あっ!そうそう、さっきはごめんなさい。あなたのことを疑うつもりはなかったんですけど。ついムキになってしまって。私は悪い子なんですよぉ。そんな私を許してくれますか?」

俺はそんな言葉を聞いていた。そして、俺は彼女の瞳を真っ直ぐに見据えていた。

――それは本心なのか?それならば何故謝る必要がある?俺の目をしっかりと見返せよ!お前には、まだ嘘を吐く必要があるとでも言うのか? 俺の目を見返しながらもその顔色を窺っているようなそんな様子が伝わってくる。それからしばらくして、彼女の口がゆっくりと開いた。

――許して欲しいなんてそんなこと言えるはずがなかったのです。ただ自分の中のどこかで、私が本当の意味で強くないと思っている自分がいて。その弱い自分の存在を否定してしまいたかっただけ。

俺の頭に響くのはそんな彼女の声だった。どうやら、彼女の中にいるもう一人と対話が出来ているようだ。そんな彼女は俺の返答次第でこれからどうなるかわかっているみたいだった。だからこそ必死に考えているようだったがどうやら思いつかないようで困り果てている様子である。俺はそれからすぐに、その問いかけに対してこう答えることにする。

——許すも何も。俺は別に君のしたことが悪いことだとは思ってはいない。だから気に病む必要はない。それに俺にそんなことする資格はない。俺のしたかったことが結局のところ、自分のためだったから。自分のためにしか生きていない俺は誰よりも最低だ。そして、俺の目の前のその子だって俺のために動いてくれたんだろう?ならそれでいいじゃないか。それに俺はそんな自分を誇らしく思っている。

俺はそんなことを言っていたのである。

――それにそんなこと俺も似たようなものだよ。俺は誰かを救うだの何だのと偉そうなことを言いながら。本当は誰かが助けを求めていてくれるのを期待していてそれを待っていた。俺自身が動かなければ誰かが来てくれると信じていてそれをずっと待ち続けていたんだ。俺は俺の大切な人の笑顔を守るために戦おうとしていただけだ。それこそがきっと誰かを救い、救える道だと信じていたから、それを叶えるために俺は剣を振るい続けたんだと思う。そしてその答えを見つけることが出来たのかもしれないなと今更ながら思う。

俺は彼女に自分のことを伝えた。しかし彼女の中で何かしら引っかかるところがあるようだった。どうやら俺は俺で自分と向き合わなければならないようだった。彼女の中に存在するもうひとりの彼女のためにも。

俺は彼女の目を見る。そして俺は語り始めた。

——俺は昔は勇者に憧れるどこにでもある子供の一人だった。そんなある時。俺は友達に虐められている一人の男の子に出会ったんだ。俺はそれが許せなかった。そんなくだらないことで苦しんでいるのが許せなくて、助けようとして、そいつらに挑んだんだ。もちろん返り討ちにされてしまって俺は怪我を負ってしまうんだ。その時、そんな俺を庇ってくれて俺の代わりに痛がっている姿を見てしまったんだ。その瞬間、俺は思った。俺が強くなればいいんだと。それから俺は鍛錬を始めるようになったんだ。そんな時俺は、ある少女と出会う。そしてその少女が魔王だったと気づいた時。俺の初恋の人が殺されるところを目撃してしまうことになる。俺はそれに怒りを覚えていたんだけど。そのあと、少女は俺のことを抱きしめてきて泣き出してしまった。そんな姿を目の当たりにして、彼女が俺と同じような想いを抱いていることにすぐ気づく。そして俺は彼女と約束をしたんだ『絶対に負けないと』

——そして俺が勇者になる決意を決めた日のことをよく覚えている。あの時は確か。初めてルッチと会った時の翌日だ。あの娘は俺にとって初めて出来た仲間なんだ。俺にとって彼女は特別だと思ったから。そしてあの時から、あの日から。ずっと俺とルッチの関係は変わっていないと思う。ずっとルッチは優しい女の子のままだと思う。そして今も変わらないでいて欲しいと思うから。俺はルッチと一緒にこの旅をする。あの時ルッチに言った言葉の意味を証明していきたいから、彼女を守り続けて行くことだけが今の俺にとって唯一できる行動だから。これが俺とあいつとの誓いだから。俺は俺の信じたものを貫くことだけを誓うことにして。それだけで十分なはずだ。

俺がそうやって語る。彼女は涙を流し始める。俺はその姿を見ながらも、最後まで話を聞いてもらうことに集中したのであった。

彼女は泣いていた。涙を流すことなく泣けなくなっていたはずの彼女が。静かに泣いてくれていたのだ。俺は彼女をそのまましばらく抱きしめたままだった。するとしばらくしてから俺から離れていったのだ。そして少し照れ臭そうにしながらも。

「ありがと」

と小さくつぶやくのが聞こえた気がしたが。気のせいだと流すことにしたのである。そして俺の胸の中に残っていた感情の全てをぶつけるように、俺は全力で攻撃を仕掛けていく。

――俺が本当に望んでいたものはそんな大層なものじゃないのかも知れないな。それでも、それでも俺がこの道を歩き続ける限り、ルッチが俺と共に居続けてくれたのなら。いつか必ず辿り着けると俺は確信していた。

それからしばらくの間打ち合いを続けていたが俺はとうとう力尽きてしまっていた。

――俺はまだ、まだこんなところで倒れてはいけないというのに。

意識が消えそうになる寸前にミルからこんな提案がなされた。

「私の訓練受けてくれませんか?強くなりたいのでしたら私から得られる経験は貴方を強くしてくれるはずです。どうか私を弟子にしてください!」

そんな風に懇願されてしまったのだが俺は当然の如く断ろうとしたのである。しかしその時に頭の中にある人物の姿を思い浮かぶこととなる。俺はその姿を見ているとある一つのことを閃き、それをすぐに実行することに決める。そしてその結果、その通りになったわけだが、俺自身かなり驚いていたのだった。

(まさか、本当に上手くいくとは。正直、俺の思っていた通りの展開になるとは夢にも思っていなかったぞ)

「なぁ君。君の名前はミルって言うんだよな?」

「はい、私の名は確かにミルと言いますよ。それといきなり何を言っているんですか?今は戦闘中だったと思いますが、まぁそんなことはこの際置いておきましょう。それよりあなたの名前を教えてください!私はちゃんと名前を言わせていただきましたよ?だからあなたの名前を私も聞かせてください!あなたのことも知りたいんです!お願いします!!」

俺は彼女の瞳を見てこう言ってやるのが筋だと感じた。

――俺に名乗れるような立派な名前なんて無い。だけどもしそんなことを言う権利があれば俺の名は【アルス】だ。俺の名前にどんな意味が込められているのか、その名前は俺にしか分からない。そして俺がその名を名乗ることを許すのはただ一人だけだろうと思うから。それから俺と彼女の特訓が始まった。それはとても厳しく過酷なものであったけれど、俺にはとても良いものだったように思う。それから俺は、彼女の修行に毎日付き合いながら過ごしていたのだった。

そしてその数日後。俺の目の前でミルは、この世界には存在しないとされるスキルを習得し、更に新たな固有武術まで身に付けてしまうこととなった。

俺は、彼女のそんな成長ぶりを見てとても嬉しく思うと同時に。やはり彼女は天才なのだということを再確認していたのだった。

「うぅ~!!また失敗だよ!なんで上手くいかないの!?」

そんな叫び声を上げる彼女。

「いや、でも君の場合、魔法よりもこっちのほうが向いているとは思うよ?」

俺はそう彼女に言うのである。そんな俺達の様子を眺めていた他の仲間たちもそれぞれの感想を漏らしていくのである。そしてそんな中、リリアがふと思い出したかのようにこんな話を持ち出してきたのである。

――それは俺とルッチの関係が変化した出来事。俺とミルとの関係に変化が訪れたのもその頃だと言えるかもしれない。それは、ある男が俺の前に現れてからだった。俺はそんな彼のことを受け入れることが出来ず、彼を突き放そうと試みたのである。

俺と彼が出会ったのは偶然ではない。俺の前に突然姿を現し、俺のことを見つめながら笑みを浮かべながら近づいてきた男。彼は、魔王の配下の一人であると名乗ったのだった。

そして俺がどうしてここに居るのか聞いてみた。そしたら魔王の命令でここに来たとのこと。俺を捕らえ、俺の持つ能力を手に入れようとしてきたらしい。そんなことをする理由を俺は理解することができなかった。

それからというもの。俺と彼との戦いは、次第に激しくなっていったのだった。

――最初は互角だった。お互いの力は拮抗しているように見えたのだ。俺はその時、このまま戦いを続けていればどちらに勝敗が訪れるかわからないと思ったのだ。しかし、俺の考えは甘いものでしかないことを思い知ることとなる。なぜならば。彼との戦闘によって俺は徐々に追い詰められていくことになってしまったからである。俺が攻撃に転じようとしたその時。

その男は突如として姿を消したのである。そして次の瞬間には、背後から声をかけられてしまい。俺は振り向くこと無くその場から離れることに成功する。その後、俺は逃げるために必死に戦ったのだが結果は散々なものであり、結局俺は捕まることになったのである。それから俺が目を覚まして最初に見たのは彼の姿であり。そして彼にこれからのことについて告げられたのである。その内容は驚くべきものであったが同時に納得できてしまうものでもあったのである。俺に伝えられたのは魔王の復活の時期が迫ってきているという内容。それを聞かされて俺は、俺は戦うことを決意した。魔王が復活した時には、魔王と勇者の間に産まれる子供が世界を滅ぼすことになるからだという。魔王を復活させるためには大量の生贄が必要なのだそうだ。俺はそんな話を聞いているうちに自分のしていることが正しいのかわからなくなってしまったのだ。しかし俺の心はもう決まっている。

そしてその決意を胸に秘めた俺は、それからしばらくの間、勇者としての鍛錬を続けるようになるのであった。勇者になるために必要なことを徹底的に叩き込まれて行った。

そして魔王が復活する時期を知らされてから二年ほどが経過し、遂にその時がやって来たことを俺達は知ることになる。その時に感じ取った気配は明らかに強大なものであったのである。

その日から数日は鍛錬に明け暮れたのだった。そして、その翌日。俺たちは旅を始めることに決まったのである。

—————— ミルちゃんがどんどん可愛くなっていくw 俺には好きな人がいる。その子と出会ってからの時間はそんなに長くないんだけどね。でもその人と過ごす時間が何より楽しくて愛おしいんだ。

その女の子のことが好きになってから俺の世界が変わったと思うんだ。だって、俺は今までの人生に絶望しながら過ごして来てたんだからさ。そしてそんな時に出会った一人の女の子のことを俺は、今でも心の底から想っている。だからそんな想いを抱いている相手を守ることが出来るのであれば、俺はきっとなんでもしてしまうだろう。どんな敵が現れたとしても絶対に守り切ってみせる。そして俺は今この時ほど強くなれたことを誇りに思えたことはないし。今のこの時間をくれたあの人に本当に感謝をしている。

「ありがとうルッチ」

そう呟いた後、俺は剣を構えると目の前にいる敵に攻撃を仕掛ける。俺はルッチを背中で庇いながら戦っていたがルッチも一緒に俺を守ってくれると、俺に伝えてくれたから。それに俺は応えるべく全神経を注いで戦うことに決めている。

俺達が対峙していたのは、魔王の手下の一人である黒騎士という者だった。そいつは黒い鎧を着た人間のような見た目をした化け物だった。そいつも俺達に対して敵意を持っており、襲いかかってきた。だからまず俺が、こいつに一撃を叩き込んでやることにする!

「〈我は炎なり 全てを焼き尽くさんとする〉 ——フレアーランス!!」

俺が使った魔法はその魔法だけで終わらせることなくさらに詠唱を進めていくのである。

「〈全てのものを滅せよ————フレアバースト!!} そして俺は、巨大な火の球を作り出すとその魔物に向けて放つ! その球体が直撃するとその爆風で辺りの砂煙が吹き飛び視界が開けたのだがそこには先ほどの怪物は影も形もなく消え去っていた。そしてその代わりに一人の姿が現れ俺のほうへと向かって来るのであった。その姿を見た俺は驚きを隠せないでいたのだったのだが俺はそんな感情を振り払い冷静に思考を回転させることにしたのである。俺は相手が自分と近いレベルの実力を持っているということに気が付いた。そのため俺と同じような力を持っていても不思議じゃないと思いながらも戦闘態勢を取る。だがそんな考えはすぐに消し飛んだ。何故ならそいつは武器を持っていないからだ。素手で攻撃を仕掛けてくる。俺は相手の行動に警戒していたのである。だがそいつは俺の目の前に近寄ると急に殴りかかって来たため、俺も反撃をすることに決めると俺は拳に闘志を乗せる。

そして俺は渾身の力を込めその攻撃を殴ることに成功していた。だがその衝撃によって俺は弾き飛ばされてしまった。しかし地面に倒れそうになる直前に受け身を取りそのまま距離をとることに成功した俺はそのあとすぐに立ち上がる。そこでようやくその人物を観察する余裕が出来たためじっくり観察してみることにする。

だがその男は何か特殊な技能を使っていてこちらには全く手の内を見せようとしなかった。俺は自分の体に流れる血が沸騰するような気分になっていた。

——この気持ちを抑えろ!怒りに支配されたらこの場では負けてしまう。俺は深呼吸をすることでなんとか冷静な自分を取り戻そうとする。そして再び男を見るとどうやらあいつもこちらを観察していることが伺える。そして俺は男に向かって駆け出していった。俺は何度も相手に技を繰り出すのだが、どれも当たることはなかった。

そして男が再び攻撃を仕掛けてきたのだが、その時の俺は何故か避けることができなかったのである。

(あれ?なんでだ?なんで体が動かなかった?どうして?どうしてどうして?)

俺の頭の中で様々な疑問が渦巻いていたが今は目の前にある危機に対応しなければならないと思い直していたのだった。俺は男の攻撃を受け止めることに成功すると俺はそのまま相手を地面に押し付けることに成功する。俺は何とか拘束から抜け出すことに成功をすることが出来たのだが俺はなぜか力が入らなかった。そして俺の目の前にいた男が一瞬のうちに姿を消すと俺の首に手をかけてきて絞め始めようとするが、俺は必死に抵抗することでその手を放すことに成功したのだった。しかし俺はそのせいで余計に逃げ道を失ってしまったのだ。そして男は今度は蹴りを放ってくると俺は腹にその攻撃を受けた。そしてその攻撃のせいでまたも動きが取れなくなってしまう。それでも必死に意識を保つ努力をしていたがその抵抗は意味をなさなかったようだ。

そして男はとうとう俺の目の前に姿を現すと俺のことを見つめながらニヤリとした表情を浮かべたのである。

「おいおい。まさかお前はここまで弱いとは思ってなかったぞ。俺の部下たちの中でもそこそこできるやつだと思ってたんたがよ。正直失望したぜ」男は残念そうにそう言い放つと更に続けてこんなことを口にしたのだった。

——その言葉に反応することなんてできない。俺の身体はすでに言うことを聞かない状態になってしまっている。そして男は俺のことを嘲笑うように笑うと俺のことを見下ろしていたのである。そして次の瞬間。俺の顔のすぐ隣に足が叩きつけられたのだった。

——もう何も見えないし聞こえもしない。ただひたすら苦痛だけが俺の感覚を支配しているのがわかった。それからしばらくして、男の声が耳に届いて来た。

「もうこれで用済みだよ。じゃあな」その言葉を最期に俺の目の前は完全に真っ暗になった。

俺が最後に聞いたのは男の笑い声だけだった。

俺は、目の前に広がる景色を眺めていた。周りには、木々が生い茂っていて少しだけ薄暗い雰囲気を醸し出しているのがわかる。俺が立っている場所は森のど真ん中であり、そんなところに俺は立っていた。どうして俺がこのような場所にいるのか、その理由を知るために俺の置かれている状況を振り返って見ることにしようと思う。

俺は、魔王の幹部の一人と一対一の戦いに挑んでいたのだ。しかし俺はそいつとの差を埋めることが出来ず敗北してしまったわけである。その結果、俺は死ぬこととなったわけであるが、俺は死を迎える直前までの過程を思い出すことができたのである。俺は奴に首を絞められていて完全に死に体の状態であったはずなのだが。俺が思い出せたことはそこまでである。そこから先はどうしても思い出すことが不可能であったのだ。俺がそのことを不思議に思っていると突然どこからか俺の体に光が降り注いだのである。

俺がその光の正体を確かめるために視線を動かしたその時、一人の少女が目に飛び込んできたのだった。俺は彼女のことをどこかで見たことがある気がしたが思い出せずにいたのである。そんな俺の様子を見兼ねたのだろうか、彼女は口を開く。

——あなたが勇者様ですね。私はルッチです。あなたのことはずっと前から知っていましたよ。だって私の好きな人ですからね。ふふっ、こうして実際に話すのは初めてだけどこれからよろしくね。

俺はそのルッチの言葉を聞いて、ルッチが自分のことが好きだったということと俺も彼女を好いているということを伝えられて嬉しいような気持ちになったのだ。それから俺は彼女がなぜここに現れたのかという理由を尋ねてみることにした。

俺はそのことについて尋ねるとルッチは自分の口から答えてくれた。そしてその内容は衝撃的なものであり、俺はその話を聞いた時思わずルッチを抱き寄せてしまっていた。それから、俺達はお互いのことを話すことになった。話を聞く限りだとどうやら俺達は同じ世界にいたということが分かったのである。

それを聞いた俺達はお互いにその事について驚き合っていたが俺達の間に流れている空気はとてもいいものとなっていた。それから俺達は二人だけでしばらくの時間を過ごしていく。

——俺は彼女と一緒に過ごし始めて数日が経った頃だったと思うが彼女と別れることになるのであった。理由はよくわからないのだが俺のことを他の人たちに見られたくないという理由であった。俺にはそんなことが納得できなかったが、俺はその話を断ることはできなかった。なぜなら俺はその事を承諾しないと殺されてしまうという脅しを受けていたからである。だから俺は渋々ではあるがその要求を受け入れてこの場を後にすることにした。

そして俺はその場を立ち去ることにしたのだった。だがその前に俺はルッチから贈り物を貰っていた。

俺の手元に残されているのはそのプレゼントが収まっていた箱だけだ。その中には俺の剣が入っているという。俺にはそれがどういう代物なのかはわからなかったがルッチのくれた物であるからきっと凄い物なんだと思った。俺はそれを握り締めるとルッチの言った通りその場所を離れていったのだった。

ルッチと別れた俺は一人、森の中を歩いていた。

ルッチとの会話の中で、この世界で起こっている出来事を俺はある程度知ることになったのである。まず俺達がいた世界では異世界転移というのが流行っていたのだという。そして、そんな時に現れたのが魔王と呼ばれる存在らしい。魔王の目的は俺達がいた世界の征服だったそうだ。俺達の世界でも魔王が現れることがあり俺達と似たような状況に陥ったことがあったみたいだ。しかし結局魔王は倒され俺達が元いた世界は平穏を取り戻したという。その話はあまりにも現実味を帯びていないように感じていたが、実際俺がこうしてその異世界にいるのだから信じるほかなかったのである。俺は魔王の存在など、信じていなかったので、最初は信じられないような顔で聞いていたのだが途中から、この世界にも魔獣がいることを確認するとその考えが揺らいでしまうのであった。俺はこの事実を受け止めた俺は次に俺以外の仲間を探すことを決意するのである。俺はこの時まだその考えに至る前だったがもし、俺の仲間たちも同じようにこの異世界に来ていた場合のことを考えたらこの世界では一人でいたほうが身を守ることが出来るのではないかという考えに至ったのだ。それに、もし俺の仲間もこの世界にいたのなら必ず俺を探してくれるに違いないという思いがあった。だから、俺は一人で行動して少しでもこの世界を生き抜ける術を身に着けようと努力していたのだ!そしてその過程で俺はあることに気づいたのである。

それは精霊が魔物を倒してくれるということであった。精霊は人間に対して悪意を持つことはできないらしく基本的に人に害を与えることはないとのことであった。つまりは精霊の森と呼ばれている場所であれば比較的安全に行動することができるのではないかと考えた訳なのだ。そのため俺は森の中で暮らしつつ情報を集めようとしていたのだ。

そして今日は、新しい出会いがありとても幸せな一日になると思っていたのだがその期待は大きく裏切られることになってしまったのだった。

——この日の早朝の出来事である。俺はまだ誰も起きて来ないことを確認すると外に出ていた。俺もここの人達と同じように生活することに決めていたので早起きをして朝食の準備に取り掛かろうとしたのだ。俺が調理器具を取り出している時のことである。

——俺の背後に何かが現れたのである。

そして俺は自分の命を狙っているであろう人物が俺のことを襲いに来るとは思ってもいなかったので背後を振り返ると、俺の命を狙った奴がいたのである。そいつの姿を見た俺は驚愕することになった。何故ならそこにいた人物というのはついさっきまで一緒に住んでいた女の子のルッチがこちらに刃を突きつけながら近づいてきたからだ。俺はすぐにその場から飛び退いて距離をとると、戦闘態勢に入ったのである。

俺は武器を作ろうと準備をしているといきなり、俺に攻撃してきた少女が話しかけてきた。

「ねえ、君ってもしかして勇者?」と聞いてくるので俺はどう答えるべきか悩んだがここは素直に話すことにすると俺はその問いに答えた。すると、その子は俺のことを睨みつけて「私の名前はルッカっていうの」と名乗ると俺に攻撃を仕掛けてくるので俺は必死で回避する。

——こいつはヤバい。今の俺がこいつと本気で戦ったら確実に負ける。俺はそのことを本能的に理解してしまったのだった。こいつがどんな力を持ってるのかは分からないけどこのまま戦っていても勝ち目はないということは分かった。俺は、逃げることを決めたのだ。俺はルッチの攻撃を回避しつつ全力で走り出したのである。

そして、俺はルッチが追いついてこれない速度で森の中を逃げ回った。そして俺はルッカのことを巻くことに成功すると、そこで俺は一旦休憩をとることにした。

俺は森の景色を見渡しながら、ルッジにどうして自分が狙われているのかという疑問を考えていた。

(一体、俺がなにをしたって言うんだ?)と俺が考えていたとき、俺はあの子に殺されるかもしれないと悟ったのだった。

そして俺は気合を入れなおすと俺は再び森の中を走り始めた。ただでさえ危険であるのに加えて俺のことを襲ってくる連中もいるのでさらに警戒しなくてはならない状態になっていたのである。

それからというもの、俺は森にある小さな湖を見つけたのだが俺は、その湖の周辺を調べていたのである。そして俺は、その時に水を飲みたくなったため喉が乾いた状態で森の中を走るのは非常に危険なので、水を飲んでおこうと思って、水辺で水を飲もうとするが俺はその途中で違和感を覚えることになったのだ。

——何故かその水はとてもきれいに見えるのである。普通こんな綺麗なことはありえないだろうと思い俺は不思議に思っていたのだがそんなことは些細なことだと判断してしまった。だが俺が飲み干した直後にそれは起こったのだ。急に水が沸騰したようにボコっと膨れ上がると次の瞬間爆発を起こしたのである。

——その爆風によって吹き飛ばされて木に激突した俺は気絶してしまった。

俺は夢を見ていたのだと思う。

その夢の中身を簡単に説明するのならば俺は死んだはずの幼馴染と再会するという内容のものなのだが。俺は、その夢を見て涙を流すことになる。なぜなら俺は彼女ともう一度会えることが嬉しかったからである。それから俺と彼女はしばらく話をしていたのだが突然俺の前に白い服を着て髪が銀色で腰ほどまでの長い髪をしている少女が現れる。

——彼女は突然現れるなり俺に向かって話し掛けて来たのである。

『初めまして。私の名前はアルス。この世界の管理を任されている者です』と突然少女が名乗ってきたので俺も名乗り返したのである。そして彼女が説明をしてくれたところによるとどうやら俺はこの世界で生き返ることになったらしい。だが、その代わりに今までの記憶を失うことになってしまうというのだった。それでも良いかと言うのだった。俺は記憶を失ってしまうのは少しだけ怖かったのだけど彼女のおかげで俺は助かることが出来た。その恩を返そうと思ったのもあるのだが何よりも彼女と一緒に居たいという想いが強くなっていた。俺は彼女の提案を快く受け入れることにしたのであった。

それからしばらくの間、彼女と過ごしていくうちにだんだんと彼女に心惹かれていくようになっていったのである。彼女と一緒に過ごす時間が楽しかったのだ。

そして俺はこの世界に転生した日から半年くらい経った頃にこの世界に召喚された勇者の仲間たちに出会うことになったのだった。俺には彼女以外の仲間ができるということが不安だったので、その事を伝えてみることにする。するとその少女は笑って大丈夫だと言ってくれたのである。俺の事を安心させるために言ってくれたのだと分かっていたが俺は彼女を信じようと思うことにした。俺はその後に彼女と二人きりで話す機会を得た。

それからしばらくして、彼女と別れることになり俺は、自分の家に戻ることとなった。それから俺はその日の夜の食事の際にルチアが俺のところに来たのだ。俺達はお互いにお互いの事が好きだということを伝えると俺達はお互いに抱き合い、そしてお互いに好きという言葉を言い合った。俺達の関係はこの日に始まったのである。

それから俺はルッチと一緒に過ごしていくことになるのであった。俺は彼女が俺のために一生懸命尽くしてくれる姿にとても感動したのである。だから俺は彼女を幸せにしようと思っているのだ。だが俺の仲間たちはなかなか厄介な性格の持ち主ばかりで苦労させられそうである。

俺達が住んでいる場所は森の中の小さな洞窟を利用して生活することを余儀なくされているため俺達が外に出ていく時には毎回死を覚悟することになるのである。しかもルッチの話では、この周辺に生息している魔獣のレベルが結構高く、それ相応の準備をしなければ俺達にはとても生きていけないような過酷な環境であるようだ。なのでこの辺りでは食料調達に一番難易度の高い場所となっている。俺としてはもう少し安全で平和な場所に住処を移した方が良いのではないかと考えているが、その意見が採用されることはないようである。そして今日もまた俺達が住む場所の近くにある森で狩りを行っていた。

俺は今この場にいる魔獣達を相手に剣を振り続けていた。俺は今朝起きた出来事を思い出していたのである。

その出来事とは俺と俺のことを好きだといってくれていた女の子が、俺の命を狙う刺客であることが判明したのだ。そして、その事実を知った俺には、その出来事に対する怒りと憎しみが沸き上がってくるのである。そして俺がルッカと戦闘を始めたのと同時に俺も攻撃を始める。そしてルッカとの戦闘が開始されると、俺の背後から別の何者かが現れ俺に襲いかかろうとしていた。

——そして俺が背後の敵に気づいた時には俺の首めがけて攻撃が行われていたのだ。俺がその攻撃をどうにかかわしてその敵を確認するとそこにいたのはこの世界に来て最初に仲良くなったルッチであったのだ。だがこの光景をみた俺は目の前の少女がルッカであるということに気づく。俺が知っている彼女の姿と全く違う容姿をしていたが、その特徴的な声は紛れもなくルッコのものであった。

俺はこの瞬間にルッジの首を斬り落とすことを決め、俺は刀でルッジの体を貫くために全力で突撃を行うことにしたのだ。

そして、俺とルッカの戦闘が始まったのであるが、俺は先程述べたように、全力でルッカを殺すつもりだった。ルッカは俺を殺そうとしていたし、この世界でも恐らくルッカが俺のことを殺そうする理由が何かあるに違いないと思ったのだ。だが、その俺の推測は見事に裏切られる結果となった。そして俺の攻撃はあっさりと回避されてしまったのである。俺の予想通りなら、ルッカが避けれる筈がない。なのに俺の攻撃を受け流すようにルッカーはその一撃をかわしたのである。俺は自分の眼を疑う。俺の攻撃が回避されることなんてありえないからだ。それにルッチは俺のことを恨んでもおかしくはない状況にいた。だからルッチの態度に疑問を感じていた。

——それからしばらく俺達の攻防が続いていたのだが、その途中で俺はルッジの動きに少し違和感を覚えるようになっていた。動きが全く見えていない訳ではなくて俺とそこまで変わらない速さだったし何よりその身のこなしが普通の人とは違う感じを受けていたのである。俺は、そんなルッジの様子を見ながら、この戦いの最中に何かがあるのではないかということを直感的に理解した。それで、戦いながら俺の考えをまとめているとその途中でルッカとの距離をとる。それから、その隙を突いて、後ろを向いて逃げ出すふりをして俺は攻撃を開始した。俺の行動にルッカは動揺したのか、反応が一瞬遅れてしまう。そのタイミングで俺は一気に攻めることにしたのだ。俺はルッカがこちらに向かって来たときにカウンターを決めることに成功する。俺は、ルッカが自分の間合いに入る前に刀の峰でルッカのことを叩きつけて地面に倒すことに成功したのである。そして俺もルッツと同じ地面の上で仰向けになって倒れたのだ。そして俺は意識がなくなる直前で俺が持っていたはずのルッピの腕からナイフが落ちるのが見えた。そのあとに俺もルッチも気絶してしまったのである。

俺が次に目覚めたときには、ルッカの看病をするために家に戻って来ていたルチアの姿があった。そして、その横には見知らぬ少女もいたのである。そして俺はその見知らぬ少女の名前を聞いていた。すると少女の名前はセツナということが分かったのである。その後俺はこの世界で一緒に行動することになった少女達と話をすることにした。まず初めに、何故ここに居るかの説明を受けた後になぜ俺をこの世界で殺したがっているかということについての話を聞き出した。

その理由というのはやはり俺を元の世界に戻したいというのが理由であった。だが、どうしてそんなことを考えたかについては俺には分からない。ただ、その話の中で俺に対しての感情や記憶について語っていた少女の顔を見てみるとどこか悲しそうな顔をしていた。ただその時はまだ気にも留めていなかったのである。それから俺はルッチの容態を確認しようと立ち上がると急に苦しみ始める。そしてルッパとルッチはお互いに顔を見合わせながら驚いているのが分かったのだった。

そして俺の体に異変が起こったのか、全身が熱くなっていく感覚に襲われていたのである。その状態のまま俺はルッチに向かって話しかけることにした。ルッチの体が急に変わったのは俺の呪いの影響によるものではないかと考えたのである。そしてそのことをルッチに聞くと、俺の質問の意図を汲み取った上で肯定してくれたのである。そこで、俺の体調を治す方法を探さなくてはと思った俺はこの世界に魔法が存在しているのかどうかを確認するため、この世界で俺の事を最もよく知ってると思われるルッキに声をかけた。するとその返事は「存在する」という答えが返ってきた。それを聞いた俺はこの世界で魔法を使ってみたいと思ったのだが、その前にルッヂが俺の事を治療してくれようとしたのだがそれを止めたのである。それからしばらくして、俺は魔法の使い方を教えて貰うことにしたのだ。俺は、その魔法を使いたいと伝えると簡単に教えてくれるのであった。それから俺は魔法を覚えることができた。

それから俺がこの世界にやって来てから1年が経ったのである。この世界の一年間というのが何日なのか、どの季節が存在するかといったことさえ分かっていないのである。俺はその間ずっと家の中に閉じこもって修行をしてきた。俺はこの世界で生き残るためにはもっと強くなる必要があると感じたからである。だから俺もルッガやルッチたちのように戦う術を身につける必要があると思ったのである。だが、俺は魔法を使えないので剣を使った攻撃のスキルを習得することにする。俺が使えるようになった魔法は治癒の魔法だけで他には光を操ることができる魔法と水を使う魔法だけだった。俺はそれらの魔力を纏った状態で戦おうとしていたのだ。だが、そのやり方は効率が悪くすぐに体力が無くなってしまうのである。俺は、それを防ぐために俺は剣術を鍛えて少しでも多くの敵を倒せるようになる必要があったのだ。そして俺が覚えることのできた剣術は3つだけなのでその技を覚えられる限界回数の3つの技を同時に発動させ続けるという練習をしていた。俺の使うことが出来る唯一の遠距離の攻撃を繰り出す方法だと思っていたのだ。そして俺がその訓練を初めてから5ヶ月が経過した頃に、この世界に来て半年という時間が経った頃に、その事件は起こったのである。

その事件とは俺達の拠点の洞窟内に魔獣が入り込んできたことだった。その魔獣がどのような魔獣であるかを説明するのであれば大きな狼型の魔獣だったのである。そして、俺が剣で魔獣を倒している時に他の場所では、ルッチとルッカが同じように剣で魔獣を討伐しようとして、ルッチとルッカの二人で魔獣を一体づつは退治することに成功したようだ。だが俺は二体目の相手をしている最中で手一杯になっていたので、二人に加勢することができなくなってしまっていた。そしてその状況をみた二人は協力して三体目を何とか撃退に成功することが出来たのであった。それからしばらくの間は三人でこの拠点を守ることにしていたのだが、突然に外から複数の人間の声のようなものが聞こえてくると俺達は急いで外に出ることになったのだ。その声は人間というよりも獣人の声に似ていたのである。俺は警戒しながら洞窟の外に出た。

するとそこには20人程度ほどの集団が現れて、この周辺にいる全ての動物達を従えているようであった。

俺達はその集団を見た途端この周辺で一番強いとされている熊型魔獣と戦っていた時を思い出す。俺達よりもかなり大柄な魔獣だったので苦戦をしたのだ。しかもその魔獣はこの周辺に生息している中で一番強くて厄介なことで有名な魔獣であるのだ。俺はあの魔獣の時の事を思い返すと背筋が凍るような気持ちになると同時に緊張をしてしまう。なぜならば、あの時とは状況が全く異なっているからだ。今は俺以外の人間がこの付近にいない状況になっているのだ。俺達がこの森で生活するには最低でも10人以上の人数で狩りをしなくてはならないと決めていたので、今現在俺達には狩りに出ている者以外全員揃うこととなっている。そして狩りに行ってい者達も、そろそろ戻ってくる時間帯となるのである。そのため今の俺達の状況は非常に悪いものなのだと考えているのだ。俺達の狩りに出ることのできる人間は俺を含めても4名しかいない。

つまりこの状況では俺達の勝てる相手は限られているということだ。それに相手の戦力を考えると俺一人で対処出来るかといえば微妙なところだと思う。だが、それでもどうにかしてこの場を切り抜ける必要はある。俺はルッツにこの場で待機するようにいう。

ルッチはその言葉に従うように動こうとした。しかしそんなことをルッカが許してくれる筈もなく、俺達に攻撃を仕掛けてきたのだ。俺はそれに対して刀で対応するがルッカの攻撃を刀で防ぐことが出来ず、そのまま攻撃をくらいそうになってしまう。俺は咄嵯の判断で後ろに跳んでその攻撃を回避することに成功する。ルッカは続けて攻撃を仕掛けようとするが、その攻撃はルッチによって阻まれてしまった。俺の方に駆け寄ろうとしたが、ルッカが放った炎をルチが風属性の攻撃で吹き飛ばしていたのである。

「おいお前!!なんで邪魔をするんだよ!!!?」

「私達はあなたを助けに来たんだから大人しく助けられなさいよ!!」

ルッカとルッチがお互いに言い争いを始めた。そしてそれを見て俺は焦りを感じ始めていたのだ。というのも二人の喧嘩が始まったせいで状況が悪い方向へと流れ始めたからだ。ルッヂもルックと同じような意見を持っていたようでどうしたものかと考えていた。

——そしてそれからしばらく口論を続けていたのだが、俺とルッガ、ルッチの三人はお互いに協力し合うことにした。

ルッチには、俺が持っているアイテムの中から回復ポーションを渡す。そしてルッヂには俺の所持している武器の中で最も切れ味のよい武器を渡そうとした。俺はルッカの実力は分からないが、少なくともルッガに関してはルッジ以上の強さを持っていてさらに魔法まで使うことが出来ているのだから問題ないだろうと判断したのである。俺がルッカに剣を手渡そうとすると、俺の腕を掴んできた。そしてその腕を放そうとはしない。

「私はその男より、あなたの方の方が信頼できると思うわ。だから私にその男のことは預けて貰えないかしら?」

俺はその言葉を聞いた瞬間ルッカはルッチに対して何かしらの感情を抱いているのではないかと思ってしまう。だが今はそのことを考える余裕はなかった。それよりも先に、どうやって目の前にいる少女の相手をするのかを考えなければと思ったのだ。

「それは出来ないね。君は僕の大事な仲間を傷つけた。君が僕の仲間を殺そうとした事実は消えないからね。そして僕はそんな彼女を許していないからさ。ルッチの言う通りその男がこの先どんなに凄くて頼りがいのある存在になっても絶対に渡すつもりはない。それと君の実力は見たけれどルッチと同じでルッカはルッガ以上に強いかもしれないからルッガに相手を頼もうかな。それにルッチの剣も相当に使えるみたいだから、ここは三人がかりでいくしかない。いいよね?ルッチ。それとルッキ。その武器を使ってくれてもいいんだけど大丈夫かい?」

ルッチは剣を俺に手渡し、ルッカとルッチはそれぞれルッパとルッキに自分の使っている装備を貸し与えることにした。それからルッコに俺は「頼む」と言って彼女の頭を撫でるとルッコは笑顔を見せてくれた。ルッピがこちらに向かって歩いてきた時、「ご主人様が私を褒めてくれるだなんて、これは私の愛が通じたってことなのね。でもさっきの戦いを見る限りだとあの娘が少しばかり有利そうだから心配なんですけど。それにしてもどうして急に協力的になってきたのかしら」と言いながら小声で独り言を話していたのである。ただ、ルッチにも聞こえるほどの声量だったのは気のせいではなさそうである。そしてルックがルッカの元へ近寄るとそのルッチのことを見上げながら睨みつけたのだった。その様子を見つめながら俺は心の中で「こいつらのいざという時に仲が良くてよかった」と思っていたのだった。そしてルッガがルッヂの方へと歩み寄りその手に剣を渡してやっていた。ルッガから剣を受け取ったルッヂはすぐにその剣を構えると、すぐに構えをとる。ルッヂは俺の言葉を聞くと、素直に従うことにしてくれたようだ。俺が剣を構えて戦闘の準備を始めると俺の体には雷が帯電していく。それからルッチは風の魔力を体に纏い、ルッチの周りには炎が出現する。俺は刀身に水の力を集めて準備を整えた。ルッカは俺の方をちらりとみると口を開いた。そして俺に質問を投げかけてくる。

俺はそれに返答する。俺がその言葉を言う前にルッチが反応を示した。

「あんた達本当に私達と戦うのですか?あなた達は弱い人間なのでしょう?こんなところで戦っては死ぬことになりますよ。それにその女にだって私を倒すことは出来ないでしょう。それに私達は人間ではないのです。そして私はあなた達を裏切った。そんな私達と一緒に戦うことなど出来はしません。それなら逃げて生き延びる方がいいと思いますがどうでしょうか?」

ルックがその言葉を発すると周りから動物達が一斉に逃げ出したのである。俺はそんな状況を確認するとすぐに行動に移るために足を踏み出したのだ。

俺はすぐに踏み出してその距離を一気に詰めようとしたのだが、その一歩目が地面に付くよりも早く地面から氷の杭のようなものが飛び出してきたのだ。俺は瞬時に判断をして、後ろへ跳躍してそれを回避することに成功したのだが完全には避けることが出来なかったようで右腕を掠めるようにして貫通していったのだ。そして痛みを感じる。かすっただけでもかなりのダメージだったのだ。俺が着地をする際には既に次弾が迫ってきていた。それを確認できた俺は空中で体を捻ることで直撃をなんとか回避することが出来た。それでも俺にはかなり重い一撃となってしまったようだ。俺の体は衝撃に耐え切れずに後方へと飛ばされてしまったのである。俺の着ている鎧のおかげもあって何とか命を落とすような事態にはなっていないのだろうと思っている。

俺を吹き飛ばした魔法による攻撃の後には大量の血が残されていたのだ。それもかなりの量だ。俺は急いでその場から離れようとしたが遅かったようであり次の攻撃が開始されてしまう。ルッゴとルッチも同じような目にあったようで、その魔法から逃れられずにそれぞれ傷を負ってしまっていた。

俺はすぐさま立ち上がると、そのまま駆け出そうとしたが、今度は土の壁のような物が出現して、その道を遮られてしまう。それと同時に壁の中から棘のような形の岩が大量に突き出してきて俺はそれを避けるだけで精一杯となってしまう。だが、俺は諦めずに何度もその攻撃に挑んでいた。すると突然ルッカが魔法を放つとルッカの目の前に巨大な盾が姿を現したのである。俺はそんな光景を目の当たりにしながらも攻撃を避け続けることしかできない状況に陥ってしまった。俺達三人は連携を取り、その攻撃を防ぎ続けていたのだが、ついにルッカの操る大楯に限界が訪れてしまったのである。そのせいで俺達の方に攻撃の矛先が向けられることになってしまった。そして俺の身体中にも傷が増えていき次第に体力を消耗していき、このままではすぐに倒れ込んでしまうことが分かっていた。そのため、ここで決着をつけようと俺は思っていたのである。だが、そんなことを簡単に出来るほどルッッカの魔法は甘くはなく、俺の攻撃はことごとく跳ね返されてしまったのであった。

そして、ルッカにルッッチが近づくと俺達を囲っている氷を一瞬で溶かして見せたのである。そしてルッカの手を握ると「さぁ逃げるよ。これ以上の戦闘は無用だからね。あなた達の実力では、この人数を相手にするのは厳しいのだからさっさと逃げるべきよ」と口にしていた。そして俺の視界の隅でルッチがうずくまる姿が見えたが気にせずにルッカの言う通りにすることにしてこの場を離れることにしたのである。

俺はルッカが作り出した大楯によって守られていたのだがそれでもかなりのダメージを受けていたため動くことが出来ない状況になってしまっていた。そこで俺はルッカに頼み込むことにしたのだ。「この先をまっすぐに進むと森を抜け出すことができるはずよ。そこからは道が続いているからそこを進めば街があるわ。そこまでは全力で走って、私達との距離を引き離せば問題ないわ。それとこれを渡しておくから。もしこの先で私達と遭遇する羽目になった時にはそれを使って」と言って俺に回復ポーションを渡すと俺の返事を待つことなくどこかに行ってしまったのである。俺達はそのポーションを使うことにする。

俺達は回復ポーションを飲むとすぐに動けるようになる。そして走り出すことにする。それから少し経つと前方に光が差し込んできたのでそちらに向かうと俺達は森の中を抜け出したのだった。俺の視線には広大な大地が広がっており遠くには城らしきものが見て取れた。俺はその場所を目指して走っていくことにしたのである。そしてその道中に敵と出会ってしまい俺は交戦を開始することになる。ルッチの魔法で強化されたその男はなかなかしぶとく倒せなかった。

俺は必死になりながら戦っていたのだが、徐々に俺に勝ち目がないことが明らかになっていくのを感じていたのだった。なぜなら相手はこちらの動きを見切って攻撃を放ってくるのだから、俺は防戦一方となっていた。俺は相手の動きをよく見ろと言われていたのでしっかりと見ていたが、どうやらその必要はなかったようだなと思い始めてしまっていた。俺は攻撃をどうにか回避し続けることが出来ていたのだから。だがそれは長く続かなかった。俺に疲れが出てきた頃、相手が急所を狙い始めて俺はそれを避けることに意識を向けるようになったがそれが悪かったのだ。それによって敵の攻撃を受ける頻度が増えて少しずつだが、傷が増えていった。そして遂に、その攻撃がまともに入ってしまう。その瞬間俺の体に電流が流れていく感覚に襲われてしまう。その衝撃のせいで俺は気を失ってしまうのだった。

「やっと目を覚ましたのね。心配したんだから」

俺が起きたのはベッドの上だった。それから、ルッカに話しかけられたのだ。

「心配をかけたことは謝るけれど君に言われても説得力がないと思うけれどね」

「そんなことはないですよ。私はご主人様を心配していますから。でもご主人様、ルッカはご主人様が起きるまでずーっと寝てなかったんですよ」

俺はルッカのことをよく見てみるとルッッチから貰った武器を装備しているのが分かったのだ。ルッチから渡された武器で装備したからといってルッッチのように雷の力を纏うことまでは出来ないが、雷を操ることは可能となっているようだ。つまりは、ルッッチとルッカは雷の力を使いこなしているというわけだ。そしてルッカの右手には杖のようなものを握っているが、あれは何の効果があるのだろうか。そしてルッッチの武器は槍で、ルッパの武器は剣である。それぞれは俺にルッチから受け取った剣と同じ素材の物を使用しているようであり、とても強力な力が秘められていることだけは分かるのであった。ただ、あの武器は一体何に使うものなのだろうかと疑問が残るばかりだ。

「まぁいいや、それよりもルッカ達はどうしてこんなところに来ているの?」

「私はご主人様を追いかけてここまでやって来たんですけど、他の方々も同じ理由です」

俺はその答えを聞きながら頭の中にクゥちゃんやサランさん、メイリのことを思い出していた。みんなは無事なんだろうなと俺は考え込んでいたのだ。するとルッカが何かを思いだすように俺に声をかけてきた。俺は彼女の話を聞くことにしようと決めたのである。

「そういえばあなたにまだ私の目的を話していませんでしたよね?私の目的はご存じのとおり、あなたと共に行動するためですよ。ルッコとはもう仲間同士になっているみたいだし。それでですね。まずはこの国の王を倒してこの国を手に入れることから始めるのが良いんじゃないかと思っているのですよ。それに私達にはそれだけの力があるでしょう。なので早速私達が手に入れようと思っている国へ向かいましょう。ここら辺にある国は三つくらいしか残っていないのですがどれかひとつを選びましょう。その方が簡単でしょうしね」

ルッカの話によるとルッズ王国の東に存在する大きな山を越えてさらに南へ行くと帝国があり、そこに一番近い国がここらしい。ルッカが指差している場所は帝国ではなく、その近くにある小さな王国だった。そして俺は「ルッカってそんなに強いんだ?というよりどうやってこんなに強くなったの?」と聞いたのであった。ルッカのその実力はかなりのものであり俺よりも遥かに強いと感じるほどにその力は圧倒的だと感じることが出来たのである。

「私が今よりも幼くて弱かった時に、とある方に救われたのがきっかけで強くなりたいと思うようになりました。そのために毎日修行をしたのと、それとこの国に伝わる秘宝を使ったおかげで強くなれました。今では私よりも強い人はほとんどいないと思いますよ。それにルッカも強くなっているじゃないですか」

ルッカが言う通り俺のレベルは上がらなかったのにルッカのレベルがどんどん上がっていくのだ。そのため俺のステータスとルッカの能力値はほぼ同じだった。そして俺達二人はその小国へ向かうために歩みを進めていたのである。

「ねぇ、ルッカってどうして俺と一緒にいてくれるの?俺なんかがルッゴ達に認められた理由もよくわからないんだよ。それに、俺と一緒に行動する理由はあるのかなと思ってしまって。それに、俺にはルッガの期待に応えられるだけの能力なんて持ってないから。本当にどうしてなのかなって思って」俺は素直に感じていたことを彼女に話す。俺はルッゴ達と一緒にいることに対して少し引け目を感じてしまうことがあったのだ。だからこうして俺はルッカにも質問をしてみることに決めたのである。「う~んとね。簡単に言っちゃえば面白そうだからっていうところが大きいかも。後はね。あなたなら信頼できると思ったから一緒に行動しようと思ったの。あなたの傍にいれば色々と楽しめそうな気がするのよ。後、あなたを成長させる方法も思い浮かんできたしね。その方法を実行するためにはあなたの近くにいた方が良いの。だからこれからも宜しくお願いしますよ!」と言ってきたので俺はその提案を受け入れたのだった。ルッカが何を考えているのか俺にはさっぱり分からなかったがとりあえずは彼女の言う通りにすることにしたのである。

俺達はまだ歩き続けているのだが一向に街に到着する気配がなかった。そこで、この世界についての知識が全くないのでルッカに尋ねることにしたのである。そしてルッカに聞いてみたら彼女は親切に俺にこの世界のことについて教えてくれたのだった。俺はルッズ王都で生活を始めたばかりだったため知らないことが多いのは当然のことなのだ。そのためその話を熱心に聞いていたのだった。そしてその話の中には俺がこの世界に転生してきた時と似たような現象が起こっていたことなどが分かった。

俺はそのことをルッッカに尋ねてみるとルッカは俺の問い掛けに対して答えた。

「あなたが元いた世界でも同じように人が突然消えたり現れたりすることがあるんですよ。ただその時の状況が違うんです。元の世界で消える人たちは皆死んでいる場合が多かったはずです。そしてこちらの世界では死んでからしばらくすると異世界から新しい人間が呼び出されるようになっていて、それが前の人たちの代わりになるんです。召喚される時期は決まっていてこの世界で誰かが死ぬたびに新たな人間が召喚されて入れ替わっていくのよ。だから、死んだからすぐにまた呼ばれるというわけでもなく、その期間には個人差があるみたいなんだけど、でも大体百年から千年の間呼ばれ続けて入れ替わるわね。ちなみに今の人間達はその制度が始まってからは初めての召喚者たちなの。過去に何度かそういうことが起こっているわ」

そして俺の頭の中にあった不安な気持ちが大きくなっていったのだった。そして俺はそのことについて考え始めたのだ。

(俺以外にも同じ境遇の人間はいるんじゃないのか?)そんなことを考えてしまったのだ。そんな風に思っていた矢先に「そういえばこの世界に来て間もないんだっけ?」と言われたので「そうだよ。最近まで学生だったからね」と言うと「あぁそっか。それはごめんなさいね!じゃぁこっちの生活に慣れるまでサポートしてあげないと駄目だよね」と言ってくれたので俺は安心するのであった。そしてルッカと会話しながら歩いているとルッカが立ち止まった。そしてルッカは俺に向かって声をかけてきたのだ。

「ここが私達の目的地の街なの。まずはこの街のギルド本部に向かうと良いと思うからついてきて」

俺はルッカに言われて彼女に続いて街へと入るのだった。その道中、俺とルッカを多くの人たちがジロジロと見てくるので少し居心地が悪い気分になっていた。しかしそんな中で俺は自分の容姿が目立つということを実感していた。そして、そのせいでルッカにまで迷惑が掛かっていることに心を痛めていたのであった。

ルッカに連れられて到着した街のギルド本部は木造の建物でありその外観は綺麗だったのだ。ルッカが受付嬢に話しかけると、俺達は二階にある部屋へ通されたのだった。

「ここのギルドマスターは女性の方なんです。私はお会いしたことがないんですけど」

「それなのにここを選んだの?ルッカは一体何をするつもりなの?何か策でもあるんだろうけど。それにしてもここの雰囲気が俺の知る限り、普通のギルドとは違うように思えるんだけれど。それにルッカとここに来て良かったのかとすら思うんだよ」俺はそんな言葉を吐きだしてしまう。何故ならここは、今までに見たことが無いほどの力を感じることが出来るのだ。それもただ単に強いとかそういった類のものではなくもっと根本的なところから来るものなのではないかと俺は感じている。だが、そんな疑問を抱いている俺にルッカから「大丈夫だよ」と言われて俺はルッカの言葉を信じることにしたのである。

「あなたが心配するようなことはないからね。それよりも早くギルドマスターの所に行くから着いてきて」そう言ってから俺の手を引っ張るルッカの顔はとても楽しそうな表情をしているのを見て俺は苦笑いを浮かべる。

「ちょっと、急に引っ張らないでくれるかな」

俺はそう言いながらも手を離そうとしなかった。そして階段で転ばないように注意を向けながら上っていた。そして部屋の前に到着してルッカがそのドアを開けると一人の女性と目が合う。女性は俺のことを値踏みするように見つめてから俺の顔をじっと見ていた。

「あんたが私のところに来たって奴か。ルッカ、どういうことか説明してくれるんだろ?」ルッカが俺を連れてきたことを説明すると彼女はルッカに対してかなりキツイ口調で言葉を放つのであった。するとルッカは「そうですよね」と言い、その次にルッカが何かを口にしようとした時だった。

彼女がいきなり攻撃してきたのである。ルッカは咄嵯の判断でその場から離れていたので攻撃を避けられていたが、もしルッカが避けていなかったら俺の首は無くなっていただろうと思うくらいの攻撃だった。そしてルッカも反撃を開始して激しい戦闘が始まりそうになったがルッカはなんとかそれを堪えたようだった。そんな戦いが数分間続いていたが俺が間に入って二人を止めようとしたことで、二人は争いをやめたのだった。ルッカの話を聞いてみるとルッズの国王と王妃が突然何者かに襲われて殺されてしまったらしい。そのためルッカはこの王国を取り戻すべく戦うために、この国の中で実力のある女性を集めて軍隊を結成したとのことだったが、その話には嘘があったのである。本当はこの女性がこの王国の王になることを宣言しようと計画していてそのためにルッズと協力関係にある帝国とも敵対しようと考えていたようなのだが、ルッズ王の暗殺事件をきっかけに帝国とは協力をしようとしない方向になっているらしい。ルッズが帝国の後ろ盾を得ることで帝国に狙われることを嫌い帝国は、ルッズ王国との貿易を中止するなど圧力をかけてきていたようだ。そのためルッコ達は自分達だけで戦わなければならない状況に追い込まれていたのだというのだ。その話を聞いたルッズは俺達と同盟を結ぶことに同意してくれて俺達は一時的にではあるが同盟国として協力することになった。

その後俺は、ルッカと一緒にその女性の家に行き話し合いをする事になった。そしてそこで初めてルッカが俺と一緒に来た本当の理由を俺に伝えることになる。俺はそれを聞いた瞬間頭が真っ白になった。まさか自分が国を動かす人物になってしまうなんて考えたこともなかったからだ。俺は慌てて拒否しようとするのだが俺はもうすでに決定してしまったらしく俺が何を言おうと変えられることはなかったのである。

俺が自分の国の王になるという事実を聞かされてしばらく放心状態になっていたが俺はようやく我に返った。しかし俺はこの話を断ることは出来ず受け入れざるを得なかったのであった。

俺達四人は今後の方針について話していた。この世界の事をよく分かっていないのは事実である。この世界に何人住んでいるのかわからないがこの人数では圧倒的に足りないのだ。しかも、相手の強さも分からない状態で突っ込むほど馬鹿ではないつもりなので情報が必要だと考えた。だから俺は情報収集をすることにしたのだった。そしてルッズが持っているというこの辺り一帯の情報や地図などの提供を求めたのだった。ルッカはその要求に即答した。ただ、すぐに行動はせずにしばらく様子を見たいということだ。

その日はそのまま寝ることになった。そして翌日俺達はギルド会館へと向かう。そして受付のお姉さんとルッカが何を話し合っているのかと思ったら俺達が泊まっている場所を聞かれたのである。ルッカの知り合いという事で割引をしてくれるということだった。そして、宿代を支払わずに済むようになったため、これからは宿に滞在することが無くなって、ずっとルッカの家に居候することになる。そして食事も毎回お世話になって申し訳ないと思いながら俺は毎日食事をするのであった。そして次の日から俺達の旅が再び始まることになった。俺の役目は主に冒険者として活動して情報を収集する仕事を任されたのだ。

ただその前にこの王城から出なければならないということで俺が案内されるままついて行ったのだがこの城にはどうにも違和感を覚えるのだった。その感覚の正体がわからず気持ち悪い思いをしながらも、この王城に長く留まることをあまり望まない自分に気が付きこの城を出て行く決意をしたのだった。俺の事を気に掛けてくれる使用人達には悪いと思うが仕方がないのかもしれないと諦めている自分もいる。ただ俺はこのままこの国に残りたくは無いのだった。だから俺は急いで準備をしてすぐにでも旅立つことにしていた。するとその様子に気付いたメイドがルッカを呼びに行ったのだ。それから数分後にルッカが部屋に入ってくる。

「やっぱりここを出たいの?」俺はその問いに答えるように首を縦に振ったがルッカは悲しそうな顔をしていたのであった。俺はそんな顔を見るのが辛いが、それでもこの国にいるよりも良いと判断したのだった。しかし、それならば私もこの国から出ていくから一緒だよねと言われてしまいルッカは付いてくるのだった。ルッカの同行に関してはルッカ自身が決めていることであり問題はない。しかし、その決断に至る経緯に納得できないでいるのであった。

ルッカの話ではギルドに登録して依頼を受けて稼いで旅を続けていくというのが一般的だと言っていた。俺の知っているファンタジー物だとそうだったから間違いはないだろうと思っている。そして俺はとりあえず登録だけしようと考えていたのでギルドに向かうことにしたのだった。

俺とルッカがギルドに着くと、俺はこのギルドに不信感を抱いていた。このギルドには何故か威圧的なオーラが漂っているのだ。俺はこの空気に負けそうで、とても入りづらく感じてしまっていた。

「ねぇルッカ、この雰囲気は一体なんなんだ?こんなところはさっさと退散して他のギルドに行くぞ」俺はそう言ったが、ルッカはギルドの入口の前で立ち止まってしまったのだ。

「ごめんね。私はここから先は入れないの。だって私、元Bランクの冒険者で今はギルドマスターだし。そんな私が入ったりしたら皆が嫌がるでしょ」俺はその言葉で、ギルドの入口前でのんびりしていたルッカに対して、先程からチラホラと感じる鋭い視線の原因はルッカのほうにあったのだろうと理解した。ギルドに入るとルッカに挨拶する冒険者たちも多く、中には握手を求めてくる者もいたが、それに対してルッカが「はい。ルッカです。よろしくお願いします!」と答えていてルッカの人気の高さを感じさせられたのだった。

そして俺達は依頼書が貼ってある壁の前にやってきたのだが、そこに張ってあった紙を見た途端、俺は自分の目を疑う事になる。なぜならそこにはドラゴン討伐の依頼書がありその難易度を表す★の数を見て驚愕してしまう。この依頼は最高難易度の星10のはずなのだが何故、ここに張られているのだろうかと疑問を感じたのだ。だが、星5つや6つの簡単な依頼なら受ける冒険者もいるだろうが流石にこれは無理だろう。俺はギルドの職員に話しかけた。すると、このドラゴンはこの大陸で一番弱いと言われているワイバーンでこの国の王族の誰かが戯れに退治しようとしたものらしく、まだ傷が治っておらず今なら勝てるかもしれないからという理由で張り出されているのだということだった。

「えっとつまりは、ドラゴンを倒してしまえば俺達も簡単に認めて貰えるわけか」

そう言って俺はドラゴンの居場所と現在のステータスを確認してから依頼書を剥ぎ取ってそのままカウンターへと向かった。それを見て慌ててついてくるルッカだったが俺を止めることはできなかったようである。ギルドの職員からは、本当に倒せるのか?と疑われてしまったのだが証拠として倒した時に手に入れた武器を見せると言ってから、俺はすぐに外に出ることにしたのである。そして俺はワイバーンを倒すべく移動を開始する。

俺は早速ワイバーンを見つけるべく移動するのだがこの国は自然豊かなためか、山や森林地帯が多く存在する。ただ、俺が目指しているのは洞窟の中であるために、必然的に森を突き抜けることになるのだが、俺としては都合が良いのである。

しばらく森の中を歩いていくが魔物に出会うことはなく、俺は順調に目的地へと向かっていたはずだった。しかしその途中である男に出くわしてしまい、その男は剣を抜いて襲いかかってきたのだ。

「へっ! ガキが、お前が持っている物をよこせ。それは、俺達の物になるんだよ」

俺にそんな言葉を吐きかけてきたのは、いかつい顔をしていて明らかにヤバそうな人物だった。そしてそいつは俺に向かって、いきなり切りかかってきた。しかし、俺はその攻撃を軽く受け流し、相手の腹を蹴飛ばすと相手はその衝撃で吹き飛ばされていったのだった。しかし相手が諦めることなく、再びこちらに攻撃を仕掛けようとしたところでルッカが止めに入った。ルッカに止められても尚俺を殺そうとしてくるのでルッカが攻撃を加えようとしてきた時だった。俺はこの男が手に持っていたナイフを奪ってから、その刃の切っ先で男の喉元を刺し殺すとようやく大人しくなった。そして死体を収納空間に入れてから、再び目的地に向けて進み始めた。すると前方に巨大なワイバーンを発見することになる。

この巨大生物を見つけた俺だったが、このサイズだと倒すことは非常に困難であるために逃げることに決めた。その判断をルッカに伝えたのだが、「ルッカはルッカだよ。だから絶対に大丈夫なはずだよ」と言うのだった。俺としてもここまで来たら逃げたくないので仕方なく戦闘をするしかないと考え、戦うことにする。そして作戦を考えることにしたのだが、この大きさの相手に通用するような技が使えるか心配になっていた。そんな不安を抱える中ついに戦いが始まる。

俺達が近づいて来るのに気付いたのであろう。向こうも俺達の姿を確認したようであった。俺はルッズ王からもらった槍を構える。そしてルッカも魔法を唱える。

【氷塊乱舞】

そして俺達二人による攻撃が始まった。まず俺は敵の目の前に移動して勢いをつけてからジャンプをして頭上から敵を攻撃した。そしてルッカの方は上空から敵に魔法をぶつけていた。俺は、なんとかダメージを与えたものの、致命傷にはならなかったようだ。

それを受けて巨大生物は雄叫びをあげると口から何かを発射して反撃してくる。それをギリギリのタイミングではあったが、何とか回避に成功する。しかし敵の攻撃はこれだけで終わりではなく今度は翼を使い空高く舞い上がったのだ。それからしばらくするとまた急降下してくる。俺はそれを受けると地面を滑るように転がったのである。この一撃はかなりのものでかなり痛かった。俺はその攻撃を受け流す事ができなかったのだ。俺は痛みを堪えながら立ち上がって敵を睨みつけた。

俺が立ち上がろうとすると相手は再び空を飛ぶ。俺も慌てて走り出し追いかけたが間に合わないと判断したため一旦立ち止まるとルッカが既に魔法の詠唱を始めていた。

俺はルッカを庇いながら戦った方が確実だと考えると彼女を守るために前に出て戦おうとするが敵はそれを許す気はないようで俺を邪魔するのだった。俺が敵の攻撃を防ぐ度に後ろにいるルッカを狙って攻撃を仕掛けてくるため俺はその全てを受け切ることは出来ずにいたのだ。しかしルッカは魔法を発動させることに成功した。

【水弾連射】

そしてルッカの攻撃は命中するがやはり決定打にはなり得ない様子だった。そのため俺は一度引いて体制を整えることにしたのだった。そして少し時間が経つことで冷静になったからこそ、俺は気が付いたことがあった。先程の攻撃で俺達が避けきれないくらいに速い攻撃を放てば良かったのではないだろうかと。そう考えた俺は早速行動に移してみると案外うまくいってしまい敵はそのまま落下していき絶命したのである。この方法でいけるという確信を得た俺はこの方法を使って倒しまくることにしたのだった。

それからしばらく俺は一人で頑張っていたが流石に疲労が出てきたので交代することにしたのだった。そして俺はルッカに声をかけてからルッカの後ろに回る。そして俺は敵に飛びかかるようにして攻撃をすると、上手く相手の弱点に当たりダメージを与えることができたのだ。その後何度か攻撃を加えると、とうとうドラゴンは倒れてしまい、俺の勝利となったのであった。俺はその光景を見届けてから一息ついた。

「ねぇ私、役に立ってなかったけどいいの?」ルッカは自分が何もしていないことが不満だったらしくそんな事を言い出していた。確かに先程の戦いでルッカはほとんど活躍していなかったが、俺には彼女がいなければ勝つことはできなかったと思っている。そしてその思いを伝えたところ、照れたのか俯いてしまうのだった。俺は、このままだと危険な状況になることを理解してルッカの手を握ってから転移スキルを使用することにした。そして無事に転移が完了する。

そしてワイバーンの死体を取り出してから、その素材を確認する。ワイバーンの鱗はとても硬いらしいのだが加工して盾や鎧などに使用すれば高い性能を発揮すると聞いたことがあるのだ。俺はその話を聞いていたので、今回のドラゴン退治の報酬はドラゴンの素材を貰うことにしたのだった。

俺はそのあとワイバーンを解体していくと、予想よりも大量に出てきた。俺一人だけでは捌き切れない量だったので仕方がないがこの国の人たちにも分けてあげようと思いギルドに持ってくることにしたのだった。俺はワイバーンの肉を持ってギルドに向かうことにした。

「こんにちはー!」俺はそう言ってギルドの中に入っていくと、何故か職員たちの目つきがいつもより鋭くなっていた。俺は何があったのだろうと疑問を感じていたところ突然背後から声をかけられた。

「お久しぶりです!あなたは以前ギルドで依頼を受けた方ですよね? そのドラゴンの死骸ってどうしたんですか?まさか、自分で倒してきたなんて言わないでくださいね」そう言ってから彼女は、笑っているのだが何故か目が全然笑ってなくて、それが余計に怖さを倍増させているように感じるのだった。俺がその女性の視線に耐えられず目を逸らすと彼女の後ろにある掲示板が視界に入ってくる。そこには星10の依頼が貼ってあり、その内容を見てみるとこの女性が何者なのかという答えがわかったのである。そしてその瞬間俺の背中に寒気が走る。この女性が一体どういう存在だったのかを思い知らされたからである。

ルッカを連れて来れば問題ないだろうと思って、この国にやって来てドラゴンを倒したが、それは間違いだったのかもしれないと思ったのだった。

俺達は依頼主の待つ場所に行くことにした。するとその依頼人はルッチナという名前で妖精族の少女だ。その少女は俺のことを知っていたようで、俺に助けを求めてきたのだ。そして俺はこのドラゴンについて話を聞きたかったために依頼をこなすことを承諾すると早速、依頼を完了させるために動き出したのだった。しかしワイバーンの解体がまだ途中だったために、ギルドの職員に許可を取ってギルドの裏手でドラゴンの討伐証明になる部位を切り取ってから収納空間に入れる作業を行うことになった。

ワイバーンの解体は時間がかかるので俺は他の依頼書が張られている壁を見て暇を潰そうかと考えていたが、その時だった。

「すみません、もしかしてこの前のワイバーンを倒してくれた冒険者の方ですか?もしそうなら助けて欲しいのですが、よろしいでしょうか」俺がその依頼書を見て驚いているとそんな言葉をかけてきた人物が俺の視界に入って来たのである。その女性は俺に向かってそんな質問をしてから深々と頭を下げていた。そして俺はどうしてこの女はワイバーンのことを知っており、更にはこの前俺がこの国に来た時も知っているような素振りをしていたのかを考え始めた。

すると、俺の思考回路がショートしてしまうのではないかと言うほど頭が熱くなり始める。そのせいで考えがまとまらないのである。俺は混乱している状態の中で、とにかく落ち着いて冷静になろうと考えるが一向に落ち着くことができずにいた。そしてその様子を見かねたその女は自分の名前を名乗ってから自己紹介を始める。

「初めまして。私の名は、ルチアナといいます。ルチアと呼んでくれればいいのでよろしくお願いします」そう言いながら再び礼をする。俺はその挨拶を聞いてさらに驚きを感じてしまうことになる。

なぜならその人物は俺の師匠でもあるリシアと同じ名だったからだ。しかもそのルッチナはリシアと同じように顔も似通っているために、俺にとってはかなり刺激が強かった。そのせいで俺は固まってしまった。

「あ、あのー。どうかされましたか?大丈夫でしょうか?」心配そうな顔をするルッチナ。

そこで俺は我に返る。そして慌てて返事をするのだった。俺が慌てながらも返事をしたことによって安心してくれたようだ。ルッチナの顔からは先程までの不安そうな様子が無くなり笑顔になる。

それから俺は彼女に対していくつか質問をすることにし、それを終えた後に俺はあることに気づくことになる。そのことには、まず一つはルチアの名前が似ていること、それからルチアは年齢的にルチアが俺より年下だとは思えなかった。つまりこれはルチアと血縁関係にあると考えたほうが自然だろうと判断した。そして次に俺が感じていた違和感の正体がなんであるかを知ることができるかもしれないと思ったのだ。その理由は彼女の外見なのだが見た目から判断してルチアよりもかなり若いように見える上に身長が低く見えるのである。俺はこの世界に転生してから背が伸びていないため自分の背の高さを把握していなかった。そのため今の自分がルッチナの年齢に近いとは到底考えられないため、恐らく彼女が若すぎるのではないだろうかと思うのだった。しかしいくら考えてもその可能性しか考えられなかったのでとりあえず保留にしておき次の疑問を問いかけることにした。

俺は先程からルチナと名乗る女性と話していて気になったことがあった。この人の声を聞くと懐かしさを感じるのだ。しかし何故なのかは分からないのである。もしかしたら知り合いにこの人がそっくりなのではないかと俺は考えていたが、そんなはずは無いと思っていたのだ。

俺はこのルチアという名前の女が、本当にルチアと関係がないか確認するために俺はある人物の名前を呼んでみた。するとその瞬間、彼女は体を硬直させて冷や汗をかきながら苦笑いを浮かべていた。そしてその反応はまさに俺の考えが間違っていない証拠でもあったのだ。その出来事により俺は全てを理解することが出来たのであった。そして同時にその事実は俺にとっては信じられないものであった。まさかルチナの本名がルチアであり、そしてルッチナは偽名だったということだったのだから。

ルチナは俺に名前を呼ばれてからしばらくの間は無言だったがその後すぐに観念したらしく本当のことを話してくれる。その内容はとても信じられないものではあった。

俺は彼女が自分と同年代の外見をしているルチアだということが判明したため非常に驚くこととなった。そしてそれと同時に俺は今まで彼女がルッチと名乗っていたことについて納得がいく部分もあったのである。それは、彼女の姿を見る限り俺の記憶の中のルチアよりも幼く見えていたからだ。俺は彼女と出会った時は確か15歳くらいの外見をしていたため、今はもっと成長していて俺よりも年上になっているはずだと思い込んでいた。しかし今改めて見ると明らかに彼女は子供だったのである。そのことに気づいたことで俺は彼女に気を遣うことを忘れてつい普通に話しかけてしまう。そしてそのことを謝罪することにしたのだった。

俺達が会話を始めた時にふと俺は、俺に依頼をして来た時の態度から察するにこの国の王族関係者ではないのかと思い質問したところ、やはり彼女はこの国の姫だったらしい。そしてルチナが王女であることに気づかずに、無神経に話を続けていたことを後悔していたらルッチナは気にもしていないと俺に告げて来る。そして俺達はそのまま話を続けることにした。俺はここで、なぜルチアが俺の目の前にいるのかという理由を考えたが特に何も思いつかなかった。そして俺はルッチが偽名を使っているのはルチアに似ているので、もし正体をバラしてしまった場合、自分が危険な目に会うのを避けるためだと言っていたので一応理解しておくことにした。その後、彼女は、自分がどうしてここに来ているのかについて話し始めてくれた。

その話を要約すると、ルチアはこの国に魔族が侵入して来たという情報を聞き急いで戻って来ていたらしい。そして彼女は俺にドラゴンが出現したという情報を聞いていたためにドラゴンの調査をしに来ていてそのドラゴンに襲われてしまい絶体絶命のピンチを迎えてしまう。しかしそこにルッカが現れてルッチに攻撃を仕掛けることに成功する。その後はルッカの一撃によって敵を倒すことに成功したのだがその戦闘でかなりの体力を消費してしまいルチアは意識を失ってしまう。そして目が覚めた時には、この国にワイバーンが出現しているという知らせが飛び込んで来ておりルチアは大急ぎで城に戻ることにしたのだった。ルチアの話を聞き終えると俺達はドラゴン討伐の報酬を受け取りに行った後ギルドから出て行くことにする。

俺が外に出た瞬間に俺達に声をかけてくる者がいた。その者は俺がこの世界で最初に知り合った人でもあり恩人のリシアだったのだ。俺とルチアは、リシアの姿を確認すると思わずお互いに抱き合っていた。リシアも突然現れた二人に対して少し戸惑っていたものの事情を話すと、一緒に食事をすることになり近くの食堂に向かうことになったのだった。ちなみにその店は、ルチナが行きつけにしている店だということでお勧めされるままにそのお店の料理を食べることに決めるのだった。

そして、注文を終えるとすぐにルッチは、俺のことをずっと前から知っていたような素振りを見せるようになり、さらにはその容姿まで似すぎていることに対して驚きを隠せない様子を見せていた。そしてルチアにルッチが俺に会ってみたいと言い出したので、俺はルッチが俺のことを知っていた理由について聞くために彼女とルチアを向かい合わせる。しかしルッチはルチアから俺に何か聞かれたくないことがあるのかもしれないと言われてしまったので俺は、これ以上ルチアに問い詰めることは出来なかった。そして食事を終えて俺達は解散することになったのだが俺はその別れ際に、俺達の家に来るように伝えたのだ。するとルチアは俺の家に行くことを決めたようで俺の家に遊びにくるという話になっていた。そして俺はルチアから依頼をしたいと言われていたためその話を聞くためにあることを思いついたのである。

俺とルチアが家に到着するとそのルチアは目を丸くしながら驚いた表情をしていた。その理由は俺がルッチの分のベットを用意して寝かせようとしたからだ。そして俺はそのルッチが実はルチアであることを確信していた。なぜならルッチも俺と同じく転生者である可能性があるからである。それにルチナとして生活していたことからも間違いない。俺の場合は前世の記憶があったわけだが、その可能性の方が高いのではないかと思った。そう考えた理由としては、ルッチの行動を見てみるとまるでルッチを演じているかのような行動を取っているのである。しかしそんな俺の予想が当たっているかどうかは分からなかった。ルチアは、俺が用意してあげたベッドを見ると驚きをあらわにして喜んでいた。そのことからこの国でもこの家にベットがあること自体が驚きなようだ。そしてその喜びが落ち着いた後に、ようやく本題に入ることになる。

「私は、ルチアといいます。私の依頼はルッカさんにしかできないと思って依頼をしたんです。私が依頼をする相手を探していた時にこの国でルッカさんのことが話題になっていましてそれで、この国に来ていたんです。そこで偶然にもルッチの偽物の噂を聞いてこの国の姫だと知られないようにルッチのフリをしながらルッカを探していて、その途中でワイバーンに襲われたんですよ。その時に私はもう駄目だと諦めていましたけどその時にルッカさんに助けてもらえたことで助かったのです。そして私はこの国が安全になるまでルッチでいる必要があるため冒険者として依頼を受けていたのでした」そう言うと一呼吸入れてからルッチが続けて言葉を発し始める。

「私のことを助けてくれて本当にありがとうございました。そして私は貴方に命を助けられたことで、どうしても貴方の力を借りなければならないと思ったので、お願いです。この国を守るために私と共に戦ってくれませんか?」

俺は、ルッチからこの国の平和を守ってほしいと言われているが俺は正直なところ、まだ自分の力を試すことが出来ていない。だからルッチと一緒に戦うにしても実力不足なので俺は迷ってしまったのだ。そこで、俺にはルッチの申し出を受けることが出来ないことを伝える。そしてその代わりに俺は自分がこの世界にやって来た原因を知っている人物の所に連れて行ってあげようと提案することにした。その人物はルチアと同じ名を持つ人物であり、そして俺が知っている限りではかなり優秀な女性なのだ。

俺とルチアは早速ルッチの住んでいる城に向かった。

そして城に辿り着くと門番の兵士に止められるが、事前に話を通していたルチアが、ルッチだと証明するために身分証を提示していたのである。そして無事に城内に入ることを許可された俺は、ルチアに連れられて城のとある場所に向かう。そしてその場所では俺の師匠にあたる女性が仕事をしているのを見かける。そして彼女はこちらの視線に気づくと俺の方に向かって近づいて来た。

そして俺はその女性にいきなり殴られてしまう。なぜ彼女が俺に殴りかかってきたのかは分からないのだが、どうやら彼女は俺の顔を覚えていてくれたようでありそのせいなのだろうと思う。それからしばらく会話した後、俺と彼女は仕事の邪魔にならないように別の場所に移動してから俺達はルチアから依頼について詳しく話をしてもらう。その依頼とは、魔族から人間族の住む領域を守ることであるということと俺と同じような人間が他にも存在するかもしれないから調査してほしいとのことであった。そしてルチアの話が終わると俺は、この世界のどこかに転生してきたと思われるルチアのことを考えると彼女を連れてこの世界に来たもう一人の俺という人物に会いに行ってみたくなったのである。しかし俺は、すぐに動くことはできなかったので、まずは明日のドラゴン討伐の準備を始めることにしたのであった。

俺がルチアの手伝いを始めて3日が経とうとしていた。その間も俺達はドラゴン退治のための装備を整える為にいろいろと動いていたが結局良い武器を作るための素材を入手することが出来なかった。俺はそのことを後悔しながらも今日は休みにしようと思っている。そしてその前に一度街に出て買い出しを行うことにする。もちろんそのことはルチアに伝えておいた。ルチアはなぜかとても喜んでいて、俺を買い物に誘ってきたが残念ながら今回は俺は用事があって出かけることができないのである。しかし俺に気を使ってくれたのか彼女は、俺のために料理を作ってくれると言って台所へ向かっていったのだった。俺はそのルチアを見送り、その後俺一人で部屋を出ようとすると誰かに肩を叩かれたので、俺は後ろを振り返るとそこにはリシアの姿があった。そして俺はなぜ彼女がここに居るのか尋ねる。すると彼女は少しだけ顔を赤く染めると恥ずかしそうに俺の部屋を訪ねた理由を伝えてくる。そして俺は、リシアがルチアのことを訪ねて来ていることを教えてもらいルッチの正体がバレていることを察する。そのことについて俺は何も言わずに黙っていた。そしてリシアが俺にルチアがなぜ城を出て行ったのか尋ねて来たが俺もよくは知らなかったのだ。俺はリシアが帰った後で、すぐに外に向かいドラゴンが出現するとされる場所に出発する。そしてドラゴンの出現地点に到着すると、そこには既に先客がいた。そしてそこに居たのはなんと俺達が最初にこの異世界にやってきた時に一緒にこの世界に来てしまったクラスメイト達の一人だった。

俺は突然の再会に驚いてしまうが、その男子は突然のことに動揺していた様子だった。そのためとりあえず俺はその生徒に話し掛けることにしたのである。その生徒の名前は高橋大樹という男性だった。彼は、突然現れた俺を怪しむような目で見つめていたが、ルチアとルッチについて聞くと驚きをあらわにしたのである。どうやら高橋は二人のことを知っておりしかも一緒に行動していたこともあるそうだ。

しかしその時の彼らは、この世界を自分達の世界に似せようと行動していたらしい。そしてその作戦の一つとして、ルチアが王女に化けることでルッチは正体を明かさないようにするという計画を立てたのだという。しかしそれは失敗に終わり、二人は別々の行動をするようになったとのことだ。それを聞いて俺は納得する。なぜなら彼らがこの国に侵入していた時に見たのはその作戦を失敗した後のルチアとルッチの姿だということになるからだったのだ。その後高橋は自分のせいで二人に苦労を掛けてしまったと俺に対して謝罪をしてくるが俺は気にしていなかった。なぜなら二人が幸せそうな顔を浮かべていたからである。だからむしろ俺は感謝を伝えた。そしてこれから二人でルッチを探す旅をするのだと言い始めたのだ。そこで俺は、もしかするとその探し人こそがルッチではないのかと思い始めていた。

そこで、その男のことをもう少し聞き出すとどうやら彼も転生者で俺達と同じく前世の記憶が残っている存在のようだ。しかし俺と違ってその男は、俺達とは違って、元いた世界で死んでしまいこの異界で生き返ったというわけではないようなのである。そこで、俺は彼が前世で生きていた場所とこの世界に飛ばされてきた時期を確認すると俺と同じ時代で俺が高校三年生の年に転移させられていたことが分かり俺はさらに驚いた。しかしよく考えてみれば確かにこの男がこの世界にいるということはその可能性が高いと俺は思い始める。俺は彼にそのことを告げるとその反応はやはりそうで俺と同じように、突然異世界に飛ばされてしまいこの世界に来ることが出来たのだという。その言葉を聞いて俺は心から喜んだ。だって俺以外の仲間を見つけたことになるから。そして、彼と話が終わると同時に空から轟音が鳴り響き始める。

俺は咄嵯に剣を抜き取り戦闘体勢に入り、その音の鳴る方向に意識を集中させる。そして次第に音は大きくなっていくとその物体は次第に姿をはっきりとさせていったので、その姿を確認してみるとそれは大きな赤いドラゴンだったのだ。その光景に俺だけではなくその場にいた全員も驚きを隠せないようだったのである。だが、そんな中で一番最初に動き始めたのは、俺がドラゴンの姿を視認した時には既に走り始めていて、巨大なドラゴンに向かって一直線に向かっていた。そんなことをすれば確実に殺されると皆が思っているだろうが、俺は自分の命を捨てる覚悟を持って走っていたのである。俺はそのドラゴンの足に目がけて、剣を振り下ろすがその攻撃を見事にかわされてしまう。しかし攻撃はまだ終わらない。俺の振り下ろした刃は地面を大きく切り裂いていた。俺はその斬撃によって生み出された亀裂を利用してジャンプしてドラゴンの顔面を思いっきり蹴飛ばしてから地面に着地していたのである。俺がやったことは、ただの攻撃の威力を高める為だけにこの場では無意味なことだったかもしれないが、少しでも時間を稼ぐことが出来ればそれでいいと考えていたからだ。

そこでドラゴンが起き上がりこちらに向かってきていたのですぐにその場から離れるとさっきまでいた場所は、ブレスにより大きく破壊されて跡形もなくなってしまったのだ。そして再びこちらに突進をして来る。そして今度は俺を狙って向かってくる。

その勢いのまま、噛みつきをしてくるがそれを間一髪のところで回避することに成功したのである。そしてすれ違いざまに首筋に斬りかかると上手く皮膚を切ることに成功する。それによって傷口を深くさせることには成功する。

俺の狙い通りにいけばこのまま倒すこともできると一瞬期待したが、その期待はすぐに裏切られることになってしまった。というのも俺はすぐに逃げて距離を取ろうと考えたのだがドラゴンの翼を広げ空中に逃げてしまう。それに対して、俺には逃げる手段がなかったために、そのまま立ち止まってしまうしかなかった。

俺はこの窮地を脱するため何か打開策を考えなければならなかった。俺は必死になって考えていたがその時間は残されていなかったのである。なぜなら相手が攻撃を仕掛けてくるのは、俺が次の動作に移ろうとした瞬間だったために完全にタイミングがずれて避けることが出来ないと分かったのだ。その事実を理解しても俺は、諦めずに立ち向かうことを決意すると、俺に向けてドラゴンの爪による攻撃が襲いかかって来た。その一撃は避けきれないと判断し俺は防御に専念することを選択する。

その結果として何とかその攻撃を受け止めることに成功していた。だけど俺は吹き飛ばされてしまったのでかなりピンチな状態である。それでもここで倒れるわけにはいかないと思った。だから俺は再び立ち上がったのである。そして俺が再び立ち上がる姿を見ていたクラスメイト達は応援をしてくれていた。そしてその声援を受けた俺は一気に駆け出し、相手の懐に飛び込みながら、その腹に渾身の蹴りを打ち込んだ。俺が放った全力のキックを食らったドラゴンの巨体は数メートル後方に吹っ飛んでいくと倒れて動かないまま動かなくなったのである。どうやら倒せたようだった。俺はかなりギリギリの勝負をしたことで、全身の痛みに耐え切れなくなる。

そしてついに限界が来たので、俺は気絶してしまうことになった。最後に視界に入ってきたのはこの世界に来てから出会った人々だった気がするがそれが誰なのか確認することもできなかったのであった。そして俺が気を失う寸前に俺の耳には、どこからともなく聞こえてきた美しい音色が響いていた。俺はこの音を知っていた。それは俺がこの世界で初めて聞いた曲でありとても落ち着くことができる曲でとても安心できるものであった。俺はその音色に聞き惚れるようにゆっくりと意識を失っていくのであった。

俺が目を覚ますと知らない部屋に寝かせられており、そこには一人の美少女がいた。その女の子は椅子に座っていて俺が目覚めたことに気づくと微笑みかけてくれる。

「大丈夫? どこか痛むところはない?」

その問いかけに俺は素直に答える。

「ありがとう。でも俺はもう元気だから気にしないでくれ」

「わかった。それなら良かった。それとごめんなさいね、あなたが気を失った後、あの子が私をここまで連れてきてくれたのよ。それで今は買い出しに出かけてるところだと思うわ。あとこれはあなたの荷物だよ。中身を勝手に開けるのはどうかと思うけど一応見させてもらって、武器や薬などの道具を確認したんだけど全部そろってたみたいで安心していた。それでこの武器を使ってこれから戦っていくのよね?」

彼女は笑顔を俺に見せてそう聞いてきたので俺は正直に答えることにした。俺はルッチのことについて彼女に伝えると彼女は、驚いているような様子を見せるが、すぐに表情を戻し真剣な眼差しになる。

そしてしばらく無言になると俺の方を見て話しかけてくる。

「もしかしたらその子は本当にルチアかもしれないわ。それだといろいろ辻妻もあうし、その可能性が高いかもしれないわね。それにしてもまさかこんなにも簡単に見つかるなんて。これってもしかしたら私のせいかな。だってあの場で一番最初に動けたのは間違いなく私だけだったもの。もし仮に、その少女の方が本当のルッチで彼が嘘の情報を言っただけであれば私がここにいない可能性もあったはず。なのにこうして私は生きている。きっとルッチ君もその子も優しいんだと思う。だからこそあんな危険なドラゴンと戦ってまでも、自分の命を危険にさらすことになっても守ってくれたんだと思うの。でも、なんでそのルチアっていう子はルッチ君のことを好きになったの? どうしてルッチ君のことをそこまでして庇う必要があったのかしら。だって彼はそのルチアちゃんが自分のせいで死んだことを後悔していたし、そのことが関係しているんじゃないかなって思うのよね。ルッチ君は優しい人だもん。その人の力になろうとしたんでしょう。だから、そのルチアちゃんもその優しさに触れてルッチ君の事を好きになってしまったんじゃないのかしら。まぁあくまでも予想でしかないけれど、なんにせよ、無事に再会できたことを喜んであげましょう。そうじゃなかったらそのルチアちゃんも浮かばれないはずだし。でもこれからどうするのかが問題かもね。まずはルチアに話をしないと始まらないとは思う。もしかして二人は、一緒に旅をするのかしらとか思ったりしてたけど、それは少し難しめのかもしれないね。ルチアは記憶を失くしてしまった可能性があるのだし。そうなるとやっぱり私達のことも忘れてしまっているかもしれないし、そうなったら、また最初からやり直しになってしまう可能性もあるのかも。そのあたりも含めて一度話してみた方がいいのかもしれない。でもそれは明日でもいいかもしれない。今は安静にして体を休めた方が良いと思えるの。

だからとりあえず今日はこのままお家に帰って、ゆっくり休むことを進めるわ。今の状態のまま、街を歩いたら確実に誰かに襲われると思うのよ。そんな状態だと戦いの時に邪魔になって足を引っ張っちゃうでしょ?だから、その怪我が回復するまでは大人しくしておくのがいいと思う。その体の状態でドラゴンと戦うことは自殺行為に近いの。今の状態のあなたが相手を倒すことができたのはあくまで、相手の油断や隙が生み出した奇跡のようなものなの。それをもう一度再現しろと言われても不可能だと思う。それに、あなたが死ねば元の世界にいる家族や仲間達が悲しんでしまうのよ。

あなたも本当はわかっているのでしょ? だからここは言うことを聞き入れて明日まで我慢したほうが賢い選択なんだからさ。その体の傷を早く治す為にもしっかりと休息をとって回復に専念しておきなさい。話はそれだけよ。それじゃ私はこれで行くね。まだ仕事が残っているの。

それから部屋から出て行ってしまったのである。俺は彼女が去って行った後に言われたことを考えて、やはり戦うのをやめて大人しくしている方が正解だろうという結論に至り俺は仕方なく帰ることにする。そして、宿屋に戻ったのだがなぜかみんなが俺の心配をしてきてくれてかなり申し訳なくなってしまったのだがなんとか平常心を保とうとしていた。俺はベッドに入るとすぐさま深い眠りにつくことが出来たのである。俺は夢の中で、俺を助けにドラゴンに向かっていくルチアの姿を見ていたのだ。

目が覚めると既に朝になっていたので俺が起きた時には誰もいなかったのだが俺は一人で考える時間が必要だと思ったので外に出かけることにした。ちなみに俺が寝ている間はリリスに面倒を見てもらったそうだ。俺はそんな彼女に一言感謝の言葉を伝えたかったのだが結局は言えなかった。だがそれでも彼女は満足そうだったので、俺がわざわざ言葉をかける必要はないだろうとその時に思ったのだった。なので俺は外に出かけたのだ。

そして俺はギルドに行きドラゴンについて情報を集めようとおもっていた。その前に、この街を散策しながら買い物をしていた。すると俺が探し求めていた物を発見したのだ。俺の視線の先にはとても可愛らしいぬいぐるみを見つけたのである。しかもその商品の値札を見るととても安く売られていたので思わず衝動的に買ってしまいそうになる。だけどよく見ると値札には【在庫残りわずか!!】と書かれてあったのだ。そして俺はすぐに行動に移ることにした。その店の前まで行ってみる。だけどそこにはもう売り切れていて入ることができない状態だったのである。そこで俺は、別の店に行こうと思い、その場から移動を開始するのであった。その途中に見かけた店で見つけたアクセサリーに目を奪われるが、その値段がそこそこ高かったので諦めることにした。だがどうしてもその装飾品を見てしまう俺。だけどもここで誘惑に乗ってしまえば大変なことになってしまいそうなので俺は必死になって自分に言い聞かせていたのである。俺はどうにか理性を保ちつつその店から離れたのだった。そして俺が歩いていると後ろから急に腕を捕まれてしまう。その事に驚いて俺は咄嵯に剣に手をかけていたがその手が何者かによって拘束されてしまった。

「えっ!?」

と声を出した瞬間、俺の背後にいた人物が口を開く。

俺はその人物の方に顔を向けてみるとそこにいたのは俺の腕を掴んでいたルチアであったのだ。そして俺達はお互いに見つめ合ったまま固まってしまった。なぜならば俺が会いにいこうと思っていた相手が向こう側から現れてくれたからだ。俺は驚きを隠せない状態でいたのである。そしてルッチも俺と同じように戸惑った表情を見せながら俺に尋ねてきた。

『お前がどうしてこんなところに?』

俺は、どうしてこんな場所に俺が現れたのかという問いに対してルッチは、ルッチのことが好きなルッチのそっくりさんがいるから会おうと思っ来たんだと説明したのであった。俺の説明を聞いて、何か考え込んでいるような素振りを見せると彼は俺に提案してくる。

「その件で話がある。少し時間はあるか?」

俺はその申し出を断る理由もなくすぐに了承したのである。そして俺たちは歩き出したのだった。俺はどこに連れていかれるのかわからないままにただひたすらに歩いていくとそこは街の中央にある公園だった。

ルチアは俺を連れて、その中を進んでいくと俺の手を掴み、俺と向かい合うと俺に問いかけてきた。

「単刀直入に聞くが、この世界に召喚されてから今までの期間の間にこの世界のことや他のクラスメイトと接触があったかどうかを教えてほしい。この世界に来た初日にあったドラゴンについては、あの場にいた者達の記憶からは消されてしまって、残っている記憶といえば、ドラゴンに襲われていたことだけだ。だからお前が覚えている限りの事を知りたい」

「わかった。なら話すけど、まず最初にこの世界に来てしまった理由は、神様と呼ばれる人に突然呼び出さたことに原因があり、その神様が元の世界に戻すことは不可能だという事を伝えてきて、その代わりに、異世界で生活してもらうことになった。

その後はこの国、いや違う。こっちに来てからずっと違和感を抱いていたんだけどそれがようやくわかったんだ。俺が元々いた場所では、地球っていう名前の星があってそことは違う場所にあるのがここの世界で、俺はその地球に存在していた人間だと言うことがわかったんだ」

俺はルチアにこれまでの出来事を正直に伝えたのだった。そして俺は、俺自身が感じていたことをルチアに伝えてみる。そして俺の話を真剣な眼差しをしながらルチアは聞いてくれたのだった。ルチアの真剣な顔つきをみて本当に俺の事を心配してくれているような気がしてならなかった。だっていつもルチアは俺の側にいて笑顔を常に絶やすことがなかったからである。そう思うと俺はなんだか胸の奥の方が締め付けられる感覚を覚えたのである。だから俺は自然と涙を流すことになってしまった。だって俺はこの子が好きになってしまったのだから。こんなに心優しい子がこの世に存在しているのかと思うほど彼女は優しかったのだ。

そのルチアが今こうして俺の目の前に現れて目の前にいるだけでも嬉しいというのにも関わらず彼女は俺のために涙を流してくれるなんて、そんなの幸せすぎるだろう? 俺はこんな素敵な女の子に出逢えたことを神に感謝しなければならない。

ルチアのおかげで今まで頑張れて来た。

ルチアがいなければここまでやってこれなかった。

だから俺は彼女への恩返しをする為にこれからも頑張っていこうと思うのであった。

それからしばらくすると、ルチアは泣きやんで、そしてルッチも落ち着いたようで二人して同時に深呼吸を始める。そうして、気持ちを切り替えてから、改めてルチアが質問をしてきた。

その答えを聞くことでこれからの事を考えていかなければならない。だから今は少しでも多くの情報を得ておきたかったのである。そして彼は、俺の話を全て聞き終えると、顎に手を置きながら考えている様子を見せていたのでとりあえず俺の方も、色々と気になったことが沢山あったのでそれを彼に質問することにした。

俺はまず、この場所に来る前、宿屋の食堂に行っていた時、なぜルチアはこの場所に居たのか、その辺りの事情を聞いた。だがルチアは、ルチア自身にもわからなかったようだ。なのでその点についても謎が残るがとりあえず、俺に話したい事があるというので、彼の話を聞いた方がいいかもしれないと思い俺は黙って話に耳を傾けたのである。

それから、ルチアは自分の過去を語り始めた。その話は信じられない内容ばかりだった。だが、それこそが事実だとしたら辻妻が合うような部分もあるように思える。でもそれはあまりにも突拍子過ぎていて信じることができないような事柄ばかりで俺は、ルチアの言うことをすべて否定していたのだった。だがそれをするのと同時に俺は、彼女の言葉には嘘を感じられなかったのも本当である。そして何よりも彼女が、俺の瞳を見て訴えかけてきているかのような錯覚さえ感じる。そう思っているとなんだか妙な恥ずかしさを覚える俺だったが、今はそんなことを考えるべきではないと必死に言い聞かせていた。そして話が一通り終わったところで、俺が考えていたことをルチアに尋ねたのである。すると、どうすればいいのか困り果てて何も思いつかなかったそうだ。だがそこで彼女はあることに気づく。もしかしたらこの世界には存在しない技術ならば可能ではないかとそう思ったらしい。それこそ、ゲームのような魔法を使って転移することなども可能じゃないかとそう考えたのだ。

そしてルチアは実際に試してみたら出来たのだという。その方法というのがなんともまぁぶっ飛んだ話なのだが簡単に言えば空間転移という魔法の発動に成功したのだった。だけどそれでどこに行けるかはランダムで決まるらしい。つまりどういうことなのかといえば俺もその場所に行って確かめる必要があるということだ。そして俺もそのことについて興味がわいたのだ。だがそれと同時に危険なことに足を突っ込みかけているのではないかと思い始めてきたのである。なので俺はその話を一旦保留にして欲しいとお願いしたのだ。だがルチアもこのままでは駄目だと考えていたらしく俺が止めるのも聞かずにその魔法を発動させてしまう。その結果がこちらである。

そして俺は自分の体が徐々に薄くなっていくのを確認していた。そういえば以前、この世界で死んだときもこの光景を見た気がするが今回はさらにひどくなってるなと思っているとその景色はだんだん暗くなり始める。そして意識が途絶えていく中でルチアが心配そうな表情を浮かべていたのだけは俺の視界には映っていたのだ。

目を覚ますとそこは、先程いた宿屋の一室ではないどこか別の場所に移動しているみたいだった。しかも周りには、見たこともない風景が広がっている。その事からおそらく俺は異世界へとやってきたのだろうと思いながら立ち上がる。そこで初めて、自分がどのような状況に置かれていたかを俺は把握し始めたのである。なぜならば今の自分は鎧に身を包んでいるからだった。俺は、その事に戸惑いながらもとにかく現状の確認をしなければいけないとそう思っていた時に背後で何か物音が聞こえたので反射的に後ろを振り返るとそこには巨大な魔物が存在していたのである。

その姿はまさしく異形と呼ぶに相応しいものだった。

ドラゴンによく似ているがそのドラゴンにしてはかなり小さく感じる。そして翼がない。その代わりに全身に鱗が生えておりまるで鎧を着ているかのように見える姿であった。

そいつの姿をみていた俺は思わず声を上げてしまう。

「なんだこいつかっこいいぞ」

ついそんな風に口走ってしまった。なぜならば見た目がかなり気に入ったからだ。このドラゴンがもし俺の仲間になってくれるのであればとても頼もしい仲間になるのは間違いないだろう。俺はそう思い声をかけることにする。

『俺はお前と友達になりたい!!』

『私の名前はドラコだ』

その瞬間俺はその言葉が俺だけに聴こえていることを悟った。だから俺は続けて会話をしようとしたのである。

「なあ俺はシンクっていう名前で、よろしく頼む」

そう挨拶をした後に、このドラコはどうしてここにいるのか尋ねてみると、彼は、突然この世界に現れ、そして暴れ回ろうとしたところを俺の仲間たちに退治され、命からがら逃げだしてきましたと言っていた。

『俺も最初はお前達人間と同じように他の生物を殺して喰おうとしていたんだ。でもあいつらは異常ですぐに反撃されて俺は死にかけてしまいその途中で俺は力を失ってこの様になってしまったんだ。俺はこの世界の住人からすれば異質そのもので受け入れられることは決してなかった。そして奴らにやられた傷は治すことはできなかったんだ。この体を維持するだけでもやっとのことで、回復をしようとすると途端に俺の存在自体が消滅してしまうからそれもできないんだ。それにしてもこんなところに俺を転移させて、一体何をさせたいのかわからないな』

俺とこのドラゴンとの間に絆のようなものを感じた俺はそのドラゴンが寂しそうにしているように見えた。だから俺はこのドラゴンを助けたくなった。だがどうやってこの世界に現れたドラゴンを助ければいいかが俺には全くわからなかった。俺はこの世界の事を知らない。だからこの世界に生息している生物のことも詳しくは分からない。それでもなんとかしようと俺は考え続けた。

すると俺の中にふとあることが閃く。そしてそれを確かめるために俺は再び話しかけた。

『ドラゴさんちょっと聞いてもいいか?』

その問いに対して彼は不思議そうな顔をするだけで返事をしてくれない。

『だからドラさんは俺のことを助けてくれたのかな?俺ならこの世界に詳しくないからね。それにその体を修復することもできるかもしれない。少しの間じっとしててくれないか?』

俺はその提案をしたのだった。そして俺の頭の中ではこの世界でならこのドラさんの力を引き出すことが可能かもしれないという考えに至ったのだ。その可能性について考える限りはそうしないといけなさそうに思える。だから俺は行動に移す。

そして俺の手が淡白く光り輝いて俺の目の前にいたドラさんの体が発光を始めたのである。その現象はしばらく続いた後に、光が収束していく。そして俺はその様子を見守っていると、どうやら成功できたみたいだと俺はそう判断した。なぜならば彼の体に変化が訪れたからだ。ドラゴンの体に人間の顔が埋め込まれている感じで、そして背中からは羽が生えている。その姿は天使と悪魔が融合したような印象を受けるものだった。俺はそんな彼を見ながらこの子の名前を考えている最中である。この子は俺が助け出したドラゴンなので俺に名前を授けて欲しいと言ってきているのだ。

そして俺はこの子に名前をつけてあげた。すると俺の頭に新たな知識が入って来るのを感じる。《名前》 それは魂の名と呼ばれるもので、名付け親となった者の魂と結びつけられるものなのだそうだ。俺がつけた名前は、ドランという名前で、これはドイツ語で龍を意味する言葉なのだそうだ。この名前の意味としては、その通りドラゴンという存在だからぴったりだと思って決めたのだ。そして彼は、自分の新しい名を噛みしめるようにしながら俺に向かって何度も礼を言って来た。それから俺は彼に、元の世界に戻ることができるかどうかを聞いてみたのだが残念ながら今は出来ないと言われてしまった。だからこれからのことを考えるためにとりあえずこの場所を離れることになった。

だが移動をするためにもまずは彼の力がどこまであるのかを確認しておきたいと思い、彼に頼み事をしてみることにする。というのも彼がこの世界に来れたのはその力を利用できているからだと思う。だから俺は、彼と手合わせがしてみたかったのである。それでこの世界で戦えるだけの強さがあるのか知りたかったのだ。そう思っての行動だったのだが意外にも快諾してくれた。そしてお互いに戦闘を開始するための場所に移動したのである。ちなみに場所は街から離れた場所で周囲に建物は存在しない。だからこそ戦うのには丁度いい場所であると言えるだろうと思っている間にお互いの距離が縮まり始めていたのだった。そして次の瞬間には俺たちは戦いを始める。その瞬間俺の剣戟によって彼の肉体に衝撃が加えられていったのだ。だがその攻撃にドラさんが悲鳴をあげることはなく逆に楽しげにしていたのだ。そんな光景を見ていると俺の中で何か熱い感情が高まってきたのを感じ始めることになる。それからしばらくして、ようやく勝負が決まった。

それは、俺の勝ちという形で決着がつく。その理由とは単純に俺の体力の方が上回っていたからである。そう思い、俺は彼に、今の気持ちを話し始めた。そうすることでもっと仲良くなりたいと伝えるとなぜか照れ始めた様子を見せたのである。それが妙に初々しく見えてしまうと同時になんだかいいなと思っていた。そしてその後二人で話をすることになったのである。その中で、やはり元の世界に帰りたいという気持ちを持っているようでどうにかならないかと考えていたようだった。だけどそれをするためには俺の力が必要らしくてそのためには俺の協力が必要だと言っているのだった。その申し出を受けてあげると嬉しそうにしてくれて本当にかわいいなと思っているとそのタイミングでいきなりキスをされてしまったのだ。なぜそんなことをされたのか分からずに混乱してしまったが、どうやらこれが契約の儀式のような行為らしいということに気づく。つまり俺のことを気に入ったということなのだろうかと思ったのだ。それだと嬉しいと思う。そう思いつつ俺は改めてお友達になろうと言ったのだった。

するとその言葉に同意するように微笑んでくれた。そしてこれからは俺のために頑張ってくれるとも言ってくれたのである。

だがこの子の体はあくまでも借り物なので本来の姿で俺の前に出れないことが悩みだという話をしてくれると俺が解決方法を考え始める。

その方法として思いつくものはあった。この子を本当の姿に戻す方法はいくつかある。一つはあの鉱石を俺が作ることだ。そして二つ目はこの子が本来持っているスキルを使えばできるはずなのだがその肝心の使い方が俺にはまだ分かっていないのである。その二つの方法を俺が試すことも考えていたが、俺一人ではこの子の姿を変えることは難しそうである。なぜならばこの世界にきて間もない俺はこの世界にどんな素材があってどのような手順で作れるのかもわからないのだ。

そこで、俺は鍛冶の知識を身に着けることに決めた。この世界の人間よりも圧倒的にこの世界に詳しいのは俺だろう。だから、その俺がこの世界を旅すればきっといい情報が入ってくるはずであると俺は考えたのだ。そしてドラコと共にその目的を果たすために向かうことにした。この子とは一緒に居ればいるほど愛着がわいてくるからできれば連れて行ってあげたいがこの世界がどれだけ危険なのかまだ俺にはわかっていない。それにこの世界の人間は人族以外を受け入れようとしないみたいだからもしこの子がこの世界で生活をするのが難しいようだとなればこの子を助けることは難しくなってくるのだ。

俺の住んでいる街の門ではいつものように兵士が立っていた。この街に入るのには通行証が必要になるみたいだが俺は持っていなかったので、この兵士たちにその通行書を書いてもらいお金を払った後でやっと通ることができたのである。だがその際に、ドラゴが何か反応を示して兵士を睨みつけていたのだ。もしかしたらその事がこの世界の住人にとっては良くないことだったのかもしれないと思いつつも俺は、気を取り直してからこの世界についてドラコに色々と教えてもらったのである。

そして俺はこの街にあるギルドというものを目指すことに決める。そのギルドは冒険者が登録をすることができる場所だ。そこにはたくさんの依頼があり、それにクリアしていくことで経験値を得ることで強くなっていく。またそこで様々な人とのコミュニケーションをとることでもレベルを上げることもできる。

だからこの世界でも生きて行くためにはまずはギルドに所属する必要があるのだと判断した。

それから俺達は、ドラコの転移魔法を使って、目的地まで飛ぶ。その場所は先程までの街中ではなく自然が豊かな場所に存在している巨大な屋敷の中だ。ここは俺達が今いる世界とは別の世界に転移するために使うための特別な施設になっているのである。そうしないと世界間を転移することは無理だからな。俺達の場合は俺の力があればそれが可能となるが、普通はそう簡単にできることではないのである。だからこそ俺はこの場所に来ることができている。そのことに関してはドラさんに感謝をしなければと思っている。

俺がこの世界に来た時もこの転移の術式を利用したのだから。俺と仲間だけがこの世界で活動ができる理由もそのせいなのだからな。その術式は俺しか知らないし他の人に教えることはできないが、その仕組みについては説明しておく。その術式の効果で世界間を繋ぐ扉のようなものが存在している。それは俺達の世界の言葉で表現をするならば異次元の世界になるわけである。だからこちらの世界の住人は別の世界に行こうとしたら、その異空間を通り抜けなければいけなくなるのでかなり難しいだろう。ただその術式でのみ行き来が可能になっていてそれ以外の手段での侵入はできない。俺の持っている転移能力もそれを利用している。そして俺はこの能力をドラさんに提供したのだ。その方が俺と一緒に行動しやすいからというのと俺の能力がどの程度使えるのかを調べる必要があったのでその協力をしたのであった。そのおかげでこの世界にやってこれたのだからな。

そんな話をしながら俺とドラさんは、目の前の景色を見て驚いていた。目の前には、広大な草原と、森林が広がっていたからだ。こんなにも美しい風景は俺がいた世界では一度も見たことがなかった。俺はその光景をみて心を揺さぶられるほどの美しさを感じることができたのである。俺はしばらくその場で立ち尽くしていると、後ろから声が聞こえて来たのである。

「ご主人様。どうしたの?」とドラが心配したような表情を見せながら尋ねてきてくれた。俺はこの子にそんな顔をさせたくないと心の底から思ってしまったのだ。だからこそ、この子のためだったら何でもしようと思っている自分がいることに気づく。その想いを噛みしめながらも俺達は目的の場所に向けて歩みを進めていったのである。

俺は現在、ある依頼を受けて行動をしている最中である。その仕事とは魔物を倒すというものである。俺は、その仕事をするうえでどうしても避けなければならないことがあった。それは生き物の命を奪うことだ。いくら相手が強いとしても殺生をしなければいけない状況はたくさん存在するだろう。だけど今の俺がやっている行為はそういうものとは違うのである。これは、あくまで自分の意志で行なっているものであってそこに俺の意志が介入していない状況では行えないのである。そしてその仕事というのは、ゴブリンの退治だ。最近、近くの森に住むモンスターの中で力をつけていて村を襲い始めたらしい。そしてその対応をするために討伐クエストの依頼が出されていて俺の手元に渡ってきたのだ。そして、今回のターゲットはその集団のリーダー的存在でもあるゴブリンという個体なのだ。その強さはこの近辺の冒険者たちを何人も葬り去ってきていてかなりの実力者だという。

そして、俺と相棒は、早速その群れを探すために森の中に入っていったのである。するとすぐにその存在を見つけることができたのだ。そして俺は自分の武器を具現化させて戦闘の準備を始める。そうすると相手の方から襲いかかってきたのである。その攻撃をかわすと今度は俺の方から攻撃を仕掛ける。そうすることで相手が怯んだところを一気に叩くというのがこの方法で倒す時の基本的な戦闘方法であるのだが、今回に限っては上手くいくとは限らない。だがやれるだけやってみようと思い攻撃を続けることにした。

俺は戦闘を始める前にあらかじめ自分に強化魔法を施しておくことで身体能力を向上させることができるのだ。その効果は永続的に続くものであり一度かけるだけで何時間も同じ効果があるのだ。さらに魔力を使うというデメリットはあるものの、短時間の強化なのでそこまで気にするほどのことでもないと判断をしている。それともう一つは、武器の力を上昇させるという技も持ち合わせているのである。それによって今回はいつもよりも攻撃が通るはずだ。そして俺はその思いに応えるように剣を振り続けたのだった。そうすることでどんどん敵の数を減らしていくことに成功する。だがそれでもなかなか減らない敵に俺は苦戦していた。

そこで俺には新たな考えを思いつく。このまま戦うよりも俺も強化をしてしまえば良いのだと気づいたのだ。だからその考えを実行する。まずは自分自身を強化する。それから俺はゴブリンリーダーとの一騎打ちを開始する。そしてお互いが全力を出し切っての勝負となったのだ。俺はなんとか相手に勝つことに成功した。だが俺も無傷とはいかなくて体力と魔力を消費しすぎてしまったのである。そんな状態になっていた時に突然ドラが乱入してきたのである。そのタイミングがあまりにも良すぎて驚いた。なぜなら俺の疲労は回復しない状態での戦いだ。なのにドラは元気な状態だったからである。そこで俺はドラがどうやって回復したのかを聞くと、どうやらドラはアイテムボックスというものを持っておりその中にポーションを入れてあるのだそうだ。それを飲めば疲れは一瞬にして回復するらしい。俺はその言葉を聞いて、この世界に召喚されたばかりだというのになんでそのようなものが使えるのだろうと疑問を抱いたのであった。もしかしたらそのアイテムボックスはドラがこの世界に元々住んでいた時から持っていたものなのかとも思ったがそのあたりはあまり突っ込まない方がいいかなと俺は思い何も聞かないことにする。

その後俺は改めて依頼を完了したことを報告してから家に帰るのであった。するとドラが嬉しそうな顔で出迎えてくれると俺のことを抱きしめてきたのである。そして、そのままお風呂に入ることを勧められて一緒に入ったのだ。ドラは自分の身体も洗ってもらって満足そうな顔をしていた。その後ドラの髪にシャンプーをつけようとしたら拒否されてしまって俺はショックを受けた。だがそこでドラが自分で体を洗い終わったあとでなら一緒に入ってもいいと言ってくれたので俺は大喜びしたのだった。そして俺が髪を乾かした後にドラの綺麗な髪の毛を整えているうちにいつの間にかいびきを立てて眠ってしまっていたのである。だから俺はそっとドラをベットの中に移動させた後に俺自身も寝ることにした。その日はドラが添い寝してくれることになっていたのに俺は夢の世界へ旅立ってしまっていたのだ。

次の日の朝にはドラといつものように食事を摂った。その際に、昨日のことがよほど印象的だったらしく、俺がドラのために作った武器の力が凄いとずっと言ってくれていたのだ。そんな会話をしながら食事をとっているといきなり部屋の外からノックが聞こえてくる。もしかしたら何かしらの問題が発生したのかもしれないと思ったので急いで外に出てみると、俺達が暮らしている家に来客があったみたいで、ドラは、その人を案内するように家の中に入れてあげようとしていたので、俺は止めた。もしかしたら俺達をここに招待したいのかもしれないと思って、その人が俺達に危害を加えようとしなくても万が一があるから、俺が出ていくことにした。

そしてその人物を見た時俺は驚くことになる。そこには、先程俺の住んでいる街のギルドにいたあの可愛くて優しい少女が立っていたのである。その子は俺の姿を見るなり、俺に駆け寄ってきてくれていた。その姿を見ると俺はとても安心することができていたのである。俺は彼女の名前をまだ知らないが彼女は俺の名前を知っており俺に会うためにこの世界までわざわざやって来たのだというのである。

それについて詳しく聞くと、この世界で俺は英雄のような存在として崇められているようだ。この世界には、魔王が存在しておりその脅威によって苦しめられているというのである。俺は、この世界では魔王とは何の関係もない一般人であり勇者と呼ばれるような特別な能力を持った人間でもなんでもない。それにただの会社員だったわけだから俺に対してその称号はふさわしくないと俺は思う。それにしてもこの子の名前を早く知りたいと思いながらも今は依頼を解決したばかりでゆっくりする暇もなく、その依頼の報告をしなければならないためまた今度話をすることにした。

その日の夜に俺は再びドラと2人で街に戻ることにした。今回はドラも連れていくことにしたのであるが、その道中でモンスターに遭遇することはなかった。そのため俺は少し拍子抜けしてしまう。普通はもっと襲われてもおかしくはないと思っていたからだ。そしてギルドに到着するが俺達の姿を見て皆は驚いている。なぜかと言うとその女の子を連れていたからなのである。それで俺は受付のところに行って今回の討伐クエストの結果を報告した。そうすると報酬がもらえると聞いて俺は嬉しかった。ただそれだけじゃなくこの子を預かってほしいとも言われたのである。俺としては断る理由は特になかったため引き受けることに決めた。その女の子の名前はミリアという子で俺のところに預けてほしいとのことだ。この子がなぜこんな行動に出たのかわからないがきっと理由があってのことだと思っている。その辺りに関してはあまり追及をしないように心掛けているのだ。

俺は、ミレアの頼みを快諾して、それから俺の家に連れて行く。その道中ではいろいろな話をしていたのだがその中で俺の家族構成についても説明しておくことにしている。まずは俺と母さんとの親子二人暮らしだということを説明すると、その反応を示さずに、ただ黙々と俺の言葉に耳を傾けてくれていてとても助かった。やはり異世界から来たなんていうのを信じてもらうためには俺の持っている力についても説明したほうがいいかなと思う。

そこで俺はこの世界の武器や魔法とは全く違った能力を持っているということを話すとミリアの表情が変わった。もしかすると興味を持ってしまったのではないかと心配したがそうではなかったようである。この世界の武器というのは、自分の魔力を使って戦うものであるために自分の得意属性のものでないと戦うことが難しくなって、戦いづらいらしいのだ。

その話を聞いて俺は納得できた。そう考えるとある意味で俺の能力というは反則的な性能を誇っているからなのだろうと思ったからだ。ちなみに魔法については、魔力があれば使うことができるのであるが魔力を消費する代わりに誰でも使うことが可能になっている。だがその代わり威力が低い。魔法も魔力を消費して放つものでありその発動に必要なのは呪文詠唱なのだ。しかも1回使い切ってしまうと次に魔力を回復させるためにはかなりの時間が必要になってしまうのだ。そのために魔法使いはあまり人気がない職業とされているらしい。その点俺はどんな攻撃でも無限に使うことが出来るのだからチートだと自分でも思ってしまっているのである。

そのあたりの説明を終えた頃に俺はようやく俺の家に到着したのである。すると家の前に俺の父さんがいた。父さんにミシアのことを紹介したらすぐに仲良くなれたみたいでよかった。そこでドラが俺の親父の相手をしてくれることになった。ドラは父さんの扱いがうまいのかすぐに懐いてしまってまるで実の父親のように慕っている様子だ。その様子を見ているだけで俺は嬉しくなったのである。そういえば俺は、自分の家族にもこの世界のことをある程度説明する必要がありそうだと感じてしまった。俺とミリアがこの世界で初めて出会った相手ということもあるからね。

そう考えていると俺達は俺の部屋に入る。そこは今までに俺が住んでいた家と比べると狭いが普通のアパートよりは大きいというぐらいの建物で、部屋は5つもあるのだ。そのことについてミレナは驚きを隠せないでいたので俺の方で説明をする。ここは俺の母さんの知り合いが所有している建物なので無料で貸してもらうことが出来たのだと説明したら安心してくれているみたいである。俺は、ミレアナの方を向いてこれからのことを話し合ってみることにした。俺はこのままここで暮らすことになるかもしれないけどどうだろうか?その答えを待っていたのだけどなかなか返事を聞かせてくれない。どうしたのかと思っていると、ミレアが涙ぐんでしまったのだ。俺は慌てて彼女に謝るがどうして泣いてしまったのか教えてくれたのである。

それは俺のことを好きになってしまったということを言われた。もちろん嬉しいのだが急に告白されてしまうと動揺しまくってしまったのだ。だから俺の気持ちを伝えると彼女は笑顔を見せてくれる。そしてしばらく俺と彼女の間に気まずい空気が流れてしまうがどうにかお互いに打ち解けることができた。

それから俺は今日は泊まっていくようにと勧める。なぜなら夜になると危ないからという理由だ。そこで俺とドラと彼女の3人で過ごしているうちに俺と彼女がいつのまにか眠りについてしまう。その途中で俺が起きてしまったのはなんと隣にいるドラがいなかったからであった。ドラを探しているうちに俺はある物を発見する。

その正体はこの家の地下室への入り口であった。俺はその階段がどこに繋がっているのかを調べるべくその地下に入ってみる。そこにはたくさんの本があったのだ。その本を一冊取り出して確認したところどうやらこれは冒険の記録を記したもののようだった。さらに奥に進むと剣が落ちていたのでそれを拾ってみるとかなり良質な素材で作られたものであった。

俺はその剣を手に取って調べるとどうやら魔導具のようなものであることがわかった。もしかしたらこれならばドラゴンを倒せるかもしれないと思って俺は急いで戻ることにしたのだ。

そしてドラに事情を説明した後にこの武器をドラに装備させることにする。そのあとに俺達2人は、街を出ることにする。そうしないと俺達がこの家にいないことがわかれば俺達が行方不明になってしまっていると思われてしまいそうな予感がしたからである。そのため俺たちはすぐにこの街を出た。そして、俺がドラと一緒に街から離れようとすると、突然空に異変が生じる。それは大きな龍が現れていたのだ。そしてドラはその魔物を見るなり戦闘を開始することにする。俺は援護するために攻撃の準備をしたのだが、俺はその時にある事実に気づいてしまった。この龍は俺が倒したドラゴンよりも数段強いと思えた。そのことからも、俺は、自分がどれほどの力を手に入れたのかを知ることができたのである。俺は、自分の中でこの世界を滅ぼせるほどの力を持つ存在だと思っている。ただ実際にその力を使う機会などないと信じているがそれでもその力の一端を使うことになってしまう。

まず最初に使った能力は【鑑定眼】というスキルであった。このスキルは自分のレベル以下の生物であればなんでも見抜くことのできる優れものなのである。ただし弱点として一度でも視界に入ったことのある存在にしか使用できないことと使用回数に制限があることなどがある。だから相手がどんな能力を使えるかを瞬時に把握することができる便利なスキルなのだ。俺は早速ドラに向かって【炎球弾幕魔法:フレムバレット】を撃ってみる。その魔法を受けたことによって相手の情報がわかるとそこには驚愕するような内容が表示されていたのだった。俺が見たのは名前も能力も全てが表示されている。それがドラではなく俺の脳内に直接伝わってきた。それによればこいつは俺達のことを見逃してくれたので、今は戦わない方がいいのかもしれないと思わされたのだ。それにしてもこのステータスは一体どれくらいなのかがわからない。とりあえず今の俺の力で倒そうと思えるほどではないということは理解できている。俺はそう考えながらも、自分の持っている最強の魔法で応対することにする。この魔法は俺の知る限り最強といってもいい魔法だ。

「神域の雷」

その名前を聞いただけでこの世界の人たちは恐れるのである。ただ威力が大きすぎるために発動までに時間がかかってしまい隙ができるのである。俺はその間になんとか回避行動を取ることに成功した。そのせいでドラにはダメージを与えることはできていないが俺の方は大ダメージを受けてしまったのである。

俺は、その魔法の威力を目の当たりにしてもうこの技は絶対に使わないでおこうと思うと同時に、やはりこの世界ではこの力は使いたくないと改めて思った。それこそ、俺はこの世界に干渉しすぎないために、なるべく他の世界の存在に知られないように行動していこうと思っている。その方が、何かと便利だし俺にとっても都合がいいはずだ。

俺はそう思いながら、自分の体に回復魔法をかけて治療することにした。そうすると俺の体の傷は完全に治る。そしてドラも俺と同じ魔法を使ったようで怪我は完治していたので俺達はすぐにここから離れることにした。俺が最後に後ろを向くとあのドラゴンの様子がおかしい。なぜか怯えるような様子を見せたので何事もなかったかのように去っていくのであった。

その後、俺とドラはそのまま王都を目指す。まず最初にすることは宿屋を確保することであった。それから俺はその宿に泊まり込んでから次の日に王城へ向かうことに決めた。ただ、王城に行こうとした時に、王城の門番をすることになった人に話しかけられるという事件が起こったのである。それで話をしているとその人はどうやら元冒険者ということもあっていろいろ話を聞くことが出来て良かったと思ったのである。ただ、なぜそんな話を教えてくれるのかはわからないのだがとにかく話だけは聞いておくことにした。ただその内容は、王城を守っている兵士の強さについて話しておきたいという話だと思ったので、俺はドラの背中に乗る。ドラならどんな相手にでも遅れをとることはないと思っているからだ。

俺とドラはドラに乗ったまま移動を始めると案外ドラは速かった。おそらくこの速さだとかなりの時間移動することが出来るだろうと俺は思っていた。そうやって移動していくうちにだんだん人が少なくなっていくことに気がつく。もしかするとここはあまり人が寄りつかない場所になっているのかと思っていた。その予想は当たっていて俺達は今山の中にある洞窟にいるのであった。ここは、どうやら昔盗賊団の拠点となっていたらしいので誰も利用していないようだ。ただそのおかげで誰にも会うことなくここまで来れた。

俺はこの中にドラゴンを連れて行くことを悩んでいた。なぜならドラゴンの大きさ的にこの中に入ると身動きが取れなくなってしまうからなのである。俺はドラと相談しながらその問題を解決しようとしていたのだがなかなか案が浮かばずにいたのである。そして俺とドラが頭を悩ませている間に、ミレアナが俺に近づいてきてこんな提案を出してくれた。

その案は、この中の通路はそこまで大きくないのでその通路の横に寝そべってくれたら通れるのではないかと言われたのだ。

「ドラさん、ちょっと横に行ってくれないかしら?そうしたら通りやすくなるのでその通路を使ってください。お願いします。」

「ガウウ。わかった。少しだけ離れていればいいんだよな?」

「そうですね。ではそこに座ってもらって、その姿勢になってくれるでしょうか?」

「グオォーーン!」

ドラがその指示に従ったのを確認するとそのままドラにまたがり俺達3人と一匹は再び歩き始めることになったのであった。

俺達はその洞窟の中を歩いている。ちなみにミレアにこのドラゴンの種族名を聞きたかったのだが、この子はドラと呼ぶように言っていたので仕方なくそのままドラと呼ぼう。

「ところでドラはどうしてここに来たんだ?」

俺はドラゴンに尋ねてみると、どうやらこのあたりは住みやすく快適なのでずっと住んでいるそうだ。どうやらこの場所で長い時を生きてきているドラゴンにとっては住み心地のいいところなので、ドラもこの場所に愛着を持っているのだという。俺は、その言葉が嘘でないことを願ったのである。そして、その道中で、ミレアナはドラと仲良さそうにしている。どうもミレアナもドラのことが大好きになったらしくていつも楽しそうに話をしてくれている。そしてしばらく進むとある部屋にたどり着く。その場所は俺の記憶が正しければ確か武器が保管されていた部屋だと思われる。その証拠に部屋の真ん中に剣が落ちているからだ。その剣を持ち上げて鑑定眼を使用する。すると俺がこの剣に対して覚えていた情報以上のものが出てきたのである。それは、この剣に秘められた能力まで全て表示されていたのであった。しかも、それだけではなかったのである。俺は、その剣がどんなものなのかということを知ることができていたのだった。俺はその内容が気になり、まず剣の名前を知ろうとした。

(その剣の名前はなんだ?)

俺が念じるとすぐに答えが頭の中に流れてくる。

『神剣:グラム』

俺はその剣の名前を見て驚愕する。なんとこれは、この世界に存在すると言われている伝説の魔剣ではないかと思ってしまったのだ。そのせいか思わず俺は興奮してしまった。

その剣の説明によると、その力は使用者の意思によって発揮できるということだった。さらにこの剣は意思を持っていて所有者を選ぶということだ。

そしてその説明が終わった瞬間に、その刀が輝き出すと俺の手から消えていた。

俺はその光景に驚いていたがすぐに落ち着くことが出来た。

その理由としてはこの世界に来てからは驚かされることばかりだったので慣れてきてしまっていたからだと思う。

それから、この剣が消えたことについては俺にもわからない。もしかしたら、俺を選んだとかそういう可能性もなくはないとは思うが正直よくわからないのでこれ以上考えても意味がないことだろうと思って思考を中断させる。そして再びドラの背に乗って俺達は移動を再開する。

そうするとようやく目的地に到着したのだ。

そしてこの先には何があるのだろうかと思って進んでみると、どうやらここがボス部屋と呼ばれるような場所であることが判明した。この空間はかなりの広さがあったのだ。それこそ、ここに住んでいるドラの体格に合わせて作ってあると言われてもおかしくないぐらい広かったのである。そこでドラに頼んで外に出てもらうとドラはその場で立ち止まってしまう。どうやらここよりも外にでた方がいいと思ったようでその判断には賛成だったので素直に従って外に出ることに決める。

ただ、この広いスペースはどうしようかと考えていると、ドラはその巨体を動かしてどこかに移動しようとするので、俺達もそれに従うことにした。だが俺達がドラについて行くとその方向には街が存在していた。まさかこの大きさの生物なのに街がどこにあろうとしているとは全く思わなかったのである。俺はそのことを考えると本当にとんでもないものを味方につけることができたと思うのであった。

俺達は街の入り口付近までやってくると、ドラの姿を見て門番をしていた2人の兵士が警戒するように俺達に向かって槍を構え始めた。俺はすぐにその兵士達を止めようと前に出るがその兵士はすぐに槍を下ろしてくれた。それからすぐに俺達のことを聞いてくれたので事情を説明する。それを聞いた後兵士は慌てて奥に走っていって上司のような人に報告に行った。

しばらくして、兵士に連れられてやってきたその上司らしき人物は、部下の人とは違い礼儀正しくてとても好感の持てる人物だった。この人は俺達のためにこの都市に入ることを許してくれるようでその感謝の意としてお土産を持たせてくれようとしてきていたので断っておく。それに俺はこの国に用事があるわけでもないしね。それにお土産が欲しいなら別に自分で用意するので大丈夫だと言って断ることにする。

「そうですか、わかりました。私からのお礼の気持ちですから受け取っとくれてください。それと、私のことはどうか気軽に話しかけてもらえればと思いますので、これからもよろしくお願いします。」

「ありがとうございます。」

その兵士はそう言い残すと、仕事に戻っていった。その後俺達はこの街の中で一番人気がありそうな場所に行くことに決めていてそこに移動する。そこは大きな酒場で昼間にも関わらず結構賑わっていたのである。俺は中に入り席に着く前に注文をすることにするがミレアとドラに関しては何も必要ないと言おうとしたがせっかくだから何か食べるか聞くと遠慮しながらも食べたいという反応を見せてくれたので注文をすることにすることにしたのだ。

そして俺が頼むものはもうすでに決まっている。それはこの世界で最高級とされている酒を出すお店である。その店で取り扱っている品々はこの世界において最高峰のものばかりであり、味覚に関しても俺が満足出来るものが置いてあった。俺はそれをおつまみにして飲んでいくつもりである。ただ、その店の店主である男はどうも嫌がっているようだが関係ない。この世界の最高の酒をこの俺が飲みまくることで売り上げが上がればいいだけの話なのだから気にしない。俺は早速この店で出されているお酒を飲ませてもらうことにした。

するとどうしたことか、その俺の行動にこの場にいた人たちから歓声が上がったのだ。一体何事なのかと思ってしまったが、この世界では俺のやることが普通に凄く感じたようだ。確かに今までの異世界での生活を考えてみると、そう言われて納得できた。

それから、俺が飲むペースはどんどん上がっていきあっという間にボトルを空けてしまうことになる。俺が調子に乗って次を要求していると周りの人間たちの中には酔っ払ってきた人が出てきてしまい俺が注文した次のお酒を持ってきた時に絡んできた。俺はそんな奴を無視して次の酒を頼んだが次の物も同じような状態になって絡んでくる始末である。

俺がその対処をしていると今度は、他の客たちも一緒に俺に絡んだ来たので俺が暴れ始めると、どうやらそれがいい刺激となったようでさらに俺のことを囲んで騒ぐようになったのである。俺のストレスが発散出来たのは良かったけどその騒ぎ方はやめてほしかったのであった。俺はそれから解放されたくてすぐに会計を済ませると急いでそのお店を後にする。

「ちょっと待ってくれ!あんたは英雄だろ?」

俺が逃げようとしていると俺に近づいてきた人がいた。

その声に振り返り、その相手を見るが、その姿を見た時には思わず固まってしまった。なぜなら、そこにはミレアナと同じ銀髪に整った顔が特徴的の男が立っていたからだ。俺がその容姿を見つめながら、しばらく見入っているとその男性は口を開いた。

「俺の名前はルークっていう名前なんだ。よろしく。」

「俺はシンという冒険者だ。」

「おおぉ!やはりそうでしたか!!あなたに会えてよかったですよ!!」

その男の反応に戸惑ったが、その男は続けて話す。

「実は俺がここにいる理由は君に会うためだったんですよ。」

「どうして俺がお前みたいなやつに会いに来なきゃならないんだよ。」

その言葉を吐いてから自分がかなり失礼な発言をしていることに気づいて謝ろうとしたが、俺の言葉に動じずに、俺の肩を両手を回してくる。そして顔を近づけてこんなことを言ってきた。

「俺は君にどうしても頼みたいことがあるんだ。その報酬は必ず払う。だから、少しだけ俺の話に付き合ってくれないか?」

「わかった。じゃあ少しだけな。それで?俺に何をさせようって言うんだ?」

俺がそう質問をすると彼は笑顔を浮かべてからすぐに答える。

「まずは、俺と一緒に城へと行ってほしい。話はそこから始まる。」

その言葉を聞き俺は思わず眉を寄せていた。だがその理由は俺が城に行っていいのかという疑問が浮かんでいたためにそのような表情になっていたのだ。そのことを彼に告げるとすぐに返答してくれる。どうも、その国は現在魔物の被害に苦しんでいるらしくそのために少しでも強い人間が協力して欲しいそうだ。その話を聞いただけで俺はやる気が出て来たので二つ返事で引き受けることにしたのであった。

そして、俺達は再び歩き始めようとしたその時である。

突然俺の前に黒い光のようなものが現れた。それはあまりにも急に現れたのでその場から逃げ出すことはできなかった。そして光が晴れるとその場所に、一人の少女が立っていのである。その姿を見て俺だけでなく周りにいる者たちまでも息を飲む。それほどまで少女は美しかったのである。まるで人形のように端正な美しい見た目をしており、透き通るような銀色の長髪をしている。瞳は綺麗で大きく目つきが鋭いのに、どこか愛らしさが残っているのが特徴的である。俺はその女の子を見て思わず固まってしまい動けなくなってしまう。だが彼女は俺のほうを見て微笑んでいてその様子からなぜか恐怖を感じた。そして俺はなぜこの子がこのような態度をとっているのかと不思議に思いつつ彼女の名を聞いてみた。

「お前の名前はなんていうんだ。どうして俺の名前を知っている?」

すると彼女はすぐに俺の問いかけに応えてくれる。

「私はルチアといいます。あなたのことはもちろん知っていますよ。この世界では有名ですもの。私達エルフ族の間ではとてもね。」

その答えを聞いて俺は納得することができた。どうやら彼女もまた人間ではなかったらしい。そのことから俺はある考えに至ったのである。それはこの子もこの世界の住人ではない可能性があると。それであれば俺にこの世界に来る前の記憶がない説明がつくからである。ただ彼女がどのような理由でここに来たのかがわからないのでそのことはとりあえず置いておくことにして今は目の前のこの子に話しかけることにする。

「君はなんでこんなところにいるんだい。」

「えぇ、私の用事はこの世界にやって来た魔族の方を倒すことにあるのです。なので今すぐについてきていただきましょうか。それとこのことは他言無用でお願いいたします。でなければ殺してしまうかもしれないので。」

俺は彼女に脅されているような気がして素直に従ったほうがいいと判断した。それには理由があったのだがそれをここで語る必要はないだろう。そしてそのまま俺はついて行こうとした。だが、俺について来ると言ったはずのドラがいないことに気づいたのだ。ドラに視線を送ると、ドラはいつの間にかいなくなっていた。だがこの場には残っているようなので安心しておくことにしよう。ドラは俺のことを守ろうとしてくれるし何かあれば俺の代わりに行動を起こしてくれるはずなのだ。だから心配はいらないだろう。俺はドラがそばにいないことが不安だがそれを表に出さずにルチアのあとに着いて行くことにした。

それから俺達はその都市の外に出ることになるが、その外はまさに戦場と呼べる光景が広がっていたのである。どうも戦争が起きていたようだ。そのせいで都市の中に入ってくる人も減っていたのだと予想できる。俺はこの先一体どこに連れていかれるのだろうかと思いながらもルチアに話しかける。

「この先で何が起きているのかわかるか?」

「はい、現在この街に攻め入ろうとしてきているのはこの都市に住む人々です。それも魔族が指揮しています。そしてそれに反抗しているのが私たちの味方となってくれる人間と魔物達ですね。」

それを聞くと俺はすぐにその状況を想像する。恐らくこの街に住んでいる人々は自分達が暮らしている場所を守るために必死になって戦っているに違いないのだ。だがその者達だけではどう考えても数が足りないはずである。それに相手側に強力な個体がいる可能性もあるしそもそも戦いというものを知らない人たちが多いのだ。それにもし俺がその現場を見たとしても助けられるかどうかが微妙だと思うので、なんとかしないとなと考え込む。だが、俺は戦闘経験も豊富なわけじゃないから、どうにか出来るとは思えない。だけど、何もせずにこのまま黙って見過ごしては後味が悪いし何かできることがあれば手伝うくらいはしたいと思っているのだ。俺はそのことを考え込んでしまっていたのを気にされたようで声をかけられたのである。

「どうかしましたか?」

「ん?ああぁなんでもない。気にしないでくれ」

俺は適当に取り繕った言葉で誤魔化すが内心ではこの子は鋭いと思った。どうにもその表情から俺が何かを考え込んでいることを悟られたようである。そんな俺のことをしばらく見つめていたルチアだが、それ以上は何も言ってこなかった。そしてしばらく歩いていると俺とドラはその先に信じられないものを見てしまっていたのである。

「おい、あれってまさか、竜じゃないか!?しかも一匹じゃなくて何匹もいるぞ!!どういうことだ?」

「ふっ!ようやく来てくれたようだな!これで俺達人間の勝利は確定だ!」ルチアが何やらを言っているようだったが、そんなことはもうどうでもよかった。ただ、この状況をどうすれば打破できるかだけを考えているのだ。そして俺は自分の中に秘められている力を発動させる準備を始めたのである。

それから数分後に敵側の陣営は全滅する事になった。それはたった一人で全てを殺してしまったからである。その姿はまるで悪魔のように見えたと、その場にいた全員が語っており、実際に見た者は震え上がりながらその姿を記憶に留めていたという。その姿とは漆黒の鱗に覆われたドラゴンのような姿であり全身からどす黒い炎を放っていたというものだそうだ。そしてそれが本当の出来事だという証拠として死体はすべて灰になってしまったという話が残っておりその姿を目撃した者の証言と一致している。

そしてそれから数時間後にその国を救ったという男が姿を現わすことになる。それはあの黒髪の男が一人で街にやってきたという知らせを受けた兵士や貴族達が慌てて駆けつけてきたのだ。だがその男の顔を見てほとんどの者が驚くことになった。なぜならそこにいるのは英雄と呼ばれる男であったからだ。彼が来たことでその国は救われたと言っていいほどの状況にまで追い詰められていたがそれでも彼はその国から報酬を受け取ることはなかったと言われている。そして彼は報酬などよりももっと欲しいものがあったと言い残して去って行ったという。そしてその数日後、彼は国を出て行くことになる。

「ラピス、ごめんな待たせちゃって。ちょっとトラブルに巻き込まれちゃってな。それでさっきの兵士に絡まれていた時にルチアが俺に気づき話しかけて来たんだ。その時に初めてルチアの存在を知ったんだがな、なんかその話の流れ的に俺がルチアと二人でどこかに行っていることがバレてしまったんだよな。まあそれでちょっとしたいざこざが起きている時に兵士が一人現れたんだけどな、その人の対応をしていたのがラピスだって言うんだ。その人は俺の名前を呼んでからラピスに向かってこう言ったんだよ『君たち二人はいったい何をやっているのかね』とな。そこから先は俺が今までに体験したことがない修羅場だったよ。なあそうだったよなドラ。」

「そうだな、確かに俺からしてもあの時のお前は大変そうだったな。あんな奴と会うとは思ってもいなかったしな。俺としてはお前と一緒ならどこにいても楽しくやっていけるがな。それでお前はそいつらに何を答えてやったんだ?」

俺がその質問を答えると、ルチアの方を向いて質問してみる。

「俺はその男をどう思えばいいんだ?」

すると、ルチアも同じように考えていたのだろうがすぐに答えることはなく、俺達二人を交互に見ているだけであった。だがすぐに結論を出したのか答えを出してくれるようだ。だが、それはルチアにとっても少し言いにくい事なのか少し間を開けてから話すのである。それは俺達の関係についてのことなのだ。

「シン様にはお伝えしなければならない事があるのです。それは私達エルフ族のことに関する内容で私とこの世界の魔王様とで契約を交わしています。その内容は私達以外のエルフは全員死んでいるという内容のものなのです。そのせいで私はこの世界にいる人間には私と魔王の加護を与えたのです。それはこの世界で私が信頼できる人を見つけるための手段なのでしょうね。この話をしたところであなたに私について来て貰おうと考えているのですよ。私はその件で勇者が動き出すのではないかと考えていたのです。だから、私の方から勇者の方に動いてもらわないようにしようと思って、今回の作戦を立てたのですよ。」

「なるほどな、そういうことだったのか。だが、俺は俺の意志でここに来たからな、他の人に言われても俺は動くつもりはないからな。それにこの話は俺にとってはそこまで関係がないからな。」

俺がそれを聞いてどう答えれば良いのかわからなくなっているところに助け舟が入る。ドラが会話に加わってくれたのである。そのおかげで、ルチアに変に意識されることなくいつも通りに接することができたのである。それから俺達は宿屋に戻って明日の事を話し合い今日一日を終えることにしたのだった。

次の日になり俺とルチアは再び街の外へ出ることにする。目的は昨日戦った相手を探すことである。なぜこの様な事を行っているのかといえば単純にルチアがこの世界にどのような目的で来ているのかということを知るためである。それにその魔族の実力も知りたいのでそれを調べるのが目的でもある。それに魔族の実力次第ではその戦い方によってはこの世界を救えるのではないかとも思ったからだ。それに俺は魔族に対して個人的な恨みがあるわけでもない。

俺はその前にまずは腹ごしらえをすることにした。理由はドラが俺の魔力を感知して近づいてきたためであり、俺に食料を食べさせるために来たのだと言う。だから俺は素直にドラの言葉に従うことにした。そして食べ終わってから俺達は再び外に出ることになったのである。その外には昨日の戦場になった場所にはまだたくさんの人がいてまだ戦っていたのだ。その中には当然のように魔物の姿がありその魔物を倒そうと頑張っているが、やはり魔物の数は尋常ではなかったのだ。そしてそんな戦場の中でドラは何かを見つけてそちらのほうへと移動し始める。俺もそれに続いていくと、そこには巨大な龍がいたのだ。だがその姿を見て、その竜がこちらを睨みつけるとその瞬間周りの景色が歪み始めていく。

俺は突然の出来事に対応が遅れてそのまま目の前が真っ暗になってしまい倒れ込んでしまう。俺はそこで自分が気を失ってしまった事に気が付き目を覚ますと目の前に俺に何かの液体が入っているビンを持っている女性の姿を見ることができたのである。そしてその女性は俺が起き上がるといきなりそのビンに入っているものを無理やり飲ませようとしてきたのだ。だから俺は慌ててそれを拒否した。だが、それからは無理矢理そのビンの中に入っていた薬を飲まされることになったのである。その結果、俺の中にあった力が溢れ出てくる感じがしたので、それを確かめたくなってからもう一度先程の戦場を見ると、すでにその戦場はなく、周りを見渡してみたのだがその光景に思わず目を奪われてしまった。なぜかというと俺達の視界に入ってきたのはその光景がありえないものだったからである。

その理由というのは、俺達が見ていた方向に魔物が一体も存在しなかったのだ。そして魔物の死体さえも残っていないことから俺達が気を失う前に起きた現象が魔物を消滅させたのだということはすぐに予想ができた。ただその光景が現実離れしていたせいで驚いていたのだ。俺はすぐにその状況を理解しようと考える。だが、その時に隣からドラが声をかけてくるのである。俺は何があったのか聞こうとした時にその異変は起こったのだ。

突如として魔物達がいるはずの方向の地面が崩れ落ちたのである。それも俺とルチアが立っている地点まで。そして俺が下を見た時に見たのは何もない大地だった。つまり俺はそこに落ちるはずだったのだろう。だがルチアが魔法を使って俺が落下する前に受け止めてくれてなんとか助かったのであった。だがその直後に再び地面が隆起していきそこから巨大な生物が姿を現す。その大きさはおそらくだがこの世界の竜と呼ばれるものと同じ大きさであろう。その巨大さに見惚れてしまっていた俺だがその生き物を見てしまうことで嫌な予感に襲われていたのだ。

そしてそのドラゴンを見て俺は確信したのであった。あれこそが魔族の頂点と言われる魔王だと言うことを。その魔王の見た目は明らかに他の魔族とは違い禍々しい雰囲気を持っていた。そのため、俺も油断はできないと思い構えていたのだけれど、魔族の様子がおかしいことに気づく。なぜならドラゴンを見ても全く恐れずに戦闘を始めようとしていたからだ。その行動を見てドラが焦った表情を浮かべた時に、その変化が起こることとなる。なんとドラが一瞬にして消えてしまったのだ。それと同時に魔族の身体からも血液が流れ始める。その状況を理解するのがやっとで俺は何もできなかった。だがその状況でルチアだけは違ったようだ。そしてルチアが動いたと思った時にはすでにルチアが魔王の背後を取って剣を振っていたのである。

しかしそれはドラゴンの手によって簡単に防がれてしまい、ルチアの腹部に向かってドラゴンの蹴りが入り吹き飛ばされてしまった。ルチアは何とか耐えたがその後に続くドラゴンの攻撃をまともに食らってしまい壁に叩きつけられることになる。それからはルチアが必死に立ち上がろうとするが、その隙をついてドラゴンは攻撃を仕掛けてくる。そしてドラゴンの一撃を受けてついにルチアは動かなくなってしまう。そのルチアに向かってドラゴンの追撃が加えられようとした時、俺はもう我慢することができなかった。だから俺はルチアを助けるために、ルチアとドラの間に割って入ることにして俺の持つ最強の攻撃方法を放つことにする。その俺が発動する技の名は<神炎覇弾> この世界に来る前に習得していて俺が一番最初に使えたオリジナル魔法の一つである。そして俺は自分の力を信じた。この力で絶対に守って見せるという意思を持って放つことにしたのだ。そしてその魔法を発動させることに成功する。だがその威力を見て俺は驚くことになった。なぜならその魔法が当たったところが跡形もなく消えたのである。

だがその代償は大きいもので俺自身にも相当な負担をかける結果となってしまいその場に崩れ落ちそうになるが俺の後ろには今にも死にそうな状態になっている仲間がいるので、そうも言ってられないとすぐに気を取り直し俺は立ち上がるのである。そのおかげなのか分からないが、どうにかルチアを守ることに成功したのである。その後は俺とルチアとで協力してドラゴンを追い詰めていったのだった。そのあと俺がとどめをさすために接近すると、ドラとルチアは俺を守るために援護してくれる。そのおかけで俺は無事に止めを刺すことができたのだった。

俺はその戦いが終わった後は、ルチアのことを抱きしめながら感謝をしていたのである。俺一人ではこの勝利は掴むことはできなかったからな。そのルチアの優しさに感謝をしてこれからどうするかという話をしていたのである。その話の内容というのはドラの種族をどうするかという事である。俺とルチアで話し合いをしていた時に俺にドラが質問してくる。俺はどうしようかなと悩んでいた。そしてドラに正直に俺の本当の力を言ってしまうことにしたのである。俺がこの世界に来たばかりの頃はまだレベルも低くて、この世界では俺が普通に戦っても通用しなかったかもしれないと思っていたからこそ隠していたが今ではその力は使えるようになっていたので問題はなかったのだ。

それに今はそれよりも先にすることがあるからな、ドラを元の場所に返す方法を早く見つけなければならないと考えているのだ。だからこそこの話は俺の中では一番優先順位が高くなっているのである。だからこの世界でドラが暮らすためのことを考えるのは後回しになってしまうことは許してほしい。俺はドラにそのことを伝えたところ納得してくれた。それで、結局のところドラにはどうするのかを決めるために街に戻りドラと話をすることにしてこの場で別れることに決めたのである。そして俺はこの森を抜けるための移動をするために移動し始めたのだ。その時にドラは、

「お前さんの魔力は異常すぎる。だがそれだけではないような気がする。何か特別なスキルを持っているのではないか?もしよければそれを教えてくれんか?」俺はその言葉を聞いて少しだけ考えたが、ドラに隠していても無駄だと悟って俺の秘密を全て話すことにしたのである。

俺は全ての秘密を話す前にまず初めに、この世界に来てからずっと感じていることを伝えることにする。ドラが元の世界から一緒に来たのかどうかを確認する前に、まず俺の考えを伝えてからじゃないと何も話が始まらないと考えたからだ。

まずこの世界にやってきて違和感を覚えたことが三つほどあるのだ。一つは魔素の量の多さだ。普通の人間でも魔素は存在するらしいのだがその量は微量なのだそうだ。だが俺は最初からかなりの量が存在していたのだ。そのことについては俺自身も不思議に思っている。二つ目が身体能力についてだ。元々のレベルもそれなりに高い方だったがそれに加えて今の身体能力の高さがある。だがそれだけではなく、もっと異常な部分があったのだ。それは回復速度の早さである。俺は最初、自分の中で怪我を治そうとイメージをしただけで回復するものだとばかり思っていた。それなのに実際には、どんなに重症であっても俺の回復速度が勝ると自然治癒の方が上回ってしまうのだ。それが原因で何度も危険な目にあっているのだ。しかもその状態でも魔力切れを起こしたことがないのである。これが三つ目の疑問になるのだ。俺はこれの原因を知ろうと思い、いろいろと考えてみるが答えは全くわからないままだったのだ。そんなこんなで考えているうちに、俺はいつの間にか考え込んでいたようでルチアが俺の目の前に来ていたのだ。俺はそこで我に返って考えるのをやめることにした。

そしてドラのことについてはとりあえず置いておいてまずは自分がなぜここに来ることになったのかという理由を考え直した。だがいくら考えても俺の中に原因になりうるものがなかったのだ。なのでこれ以上考えても無駄だと思い俺は思考を停止させることにしそれからは黙々と森の中を進んで行く。

その途中でまた魔物が現れたりしたので俺とルチアとドラゴンの3人で協力して倒すことになる。そして魔物を倒した後に俺達は一度この近くにある村に行こうと話し合ってから移動することにしそこに向かって歩みを進めて行く。そこで村に着いた俺達は情報収集を始める。だがここで大きな問題が発覚することになる。なぜなら俺がお金を持っていないことに気づいたからだ。俺は焦ったがどうにかその問題を解決するために頑張って行動したのだ。そのおかげで何とかなりそうになったのだがドラゴンの存在によって全てが無に帰してしまったのである。そのドラゴンが村の中に入ったことで村人達がパニックになってしまい大騒ぎになっていたのだ。その状況を俺達は見ていることしかできずにどうすればいいのかわからずに途方に暮れている時に一人の女性が俺達に話しかけてきたのであった。

そして女性はいきなり、私の家へ来るといい出してそのまま連れていかれてしまう。その女性の名はアリエルという女性で見た目的には30代ぐらいの女性だった。そして俺達がアリエルの家に着くと彼女はいきなり、私達の家に泊まっていけと言ってきたのだ。最初は断ろうとしたが俺達がこの村の現状を知っているからこそ受け入れるべきだろうとルチアと意見が一致したのでその申し出を受け入れることにした。ただその際にルチアがなぜか警戒していたのだ。それはドラゴンの方を見るとなぜか怯えた表情を浮かべていたからである。そのせいでルチアは緊張しているように俺は感じた。

そして俺達がその晩は寝ようと思ったときになぜか知らないけどドラゴンが暴れ始めようとした。そしてそれを必死にルチアと俺で押さえつけることになってしまったのである。そして俺達はドラゴンが大人しく眠りにつくまでずっと付き合わされた。俺がドラゴンに対してルチアとドラの二人がかりで挑んでいった結果何とか俺だけがドラゴンを抑えることに成功して眠ることに成功するのであった。その後は、ドラゴンとルチアの2人が協力してくれたおかげで俺一人ではどうすることもできなかったことをやり遂げることができて俺は満足するのであった。その結果俺はぐっすりと熟睡することができ、気持ちの良い朝を迎えるのであった。そしてその後朝食を食べるために俺とルチアが席に着いて座っていると突然ドラゴンが起き上がるのである。だがその後すぐにドラはその場で倒れたのだ。その光景を見た俺とルチアは慌てて近寄って様子を伺ったのだけれど、すぐに意識を取り戻す。その後、俺達はドラゴンを連れて王城に向かうことにした。その道中ではドラゴンが俺たちと一緒にいたいと言ってきていたのである。そのため俺としては断るわけにはいかないと思い連れて行くことを決めたのであった。

ドラゴンを拾ってから約1時間ほどでようやく俺達は目的の王城にたどり着くことができた。

そしてその門兵に止められるがルチアが事情を説明するとその兵はドラゴンの姿を確認した瞬間に逃げ出そうとしたのである。だけど俺は咄嵯の判断でドラゴンに向かって攻撃魔法を放ちその兵士を止めていた。その攻撃によりドラゴンは俺に向かって敵意を向けてきたのである。そのため俺はその門兵を気絶させた後、ルチアが説得してその場を収めてもらうことに成功した。その後はなんとかして城内に入ろうと試みたが中から警備されている上に俺が侵入しようものならすぐさまバレてしまい追い返されてしまうという状態だったのである。俺は仕方なく諦めようとしたがその前にルチアとドラゴンが、俺に提案してきたのだ。その内容はなんと俺が二人になってしまえばいいというものだったのである。俺はその提案に乗り早速俺が二人ずつに分かれるための魔法を使ってみた結果うまく成功し俺は一人増えたのである。これで三人になった俺はどうにか潜入できるんじゃないかと思ってルチアとドラゴンにお願いしてみた。だがそれでもやはり、すぐに見つかってしまい俺の体の中から魔力反応が出たと衛兵が騒ぎ出し俺はあっさり捕まってしまったのである。その時に俺のことを連行しようと手を引っ張っていたルチアはなぜか俺が連れて行かれることに不満を抱いたのか急に態度を変えてしまった。俺はそれに気づき俺の代わりにルチアがついて来てくれるのかと思っていると、俺の目の前でドラゴンとルチアの戦いが始まってしまう。俺はそれに驚いて止めようとしようとした時に今度はルチアが俺の腕を引っ張り始めたのである。

「ちょっと待ちなさい!あなたは私と来るのよ!」

俺は何が起きたのかわからなかったが、とにかく俺はその言葉に従いルチアに連れられてその場を離れる。それからはルチアに連れていかれた場所は城の一室でありそこでルチアから俺がここに呼ばれた経緯の説明を受けた。だが俺の予想していたこととは違っていたのである。

そして俺にこの国の姫様が求婚をしに来たということらしいのだ。しかも、俺に断りもなく勝手に決められたらしく俺はそのことを聞いて思わず呆然とするしかなかったのだ。確かに俺にもこの国に来てほしいと言われれば俺としても行くことに抵抗はなかった。なぜならば俺は異世界転生をしたからこそこの世界でやりたいことが山ほどあったのだ。だからこそそのお誘いを受けてこの世界を旅することだってできただろう。しかしだ、俺は今すぐこの世界を出て行きたいというわけではなかった。その理由はこの世界に来てしまったからにはこの世界の人間として生活したほうがこの世界に溶け込みやすいのではないかと思ったからである。

だが俺は自分の力がまだ使いこなせていないことに気づいてしまった。俺はまだレベルを上げる必要があると考えているのにも関わらず、レベル上げをせずにこの世界を見て回りたいと考えている。それはあまりにも自分勝手でわがままな話なのだ。だからこそ、そんなことをして迷惑をかけたくないと俺は思い今は、自分が強くなった時のために準備期間としているのである。それを考えると俺はルチアの願いを受け入れることはできないのだ。だから俺は、

「申し訳ないんだけど俺の答えは、ノーです」俺ははっきりそう言い切ったのである。

「え?どうしてよ。私はあなたのことが好きなのよ?それにこの国に居てくれたらこの国に住むことができるのよ?」ルチアがそんなことを言ってきたのだ。

「ごめんね、でもやっぱりまだ俺はこの世界を旅してみたいんだ。もちろん、いつかは戻るつもりだよ?でももう少しだけ待ってほしいかな?」

俺は正直に伝えておくことにした。俺の考えを伝えておかなければまた同じことになりかねないからである。俺はルチアにこの世界に来る前のことから全てを話すことにした。その話を聞いてルチアは、とても真剣に俺の話を聞いてくれた。そして最後にルチアは泣きながら謝って来たのである。俺は別に気にしていないので俺は、笑顔を見せて大丈夫だと伝えるとなぜか抱きついて来たのである。それで俺は戸惑ったが優しく頭を撫でてあげることにしたのだ。すると少し落ち着いたようなので俺はこれからどうするべきかを話し合うことにするのであった。

俺はまず自分が元の世界に戻る方法を探さなければならないと思っていたのだが、どうしたらいいのか皆目見当もつかない状況なのだ。そしてまず俺ができることは強くなることだった。そのために俺は冒険者として行動することにしたのだ。そこでこの国の城下町に戻ろうとしたところでルチアが俺に向かって一緒に付いてきてほしいと伝えてきたので俺は素直に従うことにしたのだ。だがルチアと二人で行動すると怪しまれる可能性もあるので俺はドラに姿を変えることにしたのだ。ドラならばこの姿でいてもそこまで違和感がないと思ったからだ。

そこでまずは、ギルドに行って依頼を引き受けようとしていたのだがそこで予想外の事態が待っていた。それは俺がドラゴンを連れているという情報が出回っておりドラゴン討伐のクエストが張り出されていたので俺はそれを受注しに行っていた。その時に受付の人から注意を受けていたのだ。だが俺はドラゴンが俺を信頼してくれていたのとルチアが説得をしてくれたおかげでなんとか事なきを得たのである。そのあとは俺達は依頼を受けてからドラゴンと共に森へと向かうのであった。

俺達は、ルチアから聞いた話をドラに詳しく説明し、これからのことについても話すことになった。

そして俺達が話し合った結論が俺の体の中にいるドラゴンはこのままこの場に残り、この国の姫様からの申し出を受けることにして俺は旅に出るということになったのである。

俺としてはドラゴンを残しておきたくなかった。なぜかと言えば、もしもこの子を置いていった後にドラゴンが他の人の手によって殺されたりしたら俺としては罪悪感で押しつぶされそうになるからだったのだ。

そして話し合いが終わった後に俺とドラで別れる事になった。その際にルチアは最後まで納得いかない顔をしていたが渋々といった様子で了承してくれたのである。そして俺達は森の中で分かれると、俺達はそれぞれ違う道へ歩いていく。俺の方は、ドラの案内で街を目指すという方針になっていた。そしてしばらく歩いていると俺は魔物と遭遇したのである。俺はその相手に攻撃を仕掛けるために武器を取り出し戦闘を開始する。

その相手とは、ウルフだった。

そしてその相手を何とか倒していると今度は、巨大な猪が現れてこちらへ襲い掛かってくる。その攻撃に俺は反応できておらずに死を覚悟したが、俺の体に異変が起きたのだ。俺はいつの間に体が軽くなって空中へと移動していることに気づいたのである。そしてそこから俺は猪に攻撃を仕掛けたのだ。そしてその一撃だけで俺は倒すことに成功するのであった。俺は一体なぜいきなりこんなことができたのかと疑問に思っていたのである。

俺はドラゴンと別れた後はひたすら森の中を走り続けていたのだ。俺はドラゴンのことを考えていたがふとある考えにたどり着き俺は一旦考えることを止めることにしたのである。

それは、俺の体を乗っ取った魔王の正体を突き止めることができるのではないかということだ。

もしそれができれば何か対策を練ることが可能になるのかもしれないと考えていた。ただ問題はその方法だが、俺がドラゴンから聞いた話は俺には全くわからない内容ばかりなので、どうすることもできなかったのである。そのため俺はどうしようもない現状を変えるためには、この世界にいる誰かに助言を求めるしかないと考えてこの世界の人に助けを求めようと決めたのである。ただこの世界に来てすぐに俺はある事件に関わってしまったためその人たちに会いに行くわけにも行かずにいたので俺はとりあえずこの近くの村を目指して進むのであった。そこでなら情報を得ることが可能だと考えていたからである。

だが俺の考えは甘いものであり、まさかこの近くであんな事件に巻き込まれるとはこの時の俺は予想していなかったのである。俺が森から出て、草原に差し掛かったあたりで急に大きな悲鳴が上がったので俺がその方向へ視線を向けるとそこにはオークの大群に襲われている人達がいたのである。

俺は助けるべきなのか悩んだが、すでに遅かったようでもう犠牲者が出ていて今まさに最後の一人の女性が襲われようとしているところであった。しかも、その女性の頭からは血が流れ出していて、おそらく先程の集団によって致命傷を受けたであろう女性を助けても、意味がないと判断した。だから俺はせめてその最後だけは楽にしてあげたいと思い、俺は全力で駆け抜け剣を振り抜きそのオーク達を切り刻んだのである。俺はすぐに倒れ込んだ女の子を抱きかかえて、安否を確認するが意識を失っていて返事が返ってこない状態が続いていた。俺は急いで回復魔法を使い応急処置をしてみたのだが、それでも助かりそうには見えなかったのでせめて埋葬だけでもしてあげるべきだと考えたのである。それからは俺はその子の身体を持ち上げると近くにあった小さな洞窟を見つけそこにその子を運んだ後、近くに生えていた草で周りを囲って簡易的なお墓を作ったのであった。俺はその後、彼女の荷物と思われる物を回収したのだがそこで俺はとんでもないことに気づく。彼女が手にしていた物はどれも高級品ばかりでありかなり裕福な暮らしをしている家の子供であることがわかったのである。さらに言えば、身につけているものからしても高貴な身分だということを物語っていたのだ。つまり彼女はどこかの貴族の娘もしくは王族の人間だということになる。そのせいで俺は彼女を放置しておくことができなくなりこの場で弔うためにも彼女を連れてこの先の大きな街に向かいたいと考えて歩き始めた。

ただそこで俺は困ったことに出会ってしまう。それは魔物が俺の前に突如現れ襲いかかってきてしまったのだ。それも複数体の狼のようなモンスターである。しかもこの世界に来て俺が初めて遭遇することになる強そうな魔物でもある。だが俺がやられることはないだろうと高を括っていたのも束の間その牙が俺の右腕を捉えてしまう。

だが、俺の腕はその攻撃を耐えることができたのだ。そのことに驚いた俺は腕の感覚がないことに驚きを隠せなかった。

「な、なんだこれ?」俺は自分の手を見て愕然とする。なんと自分の腕が自分のものではなくなっており代わりにあの白い物体の塊みたいなものが俺の右手にまとわりついており、それのせいで自分の手が俺の意思に反して勝手に動き出しているような状況に陥っていたのである。そして俺の意志を無視して動く自分の腕を見た俺はなぜか自分の腕だという気がしなかった。

それから俺は必死になって自分の意志で動かしようと試みたのだがまるでいうことを聞かないどころかどんどん悪化していきついには自分の顔までもが変化していくではないか。俺はその姿を見て絶望してしまう。だがそれと同時に俺の中にあるもう一人の自分が現れたかのように冷静にこの状況を見極めていたのである。

(ああ、これはもう駄目かもしれんなぁ、せっかくルチアと一緒に幸せになれたというのに結局こうなる運命だったということか?でもこれでよかったのか?このまま何もできずに死んでいいのか?)と俺の中で自問している声が聞こえてくるのだ。だが今の俺ではこの場を切り抜けることもこの腕の動きを止めることができないとわかってしまった。だから俺の意識はここで消えるのだろうと思った時に俺の手の平の皮膚を切り裂きそこから鋭い爪が伸び始めてしまった。その現象に俺は驚愕したがその前に、なぜか体全体が軽くなっていることに気づいた。それに気づいた時には俺が操れる部分がほとんど無くなってしまっており、残ったのは体全体だけであった。しかも俺は自分の姿に違和感を感じていた。なぜなら俺の体が人の物ではなくなっていったからである。まるでドラゴンのようになっていたのだ。だがそんなことよりも俺は早く逃げなければと思って走り出す。

そして俺はなんとかその場から離れようとした。するとなぜかさっきまでは全然いう事を利かなかったはずなのにこの瞬間に言う事を聞くようになり俺が操れるようになった。俺はそのまま全速力で走ろうとするが思ったように走ることができず、俺は転んでしまい膝を強く打ち付けてしまいその場で気を失ってしまうのだった。

俺が目を覚ますとそこは森の中のようだ。俺はまだ頭がぼんやりとしたままで起き上がる。するとそこには信じられないものが存在していたのだ。それは人の顔のような形をしており目は四つも存在していた。口も三つあり手足が四本生えている化け物が俺のことを見下ろしていたのだ。それでその魔物はいきなり俺の頭に手を伸ばそうとしてきたので俺はすぐに距離を取り警戒をする。そこで俺はその生き物をもう一度見ることになったのだがよく見ればその姿はドラゴンに似ていることがわかる。それで俺は確信したのだ。この魔物はドラゴンではないのかと思ったからだ。その根拠はドラゴンは俺に対してとても友好的でいつも一緒だったのでその特徴をしっかりと把握することができたからである。

俺は、なぜドラゴンがこんなところにいるんだろうと思った時にある一つの答えにたどり着くことができた。それはルチアナ王都から逃げる時に一緒に来たドラゴンの子供ではないかと考えたのである。そして、ルチアと分かれた後のドラゴンの行動を思い出す。確かにドラゴンと分かれてからここまではかなりの時間があったはずだ。その時間でドラゴンはこの国に来ていたと考えることができる。だとすればドラゴンもこの近くにある村にたまたま訪れていたという可能性もあるのではないかと思い至る。

そして、俺はこのドラゴンに事情を聴くべく話かけようとしてふとその視線がある場所に向けられたことで俺は硬直する。なぜならドラゴンの目がルチアに向けられていたのだ。そしてその目が赤く染まっていることからその瞳に宿っている感情を読み取る。その赤い色は怒りの色を示している。ドラゴンは俺に向かって殺せと叫んでいるのだ。それはきっとこの国の人達に対する敵意から発している言葉だと思う。だが俺からしたらこの子まで攻撃するつもりはなかった。なのでどうにかして落ち着かせようとする。しかし俺の声は一切届かず、俺の頭は吹き飛んでしまった。そこで俺は再び目を開けたのである。そして目の前にいたのはまた同じ魔物の姿があり俺はすぐにそれが自分だと言うことにようやく気づくことができたのである。そしてなぜ俺は殺されたのかと思うと同時に俺が生きていることが奇跡に近いということを悟ってしまう。俺はあの一撃を受けて完全に死んだと思っていたのにどうして俺だけが生き残れたのかと。

それから俺は立ち上がり周りに敵がいないことを確認し移動を始めたのである。俺にはまずしなければならないことがあった。それは自分の体を治すことである。この状態がいつまで続くのかわからない以上俺の体に何らかの異常が起こっていないとは限らない。だから俺が今できることは自分の体を治療することであった。だが俺はすぐにその行動を諦めることになる。俺が傷つけたはずの右腕が全く再生していないばかりか俺の腕は白い何かに包まれているのだ。そのことでこの状態は非常にマズイ状態だということを俺は自覚したのである。

この状態が続く限りは俺は元の状態に戻ることはあり得ないのかもしれないと思ったのである。だからこそ、今は自分の身体に起きているこの症状をどうするべきか考えなければいけないと感じたのであった。

(とりあえずこの場所を離れなくては)

俺は自分の姿を見られればどういった対応をされるかわからなかったので俺はこの国から出ることに決めたのである。幸いにもこの国は他国とは離れすぎているほど離れているし、ここへ辿り着くまでに他の街や村はなかったので問題なくこの先の街へ行くことができそうである。ただ問題はここから一番近い街までの距離がかなり遠く歩いて行くとなると、どれだけかかるかもわからないうえに、今俺の体調はあまりよろしくないので正直言って歩くのも億劫だったのだ。だが俺は今の状態で襲われたら対処できる自信はないと考えたので仕方なく徒歩で移動することにした。

こうして歩き出した俺は森を進んでいくうちに日が落ちてきて空が夕焼け色になってきた頃、俺は大きな岩に寄りかかって休んでいると背後で足音がしたので俺は急いで隠れようとしたが、すでに俺がいることを相手に知られてしまっているので意味がなかった。

その相手は、人間の少女が俺に声をかけてきたのである。

「ねぇ、君ってどこから来たの?もしかして人?それとも魔物なの?」少女はとても可愛い女の子で俺と同じかそれより年下に見えるのだが俺はその子の雰囲気に飲まれてしまっていた。俺は自分の素をさらけ出していたのであった。俺と少女は少しだけ会話をしたのだが俺が何者かを訊ねたのをきっかけに彼女の機嫌を損ねてしまったらしく俺は突然現れた少女に襲われてしまったのである。でも、なぜかその攻撃は全て避けることができたのである。

俺はその理由を考えてみると、自分の体の異変に気づいた。そう、俺の体は完全に自分の意志で動くようになっていたのだ。だがその代わりに体には違和感を感じるようになっており、まるで俺自身が俺でなくなってしまったような感覚に陥ってしまう。

(一体俺に何が起きているというんだ?)と俺は心の中で思うのであった。だがその答えがわかることはないので俺はその気持ちを抑え込み戦闘に集中することにする。だが相手の武器は剣のようでその斬撃を俺に放ってきたのだ。そこで俺は相手が本気で殺す気であることを感じとると俺は全力で避けようとしたのだが俺は相手に背中を切られてしまう。そのおかげで俺は体勢を崩してしまい俺は地面を転がり続ける羽目になる。

だが俺が受けたダメージはほとんど無いといってよかった。なぜなのか自分でも分からないがそのおかげで俺はなんとか戦うことができるのだと思ったのだ。それからはしばらく俺は戦い続けたのであるが結局勝つことはできなかった。

俺は何度もその攻撃を受け流したりしていたのだけど、結局は防戦一方で攻撃に移ることができない。

俺の攻撃は彼女には届かない。なぜなら彼女はそのスピードを活かして俺に攻撃を繰り出していたからだ。だがその攻撃を避けたり受け流している間に俺は気づいたことがある。

それは俺の体の防御力が上がっていたことである。おそらくさっきの少女との戦闘で俺は何度か切りつけられていたが痛みをほとんど感じていなかった。

つまりそれは彼女が持っている攻撃力より、俺の方が防御能力が勝っていたということである。その事実を知った俺は、今度は彼女に向かって突っ込んでいくと、そのまま彼女を殴りつけると、そのまま吹っ飛び気絶したのだった。その光景を見て俺は唖然としてしまうが俺自身でもこんな簡単に決着がつくと思っていなかった。それだけ彼女の攻撃の威力が高かったのだ。

(俺のこの力はなんなんだ?)と思いながらも今の自分には理解できないので諦めるしかない。だからそのことは忘れることにしたのだ。それよりも今の俺は自分の状態を少しでも回復させる必要があると考えていたのである。そこで俺は近くに川を見つけるとそこに飛び込み体に付着していた血を流していったのである。それから俺は、俺が持っていた携帯食を取り出しそれを食べながら今後のことについて考えていたのだった。

(このままここでじっとしていても仕方がない。ならどこかの街へ向かうべきだ。その前に一度俺の能力を確認するか)

俺は自分の能力を確認したのである。その結果わかったことをまとめると、俺のステータスはこんな感じになっているのだ。

**名前:未設定

年齢:15才

Lv1/100 HP:50/50

力 :150+10

敏捷性:80+120

体力 :253

知力 :200

魔力 :45 スキル

『筋力増強』

*

* * *

そして俺が新たに得たスキルが二つあり、それはこの世界の人間が持っていないであろうと思われるスキルである。それは『魔力操作Lv5』ともう一つ『魔力探知 LV5』という二つのスキルである。

そして俺は新たに覚えた魔法について詳しく知る必要があったのだ。なぜならこの世界では魔法の使い方は知られていないのが普通なのだ。そしてこの世界には存在しないとされていたスキルの一つである『魔力操作』と『魔力探査』を覚えていることでこれからの行動が楽になりそうな気がするのである。それに俺の予想だがこれらのスキルはこの世界で俺しか使えないはずでその俺がこのスキルを使っていけば自然とその正体がばれることは無いと思うのだ。ちなみになぜこのような考えになったかというとその根拠がある。それは今までにこの世界にやってきた人間は俺以外には存在しなかったはずであるからだ。そしてもし俺の前に他の異世界人が現れているとしたら俺はそいつがどんな存在か知りたかったからである。それで俺はあることを思いついたのだ。この世界に来る前は俺には特別な力がありそれを試してみたいと思っていたがこの世界に来てからもその力を有効活用できていないと感じていたのである。なのでこの世界を旅する中でその方法を探ろうと心に決めたのだ。

(とりあえずは近くの町を目指すことにしよう)

俺はこの場を立ち去ろうとした時ふと地面に落ちていた剣を発見する。そして俺は剣を拾い上げると俺はこの剣の手入れをしていると、俺が持っていた剣の刃にヒビが入ってしまった。だが俺の持つ剣は普通の鉄の塊を加工しただけのものだったのである。だから俺が手にしているこの錆だらけの刀身は間違いなく壊れていたのだと判断する。それでもまだこの武器を俺に与えてくれた人に申し訳が立たなかった。

そこで俺は剣に鑑定を発動する。

すると、その刀身の名前が浮かび上がるのを確認し俺はその刀身に目を向けると驚いた。だってこの武器の名前に浮かんだ名前はこう書いてあったのだ。

【聖剣エクスカリバー】

この文字を見た瞬間俺はこの先この武器が役に立つことが無ければいいと願った。

俺はこの場で少し休むことに決めて夜まで寝る事に決める。そしてその時間の間にこの体の違和感について調べることも俺の中では重要だったのだ。そして結論から言うと俺の体は異常がないということがわかって俺は少しだけほっとする。それからは、俺は自分のステータスを再度確認することにした。

(そういえば俺の能力はどこまで上がってるんだろうか)と俺は思う。

それから俺は改めて俺の能力をもう一度見ることに決めると俺の頭の中に自分の情報が映し出される。

俺はその情報を見ながら俺は自分の能力値がどうなっているのか見ていく。

レベル 99(MAX)

1/100

(上限が100なのはわかるが、どうして限界を超えているのかわからないんだよな。俺のレベルの限界はそこまで高いものじゃ無かったはずだ。そもそもどうしてここまで強くなったのだろうか。このステータスの高さを考えるに、何か別の原因があるのではないのかと疑ってしまう)

俺が一番疑問に思っているのが、俺の現在のレベルである。確かにこの世界ではかなりの強さを持っていると自負していたが、それはあくまでこの世界でも俺の力が通じる範囲内の話であり、俺が知っている強さよりも遥か上の敵がいることは確かである。そんな相手に対していくら俺がこの世界の最強クラスの存在とはいえ、今のレベルで挑めば負けるのは当然だと思うのだ。だからこそ、俺は不思議でならないのである。

そのことを考えても俺は納得できなくて、俺のこの異常とも言える成長に何か裏が隠されているように思えるのだった。

俺が自分の現状に疑問を持ち始めた頃俺に一つの声が頭に響いたのである。

「久しぶりね。ルクス。元気だった?」と、 俺はこの聞き覚えのある懐かしく感じる声に心の底から喜びを感じたのだ。

「あぁ。なんとか生きてるよ。でも正直言って俺に話しかけてくれて嬉しかったぜ」

その言葉を聞いた彼女は、「フッフフ。そうかしら。あなたは本当に面白いことを言うわね。まぁいいでしょう。それで私からの質問に答えてくれる?」と言ってきた。

「ああ、構わないけど、でも俺にはまだやることがあるんで後でも良いか?」と、俺の言葉に彼女は「えぇ良いわ。ならまず先に私の方の状況を説明しましょうか?」と、その前に一つだけ聞かせてほしいというので俺は彼女に何を知りたいのか尋ねた。

そう尋ねると彼女は俺の持っている剣を指差す。

俺はそれを見ると彼女が何を気にしているのがわかった。俺はその彼女の問いに、そのことについて詳しく説明していく。この剣がこの世界ではどのような評価を受けているかを、この剣の名前は聖剣と呼ばれる代物で俺の故郷にある神話にも登場する有名な武器だということを説明すると彼女は驚きをあらわにしていた。俺は、それからその聖剣はどういう経緯で俺の元に来たのが話し始めると彼女は、その話に興味を持ったので、最後まで聞くことに決めたようだ。

俺も自分の身の回りに起こった出来事を最初から話すことにした。そしてその話の最後にはこの世界に突然転移してきたという話もしたのである。

俺は自分の話を終わると、今度は彼女の話を聞いたのであった。だが、その話は衝撃的な内容であった。なぜなら俺の目の前にいる彼女はなんとこの世界の住人ではなく別の世界で暮らしているというのである。俺は最初その発言に驚いたものの俺が彼女と出会ったときのような不思議な現象が起きたのだとすぐに気づく。俺はそこで俺は彼女に尋ねてみると俺の予想は的中していた。そして俺はその事実に驚愕していた。

(まさか別の世界で生活していた人間に出会うなんて)と俺は思いながらも、俺は彼女のその話が嘘でないと確信できたのだ。その理由はその話があまりにも詳しかったためである。例えばその世界で彼女は女神として崇められているという。そこで俺は自分が持っている剣に視線を移すと彼女もそれに気がついたらしく「これはこの世界のものではないのですか?」と言われたのだ。俺は素直にその事実を伝えることにする。

そしてその剣が俺の手元に現れたときの事を説明した上で、その能力のことを彼女に伝えた。そしてこの剣の力を確かめたいと彼女が言ったことからその能力を使うと、この世界では有り得ない能力の数々を見てさらに驚いていた。そして俺の能力にも興味を示していたがそれは俺自身もよく分かっていないため今は無理だと言ったのだ。

「わかりました。その能力についてはいずれお会いする時にでも教えてください。それと、あなたにどうしても伝えなければいけないことが一つあるのです」

俺は彼女が真剣な顔になったことに気づいた。

そこで俺もこの世界に危機が迫っていることは理解していたので、そのことを伝えると、やはり彼女も同じ状況だということがわかった。だからお互いにこれから起こるかもしれない問題について相談してみたのである。

そして話し合いが終わると、俺はそのことについては一旦考えるのを止めると決めた。そのことの優先順位は低かったからだ。だから俺と彼女はこれからの俺たちの行動を話し合った。

「これから私たちはどう行動するつもりなんだい?」と、俺は彼女に向けて言うと、彼女はその問いかけに対する返事の代わりにその世界への行き方を説明されたのである。その方法はとてもシンプルで俺の持つアイテムボックスの中に俺のいる世界の座標を記録したクリスタルがあるのでそれを渡して欲しいというものだった。俺はすぐにそれに応じると彼女は嬉しそうな表情をするのである。

「これで、やっと私の使命を果たすことができる。感謝します。これでこの世界を救えることができます。この世界のために命を賭けられる仲間ができてしまった。本当に私はついていますね」と言う。そして続けて、俺の方に向かって微笑むと、「ルクスさん。これからよろしくお願いいたしますね。この世界を救う旅をどうか手伝ってください。あなたの協力が必要なんです」と言われる。俺はそれに答えるためにこの旅について考えながら俺にできることはないかと思い始めていたのである。

それから、この世界を救うためにお互いに協力していくことを俺と彼女は誓うのであった。そして俺の意識が戻るまで俺の傍についていてくれるということだったので俺はその申し出を受け入れさせてもらう。すると、急に眠気が襲ってきてしまったのだ。俺は自分の体力の限界を感じ取っていたのでそのまま深い眠りについてしまうのだった。だが、最後にこれだけは言わせてもらおうと思った。なぜなら俺が次に目覚めたときにはもう既に外は朝になっていたからだ。だからこの洞窟の中に俺以外に誰もいなかった。

そして俺と彼女たちの運命を大きく左右するような戦いは、今この時から幕を開けることになったのだ。

そしてこの後に俺は王から受けた任務を無事に完遂することに成功することになるのである。それからしばらくして、俺と仲間たちが再会を果たせる時が来るのだった。

そのあとに俺はあの老人から剣を受け取るとその場を去ろうとする。

その時俺はその爺さんの目が笑っていることに気づく。

(なんか嫌な予感がするんだよな)

俺がそう思っていると俺の前に立ち塞がるように一人の兵士が俺の前に現れた。その様子は少し慌てており焦っているようでもある。

俺は、そんな兵士の様子が普通では無かったのでとりあえず話しかけることにした。

俺はとりあえず何があったのかを聞いてみるとこの最下層付近で、謎の生物に襲われたという。俺にはこの階層のボスであるゴブリンナイトとジェネラルが暴れていたぐらいしか思い当たることがなかったのでそのことを伝えると兵士たちの緊張が緩んでいくのが分かる。

(俺が、何かしたのだろうか?)

俺にはまったく心当たりがなく困ったような表情をしているとその隊長格の男からこんな提案を受けたのである。それはこの遺跡の探索を中断して上に上がるかこの先に進むかの判断を任せたいと言われ俺はその質問の意味を理解していなかった。だがその後に続いた説明を聞く限りは上の方にかなり強いモンスターが待ち構えているらしいのである。それを聞いた瞬間俺はその言葉を聞き流し上の階に向かうことを決めると兵士達にその旨を伝えてその階の上に続く階段へと案内してもらうのであった。

それからしばらく歩き続けるがなかなか目的地に着かないなと少し疑問を抱き始めたところでようやく上の階に着くことができたのである。そのフロアに辿り着くまでの道のりでかなりの量の魔石を手に入れることができた。そして俺は上の階につくと同時に自分の目を疑う。そこは一面に草原が広がっていたからである。俺はこの光景を目にするとなぜか無性に飛び回りたくなっていた。俺はそんな衝動を抑えるようにその場でジャンプをしたり体を軽く動かす程度に止めるのだった。それからこの空間の広さがどれくらいかを確認するため俺は走り出す。それから数分ほど俺は全力で走ったのだが一向に景色が変わることがないのである。そこで俺は自分がこの階層の大きさに驚かされるばかりだということを理解するのだった。

俺はそれから休憩をとるとこれからのことを改めて考えてみることにする。そしてまずは食料調達のために魔物でも狩ろうと動き出そうとしたがその前に腹ごしらえをしていこうと考えた俺は近くに生えていた果物らしきものを採取することに決めてからそれをいくつか採ることにして俺はまずは鑑定をしようとステータスウインドウを開こうとしたその矢先、俺はその違和感に気づく。なぜ今までこの世界に俺の知らないものが沢山あるのにもかかわらず不思議とそれらの名前が理解できるのだ? そして俺はこの世界の常識というものをほとんど知らないことにも気づいた。

「まあ、考えても無駄だろうな」

俺は思考を放棄すると、近くの木の実や野草などを取り込んでいき食べれるものを選んでから俺も昼食を食べることにした。俺はそれからしばらくの間、この階層で戦闘の練習をしながらその階層をくまなく調べていったのである。その結果俺の索敵に大量の反応が現れた。その数は優に100を超えておりその中には強敵と呼べる存在の反応がいくつか見受けられたのである。俺はそれから俺は戦う前に少しでも情報を手に入れておきたかった。なのでその集団に対して俺は隠密を発動してから近づくとそこからは一方的な殺戮が始まるのだった。まず俺は一番大きな力を感じた一体に向けて剣を振っていくとそれが真っ二つに割れて倒れていくその様子に俺は少し驚きつつも次の獲物に視線を移すのであった。そして数分もしない内に俺は周囲の敵の殲滅に成功するとこの階層にいるすべての敵に俺の存在がばれてしまうが、特に問題はなかったため俺は残りの敵の場所に向かって歩いて行った。その途中に多くの魔物と出会うも今の俺にとって大したことなかったこともありほとんど瞬殺で倒していった。

そしてその階層にいる最後の一匹を見つけるとそれはなんとゴブリンナイトと呼ばれる種族の上位種であることが分かったので俺は試しに手合わせしてみたいと思うと俺の姿を見ると逃げようとしていたが俺はそれを許さずにすぐに追いつき首を落とすと絶命する様子を見届けてから死体を回収して他の戦利品と一緒に収納することにした。その後は特にめぼしいものは手に入らなかった。そして、それから俺はまた同じように魔物を探し始めて狩りを始めようとしたときにふと、このダンジョンが攻略されていることを思い出した俺はそこで俺は一度外に出ることにした。そして俺が外に出るのにそれほど時間はかからず俺は地上に戻ることに成功していたのである。

俺が遺跡の外に出てくるころにはすでに空が暗くなりかけていたため急いで帰らないとと思い俺は早足で町に帰ることにするのであった。そしてその途中俺はその町にたどり着いた時にこの国の名前を知らなかったことに気づき俺はすぐにこの国の王に挨拶をするために王都を目指すことに決めたのだ。だが、その最中に俺は俺が持っているスキルのことを思い出す。それはレベルを上げることで取得できる経験値倍増という技能だっのである。俺はそれを確認するためにもう一度メニュー画面を開こうとすると視界に突然ウインドウが現れるとそこには、 《称号を獲得しました》 という文字が表示されていたので俺がそれを確認してみるとそれは『勇者』と言う名前の称号だった。俺はその称号を見て俺は嬉しく思うとともにその恩恵を受けることができると実感していた。それからしばらくして俺の体の変化が起きていることに気がつくと俺は嬉しさのあまり小躍りしたくなる気持ちを抑えて俺はその力を早速確認し始めるのであった。その時にちょうどよく通りかかった馬車の御者に不審な目で見られるがそんなことはもはや気にしていなかった。

そして俺がその力を確認していくうちにその力は想像を絶するほどの力であり俺は歓喜しながら自分の力を確かめるためさらに実験を続けることを決めるのであった。そして俺はこの世界の人たちがこの世界でどのような立場になっているのかを確認するべく王城に訪れるのだった。その道中で俺の姿を見かけると人々は驚いた表情を見せるが俺のことなど眼中にないと言った感じの人が多かったのだ。

(これは本当にこの世界では俺はどういう風に思われてるんだろうな)

俺はその答えを知るのを少しだけ躊躇いながらもそれを知っていく必要があると自分に言い聞かせて俺はその真実を確かめに行くことを決意するのであった。だがそんなことをしている間も、俺は自分の強さを確認するためにステータスの確認を続けていた。

それから少しして俺の頭の中に直接アナウンスのような声が聞こえてくる。どうやらこの世界に来てからこの力が使えなくなってしまったかと思っていたのだがどうやらそれは違ったようでよかったと内心ホッとすると同時に俺はこの力が戻ってきたということに喜びを感じているとその能力の一つでもある俺の記憶の中にある物を作り出すという機能が使えることに気づいた。そこで俺は早速俺の愛用していた装備である剣を作るとそれに魔力を込めてみる。すると目の前に俺の知っている形をした剣が出来上がっていったのだ。そしてその剣が出来上がった時には俺は感動のあまりに思わず泣いてしまうほどだった。

(これなら俺の強さが疑われることなく堂々と行動できるはずだよな。それにあの力もこの世界の住人がいれば使うこともできるから、もう負けることがなくなるぞ。この力があればこの世界でも最強になれるんじゃないだろうか?)

俺はこの力を手に入れたことがうれしすぎてついついニヤけてしまいながら王城に向かうのだった。

王城に向かう途中でこの世界について改めて確認していくと、この世界には元々俺たちと同じ日本人が何人もいたようだが、俺以外の奴は死んでしまったらしく、今はこの世界には俺しか存在していないようだった。

俺はそれから、王城の門の前にたどり着くと俺の存在に気づいて兵士が慌ててこちらに走ってきてくれるが俺はそのまま無視するかのように王城を後にしようとすると慌てて追いかけてきた兵士の一人が俺に声をかけてきて俺は振り返るとその兵士が、俺の姿を見て驚く。だが俺はそれを無視してそのまま立ち去ろうとするが、兵士たちはそんな俺を引き留めるので俺はその兵士たちの顔を確認するとなぜか見覚えのある顔の連中だったので立ち止まって俺は何事もなかったかのような素振りで話しかけるのである。そしてその男たちが、俺が元の世界でよく絡んできて迷惑していた男どもだという事に気づくのだった。そのあと俺が何をしているのかを問いかけた瞬間、俺は意識を失うことになる。そして次に目覚めた時、周りにいた人間たちが急に騒ぎ出したと思ったその時に俺はようやく自分の身になにが起こったのかわかった。そしてそれと同時に怒りが爆発しそうになった。

(くそが!あの野郎!あいつらのことは嫌いじゃなかったがこいつらはただ単に邪魔でしかないから殺そうと思ってたんだが、まさか先に手を出されていたなんてな。だがここでこの世界に召喚されたばかりの俺はやられっぱなしのまま引き下がるほどやわではないからな)

それから少しして、俺がこの世界に来る前のことを思い出してその当時のことを思い出すと俺の中での復讐心が高まっていったのである。俺のその感情の高ぶりに合わせてその体からは禍々しいオーラを放ち始めその様子にこの部屋にいる全員が怯え始めていたのである。そして俺は立ち上がるとその部屋の壁に向かって全力で拳を振りぬくと、俺が放った一撃により大きな穴が開くと同時に俺は全力ダッシュでその場から離れる。するとその直後に大きな爆発が起こり俺は咄嵯の行動で回避することができた。

(ちっ!少し外してしまったか)

だが、それでも俺は満足するとその威力を確かめるために今度はこの世界の技を使ってみることにしてみた。まず最初に俺が行ったのは、身体強化魔法を使い身体能力を上げてからそれから風魔法を発動させると俺を中心に竜巻が発生していく。それから俺は思いっきり跳躍すると壁を破壊してからその勢いで天井にまで飛び上がるとそこから回転をつけて落下すると地面で俺の衝撃を受け止める。そして俺は地面に足をつけるとそこで動きを止めるのであった。その瞬間この部屋の空気が一気に変わったような気がしたが俺は構わず次の行動を起こそうとしたその時に俺は誰かの気配を感じると俺は即座に後ろを振り返る。

そこには一人の男が立っており俺はそいつもさっきの兵士の仲間なのかと瞬時に理解した俺はいつでも戦闘をできるよう身構えていた。その男は俺よりも身長が高く筋肉質でかなりの実力者だと直感でわかってしまった。そして俺がその人物を見つめると相手も俺を観察していた。その隙に俺が何かを仕掛けて来ないと確信を得た相手が俺に向けて話し出す。

「貴様が噂の大賢者か?」

「そうだが、それがどうかしたのか?それよりも俺に攻撃を仕掛けてこないという事はやはりお前たちもあの部屋にいたのか?それとも偶然あそこを通りがかったのか?どちらにせよその反応を見るに俺を襲おうとしていたようだな」

「ふん。その通りだ。貴様に恨みはないが、俺の計画を邪魔した罰を与えに来ただけだ。それに俺はその計画を実行するのにちょうどいい道具を見つけたからその前に俺の手で処分しようと思ったわけだ」

その男の口から発せられた言葉を俺は信じられなかった。なぜなら、この俺の予想はどちらも当たっていたからだ。そして俺が驚愕していることに気がついたのかその男は俺が驚いていることに対して少しばかり笑いを浮かべながら言葉を続けた。

「ははははは。その様子から察しの通りだ。実はな、この国の王も俺たちの仲間だったんだよ。いや、仲間と言うより協力者かな。まぁそこは別にどっちでもいいことだがな。それと俺は勇者として召喚されるはずだったんだがこの世界ではすでに勇者がいるらしくて、代わりに俺がこの世界にやってきたんだ。それでそのついでとでも言うべきか俺は今ある計画を立てていてその実験も兼ねて俺がこの世界を滅ぼすことになったんだが。それをお前のせいで台無しになってしまったんだよ。この世界には俺たちの敵しかいないということがわかったのだから、俺はそんな無駄な時間を過ごしていたことを後悔しているところだよ。そして、この世界に存在する全ての種族を殺し尽くす。そして、最後にこの世界に残った俺の種族を神の座につかせてもらうことにしてある。そのためにこれから俺は準備をするがその間にも他の勇者の奴が色々とやってるみたいだな。俺が召喚されなかったのが不思議だったから少し探ったときにそんな話を聞いたから間違いないと思う。だが、俺にとっては都合が良い。俺は勇者になんかなりたくはないからね。勇者になったところでろくなことにはならないだろうしね。そのおかげで俺は自由に動けると言うものだ。それに俺はこの世界に飽きていたからこの機会を逃す気はない。俺の計画のために犠牲になってくれや大賢者さんよぉー!!!」

その男はそのように叫びながらこちらに向かってくると俺はすぐさま剣を構えるとその攻撃を防いだのだ。しかし、その男の攻撃はあまりにも重く、俺は受けきれずに弾き飛ばされてしまう。だがその程度で俺は諦めたりはしない。俺は空中で体制を整えるとその攻撃を繰り出してくる男に蹴りを放つがそれも受け止められてしまい俺は一度距離を離すことにすると俺にはまだ切り札と呼べる力が残っていることに気づいたのである。

「おい、まだ戦いを続けるつもりならその力を俺に見せてみな!」

その挑発を受けた男は不機嫌そうな表情になるとそのまま向かってきた。だが俺の方がスピードに関しては上でありその攻撃をことごとく交わして見せると今度は逆にカウンターをかましていく。そして俺が相手にダメージを与えていることを確認すると次は俺が反撃を始めるのである。

俺の反撃の速度はかなり早くなっている。それはステータスの数値の差があるから当然と言えば当然なのだが俺の場合のそれは異常なまでに上がっているので、おそらく相手の目にも留まらない速さだと思う。そのくらい俺は速くなっていたのだ。だがそれでもその男はギリギリではあるがついてくることができるようになっていた。

(こいつ化け物すぎるだろ!しかも俺の想像以上の能力を持っているじゃないか。それにこの力はやっぱり凄まじいな。俺の想像していた通りにできている。だがこいつの力がこれだけとは考えられないな。もっと上の実力があるに違いない)

そう思った俺は、さらにスピードを上げていく。するとそれに気づいたのか男もそれに合わせるように動きを早めていきお互いの動きに差がほとんどなくなったその時、突然その男に限界が来たようで一瞬体が硬直する。その瞬間を見逃すはずがなく俺の拳はその男の顔を捉えて吹き飛ばすのであった。

(まさかこれほどの力を有しているとは、流石は勇者ということなのか?)

俺は、その男が倒れていることを確認するとそのままこの国を出ていこうとすると、そこで俺は違和感を覚える。そして俺はその異変の原因を突き止めるために俺はすぐに走り出した。それから俺は、王城の敷地内の上空に到着する。だが、俺の目にはなにもおかしな点はなく特になにも感じることはないのでそのまま地上に降りようとするとそこで俺は見てしまったのである。「嘘、だろ。あれは一体なんだっていうんだ!?」

そこには巨大な魔物が存在していて、それを見た俺は思わず動揺してしまう。そしてそれと同時に嫌な予感を感じ取った俺はその気配の方へ向かっていくと、その巨大魔物が動き出していて、こちらに近づいてきていたのである。

「これはもう戦うしか道がないよな。それにしてもまさかこんなやばい相手が出てくるなんて想定していなかった。だが、やるしかないようだな」

そう口にすると俺も全力で駆け出して行くのである。そして俺がその場所に到達すると、その魔獣は、雄たけびを上げて、そして俺に向かって突っ込んで来る。俺はそれに対して身構えるとその攻撃を受け止めるとそこで押し負けそうになったので俺が受け止めている部分を斬りつけると、それによってできた傷口から大量の血が流れだす。だが、それと同時に痛みが伝わっていないのか、まるで効いていなかったのである。

それから俺は何度もその巨体から繰り出される攻撃を受けるが俺が与えた傷は全て塞がり元に戻っていた。

そして今度は俺がその攻撃を繰り出すがその威力はあまり通じておらずにまた同じように攻撃を受けてダメージを受けてしまうが、俺はそんなことを気にすることなく攻撃を繰り返した。

すると少しずつ俺の体力が削られてきた。

そして俺はその隙をついて魔法を発動させることにしたのであった。その魔法は風魔法の上位にあたる雷魔法を使ったものだった。その魔法を使うことで俺の持つ魔力の大半を消費してしまいその反動で倒れそうになる。だが、それでも俺は必死にその魔物を抑え込むことに成功した。

それから俺の放った魔法が命中して大きなダメージを与えることができた。それにより俺が抑え込んでいた巨体の魔物の動きが鈍くなり始めそれに合わせて俺はさらに攻撃を加えると、その度にその肉体が崩れ始める。その崩れた部分も俺が斬ることで再生することは出来ずに、次第に魔物は動かなくなるのだった。

それから俺はその魔石を回収したあと、その場から急いで立ち去るのであった。そしてその後のことだが、俺は何とか城まで戻ってくるとそこで俺の仲間がすでに到着しており俺を待っていたようであった。俺は仲間の方を見るとそこで安心感からその場に座り込みながら、仲間たちの名前を呼んだのであった。

そして俺はその日から数日間は眠りについていた。理由はあの時の戦いの疲労によるものだろう。それから目が覚めた俺は自分が生きていることが奇跡に近いことだと思っていた。なぜなら、あの戦いで確実に死ぬはずだったのだ。だが、運よく生き残ったことで俺はこうして今、生き長らえているのだ。だからこそ俺は自分の身に起こったことを整理することに決める。

(そうだ、俺は死んだんだ。それで何故か俺は意識を取り戻した。だが、その前に誰かに呼ばれていたような気がしたのだがそれは気のせいなんだよな?だけど俺が死んだ後にいったい何が起こったというんだ?)

そしてそのことを考えると頭が痛くなったのでこれ以上考えるのをやめて今の現状に考えることにしたのである。そして俺は起き上がるために体を起こそうとするとその腕が動かないことに驚いてしまうが、その理由を考えてみることにする。まず最初に考えられるのはこの世界に来たときの状況を思い出すと、俺の体は死んでしまっているはずである。なので俺はこの世界では幽霊のような存在になてしまっているはずだと思ったが俺はしっかりとその手に触れることができたのである。ということは、この世界でも死人というわけではないらしいな。

それなら、なぜ俺は動くことが出来るのか。そのことについて俺は色々と考えると一つ仮説を立てた。その可能性は二つあり、そのどちらともが今の状態に関しての説明がつく内容だった。その説明をするならば俺は、仮死の状態になったのではないかと考えたのである。

そしてその説が本当だったと仮定するならば、おそらく俺の命は尽きていたはずだ。そして俺は死に際に何かの魔法を使って自分を強制的に復活させてこの世界に蘇ったということが言える。しかし、俺はどうしてこの世界に来れたのかが疑問に感じたがそれはすぐに解決した。なぜなら俺がこの世界にやって来たときの状況を考えると俺を異世界召喚した張本人に俺のことを殺されたというのが一番しっくりくることだからだ。それに俺の体に傷をつけたやつは、あの世界には存在しなかった奴だったしな。それに俺に止めを刺そうとしてきたやつもこの世界の人間だったのも気になる。それにその男が言っていたことも気になるが今となっては何も知ることが出来ないので俺はこの謎は忘れることにしたのである。

それともう一つの方はというと俺はこの世界に存在する【蘇生薬】と呼ばれるものの存在を知ることになるのであった。というのもこの世界は俺が生きていた時代よりも文明レベルがかなり高いもので科学というものが存在している。だから俺はこの世界でならそのようなものがあるかもしれないと思ってその可能性を考えたがそもそもその可能性は低いと考えていた。だが俺は実際にその存在を知ったときにその可能性が現実味を帯びたものになり俺はそれを入手しようと行動を開始した。

「でもどうやってそれを手に入ればいいんだ?」

だが、俺はそれが手に入る方法を知らないのである。そしてそれを悩んでいるとそこで俺はふとあることに気づくのである。それは、この国の王城の地下にあるダンジョンの奥深くに行くと宝箱があってその中に蘇生のポーションがある可能性があるということを思い出したのである。

(よし。それならその方法が使えるかもな。それにしてもなんでそんな情報をこの国が隠しているのかわからんが今はそんなことはどうでもいいだろう。それよりも、このチャンスを逃すと俺はいつ死ぬかわからねえんだ。俺にはまだやりたいことがあるからここで死ねるわけにはいかない。そのために俺に残された時間は短いだろうが、その間に出来るだけ情報を集める必要がある。そして俺を召喚しようとした黒幕を探って俺を殺した犯人を絶対に捕まえる)

そう心に誓うと俺は仲間と共にその地下へと降りて行くのであった。そこで俺たちはある光景を目にすることになる。

その先には一つの大きな広間がありそこで大勢の人間が戦っていたのである。

そしてその中には聖女の姿もあって俺は彼女を見ると同時に少し動揺してしまった。何故なら彼女は全身が血だらけになっていて顔からも生気が失われており誰が見ても致命傷を負っているのは明らかであったからだ。そんな状況の中を、他の者たちは必死になって生き残ろうと剣を振り続けていたのであった。

(あれだけの人数がいたとしても劣勢だということがわかるな。やはり魔王軍の力が強いみたいだな。だがこの状況であいつらが勝つことができる確率は絶望的に低い。しかもあっちの聖女たちの装備はかなりボロくなっておりまともに戦えるとは思えないからなおさら勝ち目はないだろうな。それにあの様子だと回復役の奴らはもういないんじゃないか?)

そう思った瞬間、一人が敵の攻撃によって殺されてしまい残った者達はパニック状態に陥ってしまったのである。だがその時、その男に対して何者かが襲い掛かっていったのであった。

(このタイミングは俺が行くしかないか)

俺は急いで走り出すとすぐにその戦いに介入することにした。俺がその男の攻撃をいなすとそいつはすぐに後退していったので俺はすぐに後ろに控えている連中に大声で話しかけてみることにする。

「おいお前ら!今のうちに立ち上がって体制を立て直せ!こっからは俺に任せておけ!だから早くしろ!じゃないとこいつに殺られちまうぞ!」

俺はそれだけいうと今度は目の前の男に攻撃を加えたのである。すると俺の攻撃は、相手の武器を破壊しながらそのまま直撃すると、そこで相手は大きく吹き飛び壁にめり込んでいくのであった。

「流石は伝説の勇者様ですな。これほどの力を持つなんて、我々では歯が立ちませんでしたよ」

その声の主の方に振り向くとそこには、先ほどまでは誰もいなかった場所に老人が存在していた。

「そんなことはないですよ。貴方達も相当な腕前の持ち主ではないですか。ところで質問なんですが、ここの魔物たちは魔王軍に属しているのでしょうか?」

俺はそう尋ねると、男は一瞬怪しむような表情を見せたがすぐに答えてくれるのであった。

「確かに我々の部隊は全員が戦闘訓練を受けている兵士で構成されていますが、私自身は違いますのじゃ。ただ、私の家族が魔族とのハーフということでこの部隊に配属されているのですがの。そんなことを言っておると魔族の皆が怒られてしまうかもしれませんがね。そんなことを気にしない者も多いのですが」

そこで彼は笑い始めるので、俺もつられて笑ってしまったのであった。

そして、俺はこの男が嘘を言っている様子はなかった。なので俺はこの場で彼に色々と話を聞かせて欲しいという頼み事をしてみた。すると彼は快諾してくれ、この場に居る兵士たちに一度、指示を出すとその場から離れてくれたのであった。だが、その代わりに今度は彼一人で俺の元までやってきた。

(どうしたんだ?何か用でもあるのか?)

俺はそう思っていると彼の方が先に口を開いた。

その言葉に俺は驚くしかなかった。その話はあまりにも衝撃的すぎたのである。

そして俺達はお互いに自己紹介を終えると俺は早速話を始めたのである。

その内容はとても信じられないようなものだったが、それでもその話の全てを信じざるを得なかった。それは彼が嘘をついていないということが分かったのもあるが一番の理由は、俺自身も似たような境遇で生きてきたということもあるからである。その俺の生い立ちについては割愛させて貰おうと思う。

そして話が終わり、俺とこの部隊のトップであるゼムという人物の二人で作戦を考え始める。まずは魔獣の数を確認するとこのダンジョンの入口にいた魔獣は合計で三十匹ほどであった。それに対して、こちら側の人数は十名ほどでこの数の差があるので圧倒的に不利な状況は変わりはない。

「それなら俺に考えがあります。この魔道書を使えばどうにかできるかもしれない。でもこれは俺にしか使うことはできないと思いますがね。なので俺は、今から外に出ていって魔道を操れるように訓練します。だからその間に皆さんはこの拠点の防衛を頼んでもいいでしょうか?もちろん無理をさせるつもりはないです。なのでこの防衛ラインに近づかせないだけで大丈夫なので。それともし俺の身に何かあった場合は、すぐにここから逃げ出してください。そしてあなた方だけでも必ず生き残るようにしてください。それが約束できないならば俺はこの計画を実行には移すことが出来ませんのでよろしくお願いします。それと、これが俺の名前が書かれた命令状ですのでもしもの時はこれを使ってください。一応確認なんですがここにいる人たちの名前も覚えた方が良いですよね?」

俺は早口に一気に捲し立てるとその紙を手わたそうとしたのだが、それは途中で奪われてしまうのであった。その奪ったのは俺がさっき倒した敵の兵士であった。その人物は俺の名前を何度も見返すとそれを破り捨てて、他の人に渡すように指示していた。そしてその人物は他の者にも同様に破いた紙を渡していくと最後に自分に渡されたその紙を破るとこう言ったのである。

「貴殿が何を考えているのかわかりませぬが私はこの国の為なら命など惜しみはせぬ。そして、貴公の命は私が守りきって見せよう。だから安心して欲しい。そして我らに指示を出したということは何か勝算がおありなのだろう。ならその期待に我等も答えることにしようではないか」俺は、その言葉を聞くと素直に嬉しい気持ちになることができた。しかし、ここで油断してはいけないと思い、改めて気を引き締めることにしたのである。なので俺はこの人達が死んで欲しくないと本気で思いながらも自分の計画を遂行するために動き始めたのであった。

俺は今、【魔法制御】を使って魔力を練って、それを外に漏らさないようにする訓練をしていた。そして俺はこの世界で新たな力を手に入れていた。それが【スキルコントロール】である。その能力は、自分の中に存在する魔力の流れを感じることに特化しており、それによって魔法を使用する際に必要な魔力を調整できるようになる能力なのだ。これによって、俺も本来ならば難しいと言われている魔法の発動を可能にしているのである。この世界の人間であればほとんどの者がこの技術を身に付けているが俺のような存在には到底出来ないことであるらしい。だから俺がその技術を使っていることを知ると彼らは驚いていたが、そのことについて俺はあまり話すことはしなかった。なぜならそれは自分が異世界からの転生者でありチート能力を持っているという事実を話すよりももっと不味いことだと思ったからだ。そんなことをしたらどんな反応をするかわかったものではないからだ。だから今はこれ以上のことは言うことは出来ないのだ。それに俺の本当の力はこれだけではないからな。俺は、そのことを知られるわけにもいかないからな。でも俺はいつかこのことを彼らに伝えるべき時が来るとそう信じている。そしてその時が来た時には、俺の力をこの国のために役立てようとそう心に誓うのであった。

それからしばらく経つとついに魔道具の準備が終わったのだ。この世界にはまだ、通信系の魔術は存在せず、それどころか科学というものが発展していないことによりこのような高度な術式を使うことは非常に困難であると言わざるを得なくこの方法をとることでようやく完成した代物であるのだ。俺は、それを起動させると俺は仲間達全員に話しかけた。その瞬間、目の前が暗転して俺はどこかに飛ばされるような感覚を味わいながら意識を失ってしまったのである。そして次に目が覚めたときには既に朝になっていた。

俺達が魔王討伐の旅を始めてから数日が経ったがその間俺達は休むことなく旅を続けていった。最初はその過酷な旅に音を上げかけていた者も中には存在していたが次第にそういった者達は減っていったのであった。というのも魔王軍の幹部クラスの者が現れれば即座に撤退を繰り返していたからだ。そのためそこまで無理をした戦いを強いられることはなかったのであった。そして俺が今回、ここまで順調にこれたのは仲間たちの活躍によるところが大きいだろうな。まあそれも当たり前のことだと思う。何故なら魔王軍は俺達を殺そうと躍起になって襲い掛かってきているのに対して俺達の方には全くと言っていいほど殺意がなかったからだ。つまり魔王軍の連中にとってみれば俺はただ邪魔なだけの存在に過ぎないだろうなと思っている。まあそれでも向こうも馬鹿ではないから、こんなチャンスは二度と訪れることはないということも分かってるはずだからな。だが、今回の目的は別に魔王軍を壊滅させることじゃないから、魔王軍と直接対峙する必要性も特にないから俺はいつも通りのペースで魔王軍が根城にしている場所に向かっていったわけである。

そんな感じで俺が今まで戦ってきた相手の中で強いと感じさせられたやつは大体一種類だけだったなとそう思っているうちに遂に俺達は目的地へと到着したのであった。そこは山奥であり近くには小さな村が存在しているだけであった。しかもそこの住民の話によるとこの村は昔、王国だったらしいのだが今ではその王国もなくなってしまい現在は名前もなくただの山村となっているのであった。そんな村の外れにその場所が存在する。俺が、そこに辿り着くとその中心にある祭壇の前に人型の石像が設置されている。

そして俺の仲間達もそれを見て警戒をしている様子だったので俺もその石像をじっくり観察していくと俺は違和感を覚えずにはいられなかった。何故ならその石像は普通ではあり得ないような姿をしていたからである。

その石像は男の姿をしていたが普通の男とは違い髪が長かった上に背中には羽らしきものが生えているのだ。それだけではない、頭の上に輪っかがあるだけではなく服装に関しても男物の服ではなく女物を着ているという奇妙な格好をしていて何よりおかしい点があった。

それは性別である。その石像が置かれてる祭壇の中心に置かれている宝箱の中にあったものなんだけども男なのか女なのかが分からないんだよなこれが、それで結局、鑑定士の奴らが解析した情報により判明したことなんだがその石像の名前は女神リリアンと言う名前のようであるがどう見ても女性にしか見えないのであった。ちなみにこの女神のステータスを確認すると、かなり面白いことになっているので少しばかり拝見することにしたのであった。

俺が最初に確認したのは年齢だ。どうやらこの世界の年齢は見た目通りにカウントされるようだ。そして次に見たのは性別の方でこっちは何の問題もないことがわかったので俺は最後にレベルを見ることにした。その結果はかなり驚きのものとなっていたのであった。その理由としてはなんと俺の知る限りではこの世界最高レベルの99999という数値が表示されたのである。流石のこれには驚かされてしまったがそれよりも気になるのはこの神という文字の部分である。俺の記憶の中では神の階級についての知識は持ち合わせていないんだが何せこれは、神様本人だから当然かもしれないがな。だから俺の持っているスキルの中にこの神という言葉が刻まれている物が存在していなかったとしてもそれは至極真っ当なことであると言えるだろう。しかし俺は、ある一つの可能性を閃くこととなる。それはもしかしたら、こいつの権能に関係があるのではないかと俺は推測したのである。

そこで俺はすぐに試したいことがあったので、俺の目の前にいる仲間にお願いをすることにするのであった。

俺はこの場に居る全ての者たちに命令を出すことにした。その指示を受けた兵士たちはすぐにその場から離れていき魔獣たちを倒しに行こうとするのであったがその途中で俺のことを呼び止めてきた者がいたのだ。

その男はゼムという名前でゼムさんと呼んだ方が良かったのかもしれないがどうにも馴れ馴れしい雰囲気を出していたのでとりあえず俺も彼のことを名無しと呼ぶことに決めたのであった。彼は、俺の話を聞いていたようでこの拠点に居る人たちのことは守って欲しいと言ったのだけれどもそれに対して俺は断ると答えたのである。理由は、この場所のことがバレてしまうと確実に俺の命が狙われることになると思ったからである。だからこそ、俺の実力をあまりこの場で明かすのはよくないとも考えたからでもある。しかしそれでもなおゼムと名乗った人は俺に対してしつこく、俺達のことを守らせて欲しいと言ってきたために俺は仕方なく、それを受け入れようとした。

すると俺が了承の意思を示した直後に、ゼフさんの体が発光していきその姿が変わっていくではないか。その体は瞬く間に小さくなり子供の姿になってしまうとそのまま気絶してしまったのであった。そんな状況を前にして呆然としていた俺に一人の少女が話しかけてくるのである。それはルックスこそ美少女そのものなのだが自分のことを守ってほしいと言っていた人物とは似ても似つかないほどの容姿を持った幼い女の子だったのだ。

そしてその少女は自分のことを紹介し始めたのである。その紹介は簡潔であった。名前は、アリエルといい、種族が妖精族であるらしいがそんな説明は今は関係ないとでも言うようにすぐに自己紹介したのだ。彼女は自分が、この集落のリーダー的存在であると言い出した。そのリーダーの証である紋章を見せてくれたが俺はそれに目を通すと思わず言葉を失うことになったのである。何故ならその紋章はあまりにも異様なものだったのだ。というのもその紋章は、龍を模した形をしておりさらにはその龍は俺が見覚えのある存在であったのだ。

そう、その見覚えのあった龍の名は黒白竜王という存在でこの世界でもかなりの力を持つと言われている存在であるのだが、その力は魔王に劣らないとまで言われている存在でもある。そんな黒白竜王の特徴といえばやはり全身が黒色でなおかつ翼が片方しかないということであるがそれが逆に不気味さを醸し出しているような気がしてならなかった。しかし俺にはそれがなぜここに描かれているのかがわからず不思議に思っていた。

「ねえ、君。君は今の状況わかってる?ここは危険な場所でね。君たちはさっき僕の部下たちに保護させたんだけどもまさか君たちが来るなんて思ってもなかったから本当に困っちゃうよねー。だってそうだろ、せっかくあいつらに餌として捕まえてきてもらったというのにここで君達に死なれてちゃ僕の計画が無駄になるじゃないか。僕はねそんなことをさせるわけにはいかないんだよ。」そんな感じでその幼女は喋っていた。そんなことを言っていても全く動じている様子がないので恐らくはこういう事態には慣れているのだろうなと思ってしまうのであった。しかし彼女の発言の内容を考えてみるとやはり俺は魔王軍に目をつけられていたのだと確信してしまったのであった。そうでなければ、このタイミングでの遭遇はまず有り得ないと思えたからな。そしてそんなことを考えていたら、彼女が突然動き出してきたのだ。そしていきなりこちらに向かって飛びかかって来たかと思うと拳を振り下ろしてきたのである。俺は、その攻撃を難なく回避したが次の攻撃で地面にヒビが入る程の威力を秘めていることを知ることになると冷や汗を流すしかなかった。そんな風に俺達が交戦を始めたところでゼムと名乗っていた少年が再び起き上がり加勢してこようとするがその前にアリシアによって気絶させられて強制的に戦線離脱させられた後に回復薬で無理やり復活させられたことで戦力に復帰することができた。そのおかげで、何とか均衡を保つことができた。そんな戦いがしばらく続いたが決着がつくことはなく、俺達は一旦撤退して態勢を整えるのであった。

俺が、仲間たちと共に敵の拠点と思われる場所に乗り込んだのは、あの戦闘の後、一息ついていたのでその時に仲間達と話し合ってこれからの行動を決めたところである。それはこの拠点の調査を行うということで俺達は拠点内部に侵入したのであった。

この村はかなりの広さを誇るのだがそれでもこの施設に関してはかなり大きいなと思っていたのだ。それはこの建物の内部に存在する設備の数々が他の建物と比べ物にならなくてまるで王城並みに凄いものだと感じたのである。そんな施設の一つ一つを詳しく見ていく中で特に目に付くものがあった。まずはこの村の住人についてだが彼らは、全員、魔族のようで全員が角を持っていたりしていることから俺は彼らの正体を理解することが出来た。そして次に驚いたことがあるんだが彼らが、魔族と呼ばれる者達だということは分かったのだが、どうもそれだけじゃないようだった。というのもその魔族は人間の姿にも変身することが可能で更にその身体能力は普通の魔族では考えられないほどに高いことが分かったのである。そんなこんなで俺達の探索作業は続いていた。そんな中、俺はある部屋を発見した。それはなんと地下室に繋がる扉がありそこには隠し通路が存在した。

俺は早速、そこに向かってみると中には下へ降りられる階段を発見する。それを確認してから俺の仲間達がそこにやってくると中に入るのである。その中は一本道となっていてそこを進んでいくと今度は巨大な扉が存在しているのであった。そして俺は仲間達に注意を促した。その中は俺一人だけが入って確認することを提案するのであった。

俺の言葉を聞いたルッカは俺の言いたいことを理解したようで俺に任せるという態度をとった。それから俺は仲間達に、ここの部屋の捜索を行ってくれるように頼み込んで、俺ともう一人のメンバーで中に足を踏み入れた。俺の目の前にある大きなドアが開き中へと侵入すると、そこには、魔道具の類がたくさん存在していて俺としては興味深かったのだ。

そう、俺が気になっていたのはこの空間内に保管されていた魔剣の存在であった。それらの魔剣は、どれもこれもが強力な効果を持っているものばかりでしかも魔剣の中には所有者に恩恵を与えてくれるタイプのものもあるみたいで俺はこの場で全て回収することに決めたのである。そんな風に俺のアイテムボックスの中に入っている魔石の数を確認するとかなりの量になってきていたのだ。

そして魔石を確認していて思ったのであるがその魔石の中に俺にとって馴染みの深いものが混じっていたので、もしかするとと思い調べることにしたのである。その魔石の名前は賢者の卵というもので、どうやらこれは魔物を生み出すための卵みたいなものであり俺の世界で言う所の孵ったばかりのスライムのようなもので俺はこの場にて仲間にしようと考えていた。そして俺がその孵化を行おうとした瞬間、突如、床に亀裂が走り始めて崩壊を始めるのであった。その衝撃に耐えきれず俺ともう一人の仲間はその場から離脱しようとしたが俺は逃げ遅れてしまう。

そんな状況で俺は、その崩落に巻き込まれてしまいそうになると俺は必死で手を伸ばした。俺の伸ばした手に反応してか俺の体に触れようとしてくれているようでなんとかギリギリ間に合いそうな気がしていたその時、突然の出来事が起きた。なんと俺の体を覆っているローブの中に入り込んできたのだ。それによって俺は、バランスを崩してしまいそのまま一緒に落ちていきそうになったのである。俺はもう駄目だと思ってしまったのだけれどそこで助けの手を差し伸べられたのだ。

それはなんとルックスに優れている銀髪のロングヘアーの少女が落下している俺の体を支えるように抱きしめてくれているのだ。そして俺に何かを伝えてくると、そのまま俺は彼女に運ばれながら地上に生還を果たすのであった。

「ねえあなた名前は?」

彼女はそう言ってきたのだが俺はどうして良いかわからずに固まってしまっていた。それも仕方がないと思うんだが何故か俺は彼女を一目見た時その容姿に惹かれたのだ。その美しさがどこかルクスに似ていたからだ、それで俺が困惑していたところに、俺の仲間の一人が近づいてくる。彼は、俺のことを心配してくれると同時に彼女が一体誰なのかと問いかけてきたので俺は正直に話すことにしたのであった。その説明を聞いて俺は少し納得してしまう部分があると同時、この人こそが俺の命の恩人でありこの人が居なければ俺がこうしてここにいることはなかったかもしれないと考えると感謝してもしきれなかったのである。その女性とはルキアさんと言うらしい。そんな彼女からの提案に甘えるような形でルクスが目覚めるまで彼女の家に泊めてもらうこととなった。その提案には、俺だけでなく仲間達も賛同していたのである。そうして俺達はしばらく彼女と行動することになったのである。

俺と彼女は二人でこの拠点内を見て回ることになったのだ。その理由というのは先程俺を助けてくれたことに関してのお礼がまだ済んでいないという理由が半分、あとは純粋に彼女のことが気になったからである。

この拠点の造りを見る限りこの村の構造は相当大規模なものでかなりの大きさを誇りその構造も迷路のような作りをしているのであった。そしてこの拠点の一番の問題点は、地下の空間に大量に存在する大量の魔族たちが生活していることである。そんな光景を目の当たりにしながらも俺と彼女は歩みを進めていた。彼女は、魔族たちに慕われているような様子を見せていたのである。しかし彼女は、この村の住人ではないらしくその目的は、自分の国に帰らないといけないということなのだ。俺はそれを聞いて少し残念に思う気持ちがあったのだがそれと同時に疑問が生まれた。そのことについて聞こうとしたとき、彼女が突然立ち止まったのである。

そして彼女が俺に向かって語りかけてきたのである。この先にこの世界にとって重要な場所が存在するらしい。その場所を、彼女は知っているようだったが俺がその情報を教えてほしいとお願いしたところで俺の意識は途絶えてしまった。しかしその直後、再び意識を取り戻したときには全てを知ることができたのだった。

そして目覚めた後、彼女の姿は見当たらなかったが、俺の体に異変が生じており体が妙に軽いという違和感を感じるのであった。俺が起き上がった時に視界が歪んでいることに気づきすぐに俺に回復魔法を使ってもらうことにしてもらい俺は、どうにか回復することに成功するのである。

「なあ俺に何が起こったのか分かる奴はいないか。」

そんな質問を投げかけたところ、俺に回復魔法をかけ終わった仲間達がこちらに集まってきて事情を説明したのだ。その内容というのが実はこの拠点の奥の方に存在する謎の部屋から凄まじい力を感じてその部屋には絶対に行ってはいけないと言い出してきたのである。だからと言って俺はこの施設を散策しないことにはこの施設の構造を完璧に把握できないと判断をした。しかし、危険だという警告を受けても俺はどうしてもその部屋を見ないことにはこの施設の全体像がつかめないと判断して、皆を説得してから奥へと向かう。そしてようやく俺は目的としていた場所に辿り着くと俺は、思わず言葉を失ったのである。なぜならその部屋には、魔王城にも匹敵するほどの規模を誇っているであろう建造物が建っていたのだ。俺は、こんな建物が村の中にあることを知らなかったのだ。そんな風に驚いていた俺のもとに彼女がやってきたのである。そして、俺にその部屋のことを説明してきてくれるのであった。その話を聞くと俺が想像していたこと以上の代物だったので、俺達はすぐにその建物の内部に侵入を試みることにする。そして俺の仲間たちにその建物内の警備を任すことにしたのである。俺は、ルキアさんの案内の元、この施設の施設の一つにある食堂へ足を運ぶ。その食事は非常においしく俺達の舌を十分に満足させるものだったのである。そう言えば、ルッチがどこにいるんだろうと、俺の脳内に浮かんだ。するとその答えをルキが教えてくれる。なんでも今は寝てるだけで明日起きれば大丈夫とのことであった。俺はそれに安心しながら食事を続けることにする。それから俺は、俺の仲間達にこの建物について詳しく説明をしてもらうのであった。そんな俺に話しかけてきた者がいる。それはあのルキのお母さんであるレミーカさんだった。その女性は、この拠点にいる住人達をまとめているリーダー的な人物でこの施設の管理を行っているようだった。そのレミーカから俺にある頼みごとを提案してくれるのである。その内容はこの施設に俺に滞在をしてくれないかという頼みだった。

そして次の日俺達は外に出ていた。そしてルッズを探し出して話し合いを行うつもりなのであった。だがそんな時である俺の元に魔導兵器が出現したと報告を受ける。その相手はかつて魔族と呼ばれていた者たちでありそれがどういう訳なのか人間の姿をして俺たちの前に姿を現したのであった。

その男は魔族の国の王子だと名乗り、俺達が魔族の国に敵対しようとしている勢力だということを言い放ってきたのである。その言葉を聞いた瞬間に、魔族の国は俺達が思っている以上に危機が迫っていることが理解できて急いで、ルックの元へ駆けつける必要があったのだがそんな時に限って魔導兵が襲撃してくるので俺達ではどうしようもない状況であった。そこで俺達では対処できないことがわかってしまったので俺はルチア達に魔導兵と戦わせることにしたのである。

そしてルッカや、他の仲間の実力を確認するためにルチア達は、魔導兵の相手をすることにしたのだ。ルチアとルッケとルチとミルに魔剣を託したのだ。この四人は俺がこの世界で知り合った中で間違いなく最強クラスの実力者たちなので魔剣を渡すことを決定していたのである。そうして俺と、俺の仲間でなんとか時間を稼ぐことに専念しようとしていたのだけれど、魔族は予想以上に強敵だったため俺は追い詰められてしまいそこで仲間達と分断されてしまうのであった。俺が、絶体絶命の状況に陥ってしまった時に突如現れた人物が、俺のことを救ってくれたのである。俺は、その男の顔を見て驚くことになったのである。

なんとその男はこの世界に俺と一緒で飛ばされていた幼馴染であったからだ。俺は、彼がどうしてこの場所に現れたのか、そのことを聞こうとするとそんな俺のことを止めるようにして彼は俺に向かってある質問を問いかけてきたのである。その問いの内容は俺の仲間はどこに行ったんだ?というものであった。俺は、それを聞かれると彼の目の前で分断されてしまったと素直に白状してしまったのであった。それを聞いたその人物は、その魔導兵を俺の代わりに倒すという。そして、彼は、俺が持っている魔剣とよく似た剣を手に取る。

「これは魔装っていうんだがお前の剣と交換してほしいんだが、構わないか?」

俺は、突然の提案に疑問を抱くことになる。俺のこの剣は俺にとっては大切な武器であるため手放すことはできないと考えたのだ。すると、俺が、戸惑っていると。その魔装というものをその人物に貸し出すという条件で、交換するという条件をつけてくれたのだ。俺はそれに了承することを決めると早速俺は自分の持っていた刀身が長い魔剣を、その人物に手渡すのである。すると、その人物は一瞬にして姿を消したのだ。そのことに俺は驚きの声を上げることしかできなかったのであった。

俺がその出来事が起きた直後、魔族たちを相手にして奮闘している仲間たちがピンチに陥っていたのだ。そのため俺は慌てて助けに向かうのであった。そうして仲間と合流した俺がその仲間とともにその魔導兵を一蹴したところ、その魔族たちはどこかへと撤退していったのである。そして、ルッチとルキアが俺の仲間にお礼の言葉を伝えてくると俺はその仲間に改めて魔剣を貸した人の名前を聞くことにしたのである。しかしその質問に答えてくれそうな人物はここにはいなかったのである。

俺はルッチと、その人の事について少し話をしながら、俺の仲間が向かったという魔族の国に向かっていたのであった。しかし、その国に入るには特別な通行証が必要だったようで、この村にはその用意がなかったため俺達も、一旦引き返すこととなる。そして、俺がこの村を出発する際に、俺は、仲間からとあるお願い事をされてしまうのであった。その内容というのはルクスのことをよろしく頼むということだったのだ。そして最後に俺はルクスは本当にこの村にいていいのかと心配になってしまったのだ。そして俺は仲間から預かって来た魔剣を見る。そうして俺は決心したのだ、今はまだ早いとは思うけどいずれ必ず、ルクスに会いに行こうと思うことに決めて、俺は再び旅立つ決意を固めたのだ。

私は今困った状況に立たされているのです。実は私はつい最近魔王の娘となったばかりで私の部下の者たちも皆新参者ばかりという状態だったのである。そんな私がなぜそんな部下たちを束ねているかという理由は私の父親がその昔魔王を倒したことがある英雄と呼ばれる人物なのであるのだ。だからと言って父親には魔王としての器などなく普通の人間の父と変わらない性格をしているので私は正直に言うと父のことを尊敬できていなかったのである。そして今回も父が、勝手に決めた勇者と婚約させられるということになって私は、その相手の顔すら見たこともないという状態でその相手に会うことになったのである。

その相手がどんな奴だろうと私に拒否権はなく仕方なく会う羽目になってしまうのだ。そして今日は、その勇者様が魔王城を訪れる日になっていたのである。しかしそんな時私にとって予想外の出来事が起こってしまうのであった。それは、魔王の娘である私のことを助けに来たと言う少女が現れたのである。その女の子の話を聞けば聞くほどこの子が本物の勇者なのだと確信できる内容だった。でも、それと同時にこんなにも可愛い娘を、あんなにも恐ろしい存在と無理やり婚姻関係を結ぼうとしたこの父に対して腹が立ってくる。

しかし、今はとにかくこの子の願いを叶えることが一番だと思いそのことに協力することにしてあげたのである。この子なら悪いようにはならないだろうと思って。

そしてついにその勇者がやってきたのだった。そしてこの子が、ルチアだと分かった時私達は思わず叫んでしまった。なぜなら、あまりにも似すぎていたためである。するとルチアもそのことに気づいたのかルッチに確認をするかのように問いかけるのである。そんな時に私とルッチに、勇者一行に自己紹介しろと言われるのである。

だからとりあえず挨拶だけはちゃんとしておくことにしようと思い名乗ることにしたのだ。

――そして私はこのルッチという人物と仲良くなることができた。そのルッチはなんと私と同じ元人間だったということが判明したのである。だからこの村の人達の優しさに触れて今の自分ができているとそう語ってくれた。そして、この村の人たちは皆優しいから、もしかしたら自分も魔王軍をやめることが出来るかもしれないと言いだしてきたのである。

そしてそれは私にとっても嬉しい提案だったのだけれど、やはりそれでもまだこの世界の人間たちに情を抱いていないルチがそれを認めるわけがないと思った。だけど案外その言葉を聞いてすぐにルチは認めたのであった。それはもう拍子抜けするほど簡単にだ。

それから私たち三人はこの村に残ることに決めた。本当はすぐにでも勇者と共に旅に出たい気持ちでいっぱいであったのだが仕方ないと思い諦めたのである。しかしそんな中に一人不満を漏らしているものがいる。それは、あの魔族たちのリーダーである男の魔族であった。この男はどうしてもルッチと一緒に旅に行きたいとしつこく言ってきていたのでその度に無視をしてやり過ごしていたのであるがとうとう痺れを切らしてしまったらしくルッチに襲いかかってきたのである。

だがその男の攻撃は全く当たらなかった。逆に男が攻撃を当てようとしたときにルチの魔法であっさりと戦闘不能にされてしまったのである。そしてそのことが気に入らなかったらしい男は、なんと私達と同行したいと申し出て来たのであった。

だが当然ルッチは許可を出すはずもなくその要求を拒否し続けると男はいきなり、ルチの頬を叩き始める。だがそんな行為に私が怒らない訳がなくそいつを思いっきり殴ってやった。

するとそんな騒ぎに他の住人たちも何事だ!?と集まってきた。そしてその中にはレミーカさんや村長の姿があった。私はそこで事情を説明したのだが、レミーカさんがルッチのことを守ろうとしているところを見たせいなのか私達はなぜかルッチの仲間になったことになっている。どうしてそうなったかはわからないしそもそも仲間になりたいとも思っていないので断ろうとしたのだけれどその時ルチアから一言告げられるのである。その発言とはこの村は好きにしていいからしばらく滞在させて欲しいというものだったのである。もちろんこの発言を聞いた時のルチの顔は物凄く怖かったが、結局私は断ることが出来なかった。まぁどうせしばらくは何もすることはないかなと考えていたため私は仕方なく受け入れることにするのであった。

ただ、その判断のせいでこの後とんでもない問題が起きることになるということを私は想像していなかったのだけれど、この時私達は知る由もなかったのだ。

俺は自分の命を狙っている敵と思われる人物と対面しているという状況になっている。

「貴様は、一体何が目的なんだ?」

俺は相手にその質問をぶつけると、その相手から返ってきた答えは予想外のものであった。

「俺の目的はただ1つ。お前を殺し、ルチという奴を殺すだけだ」

その男の言葉から俺はある事実に気が付いてしまった。こいつは恐らくは魔王側の存在であることは間違いなく間違いないだろうとそう感じたのである。

俺のことを殺せば魔王は復活する。そしてルチを殺したとしてもルチという存在を消してルチになりすますことができれば復活させることは可能だという可能性が出てくる。だからこそルチアという存在は絶対にこの場で倒さなければならない相手だと改めて理解したのである。

俺は魔剣を構えなおすと一気に間合いを詰めていくとそのままの勢いで斬りかかっていく。しかし魔剣の一撃はその人物に軽々と受け止められてしまうのであった。

(こいつ相当強い!それにルチアのことをかなり知っているようだ)

俺は目の前にいるその人物が自分と同等もしくはそれ以上の実力者だということを直感で感じる。しかしそれでも俺も負けじと刀を連続で振り続ける。そして相手の攻撃をなんとか受け流しているとその攻撃によって俺が握っていた魔剣が手から離れて飛んでいったのである。俺はそれを好機と見て、さらに攻撃を加えようとする。しかしそんな俺のことを嘲笑うようにして笑みを浮かべた目の前の人物の蹴りを食らい吹き飛ばされてしまうのであった。その蹴りは重く、俺は腹部を抑えながら地面に転がってしまった。

「ぐふっ、がはッ、がはっ!!」俺はその激痛をどうにか耐えつつ立ち上がろうとするが足腰に力が入らない。俺はここで初めて死というものを意識し始めてしまい全身に恐怖という感情が駆け巡っていく。そして俺はこのままではまずいと悟った。

俺はその男から少しでも距離を取ろうとするが体が動かない、そんな俺に向かってその人物が再び近づいてくる。俺は必死に逃げ出そうと体を動かそうと努力をするが全く動けなかった。そうして俺の前に立ったその人物は拳を構えると大きくその腕を振り上げ、俺にその鋭い拳を突き立ててくるのである。俺はその衝撃に耐え切れず、後方に倒れこんでしまうのであった。そして俺は意識が途切れるのを感じるのであった。

俺は薄れゆく視界の中で魔剣を探している。俺の命は残り数秒も残っていないだろうということは分かっている。そして今魔剣さえ手に取ることが出来れば助かるという事も俺は知っていたのだ。だが魔剣は既に遥か遠くへ弾き飛ばされてしまっているため俺がいくら探し回っても見つけることは不可能に近い状況であった。それでも俺は魔剣を探すことを諦められなかった。なぜなら魔剣があれば、この状態から回復することが出来るからだ。しかし現実は非情なものである。どれだけ目を凝らしても魔剣を見つけることは出来なかったのだ。そしてその状況を確認した俺は完全に心が折れてしまった。

俺は完全に諦めていたのだが最後の抵抗を試みて俺はその相手に蹴りを放つ、するとその人物はまるで予想していたかのように俺が繰り出した蹴りを両手を使って止めて見せたのである。だがそんな状況に驚く間もなく俺は顔面に強力な打撃を受けてしまっていた。

そうしてついに、俺の体は限界を迎えるのであった。

私は勇者であるルクスと一緒に魔王城へ向かっていた。

魔王城まで後少しというところで私達は魔王軍の者たちと出くわしてしまうのである。

その者の名前はリリアナといい、見た目はかなり可愛い女の子に見えるが、その実力は計り知れないものが有るように思えた。

彼女は私たち二人を見て、どこか見覚えがあるような顔をしていたが思い出せずにいたようで、ルクスのほうを見てきたのだ。そのルクスとリリアナは知り合いだったらしくルクスもリリアナのことを覚えていて、そのことにリリアナは喜んでいた。そんな時に、私達の元へその魔王の娘が向かってきたのだ。しかしそんな時、突如として私達の背後に誰かが現れ攻撃を仕掛けられたのだ。しかし私達にはその人物に見覚えがなかったのである。そしてそんな時、私達の会話に割って入ってきたその魔王の少女がルチを殴ろうとしたのである。私はすぐに反応しルチの前に出るとルッチを庇い、殴られることになってしまったのである。

だがその時私は不思議と痛みは殆どなくそのことに驚いていると今度はその魔王の娘にお腹を蹴られてしまうのであった。

それから私はその場に倒れ込みもう駄目だと絶望しているとそこに現れたのは、勇者ルクスだったのである。ルックススは私達を助けるためにここまでやってきたのだそうだ。ルチアもルッチもその言葉を聞いて喜んでくれていたので私はとても嬉しかったのだ。

それからルチアと魔王の娘の戦闘が始まったのだけれど私にはまだやるべきことがあった。

ルチアとルッチを守るために魔王の娘の気を引き付けてあげなければいけないのだ。そのためにもルチアは早くこの場から離れてもらわなければならないと思い、私は彼女に離れるよう告げる。しかし魔王の娘である少女に私の攻撃は全く効かなかったのである。私はどうすれば勝てるのかと考えているとルッチからの提案があった。

――ルチアも魔王軍に入れば強くなると、そう言ってくれたのだ。確かに私も魔王軍に入ればルチアと肩を並べることができると思うし私自身もっと強くなれるかもしれないと思ったのだ。だから私はその提案を受け入れて魔王軍の一員になることを決心した。それからは、勇者ルックススとともに魔王軍を倒すための行動を開始したのである。それからはルチアが、ルッチは勇者の手伝いをし、私はこの村の住人たちに剣術を習いに行ったのである。

私は、村の子供たちと遊んでいる最中にこの村の人達がなぜこの村に居るのか疑問を持ったのだ。だから、そのことをルッチに聞くことにしたのである。だがそこで私はルッチの正体について知ることになった。ルッチは私と同じで元々は人間であったということが分かったのである。それなら私がルッチと一緒にいてもなんらおかしいことはではないはずだと安心したのだ。

だがそこで新たな事実が判明する。その男の名はなんとルチだったということがわかったのである。

そして私達がその男に近づきすぎないようにと注意してくれたのがルチであり、また私達は彼女の指示に従って行動することにした。

ただこの時私は何故なのか分からなかったが、何故か違和感を感じずにはいられなかったのである。そして私達の近くにいた村長さんもこの村にずっと滞在するようにと誘ってくれたのでその誘いを受けたのだ。

こうして、私達はしばらくの間滞在することを選んだのだが村長は何か思うことがある様子だった。

村長の話によれば魔王軍が動き始めているらしいが私達は特に何もできることはないだろうと思っているのだがどうやらこの村の人たちにとってはその魔王軍に対抗出来るだけの戦力はあるようであった。しかしそんな時に突然私の元にその魔王軍が攻め込んできたという報告が入ったのである。その情報を受けて私は慌てて外に出ると既に戦いが始まっていたのであった。

私はすぐに加勢しようかとも思ったが私はその時はルチアたちのことが心配だったのでそのことについては、一旦考えるのをやめてそちらへ向かうことにしたのであった。

私はルチが操っていると思われる人物と戦おうとしているのだが全くと言っていいほど歯が立たない。だがそこでようやくルッチがこちらに来てくれることになり私は心底ホッとしていた。ただ問題はその後である。

なんとルチアは一人でそのルチと名乗る存在と戦うつもりだと言っていたのだ。そんな無茶な話に納得できるはずもなく止めようとしたのだが、ルチがルチアに対して襲いかかったので、そのルチをルッチに任せてルチの相手をしてもらうことにするのであった。

そうしてルチアのほうに向かうとルチアはすでに戦闘が始まっており私は援護をすることにする。ルチの剣技は鋭く一撃一撃が重くとても強靭であるように思える。

(これだとなかなか攻撃を加えることが出来ないかもね)

そう思いながらもどうにかしてその人物をどうにかしないとならないと考えたのだ。するとルッチがやって来てその人物と戦っているのでその間にどうにかする方法を考えるしかないだろう。そして考え抜いた結果思いついた方法を実行するべく私は準備に取り掛かったのだった。

まずはこの武器では威力に欠けるだろうと思い剣を槍に持ち変えるとそれで攻撃を仕掛けることにする。しかしその男は、簡単に防ぎそして弾き飛ばしてしまう。

(うーん。やはりこの攻撃じゃあダメみたいね、もう少し威力の高い攻撃が出来ないかなぁ?)

こう考えていると、急にルチアの方へと視線が向く、ルチアはというとなんとかルチの動きを止めているように見える。そしてその時、なぜか私の頭に一つの攻撃方法が閃いたのである。それは突飛すぎるものだったが私はすぐにそれが最善手なのではないかと感じたのだ。

(本当にこれで成功するかどうかは分からないけどやってみる価値はありそうだわ)

そして覚悟を決めた私は攻撃を行うことにした。狙いを定め一気に加速していくとそのまま一気に相手の懐に飛び込むことに成功する。相手は一瞬驚いた表情を見せるがすぐにその表情は消えると、まるで虫でも払うかのように攻撃を繰り出すのである。だが私の目的は攻撃をする事ではなくてあくまで囮なのだ。私はそれを理解している。だからこそ攻撃を紙一重のところで避けて、そして一気に背後に回りこむ。すると相手の腕が私には当たらないであろう場所を通過していたのであった。その隙を逃さず私は背中からその男に向かって、全力で飛び蹴りを繰り出したのであった。そうしてその男が地面を滑るようにして転んで行く。

(上手くいったかしら? とりあえず今はルッチの方に意識を向けた方がいいのよね)

そして私の目論見は成功していたのだった。

俺と勇者は、俺とルチとで魔王の娘の相手を務めている。

だがルチアは俺の邪魔にならないように距離を取り、魔王の娘の攻撃を俺が引き付ける形で何とか凌いでいる状況だ。しかし俺は勇者と魔王の娘との戦いを見て、俺もまだまだだと思い知らされる。

(なんて力だ!このままじゃ押し切られちまうぞ、俺はこんな奴相手にこれから先立ち回ることができるのかよ)

その事を思い不安になる俺であったが、そんな時俺はふとルチの事を視界に入れるとルチアがピンチなのを見つけてしまい咄嵯にその事に気が付き勇者に合図を送ったのだ。勇者もそれに気付いたようですぐさま反応をしてくれる。そして俺はルチアを庇い魔王の娘の攻撃を受け止めていた。それから勇者と俺は二人同時に魔王の娘の攻撃を防ぎ切るとルチアに声をかけ、ルチアを勇者のもとへ向かわせるのだった。

ルチアはというとかなり消耗していたようだ、だから俺と勇者は少しの間魔王と娘を引き付けてから二人で連携して魔王を翻弄する。勇者はルチアにポーションを渡すことで体力を回復させ、俺は魔王の娘に攻撃を加えていく、そうして少しずつダメージを与えてはいたのだが中々致命傷を与えることができないのだ。

そしてしばらく経つとルッチがやって来た。だがそれと同時に俺達の前にその魔王の娘が現れていた。そしてその人物が実は、この魔王軍の元リーダーであるルッチだった。

ルッチはというとどこか雰囲気が変わっていたが特に変わったところはなかったのだ。だがその魔王軍のリーダーだった時の記憶が無いらしく自分がなぜ今この場にいるのかすらもわからないようだった。だからといってこのまま魔王城へ行かせるわけにもいかないので俺たちとルッチは魔王の娘との戦闘を開始するのだった。だがそこで、ルッチはとんでもない隠し玉を持っていたのだった。なんと彼はそのルチを呼び出したのである。

その光景を間近で見ていた勇者は、動揺を隠せないでいると俺も同じことを思ったのである。何故なら今まで仲間だった者同士が戦う姿を見させられればそうなってしまうだろう、ただ勇者はそれでもどうにか気持ちを持ち直すと魔王と魔王軍を倒さなければいけないということを思い出し、戦闘に集中することが出来た。それから戦闘が開始されるのだが正直ルチにルッチが負けるはずもないと思ったのだが魔王の力は想像以上に強くルッチは苦戦を強いられていたのだ。しかもそれだけでは無かったのである。その魔王と魔王軍の中には、ルチアと同じような力を使える者が居たというのだ。

そして魔王と魔王軍を相手にしなくてはいけなくなってしまったのだが、ここでさらに最悪なことが起こった。なんとこの村の住人たちが突然魔王軍に味方をし始めたのである。どうやら魔王軍に洗脳されてしまったようである。そのおかげで魔王軍と村人の挟み撃ちの状況になってしまっておりどうにもできない状況に陥ってしまったのだ。勇者と俺はその状況を打開するため一度勇者だけでも先に行かせたかったが魔王軍が勇者に襲い掛かるためその事ができなかったのである。

こうして、俺とルチアは仕方なくその状況下で戦っているという状況に陥っていた。

――私が目を覚ました時には、私は地面に倒れ伏していて体が言うことを聞いてくれない状態になっていた。

(どうしてこんなことになっているんだっけ?)

と私は思い返すと、そこでルッチとルチが言い争っていて、それから私達のほうに向かおうとしているのが見えたのだ。そこでルチアがルッチのことを止めようとするが逆に吹っ飛ばされてしまって、その後ルッチが私に近づいて来たかと思うと、その男の姿が変化し始めたのである。

その男はどんどんと変化していき最終的にその姿は完全に別の存在へと変わっていたのだ。そうして現れたのは一人の少女である。その姿を見て私は驚くと同時に疑問が湧き上がった。

(どうしてあの子は女の姿をしているの!?)

その少女の見た目はどこからどう見ても美少女と言える容姿をしているのである。だが私達をここまで追い込んできたその実力は決して弱くないことはその様子から容易に読み取ることができた。

そして少女は突然私に襲いかかって来て攻撃を繰り出すのである。

(まずい!)

私はその攻撃を受ける覚悟を決めたのだが何故か私は吹き飛ばされることなくそのままの状態で留まっていた。その理由として一つ思い当たることはあるのだが私はそれを確かめるために自分の体を眺めると、そこには見覚えのある紋様が描かれていたのである。そしてすぐにそれは、以前私の体に刻み込まれてしまった魔法だと気が付いた。

その私の様子を確認した後ルッチはルッチのことを呼び出すのである。私はそれを止めることが出来なかったが私は私の意思で動くことが出来なくなっていた。

こうして私の意思とは裏腹に私はルッチとルッチの戦いを見ることしか出来なくされていたのだった。

ただその戦いの様子は普通ではあり得ない戦いであった。ルッチは、確かに強くなっていたがそれ以上に目の前の少女は強かったのである。

ルチアも必死に戦っていたがその圧倒的なまでの差を見せつけられ次第に追い詰められて行って、ついには気絶をしてしまう。

私はどうにかして、私自身を元に戻したいと思っていたが一向に出来る気配がないのである。そのためどうにかしてルチアに近づきたかったのだがルッチはそんな時間を与えてはくれなかった。

私はそんな時に一つの攻撃方法を思いつく。それは突飛すぎる方法であったのだが今のこの状況を切り抜ける方法はこれしかないのだと私は考えたのだ。そしてすぐに実行に移すことにした。ルッチの背後に回り込み思いっきり背中を蹴り飛ばしたのだ。そしてルッチが体勢を崩すことに成功した。

(上手くいけばいいんだけどね)

そう思いながら私はルッチが転がった先を確認するとルッチは、すでに立ち上がっていてその瞳には憎悪のような色が見えている。

(やっぱり無理だったかぁー)

私はどうにかしようとルッチに向かって槍を構えた時だった。ルチが私の前に立ちふさがるのであった。

(ルチ?)

すると私の頭の中に一つの声が聞こえてくるのである。

(もう、これ以上は私の体は耐えられないの。だから私の体を使ってあなたを守ってあげてほしいの)

そしてその時、私は思い出したのである。

(そうだよ!この体は元々はルチの物なんだよ。だったら、この体を乗っ取ったとしても文句は無いよね)

そしてルッチは私に向けて攻撃を仕掛けてきたのだ、私はそれに対して防御を行うがそれは無駄に終わってしまう。

なぜなら私とルチが入れ替わると、私は意識を失いその場に倒れてしまう。そしてその入れ替わった直後私は即座にルチアの元へと駆けつけるのである。そして私はそのルッチに向かって渾身の一撃を放った。

私はそのルッチに対しての一撃に賭けていた。なんせその攻撃によってルッチの肉体に大きなダメージを与えることに成功していたからだ。しかし私は完全にルッチを倒したと思い込んでいた。「ルッチ、どうしてそんなところに居るんですか?」私は、ルッチに向かって話しかけたのだ、だがしかし私は完全に倒したとおもっていた。

ルッチの表情を確認できていないが確実に攻撃が当たっており、そして攻撃を食らえば大抵の生物ならば動けなくなるほどのダメージを受けてもおかしくはない。だから完全に油断していたのである。

だがその瞬間だった、突如私の真横に現れたルッチが私を攻撃してきたのだ。それに反応ができずまともに攻撃を受けてしまい地面に転がされるのである。それから私の視界の端で、ルチアが立ち上がる姿を捉えた。

(まだルッチが生きているなんて思わなかった! でも大丈夫だよ。ルッチ、この子だけは絶対に死なせないんだから!)

そして私は、なんとか立ち上がり体制を整えるとルッチの攻撃に備えた。ルッチは、その状態からでも攻撃してくることが出来るようだ、そしてルッチは私目掛け攻撃を繰り出して来たのである。

(ルッチの意識を完全に殺すまではもう少しかかりそうかな。早くしないとまた意識を失ってしまわないようにしないと!だけど、ルッチの攻撃を凌げる自信はあまり無いからどうにかして凌ぎ切らないと、そろそろ魔力も少なくなってきているしこのまま持久戦に持ち込まれたら、まずいかも)

私がそのようなことを考えていたときだった。ルッチは私への攻撃を一旦中止した。それからルッチが何をしようとしているのか理解した。どうやらルッチはこの場で全力を出すために体力を回復する時間を稼いでいるようだった。

私はその事に気が付いてからは、攻撃が来るまでの僅かな時間の間に攻撃に備えて、ルッチの攻撃を待ち続けていたのである。そしてついにルチは攻撃を開始した。

だがその攻撃をどうにか受け止める事に成功したのだ。それからルッチは私に追撃を行おうとしていたのだが、それをさせてはいけないと咄嵯に判断し私は咄嵯の行動をとることにしたのである。

そうそれは、私の持っている剣を投擲するという事だ。だが私は投げる前にルッチがその事に気が付き私に攻撃を行い私はその攻撃を防ぐことに精一杯になってしまったのである。

だがこれで良かったとも思った。もしここで私の武器を手放してしまったら私自身が窮地に追い込まれてしまっていたのかもしれないのだ。そしてどうにかしてそのルッチの反撃を防ぎ切ると、再びルッチは攻撃の準備を始めたのである。私はこの機会を逃さずにすぐさま、今度はこちらから攻めようとしたのだ。だがそこで予想外の出来事が起こるのである。なんと私の足元に魔法陣が現れたのだ。そしてその魔法陣を見て私は驚愕をするのであった。

(嘘でしょ!?どうしてこんなときに!これは召喚の魔法陣じゃないの?だったら私じゃなくても他の誰かを呼べるはずなのにどうして?)

私がそんな疑問を抱いていたのだが答えはすぐに判明することになった。その魔法陣の光が収まるとそこから現れたのは、勇者とルッチであったのだ。私はその光景を見た時は本当に頭が混乱して訳がわからなかった。

――私が目を覚ますと私は地面にうつ伏せで倒れていて目の前には勇者がいた。その勇者と私との間には一人の女が立ちふさがっており私を庇うようにして勇者の前に立って居たのである。

その姿を確認した私はすぐに立ち上がったのだ。私はこの場において私と勇者の間に入ってきているのは間違いなく敵だということがわかった。私は警戒心を露わにして勇者の前に立つ女を睨みつけるのである。すると勇者の方から話し始めてくれたのである。

私は正直この状況に戸惑ってはいたがどうにか勇者と話すことに成功した。勇者はどうにも困惑しているようで状況を飲み込めていない様子だったがどうにか私が魔王の娘であることを伝えることが出来たのである。ただ、勇者はそれでも信じてくれないのである。そしてそこで勇者の口から衝撃的な言葉が発せられたのだ。

――その言葉を私は聞き間違えではないかと思ってしまった。だって信じられるわけがないのだ、その勇者が魔王を倒しに行くと突然宣言をしたのだ。私にとってはその事はまさに寝耳に水の話であり全く予想をしていないことだった。その話を聞いている間に勇者の仲間の女が動き出そうとしていたが私はそれを抑えることに成功する。そう、今の私は一人で戦うことが出来ないほどに衰弱しきっている状態だったからである。だからこそ今目の前に立つ少女を野放しにしておくことは出来ないと考えていたのだ。

(まさかこの男がそんな馬鹿げたことを言い出すとはね。そんなにあの魔王を殺したいと思っているってことなのかしら?)

そして私はそんなことを考えながらも勇者との会話を続ける。

(やっぱりおかしい!どうして勇者のくせにこんな簡単に人を殺すとか言ってしまえるの?いくらなんでも無茶苦茶過ぎるよ!やっぱり何か企んでいるとしか思えない)

それから私は勇者に問いかけてみるが、それに対しても答えることはなかったのである。

(どういう意味なんだろう。それにしてもあの男はなんのために私を殺そうとしているんだろうか。やはり、私達魔族に対して憎しみを持っているという事なんだろうけど、一体なんの目的でそんな行動を取っているんだろう。私を殺しても別に何も得をしないと思うんだけど)

そんな私の考えとは裏腹に私はいつの間にか追い詰められていることに気づくことになる。私の体はもう限界が来てしまっているようで体が動かなくなってきていたのだ。私はもうだめだと思い自分の体が崩れ落ちてしまうのを感じてしまうのであった。

(あぁ、結局こうなるのね)

そして私の意識は再び暗転するのであった。

(いったいなぜだ?)俺の名前はルッカ、一応俺は勇者である。そして今は仲間と共にある街へ向かって歩いて移動をしていたところであった。

しかし突然、目の前に転移魔法のような物が発動されたと思えばそこにはボロボロの少女が倒れていたのである。俺はその子の姿を見て思わず驚いてしまいその場から動けなくなってしまうのであった。そしてその少女は俺のことを見ながらゆっくりと立ち上がるとそのままフラつきながら歩き始めるのである。

(えっ?)

その瞬間だった、俺は一瞬だけその女の子が光り輝いたように見えたのだ。しかし、そんなことが気にならないほどの現象が起こってしまったのであった。

そう、それは倒れてしまったはずの少女が再び立ち上がりしかも今までよりも数倍も強そうに見えるようになったのである。それだけではない、なぜか先程までとは違いその女の人から圧倒的な力を感じたのだ。

(これは一体何が起こったっていうんだ?さっきまでと全然雰囲気が違うじゃないか)

だがそんな事を思っても仕方がないことなのでまずはこの女の子が何者かを知ることから始めたほうがいいだろうと判断をする。そう思い俺はこの子がなんなのであるかを聞き出そうとした時にふとその子は俺に対して話しかけてくるのであった。そしてその内容に対してさらに驚かされてしまうこととなる。その内容はあまりにも信じられないものであったため俺はこの子が何を言っているのかを疑ってしまうがそれが本当だと理解した時はとても驚き動揺してしまうのだった。

「貴方達が魔王の娘であるこの子を助けてくれましたよね?」

という一言だったのである。確かに言われてみると俺達はルチアを助けるための行動をとっていた。だがそのことをこの子に説明したことは一度もないはずだ。だから彼女がなぜ知っているのかと言うことがとても不思議に思ったのである。だがその事については後で聞くことにしようと決めたのだ。そしてまずはそのことについて肯定をしてあげると彼女は安堵した表情を見せてきたのである。

「ありがとうございます。本当に助かりました」

それから少しばかりお話をした後に彼女についての情報を確認する。まず名前と年齢を聞くことができたのだ。まず最初に自己紹介を行うと彼女は「ルリア=メイルといいます。私より歳は下で十三歳です」と答えた。次に職業を聞いたのだがその回答は得られなかったのである。なぜなら彼女の職業がわからないと言ったからである。それから能力の確認も行ってみたのだが、この世界に来る前の状態と同じだったため特に変化があるような事はなかったのだ。

そしてその確認を行った結果が、レベルがかなり上がっていたことである。その事についても詳しく聞こうと思ったのだがルッチさんがルッチに入れ替わったせいで私は気絶をしてしまいその後のことを確認できなかったから知らないということだった。そしてその時のこともルッチに聞いたところ大雑把な情報を得ることが出来たのである。どうやら私はルッチの肉体を借りたルッチに守られてしまいルチアを無事に助けることができたようだ。ただ、私が覚えているのはそこで終わっていてそれ以降のことは私自身も気が付かなかったようである。

そういえば私がこの子の名前を呼んでしまっていたはずなのだがその事も記憶にはない。おそらく私が気絶した後のルチアとルッチの会話の中でそういうことがあったのではないかと推測をする。

(もしかすると、私はまた迷惑を掛けてしまっていたのかもしれないわね。私としてはルッチにはこれ以上負担をかけないようにしなくちゃならないからね。本当に申し訳ないことばかりしている)

それからルチアが目覚めるまでは時間もかかりそうなためにその間に私たちは今後のことを話す事にしたのである。そうして話し合いが終わるとちょうどルチアが目を覚ましてしまったのだ。ルッチが体を交代させてくれた後にルッチはすぐに意識を失ったらしいのだが、それからすぐに私は目を覚ます事が出来たのである。そしてルッチは私たちを洞窟の中に住処を作っているということでそこまで送ってくれることになったのだ。ルッチの話によるとルッチたちはルッチが目覚めた時からこの周辺に住んでいたそうだ。ルッチは私たちが住む場所には近づかず別の場所に生活場所を作っていたのは、どうやらそこに行くための道中に危険な生物が生息しているらしく、それを倒せない以上ルッチたちがそこへ辿り着くまでに多くの犠牲が出てしまうと判断したからだそうである。

ルッチがそんな話を教えてくれる。その話によれば、その魔物はかなり強い種族のようだったのだ。だがその話を聞いてから一つだけ引っかかる事が有った。

(あれ、それって魔人って言うことだよね?)

そう魔人と呼ばれる存在がこの大陸には存在していると聞いている。そして私と姉さんの二人はその魔人に両親と村のみんなを人質に取られた経験を持っているのだ。だからこそ私の中では嫌なことを思い出すことになってしまったのだ。

そして私は不安になる。もしも私がこの話を聞いたことで気分が悪くなり倒れたとしてもルッカが介抱してくれると思うのだがもし私以外の誰かが体調を崩すような事になった場合大変なことになってしまうと考えたのだ。

私が考えている間にも会話は進みルッチがルッチたちに話しかけてみると言ってくれた。ルッチの言葉に私は内心では感謝をしていたのだったのだがここで予想外のことが起きる。それは私のことを見ていた勇者様が突然声を上げたのである。

「君は、魔王の娘だったのかい?それに君には強力な力を感じるんだ。それってもしかして僕が魔王を倒しに行くために必要な力がこの子にあるんじゃないのか?」

その勇者の問いかけに答えようとした私を勇者は静止してきたのである。私はその理由を尋ねようとしたがその前に勇者からあるお願いをされてしまう。

それは、魔王の娘である彼女を魔王の娘として倒すから一緒に付いて来て欲しいと言われたのである。その言葉に驚いたのはもちろん私だけではなくその場に居た誰もが同じ反応を示していた。ただ、その中で一人だけは違う意見を持っていたのである。

勇者の仲間である女が勇者に向けて話しかける。その言葉を聞いた私は正直その言葉を発している人間の事をよく観察していた。

「あなたは何を馬鹿げたことを口走っているんですか!いいですか?勇者が魔王を倒すというのは絶対に成し遂げなければいけない重要な使命です。それなのに、それを捨てて、この子を助けようとするのは間違っています!いい加減に現実を見てください!勇者が行けばこの国に住むすべての民の命が失われることになるんですよ!そんなの、勇者失格じゃ無いですか!」

(すごい、勇者に向かってあんなことを言えるなんて、きっとこの人凄く勇気のある人なんだろうね)

私はその光景を眺めているうちに、ある人物を思い出してしまう。それは私の家族の一人である父の姿だった。私の父親は村を守る勇者であった。その父親が勇者になった理由は単純だった。私の父が勇者に選ばれたからである。そして私が生まれた時その事で私の母親は泣いて喜んでくれた。

そんな私の両親は魔族の侵略により住む土地を奪われてしまったために私と母は別の場所で避難生活を過ごしていたのである。だけど父は一人で魔族と戦うことを決意して母を置いて旅立った。

私の母の名前はセシリアと言い、父のことが大好きだったのだ。そんな母の悲しみは計り知れなかった。

だが、そんな中、ある日を境に私の家族は全員殺されてしまうことになる。そう、突如やってきた一人の人間の手によってである。

「あぁ、やっぱりそうか。魔王を倒した時に得るはずだった力を手に入れれば僕はこの世界に英雄となることができる!その為なら魔王の子どもを、ルッカを殺して、魔王を僕の手中に収める必要があるんだよ!」

そして勇者がルチアを殺すと宣言した直後だった。勇者の仲間が突然攻撃を開始したのである。しかもその攻撃対象は勇者ではなくなぜか私のほうへ向かってきていた。

そして次の瞬間私は目の前に現れた剣によって腹に傷を受けるのであった。

(なんで?)

(いったい何が起こったっていうんだ?)

俺達は目の前で起こってしまったことに驚き動揺してしまう。それも仕方がないことだと思う。なぜなら俺達はさっきまで普通にいた少女に対していきなり攻撃をし始めたからな。俺達はまだルッチという少女が何かをしたのかもわかっていないのだ。しかしルッチはその行為に対して特に何も思っていない様子であり、それどころかまるでこうなることが分かっていたかのような行動をとった。つまりこの展開が最初から予想されていた事だったというのだろうか?そう思うと俺は少し恐怖を感じてしまったのである。だがそんなことを考えている間に事態がどんどん進んでしまい結局何が起きたのかが俺達には何もわからなくなってしまった。

そして、俺はこの場で何が起こったのかを冷静に考えていくことにした。

(俺が今見たのがルッチによる出来事だとするとだ、もしかすると彼女は俺たちのことを敵だと判断する可能性が高いな。となるとこれからどうすればいいのかという問題があるな。下手をすると俺達がここにきたのが原因でルッチの機嫌を損ねる可能性も否定はできない。とりあえずルッチが何を考えてこのような行動に出たのかを聞かないとならないな)

俺達が話し合う間、ルッチはただ黙っていたのである。その沈黙に違和感を感じたのは俺だけではないようで、俺と一緒になって会話に混ざってきた人たちも困惑気味にルッチの事を見てしまってたのだ。そんな雰囲気の中、突然ルッチに異変が訪れる。

彼女はその体から禍々しいオーラのような物を放ち始めたのだ。だが、それだけでは無くさらに彼女の表情は豹変していき先ほどまでの優しい女の子の面影など一切なくなってしまっていた。そしてその変化を目の当たりにして俺たちは絶句してしまった。なぜならば、今のルチアの顔つきは完全に魔物の特徴を表していて、完全に人ではなくなっているからだ、そう彼女は正真正銘の魔物へと変化したのである。

(こいつらは一体なんだ!?本当に魔物だというのかよ!確かに魔族は人ではないとは聞いていたがここまで変貌するものなのか。これではもう人としての意思は残っていないんじゃないかと思うぐらいだよ)

ただその時だった、俺の目の前にいる男だけは違った動きを見せ始める。その男は勇者と名乗る人物のようで腰の鞘に納められていた剣を抜き取ると魔物へと変化したルチィに向かって攻撃を仕掛けていったのである。

ルッチが放つ魔力に当てられたのか彼女の体はみるみると黒く変色を始めていき最後には全身が真っ黒になっていく。そして勇者の攻撃は見事命中したのだった。しかしそれでもまだ彼女は倒されずに立ち続けているのである。そんな彼女にとどめを刺そうとしたのがルッチだった。だがルッチの行動は途中で止められてしまう。

なぜならその直前に勇者の仲間たちから勇者への攻撃が始まっていたからだ。勇者と敵対している者たちからの猛攻を受けた勇者はその場から動けなくなってしまう。そんな状況下でもルッチは動きを止めようとはしなかった。

だが次の瞬間に勇者と勇者の周りにいた連中の足元が急に凍ってしまう。

(あいつは、まさか、魔法を使うのか?)

それから勇者の仲間からの攻撃が止まったところで俺はようやく勇者の動きを止めた相手の姿を確認することが出来たのだ。そこには、あの美しい銀色の毛並みをもった狐型の獣人の姿がそこに存在していたのである。その姿は間違いなく俺が良く知っているルチアの姿だった。だが見た目が変わっただけでは無くその瞳には赤い光が宿っているように見えたのだ。その事に気が付いた俺はルチアが操られているのではないかと考えるのだった。

(あれは本当に一体なんなんでしょうか?それにどうしてあの勇者は突然襲い掛かってきたんだろうか?もしや私の正体に気が付いて私を殺そうとでも考えたとか?)

私の目の前に立っている女性は私が勇者様だと思っていた相手の仲間のようだ。そして私のことを勇者の仲間だと思って襲ってきたみたい。だけど勇者様に仲間がいたなんて話は一度も聞いたことがないんだけどどういうことだろう?私は勇者様から私についての説明を受けている時に勇者様のお仲間については全く説明されなかったのだ。だから、勇者様は私のこと以外信用していないって思っていたんだよね。だからこそ私は勇者様からの指示には従っていたけど他の方々のことはほとんど警戒せずに放置していたわけだし。まあ私が勇者様に命令された事と言っても、この村を守って欲しいって言われただけだったんだけど。

それで勇者の仲間の方が私に危害を加えようと考えているのならば私がやるしかないと思った。私は一応は勇者の仲間ということになってるのに勇者様がこんな態度をとっているのだもの、私だけ安全圏で待機するのは違うと思う。私は私なりに勇者様を支えようと思い、勇者様の力になりたいと考えてた。そうじゃないと私が私自身で許せないようなそんな気分になってしまったのだ。それに、私は自分の意思を他人に無理やり変えられるようなのは嫌だった。

そして私は、勇者様を守るために戦おうとしていたのである。私は、勇者様を守る為の刀に手を掛けたのだった。そしてその瞬間に私は何かが飛んでくる気配を感じ取りそれを弾き返したのである。すると、私の目の前に突然炎が現れたのだった。そのことに驚いた私は慌ててその攻撃を行った相手に目を向けたのである。そして私は相手が私のよく知る人物だとわかると驚いたように口を開いてしまう。その声は無意識のうちに大きくなっていたのだ。

「メイリさん!?」

「ご無沙汰しております、セッカ様。お元気で何よりです。しかしあなたは私の名前をどこで学んだのですか?」

私はその問いかけに対して少し考える仕草を見せながら質問を返すことにする。私にとって大切な人である彼女が敵になっている理由を私は知りたかったのだ。ただ私は、私の問いかけに対して答えてくれる可能性はほぼないと考えていたのである。だってそうでしょう?私は彼女の両親を殺して彼女から家族を奪ってしまった張本人であるはずなのだから、そんな人間に対して心を開き、優しく接してくれる訳がないと思うのである。そう考えながらも私は目の前の人物に向かって言葉を発したのである。

『私のことはいいのです。それよりも、何故私の目の前に居るあなたがこちら側の存在として勇者の仲間側についているのかを知りたいのです。その理由を教えていただけませんか?』

そして私は勇者から貰った剣を構える。だが目の前の少女はその行動を止めることなく私のことを睨みつけてきたのであった。だがそんな事を気にする余裕などなかったのだ。なぜならば私にとってはそれどころではなかったのである。その理由としてはまず私に対して攻撃を仕掛けて来た少女の存在。それが何者なのかということだ。

私の予想通りであるのならばこの子は私の実の妹のはずだったのだ。そう私の妹のはずだ。だが目の前の彼女はどう見ても妹にはとても見えないのである。そもそも彼女は髪の色が私の知っている妹とは違っているのだ。そして、私の知らないうちに妹が成長していればもっと私の印象に残るだろうと思うのである。

つまり私の考えているとおりだとするならば目の前に居る彼女は、私の記憶の中に存在した妹では無いことになる。そして、私をセッカと呼んだことから考えても恐らくは彼女は私が記憶を失った後に私の名前を知っていて、さらに言えば私の家族のことも知っていて、私の家までたどり着いたということになる。

そして私の家族を殺したのは目の前に居て勇者の仲間のルッチと呼ばれている存在であり、おそらくは目の前の人物はルッチの双子の姉妹、もしくは双子だったという事だと思う。

(ルッチはルッチじゃ無くなって、目の前の子がルッチになるのか。もしかするとルッチと名前が似ているだけでルッチとは別人な可能性もあるけれどルッチと名乗れるだけの能力を有していると考えれば同一人物だと考えたほうがよさそうだな)

そして次に問題な事がもう一つ存在している。その問題は私達の戦いによって村の人にまで被害が出てしまいそうになっているということである。このまま戦い続けてしまうと村の人達にも大きな被害が出るかもしれないと心配になり始めていたのだ。だから一刻も早く決着をつけたいところなんだけどさっきから目の前にいる人が攻撃を止めずに連続で魔法を放ってきてしまってなかなか前に出られないのである。どうにかして攻撃を止められないものかなぁ? 俺は俺達の周りで起こっている状況が信じられなかったのだ。それも当然だろ?目の前で突然現れたルッチと呼ばれていた魔物がルッチだったんだぜ?そしてその魔物と戦っていた勇者の仲間らしき人物がルチアとルッチという名前が似てる事に気付いたかと思うと、勇者はいきなりその仲間の女性に攻撃を仕掛け始めたのである。

(は?いったいなにが起きてるんだよ。それになんであの女性は俺達の敵になってるんだよ)

勇者のその行為を見た仲間たちもすぐに動き出しその勇者を攻撃するが何故か仲間からの攻撃を受けたはずのその女性は無傷のままその場に佇んでいる。

(あれは本当にルッチなのだろうか?)

勇者はそんな事を考えながらも戦闘を続けていた。しかし勇者は仲間たちからの攻撃を受け続けているのだがまるでダメージを受けている様子が無いように見える。そしてその事実がさらに仲間たちの焦りの原因になっているようである。

俺は勇者と女性が戦うのを見ながら俺はその光景を見つめていることしができなかった。なぜならばルチアと思われる女性は俺に向かって刀を抜こうとし始めたからだ。しかしそのタイミングを狙ってルッチが攻撃を始めようとするが、ルチアはそれを何とか防ぐ。俺はその隙にルッチが作り出した魔法障壁を使ってその場から離れようとしたがそれは間に合わないようでルチアが魔法を唱え始めようとしていた。俺はそれを黙って見ていてしまって、ルチアの攻撃は発動してしまいそうな感じだったので急いでルッカの魔法で自分の体を覆って防御態勢に入ったのである。

ルッチと俺に魔法が着弾する前になんとか俺達はその攻撃を避けることができたが、俺に攻撃を仕掛けた人物はかなりの手練れであると感じたのである。

(あれは完全に不意打ちを狙ったものだと思ったので反応するのが間に合わなかった。しかし、まさかあのタイミングであの子が自分の命を犠牲にしてまでもあの一撃を放つなんて)

しかし、勇者たちはまだ諦めていなかった。そして、勇者たちの中でも実力のある者たちだけが連携をとって戦っていたのだ。まず勇者の仲間の一人が足止めのために巨大な氷を作りだし相手を拘束しようとするもそれは失敗に終わることになる。なぜならその仲間も同じように氷を作り出し相手の足を凍結させようとしたからだ。

それからもお互いに妨害を行い合うような形になっていた。そんな状態が続いていたからなのか勇者も思うように動けない状態だったのである。だからなのか先ほどよりも明らかに動きが悪い状態で戦っているように思えた。それでも勇者の攻撃が通らないというだけでかなりのダメージを与えている。俺としては、そろそろ勇者の仲間の方の魔法によるサポートが無くなってきているからか、段々と勇者が追い詰められていっているように見えた。だが俺の考えとは逆にどんどん勇者が押されているような雰囲気が出ているのだった。そしてとうとう勇者の攻撃が女性の腹に直撃したのだ。

俺には勇者の放った攻撃が当たる瞬間がスローモーションで動いているように見えたのである。そのおかげで勇者の放つ魔法がルチアの腹部にめり込むのが見えてしまった。だが次の瞬間に、ルチアの体が光り輝き、次の瞬間にはその姿は見えなくなっていた。

勇者は自分が攻撃を与えたはずの相手がいなくなっていることに驚き戸惑う素振りを見せている。そして次の瞬間に突然地面が盛り上がり壁のようなモノが形成され、それと同時に爆発が起こった。それによって勇者は吹き飛ばされ地面に叩きつけられたのだ。そして勇者を吹き飛ばした土の壁のようなものは空中に消えていく。

(これはなんだ?突然のことで理解が追い付かないぞ?)

そして勇者の仲間の女性は何かを理解していたようだったが特に何もせずに勇者の仲間からの攻撃を防ぎ続けていた。その行動はどこか不自然なように思える。そして勇者の仲間の女の人の攻撃により仲間の男性二人が負傷していたのを見てから俺はすぐに二人を回復させるために走り出したのである。だが、そんな俺の前に勇者が立ちふさがったのだ。

俺はその行動を見てから舌打ちをしたくなる衝動を抑えることができなかった。正直邪魔だと感じていたのでさっさと倒してしまうかと思ったのだ。だけど俺は目の前で繰り広げられようとしている光景を眺めることに集中することにする。そしてそこにはルチアとルッチと呼ばれる存在がいたのだ。

(どういうことだ?何故あそこに二人が一緒に居るんだ?)

そして二人は何事も無かったかのように話をし始めると突然にお互いの戦闘を開始したのである。だがルッツはその攻撃を難なく避けていた。そしてそのままカウンターのように攻撃を仕掛けるがルッチはそれもあっさりと回避してしまったのである。

そこでルッカは一瞬だけ攻撃をやめてから距離を取ったのだった。俺の目から見てもその行動は非常に無駄に感じられるものであり攻撃を中断する必要はないように感じられた。そのため、攻撃を中止したという事の意味が全く分からなかったのだ。

「なんだよお前の攻撃は全然効かないじゃん。もっと頑張ろうよ」

「えっと、もしかして僕の名前はセッカですよね?」

その問いかけにルッチは笑いながら答えたのだ。

「うん、もちろん知ってるよ。私はルチアの双子の姉だよ。それじゃあそろそろ終わりにしましょうか?」

その言葉と共に再び激しい攻防が繰り広げられる。だがさっきのとは違い徐々にではあるけど確実にルッチがルチアを追い込んでいるように見えた。ただ、その戦いが決着が着く前にルッキが突如として姿を消すと俺達の方を向いてきたのである。そしてルッズ王やリリィの両親を惨殺したのはこの俺だと言い始めたのである。だが俺はその言葉を聞き驚く。

(なんだよこれ。なんなんだよ一体。こんなことがあってたまるかよ)

俺はその出来事を受け入れることができなくなってしまった。そして俺が混乱している間にも勇者とその仲間達が俺のことを守るために攻撃を仕掛けてきたのでそれを全て返り討ちにする。そして少しだけ頭が冷静になり始めた俺はこの場から離れることを決めたのである。しかしルッチに背後から斬られそうになりギリギリのところでそれを防いでいたのだ。そしてその間にルッカが攻撃を仕掛けようとしたのだが、その攻撃は全て相手に読まれてしまっていたのである。そして俺はその攻撃を回避しながらルッチのことを観察し続けたのだ。

ルッチの動きはとても人間離れしたもので俺の常識を覆すような身体能力を有していたのである。そしてその攻撃を俺達は何とか避けることはできているのだが反撃に移ることができずにいた。そんな時だった、急に勇者の仲間の男性がルチアに向かって魔法を放とうとし始めたのである。

(あいつは何をするつもりなんだ?どうしてルチアを攻撃しようと?それにルッカも勇者の攻撃を対処するのに必死みたいだ。このままじゃ俺も危なくなる可能性があるな)

そんなことを思いながらも今は勇者をなんとかしなければと思いルチアに襲いかかろうとした勇者に向かって飛び掛ると、勇者はそれに気づきすぐに対応してきた。しかしルッチの追撃が勇者を襲うとそちらのほうに集中したため勇者の注意力が疎かになったようで俺が勇者の首筋に手刀を打ち込んだことによりその一撃は綺麗に入り、勇者は意識を失いその場に倒れたのである。

俺はルチアがルッチの攻撃を避けた隙をついて俺の後ろに回り込もうとするのを確認したためルチアを蹴り飛ばそうとしたのだが、俺の行動に対してルッチが攻撃を仕掛けた事でそれが阻まれたのだ。ルッチの攻撃が俺に当たる直前にルチアが攻撃を中止してくれたお陰で、俺達の間にはルッチの攻撃を防ぐ時間が出来ていた。だから、その僅かな時間を無駄にしないために俺は攻撃が命中するまでの時間で攻撃を回避する方法を考えたのだ。その結果、攻撃の軌道上から移動することで何とかルッチの攻撃をかわすことに成功する。

それからは何とか攻撃のタイミングに合わせて俺もルチヤに攻撃を仕掛けることにしたのである。

だが、俺の放った攻撃も簡単に避けられてしまう。しかし今度は先ほどまでとは違う。なぜならば俺はわざと攻撃を受けるように仕向けたからである。なぜなら先ほどの攻撃でルッチの腕を切り落とせたかもしれないと考えていたからだ。だが、実際は俺が予想していたよりも腕を落とすことはできなかった。でも、俺の体に傷を与えることが出来たということはわかった。そのことからルッチの攻撃もある程度は効果があるのではないかと考えたのでそれからはひたすら攻撃し続ける。

ルッカも勇者が気絶したことで動けるようになったのだがそれでも勇者が倒れると同時に地面に膝を付いてしまう。その顔色は悪くなっていた。どう見ても限界のようである。そして勇者を気絶させたことでルッチも攻撃のペースを落とした。そしてルッコの魔法によってルッツがルッチャに拘束されてしまったのだ。その隙に勇者の仲間の二人がルチアとルッチのところに向かうと、二人は仲間を無視してお互いを攻撃する。そして仲間の一人は仲間を止めようとしたが止められずに二人の仲間に襲われてしまった。だがその仲間はすぐに起き上がり、仲間に向かって攻撃をしようとしていた勇者の仲間を殴り飛ばす。

そこでルッカに攻撃が飛んで来たので俺はルッカを守るように移動するがルッカはなんとか回避に成功することができたようだ。そしてその後の勇者ともう一人の男の攻防は激しかったので、さすがの勇者の仲間の男と言えども苦戦をしている様子だったので、俺が手伝おうと思ってルチアに近づこうとした時に勇者が俺に魔法を放った。

魔法自体はそれほど強い魔法ではなかった。なので特に問題無く俺も魔法を発動して相殺してやったので大したダメージを受けることも無く勇者との距離は開くことになる。しかし問題はそれだけではない。勇者の放った魔法の衝撃により、ルチアは勇者の攻撃の直撃を受けてしまうことになったのだ。

(まずい!さっきの攻撃はおそらく衝撃波みたいなものだろうから今のはかなりの威力のはず。あれだけの攻撃を受けたらいくら何でも死んでしまうぞ?)

そのことに不安を覚えたがルッカはルッチとの戦闘を繰り広げている最中でありルッカがこちらに来れるような状況ではなかったのだ。そして勇者はルチアが動かなくなったことに満足そうな笑みを浮かべていたのである。その表情を見て俺は怒りを感じたのだ。俺は今すぐにでも勇者を殺してしまいたい気分になってしまったがどうにか我慢するとルッチをルチアの元から離そうと試みたがそれは失敗した。そして俺は自分の行動が失敗してしまったと自覚することになる。勇者が勇者の仲間を殺したことで、この世界の法則が変わったのかは分からない。だが突然俺とルッカ以外の全員が俺とルッカの姿が消えたことによって動揺してしまった。だから勇者にそのチャンスを与えてしまってしまい勇者が魔法で攻撃しようとしてくる。そして勇者は仲間であるはずの存在にまで魔法で攻撃をしたのだ。だがルッカはそれに気づいていなかった。そのためルッカはその魔法を受けることになり消滅してしまったのである。そしてその直後に俺は再びルチアの方を確認するとそこにいたはずのルッチがいつの間にかいなくなっていて俺が慌てて周りを見渡すがその姿を見つけることができないのだった。そして勇者の方に目をやると、そこにはすでに倒れているルッチがいた。俺は勇者の仲間の方を警戒しながら、勇者から距離を取り、そして勇者の仲間の攻撃をいなしつつ反撃をするといったことをずっと繰り返す。

だがそんな状態は長くは続かなかった。俺が勇者の仲間たちを倒そうとするたびにルッチが現れるようになったのである。そして俺は勇者の仲間の相手をルッツと二人で行い始めた。俺はルッチが現れてもルッカが居てくれれば心強かったがさっきの戦いでルッズが死んでしまっていたこともありルッチが一人で戦ってくれていたのだ。そしてそのお陰もあり俺達が勝つことが出来た。そしてルッチが姿を現してから俺はルチアの様子を確認したがどう考えても無事だとは思えない姿になっていた。

(これは酷いな。まさかここまでとは思わなかった)

ルチアは完全に死んでいたわけではないが明らかに重傷を負って瀕死の状態であることがわかる。俺はすぐに回復ポーションを取り出してルチアに使おうとしたのだが何故か使うことが出来ないでいる。その理由を確かめようとしたときに突然目の前に現れたルッチから強烈なパンチを食らう。

(しまった!油断していた)

俺は咄嵯に剣を構え防御の姿勢を取る。しかし俺の目の前からルッチの拳が見えなくなり視界いっぱいに広がるルッチの顔だけが映ったのだ。その瞬間ルッチに腹パンされた俺は意識を失った。だが俺は意識を失う寸前に何かの声を聞いたような気がしたがその内容を深く考えることは出来なかったのである。

俺はルッカから話を聞いたときにある可能性を考えていたのだ。

(もしかしたら俺達は違う世界に飛ばされるかもしれないってことだな。それでその転移先の世界のルールがこっちの世界のルールとは違う場合だってある。もしかすれば勇者を放置しておくのは非常に危険な事態になるんじゃないか)

だけど勇者が勇者の仲間を手に掛けたという行為を見た後だとどうしても勇者が悪い奴のようには見えなくなっていた。そしてこの世界で勇者が悪人であるという確証が取れないのならばルッチはともかくとして、この世界の人達のためには勇者を捕まえておくべきなのではないかと考えた。しかし俺の考えが間違っていることはすぐに分かったのである。

俺はルッチを探そうとしてみたのだがすぐに見つかることはできたが俺はそれをしなかった。理由は簡単で、既にルッズは殺されておりその体はもう無かったからである。俺はその光景を見ながら「俺がもっとしっかりしていれば助けられたのかな」と考えてしまう。そして、俺は改めてルッカの話に出てきたことの重大性に気づくことになるのであった。

俺はルッチを探すことにした。しかしすぐに見つかったのである。ルッチは既に勇者によって殺されてしまっていたのだ。

そして勇者の仲間の二人は仲間の死体を確認し、俺のことを見下しながら勇者と一緒に俺に話しかけてくる。

「君の仲間はこの通り僕達が始末させてもらったよ。君の負けだよ。降参するのなら許してあげないこともないよ?どうする?」そんな事を言ってきたので俺は何も答えなかった。そんな態度をとる俺に対して二人の女のうち、リーダーらしき人物が武器を構えたまま俺の元に歩いてきたのだ。

そんな時にルッズから連絡が入り、俺はすぐにそれに出ることにする。するとルッカが焦り始めたのである。その内容はすぐに駆けつけるというものでそのすぐ後に大量の兵士達がやってきた。

そしてそのタイミングを見計らっていたかのように一人の女性が姿を現した。

「ルッカさんはご無用でしたらすぐに撤退の指示を下さい!」

そんな声を聞き俺は急いでその場から離れる。その直後俺が元いた場所には兵士が殺到し、その後すぐにルッカが合流したのだ。

それから俺はルッカの話を黙って聞く。そして話は終わり俺がルチッチを倒した時の話に移る。その時の俺は完全に意識を失っていたようで気がついたときにはルッズの体に異変が起きていると聞いて慌てて駆けつけたのだという。そのせいで俺が気づかないうちにルッチは死亡していてルッカがその遺体を見つけたのだった。だが、ここで一つ疑問が生まれたのだ。俺には確かに勇者の攻撃を避ける方法がなかったはずである。つまり俺の予想は外れたのだ。だがその予想は間違いじゃなくてルッズが勇者の攻撃をくらうことで死んだのではなく俺にルッチが倒されたことで勇者の仲間の男が攻撃を受けて死んだのではないだろうか。

だが俺はルッズが倒れた時にルッカが悲鳴をあげたことや、その直後に兵士が押し寄せてきたことを考えると勇者が仲間を殺すように指示を出した可能性が高いと判断した。

俺はそこまで考えてふと思ったことがあった。それは俺が倒した勇者の仲間の二人がルッカに向かって魔法を放ったので俺とルッチはそれを迎撃したのである。そして魔法同士がぶつかりあったときに俺は衝撃波が発生してしまったのだ。そして俺は衝撃波の影響でルチアが吹き飛んだのを目撃してしまった。しかしそのおかげでルッチは衝撃波から逃れることが出来たためルチアが生きているのではないかと考えたのだ。そこでルッカに質問をしてみるがやはりルッチが死んだことで衝撃波は発生しなくなったと言っていた。

俺はこの会話の最中にルッカと勇者の仲間が言い争っている隙を狙って逃げようと画策した。そして俺達三人は逃げることに成功したのだった。そしてルッカと別れたあと俺はすぐにルッチに会えるのではないかと考え、そしてすぐにそれは実現されることになる。なぜならば街を歩いている時に声をかけられて振り向くと、そこにはルッズが居たのである。

俺は驚いてルッカにルッチのことを確認すると俺の前に現れたのは俺達が最初に会ったときの少年で間違いないということだった。だが俺はなぜか目の前にいる人物を見てもあまり驚かずにルッチと話すことが出来るような感じになっていた。だから俺はまず俺と勇者が戦った後の状況を聞いてみるとルッツは簡単に教えてくれた。

ルッカによると勇者と勇者の仲間は、あの後直ぐに俺達が勇者と戦うことになった場所に向かったようだ。勇者は勇者の仲間を殺してからルッカ達の方に向かいルッカの拘束に成功してから城に戻ったらしい。そして今は城の中に閉じ込められていて出ることが出来ないとのことだった。そこでルッカが提案してくる。どうやら今の状況では勇者を逃がすわけにはいかないので、勇者を倒すためには協力する必要があるということだったので俺は承諾すると早速行動を開始したのだった。だが、俺はこの選択をしたことをすぐに後悔することになった。その理由はルッズがいきなり現れた俺のことを敵だと勘違いしたからだ。

そしてルッカは俺と勇者の仲間との話し合いの場を設けることになったのだが俺達は結局会うことはできなかった。だがその代わりに勇者の仲間が一人城に捕らえられていることがわかった。俺はそいつに会いに行くことにしたのだ。

俺は部屋を出ていこうとするがその前に勇者がこちらに来たような気配を感じた。どうやら俺の方にやって来ているようなのでとりあえずその部屋に待機することに決める。しばらく時間が経つと扉の向こうから声がかけられ、それと同時にゆっくりとその部屋の扉が開かれた。そこにいた人物は金髪の女性で年齢は二十歳くらいの美しい女性だった。女性は部屋の中にいる男に目を向けると「貴様が私の仲間を解放しろ」と言うと、俺は少しだけ違和感を覚えた。だがこの違和感がどこから来るものなのかがわからないのでひとまず無視することにした。

だが勇者の様子がおかしかった。そして勇者は自分の部下を自分の命を狙った反逆者扱いして、この場で切り捨てようとしたのである。そして俺が止める間もなく勇者が剣を振り下ろすとその斬撃は見事に女の腹部を貫通したのだ。しかし俺の剣も女を刺し貫いていたのである。そのことに驚いた俺は勇者の仲間に斬りかかったのだ。そして俺は咄嵯に剣を抜き取ると勇者に蹴りを入れるがあっさりと防がれてしまい逆に腹に思いっきりパンチを食らう羽目になってしまった。

俺は痛みを堪えながら、どうにか勇者の仲間を庇うように立ち回りながら、この場の離脱を図ったのだが勇者の仲間が俺の腕を掴む。その瞬間に何かの力に引き寄せられるような感触に襲われたのと同時に体が宙に浮かび、そして背中を思い切り強打してしまった。俺はそのまま床に打ち付けられて激痛が走り動くことができないでいたが勇者の仲間は俺から腕を奪い取って逃亡をしようとしていた。だが俺はその瞬間に勇者が俺の方へと向かってきていることを察知して、すぐさまその場から離れた。

それから俺は再び立ち上がる。しかし立ち上がった俺の姿を見ても特に驚くことなく俺を見下している様子である。その表情から俺はこいつは強いと確信して全力を出すことにした。俺は腰から剣を抜くが相手の勇者はまだ剣を抜かない。俺にその余裕な態度に怒りを覚えた。しかし次の瞬間には、俺の意識は無くなってしまった。そして目が覚めると見慣れぬ天井が見えていた。だがその見覚えのないはずの天井を見た瞬間に俺の脳内で今までの出来事が全て流れ込んできて記憶が整理された。しかしなぜ自分が生きているのかがよくわからなかった。

俺が起きたのを確認した勇者が「起きたみたいだね。君は僕が与えた力で強化された肉体で僕を殺そうとしたんだけどその前に僕が力を使ったからその衝撃に耐えられなかったんだよ。それに僕の仲間たちが僕のために働いてくれたんだ。そのお陰で君の相手ができたから君を殺すことができた。でも安心してくれ僕は絶対に約束を守る人間だ。その証として君の仲間を丁重に扱っているから君も元気になってくれるとありがたいよ。じゃあまた会おうね」と言って去っていった。俺はその言葉を聞いた後、すぐに仲間の安否を確認するためにルッカに連絡をとった。すると、俺は牢屋に入れられているらしく、この城の地下にいて、そしてその牢屋の場所は勇者しか知らないと言われたので俺は急いで地下へと向かった。

そして俺が階段を降りるとそこには一人の女性が立っていて、その女性の傍にもう一人の男性が立って何かを話し合っているようだったが、俺の存在に気づくとすぐに話しを止めて俺のほうを睨みつけてくる。その男は黒髪に長身のイケメンであり俺よりも頭二つ分ぐらい高く俺と同じような身長だった。だがそんなことは気にせず俺はその男性に近づいていき話しかけようとすると、急に話しかけるなというような視線を送ってくる。なのでその男の隣にいた少女に話しかけることにした。その少女の見た目は茶色い長めの髪をしており目は二重瞼の大きな瞳をしており肌は色白であった。俺はその可愛らしい容姿をした女の子が着ていたのは俺の世界では見たことのない服を着ておりスカートのようなひらひらした格好で胸の部分は大きく開いており、その隙間からは柔らかそうな谷間が覗いておりとても刺激的な服装をしていたので俺の心臓が激しく鼓動する。そんな彼女はなぜか俺に対して冷たい眼差しを向けた後すぐに「お前みたいな弱っちぃ男が勇者様に何用ですか?というかあなたって誰なんですか?」と、質問をしてきたので、そのことについて俺は説明をしようとしたのだが「私はこの人に話してるんです!邪魔をしないで下さい!」と、言われてしまったので俺は仕方なく黙っていた。すると、勇者と仲間の少女がその場を去って行ってしまい、俺はその場に残されたのでとりあえず先ほどまでいた場所に戻ってくるとさっきの男性はもう既にどこかに行ってしまったような感じがしたので今度は別の人物を探すことにする。だが、その人物は見つからなかったのだ。そして、そのことがあって俺は一旦落ち着くために自室に戻り、ベッドの上で寝転がりながらこれからどうすればいいかを思案していた。だが俺には現状を変える手立てがないのだ。

俺はどうしようもなくなったことでルッカとルッチに相談をしたいと思いルッチとルッカに通信を試みる。するとルッカの方は問題なく繋がり、ルッチにも繋がる。そのことにより俺は少し嬉しくなった。そしてルッカに俺は今どこに居るかということとこれから何をしようとしているのかを伝える。ルッカはその話を疑うことはなかったがルッチのところまでは届かなかったようで連絡を取ることは出来なかった。そして、それから俺は今後の作戦について考える。まず第一にこの城から脱出する必要がある。俺はこの城から抜け出すために必要な方法を考えなければならないのだ。だが、俺はここからどうやって脱出するかについては一切考えついていないので誰かに協力してもらう必要があるのだ。俺はこの城に侵入できたことから勇者の仲間は城内に侵入することが可能だと踏んでいた。そのため、この城の内部構造に詳しい人間と接触する必要がある。そう思ったので俺はこの城の内部に潜入するのに最も適した人間が近くにいるかどうかを確認してみた。

その結果、ルッチはどうやら城の内部の情報を入手できているような雰囲気があったのでその情報を提供してもらうためにもまずは彼に接触したいと考えたのでルッチの部屋へと向かう。俺は扉を開けるとそこには誰もいなかったので、しばらくその場で待つことにして部屋の中に入ってみると部屋の真ん中にあるテーブルの上に紙切れが置かれているのを発見した。それは俺の知っている言語ではなかった。しかしその文字を読むことができてしまうのである。

俺がそれを拾い上げると同時に部屋の外から「どうやらここへ辿り着いたようだね。そして、僕の仲間とも遭遇することができたかな」と言い、俺はルッチに見つかったと判断して、すぐに扉から離れる。だが扉は開かれなかった。だが扉が閉まる音は聞こえたのだ。

「残念だけど君の仲間がここにやって来ることはないと思うよ。ここは特殊な場所なんだ」

俺はルッカ達のことを馬鹿にされたことに腹を立てていたので、ルッズの言っている意味を理解することはできなかったが俺はルッカ達が簡単に死ぬはずがないと自分に言い聞かせるとルッカ達のことを考えることをやめて、目の前の人物に集中した。するとルッズは俺の行動が意外だったのか驚いており、その後、楽しげに笑った。その行動により俺はますますこの目の前にいる人物が信用できないと感じるようになっていた。俺は剣を抜き取り、ルッズに向かって攻撃しようとすると彼はそれを避ける。俺は避けられたことに驚き、追撃を行うべく再びルッズに攻撃をするとルッズが剣を抜いて防ごうとする。しかし俺はルッズが持っている剣を叩き折りルッズの腕ごと剣を切断することに成功した。俺は、その事に驚くがすぐにルッカ達にこのことを伝えようとした時だった。

俺はルッカの方に駆け寄るとそこで俺は倒れているルッカを見つけてしまうのである。だがまだ生きているかもしれないと思って俺が抱きかかえるとルッカは俺のことを見て、「どうして、私を助けるの?」と言うので俺は咄嵯にルッツの方に視線を向ける。だがそこにはすでに誰も居なくて、ただ血痕が点々と残っているだけになったので、俺達は逃げるしかないと直感的に悟ってしまう。俺はひとまずこの部屋から出て他の道を探し、そこを通って逃げようと試みる。そして、部屋を出てすぐのところで、俺は見慣れない鎧を身につけていて顔は兜で隠しているので素顔を見ることはできないが、俺と同じくらいの高さの男と遭遇してしまい俺は咄嵯にその男と戦闘を始める。そしてどうにか倒すことに成功するがその直後から俺の体中に切り傷が走るようになり俺の全身は出血してしまう。そして俺が地面に倒れ伏しているところを俺の体に回復スキルを使用してくれたのである。俺は自分の体が癒えていくことに気がついたので自分の体力を確認をしてみるとかなり減っていたことが分かって、おそらくはこのまま戦い続ければ俺の命はなかっただろうと想像することができる。

しかしここで俺に奇跡が起きることになる。突然、何者かが俺の近くに現れる。俺はそのことに警戒するが、その姿を見て俺の表情が明るくなった。そこにいたのが勇者の仲間の一人であったからだ。

俺は勇者の仲間の女性から治療を受けることになり、それからしばらくの間は休憩することとなった。その間に俺は、なぜ彼女がここに居るのかを確認することにしたのである。

「それで、あなたはなぜこの城に居るのかしら。勇者はどこに行ったのか分かるかしら」と俺の疑問をぶつけられる。俺がそのことについて答える前に勇者のことについて詳しく聞き出す。

すると彼女はその言葉を聞いて俺にこの国の事情を分かりやすく説明してくれたので大体は把握することが出来た。彼女はこの城の中に監禁されていて俺が戦っている最中に突如、この場所に現れて、そして彼女は、勇者の仲間としてではなく俺の手助けをしてくれようとしていた。彼女はそのように話すと彼女は「それに、あなたの仲間が今、この城に捕らわれていることを伝えに来たのよ」と口にしたので俺にはとても嬉しいことであったが、今はそのことを喜んでいる場合ではないと思い彼女には感謝を述べておくことにする。それから、彼女はルッチのことを心配しているような口調であったので俺が生きていることを伝えるとその事実を知って安心したような様子で安堵していた。それから俺と勇者の仲について質問される。俺はそれに対して素直に答えたのだが、その言葉に勇者の態度に不信感を覚えたようで、彼女に対して質問をし始める。そして勇者の過去について語ってくれたのである。

そして彼女の話によると、この世界に来て以来勇者はかなり変わったらしい。最初は普通の少年のように見えていたのだがこの世界に召喚された瞬間、性格が変化し始めてきたという。そしてその人格が変わった勇者を人々は恐れるようになり、次第に孤立していき、最後には魔王を倒した後の扱いまで酷くなっていき、最後はそのせいで自殺未遂を起こして現在は行方不明だというのだ。

俺はそのような状況に胸を痛めていたが俺はこれからどうやって城から抜け出すかということに意識を向けて考えていた。そんなことを俺が考えているとルッコはそんな俺の考えに気が付いたのかルッズのことを話し始める。その話が真実なのかどうかを俺は判断できなかったがとりあえず信じることにする。なぜならその方がこれから行動するにあたって都合が良いからである。そしてそのあとはルッカに現状について伝えるために連絡をとるために俺はルッカに対して通信を試みる。だが通信には全く繋がらずに通信をすることは不可能であった。それからしばらくしてから、ようやく通信が可能になったが、なぜか俺の姿は消えており、ルッカは一人で部屋に取り残されていた状態であり俺はどこにいるのかもわからなかったためにルッカには今、どこにいるかを教えてから、これからどうするかを考えなければと思い、俺はひとまずこの城について知らなければいけないことがあると思いルッカにこの城の中を探索してほしいという依頼をしたのだ。ルッカは、自分がやるべきことは分かっているというような感じで、早速城の内部へと侵入していくための準備を始めてくれると言ってくれたのだ。

俺はルッカと別れるとルッズと話を行い、この城を案内してもらうことになったのでその場所へ向かうことにした。

「お前はあのドラゴンのところに行かなくてもいいのかい?あのまま放置していても大丈夫だと思ったんだけどね。それにしてもあいつって結構可愛いんだね。もっと怖い奴をイメージしてたけどさ、僕ってば、あんな子を殺そうとしたのかな?まあいいや。さっさと移動を済ませよう」

「俺がこれからどうすれば良いのかを一緒に考えてもらっても良いですか?」

「別にいいよ。僕にできることがあったら言ってよ。そのくらいは協力してあげるよ」

「では、まずこの城について色々と教えてもらえますか?」

「この城はね、僕のお父様の物なんだ。だから城の中には沢山の資料が眠っていると思うから探せば何か出てくると思うよ」

それからしばらく歩き回っていると一つの部屋の前に到着する。するとルッズは部屋の中に入ると鍵を取り出した。そしてその鍵を扉の窪みに差し込むとそのまま回した。その動作によってカチッと音が鳴ったような気がしたが扉を開くとそこには資料の山が存在していた。その光景に驚いてしまい、俺は思わず立ち尽くしてしまっていた。その様子を見ていたルッカは俺を中に入れると扉を閉じる。それから俺を中に入るように言うと俺の方に視線を向けたのである。その行為を受けて俺はすぐに資料を読み始める。だがあまりにも量が多すぎて読むだけで数日が過ぎそうなほどに膨大な量であったため俺は諦めてこの城の地図を探し始めたのである。その結果すぐに見つけることができてその資料を手に取り俺は読み始める。

そこには、現在の魔王軍の動向についての報告書があり、それを眺めているとあることに気づく。それは魔王軍と人間の連合軍との戦いが行われているのが俺達が居る場所からは遠く離れたところであることが判明した。しかもそこには勇者も来ているという話もあり、そこで俺は勇者に会うことが出来れば何とかなるかもしれないと考えるようになる。俺は勇者に会いに行くことを決意したのだった。

俺が目を覚ました時にはもう日が昇っていて、俺の体から疲れが抜け切っていない感覚があったのでどうやら寝不足の状態で一日を過ごすことになると理解することができた。

それから俺は、今日中に魔王と戦うために必要なものを手に入れる必要があると悟ったので、ルッチと話をすることにしたのだ。しかしルッチを見つけることは出来なかった。そのため、俺は、勇者と合流すべく行動を起こそうと考え、その準備を行うために、勇者の部屋に向かうことにしたのだった。そして部屋の中に入ろうとした時だった。俺はある違和感を感じ取った。そのことからすぐに俺は扉から離れ、ルッズの部屋に向かって走り出す。しかし、途中でルッカと遭遇してしまう。ルッカは驚いた表情を浮かべるが俺に話しかけてくる。だが俺はその言葉を遮るとルッズに会わなくてはいけないと言い放ち部屋の中に入ろうとするが俺の行動を見て慌てて俺を止めようとした。その時にルッカが剣を抜き放つのと同時に部屋の中から悲鳴が聞こえてきて、その直後に爆発音が発生したのである。俺は急いでルッズの元へ駆け寄ろうと試みたがすぐに俺はその場から離れることになってしまった。なぜなら俺が居た場所は爆発して跡形もなく崩れてしまったからだ。俺はそのことに驚愕してしまう。それからどうにかしてこの部屋に入らなくてはならないと思っていた。すると突然目の前が明るくなり俺は視界を失う。

そこで俺は誰かから殴られてしまい気を失ってしまう。そして目覚めた頃には、目の前の景色に変化が起こり始め、そこには大量の魔族が居て俺は、ルッカに守られながら逃げようとする。だが逃げきることはできなかった。そして、俺が気を失った際に手に入れた情報は、ルッカは勇者に殺されそうになっているというものだったのでどうにかしたいと考えていた。そしてどうにかしなければ俺とルッカは死んでしまうと悟ってしまったのでどうにかしようと必死になっていた。その時だった。

俺にチャンスが訪れる。なんとルッチが現れたのである。ルッチが、なぜこの場に現れたのかはよく分からなかったが俺はルッチと手を組むことでどうにかこの場を生き抜くことに成功する。そして俺達はどうにかこの場を脱出することに成功した。

それから俺達はひとまず安全な場所に移動することを目標に動いていたが、途中で魔物に遭遇してしまい戦闘に突入することになった。だがそこで問題が起こった。どうやらルッコの能力である転移を使うための魔力が足りなかったらしくルッパとルッチは逃げることを諦めたのだ。

「私はこの程度の相手を倒すのには魔法なんて使わないで十分だよ!」とそう口にすると一瞬にして相手の背後に移動したのである。俺はその瞬間に攻撃を行うべきだと判断していたのだがそれよりも早くルッチが攻撃を仕掛けたため結局その戦いはすぐに終わってしまった。その後、この場をやり過ごしてから行動に移ることになり俺は一度、この世界から抜け出すことにした。

「君のおかげでなんとか生き延びることができたみたいだね」

「私こそ助けてくれてありがとう。でもあなたがこの世界に来られたということはもしかしたらまた、元の世界に戻ってしまうのでしょうか?」

「どうやらそのようだ。僕は君のことを少しばかり調べさせて貰っているよ。名前はユウト、君は、この世界の人間ではなく違う世界を生きる者らしい。だけど、今はこの世界で暮らしている。そしてその世界には勇者と魔王が存在する。さらに勇者はこの世界とは違う別世界から来ているということらしいね。これは一体どういった意味があるのかな?まあそれは今考えることじゃないだろう。ところで、ルッコさんも一緒に行くんでしょう?じゃあこれからどうしようか?これからはどう動くのが良いと思う?」とルッズは俺に質問を投げかけてきたので、俺の意見を言うことにした。それから俺は俺の考えを話してからルッコと一緒に勇者の所まで向かうことを告げたのである。すると彼女は快く引き受けてくれたのだ。そして俺は彼女にお礼を告げるとこれからどうすればいいのかを聞く。その質問に対してルッチはこれからルッズと俺達二人で行動するように言われていたことを告げたので俺は彼女とルッズと三人で行動を開始することにした。

そして俺達は三人で旅をしながらルッツの案内のもと魔王城へと向かい始めたのである。魔王城にたどり着くまでは、かなり長い時間を必要とするだろうと予想されていたのでルッツにその辺りは詳しく聞いてみることにする。まず最初に俺達の目的が本当にこの世界を救うことにあるのかを聞いてみた。それに対しては当たり前だと即答されてしまい、それなら何のためにこの城に向かおうと考えているのかと尋ねる。だが、返ってきた言葉がいまいち要領を得ないものだったためにあまりよくわからないという結論に至った。そのことについて詳しく説明してくれるよう頼むがルッズはこれ以上何も話すつもりは無いといった感じの態度をとっていたのでどうすれば良いのかわからなくなってしまう。だからと言ってここで引き下がる訳にはいかないと思い何かいい案がないかと模索していたらルッチの方からルッカに質問を始めたのである。その会話の内容から俺の知りたい情報をいくつか教えてくれることがわかったので感謝の言葉を伝えたのだ。するとルッキはなぜか、嬉しそうな顔をしていたが気にしない方がいいと思い俺はそのまま歩き続けていた。それからしばらくの間歩いていると突然ルッカが足を止める。それからルッズの方に視線を向けたので俺はどうしたんだ?と思って彼女の目線の先を辿ってみるとそこにはドラゴンの死体が存在した。

俺はその死体を確認するとすぐにそれがこの森に棲むワイバーンという存在なのだと理解することができたのだ。それから俺は、この場でやることが無いので一旦この場所を離れようと提案する。だがルッカがなぜかこの場所に残ろうとしているので俺はどうしたらいいのかわからずにその場で立ち尽くしているしかできなかったのである。そして俺はルッコに声をかけるとここから離れてくれないかと告げる。俺はどうしてもやるべきことがあると伝えると、その気持ちは分かると言われたのだ。そこで俺が、どうしてわかるのか理由を尋ねてみると、魔王と直接戦った経験があってその時の恐怖がまだ心に残っていると教えてもらった。そして魔王との対面を果たした後にどのような状況で魔王と戦ったのかと尋ねたところ俺は、いきなり襲われたと言っていた。その話によると、ルッカは元々別の場所に住んでいたのだがそこに魔王が現れて自分の仲間になれと言われ無理やりに配下にされたのだという。だがそれを拒否するとすぐに殺されかけたらしい。それからルッカはどうにかしてその場を逃げ出してからは、一人で生き続けなければならない生活を続けていたそうだ。そしてある日の事、この近くにゴブリンの集落を見つけたのである。そこでルッカはゴブリンたちの生活を邪魔するために攻撃を開始した。するとゴブリンたちも黙っていられないのかルッカに向かって反撃を始めてくる。そして戦闘が始まりしばらく時間が経つと俺が現れる。俺はその戦いの渦中に巻き込まれてどうにか生き残れた。それからしばらくの時間を経過するとゴブリンたちがどこかに行こうとするのを確認したのでルッカは急いで後を追い、森の中を進んでいく。そしてその場所に着くと俺と出会う。

それから俺がどうやってこの場所に来たのかを訪ねる。だが、俺はその問いかけに答えることができなかった。だがルッズはそのことについては理解してくれたようで納得するような声を上げる。そこでルッズが俺に対して頼みごとをしてくる。その内容とは魔王の討伐であった。だが俺としてはこの依頼を受けるのは嫌な気分になってしまったのである。理由は特に無いのだがただ単に受けたくないと思ったので断ることにした。するとルッカからルッソに対して説得を始める。その結果として魔王を倒してほしいと頼んでいた。だが、俺はその頼みを聞くことはできなかったので、そのことについては断ることにしてそれからは二人を置いて一人その場を離れる。それから俺はルッズが言ったことが気になって仕方がなかった。だがいくら考えたところで俺が知る術などありはしなかったのだ。そして俺は勇者と会う前に、もう一度ルッズに会いたいと考えてすぐにその場に向かったのである。

そして俺はすぐにその場に向かって行ったが途中で魔物に遭遇する。俺はその相手を倒そうとするがその時に俺は何者かに攻撃を受けてしまい吹き飛ばされてしまう。どうにかその攻撃に耐えきることができたもののかなりの傷を負ってしまい痛みのせいで立ち上がることすら困難な状態に陥っていた。

そんな時だった。ルッカが助けに来てくれたのである。そのことで俺は助かったと安堵した。その後俺はどうにかその場から離れることに成功しルッズと合流してルッズと共に行動を再開することにしたのだった。それからルッカが、魔王について語ってくれたがその内容は俺の知らないことばかりだったのである。そのため俺にとってこの世界ではまだまだ未知数の知識が存在し続けていると気づかされる。そのため俺としても早く元の世界に帰りたいと切実に思うのである。

それから俺はどうにかルッズと一緒に行動しながら目的地に向かっていた。しかし、その途中、俺はまた新たな魔物に遭遇してしまい戦いが始まることになる。そしてその戦いに勝利したのだが、その直後に俺は魔物に攻撃を受けて気を失ってしまう。それから目を覚ますとその先に待っていたのは、ルッカが殺される瞬間を目撃してしまい俺が動揺してしまったのだ。だがそこですぐに立ち直る。ルッカはどうにか無事であり俺は彼女を治療するため、そして彼女がなぜ殺されたのかどうかを確認しなくてはならないと考えそのことについてルッチと相談しようと思った。

そして俺とルッズはその場から離脱しようとしたがその時にルッズが怪我を負ってしまい動けなくなってしまった。なので俺がルッナを担ぐことになってしまう。それから俺達はその場から逃げようとするが魔物たちに妨害されてしまう。だがそこで奇跡が起こったのである。それは俺とルッズの二人で共闘し始めようとしたときに突然現れた一人の男が魔族たちを薙ぎ払ったのだ。それによって魔族たちは全滅することはなかったがかなりの数が減ってしまったようである。

そのことに俺達が戸惑っているとルッカのことをその男に任せてくれないかと言い出してきた。最初は俺達は警戒していたが、どうせこのまま逃げたら追ってくる魔物たちによって死ぬだけだと考え、素直に従うことにしたのである。俺はそれからルッズと二人でその場から離れて行く。そしてある程度離れた所で俺はルッカの治療を行うためにポーションを取り出そうとするがそれを取り出すことができず困惑していたのだがそこで俺の体が光り出したのである。そして光が消えた後に、なぜかアイテムボックスと呼ばれる空間の中を開けられるようになったため、その中に収納されているものから必要な物を引っ張り出すことができた。そして俺はすぐにそれをルッコの傷口に塗ると、ルッカは無事に意識を取り戻したので俺は安心したのである。そしてルッチと合流すると彼はルッズが生きていることを喜んでくれて俺達に感謝してくれていた。

そしてルッズはその後ルッチに対して魔王と戦うように促していたのである。その話の内容から俺とルッズは、ルッチがこの世界を救おうとしているのかと推測するとどうやら当たっていたらしくそれからルッズからいろいろと教えてもらいこれからのことについて話し合い始めると俺はその話があまりにも突拍子もないものばかりでついて行けなくなり始めていた。しかしルッコがそれを否定してくれなかったので俺達二人は本当にルッツが言っていることが本当なのではないかと考え始めているのである。

それからルッチの話は続き俺達に魔王を倒してほしいと言う内容だった。そして、俺達の答えは断るというもので、その理由に関しては魔王を退治すればこの世界が崩壊してしまう可能性があるということを説明した上で断った。それに俺がこの世界の住人じゃないという事情があるからだと説明した。だがそれでも構わないと言われたので俺としては本当にどうしたらいいのかわからなくなる。だけど俺には勇者を倒す理由が存在しないために魔王を殺す必要性はどこにも無いのだ。そのことを俺とルッズは話す。

すると、魔王城までの道のりはかなり長く、今の状態ではたどり着くことができないので、まずはこの森を抜けて行くことになった。それから数日が経過すると森を出ることが出来たので俺達はすぐに街に向かい始めた。その道中、俺はあることを試してみることにした。まず最初にやることは自分のステータスを確認することだ。

そうして俺は、自分がどれほど強くなっているのかを確かめるために、早速確認を行うことにする。

ユウト(ルッソ)

レベル3 攻撃力 1080 守備力 970 魔力 900 精神力 860 速度能力 700 知力 730 SP 5 特殊技能 なし スキル 全属性魔法使用可能。

経験値倍増。アイテムボックス使用可。鑑定。剣術5段階目 身体強化2段階目 魔力制御。自動回復。毒無効。状態異常無効。

俺は自分の現在の能力値がどれくらい上昇しているのかを調べたらどうなるのかと思い調べたのである。その結果、かなり大幅に上昇したことがわかる。それから俺の能力を数値化した時に見えたのだがどうやらSPという欄があったのでおそらくそこに、その数字を振り分けることで新しい技が手に入るのではないかという予想をした。だがその方法については何もわからないのである。だからといって諦めることだけはしたくはないと俺の魂が強く訴えている。そこで俺はとりあえず全ての技能のレベルを上げることを考えてみる。それからすぐに俺の能力が全体的に上昇していくが、その速度があまりにも速すぎたのだ。

俺がそんなことを考えながら移動を続けてしばらく経つとルッカから話しかけられる。俺はその話を聞こうとしたのだが、すぐに彼女は俺から視線を逸らす。それから俺は、俺とあまり会話したがらないルッカに疑問を覚えながらも俺は気にせずに話を進めることにしたのである。

「えっと、何か聞きたいことがあったのかな?」

「うん、そうなんだけど、あの魔王と戦わないでって言ったのは、その方が安全にこの世界で暮らせると思ったんだ。でも、今のルッズを見た限りじゃあもう魔王と戦いそうになっている気がして心配で」

ルッカの言葉を聞いて俺は確かにその通りだと納得する。それから俺はこの先の戦いに絶対に負けられないと気持ちを新たにする。なぜならこの世界を救うとルッチと約束してしまったのである。そのためにも何としてでも勇者とは戦う必要があるのだ。そして俺は自分の実力を把握した上でルッチに協力をすることを決意する。そのためにももっと強くなりたいと本気で思った。

俺はそれからしばらく歩いているとようやく街が見えてきた。

俺はその街の姿を見て思わず息を飲んでしまう。この世界に転移したばかりだというのにまさか異世界に来て最初の町に立ち寄ることになるとは思ってはいなかったのである。それから俺は門番と軽く挨拶を交わすと、その門の先で待ち構えているのはこの世界の街の町並みだった。その街並みを見ていると、この街が俺がいた世界とそれほど大きく違うことはないと思う。それから俺はすぐにルッズと一緒に宿屋に向かって行き宿の確保を行った。だがルッカの姿は無かった。それから俺は、すぐにルッカを探しに行く。するとルッカとルッキを見つけたので俺は、二人に話しかけることにした。それから三人で今後の事について相談を始めるとルッカが俺の持っているアイテムに興味を示していたので、俺はそのアイテムを渡してみると、その道具を眺めた後で、すぐに返してくれるように頼むと俺がそれを拒否すると残念そうな表情を浮かべる。それからしばらくの間、話し合いをしていると、突然ルッソが動き出す。

それからしばらくしてルッチたちが戻ってきたがそこでルッカがいないことに気づくと俺はその事を問いただす。するとルッカはまだ俺の渡した道具に興味がありそれを見ていたら少し遠くの方まで行ってしまったそうだ。それを聞いた俺は急いでルッカのことを探すことにした。だがその前に俺はもう一度ルッツに魔王について尋ねると俺達は、この世界に魔王が封印されたことで救われたという言い伝えを信じているためそのことについては知らなかったようだ。だが魔王の存在を知っていることから魔王が復活したことだけは知っていたのだろう。そして、それから俺達は魔王の居場所に向かうために旅を再開するのである。

それから数日かけて、俺はとうとうルッカに追いつくことに成功する。そこで彼女は俺に抱き着いて離れようとしなくなった。それだけではなく俺は彼女に対して抱きしめろと言われてしまい困惑しながら彼女の要求に応えたのだ。そして俺は彼女が満足するまでその状態が続いた。俺は、どうにかして彼女と話をするために俺は彼女にどうして俺のことを怖がっているのか聞いてみると俺の目が怖いのだという。その理由が、俺はどうやら黒髪であることが災いし、この辺りの国の住民達の間では魔族の特徴を持っているのではないかと噂されているらしく、それからこの周辺の国々では迫害を受けているらしいのだ。そしてそのせいもあってか俺が元の世界に戻るための方法も全く分からない状況だったのである。そのため俺のことも恐れて当然だと言うわけである。

それを聞かされた時俺はなんとも言えないような気持ちになっていた。俺も元いた世界に居続けたいという想いはあるが、そのためにルッカを怯えさせてしまったことに俺は後悔した。しかし、それでもやはり彼女が俺の傍から離れようとしてくれない。どうにかして落ち着くまで俺達はその場にいるしかなかったのである。

それから俺は一度、その国を離れて別の場所に移動をしようと考えていたがその前にやらなくてはならないことがあってまずはその街でやらなくてはならないことを済ませてから再び出発をすることにしていた。だが、その前に俺のステータスがどうなったのかを確認しなければと思い、俺は、自分にどんなスキルが増えているのかを確かめようとしたのである。それでステータス画面を開くことができるようになり、俺の能力値を確認できるようになっていた。そこで俺のSPというステータスがある場所を確認すると1だけ残っていたのでおそらくここの数値を増やして新しい技を覚えることが可能ではないかと推測する。そこで、試しに俺はSPの項目に振り分けをしてみることにしたのだ。そして俺がステータス画面に表示された項目にポイントを振り分けるとすぐに新たな技能が表示される。

ユウト(ルッソ)

レベル7 攻撃力 210 守備力 180 魔力 100 精神力 390 速度能力 400 知力 300 そしてそのステータスを見て俺は、かなり能力が上昇していると実感していた。

それから俺は、新たに習得可能となった技能を確認した後に確認を終えて、ルッカが落ち着きを取り戻すと俺は彼女を一旦引き離すことを試みる。しかしなかなか離れてはくれなかったのが、それでも無理やり引き離したところで、俺は改めてこれからどうするかを考えていた。するとその時ルッズが自分のことを仲間に入れてもらえないかと提案してくれたのである。それにルッカは賛成してくれ、俺自身も断る理由はないので了承した。しかし俺はある疑問を覚えたのである。それは、どうしてルッチはこんな俺にここまで親身になってくれているのかということであった。それが不思議でしかたがなかったのである。それに俺に対して普通に話せていたのである。俺がそんなことを考えながらも話を続けているうちに二人はすっかり打ち解け合っていた。そして二人が仲が良くなり俺としても嬉しいと感じていたのである。

その後俺は、自分の持っている剣を取り出してからこの先の街に向かって移動を開始するのである。そして、俺達が向かったのは、ルッコが元々暮らしていた村だった。だが、そこにはすでに人は誰もおらず、完全に廃墟と化していて魔物に襲われてしまっている状態であったのだ。その惨状を目の当たりにして俺達はショックを受けるがそれでも立ち止まっている暇など無いためにすぐに行動に移る。それから俺達は街を散策してみる。だがそこに人の気配は無く、まるで人がいなくなってしまったかのように感じる。そしてしばらく歩いていると一人の少年と遭遇する。その人物を見た瞬間俺はすぐに身構えたがすぐに彼は敵ではないとわかると俺は武器を収めた。

すると彼が俺達にあるお願い事をしてくる。

「僕の名前はロランです。僕はこの近くにある村に住まわせてもらい、村の警備をさせてもらっています」

その話を聞いた時に俺達の目の前にいるこの子は一体何を考えているのかと疑いたくなって来る。だってこの子は明らかに自分よりも弱い人間にそんな頼みごとをするだろうかと思ってしまったのだ。だけどそんな考えをすぐに振り払う。なぜなら彼からはとても誠実で真面目な雰囲気を感じ取っていたからだ。だから俺は彼の話を聞いてあげようと思い事情を話してくれるように頼むと、その申し出を受けてくれた。そして彼はその事情を簡単に説明してくれる。それによると実はルッチはこの世界の住人ではなかったのだと教えてくれて、ルッソもそうなのかと聞くと彼女は静かに首肯した。それから俺達にその村を救ってほしいという依頼を持ち掛けてきたのだが、それを断ろうとしたら、なぜか俺だけが話を遮られてしまう。

それから俺は仕方なく話を最後まで聞こうと心がけたのだが、結局この子が言いたいことは、その村は、今、危機的状況に陥っているということだけだった。それからしばらく待っていると、俺は彼に連れられ、とある建物に連れてこられる。そこは、どうやら村長の屋敷のようだ。だが、そこにいたはずの人影はなく、代わりに一冊の日記が机の上に残されていて、俺はその日記を興味深く読み進めることにしたのである。

するとその内容をかいつまんで説明すると、ルッカは元々ルッソに命を助けてもらったことがありその恩返しをしたいと思ったらしいのだ。それからそのルッカが俺のことを気に入ってしまいルッズは少し不機嫌になる。なぜならば彼女は俺のことが好きだと言っていたからである。

それを知ったルッソは焦りを覚えて慌ててルッカを説得しようと頑張っているとルッカの方はあっさりと諦めてしまいそれを聞いた俺は少し複雑な気分になった。それから俺は自分の身の上を軽く説明してルッカと俺とルッチの三人組の冒険が始まったのである。そしてルッカにこの屋敷で泊まっていかないかと誘われる。俺はその誘いを受けて、少し考えるが、ここにこのまま放置するのはさすがにまずいだろと思うと俺は彼女の言葉に甘えることにしたのであった。

次の日、俺は、ルッパと共に冒険を続けることにした。ルッカが俺の同行者に加わり俺達は、この国の魔王を倒しに向かったのである。それから俺はこの国に存在していると言われている魔族と呼ばれる者たちと戦わなくてはいけないのだと思い覚悟を決める。それから俺は、魔族がどのような者達で、どのように生活しているのかを調べるためにこの辺り一帯の地域を探索することにした。そこで俺は、魔族の里を発見してすぐに攻撃を仕掛けようとするが、ルッカに止められてしまう。どうやら、この魔族は普通の魔族とは違う種族のようだというのだ。それどころか、彼らは俺に対して友好的な態度で接してきて、俺のことを歓迎している様子である。そこで俺は、彼らの中に混じってこの国の調査を始めることにした。だが、それはあくまでこの世界のことを学ぶためだけであり魔王が本当に復活してしまっていて、俺達が元の世界に戻る方法もわからず手掛かりも一切ないため、俺は彼らに協力を求め、彼らと一緒に旅を始めたのである。

それから数日後俺達は、その里の長に会うことになる。そしてそこでその里についていろいろ調べさせてもらうがどうにもその里の成り立ちや現状が明らかにならないまま数日が経過してしまう。そこで俺は一度、里を出ることを決め、再び旅に出ることに決める。だが、そこで一つ問題が発生する。なんとその長がついて行きたいと言ってきて断るわけにはいかず一緒に向かう羽目になってしまったのだ。そのため仕方なく連れて行くことにした俺達だったがここで予想外の展開になってしまう。それはこの国が魔族によって支配されていたことが判明したからだったのである。どうやらあの里の住民たちは元々は別の土地に住んでいたようだが何らかの理由であの土地に移り住んだという。それなのにその土地を勝手に占領して好き勝手をし始めた奴らがいたために魔族たちは、仕方なくこの地にとどまることになったそうだ。そのため俺が元の世界に帰るためには魔族を倒さなければならないらしい。そして俺はルッソの両親を救うためにこの国を救うことを決意した。それから俺はその里の人々と別れることになる。その道中では、俺はこの世界にやって来て初めて人間と会う。そして、そこでルッカと同じ年頃の少女と出会うと俺はその少女と恋に落ちてしまい、それから俺は彼女と婚約を結ぶことに決めてしまう。

そして、それから俺達はその村を後にすると、それからしばらくの間俺は、彼女との旅を続けていく。しかし、その間にルッズとルッカが二人きりで行動する時間も徐々に増えていき俺の胸の中には不安が広がり始めていた。それからルッズとの仲も深まっていくが、俺は彼女のことを愛おしく思い始めるがどうしても自分の中の迷いを完全に拭い切ることはできなかった。そんなある日、俺は彼女にプロポーズをし結婚することを決める。俺はその時に彼女を絶対に幸せにしてみせると思いながら俺は彼女をしっかりと守り抜こうと思っていた。そして結婚式を挙げる日が訪れて無事に彼女の父親を説得することができ、無事ルッズの父親は、娘との結婚を許してくれた。だが、俺はそれでもなお不安を払拭することができなかったのである。そこで俺は、その日に何かが起こるかもしれないと思い、警戒を強めるのだった。そしてその夜俺は悪夢を見る。そこで俺は目を覚まして、隣を見ると、ルッソが眠っていたので俺はホッとしながら安心する。そこで俺は彼女が涙を流していたことに気づく。その理由を訊ねてみると、彼女もまた何かの異変を感じていたようで俺に心配をかけまいと我慢していたみたいだが、その気持ちとは裏腹に体が無意識のうちに震えていたのである。そこで俺はその彼女のことを強く抱きしめて少しでも落ち着かせようとしていた。

だがその悪夢は突然現れたのである。

そして夢の中にルッコが現れると、いきなりルッコは剣を取り出したのだ。俺は咄嵯のことに対応できずそのまま攻撃を食らってしまいそうになる。俺は、その剣が危険だと感じとっさに剣を抜いてルッカの攻撃を受け止めていた。それから俺は何とかルッカと戦うことを避けることができたがどう考えてもこの剣を持っている人間は危険な存在であると確信した俺はその剣を奪い取ることに成功する。

だが俺はこの時まだ油断をしていたため、剣を奪ってからは剣を使うつもりはなかったのだがルッチが俺に対してその剣を使って欲しいと言い出してしまう。だがその時はそんなことをするつもりがなかったのだが俺の意思に関係なく勝手にルッズの手から黒い刀身をした短剣が出現したのである。

「お前にこの力を与える。その代わり、私と約束しろ。この先何が起ころうとも決してその剣を使わずに私の傍から離れるな。いいか?」

(ああ、もちろんだよ)

俺がその声に従うと俺が手にした剣に変化が訪れた。その瞬間俺は全身に力がみなぎって来るのを感じたのである。俺はその力を実感しながらもこれから一体どうすればこの力を使えるようになるのかを考えているうちに目が冴えてしまったので、俺はルッコを起こすことにする。

そして俺はこの力をどうやって使うべきか悩んでいた。その使い方が分からなければこの武器の威力を十分に引き出すことはできないだろうと思ったからである。

だがその問題はあっさり解決することになった。なぜならば俺の頭に直接情報が浮かんできたからだ。俺はそれを見て驚いた。なぜなら、今この世界に存在する武器を使うことができる能力を手に入れたのだ。しかもこの能力は全ての武器に適応されるので俺に使えない武器はないということになる。それに俺は、魔法というものを習得することもできるようになるらしく試しに使ってみると難なく成功してしまったのでこれで、戦闘面では問題なさそうに思えた。それから俺の新たな戦いが始まるのだが、まず最初に俺はルッカとルッチの二人の関係を考えなければならなかった。俺はルッソの父親と相談してみることに決めたのである。そこでまず俺はこの国にある魔王に関する情報を調べ始めたのであった。

俺はルッソから魔王に関する情報を聞いていたのでこの世界に存在する魔王を俺は知ることができたのである。この世界にある七人の魔王はそれぞれ強力な力を持つがゆえに互いに手を出すことはなくそれぞれが別々の土地に拠点を構えて暮らしているようだ。そしてそのそれぞれの拠点に魔王が住んでる城の入口へと通じている転送装置が存在するとのこと。俺はこの話を信じることに決めると魔王たちを倒しに向かうことに決める。そして、ルッパは自分が魔王を倒すと意気込んでいたのだが俺は彼女にだけはこの仕事をさせるわけには行かないと考えていた。

なぜならば魔王は普通の人間よりも圧倒的に強く俺が一人で立ち向かったところで確実に負けてしまうと思ったからだ。俺はそのことを伝えようとしたら、ルッチに邪魔をされてしまう。だがそこでルッソが現れ、その役目を譲ってくれた。俺は、その言葉を聞いて素直に感謝すると共に、俺達はこの国を出ていくことにした。その旅の中で俺はこの国の王様とも知り合いになり、その王様からある物を渡され俺達は、この国の外へと出ることに成功して旅を再開した。そしてそれから俺達はこの世界で二番目の規模を誇る都市までやって来た。そしてその道中で、魔族の里を発見してしまいルッズとルッチーは里に入ろうとするが、どうにも怪しいと勘づいた俺は強引にルッズ達を止めることに成功したのである。

俺はルッソに魔族との戦いに関わらせたくないと伝えた。しかしそれでも彼女は納得しなかったのである。俺は仕方なく実力を見せることで納得させようと思い、そして俺の予想は的中したのであった。そしてルッパはその実力を目の当たりにしてからようやく諦めるのである。そこで俺達はこの都市の探索を行うが、俺が見つけた魔族の里とは様子が違うため俺の想像とは違いこの国は普通に魔族たちが生活していたので俺はそのことに驚きを隠せなかったのである。そしてその魔族の街に一人の魔族の娘と俺が出会ったのである。その子の名はラピスというらしいが、なぜかこの魔族の街の住民は、魔族とは思えないような優しい性格をしていたのである。

だがそんな住民に対して俺は不信感を抱くことになる。なぜならばその住民が全員魔族だというのだ。そこで俺は、俺はこの子のことをもう少し知りたいと思い一緒にいることにしたのである。そしてしばらくするとその娘はこの里の外に行きたいと俺達に告げたのだ。そこで俺はルッソやルッツと話し合いをしてその里から出てみることになったのである。その道中では、俺達が見たことない生物と出会うことになった。

それは巨大なドラゴンだった。その竜の名前はファムといいこの辺り一帯の地域の空の支配者だと俺達が知る。そこで俺達はファムと契約を結ぶことになる。それはファムにとって悪い話ではなかったので彼は快く引き受けてくれ俺達は、ファムの背中に乗せてもらって空を飛ぶことに。その時に、ファムが人間について語り始める。

『お前たちは俺と初めて会ったのになぜ恐れず話しかけてきたのだ?魔族は人族にとっては天敵とされている存在なのだぞ?』

(いやあ俺がここに来た時にはもう魔族たちは人間と戦っているようだったから俺が知っている限りの情報で話しただけだよ。それよりも魔族と人は共存することは可能なのかい?)

俺がそう質問をすると、魔族たちの代表がそれを否定し俺達の前から姿を消す。そして俺はこのことについてルッポたちに詳しく聞こうと決めたのである。それからしばらくしてルッカたちは、あの村が何者かによって占拠されていたことを知りその場所へ向かう。その道中で、ルッカが俺を頼らず一人で戦うことを決意する。その結果は何とか勝利を収めることは出来たのだが俺はそこで大きなショックを受けてしまう。

その理由というのはその村での戦いが終わり、村に戻ろうとしたときにその村の異変を感じ取ったのである。それはあまりにも多くの人間の死を感じたからだ。それもただの人間がこれほどの数の人間を殺すことは不可能だと考えていると俺が感じ取っているとルッズがその気配の主がいる場所へ連れていってほしいと頼み込んでくる。そして、俺はルッズの案内の元その場所へと向かうとそこにはとんでもない怪物が存在していたのである。

その見た目はまさに悪魔といったところだ。俺もこんな化物とは初めて戦ったがすぐにこいつはやばいと感じ取っていたので俺はその化け物に攻撃を仕掛ける前にまずルッズ達を避難させた。そして、俺はその怪物と戦うことに決め、その剣を取り出す。それから数分が経過しても一向にその怪物は倒せる気がせずむしろ押されているようにさえ見えた。だが俺も簡単には死ぬ気はなくどうにかしてでもこいつを倒さなければならないと決意を固めると、剣に力を集めるイメージを浮かべた。それから少しすると俺の持つその剣に変化が起きた。それは俺が持つその剣から雷が発生したのである。俺はそれで一気に形勢を逆転させその化け物の肉体を斬り裂きその生命を終わらせていたのだった。だがそこで安心しきった俺の体に衝撃が加わる。そして俺の体は徐々に動かなくなって行き俺は地面に倒れるのであった。そして俺が完全に息を引き取ると目の前の景は闇に消えていきそしてまた俺の視界は元の世界に戻っていたのである。

そして俺は目を覚ますと自分の体をチェックするが特に問題はなかった。俺はとりあえず一安心するとベッドの上で寝転んでいるミレナの様子を見るために移動すると、そこにはすでに起きていたようで、こちらに微笑んでいた。

それから俺が目を覚ましたので嬉しそうに俺に抱き着いて来て、俺はその行動に対して困りつつもなんとか引き離す。それから俺は改めて自分がどんな場所に来てしまったのかを理解しようとし、そこで自分が今どういう状況なのかを把握していく。ここはどうやらどこかの貴族の部屋らしく部屋の中は綺麗な装飾が施されておりいかにも高そうな調度品が置かれていたのである。さらにそこで俺は自分の腕の中に何か違和感があることに気づいて視線を移すとそこにはミレアが俺の腕を抱きかかえながら眠っておりそのせいで俺は自由に身動きを取れない状況に陥ってしまう。だがそんなことを気にしない様子で、俺の隣でまだ幼い少女が気持ちよさげに寝ていたのでそっちの方へと視線を向ける。そして俺はその子がとても可愛い顔をしていることに気づいたのである。その少女は金髪に青色の瞳をしている可愛らしい容姿をした女の子だった。

その子が一体誰の子供なのかを俺は理解できずに困惑していると突然扉が開く。そこから現れたのは一人の少女と男性であった。その男は、黒い髪をしていて、鋭い眼つきをしていてその身に着けている衣装は上質なものであることが一目瞭然だったのでかなりの金持ちであることは想像できるだろう。その男の正体は、この国で最も権力のある貴族でありこの国の宰相を務める人物であるアルヴィン=フォンティーヌ伯爵その人であった。彼は俺に近づいてきて俺に礼を言った。

「この度は私の娘の命を助けてくれたこと心より感謝する。本来ならばお礼の一言くらいは言わなければならないのだが、君にはこの国を救ってもらうための交渉の材料となってもらうので、この場で言うのはまずかったのだよ」

「この国を救うですって?」

「ああ、そうだよ。君は、私がどうしてここにいると思うかね?私は今年で三十になるがこの国で一番の実力を誇る魔法使いなのだ。だからこの国のために魔王討伐の旅をしなければならないと、そう考えたのだがそこで私にはどうしてもこの国でやらなければならないことがあるんだ。そのために必要な物が魔王が作り出した宝箱の中にあると噂されていてね。それに、その魔王が持っている宝は今まで誰も見たことがなく、魔王を倒すためにはその宝が必要になってくると予想して、この国に戻ってきたというわけだ。その魔王を倒すためにこの国にいる冒険者たちを雇いたいと思っていたのだがそこに君がやって来て私の娘の命を救い娘に傷をつけた犯人を見つけてくだされば報酬として多額のお金を支払うと言われたので、その依頼を受けた。その時に君のことも知ったのだがその依頼を達成することができれば魔王を倒してくれるという約束を取り付けることができたのだ」

この人は本当にそんなことを言うのだろうかと疑うような顔をしながら俺のことを見つめてくるが俺としても魔王なんてものに興味があったのでその話を引き受けてみることに。そしてその条件としてその娘を俺が守るということを提示すると彼はそれを受け入れたので俺はこれから彼女の護衛をすることに決まった。そこで彼が部屋を出る時に俺に向かって娘に手を出さないよう注意をしてきたのだ。

俺はそれに対して苦笑いを浮かべるとその場を去ることにした。それからしばらくした後で俺達はこの城を出ていくことにする。その際にドラコを呼び出すと、この国の王様に事情を説明してからこの城を去っていく。

そしてそれから俺達は旅を再開したが道中で魔物に襲われることになる。そこでルッカはいきなり魔法を使ってしまい魔物たちを消し炭に変えてしまう。それを見ていた俺達はルッカの規格外の力に驚いていたがそこで俺達はラピスに出会うことになる。そしてラピスと俺達は共に旅を始めることになったのだ。

この世界にある三つの大国のことは知っていたので俺はどの国から向かうべきなのかを悩んだ末にまず最初に訪れることになったのが魔族の里であったのだ。魔族の里へは転移で行くことができるというのを知った俺はラピスと一緒にその魔族の里まで行くことを決意して魔族の里に向かうのであった。そこで俺がラピスのことを守れるような人間になれればいいと思いながら。

それからしばらくした後にようやくその里を見つけることに成功して俺は、早速中に入ろうとしたのだがその里の前に一人の女性が立って俺達のことを待ち構えているのが見えたのである。その女性は、赤い髪の毛に紫色の瞳をしておりその瞳の色は、俺と同じ色だったのだ。そんな彼女は、俺のことを見るとなぜか悲しそうな表情でこちらに歩み寄ってきた。そして俺の前までやってくるとその女性は俺のことをじっと見つてくる。その女性からは、なぜか懐かしい匂いが漂っていたのだった。

その女性はルッパという名前らしくなぜか俺の名前を聞いてから涙を流し始める。そしてその涙の意味も分からないままにルッパは俺の手を握ってから走り出した。俺はその後を追おうとしたのであるが、後ろから呼び止める声が聞こえてきたので俺は振り返る。するとそこにはルッソたちが立っていて俺に何かを伝えようと思っている様子だったが、その前に俺は魔族の里の中に入って行ってしまった。そして俺が入った先に広がっていた景色に思わず感動を覚える。この世界ではありえないほどの光景が広がっていたので俺も驚きが隠せなかった。その里では俺がこの世界で見た中で、最も美しい景観をしていたのである。

それから俺達がたどり着いた場所は、王城と呼ばれている場所だ。そこはこの国で最も美しく大きな建物であると言われているので一度見ておきたいと前々から思っていた場所でもある。なのでちょうど良かった。俺はその城の門のところに行ってみるとそこの兵士の人に、この里の代表に取り次いでもらいたいと言った。その言葉に対して門番の人が困った様子を見せていたので俺は自分が何者であるのかを教える。そのおかげでどうにかその兵士の人は納得した様子を見せて城内に案内してくれたのである。そしてその先に広がる光景を見てさらに俺は驚愕させられるのであった。なんとそこでは大量の料理が並べられていて宴会のようなものが行われていたのである。それを見た俺は少し戸惑ってしまうがすぐに俺は気を取り直してから食事を始めた。そのどれもが高級品だということはすぐに分かったのである。それから俺は食事を満喫したのであった。

そしてそれから数時間後に俺は案内されて、代表の部屋へと向かう。そして、その部屋の扉を開けるとそこには俺が知っている人物がそこには座っていたのである。その姿を見た瞬間俺は思わず立ち上がってしまった。それは、その部屋の椅子に座っていたのがルッカだったからだ。俺はどうしてルッポとドラ以外の仲間であるみんながこんなところにいるのかが分からずにいたのである。そして、そんな俺の反応が面白かったのか、俺の顔を見つめていた。そして、俺の目の前の席について話しかけて来た。そしてその会話で、俺達と別れた後の出来事を教えてくれたのである。そして俺が気になっていることが聞けたので、俺はルッパから詳しく話を聞いた。そして、俺達との約束を守ることができなくなってしまったと聞いて、俺は残念に思うがそれ以上に嬉しかったというか嬉しさが勝っている気がした。それはなぜかというと答えはこの国で魔王を倒せるかもしれないという話を聞いていたのである。だからこそ、そんな凄そうな人物に仲間だと言ってもらえるのが嬉しいのである。それにこの里の長を務めているということもあるしな。

それで話は一旦そこで終わりになった。俺はこの部屋に用意された寝具の上に移動してから就寝する。

俺は目が覚めると自分が寝ていたベッドの上で目を覚ます。そして体を起こして周りの様子を伺うがどうやら他の人たちはまだ寝ていたようだ。その証拠にこの部屋には、まだ起きていない仲間たちがいる。そんな彼らの様子を見ながら俺自身も身支度をするために動き始める。そしてその途中でルッボの姿がないことに気が付いて、どこに行ったのかを考えると昨日この屋敷にやってきた理由を思い出して、俺の武器を作ってくれていることを思いだし俺は一人で工房へと足を運ぶ。

そこで俺はルッボンの姿を探そうとすると、そこには一人の老人が立っていた。俺はそれがルッツだと言うことを理解すると俺はルッポンに声をかける。その言葉にルッチは、俺の声に反応して、俺の方を振り向くと嬉しそうな顔で笑みを見せてくれる。俺は彼に、武器の具合を聞きたかったが、彼の作業の邪魔になると思ったので、今日の用事が終わった後でも構わないか確認を取ってみた。その質問に、彼は笑顔を浮かべて、問題ないと言明してくれて、今日中には仕上げて見せましょうとまで言ってくれた。その言葉が信じられなくて、本当に大丈夫なのかと思ってしまうが、本人がそう言っているのだから信じることに。そのあと、俺は彼に礼を告げてからその場を去っていき、再び自分の部屋に戻る。その途中で出会ったラピスと挨拶を交わして、彼女とともに、俺は自分専用の個室に戻ると、そこで装備の確認を行う。その結果、この国の王様が用意してくれたこの国の国宝の一つである白竜の衣を身に着けることにした。

そして身支度をある程度済ませた頃に俺の仲間全員が、それぞれ思いおもいに好きなことをして過ごしていたので、これから俺達は魔族たちに会いに行くために外に出ることになった。その際に俺が先頭に立って歩き始めるとルッカたちも俺の後に続くように歩いてくる。その行動には少し違和感を覚えてしまう。なぜなら、俺達と一緒に旅をしたメンバーは、全員俺の側にいて、離れることなどしないのに今回はそうではなかったのだ。しかもその理由を俺は理解することができなかったのである。

俺は疑問を抱きながらも里の入り口の前まで移動すると俺は、俺の後ろにいたはずのドラとルッカとリッカが、何故か俺の側を離れてルッカは俺の前に出てくる。それを見ていたラピスが心配そうな顔つきでこちらを見ていたが、とりあえずは気にしないことにしておいた。俺はそれから魔族の里の中に入ることにする。

その里に入った時の感想を俺は正直に言うなら、美しいという言葉しか浮かんでこなかった。まるで絵画の中に入っていったような錯覚さえ感じさせてくれるほどの景色に俺は感動してしまった。

俺達は、そんな里の中を一通り回ってみるとそこにあった家はすべて和風の建築をされていて俺にとっては、とても馴染みのある作りになっていたので少し安心することができた。そんなことを考えながらしばらく歩いていると見慣れない建造物を見つけてその方に向かって俺は歩いていくと俺の予想通りそこには鍛冶をする場が存在した。俺はその建物の中から出てきた一人の男性の存在に目を奪われてしまった。何故ならば、その男性があまりにも美しすぎる姿をしていたからである。

そしてその男性は俺達の存在を確認すると俺達に向けて微笑みを浮かべるのであった。俺はそこで彼がルックスのいい顔立ちをしていることにも驚きを感じてしまうが、それよりも驚いたことがある。彼はこの世界に存在する種族とは、全く別の容姿をしていたのである。俺はその姿を見て思わず言葉を無くしてしまうほど衝撃を受けていた。だが俺以外にも俺の隣にいたルッカが驚きで声を出してしまっていた。

そしてラピスも驚いているのか俺に説明を求めるような顔をしているのが分かるくらい俺達は戸惑ってはいたが、俺はその人のことを知っているような気がしたのである。

それから俺は、俺の前に立っている男性に、どうしてここに来ているのかを説明してもらったのである。そしてその話を聞いたことで、俺は納得ができた。まずその男性の見た目が日本人とまったく変わらないということからおそらくこの人が転生者だということが分かる。なので俺はこの人の名前を知る必要があると思ったのでそのことについて問いかけたのだ。そうしたところ、その答えとして返ってきた言葉は俺の求めていた回答であり、さらにはその人は前世の世界で生きていた頃の名前は、神木勇というらしくて、職業が勇者であったらしいのだ。俺の想像した通りの人物であったことに納得すると俺達はその人と話をすることにして俺達は建物の中に入るとそこで話を始めたのであった。

俺の目の前に立っている人物の名は、前世の名前が勇で、今の名前というのがこの世界の神様から授かったものらしくて名前は、ライゼンという名なのだという。ちなみに俺はその名前を聞いた時もやはり、聞いたことがある気がしたのだった。

そしてライゼンに俺達のことを紹介してもらうと俺はルッチの紹介をして、その後、俺とルッカ以外の仲間を紹介することにした。そして最後に俺達の仲間のドラとラピスとリッカを紹介していくとライゼスからこの国での生活のことなどについて色々と教えてもらうことになった。この国では俺が暮らしていた国と違って治安がとても良いため過ごしやすいということを俺は実感しながら、その話が一段落つくまで聞き続けていたのである。そして、話の区切りがついたタイミングで俺はこの里に訪れている魔族に会いたいと思っていた。そしてその意思を伝えるとどうやらすぐにでも会うことはできるとライゼルが言ってくれてその準備を始めてくれる。そして、俺はこの里の長に挨拶をしようと思ってライゼンに許可を取りに向かうことにするのだが、その間暇だったので里の中を見て回ろうかと思い立ってその場所へと向かう事にした。

俺は少し里の中の建物を観察しながら歩いていた。そこは里の外観と同じ造りになっているが、それ以外の部分は違うという印象を受ける。そして、建物の内部を見ると木造住宅ばかりではなくてコンクリートでできた建物が視界に入り込んだ時に俺はこの場所になぜ和風建築が存在しているのかについて考えてみるが、全く意味が分からずに終わった。しかしそれ以上に気になったのは俺が見てきた中でここが一番大きな街のようなつくりをしているということに気が付く。そして、俺が興味深そうに建物を眺めながら移動を続けているとその建物の中の様子が伺えたので俺はその光景を見て思わず立ち止まってしまう。その視線の先に広がっている建物は、映画館だったのである。そのせいか俺はとても興奮をしてしまい思わず映画を上映する場所に行きたいと心の底から思っていた。

そして、俺はそこで一つの考えが浮かぶ。俺が知っている限りではあの世界に存在していた日本に存在した物は全てこの世界でも同じように存在しているはずなのにどうして俺は今まで気付かなかったんだ?そう思うと自分が馬鹿に思えてくるが俺は気になったものは何でも試す主義で、それが結果的にこの世界を冒険することになると俺は確信して行動を始める。

俺の予想が間違っていなければ、この里の中で一番の権力を持っている存在に会うことが出来れば何かが見つかると思うのである。そこで、俺が向かう場所は里の中心に位置している場所に存在している大きな屋敷に俺は足を運ぶことに決めた。その屋敷の門の前には屈強そうな男たちが門番として待機していて、簡単には中に入れてくれそうもない雰囲気を醸し出している。そんな状況を目にした俺は困ってしまったがそこで運が味方してくれたようでその門を開けてくれた。

俺はお礼を告げて屋敷の中に入っていくとそこには先程の門の前で立っていた者達とは違って綺麗な着物に身を包んでいる人たちが存在していた。その服装を見てみるとこの国の文化は本当に和風のようだと感じながら俺は彼らの案内の元ある人物のもとへ向かっていた。それはライゼンに紹介された人物でありこの里で一番の実力者であるという人物だ。俺はそろそろ目的地に到着するだろうと思って、これから会おうとしている人物にどのようなことを聞けばいいかを考える。この国のことについてだろうかそれとも他の国のことについてかもしくは俺自身のことなのかを考えていると、俺の思考を遮るように一人の女性が姿を現す。

俺はその女性の顔を見てみるとかなり若々しく、とても美人さんでとても可愛らしい人だという感想を抱かせられるがそれと同時にその女性の耳の形を見て人間ではないことに気が付いた。俺はそこで彼女がハーフエルフであることを理解すると俺は彼女に声をかけてみた。そして彼女の名前はリリスという名前だと言うことが判明したので早速、俺は彼女の力を借りようと声をかけてみようとした瞬間に、俺の目の前に現れているリリシスに、俺の体が勝手に動き出して俺の意思とは無関係に俺に攻撃を仕掛けてきたのだ。

そして俺が反応できない速度で放たれていた拳が腹部に突き刺さる。俺はそのまま勢いよく後方に吹き飛ばされて地面に叩きつけられてしまう。俺は痛みに耐えながらも何とか立ち上がり状況を把握するために周囲に意識を集中させて現状を把握しようとする。しかしそうしている最中に今度は上空から気配を感じた俺は頭上に意識を向けてみるとそこにはすでに俺に接近して俺に蹴りをかまそうとしている少女の姿があった。その一撃をまともに食らえば致命傷になると考えて回避するために動こうとするがその行動を邪魔するように俺に向かって矢が迫ってきていたので慌てて俺は体を捻ることでその攻撃を避けることに成功する。それから俺は態勢を立て直してからその場から離れると、そこにはすでに二人だけではなくてライネルが俺に向かって剣を振り下ろしていた。俺はライネスの攻撃を紙一重で避けた後、すぐにライネルの攻撃を自分の持っている刀の刃で受け流す。だがその直後、ライナが俺に向かって魔法を放ってきたのである。

そこで俺も流石にこの攻撃は不味いと思い全力の魔力を込めて防御魔法の結界を作り上げることにした。だがその防御壁はいとも簡単に破壊されてしまう。そして次の瞬きの間にライニスが放った雷が俺の全身に襲い掛かる。それを耐え切った俺は、三人が距離を取った隙を狙って転移のスキルを使いこの場所から脱出しようとしたのである。しかしその行為を阻止するようにライゼルが現れると俺に武器を振るってくる。俺は、どうにか防ごうとするのだが、そんな俺をあざ笑うかのように俺は一瞬にして俺の攻撃範囲から逃れられてしまう。

それからしばらくの攻防が続き、次第にこちらの不利を悟った俺は、このままでは勝てないと判断をして逃げることを考え始めた。だが俺の考えを読んだのか目の前にいたリリスが魔法を発動させると、俺の周りに見えない球体が発生してしまい俺はその球体に閉じ込められて身動きが取れなくなってしまう。そしてそこに追撃を加えられると、その球体から強力な電撃を浴びるのだった。そして俺に限界が訪れてしまうと俺の体は崩れ落ちる。俺は倒れながらその状態を確認してもう駄目だと思い意識を手放そうとした。

だが、ここで俺が意識を失ってしまっても、恐らくすぐに回復させてしまうだろうと予想できた。そこで俺は必死に考え始める。俺は一体どうしたらここから逃げ出せるのかを考え始めていたのである。しかしそうこうしている間に俺の体はライネスによって持ち上げられてしまっていた。そして俺はこの窮地から脱する策を考えていた時にライゼンが現れてしまった。その表情はどこか焦っているように見える。

そしてその顔を見る限りだと俺はこの里に来てはいけなかったのではないかと思えるくらいの事態になっているような気がしたのだ。俺がそのようなことを感じているとライゼンからこの場から俺が脱出する方法を聞かされた。俺は、それに驚いてしまうと、どうしてライゼル達はこのようなことをしてしまっているのかを聞く。ライゼンはその理由を説明する前にライゼル達を止めると言ってくれたので俺は安心感を覚える。ライゼンなら必ずこの状況を変えてくれるはずだと思ったのだ。だから俺はすぐに行動に移る。ライゼンはすぐにこの場を離れるように言って来たので俺はすぐにその言葉に従い行動を開始する。それからライゼンはこの場で起こっている出来事を俺に説明するために移動してくれるらしいので、俺はその移動中にライナスやライゼンについて説明を受けようとしていた。

「私は神木勇という名前でしたね。あなたのこともこの里の人達も皆、私の前世の世界での知人です。」

俺はこの言葉を聞いたときに俺の中で違和感が生まれていたことを改めて思い出すことになる。確かに俺もこの世界に来る前まではその人のことを知っていて、名前だけじゃなくて容姿なども覚えていて、その人の性格までしっかりと覚えていた。だけど今の俺にはこの世界での記憶が確かにあるから分かる。俺は、その人を知らないと。その人とこの里の人たちの関係がどういうものかも分からないからこそ俺は不安に思えて仕方がないのである。

そこで俺の脳内に、何か記憶の断片のようなものが見えてきて俺は、何かを思い出そうとしていたが、その記憶を俺は思い出すことができなかった。俺はそこで、どうしてこの人がライゼル達に狙われているのだろうかと考えた時に、俺がこの里に訪れる前から問題になっていたことを思い出したのである。それは魔王軍に所属している魔族達が里の近くに出現したことだった。その件で俺はライゼンの知り合いだという人と会ったことがあった。その時、この里の人たちが魔族に対して恐怖を抱いているということを聞いているので、おそらくライゼル達の敵というのは魔族であり、その魔族を匿っていたという理由で襲われているという可能性が考えられた。だからこそ俺は魔族に敵対感情を持ってしまっている可能性があるかもしれないということだ。その可能性を考えてみて、やはり俺も警戒しなければならないのかと思っている。ただ今はその話は後回しにしておくべきだと思って俺は話を続けさせることにした。すると、その話の続きとしてライゼスがこの国に来た時のことが説明されると、そこでライゼンは少し困った顔をしてからこの里で起こった出来事を説明してくれていた。それは俺が知っている内容とほぼ同じであった。しかし一つ違うことがあるとしたら、それは里長の娘は殺されたという話だ。その殺した犯人は誰なのかは俺はまだ聞いていないが、その話を聞いたとき俺はライゼスは大丈夫なのだろうかと心配になってしまった。そこでライゼスをこの里で探してみるが見当たらないことに俺は不思議に思いながらも俺をこの屋敷に連れて来てくれた女性であるリリスにライゼル達を止めてもらうために協力するのだった。

そして俺は、その協力をお願いする前にまずライナと戦わされることになってしまい、しかもライナは本気で俺を殺そうとしているようで、先程の戦いよりかはかなり本気を出して攻撃をしてきた。その戦いは今まで経験したことの無いようなもので、正直言ってかなり辛いものがあった。しかし俺がこうしていられるのはライゼルにこの場から離れるように言われたからだと思うと本当に助かった気持ちになる。

そして、俺が気絶している間に起きたことについての話が終わると、俺はこれからのことについて相談しようと考えていた。というのも俺はこれからこの里で世話になることになったからである。ライリナさんもリリスもその提案を快く受け入れてくれたのは良かった。俺がこの世界に存在している目的は、あくまでも自分の目的を達成するためだけのものでしかなくて別にこの里に住む人々を救済しようなどという考えは最初からない。むしろ助けられるところは自分で解決できるのであれば俺は積極的に他人に助けを求めることは無いと思う。しかし俺がこの世界にいる以上、俺の力を必要とする人は間違いなく存在すると思うので俺がその人たちを助けるかどうかは別だがこの国の人たちに迷惑を掛けないように努力するつもりだ。

それと、もう一つ、ライナスやライナについてもこれからどうするかを俺なりに考えるつもりだ。彼らはきっとこの国に不利益をもたらす人物なんじゃないかと、そう考えている。だが、今はそんなことを言っている場合ではないと俺も考えているので俺はこれからどうしていくかをちゃんと考えて行こうと考えている。そのことは俺一人の問題じゃないということは分かっていたから、他の仲間たちとも意見を交換したうえで決めていこうとは考えている。

ライゼンに案内されるままに里の中心に進んでいくとそこには大きな館が建てられている場所に辿り着くことができた。そしてそこに入ると俺はある人物が待ち構えていることに気が付いた。俺は、目の前の人物を見ると驚きのあまり目を見開いて固まってしまう。なぜって、そこにいたのが俺にとって最も会いたくない人物であったからだ。その人物は俺に向かって声をかけてきた。俺はその声を聞いて全身から冷や汗が流れ落ちてきた感覚に襲われている。その相手が俺を見て、笑顔を見せてきてくれると余計に嫌な気分になってしまう。その男の名は、俺の嫌いな相手であり宿敵でもある存在だった。

俺はその名前を口に出して確認をする。すると彼は、嬉しそうな笑みを浮かべてから、ゆっくりと近づいてくると、まるで俺のことを舐めまわすように上から下に向かって視線を向けてくる。俺はそれを見て不快感を感じていた。俺をこんなにも不愉快にさせている原因の張本人を、俺は睨みつける。しかし、そいつはそれを気にすることもなく俺に話しかけてくるのだった。

俺がライネスとライナスに攻撃を受けていると、目の前に突然姿を現した少女によってその攻撃が阻まれる。俺は、目の前に現れた少女の外見からハーフエルフであることを確認する。そして、彼女の顔に俺は見覚えがあった。それは、あのルクスがこの世界に来てすぐに出会ったという俺の前世の世界での知人の一人であるライナとライラスの母親であるというライゼンの妻である。名前はリシスと言って、ライネルの父親でもあり、そしてライネルの姉でもあった。

その二人が目の前に現れるとライニスは、俺の事を自分の仲間が攻撃しているにも関わらずすぐに動き出すのをやめるとすぐに俺を守るように二人の元に立ちはだかる。それから俺達はしばらく膠着状態に陥っていた。その状態が続いていた中で、ライナスが痺れを切らすように口を開いてライネルに俺を攻撃しろと命じていた。

その言葉を聞いたライネルはすぐに反応を示すと雷を纏わせた拳で俺のことを攻撃してこようとしたので俺は即座に刀を振るうことでその雷を弾き飛ばした。

その一撃を見た後にライニスがライナに向かってライネルを止めるように言っていた。その言葉を聞いた瞬間、ライナは俺の方をちらっと見た。俺は、そのライナスの反応を見てライネルの行動に気が付き、咄嵯の判断で俺を庇おうと動き出していることを察知した俺は、俺の後ろにいるルクスに声をかけてすぐにその場から離れようとする。だがそれを阻むかのように目の前から雷の柱が立ち上ぼり、それが俺達を襲う。その雷撃に対して俺は防御壁を張り、その魔法を耐え凌いだ。そして俺は、ルクスをライニスに任せて一人ライニスの方へと向かう。

ライナスの元に辿り着いた俺の視界には信じられない光景が映し出されていた。俺はすぐに目の前にいるはずのライナスの安否を確かめるために周りを見るが、その姿はなかった。俺はそこでようやくライニスによって転移させられたのだと悟り、目の前の状況を把握しようとしていたが、そんな余裕はなさそうだと感じた俺はすぐに魔法を使ってこの場所から抜け出そうとしたのだが、それよりも早く俺は何かに縛られてしまい身動きが取れなくなってしまう。

そこで俺は拘束してくる力に抵抗しようと必死に足掻いている最中に何者かが近づいてきて話しかけて来たのだ。その者の顔を視認した俺は、一瞬何が起きているのか分からず困惑してしまう。そして、その者に話し掛けられた時に、ようやく俺を縛りつけているものが、この里を治める者であると聞かされていたリシスであることを認識できたのだ。それから、この里では、ライゼンをトップとする集団とライナスを筆頭とした集団に分かれているということを知ることができて少しだけ安堵感を得ていた。その理由はというと、俺は、俺を拘束しようとしているライナスはライナスの言う通りに動いているだけであり操られているのだろうと思った。つまりは俺の仲間達と同じくこの里の住民もまた洗脳状態にあるのではないかと思ったわけだ。

だから俺は、ライナスがどうしてこのようなことをしてまで俺を消そうとしているのかを聞くことにした。俺にはどうしてもその目的を知りたかった。ライナスの話を鵜呑みにするならば、俺はこの里にとっては危険な存在だということになる。だが、俺はその考えに違和感を覚えた。そのことについては俺はこの里を危険にさらすような真似をした覚えはないからだ。俺の目的はあくまでも自分の目標を達成するための手段であってこの里がどうこうしようという気持ちは一切なかったからである。

ただそこで俺は疑問に感じていた。俺をこの里の住人が襲ってくることに対して、俺はそこまで不思議に思ってはいなかったが、俺と一緒に里に来ていたルクスが襲われなかったことについては不思議で仕方がなかった。そして俺がこの場を離れようとして逃げようとしていることを察すると、目の前の男は俺を逃さないように、先程よりも強力な鎖を作り出し、俺の身体を雁字絡めにして完全に拘束してしまった。その時に俺の顔が相手の瞳に写った時に俺はその人物が、自分にとって非常に因縁のある相手だということに気づく。それは、かつて俺がこの世界で初めて遭遇した敵であり、その後何度も戦ってきた相手でもある魔王軍の参謀を務める人物であるということを俺は知った。

「久しぶりだね~?僕のことは覚えているかな?」

魔王軍の参謀を務めている魔王軍幹部の男、その名はアルフォードと名乗っているが本当の名前ではないらしい。ただ俺は、この世界に来た直後に一度出会っているのでその男がどんな奴かというのを覚えていたのである。

だが、この世界のライナスやライナの親だということを考えると、もしかすると俺が思っているより厄介な相手かもしれないと気づいて冷や汗を流すのだった。俺を縛ろうとしている男の実力はこの世界にやって来て初めて戦う時と比べて段違いの強さを感じさせていたからだ。俺は目の前の相手にどうやって対処しようかと考えを巡らせていく。

「お前は、本当に俺の知っている人物なのか」

俺は、目の前の人物が、本当に目の前の人物かどうかを問いただしてみた。しかし、俺の言葉に対してこの場にいた者達は俺のことを見下ろしながら笑みを浮かべていたのである。その笑い声を耳にしていた俺は心の中で、その反応だけで十分に俺が知っている相手だと確信が持てていた。なぜならこの里に訪れるまでは、こんなに多くの人達が俺のことを警戒していなかったからだ。それに今のこの状況は、明らかに普通の状況ではないことがはっきりと分かった。おそらく今俺を取り囲んでいる人々は俺のことを知らない。それに加えてあのアルフォンスとかいう男に関しては、俺のことを知っているはずなのだがこの里の連中のように警戒する素振りを一切見せていない。

だがそれでも目の前の人物は間違いなく俺の知り合いであることは理解ができた。なぜなら俺が、以前この世界に転生してきたばかりの頃に初めて戦った相手でもあったからである。

だが俺は、この世界でこの里以外の場所に行ったことがないので、この里がどの位置に位置しているのかがわからなかった。しかし俺はそんなことを考えている暇もなく目の前に存在している敵に集中しなければならなと意識を集中させたのだった。

「君は相変わらず冷静だよね。そんな風にいつでもどこでもいつも通りの表情をしている君が、僕は好きだったよ。だからこそ君が欲しいと思っていた。だって、僕と同じ世界から来たんだからさ。この世界で生きてきて長い時間を過ごしていたはずだけど、どうだったのかな?」

俺のその言葉に、目の前の魔王軍の幹部であるはずの男の目つきが鋭くなったのが見て取れる。そして俺はその言葉を聞いて、やはりこいつも同じ世界の人間なのだろうと改めて思い知らされたのであった。俺達が元々住んでいた地球と呼ばれる星がある宇宙に存在する世界の一つから、別の世界を侵略するためにやってきた異世界人の存在である。

この世界にも地球に酷似した世界が存在しているのかどうかはわからないが、俺がこの世界に来てからはそのような話は聞いたことがなかった。俺は、そのことを不思議に思っていた。

「その言葉には、答えなければならない義務はあるのか?」

「あるよ。君は僕のお気に入りなんだから。だからちゃんと答えてくれなきゃ困るな。この世界がどうかっていう質問に答える必要もないんだよ。そんなことは君自身がよくわかってることじゃないか。この里の人を見てもらえばわかる通り、この里の人たちはみんなこの世界で生まれた人々とは違う。だけどこの里の人たちと僕らの世界の人々は似ていると感じる部分もあるんじゃないのかな?そう考えるとその事実に気がついているんじゃないかって思うんだけど。違うかな?」

確かにこの世界は地球の環境と似ている部分が多すぎるように感じた。俺がこの世界に来て最初に見た街の景色は、俺の知る限り東京と呼ばれていた場所に似ていたのだ。俺がそのことに気がつくことができた理由は単純だった。俺はルクスと共にこの世界にやってきたのだから、その記憶はしっかりと残っているのだ。だからこの世界の風景を見て俺はどこか懐かしい感覚になっていたのである。そしてその風景が地球にあるものと瓜二つであることにも気がついたのである。そしてそのことから俺が、自分の元いた世界の人間がこちらの世界に飛ばされてくるということは普通にあり得ることだとわかった。

その言葉を聞いた瞬間に俺は、こいつが俺の元いた世界が地球だと確信していることがわかったので少しだけこの男のことを見直した。この男もまたこの世界で生きてきてきた時間が長いということがわかるからである。

俺達のいる里に、俺の他にもこの世界に送り込まれてきている存在がいた。だがこの男はそのことについては一切語らなかったのだ。

そのことを考えると、この男は少なくともこの世界が俺の暮らしていた世界と同じようなところであるということを把握していることを察することができたのである。

そのように俺は目の前の魔王軍の幹部らしき男の言葉に対して少しだけ警戒心を緩めていた。その理由は俺の勘では目の前の相手がそれほど強くないような気がしたからである。

そして目の前にいる相手から敵意を感じられなかった。それは、その人物が俺がこの里に訪れた時にライナスとライナの母親であり、ライナの妹だという女性が目の前の男に対して抱いている感情からなんとなく想像できてしまっていたのである。この男が俺の敵にならないことは確実だったが、もしも敵対してくる可能性があるとしたら俺よりも先にルクスの方を狙ってきただろうと思ったからだ。

だが目の前の魔王軍の参謀を名乗る存在が口にしていた言葉を頭の中で思い出してみると、もしかするとこの里には何かの秘密が隠されているのではないかと考えを改める。この里がどこにあるのか、この里に住んでいる人々が何者なのかは、現時点では全く不明だ。

だが俺の推測だが、その答えを知るためには相当な時間がかかるだろうと思っている。なぜなら俺はその情報を目の前の相手からも聞き出していないし、この里の人々に直接聞いても答えてくれない可能性が高いと判断したからである。そうなれば俺はこの里を自力で探してその情報を手に入れる必要があった。ただその可能性を考えて、俺は目の前の存在を警戒しながらも会話を続けることにした。その行動は無駄になるような結果にはならないと信じてのことだった。その方が後々楽になりそうと思ったからでもある。

(だがまずは相手の力を確かめるべきだ)

「それは、俺にとっては関係ないことだ」

俺は目の前の男の言葉にそう返答する。

その言葉は真実だった。なぜなら俺は目の前の相手とは面識はない。つまりこの世界のこの里の住民がこの世界のどこにいるのか俺は知りようがなかったからだ。それ故にそのことに関して話すことはできないと考えたので嘘偽りなく本音を告げたのである。俺のそんな態度にこの里の長であろうアルフォードと名乗った男が、微笑むような笑みを浮かべながら俺に話し掛けて来た。

「やっぱりね。僕の考えている通りの人間で良かった。君はそういうところが気に入ったんだよね。この里には、もうほとんどいないんだよ。君みたいな人間がほとんどで、他の世界から来てくれた人がね」

俺はこの言葉を聞いて目の前の存在がどういう性格をしているのかということが少しずつわかってきた。この里の住民たちはほとんどが自分の生まれた世界に帰りたがっていない。その理由としては里の住人が俺が出会った里の人間達とは違って帰る理由がないからである。そもそもなぜ俺の知っている世界はこの世界に存在しているはずの世界と同じような世界であるにも関わらずこの里の住民は帰りたくないのか、それはまだはっきりとしない。

ただ目の前の男はそんな俺の疑問にすぐに答えようとしてくれたのである。俺はそれに耳を傾けることにした。ただ、その内容は衝撃的なものだった。この里が異世界の人間の世界であり俺の予想が正しければその世界には俺と同じ世界から来た人物がいることがこの話を聞くことによって判明した。そして俺と同じようにこの世界の別の惑星へと転移したと思われる。この男の名前はアルフォードといい、魔王軍の参謀を務めるほどの人物である。そのアルフォードは俺に対して魔王軍について話を聞かせてくれる。

その世界がこの地球と似た世界に存在している理由は簡単だった。アルフォードは、その地球出身の女性と結婚してできた子供なのだと言う。そして俺のこともその妻だった女性が妊娠していた際に俺のことを召喚してこの世界に呼び寄せたそうだ。俺はその説明を聞いて、俺とアルフォードの関係が何となくだがわかった気がしていた。

「君は僕の本当の姿を知っているかい?」

「お前の本来の姿で間違いないのなら、もちろん覚えているさ。お前の本当の姿というのはあの時の巨大なドラゴンの姿のことだよな?」

俺は、この世界に初めて来た時に初めて出会ったドラゴンを思い出す。その時のことは今でも鮮明に覚えているほど強烈な印象があった出来事である。だからこそ目の前の相手に俺はあの時遭遇したことを話すと目の前の存在は、その当時の光景を思い出していたかのように嬉しそうに微笑みを浮かべていた。そしてその笑みを見た時、俺は目の前の相手に対して興味を持ち始めていたのだ。なぜなら俺の質問をされてもなお余裕がある表情を浮かべていることから、それだけ自分の実力に自信を持っている証拠だと思えたからである。そのように考えると目の前の人物は魔王軍の四天王として相応しいだけの力は持っているのだと理解できるのだ。

「そうだよ。君は僕がどんな種族に生まれたと思う?」

「それこそお前にしかわからないことじゃないのか?」

俺はアルフォードの言葉にそんなことを問いかける。俺の言葉に目の前の人物は俺の言葉の意味を正しく理解していたようで納得したような仕草を見せる。

「それも当然だよね。じゃあ僕の種族のことを話そうか?僕は君の世界の生物と見た目は同じかもしれないけど違うところもあるんだ。僕の体の中には、魔核と呼ばれる特殊な器官が存在しているんだ。僕の中にある魔核は通常の物とは違いかなり大きな力を宿しているらしいよ。だから僕はこの里で暮らしていても全然困ったことはないんだ。だけど僕と僕の妻の間に出来た子供はその体質のせいでこの世界での生活は難しかった。だけど僕たち夫婦に協力してもらって、僕たちの世界で生活をしていくことができるようになったんだよ。だから僕達はその子を育てるためだけに、この世界にやってきたんだ。この里の人々はみんな、その子の家族なんだから」

そのように語る彼の表情には本当に幸せそうな表情が浮かんでいて俺はこの人物から発せられるオーラのようなものからその子供がどれだけ愛されているのかということを実感させられていた。その表情にはこの里に訪れるまでの道中で見た、魔物たちに怯えて生活している人々からは感じられないものを感じた。

そのことに俺は目の前の人物が信頼に値する人物であり、そして俺に敵対するつもりがないということがわかったのだ。そして俺は目の前にいる男の話をもっと聞くために次の言葉を促すことにした。だが、それと同時に先程の話が真実ならばどうして俺と同じような地球の出身ではないこの世界の住人が地球に存在していたということに対して疑問を抱くことになる。俺の考えが当たっているならばその世界に存在する人間という生き物は、俺が元いた世界から召喚される存在であるはずだ。それが俺が今まで生きてきた経験から得られた唯一の情報であった。だが俺は目の前の相手に対してそのことを直接尋ねる勇気は無かったのである。だから、とりあえず俺もこの里の人々に少しだけこの世界についての質問をすることにする。俺はそのように考えたのだ。俺がそんなことを考えていたとき、俺はある違和感を感じる。それはなぜかは分からないが俺は自分の体が軽くなっていく感覚に陥っていた。そのことに俺は不思議に思うがその理由を知ることはできなかった。そしてその瞬間に俺は自分の体に起こっている異変に気がつく。自分の意識はしっかりとしており、視界には何も変わった様子が見られないのだが俺の体の中にあった魔力が減っていったことがわかったのである。

(まさか、こいつの能力なのか?)

俺は自分の身に起きていることの原因を考えるが全く分からなかったのだ。

そして目の前に立っている男は笑みを浮かべながら話しかけてくる。

「お気づきになったかな。今の君ではどうやら力を使いこなすことができないようだね。まぁ君は普通の地球人の肉体では限界を超えてこの世界を生きているからね。僕の能力は相手の魂に直接触れて発動するタイプのものだからね。普通ならこんな風に会話することもできないんだけど、君はかなり面白い存在だったから特別だね」

その言葉を聞いた俺は自分の体内に魔力が完全に失われたというわけではないことに気づいた。そのことから、俺はまだ自分の魔力量には余裕があるということがなんとなくではあるが察することができたのである。

「そういえば自己紹介がまだだったね。一応は名前だけは教えておくべきかな。僕はライナスだ。よろしく頼むよ」

ライナスと名乗る人物は手を伸ばしてきて握手を求めてきたので俺はそれを握り返した。ライナスという名前を名乗る人物がいったい何者であるかを理解することはできないが少なくとも敵対的な存在ではなく、俺のことを仲間のように扱ってくれていることが伝わってきた。俺はこの男が魔王軍の参謀という立場であることはなんとなくだが予想ができるが、なぜ参謀と呼ばれているのかがわかっていなかった。俺はそのことに関しても聞いてみることにする。するとライナはあっさりと答えてくれた。その事実は、俺が考えていた以上の衝撃的なものだったのである。この世界は元々一つでは無くていくつかの世界に分かたれた別々の星だというのだ。そのそれぞれの世界に俺は飛ばされてしまったのだという。その話は俺にとってあまりにも信じられないことだったのですぐには信じることが出来なかった。しかし目の前の存在が俺に向かって嘘を言っているとも思えなかったのだ。そして俺は目の前の存在の言葉を頭の中で整理して考えてみた。その世界の一つは俺の暮らしていた世界だったというのである。

俺がこの里に来てから一週間ほどが経過をしていた。俺がこの里に訪れたときにはすでにかなりの数の人間がいたが今ではさらに多くの住人が集まってきていて、里は人で溢れ返っていたのである。ただ里の中には常に人が多く存在しているわけではなかった。というのも、基本的に俺の住んでいた世界の人達はこの世界の人間よりも身体能力が高かったり魔術を使える人間も多い。そのためこの世界の里の人々だけで生活していくのであれば問題は無いのだそうだ。だがこの世界は魔王によって脅かされているため俺の世界の人々がこの世界を訪れて里の人々と一緒に戦ってくれる人材が欲しいのだ。この里の人々の多くは元々俺と同じ世界の出身でこの世界に来た時に、こちらの人間と同じように姿を変えられて俺と同じようにこの世界へ転移させられたのである。その世界にいた頃の記憶を持つ人間はほとんどおらず俺以外の人間は、この世界に転生して長い時間が経つにつれて次第に前世に関する記憶を忘れていき、そしてその世界での名前も完全に忘れてしまい別の新しい人間としての人生を歩み始めるようになる。

俺はその話を聞いた時、目の前の相手が嘘をつく必要が無いと思い俺はライナスに他の世界から来た人間について質問をした。その結果わかったことがいくつかある。まずこの世界が複数の世界に分かれて存在する理由が判明した。この世界は地球が他の世界に干渉するための実験場として作られたものらしい。俺はこの話を詳しく知りたかったが、目の前の存在が俺に対してこの話を語ることはなかったのである。俺はこれ以上の質問をしても答えが帰ってこないだろうと考えその話をするのは止めてこの世界には異世界人の血を受け継ぐ一族が存在しているのかを確認する。もし仮にそういった人間が存在していた場合はその人間の協力を取り付ける必要があったのだ。

俺はこの世界の成り立ちについてもう少し詳しいことを聞きたいと思った。そして俺は目の前の男に色々と質問をしてみることにした。その中で、俺と同郷の人間がこの世界のどこにいるかという情報を手に入れることが出来た。この世界の全ての世界に勇者がいるわけではなくて、この世界の勇者は召喚された人物で、しかも召喚されてから数年の間だけしかこの世界で生きることができないらしい。これはどういう仕組みでこの世界が存在するようになったのかは不明であり、目の前のライナスにもわからないということであった。

「ところで君は僕の目的に協力してくれるということでいいんだよね?」

「もちろんだ。俺はお前に聞きたいことも山ほどあるんだ。だから協力させて貰うさ」

俺は、ライナスにそう言い放つと彼は嬉しそうに笑みを浮かべている。その顔はまるで子供のような無邪気さを兼ね備えた表情をしている。その様子は、この男の性格を表しているように見えたのである。俺はこの男に協力すると約束をした後、この里をどのようにして守っていくのかということをライナスは説明してくれた。その内容は、この里を結界で包み込むというものであった。その結界は外から内部への進入を防ぐ効果と内部で外に向かうと外へ出ることのできる特殊なものである。俺の見立てによると、おそらくはドラゴンの魔法をも上回る強力な魔法であろうということは予測できた。

「君の目から見て、僕はどんな存在にみえる?」

その言葉を聞いて俺は目の前の相手が自分の力に対してどの程度まで通用する相手なのかを探っているように感じたのである。そして、その問いに対して俺は率直な感想を述べることにした。

「俺の目から見るとあんたはかなりの力を持っているように感じられる。だがこの世界では魔王と呼ばれる相手を倒すほどの実力はないように見える。だからこの世界の魔王と戦うとしたら相当な覚悟を持って戦いに挑む必要があると思う。そしてこの里に住む人々の力を結集する必要がある。俺が考えるにはそれこそ軍隊規模の人間が必要な気がする。それとこの里に住んでいる人間たちは戦闘に慣れていない。その状態で魔王軍を相手にすることになればこの里を守り切ることは難しいだろう」

俺はこの里を訪れた際に見た、この里で暮らす人々の様子を思い出しながらそう答える。彼らは日々の仕事をこなすことに必死でこの世界の脅威が迫ってきているという事実を認識できているものは少ないように感じたのである。

「確かに君の言う通りかもしれないね。でも僕にはこの里にいる人たちを守ることができるという確信はあるんだ。だからこの里のことは安心して欲しいな」

「だが、いくらなんでもそれは無謀だと思うぞ。俺だってこの里に来る前にかなり苦労したからな。その程度の人数がどれだけ束になってかかってきても俺のいた国を攻め落とすのは不可能だと断言できるぜ。それに、この世界に存在する他の世界が俺のいた世界のように安全だとは限らないだろ?俺は元いた世界がそんなに簡単に落とされてしまうとは考えにくいからこの世界にはもっと強い敵が存在すると思っているんだよ」

俺は自分がこの世界にやってきた経緯を話した上で自分のいた世界のことについて話し始めると、目の前にいる男は少しだけ困ったような表情を見せる。そのことから俺の言葉が間違っていなかったのだと実感するのである。そしてライナスは自分の能力を説明し始めた。俺にはライナスがどうやって相手の能力を判別することができるのか理解できないのだが、どうやらライナスは俺のことを仲間と認識してくれているらしく俺の魔力に触れることによってある程度、俺の能力を判断することができるというのである。

この世界に来て初めて自分の能力のことで質問をしてきた俺に対しライナスはそのことについても快く教えてくれたのである。その能力の内容というのが俺の能力を完全に把握するまでには至らなかったのだが、俺が自分の能力を完全に発揮できるようになるために必要となる力の源のようなものを特定できたのだという。そして俺はその力で、目の前の存在の能力を解析することができれば自分のレベルの限界を解除する方法を見つけることが出来ると考えたのだ。しかし目の前の男はなぜかそのことを俺に伝えるつもりはなかったのである。

俺の予想していたよりも遥かに優れた性能を持つこの里の防衛用の術式が完成するまでに時間はそこまで必要ではなかった。ライナスという男が里の者達と相談しながら作業を進めて完成させたのである。里の周囲を覆う壁には魔石が使用されており、魔力を流すと障壁が展開されるようになっている。さらにこの里を囲むような形で結界が展開されていて、外側の壁が破壊されてもすぐに内側の壁に穴が出来ないように構築されていた。さらには内側に展開されている障壁の内側にある空間には特別な場所が設けられており、そこに里の住人達は居住できるようになっている。この世界に来てからはずっと宿屋の狭い部屋で過ごしてきたため俺は里で過ごす生活に憧れを持っていたのだ。だが里の中で暮らすためには、ライナスによる審査を通過しなければならないという条件がある。ライナスはこの里に暮らしている人々に害を及ぼさないかどうかのチェックをする義務があり、そしてそのチェックに俺は不合格だったのである。俺はライナスからこの世界における一般的な生活習慣などを学ばされそれからライナスの許可がおりるまでは里の中で生活することはできなかったのだ。

俺とライナスが話し合った結果、俺の世界の人間を味方に引き入れることが出来なければこの世界を魔王軍の侵攻を阻止することが出来ないことがわかった。そのため俺がライナスと話をした日から数日の間が経過した頃である。俺の元にライナがやってきたのである。その顔はどこか申し訳なさそうな表情をしており、俺に対して謝罪の言葉を口にし始めた。そしてその話を聞けば、俺をこの里に置いていくことが不可能になったので、しばらくの間はこの里に留まるように言われてしまったのである。その話を聞いた俺としては別に嫌だというわけではなかった。むしろ俺は自分に与えられた使命を達成しなければならないと考えている。そのためにライナスから色々と学び取りたいと考えていたのだ。

俺はライナスに案内されるがままに、とある家へと連れていかれた。その家の外観はこの里の中でも異彩を放っており明らかに普通の住居とは違っている。その外観には扉はなくその代わりに頑丈そうな鉄の門が取り付けられていて、そこから見える内部は外から見るとそれほど広い敷地ではないのにもかかわらずとても巨大な施設になっているのである。その施設の入口は二カ所あり俺が入ってきたのとは別の出入口の方から中に入ることができたのだ。俺はその建物の中に入る前に念のために自分の姿を確認しておく。そしてこの世界に来たときに着用していた服をアイテムボックスの中にしまうことにする。その後に、ライナスに連れられて俺は施設内へ入っていったのである。その施設は俺の想像している以上の規模のものでまるで大きな工場のようにも見えた。ただこの世界において、これだけ大規模な建物を作るだけの資源が確保できるのは限られた地域だけだというのはこの世界の現状を知れば一目瞭然であった。

「ここは僕が管理を任されている工房だ」

俺が建物を眺めているとその様子を見かねたライナスがそう告げてくる。俺はその言葉に違和感を覚えずにはいられなかった。

(この世界が危機に陥っているのにどうしてこんな場所にこれほど立派な施設を建設する必要があったんだ?)

俺はライナスの言葉を疑いつつもこの場所に存在している設備について質問を行うことにした。俺のその言葉にライナスは詳しく説明するが、その話はどれもこれもが俺の興味を引く内容ばかりでありその全てを知りたいと思う気持ちが強くなってくる。俺が疑問に思っていたこの世界の技術のレベルとこの世界の人間たちのレベルを比べるとどうしてもその差が大きいのだ。

「君は異世界からの迷い人だったよね?この世界のことをどれくらい知ってるの?」

ライナスは俺に対して質問をしてきた。それはこちら側の世界にきて日が浅いはずの俺にたいしてなぜこのようなことを質問してきたのかはわからない。もしかするとこの世界の人間が知らない知識を有しているのではないかと警戒されている可能性もあり、俺としてはできるだけそのことに触れないでほしいと思っていたのである。俺が答えあぐねいていると、俺の表情を見てライナスはすぐに自分が失言をしたことに気づき謝ってきた。だが俺は特に気にしておらずそのまま話を流して本題に戻るのであった。

この世界の人間は魔王に対抗するために勇者召喚を行ったという事らしい。そしてこの世界で確認されている勇者の数はまだ数人でしかなく、しかも勇者の力はそれほど強くなく戦力としては数えられないものであるということを聞いて、この里の防衛には不安を覚えた。ライナスがこの里を守れると確信しているのはそのことが関係しているようだったがその理由までは俺の推測の範囲を出なかった。この里の守りを強固なものにする手段は結界を張ることでそれが可能である。しかしそれを実行するためには大量のエネルギーが必要となるため俺の世界でもあまり見かけることのないレベルの魔力量を持った人間が必要になるとのことだ。そしてこの国の防衛を司る人物の一人がその魔力量を誇っており、それが理由でこの国は平和を保っているのだという。だがそれも長くはないかもしれないというのだ。

俺も薄々と感じていたことだが、やはり魔王軍にはすでに侵略を開始しているものが存在するらしくすでに多くの村などが滅ぼしられているとのことだ。この里は辺境に位置していることもあり魔王軍に襲われることは今までになかったという。だが今回の魔王軍の攻撃がいつまで続くかは誰もわからずこのままの状況では、里を維持することすら難しくなることが予想されるとのことであった。俺は魔王軍が本当に存在することを知ったのでそれと戦うことになるのだろうと予想していた。そしてその戦いがどういう形で起こるのかがわからない以上は準備は必要であると俺は考えていた。そこで俺の能力であるアイテムクリエイトが役に立たないのかをライナスに尋ねてみることにしたのである。その能力を使えばこの世界の兵器を製造することは可能ではないかと俺は考えている。そしてその話を聞くなり、ライナスは困ったような表情を浮かべてしまう。

ライナスから説明を受けた後でもまだ俺の心の中ではライナスに対する疑念が残っているのだがそれは一旦、頭の隅に置くことにしよう。だがライナスは今すぐにこの里を出るべきだと言ってきたのである。それはおそらく俺と同じような力を持っている存在が他にいるからであろう。そしてそんな存在が味方になるとはとても思えないとも言われた。その考えには同意できる部分もあった。なぜならライナスの話には俺と似たような力を持つ者が何人もいたということも含まれていたからである。

俺はライナスと一緒に、里の防衛責任者に会うことになった。だがこの場にたどり着くまでに俺とライナスの間には微妙な空気が流れていたのである。その原因についてははっきりとわかるものではないのだが、俺はどうにも納得がいかないような気がしたのだ。俺はその感覚を頭の中から追い出して、この里で暮らしていくために必要な道具を作れと言われたのである。俺にできることと言えばアイテムを作成することだけでありそれ以外には特に出来ることはないのだがそれでもライナスはその話を信じてくれたのだ。

そして俺はライナスと共に里の長であるという人物がいるという家に向かったのである。その場所は里の中心地に近いところにあって、周囲の建築物と比べてもかなり大きな屋敷であった。里の規模を考えるとそれほど大きな家では無いのだがこの屋敷は別格だったのである。ライナスに聞いた話ではこの屋敷はもともとこの里の領主の屋敷であったということだ。その領主が魔王軍との戦いによって亡くなった後は別の人間が住んでいたという話だ。俺はこの国でどのようなことが起こったのか知りたくなってそのことを尋ねたがライナスはあまり良い顔をしなかった。

そのことについてもっと聞きたいと思ったのだが、俺はその思いを飲み込んでこの世界について教えてほしいと頼むとライナスは自分の知る限りのことを話してくれる。まずはこの里から出る方法を知るためにライナスに案内されたのであるがその途中で俺はライナスに質問をぶつけてみた。

ライナスの答えを聞いた上で俺は里の外へ出ていくことを諦めたのである。俺としても自分の力をこの世界の住人に知られないようにしたいと以前から考えてはいた。だがライナスはそんな俺の考えとは正反対の提案をしてきたのだ。俺はそのことに不満を抱くが、この世界における一般的な知識や戦闘に関する知識などを学ぶためには必要な措置だということだったので俺はライナスに従うしかなかった。俺は里で生活をするために様々なものを作成させられた。俺としては里で暮らすうえで便利なものが作れるかどうかを考えていた。ただ俺は里の中で暮らしているわけではないのでライナスの注文通りに全ての商品を作って渡すことはできない。それに俺は自分の作った物がどのように扱われているかも気になっていたのだ。

そして俺が里の中に持ち込んだ荷物の中には食料なども存在しており、俺の持っている食料がこの里の人々に歓迎されなくて餓死するようなことがあったら洒落にならないのでその辺りのこともしっかりと対策はしてある。俺が里の外に行くときにも問題なく生活できるようにこの世界に来ているときとほとんど同じ状態で生活ができるようになっている。

ただライナスから聞かされていたのは俺の世界の人間が魔王軍の侵略を受けている地域に行けば確実に捕まるだろうと言われていたので俺は少し怖くなっていたのである。その話を俺がライナスに聞くと、確かにその通りだという返事が返ってくる。ライナスがこの世界に転移させた人間の数は五人ほどしかいないと聞いていたので、魔王軍によるこの世界の征服はそこまで進んでいないと思っていた。

ライナスは俺に魔王軍の現状について詳しく語ってくれた。この世界における現在、この世界に残っているのは三つの勢力だけらしい。一つは勇者と呼ばれる存在が率いている者たち、この勇者が率いる勇者パーティが圧倒的な戦闘力を誇り各地で魔物の軍勢を打ち倒している。次にこの世界を裏から操る闇の王と名乗る男と魔王の娘を名乗る女が率いている闇魔軍、最後に勇者たちが打ち漏らした敵を討ち取っていた光の英雄団、そして魔王軍はそれらの戦力を結集しようと画策している最中であり、現在はまだその動きは見られないようだ。

そしてこの世界において、勇者たちと互角以上に戦えるほどの戦力を持つ者は一人も存在しないというのがライナスの意見であった。だが俺にはそう簡単に信じ切ることはできなかったのである。俺としてはこの世界に来てからずっと勇者たちと戦ってきた経験があり彼らの力は知っている。だから彼らが本気でこの世界を支配しようと動いた場合勝ち目がないこともよく理解できていた。だがそれはあくまでも勇者たちのレベルが低かったからに過ぎないとも思っている。もしレベルの高い勇者たちの仲間になれば対抗できないほどの強さになるのではないかと考えたからだ。

そしてこの里の防衛を任されている責任者の男はライナスからの報告を受けるとすぐさまに俺のことを捕らえた。この里で暮らしていけるようにするのには俺の知識が必要になると判断したようである。俺はその意見を素直に従って、この里の防衛のために知識を提供することにしたのである。この里の人間たちは俺が作り出したアイテムをとても高く評価しており俺が出したアイテムをすぐにでも使ってみたいと思っているようだった。

ライナスの案内により、俺達は魔王軍の侵攻を防ぐために活動している組織へと連れて行かれた。そして俺はそこで俺の作成した道具の説明をするはめになった。それはライナスが俺のことを里に連れ帰った際にこの里にいる人間たちに紹介しておきたいと言っていたためであった。だがその前にライナスはこの世界で確認されている勇者たちについて説明する必要があり、勇者たちを敵に回すことの愚かさを里の住民達に話さなければならなくなったのである。そしてライナスの話を聞いて俺を勇者だと誤解する人々が現れてしまって大変なことになった。ライナスもその状況をどうにもすることができなかったらしく、俺は勇者の疑いがある人物として拘束されることになったのである。

だがその状況はすぐに打開されることになる。俺を疑う声を上げた者達は、実際にライナスに実力を見せつけられ、そして俺が作った武器の性能を目にするだけでライナスの言葉が正しいことが証明されてしまったのである。そのせいもあって俺に対する風当たりが和らいでしまったが、それでも俺は自分がやったことは間違いだと思っていた。この世界の常識に照らし合わせてもあの行動は明らかに行き過ぎだ。その点だけは俺も譲れなかったのである。

そしてその騒動の原因となった人物が、この里のまとめ役のような人物だということを知った俺はその人に会いに行き事情を話すと快く謝罪してくれた。

その後ライナスと俺は他の防衛部隊のリーダー達にも紹介され、俺はこの里で生活することになった。そしてこの里で暮らしていくために俺はこの里の防衛のための道具を作成し続けることになる。そして俺が作りだした道具のおかげで、この里は今までにないくらいの平和を手に入れることに成功したのである。

ライナスは俺の作ったアイテムを、まるで神の遺物であるかの如く褒め称えてくれ、その言葉を聞く度に、ライナスがなぜ俺にアイテムを作らせ続けたのかを理解できるようになった。この世界に存在するアイテムではどうすることもできなかったことを、俺はどうにかできたのだ。俺はそのことが本当に嬉しかったのである。

この里には勇者がいるということでライナスから説明を受けていたので俺もそれを理解した上で里に住むことにした。ライナスもこの里で生活しているので当然のことなのだが、ライナスの他にも数名の女性と一緒に暮らすようになっていた。その女性達の名前はリリィとアイラといい、どちらも里の中でも実力者として知られている存在であるらしい。

「まさかライナスとこんな形で同居することになるなんて思ってなかったな」

ライナスと一緒に暮らしているという状況は不思議な感覚を覚えさせてくる。ただ俺がここにいることがこの里の人々にとっても喜ばしいことであるということは俺にもわかる。俺の存在自体がこの世界の危機を救ったという扱いになっていたから。ただこの世界にとって脅威となっている存在と俺は何度も戦ったことがある。俺自身はそんなに強い相手とは感じなかったがこの世界の住人にとっては驚異的な存在のはず。その脅威を取り除くことができる俺のことをこの世界の人々は神格化する勢いだったのである。そんなわけで俺はライナスやこの里に住んでいる人々と普通に接することが難しい状態に陥ってしまうのだが、その辺りの問題を解決するには時間がかかるかもしれない。

ただライナスはそのことを特に気にしているようには見えず、そればかりかこの里の中ではかなり偉い地位に就かせてもらうことになっていたのだ。だがこの辺りは少し俺としては不満を感じるところもあるのだがライナスはその件について特に思うことはないようだった。

ライナスから聞いた話ではこの里にも魔王軍と敵対関係にある闇の勢力というものがいるらしく、彼らは基本的に闇魔軍に所属していることが多いらしい。そしてライナスはその闇の勢力にも俺の存在が伝わっていると考えているようだ。

この里で暮らすようになってから二週間程経過した時のことである。俺と、この里の防衛隊リーダーでもあるアベルという男性が二人きりで話す機会があった。アベルは二十代前半の好青年といった外見をしており見た目だけであれば里で一番人気があってもおかしくないと思えるほどだった。だがその内面はとても真面目で誠実であり信頼のおける人間であるというのはライナスから聞いているので俺は安心していたのである。そのアベルからライナスが不在の時には、里で重要な話し合いが行われていてその会議に参加しているメンバー以外は外に出ることを許されていないという話を聞かされる。そしてライナスがその会議に出席しているということを教えられた俺はライナスがいない今ならば里の様子を確認できると思ったのだ。

ライナスからは勝手に里の外に出る許可を出すことはできないと言われているが俺の場合はその辺に関しては例外になっている。そもそもライナスは俺に対して、勇者の力を利用して世界を支配しようとしている者がいるのでこの世界の人々に勇者の力がどれほど素晴らしいものなのかを教える必要があると言ってきたことがあったのである。つまり俺がライナスに頼んでも勇者の力で世界の支配をしようとしている者を止めなければならないということになるはずだ。そうでなければわざわざそんな頼みごとをする必要はないだろう。

俺はこの里の外の状況を確認し、もしも危険が迫っているのなら勇者の力を利用することもできると考えていた。そしてライナス達が戻ってきてからも俺は自分の力で外に行く許可を得ることができた。その際にもやはり勇者の力を利用したら駄目だということも告げられてしまう。俺としてはこの世界を救いたいと思っているのでできれば勇者の力を存分に使ってやろうと思っていたが、その願いをライナスにあっさりと打ち砕かれてしまったのである。だがその代わりに俺はライナスが認めたという証のメダルを受け取ることになった。そして俺は里の外にある草原を駆けていた。俺の持つ武器はこの世界にやってきた時に持っていたものとは異なっている。俺は里にいるときに自分専用に装備を用意してほしいとお願いをしていたのだ。その要望通り用意された装備は全身鎧であり、俺はこの世界に来てからこの世界に合わせた装備を手に入れた。この世界には剣を使う戦士もいるし、槍を使う騎士も存在するので、俺はそれらに対応できる武器が欲しいとライナスに頼むとこの世界にも存在している金属を使ったロングソードとラウンドシールドを作ってもらうことができたのである。

その装備を身につけた状態で、俺は里の外の様子を確認するために走り回っていた。里の中は平和であったが、里の周辺については安全とは言えない場所もあるらしいのだ。ただ今のところそういった危険な地域には足を踏み入れたりしないで済んでいるようである。だがもし仮にそういった状況が訪れた時は自分が助けになるしかないと思っている。なぜなら勇者の力を使えばどんな強力なモンスターであっても倒すことは可能だと思われるからである。それにこの異世界において俺以外にレベルの高い人間が存在する可能性は低いとも思っているからだ。もちろん絶対ではないが、現状を考えればそうなってしまう可能性が高い。だから俺はできるだけこの里を危険から守っていきたいと考えていた。だがそのために必要な力を得る手段が見つからないことに困ってしまったのは事実だ。だからこそライナスに相談して武器を作ることのできる能力のことも話したのである。その結果として俺に渡されるはずだったアイテムをライナスが作ってくれるということにもなった。そして俺はライナスから新しいアイテムを受け取った。それはこの世界には存在していない特殊な鉱物から作られる武器でその効果は凄まじいものだった。その効果がどれくらいのものかと言うと、この里の防衛を担当しているアベルからすると絶対に敵には回したくないようなアイテムになるほどのものであるらしい。俺はその効果の高さを実感しながら、この世界で俺が手に入れた素材を使用して、この世界で作るには相応しくないレベルのアイテムを作成することになったのである。

俺はまず最初にこの世界にはない材料をアイテム袋に大量に収納してあるアイテムを使って作りだすことにした。そして作りだしたのは巨大なゴーレムだった。俺は里の周辺に生息しているジャイアントウルフが、もし俺達に襲い掛かってきた場合この里の防衛を担当する者が簡単に倒せないほど強くなってほしかったのである。そのための戦力が必要だったのだ。だがそれだけではない。この里に危機が訪れてしまってから、俺にこの里を脱出する時間が与えられない可能性もあるので、脱出するために必要となるものをアイテム袋の中から選び出し、その中に詰め込む。俺に何かがあればライナスはこの世界を救うことはできなくなってしまうかもしれないが俺にはこの世界でやり残したことがあるのだ。その目的を果たすまで俺は何としても生きて帰らなければならなかった。

俺の目的はある少女を助けること。ただその目的のためだけに俺はこの異世界で戦い続けていた。ただその目的を達成するために必要な情報が不足しすぎているためどうしても手掛かりを見つけ出すことができなかったのである。それでも俺は探し続けなければいけない。たとえ俺の体が限界を迎える結果になったとしたところで俺は必ず成し遂げるつもりでいた。この里を守るための戦力となるべきこの世界最強の生物は完成したので後はこの里の周辺の状況確認をするだけだった。俺はその作業を行うことにする。もしかしたらその周辺でこの世界の人間にとっては凶悪な存在が現れるかもしれないのである。

俺はその日も普段と変わらない日常を過ごしているつもりだった。俺達は魔王軍の襲撃に備えて里の周囲を警戒し続ける日々が続いている。ライナスはこの里が今まで経験したことがないくらいに平和で、俺達もこの世界が滅びてしまうのではないかと考えていた時期もあったがその心配はいらないと思うようになったのだ。

俺とライナスは同じ部屋に暮らしており、俺が作ったベッドで二人で眠っている。そして今日も俺達は目を覚ますと身支度を整えた後、ライナスの自室へと向かう。

この二週間の間にライナスに呼び出されて一緒に行動する機会が増えていたが、そのたびに俺はライナスが里のまとめ役をしている男性と話しているところに遭遇することが多かった。その二人はこの里の長老のような存在でもあるので里の皆から頼りにされている人物でもある。ライナスはその二人の話を俺にも聞かせようとしてくれているのか頻繁にその部屋を訪れるようになった。そしてその二人がライナスのことについて話し合っている姿をよく見るようになり、その会話の中で俺の名前が挙がるようになったのである。最初は俺のことが里の人々の話題になっているというので驚いたのだが、その内容はこの世界の脅威となっている闇の勢力についてのことでライナスは長老達から相談を受け、その解決に向けて協力することを約束していたようだ。ライナスは里のまとめ役の人達と俺のことを、まるで神がこの里を見守る役目を与えているとでも言わんばかりに接してきた。俺はそんな扱いを受けたことがなく戸惑うことしかできなかったのである。

ただ俺の方にも変化があり、長老の一人であるリリィさんから、ぜひ私の婿になってくださいと言われてしまった。俺がそのことを断るとなぜかライナスが俺の事を羨ましがるようなことを言ってきてさらに俺は混乱してしまう。

この里の人々は基本的にライナスに対して敬意を持って接しており、俺もライナスから敬語を使うことを許されていた。ただ俺は勇者の力を得た特別な存在であるため他の人のように扱うことはできないという。そしてライナスは俺と二人っきりの時だけ口調を変えてくる。それがとても新鮮で、俺もライナスのことを名前で呼ぶようになっていた。俺のライナスは里の中で一番の実力者でもあるのだがそのライナスが俺のことを認めてくれたということだ。だから俺はその期待に応えなければならない。ライナスのために全力を尽くすつもりでいる。そしてこの世界を守る勇者である俺にしかできないことなのだから。俺はそう思いながらいつも通りに訓練をしようと外に出ようとする。ライナスも同行しようとしていたが、俺はライナスには別の仕事を頼みたかったので今回は一人で外に出ることにした。

外に出るときにこの里の防衛担当をしている者に出会うと、この前のゴーレムを見てから少し様子がおかしくなった。あの巨大な魔獣が目の前に現れたら俺ですら命の危機を感じるほどの恐ろしいものになってしまうと防衛担当者は怯えるように言ってきていたのだ。俺はその反応に対して特に何も感じることがなかった。なぜなら俺はこの里を守るためにこの世界にやってきたわけなので恐怖を覚える必要などないからだ。ただ俺はライナスの婚約者候補に選ばれたことから自分の力を里にいる人々に伝えることにした。

俺はライナスが用意してくれた専用の装備に身を包みながら外へ出ていった。俺は自分が作った巨大ゴーレムに近づき声をかける。するとこの世界のゴーレムとは思えいない流暢な返事をして動き出したのだ。その姿はあまりにも異様な光景だったので里の住民達がその様子に気づいて近づいてきた。そしてこの里で最強を誇るアベルまでも俺のそばへやってきた。

俺はアベルから俺の作ることのできる最高の武器を作れるか質問されたのでもちろんと即答することができた。俺にできないことはないので問題ないと伝え、俺はその言葉を証明すべく巨大なゴーレムに向かって武器の作成を依頼する。その武器の名はエクスカリヴァーンという剣である。その見た目はかなり大剣といった感じになっているが、俺の使うスキルに合わせるとその大きさは最適なサイズになっていた。

俺の作り出したエクスカリヴァーンはその威力だけでドラゴンを倒すことができると言われている武器であり、その伝説を信じられないとアベルは言ったが、俺はアベルの言葉を無視して実際にその武器を使うと決めてしまう。俺はその伝説の武器に認められるような存在ではないかもしれないがそれでもこの武器が認めるほどの力を発揮できるような武器を作ることくらいならば造作もなかったのだ。

そしてこの世界に来て初めて作るエクスカリヴァーンを手に取った瞬間に俺の中にある力が一気に解放され、俺のレベルの上限を超えて進化を始める。その現象にこの里の住民たちだけではなく俺自身も驚きを隠せなかった。俺は自分の身に何が起こったのかわからず困惑してしまったが、とにかくこの場から離れることを考えてその場から離れようとしたが、それは叶わないことだったのである。

この世界には存在しない金属で作られた俺の専用武具である、エクスカリヴァーンは、俺の手にしっかりと収まり、俺の意思に従ってくれたのである。しかも、その能力はさらに強力になり、この世界に存在する全ての敵は俺の敵ではないと言いたげな態度を取っていたのであった。

この俺が作り上げる武器がどのようなものになるのかは誰にもわからないことである。俺にはその能力が理解できているのでどんなものが作り出せるのかある程度予想することができるのだ。しかし普通の人間は違うようで、俺の持つ力を理解してもらうことは簡単では無いとわかっていた。そしてこの俺が作ろうとしている最強の武器を作るための素材を手に入れることができていない状態で俺が新たなる武器を造り出すということはこの世界の常識を覆す出来事だと思えるくらいの事態なのだとこの世界では思われているらしい。俺はそのことをアスターさんに聞いた時にこの里で生活していて良いのだろうかと悩んでしまったのである。

だがこの武器に関しては俺にはその素材を手に入れられれば必ずや最強の武器を作り上げる自信があった。なぜならその武器の素材として使っている素材は全てこの世界に生息するモンスターの中でも上位に位置するもので作られているからだ。

俺はまずこの世界に存在する魔物の中で最も凶悪とされているドラゴンを倒さなければならないと思っていた。だがその前にこの世界の脅威になる可能性のあるモンスターがいるかもしれないと思い、まずはそういったモンスターが存在する場所を確認しておきたいと思ったのである。そして俺はエクスカリヴァーンを使って里の防衛を担当している者に、この里の周囲の警戒を依頼し、自分はこの里周辺で最も強力な敵が現れると思われる場所である魔王城へ向かうことに決めた。

だがその時俺はまだ知らなかったのだ。俺をこの世界へと送り込んだ存在の目的を。この俺がこの世界で手に入れた力は、世界のバランスを大きく変えることになるということを。そのことを証明するかのように俺が倒したあの闇の眷属たちを倒した後で俺の元にメッセージが表示された。

『闇の脅威から世界を救うために光の加護を持つ勇者よ。あなたが今持つ力はいずれその身を滅ぼすこととなる。それを防ぐために私はあなたの前に現れるであろう。私の名はルーナ、またの名を闇の王と呼ばれている。その男を倒し闇の王の力を得る時こそが闇の勢力が復活するとき。勇者がその力を存分に使いこなしこの世界を救いなさい』

そしてその表示されていた内容は突然の出来事で俺はそのことに驚愕するしか無かった。

俺は、この里の周辺の状況を確認するため、里を出ていったが、この世界の脅威になっているという闇の眷属の情報を集めるためにはもっとこの周辺にいるはずの闇の勢力と戦うための仲間を集めなければいけないと思ったのである。そこで、俺はこの拠点で仲間集めをすることに決める。そのための拠点として選んだ場所はこの場所からそれほど離れておらず比較的安全だと思われるこの場所で俺が持っているこの世界で最強と言えるだけの力を持つ、巨大ゴーレムで敵を圧倒しようと考えたのだ。

ただ俺が作った巨大ゴーレムは、里の中では有名で皆から恐れられていたため、俺以外の人間がこのゴーレムに近づくことはあまり無い。だからこそ、里の中でのんびりと過ごすこともできる。しかし、里の周囲を見回りしていた者によれば里の外の森の奥で、今まで見たことがないような禍々しい気配を持った何かがうろついているという話を聞いたことがある。もしかするとこの周辺でも強い部類に入る存在かもしれないが、俺はその気配の主と戦いたいという気持ちが芽生え始めていた。そして俺はエクスカリヴァーンを携えながらその場所へと向かった。この世界に来る前の世界にいた時はこんなことをしようと思ったことは無かったがこの世界に来た影響なのだろうか。それとも元の世界から俺の心の中に存在していた闘争心が強くなったということなのかはわからない。だが俺はその何かの存在とどうしても戦ってみたいという欲望が生まれ始めていて、それを抑えることができずに俺は森の奥へ奥へと向かう。

俺は森の中に入ってからというものこの周辺で見かけない奇妙な動物と遭遇し、戦闘を開始した。最初はエクスカリヴァーンを使わないでも勝てる相手だったが、その動物の戦闘能力は異常に高くエクスカリヴァーンを使った戦いになったのである。その強さは通常の人間なら簡単に死んでしまうような恐ろしい攻撃ばかりで俺は死にかけるがギリギリのところで回避し、そしてこの生物の体に触れてその存在を消滅させることに成功させる。俺がその存在を殺した後にアイテムを回収したが、俺はその生き物がこの世界にいるべきではないものだということに気がつき、この世界の脅威となる存在であることだけは間違いなかった。

そして俺は、この付近にいた不気味な生物が一体だけではないことを確信すると、俺はこの付近一帯にいるすべての危険な魔獣を殺していくことを決意して動き始める。

俺がこの世界にやって来た時に最初に会ったのは俺のことを勇者様と呼びながら近づいてきたライナスだった。そして俺達はすぐにライナスが用意してくれた家に入り今後どうするかという話をライナスとするのだった。ライナスは俺のことをこの世界を救う勇者だからという理由で特別扱いをすることはなく普通に接してくるので俺はその方が好感を持てたのでライナスとはいい関係を築いていけそうな感じがした。そんなことを考えながら俺がライナスと話をしていると外から悲鳴のようなものが聞こえてきたので俺は外の様子を確認しに行くことにした。

俺はライナスの家から外へ出てみたが、そこには異様な光景が広がっていた。里の人々がこの周囲に存在する全ての魔獣に襲われていたのだ。しかもその魔獣達はとても人とは思えないような容姿をしていた。その姿は醜悪で、まるで魔獣に人の部分だけが乗っ取られたかのような形相をしていて里の人々を攻撃し続けているのである。俺もその光景を見て助けに入ろうとしたが、この辺りに存在する敵は強すぎてとてもではないが一人で対処できるものではないと感じた。俺はエクスカリヴァーンを握りしめながら、ライナスがこの事態を引き起こしたのかどうか確かめるためこの場を離れようと考えた。しかしそれは許されなかったのである。

ライナスは俺に対して攻撃を仕掛けてきたのだ。この里の中で一番の実力を持っているライナスは圧倒的な攻撃力を持っており、その一撃で俺は瀕死の状態にまで追いやられてしまったのであった。そして俺は意識を失ってしまう。だがその後で誰かが治療してくれたおかげで一命を取り留めることが出来たのである。だが俺は自分の体に異変を感じたのである。俺はその時に自分の体の中にあった魔力がほとんど無くなってしまったという感覚に陥り、このままこの状態でいると命の危険すら感じてしまいそうだったので俺はこの世界で俺が最強になれる武器を作ってみることにした。俺の持つ最強の武器はエクスカリバーである。しかしその剣は普通の剣とは違いすぎるほどの大きさのため持ち運びには向いていない。俺はエクスカリヴァーンが手元に無い以上、新しい武器を作るしか無かったのだ。そこでこの世界に俺にしかできない特別な力があるのではないかと思い始めたのだ。そしてその考えが正しいと思える現象が起きる。この世界に来てから俺はこの世界の物に触れるだけで作り出すことが可能になるようになっていたのだ。なので俺はこの世界でも使えるように特殊な素材を探したのだがそれが見つかることはなかった。だがそれでも俺はエクスカリヴァァー以上の武器を作り上げることは不可能だと思えなかった。なぜなら俺はどんな素材でも作れる可能性があるからだ。しかし今のこの世界にはどんな金属が存在しているのかわからないために俺はこの世界に存在しないはずの物質を作り出すしかないと考えていたのである。

そしてそれからしばらく時間が経過した頃、俺は自分が何をしたいのかわからない状況に陥っていた。というのもこの世界にあるはずがない未知の金属を作り上げようとした結果、ある金属が生み出されることに成功し、しかもその能力が恐ろしく強力なものだったのだ。その鉱物を生み出す際に必要な魔力の量を考えればおそらく俺が生み出すことができる最高の武器と同等のものが作り出せるのではないかと思われるほどのものを作り出してしまうことに成功したのであった。しかしそれと同時にこの武器が本当に俺の想像通りに使いこなすことが出来るのかという疑問が浮かんできたのである。俺の作った武器の能力を鑑定した結果、とんでもない代物が生み出されたことが分かった。俺が作り出したのは神鋼と呼ばれるもので、この世界のどの鉱石よりも硬く、この世界で最も硬いとされる金剛石をはるかに凌駕する硬さを持つ鉱石だった。そしてさらに俺はその鉱石を使って武器を作り上げたところその武器はこの世界に存在する最強の素材を使った武器に匹敵するくらいの性能を有していたのである。

だがこの武器を使いこなすためにはかなりの技量が必要になるのは間違いないと感じる。なぜならその武器の形状自体が非常に特殊で使いこなせるのは恐らく俺だけだと思ったからである。だがそれだけの威力があればこの世界での俺の戦闘力は飛躍的に上がるはずだ。しかしそれを実際に使った時にこの世界の脅威となり得るモンスターを倒すことが出来れば良いと思う。だが俺はまだ見ぬこの世界の敵がそこまで強くないことを祈ったのである。だがその時の俺はまだこの世界で俺以外に敵と戦うことができる人間がこの世界に来ることをまだ知ることは無かった。

俺達が拠点に使っている家の近くに魔獣が現れたということで俺はこの家の周囲に結界を張って魔獣に侵入されないようにすることにする。そして、この家に被害が出ないように俺はエクスカリヴァーンを取り出した。そして俺は、その魔物を討伐しようと試みるが俺はエクスカリヴァーンを使った戦いに慣れていなかったのもありかなり苦戦することになった。

この里に住んでいる人間は魔導師と呼ばれる人間が多いので魔法による攻撃が主体になる場合が多いが、今回現れたモンスターの群れはその例外であり、物理的な手段で俺を攻撃してきていた。だが、その動きは非常に素早かった。この世界にやってきてからというもの俺の身体能力は格段に上がっていることは実感していたがここまで素早く動くことができたかと問われると自信が無かった。それにこの里の中でもトップクラスの強さを誇るライナスでさえも苦戦を強いられていたのを見るとこの魔獣たちの戦闘能力は相当なものだと俺は感じ取っていた。

(これはまずいな。まさかこれほどまでに素早い敵が存在するとは思ってもいなかった)

「ライト様! ここは我々が引き受けます!」

「あなた方は里の者達を家の中に避難させておいてください。あなた方もこの家でじっとしていれば安全なはずです」

俺はこの魔獣をなんとかしてこの里の住民を守り抜こうと思い俺は魔獣の相手をするために駆け出していた。俺が駆け出したことに反応したのであろう。魔獣の群れが俺のことを襲いかかるが俺は難なく攻撃をよけることに成功する。

そして俺はこの里に魔獣たちが現れて俺のことを警戒している間に俺がこの魔獣たちに攻撃を仕掛けて倒してしまおうと考えていた。しかしここで魔獣が俺のことを攻撃しようとした時俺に向かって謎の物体が飛んでくるのであった。俺は咄嵯に反応しようとしたが体が思った以上に動いてくれず、俺のことを庇ってくれた女性のおかげで俺がダメージを受けることはなかった。そしてその物体が何か確認しようとすると、それはこの世界に存在しているはずのないゴーレムだったのである。そのゴーレムの見た目は禍々しいもので俺は思わず恐怖してしまった。俺の記憶にはないがそのゴーレムの体から発せられる気配から俺はこいつが俺の知っている存在ではないということがわかった。

俺はその気配が発せられている存在が気になったので観察すると俺はこの存在に妙な違和感を覚えたのである。俺はエクスカリヴァーンを構えながら目の前の敵を凝視し続ける。するとそのゴーレムは突然地面に崩れ落ちていったので俺達は何が起きたのかよくわからずに呆然としていた。するとそこに一人の男性がこちらへと近づいてきたので俺が警戒しているとその男はこのゴーレムを作ったのは自分だと説明してくれた。

俺はどうしてその男が自分の名前を知っているのか理解できなかったので、その男が何かを隠していることはすぐに分かった。俺はその男の表情を観察していたのだがその男はまるで何も企んでいないようだったので俺は少しだけ警戒を解いたのである。しかしその時に俺はこの世界に来てはいけない存在がこの里に侵入していたことを察知することになってしまった。その気配の主は間違いなく魔人族であり俺は魔人がやってきたという事実に驚愕し、すぐに里の人々に避難するように呼びかけたが、俺の声は届いていなくて魔人のことに気づいていなかった。俺はその魔人を早く始末しなければならないと思いその人物の方に駆け出そうとしたが、この家にはこの場にいる人達を守るために戦える者が少ないと判断した。そこで俺は自分の命の危険を感じたがこの家の周りに強固な結界を展開し、魔人と戦闘をしているライナス達の元へと向かったのである。

俺は今この里の周辺に魔獣がいることから、ライナス達に魔獣との戦いに集中してもらうことにした。そして俺はエクスカリヴァーンに俺の中にある魔力を込め続け、俺は魔力の枯渇状態に陥ってしまったが魔獣を倒し続けた結果何とか全ての魔獣を倒すことに成功したのである。だがその時には俺の体はボロボロになっていたがそんなことなど気にせず、俺達はこの魔獣たちを呼び出した魔人を探すが魔人はもうこの里にはいなかった。

俺達がそのあと里の人達の安全を確保するため、家の中に入るようにお願いしたのだが誰も俺の言うことを信じようとはしてくれなかった。そしてライナス達からも俺が嘘をつく必要はないと言われているため俺はその里の人々に俺の力を証明するために家を破壊すると宣言し、エクスカリヴァーンを構える。

だがその剣を俺に向けて振り下ろしてきたのは里の人々ではなくライナスだった。そのライナスの行動に俺だけでなく他の人も動揺を隠せなかった。俺はこの状況を理解することが出来なかったが、とりあえず俺と敵対するつもりなら俺も黙ってはいられなかった。俺は、エクスカリヴァーンを振り上げてその一撃を放ったが、その瞬間俺は信じられないものを見たのである。

それは俺が全力を込めて放った一撃である。エクスカリヴァーンをただ振るうだけでこの辺りに存在する建物を全て吹き飛ばす威力があるはずだが、それを受け止めたのは俺の渾身の一撃を受け止めることが出来たのはライナスであった。俺のエクスカリヴァーンがライナスに届くことはなく、逆にその刀身を掴み俺の動きを止めようとしたのだ。その結果、俺は剣を動かすことができなくなりそのままライナスにエクスカリヴァーンを叩きつけられることになった。

「お前、なぜ私の攻撃を受け止めた。今の私にはそれを防ぐ手立てはなかったはず」

「そうだね。君がもし本気だったら僕の負けだったかもしれないけど。僕は今のあなたの力を試してみたくてわざと受けさせてもらったんだ。でもその必要は無かったようだね。でもあなたは素晴らしい。この僕でもあの一撃を止めるのは一苦労するほどだったよ。君はもっと強くなれる。この世界では限界を超えられる。今のあなたには力の限界があると思う。しかし、いつかはその壁すらも乗り越えることが出来るはずなんだ」

俺の攻撃を防いでみせた男の名はバルバロッサと言う。バルバロッサはこの里の守護騎士をしており実力のある人間だ。バルバロッサも魔人に騙されていたらしく俺と魔人がこの里にやってきたときに俺のことを襲うように指示されたらしい。俺もその話を聞いてその魔人を倒さなければならないと思っていたのである。そしてバルバロッサの言葉が俺の耳に入ってきた。俺はその言葉を聞いていたが正直言って意味が分からなかった。

確かに俺にはあるはずの能力に制限が存在しているような気がしていた。その理由としては自分の力が制限されているのは分かっていたがそれはある特定の能力に限定されているのだ。しかし俺が制限されていないと思って使っていた能力はどう考えても異常なものだったのだ。俺のステータス画面を見てみるとその数値は他の人間よりも遥かに高い。この世界に存在するほとんどの能力値は100が上限だが、俺の能力はそれ以上なのだ。

そのことを考えた結果俺はある一つの可能性を考えていた。そしてその可能性が合っているかどうかを確認する必要があると思ったので俺は魔装を展開させたのである。俺のその行動を見ていたライナスは何をするつもりなのか尋ねてきたが、俺は自分の考えが正しいかを試したいので魔獣と魔人が現れる前の場所まで戻ると伝えて俺はそこに向かって走り出した。俺の後を追いかけるようにライナスとバルバロッサは付いてきてくれるようで二人は一緒に魔獣が現れた現場に戻る。

だがその前に俺は魔獣と戦った時の感覚をもう一度思い出していた。その時の俺はなぜか体がいつもより軽いことに俺は気づき、そして自分が本来持っている以上の力で戦うことができたのであった。そのことを思い出したことで俺は俺の予想が的外れではなかったということが確信できた。そして俺は魔獣を倒した時と同じように魔獣が現れそうな場所に結界を張ったのである。だが今回は前回のように魔獣が出現するまでに時間がかかることはなかった。

だが俺はこの空間内にいる魔獣をすべて倒してしまうと再び魔人が出てくる可能性もあると考えたので俺はこの里の中で一番強い人間が魔人と戦っていた広場に向かった。

そしてそこには俺の見知った人間が一人存在していたのでその人物が誰なのか確認すると俺は心底驚き、まさかこのような場所で会えるとは思ってもいなかった人物であったからだ。

(まさか、ここでお前に出会うことになるとはな)

「そう言えば、俺がまだこの世界にやって来てから初めてあった人間は確か貴様のようなやつだったな。俺様の名前を忘れてしまったのか? この薄情者め。俺の名前はスレイマン。今は魔王をしている。まさかこんなところで貴様と再会することになるとはな」

「やっぱり生きていたのか。お前をどうやって殺したか忘れていたぜ。でもまさか、またこの世界で出会っちまうなんて。俺とお前は運命で結ばれているのか?」

「ふざけたことをぬかすなよ。この俺があんな雑魚どもに遅れを取ると思っているのか。貴様に殺されてからというもの俺は常に鍛え上げてきたんだ。だからもう昔の俺とは違うということを証明してやるぞ!」その言葉と同時に、俺がこの世界に召喚された時にこの里にいた勇者の少年の体を奪い取ってこの世界に戻ってきた魔王は、この里にいる魔人と同じ姿になりそしてその姿が俺の記憶の中に存在したものとは違ったものに変貌した。そして俺の目の前に現れたのは先程戦った魔獣の姿に似た存在であった。しかしその容姿は先程の魔獣とは違いどこか女性らしさを感じさせていたのであった。そうまるでこの女性は元々魔人だったかのように俺は感じたのだった。その変化に俺は戸惑っていると、いつの間にかこの場に戻って来ていたバルバロッサとその仲間達が戦闘態勢に入っていることに気づく。

その戦闘に介入する前に俺はバルバロッサに一つ確認をすることにした。そのバルバロッサは魔人から里の人々を守るために魔獣に立ち向かったところ突然魔獣が消えたことで驚いていたところに突然魔獣と似た存在である俺がこの場に姿を現したことで俺を敵と判断したらしく、この場に来たらしい。そのことに関しては納得がいく。なぜなら魔獣は倒したがその魔獣から出てきた謎の魔人が俺達の前に現れたのである。それでこの場で戦おうとしたバルバロッサの考えは非常に理に適っており、正しい行動をとっていると言えるだろう。だが俺は、今この里の人達を守らなければならない状況にあるが、この魔人の実力がわからない状態で、この人数で戦いを挑むのは無謀すぎると判断し、俺は自分の力を封印しその分を魔人の強さがどれくらいなのかを見極めていこうとしたのである。その結果、この魔人の強さは魔人である魔人の方が上だということを理解し、俺は今の状態でこの魔人の相手は無理だと感じたのでこの魔人を倒すことは一旦諦めることにした。

それからしばらく俺はバルバロッサと会話をしていた。するとその間に魔人の方は、何かを仕掛けてくる気配が一切なかったので、バルバロッサが何か攻撃を仕掛けようとするのを俺は静止した。そして俺がバルバロッサの話を途中で遮り俺の考えていたことを伝える。

まず俺は、目の前にいる女性が本当にあの魔人であったのかということがどうしても信じられず俺の勘違いではないのかと考え、一度確かめてみたいのであると告げる。するとその女性は自分が本当の自分だと訴えかけたがそれでもまだ俺にとっては信じられない出来事であり、そこでこの里にいるライナス達に魔人と戦ってもらうことにする。

俺はライナス達がこの魔人と戦う姿をじっくりと見たかった。そこで俺は魔人がこの世界に来る前の世界では魔人と共に行動していたことを伝えた。それだけではなく俺はその世界でこの世界で言う冒険者と呼ばれる存在でもあったことも伝えたのであった。そしてその説明を終えた俺の話を聞いたライナスとバルバロッサがこの世界に来てからの今までの行動について質問してきたのである。なので俺は包み隠さずに話していくと、どうやらライナスはこの世界のことについてある程度は知っているようで、俺はこの世界の住人がどのような生活を送っていたのかわからなかったのである。だが俺の思っていたとおり、この里には多くの子供達がいたので、俺はその里の人間を守りながら、里の人々には俺達の事情を説明し魔人が里の人々を襲わないように説得をしてもらった。そしてその話を終えるのに時間がかかったが、ライナスとバルバロッサには里の外の状況についても詳しく聞くことが出来た。そして俺はその話の内容に耳を傾けながら里の人々がこの広場から離れないように見張りを行いながらも俺はライナスの話を黙って聞いていた。ライナスもバルバロッサもとても冷静な判断ができる人たちであったので特に心配するようなことは無かった。

そのあとは俺がなぜこの異世界にやって来たのかを話し始めた。俺が自分の意思とは関係なくこの世界にやってきたことを告げたら二人共驚いた表情を見せたが、俺はライナスに自分が元の世界でも異界の英雄だったことやその異界の英傑たちが召喚される原因となった元凶である女神のことを俺の知る限りでライナスに伝えようとしたらどうやらそれは、この世界の住民にも伝えられているらしく、俺の話を信じてくれたのだ。だがその事実を知らない人間には当然のことではあるが俺がライナスに伝えた内容が理解できるわけがなく俺達はライナスの説明を受けてようやく納得してくれた。しかしバルバロッサは俺のことを警戒し続けていた。俺はバルバロッサのその気持ちはよくわかるのでバルバロッサを安心させるために俺は、魔人と戦うための力を完全に封印していることを告げる。

しかしバルバロッサはまだ完全に警戒心を解いてくれないのでバルバロッサが俺の言葉を信じてくれなかった理由も俺はすぐに察することができたので、俺はバルバロッサにこの剣の実力を見せることに決めるとバルバロッサも俺がどれだけすごい剣を所持しているかは知っていたようだったのでバルバロッサもその気になれば魔人と対等以上に戦うことが可能なのだと言う事を伝え俺はその言葉の裏付けを行う。その言葉を聞いてもなお、まだ魔人に対する信頼を得ることができなかったバルバロッサであったが、ライナスが魔人に話しかけたことにより事態が急変する。魔人はなぜか自分の体を指さしながらバルバロッサの質問に答えていたのである。どうやら魔人もバルバロッサと似たようなことを考えていたようだが、どうやらこの世界ではこの魔人という存在の事を魔人と呼んでいるようなので、そのことについてバルバロッサに聞いてみたのだが、その問いに対してバルバロッサは言葉を詰まらせていたのであった。

「お前たちは、まさかこの魔人がこの世界に元々存在していた魔人だと思っていたのか?」その言葉を聞きバルバロッサが驚きをあらわにしていたが、その反応は俺にとっても予想外のものであった。そしてその言葉を聞いたバルバロッサがどうして魔人がこの里の人々に危害を加えずに里を去っていったのかその経緯をバルバロッサが俺に説明し始めたのである。だが俺は、バルバロッサの話が終わる前にその言葉を制した。なぜなら魔人の言葉が嘘かどうかを俺が確かめるためにその真偽を確認することにしたからだ。

だがその方法はすぐには思いつかなかったので、俺はバルバロッサに協力してもらうことにする。俺はまず、その方法で確かめられるかを確認するために俺は、バルバロッサにある頼みごとをするのである。その頼まれた内容は魔人の服の匂いを嗅いで欲しいというものであった。

俺はそのことをお願いした後でその願いを叶えるのかどうかバルバロッサの判断に全てを委ねてみることにしたのであった。するとバルバロッサも最初は躊躇していたものの最終的には引き受けてくれた。その理由としては俺がバルバロッサに頼んだ内容はそれほど危険度が高くないということと魔人を目の前にしてこの提案を断れるほど今のバルバロッサは精神的に強くはなかったからだ。

バルバロッサが俺の考えた方法に協力してくれることが決まり、その方法を実践することになった。その作戦の内容は単純でバルバロッサが俺がこの世界に転移させられたときに着ていた服の臭いをかぐだけである。俺の提案を渋々ながら了承してくれたバルバロッサは、俺が提案した内容を試してみることにした。

バルバロッサが俺がこの世界にやってきた時に着用していた衣服を手に取った後に魔人の方へと歩いていった。その行動はまるで魔人の正体を確かめるための行為のように思えたがバルバロッサが手に持っていたものを地面に落として魔人の顔が少し赤くなった瞬間にバルバロッサはすぐにその場を離れていった。その後俺とバルバロッサは魔人の様子を見守り続けたが魔人は何もしてこないので魔人は先程の自分の行動に関しての弁解をし始めたので俺はその弁解を遮ったのである。

その時にバルバロッサが魔人の行動に対して、俺は思わず吹き出してしまったが、それを必死に我慢していると魔人の方はバルバロッサの行動に怒りを覚えたようでバルバロッサを攻撃してきたので俺は即座に止めに入り魔人の行動を止めたのであった。俺は自分の力を抑えつつなんとか魔人の攻撃を止めることができたが魔人の攻撃を受け止めるのに手一杯になりそのまま魔人から攻撃を受けた。すると魔人から受けた攻撃をまともに食らってしまった俺はその場で気絶した。

そして意識を取り戻した俺は目を開けようとしたが瞼が重たく感じられ目が開かなかった。どうやら体中に鈍い痛みが走りどうやら俺は怪我をしているようだ。なので、体にあまり負担をかけないようにゆっくり時間をかけて瞼を開ける。だが視界がぼやけており自分の目が悪いわけではないと思う。それから少しずつ焦点を合わせてみるとどうやらバルバロッサがこちらに向かって走って来ていて、バルバロッサの顔を見ると俺は心底ほっとしたのであった。

俺は自分が今どういう状況なのかをすぐに理解することは出来ず、俺はとりあえず起き上がろうとしたが体は思うように動いてくれなかった。すると俺が目覚めたことにいち早く気がついたライナスとバルバロッサはすぐさま俺の元へ駆けつけてきてくれたのである。

ライナスは俺が目覚めて本当によかったというような安堵感の籠もった笑顔を見せていた。バルバロッサは、俺が無事だったからといって安心しきっておりバルバロッサのこんな嬉しそうな表情を見るのは初めてであったのでバルバロッサのその感情に俺は驚いていた。その次にバルバロッサから俺は一体何が起きたのかを聞くとバルバロッサとライナスから、魔人の奇襲を受けたことやその奇襲をバルバロッサ一人で対応しようとしたことが俺に伝わったのである。その話を聞いたバルバロッサの行動は間違っていなかったと思い俺はそのことについて何も口を挟むことはなかった。

ライナスに俺は今までのことを話そうと思った。その前に俺は自分の身に起こった出来事を全て思い出したのである。俺はその記憶を呼び覚ますために自分の脳に語りかけていくと徐々にその時の記憶が鮮明になってきて、自分が魔人に殺されかけていた時の光景を思い出したのである。俺は、ライナスとバルバロッサを安心させるように俺は二人の方を向いたが俺の声色に違和感を抱いたのか、バルバロッサの方はその声色が普段と異なっていることに気づいたらしく、バルバロッサは俺の方に近寄ってくるなり、俺の手を強く握りしめてきて心配そうな眼差しを俺に向けてきた。

ライナスも心配げな様子で俺のことを見てきていた。俺はそんなライナスの不安を取り除くために微笑んで見せたのだが、ライナスとバルバロッサから見ればその笑みは不気味でしかなかったようでライナスもバルバロッサ同様に、何か心配事でもあるのではないかと俺の身に起きている異変について考え始めてしまっていたのだ。だがそのことについては俺が二人に詳しく話すことはできなかったのである。なぜならその話はライナス達には関係のないことであった。俺の話はこの世界の未来についてなのだが、この世界の真実は、俺の世界にいた者達は俺と女神しか知ることはない。

俺は俺に近づいて来た魔人がいきなりライナスとバルバロッサを睨んでいたことを確認してから、そのことについて二人に尋ねてみた。俺には魔人のその行為に敵意を感じたのだ。ライナスは俺が魔人に問いかけても返答しなかったことに困惑していて、俺はどうしようかと悩んでいた。だがバルバロッサには俺が魔人に話しかけている時も魔人には言葉は届いていたはずだということを告げる。そして俺がこの里での出来事を話したら魔人は急に笑い出したのだ。それだけではなく、俺がライナスにその事実を伝えるよりも先にライナスが俺がこの里に訪れた理由に気づき俺が魔人と会話を交わしていることを悟られたのであった。そして、俺は、この場でその事実を口にしても良かったが、今はこれ以上、この場所に魔人を招き入れるわけにもいかないため俺は一旦その事実については黙っていることに決めると、この場に残っていた兵士達を広場から離れさせておくように指示を出した。

俺はこの異世界に飛ばされた経緯などをバルバロッサに伝えながら、この世界で自分の役割や目的についても伝え始めた。バルバロッサにこの世界に存在する人間たちを守るために戦うことを決意してもらいたかったので、この世界に存在している種族や魔獣などを説明していったのである。

バルバロッサは魔人の襲撃によってこの里に被害が出ていないかということも気にしていたが幸いなことに死者は誰一人も出ていなかったようだ。しかし、この村の周辺には多数の魔物が生息していたため村の住民達の何人かは怪我を負ってしまったようだ。バルバロッサは村人たちが全員生きているという事実を聞いて喜んでいた。そして、この村の近くに生息している魔獣はバルバロッサに教えてもらった通りであった。バルバロッサが俺の説明を真剣に聞いている最中にバルバロッサが俺の体を気遣ってくれていたので俺はバルバロッサの優しさを感じながら、俺は魔道書を召喚する準備を始めた。魔人がこの里を去っていく際に俺が魔剣を回収していたことを俺がバルバロッサに言うと、バルバロッサは驚いたような表情を見せていたが俺の言葉を信用して、俺の言葉通りに俺が所持していた魔道書に書かれていた魔法を行使して、バルバロッサがこの里の周辺の魔境を浄化していったのである。

魔人の方は、この魔石の中に俺がいた世界に存在していた魔人という存在が魔道具の魔核に取り込まれる前の状態に戻っているのを確認することができて満足したようである。それからバルバロッサに魔導士ギルドで購入した魔石を渡してから魔人の魔石をバルバロッサに預けることにした。だが魔人はなぜか俺の持っている武器に興味を示すので俺がその魔剣を渡すと、魔人はそれに自分の手を通して自分の体内に取り込むのであった。その光景に見ていた俺は魔人が何をしているのかわからなかったが魔人の体が淡く光るのを確認するとその光が収まるまで俺は魔人を注視していた。

すると、突然、魔人は、魔族の姿に戻り、俺は、この世界で初めて魔族の姿を見て、その魔人の外見は黒髪の長髪で赤い目が特徴の男で年齢は三十代前半ほどに見え、身長は180センチほどもあり、体つきは細身の男性であった。その男の容姿は美男子であり魔人というよりも魔王という言葉の方が似合っている気がしたのであった。

魔人となった魔人の外見的特徴は顔立ちが良く、目は切れ目になっており鋭い目付きをしていた。だがその魔人はその魔人で魔人だった。その魔人はバルバロッサを目に映すと俺のことなどどうでもいいかのようにバルバロッサの元に向かっていきバルバロッサに挨拶をしはじめたのである。魔人は自己紹介をしてから魔剣のことや俺のことをバルバロッサに伝えた後で、魔人の魔人になった時の話を俺とライナスに説明してくれたのである。魔人は、元々自分の名前を持っており、自分は元は魔人として転生したのではないらしい。そして魔人の前世は女性で、名前はラピスと言いとても美しい少女だったというのであった。その魔人の女性の時は、この国の王と恋に落ちて、二人で愛を育んだ。その魔人と国王が結ばれたことにより国は大いに栄えていたのだという。

だがある日のこと突然、その女性は死んでしまい魂が輪廻した先でこの男性として生まれ変わった。しかもその男性が実は魔人であるということが分かり魔人の記憶が戻った。だからと言って魔人が魔人であった時に得た知識などがこの世界に還元されることはなく、魔人が魔人の魔導書に書かれている内容を読むことで魔人の力を得たということである。そして魔人の話を聞く限り、魔人がこの世界のことを知らないのは仕方のないことだと思った。魔人も俺と同じような状況に置かれており魔人に記憶があるとしても、魔人が俺と全く同じ境遇にいるわけではなかったからである。魔人はまだこの世界のことや魔人以外の人間の存在すら知らなかったのである。だが魔人にこの世界のことや俺がこの世界の人間だということを伝えるのは酷な気もするが、これからは魔人は俺と行動を共にすることになりそうなので魔人に対して俺は自分の素性を明かすことにした。

すると魔人からこの国の名前を教えてもらうと、その国は『リリス』という名前だったのである。ちなみにこのリリス王国の正式名称は、『魔の楽園リリアス』だと言うのだ。俺の予想だと、その国名はこの世界を創った神から与えられた名前なのだろうと思う。俺の予想通り、魔人からこの世界の本当の姿について聞いた俺とバルバロッサはとても衝撃を受けた。それはこの世界の成り立ちや仕組みなどは大雑把ではあるが理解することができた。

つまりこの世界のこの星ではこの宇宙の中心となっているのがこの世界の外にある惑星のようで、そこには神々の住んでいる惑星がこの世界の宇宙空間に存在するということやこの世界には他の惑星が存在していてこの世界の他の惑星に住んでいる者もこの世界に来ることもできる。この世界には元々地球上に存在した人間の先祖達が住んでおりその人間たちは別の世界から来ているのだそうだ。俺が今までに見た夢はその世界と地球を繋ぎ合わせたようなものだったようだ。

さらに俺は魔人に詳しい話を聞くことになった。その魔人の話によると、この世界には俺が今まで戦ってきたような強さを誇る魔物が数多く存在しており、そしてこの大陸以外にもこの世界では大きな陸地があり、その大きな陸の他にも海が広がっているという。そして俺のいた世界で例えるとこの世界は巨大な丸いドーナツ状になっているようでありその丸い穴のような場所がこの世界で、この球体の中心部にその地球の人間が暮らしている星の環境に似た星が存在するのであった。

この魔人がいる大陸の名前は『アルムロス』といいそのアルムロスの中でも中心に存在しているのが魔の国と呼ばれている『バラムス公国』という国である。その国は昔から争いが絶えなく魔の楽園と呼ばれていたのは、昔にこの世界を支配した魔人の始祖である魔人の一族の末裔たちが魔人の一族と敵対関係にあったエルフたちとの戦いに敗れてこの魔の大地に追い込まれてしまい魔の民はここで暮らしてきたのだそうである。その魔の民は、この世界に存在する魔物と魔人とを交配させて強力な魔物を生み出すことによって自分たちの種族を強化していき、その技術は現在の魔王軍の中枢にも受け継がれていると言われているようだ。ただ俺とこの魔人が出会った当時の魔王軍の中枢を担っていた魔人たちはその技術は受け継いでおらず魔獣を使役することによって魔獣を操っていたのだと言っていたのである。

魔の民が、現在どのようになっているのかまでは俺は知らなかったが俺が今知っていることは、この異世界が俺がいた世界とは別の世界であり、その世界は、かつて俺の祖父が語ってくれた物語に登場するような別次元の世界に存在しており、この魔の大陸には、この世界には存在しないとされる幻の魔獣も存在していいるということだ。

そして、その幻魔と呼ばれる伝説の生き物も俺はこの魔人と出会う前に遭遇してしまったことがあったのであった。その時に俺はこの世界には存在するはずのない魔獣と遭遇したことは本当に偶然であったと言える。そして俺が初めて戦ったあの白い体毛で覆われた虎は確かに普通の個体ではなかった。そのことから俺はこの異世界には何か秘密が存在していると推測した。俺は魔人との話を終えたあとは、バルバロッサにこの村周辺の森に潜んでいると思われる謎の生命体の調査と村人たちに被害が出ている可能性があるためその調査の依頼を出してほしいと頼むと、バルバロッサはすぐに俺の願いを聞き入れてくれた。それから俺とライナスと魔人の三人だけで村の周辺の捜索に向かうことにした。

俺達は村を出発して、すぐにライナスとバルバロッサが先陣を切り俺もその二人の背中を追うようにして移動していた。すると早速俺達の前に複数の魔獣が現れ始める。その魔獣の種類はどれも俺にとっては初見であり魔人の話では魔人が俺が魔剣を召喚して倒した魔人やバルバロッサと戦っていた黒い騎士の姿の魔人がこの辺りに生息する最強の魔獣らしい。その言葉に俺は少しばかり驚いた。というのも俺の記憶が正しければこの世界に最強と呼べる魔獣は存在しないはずなのだ。だがこの魔人の言葉は真実であったようで魔人の強さがこの世界でもトップレベルであることには違いがなかった。そんなことを考えながら俺は目の前の魔人を睨みつけているとその魔人は余裕な態度を崩さずに魔剣を構える俺を見下すかのように見つめ返していた。

俺が、この世界に来た当初はここまで強い魔獣がこの世界に生息していないはずだと思ったのだが、この魔人の実力は、間違いなくこの魔人の前世でもかなりの実力者であると思われた。魔人は、その身に纏っている鎧と魔剣が放つ禍々しい魔力によって圧倒的な存在感を放っており魔剣を地面に突き刺して、両手に魔闘氣を宿して構えている状態だ。それに対して俺は右手に剣を握り締めたまま、ゆっくりと間合いを取っていった。俺と魔人の距離は、お互いの剣先が相手の体に触れるくらいの距離まで縮まっており、お互いに相手に対して攻撃を仕掛ける準備をしているのである。

俺はこの世界で自分の持つスキルに魔道の素質があることを確かめて、この世界で初めての実戦形式の稽古として俺は自分のステータスをこの魔人に向けて鑑定したのであった。するとその結果を見て、この世界に来てから驚きの連続であったがこの世界の人間は俺の持っている数値を遥かに凌駕しているということを思い知らされることになったのであった。その魔人の能力は、筋力値が5万を超え、耐久力が10億、瞬発力に至っては50京以上、魔力が100兆を超えるという規格外の存在であったのである。その魔人はこの世界で最強の存在で間違いないと俺は思ったのである。だが、それだけの能力があっても俺には勝てないだろうと思った。俺の魔道の才能ならば、おそらくこの魔人を上回ることだって可能なはずだと俺が思っていると、先に仕掛けてきたのは魔人ではなく、その攻撃は俺の頭上に放たれていた。

「なっ、まさかこの魔人はこんな芸当ができるというのか!?」俺はその光景を目の当たりにして驚いてしまったのである。なぜならばその魔法とは、魔人が放った魔弾を魔人が自分の身体の上空に移動させるように誘導したのである。しかも魔人がその魔人に誘導された魔人の魔力球の速度と大きさと軌道と威力は魔人の能力によるものだが、それを操ったのは魔人の手であるのだ。

そしてその魔人の作り出した魔法の弾丸は音速以上の速度でこちらに向かってくるのであった。しかし俺には全く焦りはなかった。その程度なら俺が使う魔刀の一撃で相殺することは造作もないことであるからだ。その自信もあって、その魔人の攻撃を俺は魔刀を横に薙ぎ払うことでその魔人の魔力の塊を斬って消滅させたのであった。それを見た魔人が一瞬だけ動揺を見せた。その隙を逃すわけもなく俺はすかさず動き出す。俺は、その体勢のまま高速移動をしてその勢いを乗せて一気に距離を詰めていったのである。そして俺の攻撃に気づいた魔人が俺を迎え撃つために再び剣を構えようとするが俺の方が速く行動を起こしていた。

俺はその体勢から、魔人が振りかざそうとした腕よりも早く、その手に持っていた魔剣を振り抜いた。そしてその魔人は俺の魔剣の一閃により上半身と下半身に分断されたのである。そして俺が、その魔人を倒した直後、突然、その切り離された体が粒子状に変化していき消滅したのであった。そしてその直後、今度は魔人に指示されていたであろう魔獣の群れがこの周辺に現れ始める。それも先ほど現れたのと同等の数の魔物たちだった。しかしその魔物たちは、先ほどの魔人に殺された仲間の敵を取るかのように一斉に襲いかかってきたのである。だが、俺にとってはそれほどの数の魔獣の集団など物量に物を言わせて向かってきたところで俺に勝つことはできないのだ。

それから俺は、次々と俺に向かって押し寄せてくる無数の魔獣たちを斬り裂き続け、その全てを討伐することに成功して魔人の元へ向かう。そして魔人の元に辿り着いた時には既に魔人は絶命していて俺がその魔人の体を一刀両断にして完全に倒すとこの場にいた魔物たちの姿は全て消失していたのである。その後、俺の後ろではバルバロッサとライナスが魔人と戦っていたようでその戦闘が終わる頃にライナスが、この魔物たちは全てバルバロッサの部下の兵士たちが相手をしていたらしくライナスの部下たちは、魔人と戦っていないというのだ。俺はそのことに驚くと同時に少しだけ安心した。いくら魔獣とはいえ、やはり仲間と戦うというのは俺には耐えられないことであったからである。その話を詳しく聞く限り魔人が現れたのは俺たちが遭遇したものだけで他にもいる可能性が高く俺の仲間に犠牲者が出る前に魔人を始末できたのはとても幸運なことだと思うことができた。そして俺は、魔人を倒してからすぐにライナスとバルバロッサと合流を果たすと、そこで俺とこの二人はこの魔の大地にあるという村へと向かうことにしたのであった。

この村の名前はアルムロスというそうだ。そして、その村に向かうまでに何度か魔獣の集団に遭遇した。ただその数は魔獣の総数に比べれば大した数ではなく俺の仲間たちはそのほとんどを倒してしまいこの大陸に生息をするほとんどの魔獣が駆逐されてしまっていそうな気配すら感じてしまうほどだったのだ。

それから数時間が経過して俺達はようやく村が見えてきたのだ。その村はアルムロスの大陸に存在する他の村の倍はある規模の大きな村で、その村に到着した時に村の中がとても騒がしくなっていたので俺達は警戒心を高めながら村へと入っていくとそこでは村人と村人と魔人が戦っていたのである。どうやら村人の人数は約300人程度いて、それに対して村人のほうの魔人の数が圧倒的に多かった。俺は魔人の数を確認してからライナスに魔獣の殲滅を頼んで、俺はこの魔人たちとの戦闘に参加しようとしたが、ライナスは村人たちの味方につくと言う。

俺が、どうしてなのかとライナスに尋ねると村人の味方につけば、魔人とは敵対する事になるが、俺達魔人側にも魔獣を倒すという使命があるのだというのであった。俺はライナスの言葉を聞き、魔人側の気持ちがなんとなくだが理解できてしまった。それは、この世界の住人ではない俺にとってはこの魔人の村人達の命を助ける事は当然だと思っているのだが、俺と同じ考えをしてくれる魔人が俺以外にも存在していることは俺を感動させてくれる出来事でもあったのである。だからこそ俺はこの村を助けてあげることに決めた。それからすぐに俺達は魔人との交戦を開始してライナスの配下たちが魔獣たちの駆除を始めると、その村の中で俺とバルバロッサが魔人に戦いを挑む。すると、魔人の男の方が、かなり強者のオーラを発していて俺はその男と相対することになる。

「おい!そこの黒騎士!お前は一体何者なんだ?」と、魔人が俺に対して聞いてくるので俺は素直に「俺か?俺は、ルチアっていうものだ。それよりもあんたが、あの魔人四天王のひとりの魔人なんだよな?」「あぁ、俺は確かに魔人だが、俺のことを知っているなんて、まさかお前、勇者かなんかなのかよ?」「いや、残念ながらそう言うわけではないんだが」と言いつつ俺はこの男の剣筋を見極めながら剣戟を繰り出していく。しかし、この魔人の剣の腕はかなりの腕前を持っていると思われる。

その剣技に俺は完全に押されており、剣撃を受け流され逆にカウンター気味に攻撃を仕掛けられてしまう。

そしてその俺の攻撃を受け流すように剣を流された後に魔人は素早く間合いを詰めて俺の腹部に強烈な蹴りを入れて吹き飛ばしてきた。そしてその勢いで地面の上を転がる俺は、地面に手をつきなんとか転倒を食い止める。その俺を見て、魔人は笑みを浮かべるのである。俺は、地面に倒れ込んだ状態からすぐさま起き上がると俺は剣を構えて魔人に対峙するが、その瞬間、魔人が一瞬で間合いを詰めてきて俺は魔剣による突きを放ってきたのである。それをギリギリのタイミングではあったが回避することに成功した。俺は魔剣による攻撃を避けられたので反撃をしてくると思ったのだろうが俺に対して攻撃を仕掛けてはこなかった。その代わりに魔人は、自分の足元に目を向ける。俺もその行動の意味を一瞬考えて魔人が視線を落としている方向を見ると、そこには小さな子供が魔人によって殺されようとしていたのである。その子供の親なのだろうか、母親が泣き叫び子供を魔人から守ろうとしているが間に合うはずもなく母親は、その子供を突き飛ばすようにして魔人から離れたがそれが仇となり魔人が持っている剣で母親の腹を引き裂かれてしまったのである。それを見た俺は思わず怒りが湧き上がり、俺は魔人に対して全力の一撃を叩き込んでやるつもりで攻撃を繰り出そうとしたその時、魔人が突然姿を消したのである。俺は慌てて辺りを見渡すと、魔人が先ほど助け出した女の子を抱きかかえて俺の方へ放り投げてきたので俺はその子供を受け止めるとその母親を治療しようとしたのである。

「お姉ちゃんありがとう」とその子が笑顔で言うのであった。

そして俺は母親と子供を避難させてからこの子の父親の方を探そうとすると、その魔人が俺の前に突然姿を現したのであった。その光景に俺は驚いたが俺は、その魔人の攻撃を避ける事に成功した。その魔人は、攻撃が外れた事を不思議に思ったような顔をしていた。おそらくその魔人は自分のスピードに自信を持っていたのであろう。そして次の攻撃に繋げようと魔人の男はまたも姿を消す。

そして再び現れた時魔人の身体が、さっきより大きくなっていたのだ。それに気づき俺が自分の身体を確認すると、俺自身もなぜか強くなっていることに気づく。俺は魔人の男が俺に何かを仕掛けようとしていることを察したので俺もそれに合わせるように動き出したのである。俺の身体強化の力が発動して身体能力が上がった状態で俺はこの場にいるすべてのものを薙ぎ払うように剣を振るう。すると、魔人の男の胴体を切断した。しかし魔人もそのままやられるわけではなく、最後の力を振り絞って強力な一撃を放ってきて、俺の顔面に向けて拳を放つ。それを受けて俺は後方に飛び退いてその攻撃をやり過ごした後、今度は俺から攻撃をしかけることにしたのだ。

「喰らえ!」と俺は叫んで一気に加速し、剣を思い切り振り抜くと剣圧が発生し、その斬激は魔人を一刀両断するのだった。魔人はその斬激により全身が真っ二つになり地面に倒れたのだった。

そしてその後俺はその女性に近づいていき、傷口が塞がるまで回復する魔法を使い続ける。その後しばらくして女性の意識が戻ったようだ。その女性は俺が誰なのかわかっていない様子だった。そこで俺が名前を告げると彼女は俺に抱きついてきて泣いてしまう。俺は、この子を優しく抱きしめてあげていたのである。その彼女の言葉を聞く限りだと、やはりその少女はこの村に住んでいる村人で名前はユリーというらしい。その村では今、村の子供たちを集めて、その少女が剣術を教えているというのだ。ただ最近はそのユリーのところに魔獣が現れるようになり村が危険な状況になっているので俺達が魔獣退治にやってきたということを説明する。それから、この村に魔人が現れて村を襲ったことや、その魔人を倒したことを話した。

それから俺達はこの村の村人たちと会話をしたのだが、魔人がいなくなり、村人たちは喜び俺たちに感謝をしていたのである。それから俺とバルバロッサとライナスの三人で魔人について話をしていた。バルバロッサとライナスは今回のこの村に現れた魔物たちについても魔人の指示によるものだろうと推測しており、魔人の村が、その魔人を失ったために魔獣たちを召喚することができなくなったのではないかという話をし始めていた。その話を聞いて俺もこの魔人の村にいた村人たちも納得している。そしてこの魔人の村には他にも同じような規模の村が存在していてその村にも、この村と同様に魔人の四天王の一人である魔人がいてその人物がこの大陸にある魔獣をすべて従えているのではないかと考えているようだった。

そのバルバロッサの考えにこの村の村人たちも同意していたので間違いないだろうと思い俺達は、他の魔人の村も同じように襲っている可能性を考えることにしたのである。

この魔人の村アルムロスは大陸の真ん中に位置していてこの大陸の中央付近に存在する魔獣を討伐すれば大陸中に広がっている魔獣を殲滅することが出来ると考えた。ただ俺の仲間たちにそんなことは無理だろうと思って俺はとりあえず魔獣がいるかもしれない場所を調べてから行動することに決めたのである。それから俺達は村の人々に別れを告げて、俺達は一旦城に戻る事にした。その道中で魔人と戦ったことに関してライナスの部下たちに質問されたがライナスが魔人と戦闘になったことを説明したら皆が驚きの声を上げた。特にバルバロッサとルッズはその魔人との戦いに参加してみたいとライナスに言い始めるのである。バルバロッサに関しては自分の部下とライナスと一緒に行動したいという事でライナスに許可を求めていたのであった。俺はライナスに相談した結果この二人を仲間にする事を決めてくれたので俺はこの二人の仲間入りを許可した。

そして俺達は無事に城へと到着することができたのであった。俺達は城の中に入ると俺が王様に挨拶をしに行きたいと告げるとライナスたちは別室に移動するように指示されたので俺は一人で玉座の間へと向かったのである。

俺は王座に座り俺のことを見下ろしている王様に挨拶をする。そして俺とライナスが一緒にこの魔導帝国に訪れていることと、俺達の目的は、魔族の国の魔王を倒すという目的があるということをライナスと共に説明する。

その説明を聞いた魔王の配下と思われる魔獣が最近、魔獣を使役しながら俺達を襲撃してきていたことを話したら、どうやら、魔王側の動きが活発になってきたのが最近のことでそれから俺達の魔獣が襲ってくる頻度が増えてきていて困っていたというのである。なので俺はそのことを聞いて、俺が、魔人と戦闘したことを報告する。

その報告を受けた国王が驚いていたのだが、その戦闘した魔人というのは、魔剣を持つ人間だということで、しかも魔剣を所持できるということは、かなりの実力を兼ね備えていると考えられると言う事なのだ。そのことから俺は、もしかしたらこの大陸中を探せばほかにも同じ様な魔人が存在しているのではないかと考えたのである。その事については俺が調べてみると伝えたところ、その話はひとまず保留にしてこれからの対策を考えたほうがいいのではないだろうかと言ってきた。確かにその通りだと考えたので俺は王様の申し出を受け入れ、魔人の捜索と、俺が魔族を倒しにこの国を離れることを承諾してもらって、その日は解散することにしたのである。

翌日から俺のほうで、この国の兵士たちの訓練に参加することになった。兵士達の強さを確認するために俺は訓練に参加している兵士全員と戦うことにする。俺が、魔装を呼び出し装着すると、周りの兵士の者たちから驚きと恐怖の感情が漏れ出すのを感じ取った。俺は少し戸惑ったがすぐに気持ちを持ち直して、兵士達と剣戟を繰り広げていく。その中で、俺は何人かの兵士を相手にした時違和感を覚えることになる。その数人の兵士が異常なまでに強かったのだ。おそらく、魔剣を所持した魔人である可能性が高かった。

そう考えているうちに俺は魔人と戦っている最中であることに気がつき魔剣に力を込めたのである。そうすることでその兵士たちの攻撃を弾き飛ばすことに成功すると、俺は、剣を振り抜いて反撃を行い、その魔剣を持っている男の腕を斬り落とすことに成功した。俺は腕を切り落とされたことに驚愕の表情を浮かべるその男に、止めを刺す前になぜこんな事をしたのか問い質したところ、どうやら彼は、俺を殺すように言われていたらしくその指示に従って俺に攻撃を仕掛けてきたらしい。しかし俺もこのままでは終われなかったので、そいつの頭を掴んで壁に叩きつける。その衝撃で頭を打ち付けて男は絶命するのであった。その男は間違いなく魔人であったのだが俺は彼が持っていた魔剣を回収して自分の懐の中にしまったのである。それから俺は、魔人との戦闘を何度か繰り返す中でその強さに俺は段々と疑問を抱くようになる。

俺は自分が強いと思っていたがそれでも、この世界の中ではそこまで強くはないのではないかと思うようになってきていて俺は自分の力を過信しないようになったのだ。そしてそれから数日の間に、俺がこの城に訪れてから数週間の時が流れようとしていた。その間に、俺に魔人の情報を持ってきたり俺に魔人のことについて聞きに来る魔人たちがこの国に押し寄せていたのである。俺は魔人について詳しく知らないと答えた。だが俺が本当に何も知らなかったわけでは無く俺はある一つの仮説を立てていたのだ。

俺が立てたこの仮説というのが、実は魔人は元々俺と同じ世界の出身で魔人になってしまったのではないかということである。俺の予想が正しければ俺は、魔人になれるということだ。ただ俺は自分から魔人になろうとは思わないが、魔人が魔人になった理由に俺は、もしかするとこの世界の理から外れた存在だから、それが原因で魔人になることができるのではないかという事である。

この俺が出した仮説が当たっていれば俺はもしかすると、元の世界に戻れるのではないかという考えに至るのであった。それから俺は俺自身の事だけではなくて俺以外の異世界人の情報を集めることにした。そこで分かったことが、この魔人の国に訪れたことのある人間は俺以外にもいるということだ。その人間は俺とは違って最初からこの世界で生まれてこの世界で暮らしている人間のようであるが俺と同じように突然この世界に飛ばされたようで、その男は、元の世界に戻ったことはないと言っていたのだ。俺はこの話を聞いて少し安心する。というのももし俺のようにこの世界で生まれていなかった場合は元の世界に帰ることが出来ない可能性があったからである。俺もその可能性が否定できなかったので不安を覚えずにはいられなかった。

それともう一つ、俺にはわからない事があるそれはこの国の王様についてである。この国の王様が、俺に何を聞きたいと思っているのか全く想像がつかなかった。俺に一体何を尋ねようとしているのかが、俺はどうしても気になっていたのである。そこで俺は一度この城を離れて城下町のほうに向かうことにしたのである。俺は城を後にし、城の周りに広がる草原を抜けて街にたどり着く。俺はその街の景色を眺めていたのである。

それから俺はしばらく街中を見て回ることにしたのだ。その街並みはまさに中世のヨーロッパのようだった。それから俺は街の人々に色々話しかけてみた。そして、俺はこの世界の常識的なことを知ることが出来たのだ。この魔導帝国の国は、どうやら俺の住んでいた地球の中世時代とあまり変わらない文化をしているような感じがしていた。この世界の人達はこの国に住んでいる人たちは皆この国で生まれた人たちでは無いということが分かり、この国がどういう場所なのかという事がなんとなくわかってきたのである。そして俺はこの魔人について知りたかったことのほとんどを理解することができ、俺はその答えを知るために城に戻り国王の元へと向かうことにしたのであった。

それからしばらくして城の扉の前に辿り着いた俺は国王がいる部屋に入るために門番に用件を伝えて許可が出るまで待つことにしたのである。そして数分後その許可がおりて俺の入室は許されたのであった。そして俺は王様が居る王座に向かって歩みを進めていくとそこには一人の男が座っていた。俺はその男を見下ろしながら王の元へ近づいていくと、その王様は、俺の顔を見た途端、なぜか驚いた顔をしていて、そして俺は王様の隣に座っていた男性にも見覚えがあったのである。その人物の名前は確か魔王の娘の父親で俺に最初に襲いかかってきて俺を殺そうとした男であった。俺はその男と目が合うとその男は急に立ち上がって俺の元に近寄ってきて殴りかかってくるので、俺は反射的に彼の攻撃を受け止めるのと同時に彼に対して蹴りを放つとあっさりその男性は吹き飛び気絶してしまう。俺は王様の方を見ると思いのほか驚いていない様子だったので俺が何をしたのか察しがついたようだ。俺は倒れている男の体を起こして、俺が彼を殴ろうとした瞬間の出来事を説明すると彼は少し呆れたように溜息をついて、まあ、気にしないでいいと言ってきて俺はその場を離れようとしたが、俺の後ろをついてくる人がいるので振り返るとライナスが何故か俺の後を追って来たのだ。俺はライナスを城の中に入れてもらえるよう王様に頼むと、その王様は了承してくれたのである。

俺達は謁見の間を抜け、廊下を通って中庭に出る。俺はそこでこの魔導帝国の事をライナスから説明を受けることになった。魔導帝国が大陸の中でも屈指の強大国である理由を教えてくれたのである。この魔導帝国があるこの国は、もともと別の国として存在していた。しかしある時魔導帝国に魔物が現れ始めたという。最初はそれほど被害も出なかったその事件は、だんだんとその規模を大きくして行き最終的にはこの大陸の半分の魔獣たちが、この国に押しかけて来て、その魔獣たちは、国中に存在する人間たちを食い殺していきやがて魔獣によって国は滅ぶところまで追い詰められたらしい。

しかしその状況が一変することになる。この魔導王国にある魔王軍の幹部が、魔獣を操る力を手に入れることに成功する。それにより、魔獣を操りながら人間を殺し始めていったのだ。それに対抗すべく他の国々でも魔族に対抗しうる力を手に入れたものが、次々と現れ始めるがそれでも状況は良くならずに、結局、全ての国は壊滅状態になり魔族の天下が訪れているこの国にこの国の王がたどり着いたという話だ。

俺は、その話を聞いてこの魔族がこの国にいるのはそういう理由だったのかと理解する。その時にライナスに質問をすることにする。なぜこの国の人々はそんな魔族に対抗するための戦力を持っていながらも、この国は未だにこの大陸でトップクラスに強いと言われているのかという疑問を投げかけたのだ。すると彼は俺に、魔族に対抗する手段はあると答えてくれるのだがそれがなんなのかまでは教えてくれなかったので俺も諦めることにする。そしてそれから俺はこの国から出る準備を始めたのである。それから俺は王様のところに挨拶をしに行き、別れの挨拶を交わす。それから俺はすぐにこの街を離れることに決めた。理由はこの国にとどまるメリットが無くなってしまったからである。俺の目的の達成には、この国に留まるだけではだめだと思い、俺はこの魔導帝国から旅立つ決意をしたのである。

そして俺は今この国の出入り口にやってきていた。その周りには多くの兵士が武装をしたまま待機しており、その中にはルチの姿もある。俺達二人も魔剣を所持しているがその剣には鞘に納めたままでいる。これはいざとなった時以外は剣を抜きたくなかったからだ。その兵士たちの中には王様やあの時の兵士もいる。「まさか本当にお主を一人で行かせることになるとはのう」

と王は申し訳なさそうに言ってくれたが俺は大丈夫だと答えると 俺達はこれから魔人の国に行くため国境を超えなければならないのだ。だがこの人数を引き連れていては難しいと思い俺は一人だけでも問題ないというと、兵士達が引き下がろうとしてくれず俺は困っているとそこに、俺が助けようとした女性が現れる。

彼女は魔剣を手に持ってこちらにやってくるのである。俺の目の前にやってきた彼女の表情はとても悲痛なものでその瞳からは涙が流れていてその表情を見て俺は彼女が泣いていることを疑問に思うが、その理由を俺はすぐに知ることになる。彼女の背後に魔人が突如現れるとその男は剣を振りかぶって攻撃を仕掛けてきたのである。俺はその攻撃を避けようと試みるが、俺は突然の事で判断が遅れてしまい避けることが出来なくなり剣を振り下ろした魔人の剣が俺の腹部を斬りつける。その剣は俺の腹部を深々と斬りつけていて俺は血を吹き出し、そのまま意識を失ってしまう。最後に見たものは、俺の名前を呼ぶ人々の顔でありそして次に俺の視界に入ったのが魔人が、この国の人々を虐殺している姿であった。その魔人を倒すべくこの場にいた兵士達は一斉に攻撃を仕掛けたが多勢に無勢の状態でその魔人は倒され、俺はその場で命を落としてしまう。

だがその瞬間俺の心は、誰かの思念が入り込んできた。俺の心の中に何かが入ってくる感覚がすると俺の中で、ある声が聞こえてくる。

《スキル:死人の蘇生》発動しました。

これにより死者蘇生の効果が発動します。ただし対象者が存在しません。

ですがこの者の記憶を引き継ぎ新たな生を与えることが可能。この者の記憶を引き継いだ新たな生命を生み出すことを望みますか?YES/NO

(ん、なんだ。なんか知らない間にとんでもない事が起きていた気がする。)

Yesを選択することで、記憶を引き継ぐことが可能な状態で、新しい俺が誕生するということになるようだ。ただ俺は少し考え込むとやはり俺のままでいたいと考えてしまったので俺は俺のまま生きていくことにしたのだ。俺が目を覚ましたときには、俺はベッドの上に寝かせられており俺の隣で心配そうな表情を浮かべたリリアナがいた。

それから俺が起きたことに安心したのか涙を流していた。その光景を見て俺は俺のことを心から想ってくれている人がいるという事に嬉しさを感じるがそれと同時に俺の為にそこまでしてくれるこの少女に対して感謝する気持ちも強くなったのである。

そしてそれから少ししてから俺の部屋に入ってきたルチアは少しだけ気恥ずかしい感じではあったが笑顔を見せて、「もう、あんな危険なことはやめてくださいね」と言ってきてくれたのである。それから俺はその日一日休むように言われて、俺はその通りに休んでいた。

翌日になって俺は自分の体の変化に気づく。まず、俺は体が軽くなったのを感じた。今までよりもさらに早く動けるように感じられたのである。その事から、俺は以前よりもこの体のポテンシャルが高まっているのかもしれないと感じたのだ。それに身体能力が向上したおかげで、以前の俺ならおそらく勝てなかっただろうライナスとも対等以上に渡り合えるようになったし、魔獣にも簡単に勝てるくらいに強くなっていたし魔導師と戦ってみてもほとんど負けないくらいにまで強くなっているのを実感していたのである。俺がそんな事を考えていると部屋の扉が開いてそこからリリアナと王様が一緒に入ってくると王様は俺に向かってこんな提案をしてくる。

「お前さんに少しばかり聞きたいことがあってのぅ、少しわしと付き合ってくれないか?」と言われ、特に断るような理由もなかった俺はその王様の提案を受け入れることにしたのであった。それから王様の後に付いて行くと、王様が俺についてきて欲しかったのはどうやら訓練所のような場所で、そこで俺にこの国では一番強い剣士と勝負をして欲しいと言ってきたのだ。その人物と俺に戦わせてその勝敗により俺の強さを確認したいということだったらしい。そして俺はその相手と戦うことになってしまった。その人物はライナスと言う男である。その男は俺と一通り手合わせを終えるとこう言い放つ。俺が勇者に負けたとき、ライナスがその相手をするのは、この私なのだと言い出したのである。どうやらこの国の人たちは魔王軍に対抗できる存在を育て上げなければと躍起になっていたらしいのだ。

ライナスが言うには俺が勇者より強ければその強さを認めさせて、俺の力を貸してほしいということと、もし、魔王軍をどうにかしたとして俺がこのまま旅を続ければ、俺と一緒に旅をしてみないかといってくれた。俺は少し考えてみることにすると王様に呼ばれていたことを思い出す。その話を一度断るとライナスがこの国に残るのは少し待ってほしいと俺に伝えてくる。その理由がどうやら魔獣の動きに変化があったようなのだ。それを確認したいと王様が言っていたらしく俺にもその情報を伝えにわざわざここまで足を運んで来てくれたのだというのだ。だから俺達は少しこの魔獣が動き回る前に少しでも情報を集めようということになり俺達二人で、魔の森へ向かうことになった。

俺とライナスはその足でこの魔導帝国の門を潜り抜けてから魔の森へ向かって歩き出す。俺はその道中にライナスから、魔族がどうしてこの国を攻め落とそうとしなかったのかという話を聞いて、その疑問を解消したところ魔族の国はここの魔族と違ってあまり魔人族に対して協力的ではなかったようでその証拠として俺に魔族からの攻撃は無かったのだと言ってくる。

それからしばらく歩いているうちに、俺は魔獣に何度か遭遇してしまう。俺はそれらを魔剣を使い難なく倒しながら進んで行った。それから森に入り込んだ俺達の前に一人の人間が現れると俺達の道を塞ぐように立ち止まると俺達に襲いかかってきたのだ。俺とライナスは魔獣と戦いつつ、俺達が倒した敵の死体はその場に残したままその場を駆け抜けたのであった。そして森の中を進み続けているとその先に大きな広場がある場所に出ると、そこに一人の人物が現れる。その者は剣を手に持って戦闘準備をしている様子だったので俺たちも武器を構えたのだがその男は俺達に敵意はないと言い、戦いを止めると俺に質問を投げかけてきたのである。

「君はなぜこの国に一人で乗り込んで来たのだ」

「あなたこそ一体誰なんですか?それに何でこの国に僕以外の人間が」そう言って俺は警戒して、いつでもこの男を殺す準備を整えようとしていた。なぜなら目の前の男は普通の人間には見えず俺は、こいつが何者か分からなかったが、俺が魔族ではないかという疑惑を抱いていたからだ。俺のその問いかけに対して目の前の男は自分がこの国の王様だと答える。

その答えを聞いた俺だったが信用できないと思った俺は攻撃をしかけるために行動を起こしたが、その瞬間俺は、なぜか急に体の自由を奪われてしまい全く動かせなくなってしまったのである。それからその男は、俺にこんな事を仕掛けてきたのである。それは催眠魔法の類の物でその術にかけられた人間は意識が薄れていくと同時に眠りにつき意識を失うのだが俺の場合その状態が継続してしまい眠ってしまう事は無くなってしまったのだが、それでも体には一切力を入れられなかったのである。俺が意識を失わないままこの魔族が仕掛けた攻撃を受けていると突然俺達の前に現れたのは、魔獣使いの男であった。その男は俺を見るなり俺を捕らえろと命じると俺の腕にその魔獣のブレスで焼き付けをされてしまう。俺の体は焼け爛れていく中で俺は何とかその痛みを我慢しようと試みる。そして俺が気を失いそうになるたびに俺は魔族に魔法をかけられて気絶することを許されずにずっと激痛に耐えていた。だが俺はその時にある事に気づく。

俺を操っている魔族は魔剣を握り締めてそれを、こちらに向けて攻撃を仕掛けてきていた。

「お前にこの私が倒せると思っているならやってみるがいい」そういって彼は剣を振り下ろしてくると俺に向かって剣撃を叩きこんでいく。俺は、その攻撃を防ぐ事も避けることも出来なかったが彼の剣は俺を貫くことはなかった。俺に攻撃を加えた剣は彼の剣によって受け止められてしまっていたのだ。その瞬間俺は体を自由に動かすことが出来たため俺はすぐにその剣を弾いて反撃に出た。俺の攻撃は魔剣の刃を切り裂くとそのままその剣を持っていた魔族の右腕を切り落とす。すると俺を拘束しようとしていた魔法が解除される。どうやら俺の体に傷を付けたり、殺してしまった場合、それが解かれるようになっているようだ。

それから俺はすぐに魔族を殺そうとしたが俺の背後には先程俺を縛った奴が現れていてそいつの拳が襲い掛かってくる。どうやらこの二人の連携はかなり良いようであり俺は咄嵯の判断にてその攻撃を防いで見せた。そして二人を相手にしている時俺は背後に現れたもう一人の魔族の気配を感じ取り俺は魔族からの奇襲を受けるが俺はその一撃を回避して見せる。

その一撃を受け流しつつ俺は地面に着地すると即座にその二人の首を切断しようと動くと俺は突然、後ろから来た強烈な衝撃を受けて俺は吹き飛ばされてしまう。

「ほう、まだ生きていたとは」と魔族が俺を見ながら感心している。それから俺が立ち上がろうとすると俺が受けてしまったダメージを魔剣が肩代わりしてくれたようだ。そのおかげで、なんとか俺はまだ戦えそうだ。俺が立ち上がったところで魔剣にこんな言葉が聞こえたのだ。

(どうする。我の力を使うのか?)俺は一瞬どうしようかと迷ったが今は使うことにした。そして俺は俺の手に握られていたはずの剣を見て俺はその光景に驚いた。

どうやら俺の持っている魔剣は刀身が少し変わっていたのだ。その見た目は完全に西洋の片手用のロングソードなのだが柄の部分だけ日本刀の形になっているのだった。その剣に俺は驚きつつも俺はその能力について確かめるためにも俺はその魔剣に力を解放するように命令する。

その魔剣の能力は使用者に身体能力の向上と、身体能力を向上させる代わりに五分間しか使用できないが攻撃力を大幅に向上させてくれるというものだったのだ。その能力を使ったことで俺は、さらに強くなった。その事を確認するように再び戦闘を開始したが今度は相手の方が上手であった。相手は二人同時にかかってくるのでかなり手こずる状況になってしまった。俺は、相手を倒すことに精一杯になってしまい自分の体がどれだけ疲弊していたかを知らなかったのだ。俺は疲労の限界に達し、倒れてしまおうとすると俺はその隙をついてしまったのかそのタイミングで二人が俺に飛びかかってきて俺は完全にその攻撃を貰い俺はその場に倒れた。そして、俺の視界にあの魔獣使いと魔族が映る。そして彼らは俺の方へ近寄ってきたのである。俺の体がボロボロになっており、俺はその状態で意識を失ってしまった。

そして目が覚めると俺の隣にルチアが寝ていたのである。

その事に俺は驚き俺は彼女を起こし事情を聞こうとすると彼女はこんなことを口にした。

「お主がなかなか戻ってこないから、妾は心配になって探しに行ったのじゃ、それで見つけたと思ったらこの様で、お主は瀕死の状態になっていたから急いで回復魔法をかけながらここまで連れてきたのじゃよ。そのおかげでお主は今、動けるようになったがもう少し遅かったら危なかったぞ」とルチアは言ってくれる。その彼女の発言に俺は、少し恥ずかしさを覚えて俺は顔を赤らめていると俺に魔剣がこう話しかけてきたのである。

(ふむ、まさかあそこまでやられるとは思っておらなんだ。だが、これでわかったであろう、あやつらの実力は)

確かにこの魔剣が言う通りだと俺は思った。俺と魔剣が二人で戦ってもおそらくこの魔族達二人は倒せないと感じるほどの強者であったのだ。俺はそんなことを考えながら、ルチアが作ってくれた朝食を食べる。それから、俺は彼女にこれから魔の森へ向かうと伝えると俺の言葉を聞いて彼女は俺の体に異変が起きていることを察知したのか少し休んだ方がいいのではないかと俺に言うが俺がこのまま森へ行くと聞き入れないでいるとルッチも同行を願い出てきたのだ。その申し出に俺は快く了承したのであった。そして俺達は準備を整えた後で俺達は魔の森へ向かうために、森の近くにある村に向かうのである。

魔導帝国を出てから数時間が経過していた俺達は目的の村の近くの村に到着することができた。俺達が村に足を踏み入れたとき、その村はどうやら、魔獣の襲撃を受けていたようで魔獣の姿も見受けられた。その魔獣の数はどうやら五十体以上存在しているらしく村人達は怯えており中には腰が抜けてしまっている人もいた。俺が助けなければと思い行動を起こす前に一人の人物が動き出す。

それは魔族で、彼は魔獣達に襲いかかっていく。その姿はどう見ても人間のものではなく、俺は彼が本当に魔族であることを認識すると俺は彼に加勢するために魔剣を振るう。俺と魔族でその五十体の魔獣達を倒してみせた。すると村人の一人がその俺たちに感謝をしてくるが俺達は礼などは求めておらず魔獣を討伐した後は直ぐに森へ向かって出発することにしたのだ。

だが俺達のその行動は、一人の人物によって邪魔されることになる。それは一人の魔族で、俺達に襲い掛かってきたのである。そして俺達に襲いかかってきたその男は先ほど戦った男とは別の人物であった。どうやら魔獣を操る力を持っているらしく俺達と戦闘を開始する。それから俺は戦闘を開始しようとした時に魔剣に話しかける。その魔剣の名前は俺が名前をつけると伝え、その名前を伝えようと俺が口を開いた時だ。

その瞬間、魔剣が輝き出しその光が収まるとその光の中から一振りの剣が現れる。俺はそれに驚くが、どうやらその剣には名前がつけられていた。その剣の能力は、所有者に自動で修復と成長という能力を付加してくれているのでその能力のおかげもあって俺の体は自動的に傷が塞がり始めてくれた。それを見た、ルチは驚愕の表情を見せていたが、俺自身はその現象については何も驚いてはいなかった。

それから俺達が、その男の相手をしている間に逃げてくれてもいいと伝えたのだが、どうやらその男性は、そのつもりは無いようであり魔剣の剣撃が男に迫ると俺は剣に攻撃を中断するように命を下す。すると剣の動きが止まってしまったので俺はどうやら男が魔族だという事を理解するのと同時にその攻撃を俺自身で防いでみせると俺はその男に対して質問を行うことにする。なぜ、こんな事を起こしたのかを、その理由は男は、この世界に存在する神について、この世界に魔王が誕生した時に現れた謎の存在であり魔族の天敵であるということを聞き出したいらしいのだが俺は知らないと答えると俺は戦闘を開始しようとするがその時だ魔族の男は奇妙な行動をとり始めたのである。男は、何かの呪文を唱え始めてそれを止めた時彼の腕からは黒い煙が発生していたのだそしてそれと同時に彼は自分の胸に手を当てると胸から心臓を取り出すとそれを取り出したのである。

彼は心臓を持ちながらこちらに向けて投げ飛ばしてくると俺はそれをかわして見せて心臓を受け止めることに成功するのだが彼はまだ諦めていない様子で俺に攻撃を仕掛けてきていてそれに対して応戦しようとするとそこで、俺に攻撃を仕掛けていたはずの男の背後に誰かが現れたのであったのだ。俺が背後に視線を向けるとそこには俺と似たような鎧に身を包んでいる女の騎士がおりそしてそいつは男を拘束しその男の首を切り落として殺してしまったのだ。

その出来事に驚きつつも、彼女がこの襲撃の犯人の仲間なのではないかと思うがそうではないようであった。しかし彼女の仲間は、彼女によって殺されてしまいもうこの場にはいなかったのだ。そのことを考えると彼女をここで逃してしまうのは非常に危険ではないかと感じてしまう。なぜならばその騎士の正体が全く分からないのだ。だからといって下手に戦いを挑むこともできない状況なので俺はその女性に事情を説明することにしたのであった。

それから俺の話を聞いた彼女は俺に協力を申し出た。俺の事を救世主と言ってくれたのだ、その言葉に俺が少し感動しながら俺は、彼女に名前を教えてくれるようにお願いすると彼女は自己紹介を始めてくれた。名前はラリアと言い彼女はどうやら聖王国に仕えている聖王国の聖騎士のようであった。そして彼女は、俺に協力する代わりに魔族の国について教えてほしいと言われて俺はその頼みを受け入れることにして、そして彼女は協力してくれる条件として自分の主人と対面して話をしてほしいとのことだった。俺もそれが目的だったので了承する。俺は魔族がどんなものなのかをこの目で確かめてみたいと思っていたのである。

その後、俺はラニアさんを連れてルチアと合流しようとすると彼女は村の人達の治療をしていたのである。俺はそのことを手伝おうとするが彼女は、俺にその必要はないと、言い張って俺は治療を手伝ってもらうことにはならなかったのである。そしてルチアに事情を話した後俺とルチアとラニアの三人で森へと向かうのだった。

ルチアの案内の元俺達は森にたどり着くことができた。そこは俺達が最初に訪れた森の中とは違って、とても広大に広がっており奥まで続いているのだ、森の周囲には木が大量に生えているのだがその木の一本に実がついている。だがその実はなぜか毒々しい紫色をしており俺はそのことに驚いてしまうがその実を食べてみても特に変化は起きなかったのだ。そのため俺はとりあえず食べてみることに決めて俺は実を手に取り食べる。すると体が突然痛みだし俺はその場でうずくまり始めると俺はそのまま倒れ込んでしまう。そして俺は意識を失った。そして目が覚めるとその場所に俺達は移動しており目の前には、ルッチが寝ている姿を確認することができ俺は安堵のため息を吐く。俺はそれからすぐにルチアが近くにいないことに気づくとその場所から出ていくことにする。

それから俺は、ルチアに事情を聞くと、どうやらあの紫の実の効果は睡眠薬のようでルッチが俺を助けようとその実に近づいたところ眠りに落ちてこの場所に移動してきたとのことであった。その事実を知った俺が安心をしていると俺は突如、俺の頭に激痛が起こりそして視界にも異常が起こっていることに気づきはじめると頭の中に映像が流れてきたのであった。その内容は、俺と同じ顔をした人間が他の人間を殺している光景であった。その殺している相手の容姿を見るとそれは俺の知り合いに酷似していて俺は驚愕をする。俺は、急いでこの夢を見てしまった場所に戻りたいと思い、ルッカの肩を叩き起こすがなかなか起きる気配がないので仕方なく体を激しく揺すった結果ようやくルッカが目を覚ましたのである。俺はルチアが眠っていることを彼女に確認すると俺は一人でルチアの元へと戻ったのであった。

それからルチアが目覚めると俺がいきなりいなくなっていたのでかなり焦っていたようであり俺のことを探しまわってくれていたようだ。それから俺は、ルチアに事情を話すと俺は、ルッチを起こそうとするとルチアに止められる。それから彼女はルチアのことを俺の代わりに守ってくれていたことに感謝を述べてくれてからルチアは俺をルッチが眠る部屋に連れて行ってくれる。

俺は、それからルチアと二人きりになったときに俺はルチアに対して俺の秘密を打ち明けたのだ。するとどうやら彼女は俺に同情してくれたようでこれから俺が何をしようとも受け入れてくれようとしているのでその気持ちはとても嬉しかった。だが、やはりルッチが起きていない状態でルッチの記憶を見ても何も分からなかったので俺は仕方がなく一旦この家を出て村に帰ることを決意すると俺の体の変化について話す。だが、俺はそんなことは知らないと言った反応を示したのである。そんなことを言われても俺は困ってしまい俺もどうしてこのようなことになったのか理解できていなかったのだ。

俺はルッチのそばを離れる前に俺は彼女の頬に触れると彼女の頬に触れた手に血が付着していることに気がつき、それを確認してみるとどうやらそれは俺の血ではないらしくおそらくだが彼女の皮膚に付着したものだと思われる。俺がそのことを不思議に思いながらも俺はその手を引き離そうとした瞬間だ。俺の体には強烈な違和感を感じてしまい、その違和感に耐えられずに俺は地面に膝をつけて倒れこんでしまい俺は気を失ってしまったのである。そして俺は目を覚ますとそこには何もない草原が広がっていたのだ。

どうやらここは、最初にこの世界にやってきたときのような場所で周りには木々しか見当たらない。しかもどういう訳か俺の手は黒く変色していたのだ。それから数分が経過したが俺の前には何の反応もなかったのである。俺はそれからしばらくの間、その状態のまま動かなかった。

「どうなっているんだ。一体これはなんなんだ」

俺が自分の身に起きている異変に対して困惑していると急に、俺の目の前に先ほどまでいなかった女性が姿を現す。その女性は、まるで天使のように美しくその見た目からして、その女性の正体はすぐに分かる。その女性こそ女神であり、俺は、その姿を見て思わず声を上げてしまうと俺に気づいたのか彼女は俺の方へ近寄ってきたのである。そして俺の顔を見ながら彼女はこう言って来たのだ。

「お主は本当に運が良いな。我はお主にチャンスを与えに来たのじゃ。さあ今からお前に試練を与えるのでしっかりと乗り越えてくるがよいぞ。まず最初の問題は、お主は、なぜその力を手に入れれたかが知りたくはないのか?」

彼女はそう言ってきたので俺がその力について聞き出すとどうやら俺の魂には何かが刻まれていると告げられる。そして、それを知るには一度死ねばよいと言われたので俺は、自分の体に違和感を覚えたので試しに俺の腕にナイフを突き立てて見ることにした。すると腕に刃が入ったと思ったのだが、腕は何故か傷つかず俺の体は、傷つくことはなかったのだ。そのことから、どうやら今の俺には、不死の加護というものが付与されているようなのでそれを利用させて貰おうと思う。

俺はその加護を使えるように意識するとどうやら俺は自分の身体能力が上がっていることに気づいて俺は、それを実感するために少し離れた場所にある大きな岩に近づいていきその岩に拳を振るってみることにする。俺が殴るとどうやら簡単に砕けるくらいにこの体は強靭になっているようでありこれならばこの世界をどうにかすることは可能かもしれない。俺はそう考えてしまう。

「そう言えば、まだ俺の名前を言っていなかったよな?俺は、如月竜也だ。よろしくな」

それから俺は、自分の名を名乗ったのだがその女性は特に表情を変えることなくこちらの様子を見ていたので俺は少し戸惑ってしまったのである。

その後、しばらく沈黙が続き俺は何かしら話題がないものかと思案していたが俺の方から質問するわけにはいかないので俺は彼女の話を聞くことにした。そこで、俺と彼女との間で会話が成立するが、彼女がこの世界に俺を送り込むことができた理由について聞いてみると、俺の肉体に俺とは違う人格が存在していると告げられて俺は驚いてしまう。

俺はそのことに心当たりがあったので俺はすぐに、そのことについて聞こうとするが彼女はその事には答えずに別の事を喋り始めた。どうやらこの世界に送り込んできた理由は、俺に力を与えてあげたいとの事であった。その力というのは俺の魂に刻まれた力を有効活用するためだと言うのだがその力については教えてくれないようであった。俺はそれでも構わないと思っている。別に俺の目的は魔王を倒すことでこの世界で俺に与えられた使命を全うするだけであるのだから俺の目的と関係のないこの世界の人たちにあまり深入りをするのは良くないだろうと考えたからである。それに、俺自身も他人を信頼するという事ができずどうしても疑ってしまうためこの人に頼るよりも自分一人の力で頑張っていきたいと考えている。

それから俺は、彼女に別れの言葉を告げるとこの場から離れることにしたのである。しかし、彼女によると次の場所はこの草原とは別の場所で、そこがこの世界の本当の始まりの場所だと伝えられてしまう。そして俺はその場所に向かうことにして、移動を始める。

俺は、移動をしながら俺の体がどれだけ強化されているかを検証をすることにしたのである。そしてその結果として分かったのは俺の体がかなり強化されたようだということが分かったのである。しかしそれと同時に俺は、俺が元々持っているスキルが使えなくなっていることにも気づいてしまった。つまり俺が今までに獲得した技能は全て失っていることになるので俺は、新たに獲得した技能だけで戦わなければならないのである。

そして俺が手に入れた新たなるスキルとは《ステータス》と呼ばれる能力である。俺はこのスキルについての説明を読んでみたのだが、この《ステータス》は自分の名前、種族、職業、年齢、身長体重、称号といったものが記されているらしい。またその他にも色々な項目が存在していてその中には体力値とか攻撃力などの数値化されていないものも存在しておりそれらの項目に関しては、自分がどのような行動をした時にどれぐらいの数値が上昇したのかを確認することができるのだ。だが俺はそんなものを見ても特に興味がなかったので俺の頭の中には残らないのだ。それよりも気になるのはこの《ステータス》に記されている職業である。俺の場合は、勇者ということが書かれている。だが俺は、その文字の意味を理解しておらず何なのか分からないのだ。なので俺は、自分の手を見てみるが当然のことながらそこにあるのは俺の手であり特に変化は起こらなかった。

俺はその後も移動を続けたのだが一向に森に到着することはなく、そしてついに俺は疲れ果ててしまい地面に座り込んでしまったのだ。俺はこのままでは不味いと思い仕方なく休憩を取ることにしたのである。俺は、その場に倒れ込んでしまった。そしてそのまま寝込んでしまったのだった。そして次に目が覚めたときにはそこは見たこともない森の中にいたのであった。

私は今とても困惑しているのです。なぜならば目の前で突然魔物が出現してきたかとおもったらいきなりルッカ様のことを攻撃し始めたからです!しかもその魔物の攻撃はかなり激しいようでルッカ様に直撃してしまいルッカ様はそのまま吹き飛ばされていってしまいました。ルッカ様はすぐに起き上がるとすぐにその場から離れますが、そこに魔物が追撃を行い、今度は魔法を使い始めてしまったのですがルッカ様はその攻撃を間一髪で避けるとすぐに反撃を開始していきました。しかしその反撃はあまりダメージが通っていないようで相手は全くダメージを受けている様子がなかったのですがそこでようやく私の存在に気づいたのか急に標的を変えてきて私の方へ襲いかかってきたので、私が何とか応戦をしようと試みる。

そして戦いが激化をしてとうとう魔物は最後の攻撃を仕掛けるために全力で突進をしてきてしまい私をその勢いを利用して弾き飛ばしてしまい、そしてその勢いは留まるところを知らずに地面をえぐり取り、土石流を発生させてしまった。それによって私はその土砂に飲み込まれてしまいます。どうやら、その威力は想像以上に強く、私の体には大きな衝撃が走り私は意識を失いかける。

すると私の視界の中になぜか映像が移り変わり始める。どうやらルッチの視点から見ている光景のようで目の前にいる人物と戦闘を繰り広げている様子だ。そしてこの人物が、おそらく先ほどの女性が言っていた敵であろうことを推測することができてしまう。なぜなら、この女性がルッチに対してかなりの敵意を抱いていることが分かるからだ。

それからしばらくして、どうやらルッチとルッカとの戦闘が終わりを迎えた。結果は、どうやら引き分けで終わったようである。そのせいでお互いは疲労が蓄積しており二人は地面に大の字で倒れるとしばらくの間動き出すことは無かった。それからしばらくして、先に女性の方が目を覚まし何かを感じ取ったのかどこかへ移動を開始すると、その直後に男性が目を覚ますが男性は女性がいないことに気づくとその事に慌ててしまう。だが男性にはこの草原から抜け出すための手段がなかったらしく、仕方なく女性は戻ってくるまでこの場所で待機することを決意したのだ。

しかし、それから数分間が経過したが未だに女性は戻らず男性は、次第に不安を覚え始めるがそんなときだ。女性の魔力の残り香を男性の鼻腔がくすぐってしまうのである。その事から男は女性がどこにいるか検討をつけようとするがその前にまずは自分の体の体調を回復させることにしたのだ。

するとその直後、急に男が苦しみ出したのである。その苦しんでいる姿からはただ事では無いようなことが起こっていることが確認できるほどだ。それから数十分の間男はその場で倒れ込みながらも痛みと闘っており数分もすると男の容態は次第に落ち着いてきたのである。それとともに男の傷口も完全に塞がれていたようであった。それを見た女性は男に対して警戒しながらも治療を施すと、それからしばらく経つと再び女性の姿が現れたので彼女はすぐにこの場での出来事を聞いてみることにし男に話しかけるがそれに対して彼女は言葉を返すことができなかった。それだけではなく彼女の質問が理解できなく、さらに彼女が話していることに対して返答をすることができなかったのである。

そして彼女は再び問いかけると、やはり彼女は言葉を発することはできず、その事実を確認した後に彼女は急いでここから移動することにするがそこで彼女が気になったのが彼女の後ろからついてくる気配である。そのため彼女の後ろに視線を送るとどうやらそこには人間がいることが分かった。そこで彼女は自分の正体を隠しながらそいつの後をつけていき相手の出方を伺うことにし相手に悟られないように注意をしながら、その相手がどのような目的で自分を付けているのかを確かめるためにあえて人気のない場所に移動を行う。そして人気がなくなった場所に移動したあと彼女は振り返り自分の後をずっとつけていたやつに目を向ける。

「おい貴様!!我に何か用があるのであればはっきりと要件を伝えるがよい。」

だが、それでもなお、目の前の男は一切反応を示さず何も言わず沈黙を貫き続けていた。だが女がそれでもあきらめない姿勢を見せたためもう一度話しかけてみると、ここで初めて相手からの答えが帰ってきた。その内容はどうやら自分に協力してもらいたいということらしかった。

それを言われた途端、その者は動揺するがなんとかその申し出を断った。それからすぐに立ち去ろうとしたのだがそれは叶わず謎の男と戦わなくてならなくなる。しかし女の力は強く、男の方はあっけなく負けてしまうがその瞬間に、女から膨大な量の力が解放されてしまい、それに呼応するかのように周囲の魔素量が増加してしまうのである。それにより周りの植物が活性化し、さらには大地に眠る精霊たちが大量に現れてしまい辺り一面に被害をもたらしていく。

そしてその暴走は止まる事がなくついに街にまでその災禍を及ぼそうとしてしまう。だがそこでその女は突然気を失ってしまいそのタイミングで、男が彼女のもとに近づきその力を抑えたのだ。そのことにより彼女は正気を取り戻しその後彼女は、すぐにこの街を離れ別の場所に移動することにして移動を開始する。

それから移動中に彼女はある疑問を抱くのであった。その事とはあの男の正体についてだ。彼女は自分の力を抑えることのできるものなど見たことが無いためその謎を解き明かそうとするが答えは見つからなかったのである。だがそれでもどうにかその真相を知りたいとそう考えたためその件について色々と思考するのであった。

俺が目覚めたときにはそこは森の中の少し開けた広場のようなところになっていた。そして目の前には俺に攻撃を加えたであろう黒装束の女性がいた。俺はその人を見る限りどうやら敵ではなさそうだと判断するととりあえず話をしてみようと決めたのである。

そして俺とこの女性は会話を始めたのだがどうやら会話の内容的にこの女性は俺の知り合いらしいのだが俺は全然思い出せないでいた。なぜなら俺の記憶は途中から消えてしまっているため俺の中ではこの女性が一体誰なのかが全く分からなくなっていたからである。だからと言って俺は自分の記憶がないことは伝えたくはなかった。なぜなら、俺は自分の知らないところで俺がどんなことを行っているのか分からない状態でその行動を他人から聞かされるのが怖いのだ。もしそれが他人から見て俺が間違った行動だった場合俺自身が何をやらかしているか想像もできないからなのだ。そしてそんな事を考えていると目の前にいる女性の方にも変化が訪れることになる。そして俺は、そんな変化が目の前で起きている状況で俺はいったいこれからどのような変化が起こるのかを全く予想ができないでいたがそれでも、この状況を乗り越えなければ俺に明日はないと思って覚悟を決めたのである。

俺は、今俺の目の前に現れている女性について考察をしているのだが、正直に言って、俺はその女性のことが何一つ思い出せないのだ。なのでまずは俺の体の中に存在しているこの世界の知識をフル活用して何とかこの人のことを少しでも分かることができればと考えている。

(そもそもどうして俺がこのような状況に陥ってしまったんだ?確かに、俺の体がかなり強化されていることは俺自身でも自覚はしていたが、これほどまでに強化された理由は分からないのだ。それになぜこんなにも俺は強者との戦いを望んでいるのだろうか?)

そしてそんなことを考えながら俺は、目の前に突如現れた黒装束の女性のほうへ顔をあげるとどうやら向こう側もこちらの方に視線を送ってきたようだが特にこれといった表情を浮かべていない。なので俺は早速声をかけてみたのだが案の定、返事がない。そしてそんな態度をとった女性に対して俺はもういちど試すことにすることにしたのだ。

(俺は今からあなたを攻撃します)と、俺は心の中で唱える。すると、俺の心の中からそのようなメッセージが表示されたのである。それを聞いた直後俺はこの人が本当に敵なのかどうかを確かめようとしたので攻撃を仕掛けることにした。そしてその女性は突然攻撃をしかけたというのにもかかわらずまるで最初からこうなることが分かっているかのように避けようとしない。その結果、どうやら女性は俺の攻撃を避けることなくまともにくらってしまった。

それを見た俺は驚きすぐに距離をとるとそこで俺は一つの仮説を立てることができたのである。というのも俺が攻撃をした時だ。おそらくあの時点で女性はすでに瀕死の状態で、おそらくこの女性は、すでに助かることのできないような状態だったのだと考えられるからだ。その証拠に先ほど女性が受けてしまったダメージは完全に回復できるようなものではなくておそらく即死級の状態に陥っていたのではないかと思えるほどのものだからだ。しかしそれでもなお女性は死んでいなかった。そして俺の攻撃を食らい、それから時間が経過したのちに意識を取り戻したのである。そこから考えることができるのはただ一つである。その女性は何か特別なスキルを持っているのではないかと考えるに至った。なぜなら、本来、人間は、致命傷を受けてしまったらその生命活動を終えるはずでありそれは絶対に覆すことはできないはずだ。しかし現実として彼女はその常識を覆し生きているのである。ならば何らかの理由があって彼女は生き返ることが出来たとしか考えられないのである。

それを証明するかのように彼女は傷口も既に癒えておりしかも、見た目も元通りになっている。つまりこの人は不死身の能力を保持しているということになるのでおそらく先ほど受けたダメージは彼女にとって完全に無意味なものとなっていたということが証明されてしまう。それを確認した俺は思わず目の前にいる彼女に質問をしたくなったがどうせ答えてくれないとは思うが一応聞いてみることにする。そこで俺は自分の思い切ってこの女性に向かって話しかけるとやはりと言うべきか彼女は無視を決め込んできた。それからしばらくして彼女はその場を立ち去ろうとするので、そんな彼女をどうにか止めたいと考えた。

しかし、今の俺では、そんなことは不可能に思えた。しかしそれでもどうにかして話を聞くために頑張ってみるとどうだろう。意外にあっさり話すことに成功したのである。まぁ正確に言えば、彼女の口から勝手に話が漏れたという感じなのだが、それでも、それでもだ。どうやら彼女が、俺の質問に対して何か言いたくなかったのか俺の言葉を最後まで聞くと、諦めてくれたみたいだ。それどころか俺に対して協力的な雰囲気を出している。だがここで俺の体は限界を迎えて倒れこんでしまうのである。それからしばらくすると、女性が俺のことを抱え起こしてくれた。そればかりかこの場を離れて移動するようにと指示してきたのである。

そのおかげで、この女性から情報を得ることが出来そうで安心している自分がいたのである。

それに加えどうやらこの女性の実力はこの森にいる魔物の中でもトップクラスに位置するくらい強い存在であるらしく、それなら安心できると思い俺は、ひとまず彼女に従ってついていくことに決めてしまう。すると俺が歩き始めると女性もなぜか同じ方向に歩いてきてくれるのでこれはこれで嬉しい出来事だった。しかし彼女はどうも俺に何も言わずに俺に黙って付いてくるだけで何も話しかけてくることがないのでこの人は何も言わなければ普通に綺麗だし無言の時間はそこまで嫌じゃないから別にいいんだけど。でもやっぱり話さないことに関してはちょっと気になるんだよな。

それからさらに数分ほど経過すると彼女は突然止まったのである。そこで彼女が止まっている場所はちょうどこの場所からは少し離れたところにある村の近くであった。そこで俺はようやく彼女が何を目的としてこの場に訪れたのかを理解できたのである。そしてそれと同時に、この村に何かがあると思った俺は彼女の後を追うように移動する。そしてしばらく歩くと彼女が村の人たちに囲まれてしまっておりどうやら、その女性たちの中心には見慣れない男がいた。それからしばらく待っているとその男はいきなり「私は、ある目的のために必要な情報をここで収集しなければならないのです」と言って何か紙を読み上げるようにし始めた。その内容とはこの世界の成り立ちについてのことだった。

しかしそれだけだとまだ情報が不十分だと考えていた俺の考えは的中しており男が話し終えてからすぐに女性の一人がこの世界は何者かによって作られた偽りの世界であるという話をし始め、それを耳にした村人たちの表情は一様に青ざめてしまっていたのだ。当然のことながらその男もその話を真に受けることはなかったのである。そこで俺は、そんな男の様子が気に食わなかったので、その男に近づき話しかけようとしたところ、突如として俺の背後に誰かがいることに気付いた。そこで俺は後ろを振り向くとそこには一人の男が俺のことを睨みつけており俺はそんな状況から逃げたい気持ちで一杯になっていたのでとりあえずはそいつと話をしようと思う。そして俺はそんなことを思ってしまうのである。

俺は目の前の男たちについて疑問を抱きながらも、今の状況を考える。そもそも、あの女が連れていた黒装束の男について俺は知っているはずだった。なぜなら、あの女のことについて調べるときにあいつのことも一緒に調べ上げているからである。そのことからもわかる通り、俺の知り合いであることに間違いはないが、それが一体どういう人物なのかについてはまったくと言って良い程覚えていないのだ。だが、それでも、俺はこの二人についてある程度の予測を立てなければならない。

(まず一人目だ。こいつはどうやら俺のことが邪魔のようだ。それも俺に殺意を持っていて、おそらく俺の事が大嫌いか憎い存在なのであろう)

次にもう1人の男性の方である。この人は先ほどの黒装束の女よりも遥かに俺に対して憎悪に近い視線を送ってきているために俺に相当な恨みを持っていると思われるのだ。そんな風に俺の事を恨んでいる人物はこの世にただ一人だけいる。そしてその人物がこの世界に存在しているということは考えにくい。その理由としてはこの世界で俺と最も関わりのある人間は間違いなくこの女性だからである。だからこそ俺を殺さなければならないと思っている可能性が極めて高いと推測する事ができるのだ。なので俺はその男についても色々と考察をしてみることにしたのだった。

俺は目の前にいる男性のことを考えることにした。まず最初に考えるのがなぜこの男性は、俺にこのような敵意を抱いているかという事である。しかし考えてみたところで結局分からないままで、仕方がないのでここは一旦忘れることにした。そして今度はどうやってその男性から逃げ出すのかということを考えることにする。

(さてここからどうするか。目の前の男性は明らかに、この女性のことが好きすぎる。そのことから考えるとこの女性を人質に取ればなんとか切り抜けられるかもしれないが。そもそもこの女性がこの男性に対して好意を抱いているかにもよるよな)

俺はそこでふと気付いたのだが目の前の女性がこの男性が俺に対して持っているような好意を抱いてくれているとは到底思えないという結論に至り、それを確認するための行動に移ることにしようと思う。そこで俺はまず、女性の体を揺すり声をかけることにした。

「もしもし、起きてますか?」という声をかけた後に反応が返ってきたのを確認して俺は、そのままこの女性を起こすことに成功し、その後、二人で話し合いをすることに成功するのである。そして俺の予想が正しければこの女性と黒装束の女性の関係を知っているはずだと考えて質問をぶつけることにしようと思う。それでこの女性が黒装束の女性のことについて教えてくれるかどうかを聞いてみる。もし仮に教えてくれるようであれば、俺はこの女性と協力関係を築いていくつもりである。それに俺は、この女性にかなり好感を抱くことができた。

というのも先ほどまで俺は目の前にいた二人の関係性について考えていたがそこで気になったことがあった。というのも、その二人が、俺と同じような立場であるとしか考えられないのである。なぜなら、俺も同じように勇者という肩書を与えられこの異世界に連れてこられたからだ。しかも、この女性は、俺の目の前に現れた女性と全く瓜二つな容姿をしている。しかしそれにも関わらず性別が異なるという違いがあるために俺が考えているような同一人物ではないのだろうとは思う。だけど、俺と似たような立場の人だとしても何か目的があり行動している可能性はあるし何か重要な情報を隠しているという可能性もあるだろうから、この場で彼女を殺すことはできない。そして俺はそんな風に思考しながら会話を進めていく。

しかし彼女の性格は思った以上に最悪であった。こちらがいくら質問をしてもまともに答えようとしないのだ。そのことから、これ以上の事は話さないのではないかと思えるくらいの対応だったので俺もこれ以上この人に問いかけるのはやめる事にしたのである。それに加え俺は彼女と行動を共にしてもメリットはないと考えてしまい彼女を置いて逃げることにしてしまった。

だが俺の予想通りで彼女は俺の事を完全に見限っていた。それから俺は森の中でしばらく過ごすことになった。その間ずっと俺は魔物に殺される恐怖と戦わなければならなかった。しかし運よく魔物が襲ってくることはなく無事に夜を過ごすことができた。俺は寝る前に先ほど起こった出来事を整理していくことにする。

(あの二人は俺に復讐したいと願っていることは間違いないと思う。俺だって同じ気持ちでいたんだから分かるけど、でもこの世界に来てから俺に対する印象が悪くなるような出来事なんてほとんどないし、それに加えてあの二人が俺に対して敵対心を向けていることに関しての説明が全く思いつかないんだよな。うーん。どうすればいいのかがわからないな)

それからしばらくの間は、俺もあの二人と関わらないようにするために行動を起こそうとはせず、ひたすら自分だけの力のみで強くなろうと必死になって訓練をしていた。そこで俺は自分の力がどれだけ上がっているのかがとても気になり始めたので早速確かめる事にした。そこで俺は今まで使ったことがない魔法の技を使ってみようと思ったのである。しかし俺はどういった魔法を使うべきか悩んだ。なぜならば今自分が使える中で最強の威力を誇る魔法が使えない可能性があったためである。だがそんな悩みなどどうでも良くなる事態が発生したのである。それはなんと、俺は今まで使おうと思って使えなかった魔法をいきなり使うことが出来るようになっていたのである。それだけでなくさらに驚くことがありなんと、今までは、詠唱を唱えなければ使うことが出来なかったはずの魔法までもがなぜか使うことができるようになっていることが分かった。

(なんだこれ。俺の魔力量が急激に上昇しているのか?)

俺は突然自分が扱うことが可能になった魔法の量を見てそんな感想を抱いたのである。その瞬間から、俺はどんどん新しい魔法を習得し使い始めるようになるのであった。それに加えて俺自身の実力が格段に上昇したこともあり、魔物と戦う時に余裕が生まれ始めるようになっていった。そのおかげで俺は、戦闘中に新たな戦い方を閃き、実践に移すことができるようになり始めてくるのだった。そのお陰で、俺に襲いかかって来た大量の魔獣を倒すことに成功したのである。しかし、俺が新しく編み出した戦術で魔獣たちを倒した後すぐに俺は気を失ってしまうのだった。

それから俺は目が覚めた。そして俺が起きたことを確認したのだろうか俺の隣に座って俺のことを眺めていたらしい女性と目があったのである。そのことで俺はこの人と会ったことがあるような気がしてならない。なぜなら俺の記憶にはこの女性の事はなかったのだが、どこかで見た事があると直感的に思っているからである。そしてこの人が何者でどうしてここに居るのかを聞き出そうとして俺は彼女から話を聞くことに決めた。だがその選択こそが間違いであり俺が死ぬことになる原因を作ってしまったのであった。そして俺は彼女の名前を聞いた後に、なぜ俺を殺そうとしていた理由を問うてみた。すると彼女は予想外の返答をしてくるのだ。

「あなたはこの世界で私の敵だと判断したのです。だから私は私の目的のために邪魔になる存在を排除する必要があった。ただそれだけです」と俺の目をしっかり見据えてそんなことを言うのである。

しかしそれだけではあまりにも納得がいかなかった。なのでもっと情報を引き出したいと思いもう一度問い質すことにした。その結果得られた内容は、この女性はやはり俺の想像した通りの人物であり、俺と同じように、魔王討伐をするための駒として扱われているようであった。そこでこの女性から得られるであろう最後の情報を得るために質問を続けることにした。

俺はこの女性のことについて調べるためにまずは色々と質問していく。その結果分かった事といえば、名前はセフィスということだけでありそれ以外はあまり知らないという事が判明したのである。そんな事を確認した後に今度は俺がこの世界に召喚される前のことを思い出そうとしたが特に思い当たることはなかった。そこでとりあえずはこの女性に俺の正体を教えておくのもいいのかもしれないと考えるようになったのである。そう思った俺はとりあえず、自分のステータスについて調べてみることにした。そして案の定というべきなのかレベルが上がったりスキルを覚えていることが判明したのだった。しかしここで俺は疑問が生じるのである。

(俺のレベルは上がったはずなのになぜ技能の方に変化が見られないのだろう)

そして俺は考えた結果一つの考えに至った。それは、もしかすると俺の能力が元の世界にいた頃に比べて大きく低下しているのではないかというものである。俺はその考えを確かめるためにも、この女性にも俺が持っている技能を見せてあげることに決めてから能力を見せるのだった。そしてそれが終わった後、女性は、少し驚いたような表情を浮かべながらも、俺に向かってこう言ったのだ。

「確かにあなたの言うとおり私も普通の勇者よりはかなり弱いかもしれませんね。でもそれでも私が負けるとは全く思っていませんでしたが。まぁそれも仕方がないでしょう。なにせあなたはまだこの世界の事をよく分かっていないのだから。しかし、これで私と同じ境遇の者だという事がわかったからこれからよろしくお願いしますよ。勇者様?」と微笑みながら俺に手を差し出してきたのである。

それから俺は彼女と一緒に行動することを決意し二人で旅を始めるのだった。そこで俺は、彼女がなぜこの森に来たのかが分からなかったのでそのことについても聞いておくことに決める。すると、この女性は自分の事を魔王軍の人間だと伝えてきてから、その組織の中でも結構上の方の位に位置している人物であることも明かしてきた。なので俺の予想通りにこの女性は、勇者を殺すための部隊に所属されているのだなということがわかった。しかしそうなると、俺達の目的は一致するので協力関係を築けそうだと思えた。

そこでまず最初に確認すべきことがいくつかあった。その中でも重要なものが二つ存在する。その二つというのはまずは、俺がなぜこの世界に連れてこられたかということだ。この世界で死んだとしても生き返ることができるということについてはルッズが証明してくれている。だからこそ俺はこの世界で死ぬことに躊躇しなくなった。

そしてもう一つがどうやって元の世界の日本に戻るかである。もし仮に、こちらの方法が不可能なのだとすれば、俺達が今後この世界で生き残ることは不可能になってしまう。

そこで俺はこの女性に元の世界に帰る方法があるのかどうかについて質問をしてみる。すると、あると言われてしまったのである。そして、俺達はこの方法を使って元の日本に帰れるようになった。その方法はこの女性が知っているという。しかし、この女性はその方法で帰ることは出来ないというのだ。その理由として、その帰還用の魔方陣は一人分しか作ることができないのだという。それだけではなく俺と、この女性は一緒に行動しているわけではないので、俺だけがこの世界から日本へ転移することになると言われたので俺としてはその言葉に従うほかなくなってしまったのである。だが、俺はそんな説明を受けてもこの世界に残ることを決めていた。なぜなら、もし俺だけ元いた場所に帰っても待っているのは地獄しかないと分かり切っていたから。しかし、それならば俺とこの女性が共に行動することで、俺は俺が求めていたことを実現できるようになると考えた。

俺はこの女性の事を信頼できる仲間だと思い始めていた。しかし、俺よりも遥かに強いこの人を見てしまうとどうしても、俺はこの人に勝てる日がくるとは思えなくなってしまうのだ。そして俺は、この人の事を知りたいと心の底から思っていた。だがそれはこの女性を信頼するからこそ知りたいという気持ちになっているのである。その気持ちを伝えるため俺はこの女性の名前を改めて尋ねた。そして、そのあとは彼女からの返事を待つことにして俺は次の目的を告げたのである。そしてそれが終わると同時に彼女は立ち上がって、歩き出す。その後ろ姿を見ながら俺は付いていくことに決める。そしてしばらく歩いていると、突然魔物が現れるが彼女はすぐに対応してしまう。その姿を見た俺は素直に感嘆の声を上げてしまい、俺のそんな声を聞いた女性は、少し嬉しそうな表情をしていたのである。

それからしばらくして、俺はこの女性から話を聞くことができた。その話の内容は俺が元々いた場所で過ごしていたときのことだった。この女性の名前はセレネという名前らしいのだが、俺が元いた世界で暮らしていた時にクラスメイトだったという事を話してくれたのである。それから俺は彼女の事を思い出し始めると頭の中で、何か映像が流れ始めたのだった。

そして、そこで映し出されたのは自分の部屋での出来事でそこには二人の男子生徒がいた。俺はこの光景をどこかで見たことがある気がしたのだがそれが何なのかを思い出すことができなかった。

(なんだろう。これはなんなんだ? どうして俺はこんな場面の映像が見えるんだ?)と思っているとその二人がいきなり消えてしまったのである。その時俺はとても動揺してしまったがすぐに気持ちを整えたのだ。しかしなぜこのような映像を俺に見せて来たのかは分からなかった。しかしそのことを考えようとすると頭痛が襲ってくるように感じたのでやめることにしたのであった。

そんなことがあってから、俺達が次に目指す目的地にたどり着くまでの時間がものすごく早く感じるほどに楽しい日々を過ごしていく。そんな風に過ごす中で俺達の力は大きく成長していくことになった。俺は新しく覚えることが出来た技能を使いこなすことができるようになっていた。そのおかげで今まで以上に強力な魔法を使うことができるようになっている。

しかし、それだけではなかった。なぜか俺には魔力を操る技術が身についているようで俺はこの魔法を発動する際にどの程度の魔力を使えば発動することが出来るのかといった細かい操作ができるようになってきていたのである。そのおかげで、今のように魔獣に対して大きなダメージを与えることが可能になるなど、この世界の人達では考えられないほどの強さを得ることが出来るようになったのである。

そんな風にこの世界に召喚されてから約1ヶ月が経とうとしている。その間俺はこの女性と一緒にずっと訓練をし続けてきた。そして俺はこの女性から教えてもらったことをしっかりと実行に移すことに成功していたのである。そして、この人は俺がここまで成長できると思っていなかったらしく俺の事を見て驚愕の表情を浮かべていたのである。しかし、俺は俺でその人の事を見くびりすぎだと思っていたのであった。だが、俺自身も最初はこの女性のことを侮っていたということもあったと思うのでそのことに対しては何も言えなかったのである。そして俺はその人と二人でこれから先も一緒に旅を続けていきたいと心から願うようになっていった。

俺はこの女性と一緒に行動するのが当たり前になり始めているような気がしてならない。そしていつの間にか俺は彼女の事を信頼しているという感情が芽生えてしまっていた。しかしそんな気持ちとは裏腹に俺は彼女を警戒するようになっていたのだ。なぜなら俺の本能が、目の前の女性に対して警戒するように促してきたのである。そして俺は彼女と初めて会った時の出来事を思い出す。

俺が最初に彼女と会って話をしたのは魔王討伐のために魔王城を目指す途中の休憩地点でであった。その日はたまたま雨が降っていて視界が悪くなり危険な状態だったために、俺は念の為に彼女にいつでも戦える準備をしておいてと言ってから、俺一人で森の中に食料を探しに行った。そして運悪く俺はゴブリンに遭遇して戦いになった。しかし相手は大したことのない存在だったため俺が負けることは無いと考えていたのだ。そして俺はゴブリンの攻撃をひらりとかわしながら、剣を振っていく。するとその動きに釣られたかのように他の魔物も現れてきたので俺はそのまま、その敵を倒していったのだ。それからも順調に進んでいく。

しかし、そこで急に霧が発生してしまい俺は、迷ってしまうことになる。しかし俺はこの霧のことはそこまで気にしなかった。なぜならこの森を探索すること自体始めてのことであり、俺はどんな危険があるか分からないために油断しないほうがいいと思ったからである。しかしそこで俺は自分の判断が間違っていたことを理解し、後悔することになった。俺の周りを取り囲むようにしてたくさんの気配を感じ取ってしまったのだ。

そしてそこから戦闘が始まることになるがその数は想像していた以上に多いものだった為俺は一瞬怯んでしまうもののすぐさま気持ちを持ち直し、攻撃を開始し始めたのである。そうしているうちに少しずつ敵の数を減らしていきどうにか倒せた時にはもう既にかなりの疲労に襲われていてとてもじゃないがこれ以上の戦闘は出来ないと感じるほどまでに疲れてしまっていた。なので一度休もうと考えその場に留まることにしたのだが、そこに魔王軍に所属する女性が現れることとなるのだ。

そしてその女性は俺に攻撃を仕掛けてきたが俺は咄嵯に防御することができて事なきを得たのである。だが彼女はどうにも戦う意志を持っていないようで大人しく捕まるつもりだというようなことを言ってきてくれたのだ。それには正直驚いたものである。だってこの人がこの場面で抵抗を諦めるような人だとは思ってもみなかったからだ。なので俺もその言葉に従うことに決めた。だが、ここで一つ問題が起きた。彼女は俺のことを知っているというのだ。しかし俺のほうはこの女性のことを知らないし顔も思い出せないのである。そこで俺は彼女が誰であるかを尋ねる。そして俺はそこで衝撃の事実を知ってしまったのだった。なんとこの人は俺の学校の先生であるという事が分かったのである。そこでようやくこの人の顔が分かるようになる。

そこで俺はこの人から話を聞くことになったのだが俺は彼女のことをあまり好きではないことが分かったため、彼女のことを仲間として迎え入れようとは思わなかったのだ。

そのため魔王軍の情報を俺が持っているということを伝えてから俺は、その魔王軍を裏切って勇者と戦うことにしようと思うと告げたら案外簡単に受け入れてくれそうだと感じたのだった。そして俺は彼女から魔王軍の情報を聞き出してから別れることになった。そしてこの日から彼女から教わった技能を使って俺は彼女以上の能力を身に付けられるように努力を始めることにする。それから数日後にまた彼女は姿を現して俺の前に再び姿を現すこととなった。その時は何故か仲間にならなければいけないような気分になってしまい仲間になることを決意してしまったのである。

その後俺はこの人のことが信用できなくなっていたのだ。というのも、彼女があまりにも不自然な行動をとり続けたからなのである。

例えば、この人はこの世界について色々と知っていそうな雰囲気を出していたが俺達は何も知らないのになぜかそれを分かっていてまるでその世界の住人かのような言動をしているので違和感を覚えたのだ。だから俺はもしかすると、この人は別の存在であり別の異世界から来たのではないかと予想しているのである。そんな考えに至る理由はこの人の行動が明らかにこの世界の常識とは違うものだからなのだ。俺にはどうしてもこの人が本当のことを言っているとは思えなくなってしまった。だけどそれでも彼女のことを嫌いになったりすることは出来なくなってしまっている。何故なら俺のことを救ってくれた恩人であり仲間でもあるからなのだ。そんなわけで俺はこの人のことを見張ることにした。

この人の行動は本当に変だ。何をしたいのかが俺達には全く分からなかった。

この人のことをもっと知る必要があるかもしれないと思っていると俺達のところに魔族の男がやってきたのである。その男は何かを話しているようだったがこの女性はその内容をすぐに把握して理解したみたいだ。しかし、俺はまだ何が何なのか全くわからない状況だったので女性の説明を聞こうとしたとき、俺はその男によって攻撃されてしまう。しかしそれは、この女性が俺を助けてくれたおかげだと思うと心の中で感謝をした。そしてその魔族に女性が立ち向かっていったが俺に気を取られていたせいでこの人は不意を突かれて殺されてしまう寸前にまで追い込まれてしまった。

しかし、この魔族は女性の事を侮っていたためにこの女性の一撃をくらってしまい、その隙に女性に殺される。その魔族から魔石を取ろうとした女性に対して、その女性は魔石を取る前に殺されたはずのこの女性の声を聞いて動揺するのであった。それからその女性は女性の声に従って逃げ始めたのだが、俺はこの人が逃げることを嫌っていると察したので一緒についていくことを決意したのである。そこで俺と女性は一緒にこの城の内部に侵入することになり、この城に潜入するために必要最低限の装備を貰ってこの女性と二人で魔王城内部に潜入した。

そこで俺達はこの城の構造を把握するための情報を手に入れる為にまず、魔王軍が居る場所を探すことにしたのだ。その方法は、この城内にいる人間を見つけ出す事だ。

それからしばらくして、俺は女性から色々な説明を受けた。そして俺はこの城の中を歩いていき、ついに人間のいる場所を見つけたのだった。しかしそこには、あの女性の姿もありこの二人と話をすることになる。その女性の名前はミライさんといいこの国の王の娘らしいのだ。

俺が思っていた以上に凄い人だと思いながら、彼女と少し話をしてみることにした。その時に彼女は俺のことをよく知っているような口調をしていたのである。なのでその理由について尋ねたところこの城に来る前までに俺と一緒にいたことがあるというのだ。しかしそのことに関して俺がいくら思い出そうとしても何も出てこないのである。なので俺はその女性の言葉が本当であるのかどうかは分からないがそれでも信じることに決める。なぜならこの人と話をするたびに俺の中に眠ってる何かが呼び起こされそうな感覚になるからだ。

それからこの女性の正体は、この国で一番強い存在であることが判明したのである。それを聞いた俺はすぐに彼女のことを魔王ではないかと推測することにした。なぜなら俺に剣術を教えた人物こそがこの人のことだからだ。そしてこの人の目的がなんなのか俺は知る必要があった。そのために俺と女性はこの人を殺すことにしたのだ。この人の目的はこの城の宝物を奪うことである。その理由に関しては、どうやらその目的の物があれば、この国は滅ばないのだというのだ。しかし俺と女性はその女性を倒すことに成功はしたが、その女性に俺は捕まってしまうことになる。そして俺は彼女のことを拘束することに成功したのであった。そしてその人は女性に向かって俺のことを殺してくれと言ったのだ。そして俺も女性に対してそうするべきだと言いたかったが女性の意見に逆らうことが出来なかったのである。しかし俺が止めに入ったことによりこの場がさらに大変なことになっていくのであった。そしてその人が俺にとどめを刺そうとしてくる。

だがその直前に女性の様子が急に変わったのだ。その女性の目は先ほどまでと違い真っ赤に輝いていたのである。そこで俺を殺そうとしていた女性の攻撃を防ぐことができたのだ。その瞬間、女性の表情は苦しげなものになり、それからしばらくするとその女性の目が元に戻っていた。そこで俺は、俺の命が危ないことを女性に伝えようとした。しかしそれよりも早く、その女性はこの部屋から抜け出すことに成功し、そのまま行ってしまったのだ。そして俺の方もこの部屋の中にあった抜け道を通り何とか脱出に成功することが出来た。だが俺の体には切り傷が多く存在していて今すぐ病院に行って手当を受けないと死ぬ可能性が十分にありえたのだ。

それから俺は急いで、この城を脱出する。だが、その途中に俺の意識が途切れそうになってしまうほどの痛みを感じてしまったので、このままだと命が持たないと思った。なので俺は、近くに居た人に回復スキルを使ってもらえるか頼み込んだ。しかしそこでも問題が発生する。

なぜなら俺の体力が残りわずかだったからである。だから俺はそこで気を失ってしまうのだった。そして俺は目覚めるとベッドの上で横になっていて目の前には俺を看病してくれたと思われる女性が座っていてその隣には俺が戦った女性の姿が確認することができた。

そのあと俺はこの人達に連れられて魔王がいると言われている城を目指すことになる。そして道中俺と女性との間には会話は一切なかったが、この女性は、とても良い人で優しい人であることは分かったのである。なのでこの女性の為に何かを出来ることは嬉しいと感じたのだった。それから数日が経過してようやく目的地である魔王の住む街に到着したのだ。

それから俺達は魔王が居ると言われる建物に近づいていき扉を開けるとその魔王の住んで居る建物の最上階に辿り着いたのだがそこには一人の魔王が待ち構えておりその魔王は、なぜかこの俺をこの世界の勇者であると思い込んでいて襲い掛かってきたのである。

その攻撃を受けて女性は死んでしまったので、今度は女性が持っていた剣を使って戦うことにした。しかし相手は手強くて苦戦を強いられることになっていく。そして、俺が劣勢に陥ってしまったとき、女性の仲間の一人である男性が助けに来てくれた。俺はそこで初めて女性以外の仲間に出会うこととなる。そこでこの人は、俺に魔王を討伐して欲しいと言う。だけど、この世界に来たばかりの俺にはこの世界がどれだけ危険な世界かを分かっていない。それにこの世界を救うためには、どうしてもこの世界の勇者の力が必要だと言われてしまい俺は断ることが出来ないまま魔王に挑むことになったのである。そこで俺は女性と共闘することになって無事に魔王を退治することに成功した。しかし俺達はすぐに帰るわけにはいかなくて、女性を蘇生させてあげなければならないと仲間の一人の男性は俺に伝えたのだ。俺は女性の遺体を蘇らせる方法なんて知らなかったのである。そして仲間の女性と男性と一緒に遺体のある場所に行こうとしたところで女性の死体は忽然と姿を消したのだ。そして、女性の仲間の男性の案内で俺はある場所に向かう。その場所で、俺は仲間の女性に再開して無事だったことを喜ぶ。その後で俺と仲間になった女性は俺達を召喚した国王に報告するために王都に戻ることにした。

そこで俺は、勇者として認められることになりそれから勇者として行動することになったのであった。

その日の夜のこと俺は勇者であるユウトさんから勇者について教えてもらうことになりました。その内容はかなり複雑な内容で私には理解できないようなものばかりでありまして正直いってよくわからないというのが現状なのです。そんなことを考えている間にユウトは話を続ける。

「じゃあこれから、まず勇者について説明を始めるね」

そして俺はユウトの説明を必死に理解しようとしましたけど、やっぱり難しかったです。とりあえずまとめるとこんな感じになるみたいですね。

【勇者とは世界を救う者のことであり、その存在を知る者はごくわずかしかいない】ということなのだ。だから勇者のことを他の人々はほとんど知らず、また知っている人たちも詳しい情報までは教えられないというわけなのですね。それと、この世界で勇者になれる条件は三つだけ存在していて、一つ目と二つ目にはかなり重要なことが書かれており、そして三つ目はかなり曖昧なものだったのです。まず一つ目の条件ですがこれは単純に年齢で決まるらしく二十歳未満の人は全員対象にならないみたいで、この世界で言えば成人しているかどうかということでしょう。二つ目の条件として、その人物が女性である場合は必ずその国の姫であることというのがあり、それは国の象徴である女性が魔王を倒したときに初めて勇者の称号を得るということになり、それがこの国では当たり前のことだったらしい。しかし現在は勇者がいないことからそのような決まりがなくなりつつあるらしいのだ。

でもどうしてそんな決まりが出来たのかが疑問で仕方がなかった。そして、そのことについて俺が尋ねてみるとどうやら昔にそういうことがあったという記憶はあるらしい。しかし、その当時の記憶を思い出すことはできなかったのだ。それから、俺は自分がこの世界にやって来た理由を知らなくてはいけないと感じるようになり、そのことを尋ねることにしたのである。

その答えを聞いて俺は何も言えなくなってしまった。なぜなら俺の知っている物語に出てくるような勇者のような存在が実際に存在するのなら俺はそいつの事が嫌いだ。何故ならそいつはきっとこの世界のことを何も考えずに好き勝手に行動するに違いないからだ。それなのにこの世界の人はなぜ、その勇者に対して尊敬を向けているのかという疑問を抱いた。だけど俺の考えが正しいとは限らないのでこれ以上質問することはしない。そこで話は終わった。それから次の日の朝になるまで俺は寝る事に決めたのだった。

翌日になると早速俺達は魔王軍の根城に乗り込むための準備を整えていく。まずは王都に向かってそこから馬車を使い目的地の魔王軍の本拠地に向かっていくことにしたのだ。王都に着くまでに俺達の実力を確認するために訓練を行う。

ちなみにこの国には冒険者がおらず、王都のギルドという場所でしか冒険者を雇うことはできないのだ。その理由として考えられるのは俺の推測でしかないが、おそらくこの国にいる人たちは、冒険者に頼り切っているというわけではなく自分達の力でなんとかするしかないと思っているのではないかと考える。なので、あまり他人をあてにしていないのではないかと思ってしまうのだ。

なのでこの国の冒険者の数は圧倒的に少ない。なので戦力も俺達が予想していた以上に少なかった。それこそ魔物に襲われればひとたまりもないかもしれないくらいだ。だから今回の作戦を実行する上で俺達は慎重に物事を進めていく必要がありそうだと感じる。しかし魔王を倒すことになれば必然的に国中の人から称賛を浴びることになるだろうし魔王軍がこの国を攻めてくる可能性は低いと思うのでそこまで心配する必要はないと俺は思う。

それに俺の目的はこの国から出ることだから、もし魔王を倒せば、この国にとどまる必要がない。だからこそ魔王を早く倒したいという気持ちがあったのだ。それに俺は勇者としてこの世界を救わなければならない義務があるのだと考えている。なぜなら勇者というのは人々の希望だから、この世界に存在する悪を倒すことができる力の持ち主である必要があるのだ。そしてその力が備わっていなければ人々は、この先、魔王がこの世界に君臨したとき絶望してしまうだろう。しかし魔王の討伐に成功したとしても魔王がこの世に残した被害が消えることはない。なのでこの世に存在する全ての生き物が幸せになるという結末は迎えられない。

しかし俺の個人的な意見ではあるが魔王を殺さずに、魔王軍とは和平を結びたいと考えた。そうすれば無駄に命を奪う必要がなくなるはずだからである。だが俺の願いが届くはずはない。だが魔王を倒してこの世界を救うことをしなければならない。そのために今やるべきこととしては魔王が支配しようとしているこの国が本当に危機的状況であるということを魔王側にも知らせる必要性を感じる。そして俺はそのことを知らせるために動き出すことに決めたのであった。

俺と仲間達は、この世界の勇者が魔王を退治する旅に出て魔王軍を根絶やしにするために行動をすると噂をばら撒くことにする。この情報を流したのは俺達ではない、王城に住むお偉いさんだ。その人がそのように宣伝をして魔王を倒しにいったのは、俺だという噂が流れ始めた。しかし魔王軍は俺の存在に気づいていないようだ。

だがここで、王城での生活は一旦終わりを告げることになったのだ。俺達が魔王軍の本拠地である城にたどり着く前に、この王都は魔族たちに支配されてしまう。そこで俺たちは急遽作戦を変えることにした。このままこの国に滞在していても俺の目的を達成することはできないと感じたのだ。

しかし俺がこの世界に来ることができた目的は魔王を倒さなくても達成することができると考えた。なので、この王都を奪還することが俺の目的を叶えるための近道であると感じたのだ。俺はそのことを仲間に伝えると、ルッカ達もその意見に賛同してくれてこの城から抜け出すことになったのである。そこで俺は魔王軍の人間たちが住んでいる街まで案内を頼もうとしたのだがこの王都の警備を抜けられる自信がないので諦めることにしたのだ。だけど俺達は王都を脱出してその先の目的地に向かうことを決意する。

俺がこの世界で魔王と戦おうとしている勇者だと名乗って、その勇者がこの街にいることを伝えたらどうなるだろうか? という発想から思いつきました。そのことで俺は魔王と戦う覚悟を決めることが出来ました。そして、俺は自分の力を試す為にこの王都を抜け出して魔物と戦っていこうと思いました。そこで俺は仲間たちとともに王城を抜け出そうと考えていたが俺の実力が足らないと判断して一度、引き返すことを決めたのである。そして俺達は魔王軍に見つかる危険性が少しは減ることを期待して夜中に脱出することを決めて準備に取り掛かる。まずは変装道具を探すことにした。しかし変装に使う物が見つからず俺は頭を抱えることに。

「なぁ、お前たちに聞きたいんだが俺を変身させる方法とか知らないか?」

「それは無理だ。私も、そういった技術を習得しているわけではない」

やはりダメか。ならば俺はこれからどうやって行動すべきなのか考える。しかしなかなか良い案は浮かんでこず途方に暮れている俺。そしてそんな時にふと、俺の頭にとある人物の言葉を思い出す。それは、ある男から言われた言葉である。俺は、その男が言っていた言葉を思い出しながらこの現状を改善する方法がないかを考える。そして、俺の中に答えがひらめくのである。その答えとは仲間に女装させればいいのだと俺は考えたのだ。そして仲間に俺は女装をしてくれと頼む。

最初は皆、戸惑った様子だったが最終的には全員納得してくれたのである。それで俺達の中で一番似合う人を選んだ。そして俺はその人のことを俺が女になるときに使っていた偽名を使って呼んでみることにした。

「よしっ、じゃあ次は俺の女になるんだよ。そしてこの場から立ち去るぞ!」その俺の掛け声で俺達は移動を始めた。まず最初にこの王城の正門を目指す。しかし、その途中で兵士たちが徘徊していることに気付いた。そこで俺は急いで、近くの部屋に身を隠す。それから数分が経ちようやく兵士が通り過ぎていったのである。それからしばらく時間を潰すことにして俺達は部屋を探索することに。しかし大した成果もなく時間が過ぎただけであった。そして日が沈みかけてきて俺達に焦りが襲い掛かってきたその時、一人の少女が扉を開けて入ってきたのである。俺はこの機会を逃さないとばかりにその子にお願いをした。その女の子は嫌な顔をしていたが了承してもらったのだ。その子は俺の仲間になった女性に負けないほど美人な人で俺の心はドキドキだったのである。そんなこともあり俺達はこの子の協力を得て何とか城から脱出することができたのであった。そして俺はこの子に別れを告げる。

「色々と迷惑かけてごめんね。君の名前は何と言うのかな?」

「あっ、私の名ですか。私はリリアって言いますよ。よろしくね、お姉さん!」

その一言を聞いて俺は思わず鼻血が出そうになるのを抑えた。この子はとても可愛い。こんな子と友達になれるかもしれないと思うだけで興奮が止まらなくなりそうだと思った。

「こちらこそ宜しく。ちなみに君は一人でここにいるのかい?」

俺は気になってそんなことを訪ねてみる。しかし彼女は何も言わずにただ微笑んでいるだけだったのだ。俺はこの子を見ているうちになんだが放って置けない気分になりこの子の面倒をもう少し見てあげようと考えていたのだ。しかしそんな時、突然後ろの方で物音が聞こえてきたのだ。その音を聞いた途端、俺はすぐに振り返るとそこには魔物がいたのである。しかも、その魔物は魔物の中では強いと言われているミノタウロスだったのだ。

この国の王都には数多くの人間が暮らしていてそのほとんどが一般人であると言ってもいい。なのでこの国を統べる王族たちは民衆を守るべく、強力な戦力を保有していることで有名なのだ。そして、この国の騎士団も他の国と比べてみても非常に優秀だという評判を耳にしたことだってある。

つまりこの国は、この世界で最も安全な場所であると言えるかもしれないとすら思うこともあるのだ。なぜならこの国に生息している魔物の強さは他の地域にいる魔物より格段と強くないのだ。なのでこの国の国民に被害が出る可能性は低いと思われるのである。まぁこの国を支配しているのは魔王軍だからという可能性もあるのかもしれない。とにかく今現在、この王都内では戦闘行為は行われていないみたいだし、一般市民に被害が出ているということはない。だから今は、この国で起きている事件に関しては気にせずに、まずは目の前に迫ってきている脅威をどうにかすることを考えて行動するべきだと俺の考えだ。

俺の仲間達のうちルッズとルッコだけが戦うことにしたようだ。俺は二人に頑張って欲しいと願っているからこそ応援をしている。そして俺も戦おうと思っていたが戦いの最中にこの国の住人を巻き込んでしまったらいけないと、俺は考えてしまったのだ。なのでここは、俺以外の三人に任せることに決めて二人の活躍を期待しながら、この王都から逃げ出そうかどうかと悩んでいる。

それにしても、この王都の住民たちはよくもこれだけの数の人々が生き残っていたものだと俺は思う。しかし俺はその理由が分からない。なぜ人々は避難をしなかったのか、それともできなかった理由でもあるのだろうか。

「おっと危なかったわ。あんたは私が相手だから、安心してね!」

「うむ。確かに貴様を倒さなければ、我々には後が無い。全力でいくぞ!」

俺はルッソたちの様子を伺いながら王都の外に向かおうとする。

しかし突如として俺は、その歩みを止めることになってしまう。なぜなら俺の前に一人の少女が立ちふさがってしまったのだ。俺はその女の子を見てついため息が漏れてしまいそうになった。

その女の子は可愛らしく長い銀髪が特徴的で瞳は綺麗で澄んでいた。肌の色は雪のように真っ白で透き通っている。体つきはまだ幼い子供のようで胸が膨らんでもいないことから子供だと判断した。そして身長は百三十センチメートル前後と低い方だと思われる。そしてその子は白いドレスのような衣装に身を包んでいて手には剣を握られていた。その姿を見ただけでも俺よりも年下だと思われた。だけど、見た目からは判断できないほどの強者だということだけは理解できる。そしてこの子の雰囲気は今まで感じたことがないような独特なオーラを放っていた。そして、俺は、この子が俺が求めていた人だと感じ取ることができたのである。そのせいなのか自然と頬に汗が流れ落ちてしまう。

そして俺はその小さな女の人のことを見つめているとその人が俺に近づいてきた。その人は無邪気そうな表情を俺に向けてくる。

俺は、なぜか体が震えてきてしまっていたのだ。そして、その子は俺に抱き着いてくる。俺はその瞬間に恐怖心から解放され安堵感に包まれるのである。この感覚は初めて味わったものであり戸惑いを感じていたが不思議と悪い気はしなくなっていたのだ。俺はその人が何者か知りたくなっていたので質問をする。しかしその返事が返ってくることはなく俺のことを押し倒す。そして、俺はその勢いで倒れこみその衝撃のせいで地面に頭をぶつけて意識を失ってしまうのであった。

そして、俺はこの王都にきて、はじめての出来事に遭遇し、そこで倒れこんで気絶するという結果になってしまった。

目を覚ました時には俺の周りには既に誰もいなかった。そして周りを見渡すとそこは先程、俺たちがいた城ではなく街の中だった。そこで俺は少し混乱しながらも状況を整理することに。すると俺は何かによって誘拐されたのではないかと思い至った。

そして俺はその犯人が近くにいるのではないかと考えて周囲を警戒している。だが今のところ特に怪しい人物は見当たらないのだ。そこで俺は一度落ち着いて考えることにする。どうしてこうなったのだろうかと俺は思い起こす。確か俺は王都から抜け出そうとしたはずだ。なのにいつの間にか見知らぬ街に連れてこられたということはどういうことだろうか? しかし俺は一つだけ思い当たることがあることに気がつく。俺が魔物と戦う時にルッカ達が女装をしていたことが関係しているのではないかと俺は予想を立てた。しかし、それ以外に説明のしようがないと思いながらも自分の身に起きていたことが未だに信じられないのだ。

俺の容姿が変わったことはどうにもならない事実であると受け入れるしかなかった。なぜなら、自分の体を触ったり動かしたりして確認したからである。しかし自分の体に起きている変化について俺は受け入れたくない。自分の体の異変を受け入れることができるほど、今の俺は心の余裕がなくなっているからだ。俺はこれからどうやって自分の姿を受け入れて生活していくべきかと真剣に悩むのである。しかし、この姿でこの国を出ることは難しいだろうとも考えていた。この国の人々は魔王軍に狙われていることを知らない可能性が高い。ならば、俺はどうすべきなのかと俺は頭を悩ませるのである。俺はこのままこの街に留まってこの世界で魔王と勇者がどのように争ってきたかを調べるべきなのだろうか。

俺がそのようなことを考えながら歩いていると一人の少女が話しかけてきたのだ。その子は俺と同年代くらいの子でありどこかで見たことがあるような顔をしていた。俺はこの子と面識があるかどうかを思い出すために記憶を辿ってみたのだが思い出すことができない。「ねぇ君! なんでこの国のお城から逃げ出したのかな?」

俺は彼女の発言から俺が城の関係者であることがばれているのだと悟った。そしてそのことについて問いただしたい気持ちはあったが今は逃げるのが正しいだろうと思って俺は走ってその場を去ろうとした。しかし彼女の方が俺より素早く反応してきたのですぐに逃げられなくなってしまう。彼女は一体、何者なのだろうかと思っている間に、あっという間に囲まれてしまう俺。そして彼女が合図を出すように指を振り下ろすと同時に俺の周囲には魔法陣が現れてそこから無数の火の玉が飛んで来たのだ。そしてそれは見事に命中してしまい火が燃え盛ってしまう。

その威力はかなりのものだったので俺は全身にやけどを負い痛みのあまりに叫びを上げてしまう。そんな俺の様子を確認した彼女は笑顔を見せながら近寄ってきたのだ。彼女は俺のことを殺すつもりではないのだろうかと考えていると俺の考えを肯定するような言葉を彼女は俺に向かって言う。

「ごめんね、本当はこんなことしたくなかったんだけど。ちょっと貴方の力が必要になってしまっているんだよ」

「そんなことを言われても知らないものは答えられないんだが。そもそもお前は何なんだ?」

「あっ、私としたことがあったね。えっと私の名前はルーカって言うのよろしくね。それで私の目的のために協力して欲しいのだけどダメかな?」

俺はその問いかけに答えることができずに戸惑っていた。なぜなら俺はこの世界の情報を知りたいとは思っていたがそのために誰かを犠牲にするつもりはなかったのだ。それに俺は元の世界に戻りたいと考えていてその方法をこの世界に来ている仲間達に聞き出そうとしていたのである。それ故に俺の答えはすぐに出ることはなかった。なのでこの場で彼女に質問をして少しでもこの世界についての情報を得ようと思った。なので俺は質問を投げかけることにしたのである。

「まず一つ聞いてもいいだろうか? その俺に協力してほしいとはいったい何をさせようというのか教えてくれないか?」

俺の発言を聞いたルーカと名乗る少女はそのことについて語り始めたのだ。その言葉はあまりにも突拍子もないことばかりであり俺がそんな内容に協力するはずがないだろうと考えていた。そして俺を無理やりにでも連れて行こうとするルーカに対して怒りを覚えた。しかし、それでも俺はその提案を蹴ることに決めるのである。なぜなら俺にはどうしても元の世界に帰りたいという願いがあるため、この子に従うわけにはいかないのだから。そして俺は隙をついてルーカから離れようとする。

しかしそうは上手く行かず、俺はあっさり捕まってしまい強制的にどこかに連れて行かれることになるのだった。

「じゃあまずは服を買いに行きましょうか。この服装は目立ち過ぎるからね!」

「嫌だ! 絶対に行かないから離してくれ!」

俺はこの格好のままで外に出るのはさすがにまずいと思っていたため俺はその申し出を断ることにする。だけど、俺の言葉をルーカが理解してくれることはなかったのだ。

結局、俺は無理矢理に連行されることになった。そして俺は、ルーカに服を買うからと言って強引に近くの店まで連れ去られる結果になる。その店の中に入ると俺は店員に案内されるがままに店内を歩き回り、服を見繕われることになったのだ。俺は、俺にぴったり合うサイズの衣服を探すのに手間取ってしまっていた。俺は別にこの国に来て間もないというわけではない。だから、そこまで多くの洋服がこの店に陳列されているとはとても思えないのだ。そのためそれほど時間が掛からずに見つかるものだと考えていたのだが、何故か俺が試着してもどれもサイズがあっていないのである。しかし、ここで諦めたらいけないと必死になっていたその時のことだったのである。

そう、俺はやっと自分の体に合いそうな服を発見することに成功したのだ。

それから俺は急いで服を着替えて店を後にしようとする。

しかしなぜか俺の後を追ってくる者が現れて俺はつい舌打ちしてしまうのであった。

しかし追っ手の正体を確認するとそこには見覚えのある顔の人物がいたのである。

「あのー。なんでここにいるんでしょうか? ミケちゃん!」

「やっぱりタクさんだね! 良かったよ会えて!」

その人物こそが俺の仲間の一人でもある猫人の女の子、ミケラルドだった。そして俺はミケランドと別れてから今までの出来事を簡単に話し始める。

そして今俺が置かれている状況を改めて確認するためにこの王都にいるという勇者に会うためにこの王都に訪れたのだと話す。

するとミケランドは勇者の名前を聞き驚いていた。

「その勇者はルクスという名前ではありませんよね?」

「違うな。名前は確かリセだ。しかし、なぜその名前を? もしかして知り合いなのか?」

俺は、ミケの言っている人物がルックスに似ていることからもしかしてと思ったのだ。そして、俺の予想通り、その人は魔王の呪いで姿が変えられてしまったと口にする。

しかし、ルッチの話によると、その姿がルクスの姿と似ているということはルックスと魔王軍との戦いにルッツたちのような存在が深く関係していると予想ができるのである。しかし俺にはまだルクスがルッツたちの先祖であるという話は信じることはできなかったのだ。そこで俺は、そのルッズに尋ねてみるとやはりこの世界の人間ではないようであり、この世界での常識に疎かったようだ。そして俺はルッカたちにその話をしてみることに決め、そのことを皆に説明することにしたのである。そこで俺はミケの方に向き直りこの子を連れて行った方が良いのではないかと俺は考える。しかし、それはこの子にとってあまり好ましい状況とは言えないのである。なぜならばこの子の家族が魔王軍と繋がりを持っているのなら当然その事実を隠し通す必要があるはずだからだ。俺はそのことを説明すると、この子はこの先どうしたいのか俺に尋ねてくる。

そこで俺は、この子がどうしてこの国にやって来たのかについて尋ねるとどうやらこの国は魔族と関わりがあり、この子に何か危険が及ぶかもしれないと考え俺達はこの国を離れることに決めた。そこで俺はミケロンドの方を振り返り一緒に来て貰おうと思うと伝えると、 その返答を待っていたかのようにルッカたちはミケロンドを囲んでしまう。そしてミケランドはこの場を逃げることを決意する。しかし、そんな彼女を逃がしてくれるほど敵側も甘くはなかった。

俺達の周りを取り囲まれた彼女は絶体絶命の窮地に陥ってしまった。

そして俺はというとこの状況で、どのようにすれば一番最善の選択をする事ができるのかということを考えた。

しかし、そのような事を考えたところで俺達がこの場で生き残れる保証はどこにもない。ならば、ここは俺の知っている情報をこの国にいる全員に知らせておきたいと考える。俺はとりあえずこの場に居合わせた者たちに俺の持つ情報を伝える事にした。しかし、それを黙って聞き届けるほどお人よしはいないのである。

その結果、俺とルークはその場に集まった人たちと戦う事になる。だがそんな事をしていては俺達に未来はないと判断し、俺とルッチ、ルーカ、ドラコ、ミケランド、ルーク、ルッソはその場を離れて俺の知っているこの国の情勢について伝えていくのである。俺はこの国がどれだけ危険な状態に置かれているかをみんなに伝えることで俺の意見に同意してもらうことにしたのだ。

そして俺の話を聞いたこの国の人達の反応はそれぞれ違ったが、全員がその事実を信じてくれたようであり協力しようと申し出てくれたのである。そこでルークがその協力者を募るため声を張り上げる。その呼びかけに応えてくれたのはこの店の店主であるデムナであった。

その後、俺とルークは他の者達と共に行動を共にすることになる。俺はその仲間たちに自分の力を見せ付けなければならないと考えていたためこの世界に来た時のステータスで戦おうとしたのだが、俺はこの世界にやって来てからはずっと本来の姿で過ごしてきたためステータスの確認を怠っていた。その為に俺の能力は全盛期より下回っており俺一人でこの国を守れるか不安になってしまう。俺がそんな考えをしている時に突如として現れた魔物が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。

しかしその攻撃は突然に現れた一人の青年によって防がれてしまう。それはルックだったのだ。彼は一体何が起きたんだといった表情をしており俺はその光景を見て冷や汗を流してしまう。

そしてそんな時である。突然の轟音に俺を含めた全ての者が警戒態勢をとると、そこに居たのは、巨大な蛇の魔物だった。その見た目はかなり不気味であったがその鱗の色を見る限りその魔物に敵意はなさそうだと俺は判断し少し安心していたのである。しかし俺はここでこの蛇の魔物と目が合ってしまい戦闘に突入することになってしまい苦戦を強いられた。この魔物の強さがどの程度のものか把握できていないが俺が本気を出せば何とかなりそうなレベルであったのは幸いだった。そしてこの事態を引き起こした犯人であるこの国を治める領主に俺は問いただしたところこの騒ぎの原因は俺がこの世界にやって来たことによるものだということが発覚。その言葉を聞いて俺はすぐにこの国から脱出することをこの場の全員に宣言しこの王都から去ろうとする。その前にまずはこの場所がどこかを知る必要があり、それを調べようとしていた俺に対して国王を名乗る人物が現れ、自分がこの国の最高責任者だと口にする。俺はその人物に対してお前にこの世界を統治する権限があるとは思えないと言ってしまう。なぜならこの世界には勇者がおらず、その力を悪用するような人物が国王を名乗っている事が信じられなかったからである。しかしそんな俺の考えなど無視をしてその人物は俺に向かってこの国での生活を提供する代わりにこの国の問題を解決するようにと言ってきた。

そんなことを言われると流石に無下にすることも出来ず俺は仕方なくそれを引き受けることに。そしてそれから俺は、俺に協力してくれたこの国の人々に、この国で暮らしている人々のことについて話を聞くことにするのである。

「じゃあ俺に教えて欲しいことがあるんですけど良いですか?」

「いいですぞ」

「この国の住民はどうやって暮らしています? あなた方のように生活が出来ていない人も大勢いるように見えますが?」

「確かに、貴方の仰る通り我々もこの国の人々と同じように生活をすることが難しいのです。というのも我々は元々別の土地に住んでいた種族なのですが、ここ最近はこの国に訪れる商人たちからこの国独自の品物を手に入れるのにかなり困っているのですよ。そのため我々の商売も思うように出来なくなっている状況でございます。それで、もし良かったら私と一緒にその問題を解決してくれるとありがたいのですが、如何でしょうかな」

「分かりました。でも、この国に滞在できる時間は限られていますので、この国にいる間にこの国での問題をすべて解決するつもりではありますが期待はしないで下さい。まぁまずはあなた方が普段から使用している場所の視察から行いましょう。それが一番手っ取り早いと思いますので」

「わかりました。こちらにどうぞ」

そうして俺とデモンナは街に出るために外に出ると街の中を歩く。

その街並みを見てみるとやはり他の都市とは違いこの街には人が住んでいないのだろうかと疑問を感じるほど人の気配がなかったのだ。しかも、俺が訪れた時には、まだ魔族の襲来もなく平和だったのだが今ではすっかり変わり果てていた。そこで俺は、何故こんなことになったのかという原因を突き止めるべくデマナンに事情を話すと、この国の財政が傾いていることが分かってしまい俺は、そこでデマナンがどうして財政難になってしまったのかを質問してみる。

「この国のお金はどのような通貨を使用しているんでしょうか?」

「主にこの辺りでは、ルギと呼ばれる通貨を使っておりますが何かおかしいところがありましたかな?」

「いやそういうわけじゃないんだけどこの国はどうしてここまで貧困に陥ってしまったのかなと思ってね。それにさっきこの国の住民はほとんどこの王都に住んでいるって言っていなかった? なのになんでそんなにも多くの家が壊れたり、廃墟になってたりするのかなってね」

「なるほどその説明を致しますね。実を言いますと少し前まではこの王都では人々が普通に生活をしていたのは確かだったのですがある時を境としてこの王都の外からやってきた者達がこの国に訪れ、我々が使う通貨を奪い、さらには家も壊してしまったのが事の発端となっておりまして、現在王都の住人のほとんどが難民となっています。それとこれは噂の域を出ない話ではあるんですが王都の近くにあるダンジョンのモンスターが急激に増え始めてしまいその影響でモンスターが暴れ出しさらに追い打ちをかけるように魔王軍による侵略が始まったことでこのような有様となってしまったので御座います。本当にこのまま魔王軍がこの国を占領されてしまうのではないかと考えたこともありますがそれでもこの国が今まで保たれてきたのはある人物のおかげなのです」

「へぇ。一体どんな人がこの国を支えているの?」

俺は、そこで魔王軍との戦いが始まる前にあったという勇者の存在に興味を示すと、その人物の名前を俺は尋ねてみる。

するとデモントはその名前を聞いただけで驚きを隠せないようであった。その反応が気にかかったため俺は勇者のことを尋ねたのだがその時の返答に俺は驚愕することになる。

「魔王を打ち破ったと言われる勇者様のことですか? あの人は凄かったですね。その実力がこの国の者全員に認められたことで今の地位まで上り詰めたと言われています。その証拠にその人は、その力でこの国の問題をたった一人で解決してきたと言いますし。だから、その勇者様に頼れば問題は全て片付くだろうと考えていたんですがどうも最近は姿を見せないようなんです」

「そっか。ありがとうデモントさん。ところでデマナンさんの所にはまだこの国に来るまでに立ち寄った人達がいるんだよねぇ。ちょっと会ってみたいなと思うから案内して欲しいんだけど、どうかな? デモンド」

俺はデムナンの話を詳しく聞く必要があると思った。それは俺達が元いた世界から来たかもしれないという存在に少しでも近づいてみようと考えていたからだ。その人物がもし元の世界に戻れる手段を知っていてそれを知っているのなら是非聞き出したいし、もしも知らなかった場合はこの世界の人間よりもその技術は進歩している可能性もある。その可能性があるのならば俺達はどうしてもそれを知りたいと俺は思ったのだ。

しかし俺の言葉に対して何故かデムナントの反応は悪かった。その理由を尋ねると、どうやら今はこの場を離れることは危険であると言う。そしてこの場を離れたが最後俺達は間違いなく命を落としてしまうだろうと警告された。だがしかし俺にはそんな事は関係ない。俺はこの国を救うために必要なことをしようとしているだけでありそのために俺はこの場所に訪れたのだ。だから俺はデムナンの意見を聞かずにそのまま王都を出ていこうとするがその途中で俺達の行く手を遮るように魔物が現れてしまう。だがそれも一瞬の出来事であり俺はあっけなく倒してしまうのであった。その光景を見たデムナンは俺に戦う気はないのかと訪ねてくるが、俺としては別にここで魔物と戦闘になる必要はないと考えている。それよりも今はデモンとデムナント達との会話に集中しなければならないと思っていたからな。

「その、デモンドさんに頼みたい事があるんだよね」

俺はこの王都の治安を守る警備隊のトップを務めている男に話し掛けるとその男に対して自分の仲間にならないかという話を持ち掛けた。しかし当然のことながら彼は首を縦に振らない。それどころか彼はそんな事をしたら自分だけではないこの王都に暮らす住人全員が危険に晒される可能性があるため協力はできないと言い出す。俺はその言葉を聞くとある事に気づくことになる。

「まさかあなた方はその身を守るために、ここに来た商人たちから物資を買い取っていたりしていないですよね」

俺はこの男が自分達の安全を確保するためにそんなことを行っているのではないかという疑念を抱き問い詰めていくと俺の考えは的中する。俺の考え通りこの男は商人たちが来る前に既に王都に訪れている人物から食料などを買っていたという事が分かった。しかもそれを俺達に話すことはなくただひたすら隠し通していたのである。俺としてもそれが事実なのかは分からなかったがその可能性が高そうだったためデモンと二人でデムナンに近づき話し合いをした結果、俺達と共に行動してもらうことを決める。その際に、もしこの男のことが国王側にバレたらまずいと俺は考えデモンと相談をすることに。そしてその結果俺達はこの男に成り済ますことを決めた。俺達の姿をこの国の人間に見られたくないからというのが主な理由だ。しかしそれだけでは終わらずに俺達二人は、この男が持っていた身分証を手に入れこの国の王に謁見し、俺達の力を認めてもらうことに成功した。それから俺は王様に事情を説明すると王は俺の提案を受け入れ、俺の望みを叶えるために動き始める。俺は、この王都で起きている問題の原因を突き止めることにしたのだ。

俺は王都の中で起きている問題に頭を抱えるしかなかった。王都内に存在するスラム街が予想以上の発展を遂げていたのだ。その原因がこの王都で暮らしていて飢えによって死んでいる子供たちのせいであることが発覚してしまったので流石に見過ごすことはできなかったので俺とラピスはどうにかできないかと頭を悩ませていた時にある情報が手に入ることとなる。

「スラム街の連中が奴隷市場を襲っているだと!? どういうことだ」

「はいどうやら奴らの中には元冒険者や盗賊などと言った犯罪を犯してきた経歴を持っている者たちが多数存在していました。なのでそんな者達にとって奴隷商などという職業をしている者は天職のようなものだと考えられました。それで先程奴隷市場に警備兵が到着する前に奴隷たちは逃げ出しました。おそらくこの騒動も彼らの仕業ではないかと我々は考えてるんですが。それでその逃げ出した者達の中に勇者様が紛れ込んでいるということも我々は耳にしています」

「その話、本当なんだな」

「えぇ。ですのであなた方が探しているであろうこの王都に暮らしているという勇者が、その件にも関与していることはほぼ間違いがないと考えていいと思われます」

「分かった。お前たちは引き続き調査を続けろ。何かあれば連絡をよこせ。それと奴隷市場の警備を強化しておくように。それとこの件を王城に報告しておくからすぐにでも兵を送り込むように」

そうして俺は、部下からの報告を受けてすぐさま奴隷商人たちを捕縛して回るように指示を出すと同時に俺自身もその場所へと足を向ける。そこには多くの人たちが集まっており中には、子供もいた。その子達には申し訳ないと思いつつもその場で暴れている奴隷たちの対処をするために魔法を行使することにする。俺は、そこで暴れている者たちの動きを止めるために拘束魔法の発動を行い一人残らず捕獲していくがその中には勇者の姿はなく俺はこの国に潜む影の正体を知ることになるのであった。そこで俺はこの王都で起きた問題の根本を解決する方法が浮かぶ。その方法は単純で魔王軍と繋がっている人物を捕らえることだった。

魔王軍との関係性を証明するものがあれば一番良かったがそれが難しい場合であれば最悪は、その人物を捕まえてから拷問をするのも一つの手ではあると俺は思うがこのやり方では時間もかかるうえに相手側が口を割らなければ意味もない行為であるため現実的ではないが一応その可能性も考慮に入れ俺はこの問題を解決するための作戦を考えることに。そして俺はまずはこの国に住む人々と関わり合いを持つことにした。それがこの王都を治める者の仕事でもあるため俺はこの王都の人のためにできることを行うことに決めたのであった。

この王都では今大きな問題が起きているらしい。俺はそのことを聞きつけてそのことについて詳しい情報を入手した。その問題についての情報を聞き出そうとしたところこの王都で何か事件が起きているのか、王都の住民は皆怯えており俺に対してあまり話をしようとしなかったのが現状ではあった。だがしかしこのまま黙って放置をすることもできないのがこの王都に住まう者達の問題でもあったので仕方がないという判断の元俺は行動する。

「この国には今魔王軍の者達が押し寄せてきていますが。どうしてこのような事になってしまったのでしょうか?」

俺はこの王都の住民の一人に対して俺はそのような事を聞いてみたのだが、住民は恐怖心を抱いてしまい何も答えなかった。俺はそれでもこの場で起きてしまっている事態について少しでも知りたいと思っていたので、俺はさらに住民に質問を続けるがそれでも答えようとはしない住民たち。俺は仕方なく他の人に聞くが、この国で今起こっている出来事に関しては誰も知らなかった。その事で俺は、魔王軍が侵攻を始めたことによってこの国にいる人々の生活に影響が及んでいることは確かな事なのだろうと俺は理解した。だからこそ俺はこの国の人達を助けてあげたいと考えているのだ。しかし俺はその気持ちだけでは解決できる問題でもなく俺一人で出来ることには限度があると自分自身でも分かっている。だが、この国が危機的な状況に陥っていることは事実であると言わざる負えないのもまた確か。だから俺達は、この王都で生活している人達を救う方法を考えなければならないと思っているのだ。俺達がこれから向かう場所というのはこの国に存在するダンジョンだった。

俺達三人は、現在王都に滞在させてもらっているデモンドの家の近くにある森に足を運んでいた。目的は当然のことながら俺達がこの王都にやってきた本当の目的を果たしてしまおうと考えているからである。しかし、俺達の前に現れる魔物の数はあまりにも多かった。その数はもはや尋常ではない。この数は俺達が王都に向かう前よりも多くなっていることは確かだ。俺はそのことを疑問に感じながらも目の前に姿を現した魔物たちに攻撃を開始する。しかし魔物の攻撃はかなりの威力を誇っているようで俺は、その魔物を倒すことは出来たが俺が相手にしていた魔物よりも強力な魔物が現れてしまい俺はそれを相手にすることに。するとそこでデモンが自分の仕事は終わりだと言いその場を離れていく。それから少しの間戦闘が続き俺はついに目の前に現れた魔物を討伐することに成功した。その時にはかなりの魔力を使ってしまったのは言うまでもなかったのだ。そして俺は、自分の身に起きていることを理解するのに時間は掛からず、その理由がすぐに分かったのだ。それは、俺の体に流れているはずの俺の中にある魔力がほとんどなくなっているということ。つまりは俺の持つ能力である魔力操作の効果も薄れていることを示していたのだ。だから、俺はここで自分が今までしてきた戦い方は通じないかもしれないと不安を抱くことになった。だが、俺は自分に負けるつもりは毛頭なかったのでそのまま戦うことを選択。

そして俺はそのあと何度も現れる魔物を倒し続けてようやく目的地に到着する。そこに待っていたのは何の変哲のない洞窟だった。その事に俺は、拍子抜けしてしまったような感覚を感じてしまった。そのせいで俺は思わず笑ってしまうが俺はこの中に俺達をこの王都に送り込んだ張本人がいるのではないかと考える。俺はそれからゆっくりと歩いて行きながら洞窟の中を進んでいくとそこには俺のよく知っている人物が立っていた。その姿を確認した時、俺は驚きを隠しきれなかった。何故ならば、そこに存在していた人物はかつて魔王軍に所属し、俺が倒した男と同じ名前を持っていた人物でありかつて勇者として共に戦った仲間であり俺が最も嫌いな存在であった。しかし今の彼の様子は明らかに普通ではなかった。俺を見て明らかに様子がおかしかったのだ。彼は何やら呟いているようであったが俺にはその言葉が聞こえなかったのだ。だが彼は急に大きな声で笑い始める。

「フッハッハァ!! まさかお前がこんなところで出会うことになるとはなぁ」

その男の様子を見た時に俺が真っ先に思ったこと。それが目の前の人物を絶対に逃がすわけにはいかないということだった。だから俺は彼に向かって剣を振るうがその一撃を軽々と受け止められてしまう。どうやら身体能力はこちらの方が圧倒的に上であるにもかかわらず互角に渡り合っているということはそれだけ相手も強くなっていることを表している。それに俺の直感が目の前に立っている男が俺の仲間だった人物である神木勇だということを教えてくれていた。だからこそ俺はこの男がここに来た経緯を探るために彼に話しかけようとした瞬間に俺は腹に強い衝撃を受ける。俺は腹部を見るとそこには俺に蹴りを入れた勇者の姿があった。俺はなんとか耐えようとしたがあまりの痛みによって俺は膝をつくと勇者がそんな俺の首根っこを掴んで地面に押し倒してくる。俺は抵抗しようとしたが何やら不思議な力によって押さえつけられ身動きを取ることができなかった。しかし、俺も簡単に捕まる気はなく勇者の腕を掴み、魔法を使おうとした。

しかしその次の瞬間に俺は首を勇者に掴まれてしまうとそのまま勇者が持っている武器の刀に突き刺されるように貫かれると俺はそのまま絶命する。その直前に勇者の顔を見る。俺はそんなはずはないと思ってもう一度見るがやはりそこには間違いなく勇者の姿がそこにはあり、そしてこの男を殺さなければならないという強い意志を俺は抱く。俺は必死に足掻こうとしたが体は動いてくれずに次第に意識は闇の中に吸い込まれていき、最後には消えてしまったのであった。

「お前が勇者か? どうしてここに?」

俺はその質問をする。その男は魔王軍の四天王の一人であると聞いていて、この王都のダンジョンに潜っているという情報を入手していたのでここまでやってきたのだが。その男は俺の知り合いの少年であった。そのことからその事が本当だという事を証明しており、俺は警戒心を解く。

「あんたがあの伝説の人物のリクトさんっすか!? あぁ本当に良かったぜ! これで俺の命運もつきたと思いましたけど、こうして助けてもらえて本当に助かります」

その男の言葉遣いはとても汚いものであり俺は正直言って嫌気がさした。

「おい。なんなんだお前の話し方とその口ぶりは? ただの平民風情が貴族にタメ口を使うとか無礼だろ!」

しかし彼は気にした素振りを見せないので、仕方なく俺が注意することにしたのだ。だが彼は、まるで反省をしておらずそれどころか貴族の方に敬意を示す必要もないといい始めてしまって、それが更に許せなくなった。

だから、彼がどういう教育を受けて育ったのかを探りつつそのことで叱ってやったのだがそれでも彼の口調に変化が訪れることはなかった。俺はそこでこの場にいると危険なため移動しようとしたところその男から逃げないように言われると俺は大人しく従うことにしたのである。なぜならばこの男が何者か分からない状態で逃げるのはあまりにも危険だと思えたからだ。そのことが理由だった。

するとこの国の貴族の一人と思われる人物が現れて俺に謝ってくる。その人はどうやらこの国の大臣をしているようでその人が、今現在この王都で問題になっていることについて話してくれると俺は思っていたら、なぜかいきなり土下座をされてしまった。

俺が何が起きたのか分からないままでいると、この国で起きていることについて教えてくれるという話になったのでとりあえず話を聞いてみることにした。この国は今現在かなり厳しい状況に置かれているらしい。その事は、今現在俺の目の前に現れて土下座をしている男性の説明により分かったのだ。俺はその内容が真実であるかどうかを確かめるための話を聞き、嘘偽りがないことが分かった。だから俺はこの国のために何かできることがあれば協力しようと考えていた。そして俺はその事について詳しく話を聞こうとする前にまずは目の前にいる二人に対してどのような対応をすべきなのかを考えていた。もしここで下手な態度を取れば、何か厄介なことに巻き込まれる可能性は非常に高い。しかしだからと言ってこのままでは俺はただの時間と労力を浪費しているだけのような気もしてしまうのだがそう考えている間にも時間だけが過ぎていく。だがその考えは意味がなかったようだ。

なぜならこの二人は俺に助けを求めているからである。この二人が困った時には、手を差し伸べようと決めていた俺だったがそのタイミングが訪れたのだ。しかも彼らは、自分達で問題を解決しようと努力せずにわざわざ俺を頼ってきた。その行動こそが俺をこの国での立場というものを大きく変えていくことになるのであった。その日を境に俺はこの王都で有名人となりそしてその名声が国中に広まり多くの人達に俺は頼られる立場となった。そのことによって俺は国にとってなくてはならない存在として認識をされるようになったのだ。その結果、俺はこの王都において国王様から呼び出しを受けることになる。そしてそこで俺に与えられた役割は、勇者として王城に忍び込んできた謎の敵に対して俺の力で立ち向かってほしいということ。そして俺はその依頼を引き受けることになると俺は王都から離れて、勇者と共に行動することにする。それから俺は、勇者の手助けをしながらその勇者と一緒にダンジョンへと侵入して最下層を目指す。その道中で俺が知っている人物と出会うこととなるがそれはまた後ほど説明するとしよう。

しかし、勇者である彼はダンジョンを進むことにかなりの時間を消耗してしまい、さらには怪我を負わせてしまったこともあって彼はしばらく休む必要があると思った。そのため彼を休ませるためには王都に戻ろうと思っていたが勇者は王都に戻ることを拒んだ。だが俺としてはこれ以上彼だけを戦わせる訳にはいかないと考えていたので王都に戻りたいという意思を伝える。その事で少しの間揉めてしまうが最終的には彼が俺の意見に賛成してくれて、俺たちはそのまま再び旅を続けることになったのだ。それから勇者の仲間と合流するためにその仲間を探している時に一人の男と出会い、その男が俺の師匠だと名乗ったのだ。それからしばらくの間は行動を共にしていたが、その男の実力が異常だと感じ取りその実力は恐らく俺よりも上のレベルではないかと予想できる。そしてその男は突然俺達に戦いを挑んできたのだ。俺は、勇者を守るために戦いそして勝利した。だがその戦いの最中に俺はあることを思いついた。それは、目の前に現れた男が実は俺達と同じように転生してきた人間なのではないかと考えたのである。しかしそれを確かめようとした時に、男は姿を消した。

その男が姿を消す際に俺は、俺達が知っている神木勇が俺の目の前に現れていたような光景が頭に浮かんだのだった。だから、俺はその事が頭から離れなくなり勇者に相談をする事にした。彼は俺の話を聞くと信じられないという表情をしていたが俺の真剣さが伝わったのか信じてくれることになった。そして俺達は王都に戻ってきて、それからは王都に出現した巨大な魔物と対峙することになった。

その魔物の名はバケモノと呼ばれる存在である。その存在を見た瞬間、俺はすぐに俺達の世界に存在するモンスターと全く変わらない姿だと思い、もしかしたら俺達の世界の生き物が進化したのがこの世界の存在なのではないかと俺は推測する。俺はそんなことを考えながら戦いに参加するがやはりこの世界での身体能力に体が慣れていないという事もあり思うように戦うことができない。俺はそんな自分自身の体に不満を抱くと目の前の化け物を相手に戦う。そして何とか勝利することができたがその代償として俺の腕と片足を失ってしまうことになる。

そのせいで再び意識が遠のいていきそのまま俺は意識を失った。そして意識を取り戻した時にはすでに治療が済んでいたのであった。俺はすぐに起き上がり、自分がどのぐらいの期間を眠っていたのかを確認しようとしたら俺は驚くべき光景を見てしまう。俺が目を覚ますのをずっと待っていたかのように勇者は泣いておりそんな勇者の様子を見て俺も思わず涙が出そうになる。俺はそれから勇者と話し合い、お互いのこれまでの情報を共有することになった。

しかしその際にも俺の体は満足に動くことができず、勇者の肩を借りることになってしまうが仕方がないことだろう。なぜなら俺の身体は完全に治ることはなく一生この体のまでありそうだからだ。そのことは、俺は自分の体に宿った呪いがあまりにも強力なものでもう解くことはできないという結論に至る。だからこそ俺は、勇者の力になる為に俺自身が出来ることを模索していた。その時に俺には思いもしなかった人物がやってきて俺の体を気遣う言葉を勇者と俺にかけてくれたのだ。俺のことを気にかけてくれた女性の名前はルミナスさんと言うらしく、彼女はどうやら勇者と関わりがあるようで彼女の存在は、俺にとっては勇者以上に重要な存在であった。

彼女の言葉のおかげで俺は勇者と会話ができるようになっていき次第に勇者との仲を深めていき、お互いに本当の意味で心が通じ合うようになっていた。そしてこの勇者とならばどんな強敵に出会っても勝つことができると信じていたのだ。だが俺は勇者の仲間の一人である男と出会ってしまった。そして俺にその男は、まるで人が変わったように俺に向かって襲いかかってきたのだ。その男と戦ううちに俺は、その男が元々持っていたスキルを使うことができるようになり、さらには自分の力を高めることができた。

そのおかげで俺の戦闘能力が急激に上昇すると男は俺の攻撃を軽々と避けてしまい、俺がいくら攻撃を仕掛けても全て避けられるか、防がれたりしてしまった。そして俺は男に剣を振るわれてしまい俺の片腕は吹き飛んでいってしまう。そして俺は地面に倒れる。すると男がそんな俺の元に近づき俺の首元を掴むと俺の心臓部分にナイフを突き刺そうとするので、俺は必死に抵抗する。俺はこのままでは確実に殺されると思い必死で抵抗したが俺の行動は空しく終わる。

「リクト!大丈夫!?」

しかし俺の首を締め上げる男に対して、勇者が駆けつけてきて男の攻撃を止めることに成功したのだ。その後勇者は俺を助けてくれてそして俺は助かったのだが、勇者の話ではあの男は既に死んでしまっているということを聞かされた。その理由については俺は納得ができずにいたが俺自身にも分からないことがあったのだ。俺はそのことについては考えることを放棄することにした。しかし俺は勇者に対してこれからの戦いについて話をした。だがそこで俺は新たな脅威となる存在を目にすることになって、それが魔王と呼ばれる人物であることが判明した。だが魔王が現れるのはかなり先の事なので、今は準備をする期間だと考えて行動することに決めた。

だが、それでもまだ問題は残っている。それは俺に埋め込まれていた魔族にしか効果のない毒のせいで完全に俺の体が修復することができないからだ。俺の肉体年齢は既に50歳を超えてしまっている状態になっていたのである。そのため、これ以上成長することはないのだ。だから俺が今から鍛え上げて成長させようと思っても意味がないということになるがこの世界に転生をした人間は俺だけじゃなかったのだ。その人物はこの王都に存在していてその人はなんと勇者の弟で名前はライトと言ったはずなのだが何度会っても思い出すことができないのだ。しかし何故か名前を知っているということに関しては確信を持っているのは確かである。だから俺はもう一度会うことができれば絶対に記憶を取り戻す事ができると考えていた。それに勇者はこの王城に保管されている本の中に書かれていた魔法について研究をしていた時にあることを発見したと言っていたためそのことが解決すれば、どうにかできると考えているようだ。

だがこの世界には未だに未知の能力が存在していると聞いているために一筋縄ではいかなさそうな雰囲気はしていたのだが、勇者はその問題もなんとかすることができるかもしれないと言い始めたのだ。だから俺達はその時を待ち続けたのである。その結果ようやく勇者の研究の成果が出てきたのかわからないが、俺は再び光に飲み込まれることになってしまったのだった その男は突如として目の前に姿を現し、その行動に警戒心をあらわにしたのは俺だけではなく勇者とルミナスとライトも反応を示していた。だが目の前に現れたその男は攻撃することもなく何かを俺達に言いたいのか俺達に近づいてきたのだ。

俺はその男に警戒しながらも、俺達のことを助けに来てくれたのではないかと思ったのだが、どう考えてもその行動は普通ではなかった。俺が見たその男の行動には不自然な部分があり、まるで目の前に存在している俺達がこの世に存在する生物ではないかのような振る舞い方を見せていたのだ。俺はその行動を目の前にして目の前の男の正体がこの世の生き物ではなく異世界の存在ではないかと考えるようになる。

しかし目の前に現れた男は、いきなり俺達に対して攻撃をしてきた。その行為に一番早くに反応したのはライネルという男性だった。だが俺が思った通り、ライネルが動き出す前に目の前の謎の敵の動きの方が圧倒的に早かった。その結果として俺が今まで見てきた中で最速とも言えるようなスピードによってその謎の敵の姿が一瞬にして見えなくなってしまった。そしてその謎の存在がいなくなったと思った次の瞬間に勇者は何者かの攻撃を受けてしまう。だが俺はそんな勇者のことを見て咄嵯に動いていたために何とか勇者に駆け寄るとその攻撃を受けた場所を確認することができた。そして俺はその謎の存在に攻撃を与えたであろう人物が誰なのかを知ることに成功する。それは俺とほとんど同じタイミングで現れたもう一人の転生者である神木勇であった。俺は勇者に対してどうしてここにやってきたのかと尋ねるが答えが返ってくることは無かった。そして俺の言葉を聞いて勇者が怒りを爆発させながら攻撃を仕掛けるがあっさりと避けられてしまう。そしてそのまま俺の方へ向かってこようとしたので、俺は勇者にここは俺に任せて欲しいと伝えると勇者はすぐに俺の言っていることを理解してくれる。俺は勇者が後ろに移動したのを確認してから再び戦闘態勢に入ると神木勇に向かって問いかけた。なぜこの場所に来たのか?それは俺を殺すためだったのだろうか?だがそんな疑問に対しても勇者と同じように何も語ろうとしない。そこで俺は、そんな二人を目の前にしても恐怖感を感じることがなかったのだ。なぜかは自分でも分からなかったが、それよりも勇者が傷つけられていることに腹が立って仕方がなかった。

俺は自分の身体のことも考えずに神木勇に飛びかかると攻撃を仕掛ける。しかしその時に俺と同じような力を持った人間がもう一人現れて俺に襲いかかってきた。しかし、その人間も俺と同じぐらいの強さの持ち主だと思っていたのだが勇者よりも弱いというのがすぐに分かってしまい、それほど強くないということが分かった。

だが俺はこの二人の強さよりも気になるのは先程までいたはずの勇者の気配を感じ取れなくなったという事に驚いていたのだ。そしていつの間にか神木の側に移動している姿が見えていた。どうやら、その神とが瞬間的に移動をして勇者の手助けをしてくれたようだ。それならと俺は、俺の持っているスキルを使ってみることにした。このスキルは一度でも使ったことがあり俺がこのスキルを使うことを了承してくれていれば使うことができるのだが今回は使うことは無理だろうとは思っていた。だけども、もしかしたらと俺の心の中では思っていたのだ。その予想通りにスキルを使うことはできなかった。そして俺はあることに気づく。それは、俺はそのスキルを発動するために意識を集中させたつもりだったのにも関わらず実際には、俺は無意識の内にそのスキルの発動の準備を行っていたのだということに気がつき驚く。なぜなら、そんなことが可能なのかと疑ってしまったのだ。だが、もしかしたら俺が覚えたばかりのこのスキルの力が凄まじいものだからできたのだと推測した。そして俺の目の前に現れた人物とは、俺の双子の弟だったのだ。その事実を知ったことで、俺の頭の中には様々な思考が流れ込んできて頭の中が混乱してしまう。だがそんな俺のことを見ていた双子であるはずの弟の目は冷たいものとなっていたのだ。

俺は何とか弟に攻撃を仕掛けるのだが、弟は一切の反撃をすることもなくその場に立ち尽くしたままであった。俺はそんな態度を取るのであれば容赦しないと心に決めて攻撃を仕掛けようとした時に俺は勇者が俺のことを庇うように立ちふさがるので勇者の邪魔になってしまうと思い俺は攻撃することを躊躇った。すると、そんな時に突然勇者と神木は姿を消すことになる。

俺は一体何が起こったのかさっぱりわからなかったが、その時には既に弟が姿を消しているということだけは確認することができた。そして、それと同時にライニスとルミナスが俺の元に近寄ってきてくれて、俺に話しかけてくれたのだ。そこでライナスとルミナスは勇者のことを気にしていたが、二人は大丈夫なのだろうかと俺のことを心配するような表情をしながら声をかけてくれるのである。

だが俺としては今現在自分がどんな状態に置かれているのかわからなかったので勇者と神のことが気になっていた。そのため俺はライラスに勇者と神の姿を探すように指示を出したのだ。

そして俺も勇者と神様がどこに行ったのかを確認するためにあたりを注意深く見渡した。その結果わかったことがある。それは今この場所にいる者達の中でこの里の人達が誰もいないということにだ。

そして俺がこの里の人々がいないことに驚いたのと同様にライナスも同じように驚いいていたのである。そして、その時の俺はそんなライナスとの話の内容で俺は勇者と神がこの場から離れたのではなくてどこか別の場所に連れ去られたという可能性が高いのではないかと感じ取ることができたのだ。その証拠に俺達が話している最中にライノスは突然と苦しみ始めてその体を変化させていき最終的には、この世界の魔物であるリザードマンと呼ばれるような姿をしていたのである。

その光景を見た俺が驚愕しているとルミナスも同じくリザードマンの姿を見ていた。そして俺が勇者達のことを追いかけた方がいいかもしれないと思ったのと同時にルミナスも同じことを考えていたらしく、二人で追いかけることになった。しかしそこで問題が起きたのだ。それはルミナスとの話し合いの際に俺が転移系の魔法を使いこなすことができるという話をしたのだがルミナスは俺がどのような能力を持っていたのかを完全に思い出せなかったらしいのだ。

俺の転移能力はそこまでレベルが高くないので自分よりレベルが高い相手を転送させることができないのである。しかも相手が俺よりも格下の存在であっても俺が相手に触れられていなければ使えないのだ。だから今回のように勇者達を移動させるために俺達が触れ合って移動することは不可能ということになるのだ。そうなると残された手段が俺達の脚を使って追跡するという方法しか残されていなかったのである。そのため俺とルミナスは必死になってこの広い森でどこに勇者がいるのかという手がかりを探し回った。しかし結局見つからなかった。だから俺とルミナスは途方に暮れてしまったのだが俺は諦めなかった。なぜならこの森には他にも仲間達がいることを思い出したからだ。

俺はこの森の中に住んでいる種族の中でも強い方だと思っているのはオークとゴブリンとエルフとダークドラゴンだけだ。それに、もしも他の場所にいるのならばその場所も探さなければならないのだ。だがそんな時だった。俺は目の前に何かが現れるのを確認することができたのだ。そしてその現れたのは俺達の仲間でもあるはずの者だった。

しかし、俺達はその人物が俺達に敵対心を持っているということは直ぐに察知することができ、そしてその人物の正体を知ることができて驚きの声を上げることになった。なんとその人物は勇者の弟であり俺の兄である存在だったのだ。

「久しぶりですね、皆さん」

俺の目の前に突如として姿を現したのはなんと、俺と兄であるライトだったのである。まさかライトとこのような形で再開することになるとは思ってもいなかったので本当に驚いていた。俺だけじゃない。ライトが俺達の目の前に姿を現したことによって、その近くに存在していたルミナスとライネスとリーシャもかなり驚いていた。

「え?もしかしてあんたが俺の兄弟なのか?」

俺は恐る恐る尋ねてみるとライトはその通りだと返事をしてくれたのだ。どうやらこのライトという青年は転生した人間ではなく、この世界で産まれた本物の人間のようだ。そのことから俺は勇者の弟は俺が思っていたよりもずっと若いのではと予想することができる。おそらくこの世界では二十歳程度だろうと思う。だがその年齢を考えるとかなりの実力を持っているのではないかと思ってしまったのだ。そんなことを俺は考えているうちに、このライトという青年の容姿は前世の世界にいた頃と変わらない姿で現れたのである。ただ一つ違うのは髪の色であった。その髪の毛の色は白だったのに、こちらでは黒い髪色をしていたのである。

それに加えて俺達を見てくる目も前世の頃と違って鋭く冷たい視線を感じるような瞳に変化してきていて少し威圧されているような気持ちになってしまう。だが俺としてはそんなことよりも気になっていることがあった。それはこの世界にどうやってきたのかどうかが気になったので俺はライトに問いかけてみることにする。すると彼は一瞬戸惑った表情を浮かべてから口を開く。

俺はそんなライトに対してどうして俺の前に姿を現してきたのかと尋ねると、やはりこの世界に来るためには特別な理由があるとしか言えないと言われた。俺はどうして彼がここに来ることができたのか気になり詳しく聞こうとしたのだが俺の言葉を聞いた時に、なぜか彼の様子がおかしいことに気づく。そして俺はその理由を探るために彼に質問をぶつけることをやめることにしたのだ。

そしてライトは俺に、あなたにどうしても聞きたいことがありますと、いきなり言ってきていたのだ。そんな言葉を投げかけられた俺は戸惑いを覚えながら、それでも何とかその質問に答える覚悟を決めてライトの方をじっと見つめる。すると彼はゆっくりと深呼吸をして俺のことを見る。

その瞬間に俺も、なぜだか分からないがライトが真剣な表情をしながら何かを伝えようとしているということに気がつき黙って話を聴く姿勢になる。

俺はまずこの場で、僕の名前を教える必要があると言ってきたので俺はその名前を聞いて納得することができた。それは俺と兄である勇者の名前がどちらも光という文字が入っているからであった。俺の本当の名前が明輝ということを知ってか知らずかはわからないが、この勇者は光の勇者と呼ばれているのだと教えてくれる。そして俺はその説明を受けてこの男が何を言い出そうとしているのかを理解してしまう。俺がこの勇者の本当の弟であるのか、それとも勇者ではないのか、それを問い詰めてきているのではないかと思っていた。だが俺は、そんなことを訊かれても答えようがなかったのだ。だって俺はこの勇者ではないのだからな。

そして俺はその質問に対する明確な回答は持っていなかったので何も言うことができず、沈黙するしかなかった。だけどその俺の様子を見てライトは何故か安心していた。俺はその様子をみて首を傾げながらも、ライトは俺のことを見定めていたのだろうと予測した。なぜなら、そのあと俺のことを観察しながら笑みを浮かべていたので間違いないはずだと俺は確信したのである。そしてそんな会話を続けていると俺は目の前の勇者のステータスを覗くことのできるアイテムを取り出した。

俺としてはこの勇者のスキルなどを確認するために取り出したのだが俺はこのアイテムを使うことによって勇者がどのようなスキルを持っていてどれだけのレベルを誇っているのかをすぐに理解することができた。その瞬間だった。今までに感じたことの無い程の衝撃を俺の体の中に走らせてくることになる。

その出来事があまりにも信じられないものであったので、俺は思わずその場で膝を地面につけてしまう。俺がこれほどまでに絶望感を覚えることはあまりなかったので俺は自分がここまでショックを受けるのには当然理由があることに思い当たる。そうそれは勇者が、この勇者こそが俺の兄の生まれ変わりであるということだ。

そんなことは絶対にありえないはずなのだが実際にそれが事実なので仕方がない。しかしそんなことがあるなんてと俺自身が困惑してしまう。なぜならそれは俺が信じたくなかったからに他ならない。俺は俺の双子の弟とこの勇者が同一人物であることを認めることはできなかった。

だから俺は自分の頭の中から勇者の存在を追い出すことにしてから、俺とライトの間に存在している関係性について話すことにした。そしてその話の途中で、俺がライナスと神と一緒にこの場所を離れてから起こった出来事を説明することにしたのだ。しかし俺と神はこの世界に存在する魔王と勇者の存在を知っているということを伝えるのは危険かもしれないと思い伝えるのをやめたのだ。そしてその代わりに俺達はライナス達が勇者の子供であるという事実とライトの父親が俺の父親であるということを話したのだ。

俺がその二つのことを告げると俺の兄であるライトはとても嬉しそうな顔をしながら、まるで長年会うことができなかった弟に再会したかのように、俺のことを抱き寄せて喜びを表現してくる。そんな彼を見ると俺自身も嬉しい気分になってくる。でも俺がそんな感情を抱いている中で俺が今この勇者に対してどのように対応すればいいのかわからずに、困ってしまうことになった。なぜなら俺はまだこの勇者に自分の存在を知らせていない。だから俺の方からも何かアクションを取ることができないのである。俺はそんな悩みを抱えながらこの場を過ごすのだった。

ライナスが勇者の子供を里の中へ連れて行き、そこでしばらく過ごしてもらうという話がまとまりつつあったときに、そこに俺達の方に向かって近づいて来る人物がいることに気がつく。その人物というのはこの里に住む魔族である、オーガと呼ばれる種族の男だった。俺達はその姿を確認してから直ぐに警戒心をマックスに引き上げてから臨戦態勢をとったのだ。だがそんな俺達の様子を見て男は慌てたように声を出す。

「私はこの村に住んでおり、今は里長のような仕事をしている者で、名前はオーガと言う。だからどうか私達の方に武器を向けて攻撃するような行為はやめてくれ。お願いだから」

その男が必死に説得してきたので俺はライナスとリーシャとライトとライナをその場に残して、ルミナス達とこの男が言っていた村長がいる家に移動する。

そしてそこにはこの里に住んでいる魔族の老人が座っており、その魔族は俺達に対して、なぜだか分からないが、この里で暮らす許可を与えてくれたのだ。そのお礼を言うためにこの家に訪れようとした時、その村長の家には俺とライトが転移させてきた仲間達とリリスが待っていてくれた。

どうやらこの村では転移能力持ちが優遇される傾向にあるらしく転移能力を持つ者達の住む場所が存在しているらしい。俺とライトはその村の人達が持っている転移能力のおかげで俺達も村に住まわせてもらえるようになった。そして俺はそのことを心の中で感謝したのであった。

そして俺はその村長さんに感謝を伝えた後でこれからこの森を抜けて勇者を追いかける必要があるということを説明して、そのための協力を求めたのだ。しかし残念なことにこの森には転移できるほどの力を持っている者がいないらしく俺の期待に応えるような返答は得られなかった。そのことについて俺は少し落胆していたが俺とライトとこの村に住んでいる者以外の人全員が協力してくれるとのことだった。どうも勇者は相当強くなっており、この世界に存在している者の中でも上位の強さになっているとライラスが告げたからだ。

俺達もその情報を聞くとかなり厳しい旅になりそうだと感じてしまう。そして俺達の出発を見送りに来た人達に挨拶をしてから、ライトを先頭にこの森を抜けていくことに決める。

それからこの里に訪れる前の日にあったことを思い出した俺はライトに俺が元の世界に帰ろうとしていることを話したのだ。そしてこの異世界に来てからのことや、前世でのこともすべて伝えておくことにしておく。ただ、俺の前世が勇者の息子だとだけは教えないことにする。もしも俺が勇者の生まれ変わりだという事を知った時にライトがどんな反応を見せるかが予想できないのも原因だ。それにこの勇者が自分の弟の俺のことを知らない可能性が高いと思ったからこその行動でもあった。

俺と兄は勇者と光という名前が入っているので勇者と兄弟だと思われる可能性があると考えたからである。しかしライトは俺の話を聞いた後に、少しだけ悲しげな表情を見せたが、俺がこの世界にやってきた時のことを尋ねたりして、勇者である可能性を否定しようとしてくれていたのだ。そんなことをしているうちにライトはなぜか涙を流すようになり始めてしまい、そんなライトの態度に俺は戸惑いながらもなんとかして泣き止んでもらえる方法を探そうとする。だがそんな俺の努力もむなしくライトは大粒の涙を流し始めてから数分の間ずっと泣き続けていたのだ。俺はどうにかして慰めようとして言葉をかけたりしたのだが結局俺の言葉が彼の心に届くことはなくそのままこの世界から立ち去ることになってしまった。そして最後にライトが言った言葉を耳にすると俺はライトに対して謝るしかなかったのだ。ライトに対して謝罪をした時に俺がこの世界に戻ってくるつもりだということを伝える。すると彼は俺に対してこう言い残したのだ。またいつかこの世界を訪れてほしいと。

俺に別れの言葉を残した時に彼はまだ子供のように泣いていたが、それでも彼は精一杯笑顔を作って見せてから手を振ってから俺を見送ってくれた。そんなライトの姿を見ると俺もまた泣けてきたのだが我慢することにする。俺はその前にやることがあるから、それを成し遂げるためにも絶対にこの世界の問題を解決しなければならない。そのために俺はまず魔王と勇者がどのような関係なのかを知ることから始める。そしてもし仮に魔王と勇者が同一人物であるとしたならば、俺はまず最初にこの世界のどこかに存在すると言われている聖剣を手に取る必要がある。

そしてそのあとに、なぜこんなことが起きたのかを調べる必要もあるだろう。

そして俺の本来の目的のためにも俺は、今いる世界を救わなければならないと思っている。それは俺の大切な存在であるリーシャのためでもあるし、俺自身のためである。俺が今生きているのはリーシャが生きたいと願っているからなのだ。俺はリーシャの望みを叶えるためには、どんなことをしても構わないと思っている。そしてそれが、今の俺の本望であるのだ。だからこそ、俺は勇者の力をこの世界で使うことを決めたのである。だが勇者の力を使うことに、俺が躊躇いを覚える理由も存在しているのだ。それは俺がこの世界を救うためだけにこの世界にやって来たわけではないということである。

俺はこの世界での生活をこの目でしかと見届けたいと思っておりそれを邪魔されたくないと思っていたからだ。だがそう考えている間にも魔王はどんどん世界の脅威を増やしているはずなので急がなければ手遅れになってしまうという焦燥感もあった。それなのに俺はリーシャのことを優先してしまったのだ。そんな自分が嫌になってしまいそうになったのだがそれを表に出さないようにしながら魔王と勇者の一人をこの世界に転生させている存在を探すという目的で動くことに決めた。そいつを見つけ出すことができたとしても、その人物が素直に話に応じてくれるとは限らないからこそ行動する必要があると思う。だからその相手が誰であれ、俺の目的は変わらないということを改めて胸に刻んでから、俺達はライナス達に見送られながら森を抜けて行くことになったのである。

それから俺達は森の中を移動していた時に、ライナス達が襲ってきたオークの集団に遭遇をして、その討伐を開始することになる。俺は久しぶりに感じるこの感覚に対して興奮感を抱いていた。俺が今まで感じたことの無かったような感覚を覚え始めたのだ。俺が昔に持っていたスキルの中に気配探知や、魔力感知といったものが存在した。

それらの能力は戦闘をする上で必要なものだった。俺はこのスキルを使う機会があるかどうかを考えていたが、まさかここで役に立つとは思っていなかったので、俺は嬉しさを感じてしまう。俺の目の前に現れた魔獣はオークと呼ばれる豚に似た外見を持った生き物で身長は百八十から二メートルくらいあり、全身が筋肉で覆われていて、その肉体を凶器にして攻撃してくる厄介な相手だ。

だがこの程度の魔物なら特に問題はないと判断をしてからすぐにライナスが俺に話しかけてくる。俺はその問いかけに対して、俺はこの魔族達が暮らす里を守る戦力の手助けができればと考えてこの場に姿を現したということを彼らに説明する。そして俺の仲間達が戦っている姿を見ていて気がついたことがあったので俺はそのことを仲間に報告するために少しだけ彼らから距離を取ることにした。その時にはもう既にこの集落を襲撃に来た敵の群れの半分以上を倒しており、俺は少し驚いてしまうがライナス達の動きが俺よりも遥かに早くなっていたことに納得するのだった。

それから俺も戦いに参加してから数分後で全ての敵を俺達は倒してみせたのだ。そんな俺達の戦い方を見た里の住民は驚愕していたが俺はそれよりも先にこの集落の人達がどうやって戦うための技術を身に着けたのかということのほうが気になったのでその点に関して質問をした。その答えはやはり俺の考え通りで里に住んでいる人の中には、勇者によって召喚されてきた人たちもいたのだった。

その勇者に俺は少しだけ興味を持ってしまったが今はこの里を救うことが先決だと考えてからこの場を去ろうとしたときに俺と仲間に、この里に住む住民の一人である女性が話しかけてきたのだ。俺達の前に立って話をし始めた女性は里に住む女性達のリーダー的な立場にある人物でありライナスの妻だと名乗るのであった。彼女は俺にライナスのことを頼んでから、他の女性のところに向かっていった。そのあと俺達はそのライナスの家に集まってからこれからについて話し合いを行う。

ライナスの家に集まったメンバーはライナス、リリス、リーシャ、ライナス、ライナスの息子のライトと俺の計六名だ。そしてこの里に住んでいる男性の人達はこの家に集まることはないらしく俺達だけで話すことになった。その会話の内容としては今後のことについての話し合いである。

俺はまずこの森で暮らしている住人達には、森の外のモンスターに勝てる実力はあるかを聞いてみると全員一致して森から出て行った方が良いという意見だったのでこの意見を尊重して森を出ることを決意する。そしてそのことは、俺とライトを除いた三人にお願いをすることに決まった。ライトについては戦闘能力があまり高いわけではなく、しかもレベル1しかないために外に出るのは危険だと判断したのだ。そんなことを思いながらも、俺達四人は森から出るために移動する。だがそこで俺にはどうしてもやっておきたいことがあるために、ライトを連れてある場所まで案内することにした。その場所にたどり着くまでは時間がかかってしまい夜になって月が顔を出す時間になってからようやく俺が連れてきたい場所につくことが出来た。そこは小さな湖があり、この世界の自然が生み出した場所の一つだということがわかる。その湖の水は透明度が高く、さらにこの場所の周辺には凶暴なモンスターは存在していない。俺はこの光景を見て感動を覚えたのだがライトも同じような気持ちになっていたようで二人で景色を堪能した。

それからしばらくの間、俺はこの世界に来てからずっと思っていたことを口にする。俺は、元の世界に帰るためにはこの世界で生き抜く必要があると思っている。それはこの世界が元の世界と比べてあまりにも平和すぎるからだという。しかし俺は元の世界に帰らなければならないと考えている。それは、この世界を平和にしなければいけないという使命感ではなく、この世界がどうなっていくかを知りたいという欲求が強くなったからだ。俺はこの世界がどういう未来を辿るのかということを知りたかったのだ。そのため俺は勇者であるライナスにこの世界を脅かす魔王を倒す手伝いをしたいということを申し出ることにした。だが俺は自分の力をまだ制御できていないために勇者の力の使い方を教えることが出来るかが不安なままでいたがライトの協力もあってどうにかしてこの世界にいる間に少しでも強くなろうと考える。そんなことを考えながらこの日を終えるのだった。

俺とリーシャは森の中を移動していた。そして今日は俺のレベルを上げるという目的があったのも理由であり、その目的地というのは俺が初めてリーシャと出会ったあの草原なのだ。あそこに生息している魔獣を俺は一人で倒すことができるようになりたいと考えていて、その訓練を行おうと考えていたのだ。そして俺はリーシャと共に歩き続けるのだが一向に魔獣と出会うことはなかった。そのおかげでリーシャは暇そうな顔をしている。それに加えて俺はこの前の戦闘では俺一人の力で戦ったためリーシャの力を借りてはいなかった。だからこそ今回の目的はリーシャとの連携力を高めることが目的でもあったのだ。俺はそんなことを意識し始めてからリーザの機嫌が悪くなっているのに気づく。俺は彼女の機嫌が悪い理由がわからずに困惑してしまう。すると彼女がいきなり不貞腐れた態度を取って俺に話し掛ける。その態度が意味することを理解することはできなかったが俺は、何かしらの理由があって不貞腐れていることだけはわかっていた。だから俺はそんなリーゼのことを気にしないように心掛けながらも目的の場所を目指して進んでいくのである。そしてその途中である問題が発生することになる。そう、それはオークが突然俺の前に姿を現したのだ。その数は五体おり、俺達はすぐに警戒体制を取るが、その中の一体のオークは、俺のことを見るなり笑い声を上げてから、こんなことを言ってきた。

「おい、こっちはお前になんか構っている場合じゃねえんだ。さっさと失せやがれ!」

そんなことを言われたのだが俺のほうもオークの言葉を黙って聞くつもりはなかった。俺は剣を抜き取り、そのまま目の前のオークを斬り伏せる。するとオークは断末魔の声を上げてから息を引き取った。それを目の当たりにした残りのオークたちは俺達に敵対心をむき出しにして攻撃を仕掛けようとしてくる。

それから俺はまずリーシャに魔法を使わないように言い聞かせてからから、俺は聖剣エクスカリヴァーンに魔力を纏わせてから剣を地面に振り下ろすことで地面を隆起させてから、それを敵に叩きつける。だがその攻撃はあっさり避けられてしまい、逆に俺はその攻撃をくらいそうになったので回避することに成功する。だがその時に聖剣エクスカリヴァーンは手から離れていってしまう。だがそれは俺の想定内のことであり、聖剣を手放すと同時に俺は新しい武器を作り出していたのだ。その新調したばかりの大鎌を構えながら敵に向けて突撃をし始める。その動きを見たオークは慌てふためき、逃げ始めるのだが俺はそんなことは関係ないと言わんばかりに走り出すと、逃げる敵に追いつき首を刈り取るのだった。そうして俺が二体のオークを倒して見せたところで残り二体が逃走を図ったので俺はその後を追いかけようとした。

そのタイミングでリーシェが俺に向かって話しかけてきたので俺はその言葉に耳を傾けてみたのだ。その内容を簡潔にまとめると、どうしてあんな雑魚を相手にしていたのかということだ。それに俺はオークの群れと戦うという経験をしたことがないということから、その機会がやってきたからやってみたという単純な答えを口にするのである。それを聞いたリーファは呆れた表情になり、そんな彼女に苦笑しながらも、俺は戦闘に集中し直すことにした。それから戦闘が終わるのはそれほど時間はかからなかった。

それから俺はこの世界に転生して初めて倒したモンスターを素材に加工するために解体作業を開始することにしたのだ。その際にオークたちの血抜きも行うが、俺がやったのはそれだけで他の部分は仲間達に任せることにしたのであった。

だがそこで俺の予想していなかったことが起きてしまう。なんと倒したオークたちの死体から光が出てきて消えていくのが確認できたのだ。その光景を見た俺達は、目の前で起きた現象に戸惑いながらも俺達はその場を後にすることにした。

俺は今、ライナス達と一緒に行動していた。というのも俺のレベルを上げようという話をしたときに俺に付いてきたほうがいいという話になったからである。

この世界に来てから、俺はこの森に住むモンスターと戦ったことは何度かあるがそれはあくまでも魔獣と呼べるものばかりでモンスターとは戦っていない。なので、俺にとって初めての相手になるモンスターと戦うということで俺は楽しみにしながらその相手と遭遇できることを待っていたのだ。しかしライナスが言うには俺達がこれから向かう先にいるのはモンスターではなく人型の亜人であるらしい。そのことを俺は知らなかったがライナスが説明をしてくれた。その人族の国はこの森を抜けた先にある平原を越えた場所にあるとのことでその国に入国をする際には必ず人族の国に入る許可を取らなければならないので注意しろと言われる。ちなみに人族は、エルフやドワーフのように、それぞれの人種で国が分かれていないそうだ。つまりは種族によって住みやすい場所が違うということだろう。

その話を聞いて俺は自分が住んでいた日本にも様々な種類の人間がいることを思い出した。その中にはモンスターもいれば、俺達と同じように生活している人間がいるのだということを忘れない方がいいだろうと、考えを改めたのである。俺はその国の人達に会えることに少しだけ興奮していたが、それと同時に少しだけ嫌な気持ちになってしまうのであった。それはライナス達からこの世界には差別が存在し、その国はその中でも最悪の扱いを受けているという話を聞いたからだった。

俺は、ライナスの話を聞く限りだと人種差別が存在するということは間違いがないようだと思った。俺の世界でだって同じだと思っていたからだ。それは俺のいた世界には白人と呼ばれる肌が白い人たちと黒人と呼ばれていた肌が黒い人達がいた。それ以外にも中東の方にはイスラムの宗教を信じるイスラム教を信仰しているイスラム教徒たちが存在していたり、他にもカトリックを信奉するカトリック教徒たちがいたのだ。その他にも色々な宗教が存在しているわけだが俺はこの世界に来る前までは自分の信じているものを押し付けてくる人間はうざいと思って嫌いだったが、今は自分がそういう考え方を持っていたということを自覚したのでそういった価値観に囚われることなく接しようと決めることができた。

だからその国でも同じように考えてしまえばその国の文化を否定することになってしまいかねないのである。俺はそんなことを考えながら、ライナス達の案内に従い歩き続けるとそこには巨大な門があった。その門を見て俺が驚いたのはもちろんだが、この森の住人達にとってはそれほど珍しいものではないらしく俺が驚いている姿を見ても不思議そうな顔を見せる者は誰もいなかったのだ。それに加えて、この里に住んでいる人達の中にはこの森を出て行く者達もいるようなのでこういった光景は珍しくないようだったのだ。

そんな門には見張り番がおり、俺達に視線を向けてきたがすぐにそれが俺の仲間の一人だと気づいたのか特に何も言わずに通り過ぎることを許してくれるのだった。

そしてそれからしばらく歩いたところで目的地についたというのだが、その目的の人物というのは俺が初めて見たときから変わらない容姿をしていた人物であり、名前はアルスと言ったはずだ。彼女はなぜか上半身裸の状態で木の棒を使って素振りを行っているところに遭遇してしまうことになる。俺は彼女に声をかけることにしたがそんな俺の行動を止めに入ったのはライトであったのだ。そんな彼はなぜ止めるのかわからない状況で、俺は理由を尋ねることにした。するとその理由というのが彼女が女性でさらに見た目が完全に子供であるということを聞かされるのだが正直言って信じられるはずがなかった。しかしここで嘘をつく意味などないしそもそもこんな森の中で嘘をついたとしても意味がないことを考えると、この世界では女性が男装をしていることが多いという可能性はあるかもしれないと俺は思う。

そんなことを考えながら彼女の方へ近づいていったら、今度はライトが突然謝り出したのである。俺はその言葉に理解が追いつかなくなっており、一体何に対して謝罪しているのかを尋ねた。すると彼が口にした内容は俺に対する配慮を怠ったことであり、俺に失礼なことをしたと言っていたのである。それだけではなくて俺のレベルを上昇させることに協力するように言われたのだが、俺はどうしてそんなことまでして協力するのかわからなかったので、その理由について問いただしたら、彼女の正体については話すことができないという理由を話すのであった。

それから俺とライトの会話は続いていき、俺のレベル上げに協力してくれているのはライナスの提案であることがわかった。その提案をしてきたのは俺がライナスと同じ勇者だからだと言われて納得したのである。だがそれでも疑問に思ったことがいくつもあった。それはレベルを上げる必要があるほどこの世界の人族の地位が低い理由がよくわからなかったというのが一番大きかったのだ。確かに俺の世界の地球では、昔は人種差別が存在したし今もその傾向が残っている地域も存在するのは確かだ。だけどこの異世界においてその考えを持っている人間はおそらく少数派だと思う。それに俺の記憶が間違っていなければ、少なくともこの里にいるエルフや獣人たちはライナスのことを普通に扱っておりそのことから考えると、この世界でも一部の地域の話であって、基本的にはどの種族も同じような対応を取っていると考えることができるのではないか? それにライナスも俺に失礼な態度を取ったことについて反省していたことだし、そこまで問題視することではないと思うんだよね。そう考えた俺はまずは、自分の目で確認するために彼女と手合わせをしてみることを提案するとライナは快く了承をしてくれたのだ。それを受けて俺は早速訓練場へ移動するのだった。そしてそこでは先程までの素振りを行っていた人物とは思えない動きを見せたアルスさんの姿を見ることになる。しかもそのスピードはかなりのものであり一瞬で目の前から姿を消したかと思いきや、気がついた時には俺の首筋に手刀を振り下ろされてしまいそうになったのだ。俺はすぐに反応して回避することができたがその動作はとても素早く俺が今まで目にしてきた人の動きとは一線を画す動きであったことを俺は感じ取るのだった。俺はそんなアルスさんを見ていたら、どうにも手加減されていたのは間違いないだろうが、この人はもしかしてとんでもない強さを誇るのでないかと思ったのだった。

「あははは、今のを避けるのかい。流石だね」

俺が攻撃を避けたことに笑っていたアルスであったが俺の目にはそう見えてはおらず本当に手加減されているのかどうかがわからなくて困惑していたのである。

そして俺達はその後も何度か戦った結果、俺は彼女に実力を認めてもらえてようやくライナスの言っていた通り俺のレベルを上げてくれると言ってくれたのだ。それどころかアルスはライナスに許可を取ってからだがこの森にある素材を集めてきてやるとも言ったのである。俺はそれを聞いた時、心から嬉しいという気持ちになり、ついお辞儀をしてしまったくらいであった。それからアルスと握手をしてから、ライナスは彼女にこの国で起こっている問題を説明を始めたのだ。その話を聞いた後、俺とライナスはこの里の長でもある男性の元に向かうことにした。

その人物はアルスの父親であるラスタという名前の人物で、その人もまた俺達がこの里に訪れたことで警戒するような態度をとっていたので俺は自己紹介を行うことにした。

だが俺は名前を聞いた瞬間に驚きの声を出してしまうことになった。なぜならその人が、俺が以前出会ったことがある、この国の王都に召喚された勇者のうちの一人であるタローという名前の男性だったからだ。そのことを確認するために俺はライナスに彼のことを尋ねると、その答えはやはり俺が想像していた通りのもので俺は思わず笑ってしまうのであった。

その後俺達はお互いに話し合いをすることになりライナスからこの国に起きている出来事の説明を受けたのだ。それによるとこの国は少し前まではそれなりに栄えていたようだったが今では衰退の一途を辿っているとのことでその原因について話をしてくれた。なんでもこの国は最近、魔人の国との交易が滞ってしまっていてそのせいで国民の生活に影響が出ているのだという。この国に流通しているお金はこの国の特産品のミスリルを使ったものがほとんどを占めているためその収入が無くなってしまったために国の財政が厳しくなり始めてしまっているらしい。その結果税金が上がり始めたのが原因で国民の生活に打撃を与え続けているようだ。さらにそれだけではなかったのだ。それは他国の侵略が始まりこの国に向かって進軍を開始しているという報告を受けていたのである。その報告にライナや俺だけではなく、アルスが反応を見せたのだ。どうも彼女は他の里に暮らす者達よりも知識に詳しく、その国の情勢についても知っているようなのである。その話を聞いて俺はアルスにこの国の戦力を尋ねるとこの国にはまだ魔王軍の進行を止められるほどの力はないらしく絶望的な戦いを強いられることになりそうだという話をしてくれた。しかしそこでライナスは俺ならどうにかなるのではないかという期待を込めたような眼差しを送ってきたのである。それだけでなくライナスからアルスまでが同じような目をしているものだから俺は嫌な気持ちになってしまう。だがそんな感情を押し殺しながら、俺はその国の人たちのために戦う覚悟を決めたのである。それから俺とライナスとライトの三人はアルスに連れられこの国の王が住んでいる場所へと向かうことになる。そして俺がこの世界に来てしまった時の状況を話してから、俺はこの世界で俺がすべきことを考えたのだ。

その俺の考えというのはもちろんだがこの国が滅びないようにするべく行動を起こすことである。しかし今のままでは確実に俺の力不足だと感じた。この世界に来る前の俺の身体能力ではモンスター相手では太刀打ちができないのがわかったからである。そんな時に俺の前にあるスキルが現れたのである。その能力というのはユニーククラスというものらしくそれは特殊な才能であり特別な職業のことだと説明されたがその詳しいことまではわからないので俺は鑑定を使い調べることにしたのだ。そしてそのユニーククラスを調べた結果、俺は自分にもできるかもしれないと思った。そしてすぐに俺はそのユニーククラスの効果を試したくなったので俺はある人物の元に向かったのだ。その人物は里でも有名な人物でライナから教えてもらっていた人物だったのである。

その人物の名前はカエデという女性で俺がこの世界で初めて見たときに綺麗だと印象に残った女性だったのだ。その人物の元へたどり着いた俺は、その女性に対していきなり武器を作るための素材をくださいと言ったら驚かれた上に、一体何に使うのかということを尋ねられたのである。その質問に答えるために俺は、これから俺の作ることができる剣を作ってほしいということを頼んだのだ。そしてその理由を話した。すると彼女は納得してくれてその願いを承諾してくれるのであった。だがそんな彼女を見ても俺は不思議と不安になることはなかったのである。そしてそれから俺は、この国の危機を救うためにこの森で採れる貴重な素材を集めることにした。まずは一番重要なミスリルという鉱物を手に入れる必要があると考え、アルスに相談することにしたのである。するとアルスは協力したいと言い出したのだ。

そして俺はその言葉に甘えることにしたのだった。まず最初に俺たちが訪れた場所は里で一番広い場所でありそこにはこの里に生息している動物達が集まり自由に生活しているところである。そこは俺も何度も訪れていて、よく動物達に遊んでもらっていた場所である。そこを訪れた理由は、ここにはたくさんの種類の動物の子供が暮らしているとライナスから聞いたことがあったからであり俺はまずはその子供達を眺めながら時間を潰したのだ。それから少し経ったところで俺に近寄ってくる存在がいることに気づく。その者はアルスがこの森の中で育てているという動物の子供で俺のことを気に入ってくれているようである。そんなその子と戯れながらも、俺はライナスとアルスとライトが待っているのを思い出して急いで戻ることにし、その途中で珍しい植物を見つけたのである。それは真っ赤な色をした小さな実を宿しており、その匂いを嗅いだだけでも気分が悪くなりそうなものであった。だがこの実はその外見とは全く違って甘い匂いをしており俺はその木の実を摘み取り自分のアイテムボックスにしまったのである。それから俺はライナスたちが待つその場所へと急ぐことにしたのだ。だが俺はその時、自分が何をしているのか全く自覚していなかった。だから俺はこの時から既にこの国の崩壊を加速させている原因の一つであるのだった。

アルスに案内されて俺は彼女の家に向かうことになった。俺はその道中、アルスと一緒にいる男性を改めて観察することになった。彼は先ほどライナスが説明してくれた中に出てきたタローという人物である。その名前と顔つきはまさしく日本人といった容姿をしている。俺も最初は日本から来た人間なのでは無いかと考えたくらいなのだ。俺はそのことをアルスに伝えるとアルスは信じられないという表情を浮かべていた。そしてタローとアルスはお互いのことを知っており二人は昔にこの国に召喚されたのだという。その際にこの国の王族である人物と知り合ったらしい。そのおかげで二人もこの国をなんとか存続させてほしいと言われて仕方なく召喚されたという。それからアルスたちはこの里に残り里を発展させていく努力を始めたのであった。それから数十年の月日が流れていきこの里もようやく国と言える程度に発展した。

その里の発展ぶりは本当に素晴らしいものがあり俺のいた世界の文明に近い部分も多くあり、特に食文化はこちらの世界に来て驚いたものだったのだ。というのも里には数多くの食材が存在しその中には米があったのである。俺はそれを見て本当に嬉しかった。なぜこの異世界に俺が召喚された際に主食となるものがパンしかなかったのだ? と疑問を抱いていたのは俺だけでは無かったはずだ。

俺がアルスたちにそんなことを尋ねるとどうやらこの世界には魔法というものが存在する。そのため魔力を持っている人にとってみれば、食事によって摂取することができるエネルギーもそれほど多いわけではなく普通の人と比べて食べる量はさほど多くないのだという。そのため栄養価の高いものを摂ったとしても消費される量がそれを上回れば問題ないということを教えてもらった。俺はその話を聞きこの世界での食事をもっと充実させるべきだと考えるようになったのである。そしてライナスの話によるとこの国には現在この国で生産できる唯一のミスリル鉱脈が眠っているのだと言う。そしてその鉱石はこの国の生命線になっているのである。この国の鉱山で採れるミスリルという鉱物は非常に優秀な武器の材料になりこの国を守ってきてくれた。

そしてこの国の王様も代々受け継がれており今代の王はタローという名前だという。俺はその名を聞いてまさかと思い、俺を召喚したのがアルスの父親なのではないかと思う。俺はそのことをライナスに確認しようとしたがアルスに止められて結局尋ねることができなかった。俺としてはライナスに確認したかったのだが、もしライナスが召喚者だった場合は下手なことを聞くわけにはいかなかったからだ。ライナスはアルスたちと違って俺をこの世界に呼んだ張本人ではなくこの国の人たちを救うべく召喚されたのだと考えられるが、もしもアルスたちの方に協力してしまっていたとしたら俺は敵になってしまうからである。それに俺にその記憶がない時点で召喚された理由と召喚されたときの状況は変わってしまうためどちらとも断言できないのだ。だが俺はアルスやタローと呼ばれる人物が嘘をついていないとは思いたい。そう考えながら俺とアルスたちはアルスの家に着きそこでライナスがこの里で起こっている問題をタロウに話したのである。そして俺にその問題を解決してほしいと言われたのだ。俺はその話に素直に応じようとしたがそこでライナスはタローの実力を確かめるべくタローに決闘を申し込んだのである。そのことに当然タロは反対するがライナスはそれを無視したのだ。そして俺はその戦いを断ることもできず戦うことになる。

そして俺とタロウの戦いが始まるのだがその戦いは圧倒的な力の差を見せつけられてしまうような展開になってしまったのである。俺がどんな攻撃をしてもタロットの身体に触れた瞬間、弾かれてしまうのである。俺はその状況に対してかなり焦りを感じ始めていた。その理由はタロウから放たれてくるオーラが強すぎるせいだ。しかもタローのそのオーラが攻撃してくるたびにその力は強くなっていきさらに俺の攻撃を弾いていく。俺はどうしようもない状況に陥ってしまった。そしてそこで俺は一つのことを思い出した。それはアルスの家に置いてあった書物を読んで得た知識でありこの国に伝わる秘技のことだった。俺がその話を思い出すことができたのはその書を読んだ時だったからである。その秘技とは、剣豪という職業についていることが必須条件となっているスキルで、剣術を極めることで得られるスキルである。

そのスキルを使用することで身体能力が上がり一時的に相手の攻撃を受け付けなくなるという効果が発動するスキルだったのだ。そのスキルを使用すれば、この勝負をどうにかできる可能性が出てきたが、俺がそのスキルを使うことができるのかはやってみなければわからなかったのである。だが俺はその秘技を使わずに勝てる自信はなかったのだ。そして俺とタロとの戦いが始まった。

「さあ、こいよ! 勇者様!!」

俺とタロスはお互いがお互いに持っている最高の一撃を相手に与えるために全神経を傾けて動き出す。俺が繰り出す攻撃は全て受け止められる、それに対してタローが繰り出す全ての攻撃は当たってしまうが俺は致命傷を受けるようなダメージを受けてはいない。しかし俺はそれでもよかったのだ。俺はアルスから借りた刀を取り出して、それを振り続ける。その攻撃が当たったことでタロウに隙ができる、俺はそれを利用してそのスキルを発動する準備をするのであった。その戦いをライナスは固唾を呑んで見守っている。

そしてそのスキルが効果を発揮し始めると、徐々にタロウの動きが悪くなり始めついにタロウは倒れ込んでしまったのである。それからすぐに俺の身体から力が抜けてしまい、俺自身も地面に倒れこむことになってしまう。そんな状態になってもまだ俺にはまだできることがあったため俺は意識を手放さないように気を引き締めなおして立ち上がったのである。そして俺は自分の持つもう一つの武器である刀を構えてからアルスとライナスのところまで歩いて行くのであった。

そして俺の予想通りタロンはその武器に驚きの表情を見せる。そしてその武器はタロにとっても未知の武器でどのような効果があるのかわからない。そしてライナスもその武器を目にすると驚愕しその目を大きく見開くことになった。なぜならその武器は、タローの持っていたミスリル製の短剣と同じ材質でできた刃を宿していたからであった。それはライナスたちが長年追い求めてきたものと同等の力を秘めたミスリルで作られた特別な武器だったのだ。その武器は俺が里を出る前にアルスから貰ったものであり、俺はその刀を使うことでタロウに対して有利に立つことができていたのである。俺はこの武器を使いこなしてタロと戦う必要があったのだ。そして俺がこの世界で生き抜いていくためにはそのタロと戦えるだけの強さを手に入れる必要がある。

タロンの方は俺が使っていた武器が自分と同等に使える代物だとわかると今までに無いほどの喜びを見せた。俺が使う武器はアルスから貰っていたものだし、アルス自身が里の人間たちに作り方を広めていたので里の中ではそれなりに普及しているはずだった。それなのにこれほど喜んでいるということはそれだけミスリルという鉱石の価値が高いということになるだろう。それを考えるだけでも俺にとっては嬉しい出来事である。これでやっとアルスとの繋がりを作ることができるようになるからだ。それから俺はこの世界では希少な存在だというミスリル製の刀を鞘に収めてタロに手渡すことにしたのである。タロウはその武器を受け取らない方が不自然なので仕方が無いという感じで受け取ってくれたのだ。その後ライナスがタロを連れて行って詳しい調査を始めることになり俺もそれに同行することにした。その途中で俺とタローは会話を行うことになったのだがタローは思った以上に親しみやすい人間で俺のことをこの世界で初めてできた友人と呼んでくれるのだった。その言葉は俺にとってはとてもありがたくこれからも俺とタロはお互いの友人関係を保っていきたいと考えるようになったのである。

俺はライナスにタローにこの里にあるとされるミスリル鉱脈の調査をしてもらうために連れてきてもらうことになっていたので、俺は里の中へと向かっていった。ちなみにタロは俺と一緒に行動するよりもアルスと話をしたいと言ったため俺は一人にされてしまったのだ。タロットもタローに付き合うと言い一緒にアルスの元へ向かって行った。その結果この里にいるほとんどの人がアルスの家に向かうこととなり俺もそちらに向かうことになったのである。そしてアルスの家の前までやってきたのだがそこには大勢の人で溢れかえっている光景があった。俺はその人たちが誰なのかと疑問に思っていたがそこで俺はアルスの母親に見つかってしまう。どうやら彼女は俺を探していたらしいのだ。そこで俺はアルスの母親に呼ばれて彼女のいる家に入ることになる。そして俺に話というのはどうやらタローについてのことらしくタロウについて詳しく説明して欲しいと頼まれたのである。その話を聞いた俺としてはなぜ今更タロウの話を聞く必要がアルスの母親に有るのかと不思議に思う気持ちがあったがとりあえずアルスの母親にタローとの経緯を説明したのである。その話を聞いて俺はこの里がここまで繁栄している要因としてあのタロウの存在が関係あるのではないかという仮説を立てるに至った。それは俺も同じことを考えていたがこの里の人間は誰もそれを肯定するような発言はしない。

「タロウがここに居れば間違いなくあなたをこの世界を救う救世主だと思って行動してくれたでしょうね」

「タロウさんがそんなに強いんですか?」

俺はそんなことをアルスが母親に対して言うのを耳にした。俺がそのことを口にしてしまうと、ライナスにタロウは魔人だから気をつけておいた方がいいと言われるが、俺はその忠告を聞いても全く信じなかったのである。そもそもこの世界で俺以外に召喚された者がいたことは事実なのだがその人物はすでに死亡しており俺に記憶がないことからも俺がこの世界に転生してきたという事実の方が信憑性が高くなってくるからこそライナスの言葉を信用することができないのだ。

そして俺にタロウのことについてアルスの母から聞き出した情報をまとめるとこの国を守ってくれているタローはこの国を豊かにしてくれているという。しかしそれはこの国に住んでいる人たちが全員望んだことでもなくアルスの父やアルスもこの国が貧しいというのならその現状を変えようと頑張ったことがあるらしい。

その時にタローに頼らずに国を裕福にする手段を探そうと必死になっていたのだという。その努力のおかげもあってか今はアルスの父親の時代よりも遥かに豊かな国に変わっているというのだ。

だがアルスたちはこの国の王が自分たちが頑張るよりも先にタロウの力を借りて自分たちの生活を良くしようとタローを頼ろうとしたのが許せないと言っていたのだった。俺はこの里に来たときアルスの態度が変わったことがどうしても気になってアルスとタロウの関係に何か変化があったのではないかと思ってしまう。そこでライナスが教えてくれたことだがこの里には昔から闇と光が住んでいるという伝説が残っているらしくて、この国は闇が支配していると言われていたのだ。しかしそれも過去の話で今のタロットとタローのように光を慕う人間が多く現れるようになったために、光の勇者がタロットたちと協力して魔王を倒して闇の時代を打ち破ったという伝説になっているということを教えてもらった。

俺はそれを聞いた時、本当にその伝説が本当なのかどうか疑問に思ってしまったが俺自身は実際にアルスからこの世界の昔話のようなものを聞いていたのでタローとタローが倒したというタロットはアルスの両親であることはすぐに予想ができた。

それから俺はアルスの家に戻ろうとするとアルスに捕まってしまい結局タロとアルスの家に戻ることはできなくなる。俺はタロウを一目見たいというタロのファンらしき人たちに取り囲まれてしまうことになる。俺は何とか逃げようとするがその人たちからは逃れることができない。俺の周りをタロウの大ファンであろう女性たちに囲まれている状況に俺は困り果てる。そしてそこにライナスがやって来て俺は助かったと内心で安堵の溜息を吐いたのである。

「タロ様をあまり驚かせないようにして下さい。皆さんタロ様の機嫌を損ねるつもりですか? そんなことをしたらもう一生この里に来てくださらないかもしれないんですよ!」

ライナスが大声を出してファンの女性達に呼びかけると、その人たちは慌ててその場から去って行ってくれたので俺はようやく解放された。しかしタローが俺と会わせないだけで里から出て行くと言っているのならばタロと会うためには俺がアルスを説得しなければならないと思いその方法をアルスと話し合いたいと申し出たのだ。アルスは俺の提案に驚いていたが、ライナスの取り計らいもあり俺はアルスと一緒に家の中に入っていくことに成功する。タロは俺の姿を見ると笑顔を浮かべてくれて俺は安心することができた。

そしてタロが俺にどうして里にやってきたかという質問を行ったので、タロに会いたかったから来たのだと俺はタロに嘘をついてしまう。タロはそれを聞いて納得し、そしてタロは俺と二人で話がしたいという。そしてタロウは俺がアルスに迷惑をかけていないかなどいろいろと話しをしたが俺にとってタロウと話をすることはとても有意義なことでありタロウに好印象を持ってもらうことに成功していた。それから俺が里の外に出るための準備をしている間だけでも泊まっていけばいいと言ってきた。

その誘いを断るのは難しいと感じてしまい俺はしばらくの間だけアルスたちの家に厄介になることにした。俺がアルスたちの家でしばらく過ごしていく間にこの周辺のモンスターを狩りに出かけていたライナスが戻ってきていて俺は彼と少しだけ話すことになった。そして俺はタロンとの戦いで使ったあのミスリルの刀のことを思い出す。

俺が作った刀はタロウにも負けないくらいの性能を秘めているが、それはあくまでもミスリルで作られた刀で、タロウが使う短剣のような特殊な能力があるわけではなかったのだ。そこでタロスからミスリル製の武器を作ることができると聞かされ俺はその武器についてライナスに尋ねることにしていた。その結果として俺はライナスの武器作りに協力することになったのである。

俺はミスリルの鉱石の在庫は十分にあったのでミスリル製の武器を大量に作ることにした。その結果俺はミスリルの武器を里の中で使うことになるのだがそれを見たタローはその武器を使って戦うように頼み込んでくる。タローは俺のことをかなり気に入った様子だったので俺は彼の要望に応えることになった。ただここで俺はアルスの母親の言葉を思い出してしまった。この里の中では俺の存在は歓迎されないものであり場合によってはアルスの母親のように敵視される存在になりかねない。そうなれば俺はアルスたちとこの里の住民たちとの争いに巻き込まれてしまう。その前にこの里を出て行こうとする。俺もここにずっと居たいわけではない。むしろ早くアルスたちが幸せになれるような世界にしたいと考えているのだ。そのために俺がまずすべきことはこの世界を救う方法を探すことであると考えていたのである。そこで俺は自分が作った刀を持ち歩くことになってしまうと、アルスの母親から貰った刀との二刀流をする必要性が出ていた。

「あなたも私たちと共にこの国を守りませんか?」

ライナスは真剣な表情で俺に問いかけてくるがそれは当然断りたかったがそれを断ってしまうと俺の存在が問題になってしまいそうで言い出せなくなってしまうのである。それでもライナスは食い下がってきて最後にはタロにまで助けを求めるという行為を行い始めたのだった。そこでタロウの方はあっさりとその話を受けてしまいタロは里の防衛のために戦い始めることになってしまったのである。

俺はタロと離れたくないという思いはあったがタロウはタローの代わりにタロットの補佐を行うと言い出す。そしてアルスが俺と一緒に里を出るといいだしてタロウが俺に付いてきてくれることになり、アルスがこの場にいると邪魔だからという理由で里の外までアルスを連れ出すことに成功。その後アルスがこの場で何があったのかと尋ねてきた時に俺とタローとの関係を話す。俺とタロウの関係が分かったアルスは俺にタロウがいかに優れた存在であるのかを話し始めるが、アルスも自分の母親がその昔タロウと行動を共にして世界を救う手助けをしたということを知っていたらしくて俺はアルスの話を簡単に信じる。その話を信じなかったとしても、タローがこの里の人間から嫌われている理由を考えてもタロウを里に置いておくことは危険極まりないとしか考えれなかったのだ。俺はそんなことを話しながらアルスからタロウについて話を聞き続けたのである。

「でもこの里の人たちってタロウのことが好きだからあんなことしているんでしょ? だったら俺がアルスたちを守るって言ったら許してくれるんじゃないかな」

「私としてはタロウのそばにいたいですけどタロウはそんなことを望まないでしょうね」

「だったらアルスたちも俺に付いてくればいいんだよ」

「私は別にいいんですがタロウになんて説明したら許してくれるのでしょうか?」

俺もタローのことを考えると俺の勝手ばかり押し付けてしまえばきっとタローはこの世界に残りたいというと思う。だからこそアルスが里を飛び出してしまうことも考えてアルスをどうにか説得できないものかと考えながら俺達はアルスの家に向かう。そしてその道中ではタロウと俺とでアルスにどのように説明するか話し合うのであった。だが俺達がアルスの家に着いてもそこにはまだ誰もいなかったので俺は先にアルスに事情を説明することにする。その途中でライナスが現れて俺は彼がどうして俺達を探しているのかを尋ねたのである。

「お前たちアルスがどこにいるか知らないか!? どこを探しても見つからないんだ!」

「ああ、それは多分俺たちに聞かれたくなくて一人で里を抜け出そうとしているからだと思いますよ」

「なんだって! そいつは困ったな。里の者たちがアルスがいなくなって探しても見つからなかったから、もしかしたらこの森に逃げたのではないかと思って里の中を探していたところだったのに、その当の本人が出て行ってたとは」

その話を聞いた時俺はやはりなという気持ちになる。しかしそれはそれでこの事態は解決したことになるが、ライナスの話ではこのまま放置するとタローが怒りだしそうな気がするので俺は何とかしてタロウを止めなければならなくなる。そして俺とライナスとタロウとで協力してタロを止めるために作戦を立てようとする。しかしタロとアルスの関係が良好ではないこともあり俺の話に乗ってくれない可能性もある。なのでライナスの案によりタロウと直接交渉することにしたのだ。その時に俺は里の中でもタロウに対して嫌悪感を抱く者がいない場所を選ぶ。そこはタロウの家の近くでありアルスの家からも近い場所にある。そこで俺はライナスの魔法によって隠れるようにしてからタロと交渉をすることになる。だがその時にタロから意外な言葉を耳にするのだ。

なんと彼はすでにこの周辺に存在するゴーレムを全て倒してしまったのだというのである。しかもこの周辺で暴れまわっている魔獣をすべて倒してくれたというのだ。おかげで最近になって現れた危険な魔獣が出現せずに済むらしいのだがその代わりに大量の素材を手に入れることが出来て、それがまた新たな魔導人形の製作に役立てることができるので喜んでいると教えてくれた。

俺はタロに感謝を伝えるがその際にライナスのことを気に入ってしまいそのままライナスのことを家に連れて帰ると言う。そんなこんなでタロンがやってきてしまったことで俺の計画は全て破綻してしまっているので俺達はどうすればいいか分からずに困り果ててしまうことになる。そんな中で俺達のところにアルスとタローが来るとタロウに何か不満があるようでアルスから愚痴のようなものを聞いていた。そこでライナスからその辺にしてもらえないかなという言葉を聞くと、アルスは少し不機嫌になりつつもライナスとタロウを家に帰すことは認めてくれていた。その帰り際にライナスは里に戻って来た目的を果たすことができていたようだったのだ。

俺はアルスの家でしばらく世話になっているうちに里の住民達に少しずつ馴染むことに成功する。そしてある日俺はアルスの家から外に出た途端俺は里の中で一番厄介であろう人物に出会うことになる。それはタロスでもなくタローでもなかった。なんとその相手というのはライナスだった。ライナスと出会ったことに驚きを感じつつ俺がどうしてこの場に現れたかを確認すると、彼は自分が里の長になったことを伝えてきたのである。

「あなたのおかげで俺はこの里の民たちに受け入れられました。それに、この村が今までと違うものになったように感じられています。この村が変わればタロとアルスを結婚させることができると、そしてアルスとタローが幸せに暮らしていけるような世界が作れます。本当にありがとうございました」

俺に礼を言いたいがためだけにここまでやって来ていたのだと俺はこの時知ることになり驚いてしまうが、このライナスの行動を嬉しく思っていたのも事実だ。それからライナスはアルスの家の中に入り込んでいくとアルスが俺の居場所を訪ねてきてアルスから俺を家に招き入れてもらうとそこでタロは何故か俺の顔を見ると、すぐに部屋を出て行ってしまう。

俺がタロスと会話をしていたらタロスがタロウのことを呼びにいき俺はライナスから頼まれたタロの説得にとりかかる。俺はなんとかタロウの誤解を解くことに成功してタロウを里の外に送り届けることにも成功したのである。そしてライナスが里の者を集めたのはこれから行う里の改革について話を始めるためだった。まず初めに俺はアルスの母から貰った武器をこの場にいたライナス以外の全ての人間に見せつける。それをみた人々は皆一様に武器に視線を奪われる。特に女性陣の反応がすごかったのである。そしてその武器を使ってみせろと言われるので俺が使うことになり魔剣の剣舞を披露することになってしまった。その攻撃を見て里の人々は感嘆の声を上げていたがそれと同時に魔剣の存在を恐れるようになっていった。そこでアルスの母親の話をここで持ち出したことで俺の力を見せればこの里も変わるはずだと言い切り、ライナスはその話をあっさりと受け入れていたのである。そしてライナスはその話を聞き入れるとまずはタロとアルスの関係改善をしようと思い、二人は俺とライナスとともにタロのところへ向かう。しかしそこにいたのは里で見かけたことがないゴーレムでそのゴーレムにタロが乗り込んでいるのを見た瞬間に俺はアルスに事情を説明してからアルスには家に戻るように指示を出すと、アルスは嫌だと言ってその場から離れないと言い始めるが俺に説得される。

その後アルスがこの場を離れて俺はこの場に残ったのであるが、この場に残された理由はこの里にいる魔獣の討伐を行うことだった。そのため俺の刀がこの里にいるすべての魔獣の注意を引き付けて魔獣たちを誘導してこの森を抜け出すことだけを考えることになるのだがその際も魔獣の襲撃を難なく突破することに成功。だがそれでもまだ安心することはできなくて森を抜けてから山を越えようとしたその時であった。突然目の前に大きな穴が現れてしまい俺達の前に壁が立ち塞がり道を遮られてしまうのである。

その出来事に対してライナスはすぐに理解できずに呆然と立ち尽くしていた。俺はその現象の原因を知るためにエクスカリヴァーンを構えるとライナスも慌てて戦闘態勢に入るがその時にはもう手遅れになっていた。俺達の前に現れたのはなんとその大きな岩でしかなかったのである。それなのに俺が大爆発を発動させるのと同時にその巨大な岩から魔人が姿を現したので、ライナス達も驚いた顔をする。

その光景を目の当たりにした里の住民たちも驚いてしまい恐怖からパニック状態に陥ってしまう。そんな中俺は自分の体を包み込んでいた光属性の結界を消滅させてから、その身に纏っていた防具をすべて解除し素の状態で魔人に立ち向かっていった。この里の人々を守る為には俺が戦うしかないと考えたのだ。そしてライナスもこの里の人々をこの場から逃げ出そうという提案を俺に伝えると俺はそのライナスの提案に賛成したのだった。

俺は魔人と激しい戦いを行う中でライナスはこの隙にこの場を離れようと俺に言うが俺はそれを断る。その理由としては今この里を離れるわけにはいかないのだ。何故なら俺は先ほど使った光属性の魔法を今度は水に入れ替えることで魔人に対抗できるほどの威力を持つ魔法をこの場で発動させなければ魔人をこの里から退かせることはできないと考えていたからだ。

魔人の力は強すぎる。だからこそ魔人の攻撃を相殺するための手段を考えなければならなかったのだ。俺はライナスの制止を無視してでも里の者たちを守るために全力を尽くすことを魔人に対して宣言すると、ライナスも諦めて一緒にこの場に残ることにしたのである。俺はそのあとすぐに魔法を行使して氷結魔法の上位互換にあたるアイスウォールで俺の体ごと周囲を覆うドーム状の氷で覆い魔人から守ることにした。その結果、俺は全身に火傷を負いつつも魔人に勝利することが出来た。だが魔人は生きていたのでライナスが急いでポーションを使うがあまり効果がなくそのまま命を落としてしまった。

こうして俺とライナスでどうにかして森と里を分断しているこの大穴を開けることに成功したがライナスの話によるとどうやらそれは自然に発生したものではなく、何者かの手によって生み出されたもので間違いないようだった。その証拠にその場所を調べていたライナスからこの場所が自然に出来たものではないことが証明されてしまう。俺は一体誰がこんな事をしたのかを尋ねると、里の長であり最強の存在であるタロスという答えしか返ってこなかったので、俺はライナスからそのことを聞いて納得してタロスの家に向かいライナスが案内してくれるのでついて行くことにする。そしてライナスから家の中に招き入れられると俺はこの世界に来て初めてタロンの姿を見るのだった。

俺はタロンの姿を目にした時タロウの面影を感じてしまいつい笑ってしまいそうになる。そして俺はライナスからタロウはタロと同一人物なのかと質問されるがライナスはタロウのことについて詳しく知らないようだったので俺は簡単にタロウのことについて説明してあげるとライナスも驚きつつも納得してくれた。

それからタロスの話を聞いたライナスはタロスの願いを聞き入れて俺を彼の部下として迎え入れてくれることに決めてくれたのである。俺はこの申し出を受けると、この里で暮らさないかという話をしてくるが、今の俺はライナスに用事があるのでこのまま里を後にするのであった。

俺はライナスが住んでいる場所の周辺を見渡せる位置まで来るとそこでライナスを待とうと思ったのだが、いつになっても姿を見せることはなかったので仕方がないので一人でライナスのところに向かう。だがその前に俺達はタロンと話をすることになる。俺とライナスが話をしている最中にタロンが乱入してきたのだ。そしてタロンの話を聞くと、どうやらタロウがタローと同一人物だということが判明したので俺とタロンで話をすることになった。そこで俺がタローに頼みごとがあると告げるとタローは快く引き受けてくれる。それから俺達はライナスとタロのところに戻ってきたのである。

俺はタロンからタロに頼んで欲しいことがあった。タロはライナスと会話をしているが、その内容を聞いてみるとアルスという女性のことをライナスに話してくれないかと言われてタロはそれを引き受けてくれたのである。俺はこれでアルスとの関係を良くすることが出来ると思い安心することができたのだが、その会話の途中でアルスが部屋に入ってくる。

そしてアルスは自分がなぜここにやって来たのかを話す。それはライナスからある依頼を受けたからだった。アルスからその依頼を受けた理由を聞いたライナスは嬉しさのあまりにその場で涙を流してしまう。だがそんな状況になっている中俺は、アルスの様子がおかしいことに気づく。アルスの目からは涙が流れ落ちているわけではなく、その目は俺に向いていた。俺はまさかという思いから自分の腕を確認するとアルスに握られていることがわかったのである。

俺はどうして俺がここに来たと知っているのかわからなかったが俺はアルスからそのことに対して尋ねられて俺は咄嵯のことで本当の事を話してしまい、俺の体に起きている現象については隠しておいた。そしてタロが助け船を出してくれなかったら俺はアルスから問い詰められていたかもしれない。

それからアルスと俺は二人でタロが作ってくれた料理を食べることになるがタロとライナスからこの里を出て行ってもらいたいと言われてしまう。俺は里から出て行けと言われるがそれは断わろうとした。俺がここで暮らしていければいいなと思っていた矢先にアルスがとんでもない提案を持ち掛けてくる。アルスから提案されたことはこのタロのいる場所で一緒に暮らすというものだった。

俺もさすがにこれは断りたいと思ったのであるがアルスの真剣そうな顔つきを見ると、このアルスの表情を見た俺は断わることができないと感じてしまいアルスとここで住むことを決意する。そしてアルスと共に暮らし始めてしばらくが経過した頃だった。タロから連絡が入るがその内容は俺にとって嬉しいことだった。俺の作った魔剣はアルスに渡すことになるがその代わりと言ってはなんだが、俺に武器を作るように言ってきたのだ。俺はその話を聞きいれるとアルスと一緒に素材を探しに行くことになった。そしてアルスはライナスにこのことを話すために里を出るがライナスに止められる。

そして俺も一緒についていくことになりアルスと共にライナスの家を飛び出して行くがライナスの家にはまだ魔獣達が残っていた。だが俺はアルスに魔剣を渡そうとした時にライナスから魔剣の剣舞をここで見せるのであれば里の人たちを見逃すと言われた。なのでアルスはその条件を呑み、ライナスの家で魔人と戦ったあの技を見せる。

俺が見せた光属性の攻撃を見たタロは驚愕しており、そして魔人の攻撃を防いだ際に使用した盾をもう一度使うことを要求する。俺もその言葉に素直に従う。俺が光属性の上位互換にあたる氷属性の結界を展開すると、それを見たライナスは俺に向かって何かを投げつけるが俺には効かなかった。それを確認したライナスが俺が先ほど作り出した魔法陣よりも遥かに巨大な魔法陣を展開していくがそれを見ているタロウとバルバロッサの二人が慌てる。俺はそんなタロウ達に大丈夫だと伝えてからその結界を維持することに専念する。結界の展開が完了しても魔法が完成するまでにはかなりの時間がかかりそうだったが、それを待っている間にタロウから質問をされる。俺の身に何が起こったのかということだ。

それを語る上で重要なことがある。それはライナスには言わずにこの場にいる人間たちだけに言っておきたかったのだが、俺はその疑問に答えることにした。俺は魔人によって一度殺されかけたのだがその瞬間謎の声が聞こえてそのおかげで今の状況になったのだということをライナスのいない今だからこそ言える。だが魔人の能力があまりにも強かったのでこの結界で抑え込むことに成功したのは運が良い。もしも俺の推測が正しければこの結界はあと数秒しかもたないだろう。そして俺はその事実を伝えたのだ。

俺の予想通り結界の維持が難しくなりつつあったが、そのタイミングを見計らったかのようにライナスの魔法の完成する。それはこの世界の歴史上において一度も発動することが無かったとされている魔属性の極大級と呼ばれる魔法が行使されたのだった。そして俺は魔法が放たれた際にライナスの家から飛び出す。

魔導王タロンの放った魔炎砲は魔獣達を一掃したが、魔炎砲を放つ前に既にこの世の存在では無かった魔人も消し炭となって消滅した。

そしてその魔炎の後には何も残らなかった。だがタロウが発動させた光の壁はこの世から存在そのものが抹消されてしまった者達を救うことはできなかったのである。そして俺はタロウから感謝の気持ちとしてアルスの身に着けている指輪をもらう。それからこの里の長のタロンから里の外に出ることが許されたので俺はライナスの家に戻るとライナスからタロウの正体について教えてもらう。タロウは実はこの里の者ではなく、別の里で産まれてこの世界に来ることになったらしい。俺はライナスの話を聞き終えた後、ライナスとタロンにお礼を言いながら家に戻るのであった。

「おいタロウ。本当にこの世界に来てから何も変わっていないんだな」

「何を言っているんだ?」

この俺がタローだって言うのにこいつは未だに俺のことを認めようとしないのか。

まったく、俺はタロウじゃないっていうのにこのタロスってやつはまったくわかっちゃいないようだな。俺は俺だ。お前の幼馴染でこの世界を生き抜いていたタロだよ!それにしても俺がこの世界で意識が目覚めてからすでに一週間が経っていた。だが俺の体に変化が起きた気配がない。いや正確に言えば起きた変化もある。この世界に飛ばされた時に比べて身体能力が向上していたのだ。俺はそのことに気がつくと、俺はそのことについて考えるが結論はすぐにでるだろうと思いそのまま寝床につく。俺が眠りにつく前に俺はあることが頭に過る。俺は俺の記憶を思い出したことで自分のことがよくわかった。

このタロという男がこの世界ではどういう風に呼ばれているのかわからなかったからだ。そこで俺がこの体の名前を呼ぶとこの体は俺が考えていた通りに俺が元々住んでいた地球の世界で呼ばれていたタローという呼び名を口に出した。それから俺は自分がどんな人間なのかを考えるが答えが出ることはなく、俺はそのことについて考えて疲れた体を癒すためにすぐに深い睡眠におちてしまったのであった。

俺が目を覚ますとこの家の住人全員が家の中で待機していた。ライナスが朝から俺に話をしたそうだったので俺はライナスに話をしてもらう。俺は俺に頼みごとがあったそうだ。その頼みごとを俺は了承してライナスからタロンと二人きりにしてもらえると告げられる。そしてタロンに俺の持っている剣を見せて欲しいと言われる。俺もそれには同意したので俺は腰につけていた魔剣を抜き取りライナスに手渡してやった。

タロンはそれを眺めているだけで、特に反応は示さない。そしてタロンはしばらくするとその剣を持ってどこかへ行こうとするがその途中で立ち止まり、タロンが口を開く。

どうやらタロンはその剣を使ってみてほしいと言い出すが、さすがに使うことは出来ないので俺の代わりにライナスに取り扱ってもらえと頼むことにした。そこでアルスが口をはさみタロンは俺にしかできないと言い始める。

俺はその理由を聞いてみたくなった。何故ならタロウに頼んで欲しいという理由がわからなかったからである。どうせこのタロウはアルスの想い人に頼まれたからとかそういったくだらない理由で引き受けるつもりなのだ。

それからアルスの話をタロウは聞いてやることに決めた。

タロがタロウにアルスを鍛えるように頼んでくれと言った。俺はそのことを聞き流すとアルスを鍛えるために外へ出る。

俺はまずこの家の近くにある山へと向かう。そこにはアルスでも倒せるレベルの弱い魔物がいるはずだからそいつらをアルスに討伐させるのだ。俺はアルスと共にその山の麓に着くとその麓に洞窟を見つけたのだった。俺はそこの中に入るとアルスが少しばかり怖がっていたがそんなものは関係ない。そして俺はその中へ入ると俺はアルスにその中に入るように指示をした。俺はその指示に嫌がる様子をみせたが無理矢理中に連れ込んで中に入ったアルスと一緒に洞窟を進んで行く。それからしばらく進んでいるとある場所についたのだった。

俺はその場所について説明をするが、この場所の説明を受けたところでアルスは納得はしていなかった。

俺はここで修行を始めるとアルスに伝えてからこの洞窟の中にいるアルスよりも強いレベル15ほどのゴブリンに相手をさせることを伝えると俺はこの場から去ってアルスを一人にする。

それから数時間が経過してアルスが出てくるのを待つとようやくアルスが出てきた。アルスはボロボロになりながらも俺に成果を話す。俺はアルスの成果に驚いた。

それからアルスはさらに続けると俺はこの短期間でそこまで成長したアルスを見て感心していた。それから俺とアルスは下山することに決める。

それからしばらくしてアルスのレベルも20を超えたのだった。俺はそのアルスの頑張りを褒め称えるとアルスも満更ではないような顔をしながら嬉しがっているようだった。アルスのその態度を見ながら俺は次の目的地を決めようとする。次はタロの記憶を頼りにある場所に行こうとするのだが、その場所についてはわからないのである。だからとりあえずはこの村を出ようとは思わないのであるが、この村に居れば安全であると言える。なので俺としてはもう少しこの村にいても良いと思っている。しかし俺はこのタロウのことを信用していない。だからこそタロウの思い通りに動くことなんてごめんだった。だがこのままここにずっと居るわけにもいかない。俺は仕方なく外に出ることにしたのだ。

俺が外に出ると言ってからはアルスの表情が暗いものに変わっていく。だがそれも仕方が無い。タローから聞いた話によればアルスはタローと一緒に暮らしていたが、アルスの両親が死んだ後は親戚の家に預けることになった。その家にアルスと歳が同じの女の子が住んでいたらしいがその女の子はアルスと違って優秀だったため、タロウよりも優秀な子供を産むためだけの存在として扱われていたらしい。そのことに関してタロが何かを言うことはないがタロは何かしらの行動を起こしているようだということは理解していた。

そんな時にこの世界では勇者と呼ばれる存在である人間が魔族を率いて攻めてきたという話をアルスから聞いていたのである。

そしてアルスの話を聞く限りだと勇者の能力は異常なものだったということだ。その話をアルスから聞いた時にはタロウは驚いていたようで、それからはタロウの記憶を探ると、確かにこの世界に転生する前の世界でそのような話を聞いたことがあった。だがこの世界には存在しない力を持っているのかもしれない。

タロウはアルスの話に耳を傾けながらこの村の外に向かう。その道中に俺は魔人の気配を感じ取っていた。それは魔人の魔獣達を引き連れている。俺はその気配を感知した後は魔獣がどこに出現するかがわかってしまった。俺にはなぜかそれがわかり、そして俺はその方角へ向かって走り始めた。そして俺達がその魔獣達の元までたどり着いた時、その魔獣達はすでにこの世にはいなかった。

俺はタロウが魔弾の発射準備をする前にその魔人を仕留めることができた。俺はタロウのおかげで魔人と戦えているようなものだと考えている。それにしてもタローのこの世界の知識というのは凄いものがあるようだ。この魔弾についてもそうだったのだがそれ以外にも様々な知識があるらしい。それでこの前の戦いの時に俺はタローの使っていた魔法について教えてもらったのだ。だが俺の頭には入ってくるものの俺はまだ使うことができないでいたのだ。それから俺は今この世界において俺が知っている限りではこの世界に魔法というものが存在しないことを知った。そしてそれを知った時は衝撃を受ける。なぜならこの世界に召喚されてから一度も魔法を使ったことがないからだ。

このタローが言う魔法の属性とは火属性、水属性などが存在するのだろうが、俺はまだそのことについては詳しくは教えてもらえていなかった。ただこのタローの言う通りならばその二つの属性は俺にとって相性が良いらしい。俺自身は今までに見たことがあるわけではないので実際にその威力を知っているわけではなかった。それでもタロウは大丈夫だと言っている。

それからこのタロウの記憶を覗いて知った情報の中にはタローがいた地球での科学技術が俺が知るものよりも高い技術が詰め込まれており、この世界と俺の住む世界を繋げる方法もこの世界から地球へ帰る手段も俺は知らなかった。俺はそんなタローに尊敬をしつつも、俺がこの世界に来た目的を果たすためには俺が知らないことがまだまだ沢山あるということに俺は不安を覚えたのであった。そしてその日はそのままこのタロの体の持ち主の家で寝た。タロウとタロが二人で話をしている間、俺はタロとして過ごしてみたり、この体に入っている時の意識はどうなるのかなどを検証したりしてその日から数日間過ごしていたのである。

「お前って一体誰なんだよ」

俺はそのタロンの言葉を無視してタロの振りをして話しかけるとタロンは困惑した様子を見せる。

俺だって好きでこの体を乗っ取ったわけじゃないっていうのにこいつは何を言っているんだろう。

「私はタロですよ。それよりもあなたの体を貸してくれてありがとうございます」

「ああ、うんまあそういうことなんだけど、どうしてタロンがタロウなんだ?俺は俺であってお前はタローだよな?」

「私ですか。私も本当は自分がなんでこの体を使っているのかわからなくて戸惑っていたんですよ。だけどあなたのおかげで少しは自分のことが分かった気がします。私が何者かは分からないですがね」

どうやらタロの体は本来の体ではないために自分の体の記憶や感覚などが薄れてきてしまっているようである。

そしてタロンが俺の質問に対して答えた内容は俺には全く意味がわからなかった。しかしそれを詳しく聞こうとしたところでタロンから話を打ち切られる。そこで俺がもう一度そのことについて聞くが、その度に誤魔化されるのであった。俺はそのタロンの話しぶりを見ているうちに段々と腹が立ってきた。そこで俺が怒声を浴びせるとタロンは慌てて部屋から出ていったのである。そして俺は一人になったところで先ほどタロンの言っていた言葉の意味を考え始める。

タロンの話を俺は理解できないままこの数日が過ぎていったがタロンは毎日この家にやってきては俺の様子を見に来ていた。俺はその間ずっと一人で考え事をしていたのだが未だにタロンの言っていたことの真意は分からないままであり、さらにはそのことを考えようとすると頭が痛くなる。

そこでこの家にいるアルスに相談するとタロンがなぜタロウに固執しているかを話してくれる。

「タロウさん、タロウさんの今の身体の本来の持ち主であるタロという人はどうなっているんですかね。その人に会えば何か分かるかもしれませんが、おそらく会うことはできないと思います。この村にはいないのですから。この村を出てどこかに旅をしているのでしょうか。その行方が分かれば探すことも可能なのですが。残念ながらこの村の人間はこの世界の外のことを知らない人が多いのでこの村の外のことを詳しく知ることができないのが難点ですが、でもその人がどこに行ったかも何となくわかるのが私のスキルの一つの力ですね」

俺としてはアルスが言った内容が気になってしかたがなかった。そしてタロがいなくなった理由について俺が考えている間にアルスが勝手に話をしてしまっていたがタロウは俺がこの世界に呼ばれた存在だということに驚いており俺はそのことを話すことにした。

そして俺はそのことをタローに説明をすることにしたのだ。俺が自分の元の世界で暮らしていた世界では異世界召喚が一般的に行われておりその召喚によってこちらの世界にやって来たということを説明をする。

「なるほどな、そういうことだったのか。それなら納得ができるぜ。だがこのタロウって男はとんでもない奴みたいじゃねえかよ。俺の予想よりも遥かに上回っていて驚かされたけど、それでも俺には勝てるはずだから安心しろ。俺に負けるのは仕方がないとしてもタローがこの世界に来る前に倒した女神には絶対勝つことはできねえから、それは諦めろ。あいつは異常だから仕方がねぇ」

俺はこの言葉を聞いた時にこの目の前にいるタロのことを殺そうと決めたのである。

俺はタロウに俺に勝てないと言ったがそれは仕方のないことだと思った。この世界において最強の力を持っていなければ俺を倒すことなどできるはずがないだろうからな。このタロスの体に入った俺は魔人の魔弾がなくてもこの世界に来てすぐにレベルが100を超えることができていたのである。そして俺はこの世界でも魔王と呼ばれていた。それも俺はタロウと同じ魔族の王だったのである。魔族は人間とは違い強さが全てであるため俺に逆らうような馬鹿はいなかった。それにタロウがこの世界で倒さなければならない女神の実力については俺もよくわかっていた。このタロは俺がこの世界に現れる前の日に俺のことを討伐するために送りこまれてきた勇者の一人だった。俺はこの世界でその女神に一度敗北していたのだ。その勇者は強かった。その勇者には仲間もたくさんいてそいつらが俺の仲間を次々に殺していき最後には俺を追い詰めた。しかしその瞬間勇者の隙を狙って俺の部下が攻撃をしかけてきたのだ。勇者はそれを防御しようとした。だが部下の攻撃の方が上手であり俺は助かった。だが俺の体に大きなダメージが入りそのまま倒れ込んでしまい意識を失い、気づいたときには俺の体からその勇者は消えていた。俺は勇者が死んでしまったと思っていたのだがその勇者は生きていた。ただその勇者の人格が変わっていたのだ。

俺はその変わりようについて疑問に思っていたのであるが勇者の体に何かが起こったということだけが分かりその後は俺がその勇者と戦うことはなかったのである。

俺はこのタロをこの世界に送り込んだのがその勇者だと推測した。それは勇者から放たれていた殺気に似たような気配を感じ取ったからであった。タロウと話をした時はそのことを思い出していなかったがタローの記憶を見たときにそのことを思い出す。俺との戦いでタローは死ぬはずだったと。だがその直前に俺はタローの体に乗り移った。

そしてその戦いの結果タロウは生き残ったのだがその後、俺のところにこの世界の魔族を裏切ってやってきたのだ。その時はちょうど俺がこの世界に呼ばれてきた頃であり俺のところには俺とタロの二人しかいなかったので、タロウがこの世界にいた時のように俺はこの世界でタロウを俺の部下にして鍛えることを決める。

それから俺が魔人との最終決戦を終えてタロに報告をしていた時の話だったのだが俺の話を聞いていたはずのタロは俺に向かって剣を振り下ろしてきたのである。

タロが急に手を上げたので驚いた。そして俺に対して攻撃を仕掛けてきているということが理解できてタロが本性を表して襲いかかってきたのだと判断した俺はその場から飛び退き回避する。しかし俺の考えとは反対にその振り下ろしてくる剣はただの見せかけのもので攻撃ではなく俺の注意を引くためのものだったということに後々俺は気づくことになる。その次の瞬間、俺は自分の腹部の辺りに強い衝撃を受け吹っ飛ばされてしまう。その勢いを止めることができずに俺は地面に叩きつけられてしまう。俺は痛みに悶え苦しんでいたがそれでもなんとかして起き上がり状況を確認しようと前を向くと、そこに立っていたのはさっきまでの少年の姿から姿を変えていてその見た目は明らかに少女になっていた。そして俺はその姿に驚きながらも立ち上がろうとすると、タロがまた攻撃を仕掛けてきていた。今度は蹴りがきたが何とかその蹴りを避けた後にタローを殴ろうと腕を動かそうとすると動かなかったのである。

俺は困惑しながらもタロの動きに目を見張らせながら俺はその攻撃を避けることで精一杯であり、さらに俺の腕が全く動くことができないため避ける以外の選択肢がなかった。それから俺はタロに対して拳を叩き込むことに成功するが、なぜか手応えが感じられなかったのである。そのことに俺は動揺しながらさらにタロンに対して反撃を試みるが、俺が繰り出す攻撃をタロンは簡単に受け止めてしまったのである。

俺がタロンに対して全力で挑んでもタロンはその全ての攻撃を受け止めている。

俺に対してこの世界で一番弱いと言われていた勇者のタロンは俺の攻撃を全て防いでしまう。俺の方はというとその圧倒的なタロンの強さのせいで俺はもうほとんど戦うだけの力を残していなかったのである。俺にはほとんど抵抗ができない状態で俺はタロから何度も殴られ蹴られた。俺はそんな状態の中自分の死を悟ったのであった。

俺が気がつくと俺は森の中で横になっていて意識を失っていたようだ。俺は自分が今どういった状態なのかを確認する。まず最初に自分の姿を見るとそこには先ほどタロと戦っていたときの傷だらけの俺の肉体があった。俺はタロとの戦いで受けた傷が治っているのを確認した。

俺に治癒能力などは存在しないはずだというのにだ。さらに俺はこの体で戦ったときの記憶も残っており、自分の体がまるで他人であるかのようにその戦闘での行動を思い返すことができる。さらにこの体で得た情報は全て覚えているということも確認することができ、さらにはこの体に入る前より強くなっているように感じる。

そのことからこのタロンという体は元々俺の体でありこの体の本来の持ち主はこの世界にはいないことがなんとなくわかる。しかし先ほどまで俺はこの世界で最強の存在であるはずのタロウと戦えるほどの力が残っていたはずである。

それが今はこの世界最強と言われているタローを相手に全く太刀打ちすることができなかったのだ。その事実からこのタロンの体に入っているタロウと俺は同じレベルの力を元々持っていたのではないかと思うようになった。そしてその結論に至った俺がこの体に入ったことにより本来のタロウの力を取り戻したということなのだろうかと、この仮説を立てたがやはり俺には納得できないところもあった。だがこれ以上考えても何もわからないだろうから考えるのをやめる。そこでこれからどうしようかと考えた時に俺の近くに一通の手紙があることに気づいた。

それはバルバロッサから俺への手紙のようで内容はこの村に魔王軍の幹部がやってくるという内容が書かれている手紙であった。その手紙には俺の知り合いにも何人かの者が既に魔王軍に殺されていることが書かれておりさらに、このままではいずれこの村は魔王軍の攻撃によって滅ぶと書かれていたのである。

この手紙を読み俺は急いで魔王軍の幹部がやってきてこの村に侵攻を開始しようとする前に倒さなければならないと思い、俺は急ぎ足でタロウの家へと戻る。

タロウの家は家というよりも城というのに近いくらいの大きさである。それはその建物がとても頑丈でありその強度はこの世界でも屈指のものだからでもあるが、この建物の中に魔道具がたくさん設置されているためにそうなっているのである。魔道具とはこの世界に存在している様々な便利なものを生み出すために必要なものでありその作り方については魔族が独占していた技術の一つでもあった。だが、この魔族の村において俺の配下となった者達にその製法を教えて今ではこの村のほとんどのものが作ることが出来るようになっていたのである。

この村の魔族は他の場所に住む者に比べて圧倒的に戦闘能力が高い。それに加えて魔族達は全員何かしらの技術を持っていたのだ。その技術の中には料理などの家事を行うものもある。だがこの村の魔族はその技術を使って色々な便利なものを作り出すことを楽しんでいる魔族がほとんどであり俺にはとても良い場所に思えるのである。

俺はこのタロウの家の玄関から入り奥にある部屋に入ると、そこでは俺の部下達が集まり会議をしているところであった。その中にはタローもいたがその隣にはあの時タロと一緒にいた少年の姿が見えた。俺はその二人がタローに気づかれないうちにこの家から退散しようと思っていた。なぜならこの場にいるタロウの関係者たちはこの世界の中でもトップクラスの実力を持った存在なのだ。

俺はタロウからタローになったタロとタロウを送り込んだ勇者であるこの二人の会話を聞きたくなかったのである。だから俺は二人がいる部屋から離れたところで待機することにしたのであった。俺はこの部屋の扉の前に陣取り、この部屋に入ってきた者たちを排除するための準備をする。

俺達が魔王軍について話し合いを始めると俺とタロウを除いた魔族の人達はそれぞれが自分達の持っている情報を交換し合ったのである。その中でわかったこととしてはこの世界において一番厄介な相手とされている女神の居場所が判明したということだった。女神は現在タロウが住んでいる街の近くにおりその強さは他の女神よりも強いらしい。そしてこの世界に出現した女神の中でその実力は二番目に高いということである。そして、その女神を倒すのには魔族の中では魔王が一番相応しいという意見も出ていたが魔族は女神に対して恨みを持っていて倒すためには一致団結して立ち向かうべきであるという話が出ていたのである。

この会議での結論は女神を倒すために協力体制をとるべきということでまとまった。だが魔族は基本的にはプライドが高く他種族と馴れ合おうという考えを持っている者は殆どいないのだ。だが俺の命令ならどんな理不尽なことでも受け入れて従うというのが今の魔族達の総意になっているので今回の話もすんなり受け入れられていたのである。俺が魔導書を取り出すと俺はすぐに詠唱を開始し魔法を発動する。するとその瞬間俺の部屋の空間を固定化することに成功したのであった。

その魔法を使うことができる人間は世界で俺しかおらず、この魔法が使えればどのような強固な障壁を使おうと俺の許可した範囲外からのあらゆる攻撃を防ぐことができ、また俺が発動する結界が壊れることはまずありえない。つまりこの魔法を使えるだけで無敵になると言ってもいいくらいの強力な効果を得られるのである。俺はその魔法の威力を実感しこれで魔族達に被害が出ることはなくなるだろうと確信した。

俺は魔族の村の警備のために俺の部下の一人に見張りを任せてから、この城の近くにあるタロウの家に俺は再び向かったのである。そしてそのタロウが暮らしている城にたどり着いたのだが俺はそこで信じられない光景を目にすることになる。

そこには巨大なゴーレムが一体立っており、その周囲にはたくさんの人影があったのだ。そしてその魔族たちのほとんどが女性でしかも見た目が非常に美しい魔族達ばかりなのである。その姿を見て俺は唖然としてしまった。なぜこんな状況になっているのかがわからなかったがその疑問に答えられるのはこの世界に来てまだ間もない俺が思い当たる人物はたった一人だけなので俺はその人物の元へと向かったのである。

俺は目の前に立っているタロの外見をした男に声をかけることにした。

「お前に一つ聞くが、タローの身に何が起こったんだ?」

俺はこの男がどうしてこのタロウの見た目になって現れたかということはわかっている。しかしどうしてもそれを確認せずにはいられなかったので俺から質問してみた。

「ふっ、さすがに私の行動を見抜くか。どうだね、私も君が知っているであろうタロの体に入ることでここまで変わることができる。この肉体に宿った力を使えば君の望みも叶うのではないかな」

男はそう言いながら笑みを浮かべている。俺は男のその言葉に衝撃を受けながらも、冷静を装いながら俺は答える。

「残念ながら俺はタロウが欲しいのではないんだよ。タロの見た目で現れても俺の心は揺るがない。それにタロの力を手に入れてもタロになれるわけではないのだよ。俺はあくまでこの世界のタロになりたいわけで、その中身である魂が俺である限り俺は俺なんだ。その証拠に、今ここにいるタロが俺の望んでいるものではないことが理解できるだろう。タローの見た目はタロウが持っているスキルが反映されているに過ぎない。そしてその体はただタローの姿をしているだけの別の生命体だ」

俺がタロウの体のことをよく理解していることを話すとこの男は自分の正体を現したのである。

「はははははははは、そうかい。君は本当に凄まじい力を有しているようだな。それならばもうすでにお見通しというわけかな?まぁ私は最初から自分の姿を誤魔化してはいなかったんだけどね。そうだ、今君と話している私がこの体の持ち主であるタロウだ。だがこの肉体には二つの人格が存在しているんだ。この体の本来の持ち主の意識とは別にもう一つあるんだよ。それが私の人格というやつなんだ。そしてこの体の中にいる時はもう一人の自分がタローの体に入っている時に得た知識は全て記憶していて、逆に自分の体にその体に入っていたときに覚えたことなどは一切忘れることができるのだ」

その説明を聞いた俺は驚きの表情を隠し切れなかった。タローから聞いた話では、タロウの中にはもう一つの人格が存在すると言っていた。それがこのタローだとすれば確かに辻妻は合う。俺はタロウからその話を聞かなければ信じなかったことである。しかし俺はその話を聞かされた後でもこの男の話を全て信じているというわけではなく完全に信じきることはできなかった。

しかしタロウと俺の関係を知るこの男の存在を知っておきたいと思いその意思を伝えることにした。

「俺はお前の話を一応信用することにした。しかし、この世界で起きていることについての情報を持っているという保証はないから、もし俺に敵対しようという意志があるのならここで殺す。だが、もしそうでないというのであれば、俺に協力することで得られるメリットを教えるべきだと思うぞ。もちろん、俺も全て話すからな」

この男が嘘をつけばそれで終わりだが、仮に俺に敵対する気があるのなら俺がこれからやろうとしていることは危険が伴うから一人でやるつもりでいる。

その話を聞いたこのタロウは納得したという顔をしてから、俺に向かって提案を持ちかけてきたのである。

このタロウの提案というのは簡単に言うと、俺はタロウが元に戻る方法を探すことに協力してもらいたいというものだった。

この世界における女神の立ち位置はかなり厄介なものとなっており俺もその事情は知っているが女神は魔族に対抗できる唯一無二の力を持っていて魔王軍の連中が女神の力を手に入れるのを阻止する必要があったのである。だから、俺はそのタロウからの要求を受けるかどうか悩んだが、タロウからの提案を受け入れ、このタロの協力者になることを誓ったのであった。

俺はタロンと別れた後に急いで村に戻るとそこでライナスの配下の者が俺の元にやって来てバルバロッサがこの村に魔王軍の幹部がやって来ることを知らせてくれたのである。

その情報を聞いてすぐに魔王軍の幹部を倒しに向かうことにする。バルバロッサの配下の者達とバルバロッサと魔族たちが魔王軍と戦うことになるがこの人数では厳しい戦いを強いられるだろうと思っていた。だがその心配はいらないとすぐにわかる。それはタロスという少年が突然現れてバルバロッサの配下達と一緒になって魔族達の集団に加わり始めたからである。

そしてバルバロッサはこの村に訪れることになった敵の情報をタロウに教えてからタロウに魔王軍がこちらに来る前にできるだけ遠くへ逃げるようにと言ったのである。

だがそんな指示を無視してこの村は襲ってきた。この村に現れたのは魔獣使いとその護衛である魔族が十名ほどであった。そして魔族は俺たちが待ち構えていたことを知るとすぐさま撤退しようとしたのだ。しかし魔族の部隊が撤退するよりも早くに俺の仲間達が魔族たちに攻撃を仕掛けるとあっけなく勝負がついて魔族は全滅した。俺は魔族の持っていた装備を回収するとそれを持って俺はタロウの元に向かったのである。だがそこで待っていた光景に思わず唖然としてしまい俺はしばらくの間呆然として固まってしまった。なぜならそこに立っていたのはその体にはタローの物と思われる衣服を身に付けてその顔つきもタローそっくりの顔に変化させていたタロウがいたのだから。

俺はその光景を見たとき、タローが二人存在しているのだと思い込んでしまう。その瞬間に混乱して頭の思考が全く追いつかなくなった。だが、すぐにそのタロウが二人いることに違和感を覚えその事実を確認するべく俺は二人がいるところに向かい話しかけたのであった。

「えっとお前が本物のタローなのか?」

その問いかけに対し、その二人はお互いの目を見て、同時に返事をする。

「ああ、僕は間違いなく本物の僕だよ。そしてこいつがさっき言っていた魔王軍の幹部の一人を倒せば僕の体に戻れるということを信じていたみたいだけど、まさか本当に倒すとは思わなかったよ」と偽者の方は少し驚いた口調で答える。

それに対して本物がこう言ったのだ。

「はははははっ、俺の作戦は大成功だったな。これで魔族たちも魔導書を扱える人間に負けないように強くならないと駄目だってことがはっきりわかったんじゃないのか」と楽しそうな声で笑みを浮かべながら答えると偽物のタロウが反論してきた。

「おいおいお前は魔族の強さをなめすぎているぞ。魔族は人間のように他の種族の力を頼らずとも単体でも強い奴は強いし、種族特有の特殊な魔法も使うことができるから人間が魔法を扱うことができない分だけ、魔法を操ることができるという一点に関しては有利だ」と言い返してくるとタローは、すぐに魔族を侮った発言が間違いであったことを認めることになった。

その後すぐにバルバトスがやってきたので、俺はタロンのことをバルバトスに任せることにしてこの場を離れることに決めた。俺は魔剣を呼び出して俺はすぐにその魔族達を斬り裂く。すると魔族達の動きが明らかにおかしくなり始めていて、まるで体が思うように動かせないような動きをしている。俺はこの現象の原因を探りながらこの村の探索を続けていると、魔族達の中に紛れ込んだ魔族を見つけたので俺がその魔族を斬ろうとした時、俺の視界は突如暗転してしまった。

目が覚めたときにはそこは先ほどまで俺がいた世界とは違う世界に転移していたのだ。そこで俺に襲いかかって来たのは、俺の体を乗っ取ろうとしてくる何者かと、この世界に来た時に会った女神と魔族の王と呼ばれる存在、それとなぜかタロウがこの世界のどこかで暴れているという情報が頭に入ってきたのである。その魔族の名前はタロー。そして魔族の王の本当の名前を知っているのはおそらくタロウだけであろう。

俺は自分の中にいる魔族の力を感じ取ることができる。どうやら俺の中にいるこの魔族は相当強力でありこの体から出ることは難しいと判断した俺はとりあえずその魔族を抑えつけることに決める。そしてそれと同時に魔族の正体についてもある程度把握することができた。この体に寄生して支配しようとしていたその相手こそがこの体の中にいるもう一人の人格であるということを。そう、タロウの中にもう一つの人格が存在していた。俺はその人格に対して話しかけることにする。

『お前は自分の本来の目的のために俺の体に入り込みこの世界で暗躍しているというわけだな。まぁそれくらいのことをしなければお前は元の世界で自由に生きることはできなかっただろう。まぁ、それくらいのことをしてもこの世界はそう簡単にお前を自由にさせてくれるはずがないんだけどな』と話すと、俺の中のタロウは俺に問いかけてきたのである。

「そう、この世界は自分のことを簡単には殺させてくれないんだよね。それはこの体になって理解させられたことなんだ。この世界の人たちはみんな強すぎて僕のような弱いものを殺すことなんて簡単なんだ。まぁ君なら例外になるんだけどね」そう言い残すと、その人格はすぐに俺の中に戻っていき、また俺の中で眠りについたようだった。俺はすぐに俺自身の体の方に意識を向けるとタロウの中にいたもう一人の人格が完全に消え去っているのが感じ取れたのでタロウが無事に自分の体に戻ってきたんだろう。

俺の方も意識を取り戻すことができた。だが、まだ俺は自分の体を動かすことができず、ただその場で横になっていただけだったのである。その時の俺は、一体どうしてこのようなことになっているのかと、考え込むことになる。俺は自分の意思とは無関係に誰かの意思によって動かされている。そのような気配を感じることができていたが俺はそれをどうにかすることもできないまま時間が経過していくのであった。それから俺はようやく自分の肉体を動かせるようになったがその頃になると、俺の体は村の近くの森にまで移動しており俺はこの肉体を操作していた人物について確認するためすぐにこの肉体の持ち主に会いに行くことを決めたのである。その肉体の持ち主の名はタロスという名前であることはもうすでに知っていたのである。しかしなぜ俺の肉体にこの人物が憑依していたということがわかったかというとその理由は一つしかない。それはこの俺自身がその記憶を完全に失っていたからである。だがタロウの話によると俺は自分が死んだことを覚えていない状態で蘇るという不思議な現象が起きたらしい。だがタロウの記憶は断片的なものでしかなく俺と初めて会った時はこの俺が自分を助けてくれた存在なのだと認識していたそうだ。そしてこの俺は魔族の討伐を行い、魔王軍の幹部も一人は倒したと言っていたが残りの二人を倒すことはできなかったようで悔しそうな表情を見せていた。そしてこの俺の体に何かが取り憑いていた形跡がありそれが俺の行動を制御していたということもわかっていたようだ。俺にこのタロスが魔族だという情報を伝えてくれたが俺もすぐにタロスが人間ではないことは察しがついたのである。その理由はタロスには人間の持っている魔力とは異なるものを感知することができていたからだ。

そして俺のこの体を使っていたタロウから話を聞くとこのタロスは元々は別の人間だったということが判明した。

「俺は元々ある国の王様をしていた。この村に訪れたときに魔王軍の襲撃にあって俺のこの体と魔族が入れ替わったという経緯があったのだ。だがこの俺のこの体はかなり頑丈な作りになっているみたいだから魔族に操られることもなく、この体から出ることができない状況でもこの魔獣たちをうまく操ることができているから今は魔獣の数を一気に増やすために俺の配下の者たちを使って村の住民を襲わせて食料を奪うことにしたのだ。魔獣たちは俺のいうことに逆らうことはできないが魔獣に食われることでこの村に滞在する時間は短くなるはずだ」

「その話が真実かどうかはわからないがとりあえずこのタロウが魔獣を操ることができるという事実は認めていいと思うが魔族についてはどういうことなのか教えてほしい」とタロに聞くと魔族と魔人は似ているが同じものではなく、同じ名前の違う種族であるということを知った。そこでタロウはこの魔族たちを率いている幹部の一人のタローのことについて語り始める。

「魔族と魔人との違いだが、まず第一の大きな違いは見た目が全然違っていてこの世界の人間たちと全く変わらないという事と第二の違いは魔獣を意のままに扱うことが出来ることだ」と言ってきたのである。この情報は俺にとっては衝撃的なものだった。なぜならこの世界に元々いた人間である俺にとって魔獣は俺の敵であり、俺の仲間が命を散らして倒さなければならない相手であった。その魔獣を従える事ができる魔人という存在は今まで一度も確認されたことのない未知な存在である。だからこそ俺もその存在を知らなかった。そんなことを考えていると俺にこの体を託して姿を消したはずのもう一人の魔族タロウが現れ、このタロウが今ここにいるということは、どうやらこの魔族はタロウから逃げて隠れて過ごしていたのだろうと判断ができたのである。

タロウはそんな魔族を見て呆れた顔を浮かべてから、その魔族のことを説教し始めたのだ。そして魔族は涙を流しながら謝り続けたのである。その様子を見て俺はそのタロウが本当に魔族を統率していた男なのか? と思い始めたがどうやら魔族の男はこの魔族が持っていた能力によりその体を乗っ取り支配することに成功したのだという事を魔族の男が説明してきたので俺はこの事実を受け入れることにする。そこで俺は気になったので、このタローと会話をしながら俺は疑問に思ったことがあったので聞いてみることにする。

「お前は魔族にこの世界の情報をどこまで聞き出している?」と聞くとタロウは首を傾げながら俺に返答してきた。

「正直に言うとこの世界の人間たちがどうやって暮らしていて、どんな力を持っているのかまでは把握していないんだよな」とタロウがそう言い返すと、魔族の男が慌ててこう言ったのである。

俺はその魔族の言葉を聞いてから俺はあることが頭に浮かんできたのである。それは俺の体にタローという人格が入り込んでから俺は魔族の情報が手に入るまでこの世界を彷徨い、魔族と会わないようにして行動し続けていた。そしてこの世界に転移してきた時にはすでにこの魔族は俺の体にいたわけであり、それから俺に魔族の情報を教えることなく魔族と共にこの森の奥地で生活をしていたのであろう。つまりタロウはそのように行動しながら魔族から情報を聞き出すための準備をしていたのだろう。

俺はそんなタロウがすごいと思ったがタロウはまだ子供なのでその知識はそこまで多くはないだろうと考えていたのである。そのため俺はタロウに対してそのように話すとその魔族に向かって魔導帝国にいる人間たちの力についても知ってることを話し始めろと言い、俺達もその言葉が嘘偽りがないのか確認すると言い出したのだ。

俺達がタロウに魔族たちに聞き出そうとしていることを話すとタローはすぐに答えを出してくれた。そしてその魔族に対して俺達に嘘をついていないのか質問すると魔族はそれをあっさりと受け入れたのでこの場でタローと話をしているこの男は本当のことを全て話しているということがわかってしまったのだ。

その後俺達はタロスが魔剣を持っていたことからタロスは魔王軍の一員である可能性が非常に高いとわかり、さらにタロウの話に信憑性が出てきてしまったことで俺はその魔族が本当にこの世界で最強の力を持つ魔族だとは思えなかったのである。そして魔族の本当の正体とはなんなのか? ということをタロウが知っていることを俺とタロウに伝えてくれたのであった。そのタロウから伝えられた内容に俺は驚いた。まさかこの世界では勇者が存在しておりその力をこの魔族は恐れているという話を聞いたからだった。この世界では俺も知らないこの世界の仕組みがあるのかもしれない。そしてその魔王軍と戦えるのは勇者しかいないのだとタロンが教えてくれたのだ。そしてその勇者の存在について、俺はその話を聞かされた時点で嫌な予感しかしていなかった。なぜなら俺がその世界に来たときに出会ったあの女神の顔が頭に思い浮かんでいたからだ。

俺とルチアの二人は魔人が住んでいるという場所に向かっていた。

なぜ俺たちがその町に向かうことになったかというと、俺の中に宿るタロウにこの体の中に入っていた魔族の王と入れ替わってしまった魔人の話を聞き俺はタロと魔族が元は同じ世界の生き物だという事実を知ることになり、その二人が一緒にいることに対して俺はとても複雑な気持ちになっていた。だがタロウは二人の関係についてあまり興味がないようだったので俺もそのことを考えることを止めて、俺は俺の目的のために魔族にこの大陸にある国の一つである王国を支配するための作戦の実行を始める。そしてその作戦を実行するためにまず俺は魔人をこの村に置いていくことにした。その理由として魔人には魔族と人間の関係を説明しても意味がないことは俺自身がよく理解しているため魔人には何も話さずこの魔獣の森に連れてきたのである。

しかし俺の目的はただ単に魔人を置くためだけにこの場所に放置したわけではない。魔族とこの森に暮らす人間たちとの間にある壁を取り払うためには魔獣たちを手懐けることができる魔獣使いのタロスの力が必要になると判断したのだ。そのために俺はこれから魔人のところに戻り魔獣たちを支配下に置きこの魔獣たちが住まう森での生活環境を良くするために尽力してくれるように頼み込んだのである。タローも魔族の目的については俺と同じ意見を持っており魔族に協力してくれると約束してくれた。

だが問題は魔族がその提案に納得するかどうかの問題でありタロと二人で話し合うが、その心配はいらないということで俺は魔族を連れて再び魔王軍の城に戻ったのである。そしてタロスとタロウと魔族を連れて魔王軍に事情を説明をしようとした時にタロウの姿を見た魔王は俺を睨みつける。そして魔族を一目見ると魔族の方から魔王に声をかけてきた。

「久しいですなぁ~あなた様が生きていたことに私は安心しております。それにその容姿を見る限り魔王軍の将軍になったと伺っておりますが、私の部下がお世話になっておりありがとうございます。このたびの件については感謝しかありません」と魔王に向けて魔族は挨拶を行う。魔王の方も魔王軍の幹部に挨拶を行いそれからすぐに魔族と話し合いを始めたのである。

その光景を見ながら俺はこの二人の関係はどのようなものなのか気になりつつも俺はその様子を眺めていた。

俺は今この場にいない仲間達のことを思い出す。ライナスもあの女戦士も今頃はどこかに転生をして新たな人生を始めているのだろうかと考えている間に俺の中で少しだけ不安が生まれ始めていた。もしこの世界に勇者がいるとすれば俺の元いた世界に勇者がいた可能性だってあるはずだからである。そう考えるとどうしてもこの俺の中のタロウという存在にも警戒をしないといけないなと思いつつ、タロスがどう考えているのか聞こうと考えたがどうやら俺よりも先に口を開いた人物が現れたのである。それは魔王軍四天王の一人である悪魔族のバハムートという存在である。彼女は自分の力を抑えるために存在する道具を持っている存在に興味を持ち話しかけたのである。どうやら彼女もタロウのことをかなり気にっているようでその力を手に入れようと動き出していた。だがそれをタロウ自身が止めようとしたので俺もそれに協力するため俺が間に入る。すると魔族は俺がタロウに力を貸しているのが気に入らなかったらしく俺に食って掛かってくる。だがそれを聞いた魔王の配下である一人の魔族の女性が、魔族が魔族同士で争っている暇はないといい争いを止めるのだった。

それからは魔族同士の話になるので俺はその間の時間で魔獣たちの様子を見に行く。そこで見たのはこの村の周辺の地形が変化しており山のように大きな巨獣と魔獣たちがいた。その巨大な生物を俺とタロウは観察をすることにした。

この巨大な生物のことは以前魔族たちと一緒に森の探索を行っていたときにその存在を知っておりその存在が魔王軍を殲滅させる原因になった存在であったため俺たちもこの魔物の存在を知っている。だからこそ俺たちがここまで足を運んだ理由は一つしかなかった。それはこの魔石を吸収してさらなる成長を遂げようとしている巨大すぎる魔物を倒すために俺達三人だけでここにやってきたのである。タロウの話では今のタロスではおそらくその力を完全には発揮することができないということだったが、俺はそれでも構わないと思いその巨大すぎて倒すことができないのではないかと思われた魔物に向かって俺は戦いを挑んだのである。

俺が一人で戦おうとするとその行為をタロスに止められた。そしてタロスは自分の体を変化させていき竜の形態へと変化してから戦闘を開始する。その際に俺とタロウの体に何か違和感を覚えたのでタローと相談するとこのタロスに憑依している魔族の男がタロの中に存在していた人格の核となるものがこのタロスに寄生しているようだ。だからこの男がこのタロスと一体化してしまえば俺の体はその魔族の支配下におかれるということだ。そのことを聞いた俺は慌てて俺の中に入り込んでいる魔族に対してこの体にこれ以上侵食されるわけにはいかないと伝えようとするが俺が喋ろうとする前に魔族がその話を聞いていたらしく俺はこの魔族に精神を乗っ取られてしまい、タローを俺が殺そうとするという最悪の事態に陥りそうになったのである。そしてそんな最悪な状況を救ってくれたのは魔族の女性だった。彼女はこの魔族を殺すつもりはなく、俺とタロンの体が元に戻ってからタロに魔族が一体化しているタロウをどうにかするように頼むつもりだったらしい。

だが俺はそんなことを知らずに魔族の言葉に返事をした。そして魔族は魔族の王が魔族を支配することができるように魔族も魔族の王の支配下に置かれる可能性があると言い、魔族の王に会えと言い出した。

俺はそんなことを言われても信じれないと思っていたが俺の体に入っているタロウはその言葉を信じたのだ。俺もその魔族に従うことにして魔族に付いていきこの魔族が言う王の居城に向かった。その道中俺は俺自身の体を乗っ取りかけている魔族に対してどうしてタロがタロウが信用できると判断したのかを尋ねたのだ。その理由を聞くと俺の中にあるこの男の意識がタロウの中に存在する俺に話しかけてきたのだと魔族が答えてくれた。それからは俺の体を操り俺の思考を邪魔しない程度で俺にタロウのことを教えるのであった。その話を聞いた俺は俺自身の中に存在しているこの魔族という存在は一体どんな能力を持っているのかわからないと思ったのだ。この男の存在がこのタロウが信用に値すると判断した理由だとは思うのだが、この魔族はタロウをどうやって従えたのか? と疑問を持った。

それからはタウロは本当に魔族の王のところに向かいこの国の人間たちと敵対をしていることを知らせ、協力して欲しいと願い出たが断られてしまったのである。ただ俺達からすればここで引くことはできないし人間たちもこの森に攻め込もうとしているという話を聞いてこのまま引き下がることができなかったのだ。そして戦いが始まる直前、突然現れた魔族の王によって俺は気絶させられて気がつけば魔王軍の拠点にある牢獄に閉じ込められてしまった。

俺が起きた場所は薄暗い地下牢でありそこには誰もいなかったため、誰かいないか探すことにした。すると部屋の片隅から人の気配を感じた俺はそっちの方向を見てみたが、どうやら魔族の女のようであり俺はこの女が魔族の王だと知り警戒をする。

その女性は魔王軍の女騎士であり魔王に頼まれた用事を終えたところで俺はこの部屋に運び込まれて閉じ込められたと俺に伝えてくれた。

それから魔王軍の情報について色々と聞き出していこうとするが魔王軍が魔族の国を占領しようとしていてそのために人間の国々に侵攻しているという話を聞いた時俺はそのことについて何も言えない状況になってくる。俺が魔族側の立場でその情報を耳にした場合この女騎士が言った通りのことを考えるかもしれないからだった。しかし俺は魔王の目的がわからないから魔王について詳しく聞くことにする。その質問に対してはこの魔王軍の女騎士はあまりいい顔はしなかった。だがこの魔族の女も詳しいことまでは知らなかったのである。この女騎士は自分よりも立場的に上だと思われる存在の命令に従いこの拠点を守っていたのだという。そして俺はなぜこの魔王軍と呼ばれる連中は人間が支配しようとしている国を狙わないのだろうかと思うとそれを尋ねるとこの城にいる魔族の王の側近の一人であり俺のことをよく知っている人物に聞けと言われたのでとりあえず今はおとなしく待つことにしようと思い、まずはこの女が持っている俺に対する不信感を取り払うために俺は彼女に食事を振る舞う。そしてそのあと俺と彼女の二人だけの食事の時間にすることにした。

「あのさ、あんたもしかして俺のことをまだ疑っているんじゃないのか?」俺はそう尋ねてみる。俺がそう問いかけると目の前の女性は目をそらした。どうやら図星のようである。まあ普通はそう簡単には信じてもらえないだろう。何しろいきなり知らない男から魔王軍に所属している幹部になれと言われてそれを受け入れるなんて普通の人間ならば絶対にありえないだろう。だからと言って俺がこれからやろうとしていることを止める気はないのでなんとか俺への印象を変えておかないといけないなと思い、この場で彼女に打ち明けることにした。この世界に来たのも全ては魔王の願いを果たすためである。この世界に存在する人間たちに手を差し伸べて、共存共栄を目指すというのがこの魔王軍の王であるタロスの考えである。この考えを知った俺はこの世界の人間たちのためになるなら俺は喜んで手を貸そうと決めた。

だがそのことを聞いた彼女は、その言葉を聞いた時に涙を流していた。そして俺の体に入り込んできている魔族の男に対して何かを言おうとしたのだがすぐに止めた。

「そのことに関しては私は反対はいたしますがあなたの意思を尊重すると決めています」

この魔王の女はどうやら魔王に俺のことで忠誠を誓っているらしく俺に危害を加えることはできないと言っていた。俺はその魔王のことがどういう存在なのか気になりつつ魔王の話を聞きたいと思い、この魔王が信頼している存在だというこの女性からその話を聞く事にしたのである。

俺は魔族の王の側近からある話を聞かせてもらった。それはこの大陸の成り立ちの話しである。俺の世界の歴史の授業でも少し習ったような内容である。遥か昔にこの大地では人間たちがこの世界を統治していたというが突如、天界から降り立った天使族が神の怒りに触れ地上から姿を消した。そのため人間は衰退していき他の生き物に蹂躙されていったらしい。そんなある時、人間たちはとある遺跡を発見した。その建造物は古代人が作り出したもので中にはとんでもない武器が存在していてそれによって文明は一気に発展したという。しかしその文明も長く続かなかったというがその原因は魔物が現れ始めたからだと聞いている。それにより多くの犠牲者を出していしまったためこの世界の文明は次第に衰退していってしまったのでそれ以降人類の歴史は終焉を迎えるはずだったらしいがそこで登場したのが勇者タロスだったという。

そしてタロスは勇者としての力を得てこの世界を闇へと包もうとしていた魔物を倒し、この世界に安寧をもたらしてくれ、その功績により彼は神となったのだとこの魔王が言う。そして俺はこの話を信じるのであればタローは間違いなく勇者だということでこの話は事実なのだろう。だが、魔王はこの世界に訪れるであろう破滅の時にこの勇者と女神が共に現れて救ってくれるだろうと俺とタロに語った。

俺としては今すぐタローを探しに行くべきなのだが、今の魔王が言っていることには心当たりがあるからその時期がいつになるのかが重要に思えたのである。だがその前にタロウが魔王の言葉に従って俺の中に入ってきたのには驚いた。そしてその力を利用して俺の中に潜んでいる魔族を俺の中から追い出そうとしていたが俺はそれを必死に抑え込んでいたのである。そんな俺達を彼女は心配そうな目で見つめていたので、この俺の中に入り込んだ魔族に乗っ取られないようにするにはどうしたらよいのかを彼女に相談してみた。すると彼女は魔王が言っていた言葉を思い出すといい何かを思い出してくれたようだ。俺が魔王の言っていたことを思い出してみると俺の体にこの体に入り込んできたこの魔族を宿すことで魔族がこの体の主になれるという可能性があるということを教えてくれたのであった。俺はそれに賭けることにして俺が意識を失ってからどのくらいの時間が経過しているかを聞くとそれほど時間が経っていないということがわかったので急いで魔王の元に向かうことにし、俺の中に入った魔族に体を乗っ取られる前に決着をつけようとした。

だが俺は魔王と戦うことができないというのを知り俺の中に入り込んでいるこの魔族をどうにかしなければこの魔族の王であるタローを救うことはできないと思った。そしてその魔族に俺とこの体を乗っ取ることができるかどうかを確かめるために勝負を仕掛けたのである。その結果は俺の勝利で終わった。そして俺がこの魔族を追い出すと、俺に襲いかかってきた魔族が苦しみながら消えていくとそこに残っていたのはタロの肉体の一部と俺の人格の核だった。だがその核もやがて砂のように崩れて消滅してしまったのだった。その後タロは気絶してしまう。俺はこの場からタロウを抱えて逃げようとするが俺にこの体を預けるとこの魔王軍の拠点まで運ぶと言い出したのだ。なので俺はタロウのことを魔王の部下の女性騎士に託し、俺は魔族と一緒に魔王がいる居城へ向かうことになった。その道中にこのタロウがこの魔王軍を裏切った理由が魔王を暗殺するためだったと教えてもらう。

俺達と魔族の王は対峙する。俺はこの魔族の王が俺の敵になることを恐れたのである。しかし俺が恐れたのはこの魔王ではなく魔王の背後に存在するものに対して俺は恐怖を覚えたのだ。そしてこの魔王がなぜこの魔王軍と協力関係を結んでいるのかも気になっていたので、まずは魔王軍のことについて質問をしてみると、この魔族の男は俺の質問に対して親切丁寧に説明してくれたので助かったのである。というのもこの魔王軍の目的というのは人間が住んでいる国を全て支配することにあるらしくそのために邪魔になっているのは魔族の国の周辺にある小国たちでありそれらの国に人間たちから援助されている者たちがいたらしいが彼らはその人間たちに反旗を翻しているという情報を魔王から聞かされたのだという。

それから俺と魔族は互いに話し合いをすることになった。その内容は主に互いの国の問題についての情報共有をするというものであるが、その際にタウロが俺に何か言いかけたことがあるみたいだったが結局何も言わなかったし俺もそれを追求することはなかったのだ。そして俺はタロウに頼まれた仕事を済ませるために動き出すことになる。それは魔剣の所持者を探すことである。俺は魔族の王にその件についてはすでに調べがついていると言われていた。どうやら魔王軍の幹部の一人からその情報がもたらされていたというが、俺は一体どこにいるのかと尋ねると魔王はその情報を開示するつもりがないようなので俺は仕方なく自分で探しに出かけようと思い、魔王に挨拶してからこの城を出て行こうとした時に、なぜかこの城の人間達が突然俺を取り囲み俺を殺そうとしてきたのだ。

しかしそんな人間たちをタロットはこの城の魔導師が俺の事を裏切り者扱いしていた事と俺が人間側に寝返るのではないかと思っていると推測し俺を守るために人間の攻撃から庇ってくれたがそれでも人間の数は多かったのでこのままここにいても危ないと判断して逃げるようにこの城を出ようと俺が行動を起こす前に魔王軍が人間どもを一掃してくれると言ってくれた。しかし俺はそれを止め、俺はタロットを連れてその場から離れようと決意する。なぜならこの魔族の王は魔王の命令を遂行するのが第一であると考えるタイプだからだと判断したからだ。だがその前に俺はどうしても聞きたかったことを魔王に尋ねることにした。魔王軍の目的は本当に人類を滅ぼしてしまうことなのかということを。

するとこの魔王はそれに対して肯定したがその理由を聞いていくと、この魔族の国はそもそも人間の国を滅ぼすために作られてきたのだから仕方がないと答えた。この魔族の国は元は小さな村に過ぎなかった。だがその土地は豊かな資源がありその土地を人間から守る為に作ったのだと魔王は答えるとなぜ魔王軍は人類を滅ぼしたいかと俺が再び問いかけると、この魔族の男からその答えを聞き出すことはできなかったが俺の考えを伝えた結果魔族の王は理解してくれたらしく俺は何とか人間たちとの和解の道を模索していきたいと思っていたがこの世界ではまだ人間たちが他の生き物を支配して奴隷としている。それを止める為にもこの魔族たちの協力が必要になると考えていた。

「私もあなた様と共に行きましょう。その考えに賛同します。そして私はその考えの通りに動けばいいということですね」

「そうだ。そして魔王、お前もこの世界の住人なんだからその考えを受け入れてくれるなら一緒に協力してくれないか?」

「はい、私は魔王ですが私は私のやりたいようにさせていただきます」

そうして俺はタロットを仲間に加えて再びタローの捜索を始め、魔の森の探索を開始するのであった。

俺は魔族の女に案内され魔獣の動きを察知したという場所に来ていた。その場所では大勢の魔族が集まっていた。俺はそこで魔王軍の精鋭部隊の人たちと顔を合わせていると、その魔王軍の中でもっとも位の高い人物が近づいてきて俺を自分の屋敷へ連れて行くように指示を出したので、俺はその言葉に従って移動を開始しようとした時に、一人の男が声を上げて魔人族たちに呼びかけている。どうやらその男は魔族の国からやってきた使者のような男だとこの男の正体が分かった時に、魔王からこの男を魔王の元へ連れて行ってくれると連絡が入ったので俺はその男を連れ魔王の元に向かう。魔王の元に向かう途中俺はこの魔王軍の現状について聞いてみることにした。どうやら魔王は魔王軍の人間たちをこの魔族の土地から追い払おうと考えているようでこの魔族たちが人間と戦争を起こして被害を出すことがないようにするために俺のところに魔王軍を託すことにしたのだと魔王の部下は言う。魔王はそれとは別にこの土地の開拓をこの魔王軍に一任したいという依頼をしていたらしいのだが、その仕事を終えた後は魔王にその報告をする義務があったようだ。そこで俺は魔王と話ができるところに行くことになり、そして俺はそこでようやくタローの姿を発見した。

俺はそのタローが乗っている魔車に向かって走り出そうとした時、目の前に魔族が降りてきてその魔族が攻撃を仕掛けてくるので俺がそれを迎撃しようとするとその瞬間タロットの魔剣が飛び出し、タロットは俺の前に立ってその魔族の攻撃を防いだのである。だが俺がこのタロに話しかけてもこの体の持ち主は反応してくれず、しかも魔族の攻撃のダメージをくらったタローがその場で倒れてしまったので俺は慌ててそのタローを抱え上げてこのタロの体から出るのである。

そして俺は魔族たちとの戦闘を始めるがタロが俺のために道を開いてくれていたのか、すぐに魔王が俺の前に現れる。どうやら魔王は魔族の中でも上位の存在らしく、その魔王が俺とタロウに襲いかかってきた魔族を一瞬のうちに消し去ってしまった。その力を見てこの魔王の力は凄まじく強大だというのを感じさせられたが、魔王はすぐにタロウの治療を行い始めたので、その魔王の行動に感謝しつつ俺達はこの魔王が用意した隠れ家でタロウの体が完全に回復するまで休息をとるのであった。

そしてこの魔王と俺はこれからの事を話し合い、そして俺はこの魔族を魔王に任せることを決めるとタロウに意識を戻してもらい、俺は魔剣を回収するのであった。そしてこの魔剣と勇者のタロウと融合することで、この世界に平和をもたらすことができ、この世界を闇で包み込もうとする魔物を倒す事ができるのである。そしてタロを元の世界に戻すためには俺とタロンが融合すればよいが融合したままのタロスの状態はおそらくもう戻ることはできないだろうと考えた俺はタロの体を元に戻そうとタロスの体に戻ろうとすると、タロットがこのタロを自分が鍛え上げようと言い出したので俺もそれを了承し二人でタロウの指導をすることに決めてこの日を終えるのだった。そしてその次の日にタロットの魔剣の能力を使って俺達の体が元の人間に戻り、そしてタロにこのタロの体を返してもらうことに成功する。それから俺達はこの魔王に別れを告げるのだった。だが魔王も俺に頼みたいことがあるというのでその頼みごとを引き受けることにする。それはこの魔族の領地に人間が入ってこないような工夫を施すことであり、この魔王軍の幹部の一人である魔導師の女性がこの場所には魔族の領域を荒らす人間は入れられない結界が張られていると言っていた。しかし俺の魔力ならそんなものがなくても簡単に壊せるのである。俺はこの魔王と別れてタロットと一緒に魔族の街に戻ってこのタロウを連れて帰ることにしようと思う。

「魔王様。魔王様はこのタロウのことを気に入っていたようだったので最後にお願いがあります。どうか私をこの魔王軍の幹部としてお側に置いてください。私がこの魔族の国を守って見せます。魔王様は安心してご自身の仕事をなさって下さい。それとタロウのことなんですが。タロの体は私が預からせてください。彼はこの国の人間なのでこの魔族の国の民ではありません。なのでこの国で彼の肉体が目覚める事はないでしょう。もしこの国に人間が迷い込んだ場合は私と魔王軍が排除しますので、ご心配なさらず」

「わかりました。ではあなたがこの魔王軍から抜けるというわけではないのですね。その件についてはあなたが決めたのであれば文句を言いません。タローはあなたにこの国を託します。あなたのことを信頼しているからこそこの魔王はタローの肉体を預けることができます。それにその魔族が人間に化けられる能力も持っていますからその男から色々と情報を引き出すことも可能です。そしてタロウに魔族の国での生き方を教えることもその魔族の女にさせるつもりでいます。なので私はタロウが無事にこの国に帰ることを祈っております。タロウはタロウなりに頑張ってほしいですからね。それに関しては魔王軍の総隊長にも言っておきます。それぐらいはしても構わないということですから。あと魔族の中には魔王軍と敵対しようと考えている人間がいるらしいからその対策を考えておいた方がいいと思います。その男に接触できると一番良いのですがその方法もありません。魔王軍にその男の居場所を知っていそうな人物がいればいいのですか。しかし魔族たちは基本的に魔王様の命令に逆らう者は一人もおりませんので」

「そうか。わかった。その魔族は俺の配下に引き入れるようにしよう」

「はい。それでいいとおもいます」

こうして俺が魔族の街に帰ってきてみると、この魔王軍の街は思った以上に活気があり魔王軍の中にも人間を受け入れようとしている者達もいるらしくてこの魔王軍は思っていたより悪い組織ではないのだと思わされた。この魔族の街に来た時に最初に会ったこの魔王の側近の女性とは今でも交流があるしその女性はタロットが俺のところに戻ってくると聞いた時に自分に会いに来てほしいと言ってきたので俺はその女性に会いに行ったのであった。その女性の名前は魔族の名前ではなかったので覚えることはできなかったが、俺に対して優しくしてくれたことはよく記憶に残っており俺は彼女のことが忘れられなくなっていた。俺は彼女が魔王の側室だと知りながらもその彼女に会うために頻繁に会いに行ってしまい彼女に自分の想いを伝えることになってしまうのである。彼女はその事を嫌がることなくそれを受け入れると俺は彼女と結ばれることができたので俺は本当に良かったと思っているのだ。そんなこんなで魔王軍の中で生活をしているのだがこの魔族の街の人間も俺と魔族の女性の仲を知っているのか応援をしてくれるのである。

そしてこの魔王の魔剣をタロンに戻してから数日が経過しタロットに新しい任務が与えられて、俺はこのタローと共にタロンの任務が完了するまで魔王城で過ごすことになり、このタロは今や俺の仲間になったタロットの弟分になっているようでタローと呼ばれているらしい。そのタロットは最近忙しい日々を過ごしていて俺や魔王はなかなか話す機会がなかったがそれでもタロットがこの魔王領で頼られることは確かなようで、俺はこのタロが成長したらタロットを超えるほどに強くなりそうだと思うと俺は楽しみにしていた。そして魔王軍の中で生活しているとこのタロと俺は同じ部屋に寝泊まりすることが多くなっていき、俺とタロは同じ部屋で過ごしているうちにお互いの距離感はどんどん近づいていきタロから告白を受けた俺はそれを快く受け入れたのであった。

俺がこの魔王軍の副司令官であるタローと付き合い始めていくにつれて魔王がタロウの体でいる時間が増えていき、最近では俺達と一緒に行動する事が多くなり始めていた。そんなある日にこの魔族たちが人間たちとの戦争を始めたという情報を魔王は入手してきたのである。どうやら魔族の国でも人間と戦える者たちを集めて人間たちに戦いを挑んだらしいが返り討ちにあってしまい大勢の仲間を失い魔獣の数が減ったことによって魔族たちの動きが悪くなりこの魔獣の領域と呼ばれる場所で暮らしていた魔族たちが他の場所に追いやられるようになり、この魔獣の魔の森に暮らす者が多くなったようだ。

そしてこの魔獣が溢れ返っているこの森の中に一人の男が姿を現して魔王と対面した。男は魔王が予想以上に強いのだと実感すると魔王の目の前で倒れてしまい、どうやら魔王の一撃によって戦闘不能状態になってしまったようである。魔王はその倒れていた男を魔王城に連れて行くように命じたので、俺はこの男に回復魔法をかけて傷を回復させることにした。そしてその男に意識を取り戻してもらった俺は事情を尋ねる。

この魔獣が生息している森には魔獣たちを手懐けるための施設が存在するようだ。だがその施設はもう使えなくなってしまったようだ。その原因は先ほどの男とその仲間の魔族の男たちが魔王軍を倒そうと計画を立てていたことが発覚してしまったためだ。そしてその計画にはあの魔剣を持った人間を魔剣の所有者の協力者であるタロウが魔族たちを味方につけようとしていたが、それがうまくいかない事を知ったので魔族たちはこの人間を捕らえ、そしてその協力者のタロウを殺そうとしたのである。そしてそのタロウが生きていることを知ったこの男はタロウを殺すためだけに魔王に勝負を挑んだということだった。

この魔族を魔王は許さなかったらしくその男を殺してこの魔族の国から追放してしまったのである。そしてその男は魔王に向かって自分は勇者だったと言うと突然消えてしまったのであった。俺はその消えた現象に驚いていた。

どうやらこのタロウは勇者だったタロウでそのタロウが魔王の魔剣を手に入れてしまった事で、タロットはタロウに殺されてしまったのではないかと魔王に言われてその可能性が否定できない状況になってしまっており、このタロウの体を元の世界に戻す前に魔王はタロウがこの世界に来てしまう原因を作った人物について何か手がかりがないのかをこのタロウから聞くことにするのである。そしてこの魔族の国で起きた事をタロットが俺に説明してくれた時にある出来事をタロットは思い出した。その話はこのタロウが魔族の国の魔獣を操ることができる研究をしていた施設の管理者をその研究者から奪おうとした時に起きた悲劇の話であり、その管理者は何者かに殺されたとこのタロウは言っている。この話を俺達にした後で、その管理者の一人がこの魔王城の地下に眠る魔導師だという事がわかり、俺達はタロットと一緒に魔王の魔剣を回収に向かったのである。そしてこのタロウの体に魔剣を戻すことでタロンが復活することができたのだった。そして俺は魔王城から外に出ようとするが、その時にタロウが魔王軍に入らないかという誘いを魔王が持ちかけてくるが、俺はその勧誘を断ったのであった。俺はこの世界の住人ではないのでこの世界の住人ではない者が魔王軍の関係者になることはありえないからだ。そのせいもあってか魔王はこのタロウを引き取ることになった。だがこの魔王軍にも人間を受け入れてくれる人達が多いようなのでこれからも魔王軍は悪い組織にはならないような気がしている。だが人間に危害を加える者は容赦はしないとタロットは言っていた。そしてこのタロウも人間の街に帰るつもりは無いようでこのままこの魔族の国に留まることになるようだ。その方がこの魔族の国で暮らす魔族にとって良いだろうと思ったからである。

それからこの魔王領は以前のような活気のある魔族の国に戻るようになり、魔族たちは以前よりも幸せそうな表情を浮かべており笑顔が増えたように感じている。そして魔王と俺はこの魔王領の平和を願いながら日々の生活を送り始めたのである。そしてある日のこと、俺のところにこの魔族の国の住民の一人の女性が俺に面会を申し込んできた。彼女はこの魔族軍の兵士で、この魔王軍に所属している魔族たちの健康を管理する役目を果たしているそうだ。そんな彼女が一体俺に何の用があるのだろうかと思ってその女性に俺が声をかけると俺はその女性に話しかけられた。

「あなたは人間ですか?それともこの魔族の国に暮らしている魔族さんなんですか?」

その女性は俺の外見から判断すると、どう見ても人間に見えるらしくて彼女はそんな疑問を持ち俺に質問をした。俺はこの魔族の街に来てから人間の姿をしていない時の俺は仮面をつけていてその顔を隠していたので俺はその仮面を外して素顔を彼女に晒すことにして、そして彼女には自分がこの魔族の国にいる魔族だということを告げると俺の話を聞いた女性は少しだけ安心していた。

その魔族の女性の名前はラキと言い俺が魔族だということは知っていたようだったがどうして俺に会いに来たのかを聞くと、実は俺は最近になってから魔族の中でも魔族と人間が共存できる世の中を作りたいと考えるようになり、それを実行するためには魔族のことを一番知っているであろうこの魔族の国に住む住民に聞きに来たのだという。それで、この魔族の街の現状を見て人間を受け入れている住人と人間を嫌煙するような雰囲気を出している者たちがいるとわかったらしい。だから俺に直接会いに来たとのことである。

俺もその件については協力をしたいと思い俺はこの魔族の女性と色々と相談に乗ってあげることにしたのである。この魔族の女性の住んでいる場所はこの魔王城から近いのでいつでも俺の家に訪れることができ、それで俺の家を訪れるために魔族の女の兵士の人が毎日俺の家を訪ねてきていたのである。それで俺の家の前まで来るのだが、そこで毎回俺はこの女の人に見つめられて困惑していた。その理由はどうやら俺の顔に一目惚れをしてしまってどうしても俺と結婚したいと思っているらしい。だけど俺はまだこの世界の事を知らなさすぎるのでもう少し勉強してからでいいかと言って何とかこの女性の訪問を避けていた。この女性にこの世界の歴史や魔法についても学ぼうと思っていたのだが中々その機会に恵まれない。しかし俺はあることがきっかけでこの世界の勉強も捗るきっかけになりそうな出来事があった。

俺とルチアがいつものように買い物に出かける時に俺がルチアの手を握った瞬間だ。俺は俺の指に指輪がついていることにその時初めて気づいたのである。その事実を俺に伝えようとした時だ。その女性は現れたのである。その女性は俺の目の前に現れると俺を抱きしめると涙を流していた。その女性は俺に結婚してくれと頼み込み始めると俺とこの魔族の女性とのやり取りを見たルチアが俺のことを思い切り殴り飛ばしてきてしまい俺が吹っ飛んでしまったのだ。しかも俺が受け身を取る暇も無く地面に衝突したことによって俺が怪我を負いその傷を治療してくれる人もおらずに、俺はその場で気絶をしてしまい意識を失った。その倒れたままの状態だと危険な状態になるということで魔王の城に運び込まれた俺はすぐにこの女性のことを思い出して俺のそばでずっと看病をしてくれたという。その女性がこの俺と魔王と付き合いだしたというこの魔族の国の女性の上司である。そして魔王はその女性から詳しい話を詳しく聞く。そしてこの魔王領に魔族の男性と人間が夫婦になったことがあるのかを尋ねられる。その問いに対しての魔王の返答はそのようなことは過去に一度だけ起きたことがあるが、それも何百年も昔の話になるらしく魔王の記憶の中でしか存在しない過去の話であるということだった。そしてその過去に起こった男女の結婚に関しての詳細を知りたいと俺は思っていたが、魔王が知る限りの情報では、魔王がまだこの魔族が暮らす世界を創造したばかりに時の出来事であり詳細まで把握することができないと言われたがそれでも構わないと伝える。

俺はこの女性が本当に俺と結婚したいという気持ちを持っているということに嬉しくなってこの女性は真剣に向き合わないといけないと感じていた。なのでとりあえず彼女の想いを受け入れることを決めてしまう。それにこの世界は一夫多妻制でもあることから問題なく結婚はできそうであった。だが一つ問題があるとしたら、その前にまずは魔族と人間の恋愛事情やこの世界での結婚事情についてもっと深く調べてからでないと結婚の申し込みを受けるわけにはいかない。もし仮に俺の予想通りだとすると魔族の女性が人間と婚姻関係を築こうとしているだけで魔王軍の上層部に目を付けられてしまう恐れがあるからである。俺の予想が正しいかどうかはこの女性の告白を受けて確認すれば分かることだと考えた。そして俺がそのことを確認する為に女性に声をかけると彼女は俺の返事がどのようなものだったとしても覚悟はできていると俺に告げてきた。

それからこの魔族の女性と結婚すると決めてしまった俺は、その女性からその魔族の女性が俺のプロポーズを受けた時の状況などを聞いていくと、やはりその女性が俺に恋をしているという事実に間違いはないようだった。そして魔族の男性が魔族の国で暮らす女性との結婚を決めると役所に行って手続きをするのが基本になっているという話を聞き出した俺は、この女性の口からその情報を引き出すことに成功して役所に行くとそこにはこの魔族の国の住民として登録されていなければこの世界には住めないと言われてしまったのである。つまり俺がその女性と結婚しても、その女性が魔王軍に入っていないと、この魔族の国で生活することは不可能なのだと聞かされた。そして俺は魔族の国が人間と共存するための制度や仕組みをしっかりと理解する必要があると思った。この魔族の国に住んでいる住民たちは魔族の国から出ることはないので、魔王軍とのトラブルが起きるようなこともなかった。そして魔王軍はこの国の治安維持に一役かっているようで、魔族の中にはこの魔族の国から出て行こうとする者はいなかったのである。そして魔族の国の住人である魔族の女性は俺にそのことを説明してくれた。だが、魔王軍のトップを務めている魔王と、この魔族の国で暮らす女性とは結婚してはいけないのかを俺は気になってしまい、魔王に尋ねる。そのことについてはどうなのだろうかと思ったからだ。そしてその質問に対しての魔王からの回答は魔王がこの国の最高権力者であると俺は考えていた。なので俺と魔王との関係が公になると魔族の国で魔王の言うことが効かない勢力が出てくるかもしれないと魔王は言いその可能性はあるのかどうか俺に聞くと魔王はこの国のルールは魔族の国の法に則っているためこの国のトップは私でこの魔王領の平和を護るために全力でその役割を務めるのが義務だと言った。だから魔族の女性と結婚するのならば魔王の許可が必要だが俺は魔族ではないために許可を出すことができないそうだ。

そして俺が今の状況で結婚を申し込むべき相手ではないとも言っていたので、魔王が俺の味方になってくれるということはありえなかった。そのため俺は魔王に俺にできることで手伝えば何か手助けをしてくれるのかと魔王に聞いてみると、魔王はこの魔王城の地下に眠っている魔王の魔剣の力を封印することができる道具を探せば俺でもこの世界にあるすべての宝を見つけることができるだろうと魔王が答えたのだ。そして俺はその言葉に励まされると早速行動を開始した。

そしてその翌日、俺は魔族の国の近くにある洞窟に向かって歩いていた。だが、その洞窟の周辺にはなぜか人間が住んでいた跡があり、どう考えても人間が暮らしている場所だということがわかる。その洞窟に向かう途中に俺の体に突然電撃のようなものが走り、俺の体は動けなくなってしまい倒れ込んでしまうとそのまま意識を失ってしまった。

それから俺は誰かに体を揺らされていることに気が付き意識を取り戻した。俺を揺すったのはあの俺に求婚をした女性の部下の魔族の女性だった。その女性になぜここにやってきたのかを俺が聞くと、この近くにこの国で管理していないダンジョンが発生したのでこの国に迷い込んだと思われる魔物の集団の討伐の依頼をこの国の上層部から出されたそうだ。

そして俺にその依頼を受けてくれないかと頼んできたのである。その魔族の女性は自分が一緒に行けば足を引っ張ることにはならないと言ってくれていたので俺はこの魔族の女性と一緒に行くことを決めたのである。この魔族の女性にどうしてこの世界に人間が住み着いているのかというのを俺は尋ねてみると、どうやらその人間というのは、俺たちと同じ異世界から来た人たちらしい。しかしこの世界にも異世界人と呼ばれる存在がおりその人たちは全員人間の姿をしており普通の人と変わらないそうだ。そしてその人間は魔族と友好関係を築き上げているというのだ。

俺はそんな人間たちが存在しているなんて驚きだと思っていた。俺はそんな話を聞かされていると俺に求婚してきた女性が現れたのである。彼女は俺の姿を見ると一目散に俺のところへ走ってこようとしていたのである。だけどそれはできなかった。なぜなら彼女の前に現れたのは、この前現れた男ではなくて女性のようだったのだ。

女性は、この魔王領に住む魔族の女性で名前をイネスといい魔王直属の部下であるという。この人は以前現れた男が持っていた聖水によって召喚されこの魔族の国にやってきたらしい。その男はこの魔王城で保護されていたというのだ。そしてイネスはその男性にとても惚れてしまいどうにかして結婚の約束を取り付けようと魔王様に交渉していたのだという。そしてその結果結婚の許可を得ることができたのだが結婚をするまでは仕事はしなくていいと言われていたらしい。それで今は俺のことをずっと待っていたのだと彼女は話した。どうやら俺をずっと待っている間に他の男たちは魔王軍の幹部になることができていたらしいのだが俺はこの国の正式な住民になるための手続きを行うためにこの国の役所にずっと行っていたので中々戻って来られなかったとのことだった。

その話を聞いた俺はこの魔族の国で暮らすためにもこの魔王領のルールに従わないといけないということがよくわかり俺もその規則に従った。そして俺はこの魔族の国で生活するのに最低限必要な知識を身につけるため魔族の女性二人に連れられて役所に行った。そこでは魔族の女性が魔族の国から一時的に出国をする場合に手続きを行わなければいけないということを知りその手続きを行ってもらうとこの魔族の国から旅をするという目的を果たして外に出ようとした時だった。俺は、魔王がこの魔族の国を建国してから今まで魔王軍に所属していない魔族の女性がいたということを知る。俺は魔王軍の組織に属している魔族の女性から魔王軍に入らないか勧誘を受けていた。

そしてその女性の誘いを俺は受けるかどうか迷っていた。するとその魔族の女性は魔王から魔王領に存在するすべての土地が俺の物になるという契約書を渡されてそれを受け取る。それからその女性に魔王と会わせてほしいと言われたので魔王にその女性と引き合わせることにした。そこでその女性は自分の正体を明らかにするとその女性は俺のことを魔王がこの国を作り始めて間もない頃に、ある事情があって魔王が助けた少女の子孫だということが明かされたのであった。

そして魔王は、彼女が魔族であることに驚いた。だが魔族といえども彼女は俺のことを好いてくれると知ってからは魔王はその女性のことを受け入れてくれて彼女の結婚を認めたのである。しかしここで一つだけ魔王はこの女性が魔族であることを理由にこの世界の常識を教えてもらっていないのではないかと考えて、そのことについて詳しく教えるようにこの女性にお願いをする。そしてこの女性に俺はその魔族の女性と結婚するために必要だったことを丁寧に教えたのである。そして、俺は、俺の話を最後まで聞き終えるのを確認するとこの魔族の女性がこの世界で暮らしていくために必要なことを教えると言い出したのである。俺も彼女に教えてもらったことは役に立つと思ったのでそのことについては彼女の提案を受け入れそのあとで役所に向かう。

それから俺はこの国を出ようとしたが、その前にこの魔王の住むこの国の魔族の女性たちを纏め上げていたリーダー的な存在の女性から俺に対してこの魔族の国を統治するための指導をするように頼まれた。そして俺はその女性の指示に従って魔族の国の統治を行うことにした。まず最初にこの国の統治者を任命する儀式が行われるらしく俺がその式典に呼ばれることになると俺はこの国の魔王の側近だという女性が案内してくれてその式の会場まで向かったのである。その女性の名前はレミアという名前で魔王軍の最高責任者でもある魔王の補佐を務めているらしい。

そして俺がその式典で挨拶をすることになった。まず俺が初めにこの国の住民を代表して魔王の治める魔族の国の新たな統治者として就任した人物に一言声をかけたのである。俺がこの国に訪れた時にこの国で起きた問題を解決しようと努力した姿を見て、俺はあなたこそがこの国の新国王にふさわしいと考えたと俺は告げると彼女はその言葉を嬉しく思ったようで俺はその女性と握手を交わすことになったのであった。そして次に俺と魔王は、お互いに顔を合わせることになりお互いの自己紹介を行った。俺は自分なりの方法で魔王を褒めることで彼女を懐柔しようと考えた。

魔王はこの世界には様々な種族が存在していて、その中でもこの魔王の住んでいる魔族の国には魔族の女性しかいないと俺はこの魔王の目の前で言うと、その発言を聞いて魔王は笑みを浮かべながら俺に話しかけてくる。

その魔族の国にいる魔族の女以外は全員がこの魔王領の人間でありその者たちは人間の国から魔族の国に移り住んできた者ばかりだと言う。その証拠を見せろと言われてしまうがそれはできない。そして俺はこの魔王から渡された魔剣は俺が持つに相応しいと思うのである。

俺のその考えを聞いた魔王は俺が手にしている魔剣に興味を示したようでその魔剣を見せてもらえると嬉しいと俺に言ってきたのである。だから俺は、その言葉に従いその鞘から魔剣を抜いて、その魔剣を彼女に手渡すと彼女はその刀身を眺めてそれからすぐにその魔剣を返してくれたので俺はそれを鞘に戻す。すると、彼女は魔族の国で暮らすための条件を話してくれた。その内容は魔王軍の関係者になるということである。

その話を聞き終えた後で彼女は、俺と魔王が会話をしてこれから魔王の治める国のルールに従うことを決めたのならば俺をこの国の人間の一人として正式に認めようと宣言したのである。そしてその話が終わる頃には俺はこの魔族の国の魔王となり俺はこの魔族の国の王様となったのだった。

魔王が俺にこの国の王に即位してほしいと言ってきていたので俺はその言葉に甘えることにする。俺も俺自身この国のためにできることなら協力するつもりだ。そのためにこの魔王領の治安をよくすることやこの魔族の国を発展させるための方法などについても考えていきたいと思っている。俺の今の目標は魔王と仲良くなっていくことが重要だと理解した。そしてこの魔王の城で暮らすのに必要なものを買いに俺達は街に繰り出したのである。この国のお金に関しては魔剣をもらった際に魔王がお礼に俺が生活できる程度のお金を俺に渡してきてくれたのでそのおかげでどうにか生活をすることができそうだ。

(それにしてもあの時、あの男が持っていた魔剣に俺は見覚えがあったな。あれはどこからどう見ても聖水の入っている容器の形をしているんだよ。まさかあいつも転生してこの世界に来ているのか?うーん、そうなればまた俺を殺しに来るかもしれない。だけど俺はこの世界で殺されたくないし殺される気もない。どうにかあの男の持っている武器の正体を突き止めなければ、いつ俺の命を狙うかわからない)

そんな事を考えていると魔族の女性が俺に近づいてきて服屋に行くぞと言われた。どうやら今日買わなければいけないものがあるそうだ。そんな魔族の女性はこの街で一番大きい服を着替えができる洋服店に行きたいと話す。俺としては別に構わないと思い了承をした。そして魔族の女性は店員さんと話を済ませると早速着替えをしたいと言ってきた。

その女性はどうすればいいんだというような感じの顔をしながらこちらを見てくるので俺は女性を自分の部屋に連れて行き、そこで着替えてもらうことにした。そしてしばらくして女性が俺に試着ができたと言って来たのである。そして俺はその女性が来ている洋服の姿を見て驚いた。それはまるでこの魔族の国に古くから伝わる伝統的な服装をしていたのだ。その服装を見た時俺は懐かしい気持ちになった。なぜならその魔族の女性は着物を身に纏っていたからである。

それから俺は女性に似合っていると伝えると女性は照れ笑いしながら感謝の言葉を伝えてきたのである。そしてその魔族の女性はとても満足そうにしており、その表情を見て俺もこの人が幸せになってほしいと改めて思った。俺は彼女にどんな魔族か尋ねるとそれを聞いた女性は自分がどのような種族なのかを簡単に説明し始める。彼女は魔族の中でも最も高貴な身分に当たる魔族だということを話す。それから彼女は魔王の側近の役目を魔王から受けており、彼女は今の地位につくことができた経緯について話し始めた。彼女は元々は普通の魔族でしかも魔王の住む城に出入りするような人ではなかったのだという。

だが彼女はある時突然この国に現れて当時の魔王を打ち負かしその後に彼女はこの魔王の領地に住み着き始めたらしい。そして彼女はその力を使いこの国の魔族の男たちをまとめ上げてその国を統治したのだという。その国は今ではこの魔王領の人間たちがこの国に住んでいるのだがもともとはこの魔族の女性とその配下の魔族たちが住んでいた土地なのだという。つまりこの女性は昔は魔王領に住んでいたということなのだ。俺がそのことを彼女に聞くと魔族の女はそのように答えるのであった。

俺はその女性が魔族の中でも相当な地位を持つ魔族であることを知らされる。ただこの魔族の国は元々魔族の女性の住んでいた場所でその女性たちは、自分たちでその土地を統治していて他の種族たちはこの魔族の領土に入ることができなかったために今まで誰も立ち入ることのできない場所だったということだ。それがどういう訳かその女性だけはこの場所に入ってこれたらしくその理由は不明だと言っていた。俺としてもそのことは疑問に思う部分はあるが今はこの女性が魔族の国を支配する立場にいるため問題ないと俺は思っている。そして俺は女性に名前を聞くと女性は自分はミリアという名前で魔族の国からやって来たと自ら名乗った。それからしばらく俺はその魔族の女性と一緒に街中を歩き回ったのである。

その後俺は宿屋に戻るとその宿で一休みするのであった。その女性は先ほどまでとは態度を変えてきてかなりフレンドリーに接してくるようになった。彼女は俺に魔族の国の文化についての質問をしてくるようになりそれが終わると次は彼女の趣味の話題になり彼女は裁縫が得意だと打ち明けてくれた。なので、俺のこの魔剣が欲しいとお願いしてきたのである。しかし残念ながらその剣を渡すことができないことを女性に伝える。それでも魔剣の刀身の部分だけでも見せてほしいと言われてしまったので仕方なく俺は魔剣を手渡すとその魔剣は彼女の手によって加工されたのだった。

「どうかしら私の手作りよ」

彼女は嬉しそうに微笑むとこの俺が作った魔剣の刃に文字を書き込む。すると俺は何か体に異変が起きたような感覚に陥り、この女性から渡された剣はただならぬ物のような気がしたのですぐに返そうとしたのである。しかし俺はこの女性の笑顔を見るだけで断ることはできず、結局その女性の要求を受け入れることに決めてしまい俺が魔族として生まれ変わった時にこの魔剣の力を使ってもらうと言い出してその魔族の女性は俺を魔王として正式にこの国の王に就任させたのである。

そして俺は魔剣を受け取ると、俺の背中から翼が出現し始めて俺は空を飛べるようになると俺の体はどんどん人間から遠ざかっていったのであった。俺はその姿が元の姿に戻っていくとすぐにその魔剣を鞘の中にしまうとこの魔剣を絶対に使うことはないと思い封印する。その剣は見た目も美しい剣だったので女性にあげようと思っていた。しかしその女性はこの剣を使うことはないと言ったのである。俺はどうしてそのようなことを言うのか尋ねてみることにするとこの剣を使うことができる存在は限られるのだとその女性はすぐに答えてくれた。俺には何が言いたいのかわからなかったがとりあえずこの剣のことを誰にも知られないように隠しておかなければならないということは理解できた。

そして俺はその魔剣に名前をつけることにした。その魔剣に名前は『聖剣』という名前に決めると俺は魔族の女にお礼を伝えると魔族の女性からは俺の魔王としての即位を祝ってお祝いをすると俺に伝えたのである。それからその女性は魔王である俺と仲良くしたいと言うと、これから魔王の城の中で俺のために生活することを女性自身が決めた。

そして魔王の俺が魔族の国の統治をする上で俺の世話役としてその女性が任命されたのである。この女性が俺の側近として仕えることになるようだ。その女性はレミアと名乗ってくれた。その女性がこれからこの魔王領の魔王として就任したばかりの俺を支えてくれることになるのであった。俺はそんなことを考えながらこの魔族の国に住む魔族の人々の暮らし方を観察することにする。

するとそこにあの男がやってきたのである。俺の予想通りあの男はこの魔族の国に紛れ込んでおりこの魔王領の情報を収集するために動き始めていた。俺もその事にいち早く気付くことができていたが、魔王の側近として俺に仕えることになった女性が俺のことを守ろうとしていた。そのため俺はその事には触れずに様子を見ることにしている。そしてあの男が魔王城にやってきた理由はこの俺が魔王に即位したということを嗅ぎつけて魔王に成り代わるつもりで魔王に謁見を求めに来たのである。

俺は、あの男が本当に俺の目の前に現れるまでは絶対に俺の存在があの魔族にはばれることのないように慎重に行動する。そのようにして俺はこの魔族の国を治めていくことを決める。俺が魔王になる前の話 俺はある日魔王になったのだがその日を境にある出来事が起きるようになる。それはこの魔王城の城下にある村の住民と俺との関係が深くなってしまったのである。その村にはかつてこの魔王領内に住んでいなかった者達が集まっていた。その者たちがこの魔王領に住み始めてからというもの魔王領の治安が悪化していく原因を作った人物がいたのである。

そいつは、その村の長を務める女性で、この魔王領の現状を良くしたいという想いでこの魔族の国に移り住んだ人たちを引き入れてその人達をまとめ上げているのだという。この女性の名は、リリスと言い年齢は二十六歳だそうだ。そんなリリスと俺はこの魔王領のことについて話し合ったのである。その話の席に俺の仲間たちとこの魔王領で暮らすことを決めた魔族の女たちが同席していた。

「この世界もだんだん平和になってきましたね。これもすべてあなたのおかげでございます。あなた様のおかげで私どもも生活できる環境を手に入れることができたので感謝しています」

「そんなに俺に気を遣わなくても大丈夫だ。俺はこの世界の人みんなを救おうとしているだけなんだよ。ただ俺一人の力でこの世界を救いたいと思っているだけだ。この魔王の領地に住んでいる人々を助けたいという気持ちを持っている人が一人でもいる限り俺の気持ちは何も変わらないんだ。まあでもこの魔族たちが少しでも快適な生活を送ることができるようにこの国の治安を改善したり、俺の作った農作物や魔道具の販売などを行いこの魔王領の人たちにも利益を与えていきたいとは思っているんだ。それが今のこの魔王領での一番の問題であり最優先で改善しなければならない課題だから」

「はい、そうですね。あなたの作る作物の味は本当に素晴らしいです。その美味しい野菜のおかげて私たちはこの魔王領の食べ物事情を改善することもできているのですよ。この前この国に遊びに来ていた魔族の子供も、あなたからもらった野菜を食べたらすごく喜んでいたんですよ。その子供がこの魔王領の子供たちにそのことを伝えてくれていたおかげで今では子供達に大人気なんです。それもこれも全部あなたのおかげだと思います。この子たちはまだ幼いながらもこの国の為に貢献しようとしている立派な子どもたちばかりです。私はその子たちを守り育てていく覚悟があります。ですのでこの子たちにはもっと多くのことを経験してほしいと思っています。そうすることできっと良い大人になれると信じています。なのでぜひ、私の力をお使い下さいませ」

リリスはそう言うと自分の胸を手で押さえて俺に向かって深々と頭を下げたのである。俺はその行動に少し驚いたが彼女の真剣な眼差しを見ると彼女の考えを理解する。俺は彼女が言っていることが正しいのかどうか判断ができない。俺がもしここで彼女の頼みを聞き入れるとしたら俺の気持ちにブレが生じてしまわないようにしっかりと考えて決断しなければならなくなるだろうと思うのだ。

「君の考えていることが間違っていると決めつけることはできない。しかし仮に君が考えた方法で魔族たちが成長できたとするならばその結果どうなるかを確かめてから判断した方が良いかもしれないぞ。まずこの国の民たちの為になることは何なのかをよく見極めてほしいのだ」

「はい!わかりました。私の考えでは魔族の子ども達の成長の為だけに行うわけではないのです」

「ん?そうなのか?」

「そうですとも!実はこの魔王領の人間たちの間で最近魔族の子ども達に対して良くない感情を抱いている者が増えているのです」

「どういうことだ?」

「その人間たちというのはもともとはこの領地に住んでいた住民たちではないのです。元々は他の場所に住んでいた人々がこの魔王領内に移り住んで来たものたちなのである意味仕方のないことではあるのであまり文句も言えませんが魔族の子ども達のことをよく思わず、自分達よりも優れた力をもっていることから不満を抱き始めてしまったみたいなのです。その人間たちは魔王の治める国であるこの国に移住することを許されておきながら魔王を敬う心がまったくないというかなんというかそんな人たちなのですが、最近はこの国の王であるあなたに対しても敵意を抱くようになってきていまして困っているのです。このままではいずれ何か大きな問題が発生する可能性があるかもしれません。その前に対策をとっておかなければなりません。それに魔族の子どもたちはこの国の未来を支える存在になるはずです。この魔王領の魔族の者たちと上手く交流できればお互いにより良い関係を築けると私は思っています。そこで魔王さまお願いがあります」

「なんだ?言ってみろ」

「ありがとうございます。私のお願いというのは魔族の子どもたちと友好関係を結んでもらうための橋渡し役に私の娘たちを使っていただければと私は思う次第です」

「なっ、それは本気で言ってるのか!?」

俺はその言葉を聞いて驚いてしまう。その話が本当であるならば、魔族の国に俺の娘を送り出すということなのだろうかと不安になってしまう。だが彼女は俺がそのような表情を浮かべていることに気がつくと彼女は俺のことを優しく抱きしめた。そして、俺の顔を見つめると安心させるような微笑を見せてくれた。俺はその顔を見ただけでなぜか落ち着きを取り戻してしまう。そして俺と彼女はその後話し合いを行った結果、俺が魔王になってから最初の魔族の娘を彼女に預けることになったのである。

「初めまして魔族さん!わたしの名前はアリシアよ!」

その女の子は自分の名前を大きな声で言い出したのである。そして俺はそんなアリシアの様子を見守ることにした。するとそんな時である、アリシアの背後から一人の男の人が近付いてきたのである。

「ちょっと待ったー!僕はアゼルスと言います。魔王様に用があってここまでやって来ました。この度は娘を魔王様に献上させていただくことになりました。よろしくお願いします」

彼は礼儀正しく俺の前にひざまづくとその娘の手を俺に差し出すようにして挨拶をした。

「ああ分かった。これからは仲良くしてくれ」「もちろんでございます。こちらこそこれからはよろしく願いします。この子には僕のような苦労をかけたくないので幸せにしてやっていただけたらありがたいです。どうかこの子を可愛がってやってくれませんでしょうか。魔王様の優しさに触れさせてあげたら、この子の人生も良い方向へ変わると、親である僕の経験からそう思ったからこのような結論に至ったのです」

アゼルスは俺に懇願するかのように頭を下げる。俺はそこまでされては断ることができないと思い了承することにする。

「わかった、その件については問題ない。しっかりと俺がこの子の面倒を見よう。それで君はこれから俺のことは魔王様と呼ぶ必要はないから普通に接してくれるとありがたいと俺は思っている。あとこの魔王城で一緒に生活してもらうことに決まったが大丈夫か?一応君もこの城に住むということになっているからその事について考えておいてほしい。城の中に部屋を与えるようにしておくのでそちらで生活するという方法もありだと思うのだが」

俺はそんな風に彼に伝えたのだが彼は首を横に振って俺の申し出を辞退したのである。

それから俺はその親子と別れた後にアリシアを連れて城内の中を案内することにした。俺はまず城の中の施設を見てもらおうと考えていた。城の中ではいろいろな仕事がありそれをこなすことで生活していけるという説明をするために俺はまずアリシアにどんな仕事があるのかを説明することにする。それからアリシアと一緒に城の中で生活することになった時に生活していくうえで必要な知識を少しずつ教えていくことにしたのであった。

俺とアリシアの二人はこの魔族の国で生活をすることになる。その事を魔族たちに伝えるため俺は一度皆が集まっている広場へと向かった。そして俺は魔族たちにこれからのことについて話し合う必要があると告げたのである。この国の今後についての大事な話があるため、この場にいた全ての魔族たちに話を伝える事にしたのだった。

そしてこの魔王領は魔族の住む国のはずだがこの国の人たちは人間の国で暮らすことを望んでいるのかという疑問を持つことになる。そのために俺は魔王領内で暮らすのをやめて他の土地で暮らすことを希望している人は名乗り出るように言った。そうすれば魔王である俺が直々に魔族の暮らす場所へ送っていくと約束したのである。その言葉を聞いた人たちの多くは喜んで俺の話に耳を傾けて協力的な態度を示した。その人たちの大半は俺に感謝の気持ちを伝えてくれていたのである。中には俺の力になりたいと志願してくる者もいた。そんな人たちのおかげで俺はこの国の民たちの中からも希望者を募ることが出来たのであった。

「魔王陛下は民のために頑張っておられるんだね」

そんな声が周囲から上がると俺はその声に反応してその人達の方を見る。

「民の笑顔がこの国を平和にするんだと思って俺は頑張ろうと思っただけなんだよ。だけど、それだけじゃ足りないかもしれないなと思ってもっと色々と改善する為にこうして動いてみただけなんだよ。でもその考えが間違っていなかったみたいだから嬉しいよ」

俺は民たちの反応を嬉しく思い笑みを見せると、彼らの感謝の声に答えるために、俺ができる限りのことを行おうと思う気持ちになったのである。しかし、この国の住民の中には人間と関わりを持ちたくないと思っている者も多いだろう。そのためこの魔族の国で生きていく道を選ぶ人もいるとは思う。その場合は無理に引き止めるつもりはないのだ。魔族たちの中にもこの魔王領を出ていきたいと考えている者もいるとは思っているしそれでも良いのだ。

ただ一つ気になっていることがあるとするならばこの国の魔族の子どもたちが人間たちとの関係を改善したいと考えている人がたくさんいたのにも関わらずそれを行えなかった原因についてである。それがなぜ起きていたのかその原因を知る必要があると考えていたのだ。

俺はそのことを知るためアリシアと一緒にその答えを知っているであろう者に会いに行くことになったのである。その人物は魔王軍の部隊の一つに所属しているリリスという人物だそうだ。その人物はこの城の地下に暮らしているらしくそこに案内された俺は彼女に会うべく地下室に向かうのだった。そこにはその女性が一人静かに椅子に座って外を眺めていたのである。

俺とリリスはその二人きりの状況の中で向かい合い、話をすることにしていた。リリスは少しばかり警戒心を抱いたような様子を見せたが俺の言葉を聞くうちにその表情を緩ませていき俺のことを受け入れてくれた。俺のことを信用してくれる人がいるというだけでも、この国を変えるという大事業が成功する確率が上がると俺は感じたのだ。だからこそ、リリスには俺の手助けをしてもらいたいという気持ちが湧き上がってきたのである。しかしそれと同時に俺はある違和感を感じてしまう。それはこの城に元々住んでいる魔族とは全くと言っていいほど顔立ちが違うからこそ気づくことができたのだ。俺はそのことを気にせずにはいられず彼女の顔をジッと見つめてしまう。

「な、なんですか?あまり私に見つめないでください」

「すまない。君の肌の色は珍しいと感じてしまって、君の顔立ちは人間たちとほとんど変わらないように思える。ただ、俺の勘違いでなければ魔族は本来青い肌をしていたはずだったと思うが」

「そ、そうです。魔族の本来の姿は人間と同じ姿をしています。でもこの国では昔人間が魔族を恐れていたことから魔族の姿をした者がこの国に入ることが出来ないようになっていました。その為今ではその当時の恐怖を忘れた者たちのせいで魔族に対して差別意識を持ってしまい魔族たちは人間たちから逃げるようにこの国に移り住むことになりました。その流れからこの国では魔族たちは忌むべき存在とされているんです。私はその魔族の国からやってきたんですが魔王様のおかげでなんとか魔族の子ども達を受け入れることが許されています。魔族の子ども達を育てる環境を整えなければ魔族の国の子ども達が不幸になりますからね。この魔王領にもそういった魔族の子どもたちを保護してくれる施設を作ろうとしているのです。魔王様にお願いして、魔族の子ども達を預かるという制度を導入してもらうことに成功しました」

俺はその言葉を真剣に聞きながらメモを取っていく。

そしてリリスが語った話を聞いて俺の考えが当たっていたことを知り、納得することができたのである。しかし、そうなると新たな疑問が生まれた。俺の目の前にいる女性は魔族の国から逃げてきたという話をしていたが彼女は魔族の国をどのように思っていたのかと質問をすることにする。

「私の故郷は本当に美しいところです。青くて綺麗で透き通っていて海の底にある珊瑚の洞窟のようで。あそこが私が暮らしていたところです」

俺は彼女の言うとおりにその海底に存在するような光景を頭に思い浮かべた。だが実際に見たこともない景色を想像しても上手くは伝わらなかったのである。

「この世界がどれだけ広くとも俺にとっての海は君の故郷である魔族の国だけだな」

「魔王様ならいつでもその景色を見せてもらえますよ。だって貴方はこの世界でたった一人の王様なのですからね。貴方は勇者であり魔王でもあるんですよ。だからいついかなる時も自由に転移魔法で魔族の国に帰ることができると思います」

俺がそういうことを試そうとしたその時に俺の背後で何かの物音がする。俺がその方を見るとこの部屋に案内してきた兵士の一人と俺の後ろに立っていたアリシアがいたのである。そして俺の視線の先には魔王軍に所属する兵士が剣を振り下ろした状態で止まっていた。そして彼の手はなぜかプルプルと震えて汗を大量にかいており尋常ではない状態に陥っていることが目に見えてわかるのであった。そんな状況を見てしまうと、その男が何をしたかったのか理解できないままで終わってしまう。

俺はそんなことがあったがとりあえず今度からは転移するときは気をつけると伝えておく。そしてこの国の魔王としてやるべきことがまた増えたことを感じることになる。その仕事は簡単に言ってしまえばこの国の人たちに魔族の国がどのような場所であるかを知らしめる必要があるだろうから俺はこの国に住む人々に魔王領の観光ツアーを行うことにしたのだ。そのため俺はリリスに魔王城の中に観光名所になるところを作ってもらうことにしたのである。魔王城の城下町の広場の中心には大きな広場を作りそこから四方八方に延びる通路を作ることにし、広場の周りに建物などを作るのである。俺の考えていることはこんな具合だ まず、広場には大きな噴水を用意することにしその水で住民達に涼しい空間を提供しようという魂胆がある。さらに広場の周りには多くの飲食店を出すことにより住民たちがこの広場で休憩できるようにしようという気持ちが働いているのである。そんな風にしてこの国の魔王城を観光名所にすることを決めたのであった。

俺はこの魔王領に住む魔族の子どもたちが安心して遊べる施設も用意しようと思っている。俺としてはこの国の将来を担うのが子供たちだと考えているためそのような施設を作った方が良いのではないかと考えたのである。そこでまず最初に思いついた施設が学校という施設である。俺はこの学校の事を子どもたちの教育機関だと説明する。この施設は文字を覚えるための教育をしたり様々な学問について学ぶ場所だと説明していく。

俺の考えたこの計画を聞いたときこの国の魔族の人たちは驚きながらも俺の話に興味を持ったようである。魔族の国の中でも学校に通っている子供は少ないが魔族の子どもたちの未来のためにこの学校で魔族の子たちが文字の読み書きや歴史などについて学べる場を提供したいと提案すると、魔族の人たちに喜んで受け入れられる結果となる。そして俺は魔族の子どもたちが通うことのできる学校を建てるための資金について相談するべくこの魔王城にいた魔王軍の副将軍であるアスタに頼みごとをする。この魔王領はまだまだ発展途上であるため俺は資金の援助をしてもらう必要があると考えていた。そんな俺の計画を聞いた魔王軍の人たちは協力的な態度をすぐに見せてくれたのである。その結果、魔王城の城下町に巨大な土地を確保することに成功したのであった。

俺が魔王になってから二年が経とうとしていた。魔王としての仕事を始めてから一年間は俺は必死だったと言えるだろう。魔王の俺がしっかりとしていないことで他の魔王たちに迷惑をかけてしまう可能性があるからである。魔王とはこの国の民を導き平和に導く者である。民を虐げている者は俺の手で罰しなければ平和な国にはならないと俺は信じているのだ。俺の仕事は国全体の統治だけではなく他国との友好を結ぶためにも奔走しているのだ。

俺の仕事は多岐にわたる。その仕事を全てこなせているのは優秀な部下が俺のことをサポートしてくれていることと、この国には人材が多く集まっているということが大きな要因になっているのだろう。俺はいつも自分の隣にはアリシアがいてくれることを思い出す。俺は彼女が傍に居てくれるから頑張れるのだ。そんなことを考えつつ俺は書類に目を向け作業を続けていたのである。

俺の傍にはアリシアだけでなくこの国の女王となったシルビア、宰相兼この魔王領で一番強いと言われる男であるジンガ、そして、俺の婚約者の一人であるリリスという俺の大切な仲間がいるのだ。

「魔王様。少しばかり休憩をした方がよろしいかと存じ上げます」

俺はリリスに声をかけられてようやく自分が疲れ切っていることに気づく。

「確かに俺が休むべきなのかもしれないな。でも今は少しだけ時間が惜しい」

「それは何故でしょうか?」

「それは、これからこの国に新しい法律の制定を行おうと思っているからだ。そのために俺が直接出向いて説明を行わなければならない。俺は忙しいんだ」

「では、私めがその法案の説明を行います」

「ありがとう、リリス」

俺の補佐官になってくれた彼女は俺が仕事をするために必要不可欠な存在だといえるほど、彼女の存在が俺の中で大きくなっている。俺はリリスの申し出を受け入れて彼女と一緒に俺が草案をまとめた資料を持って俺の執務室から外に出た。リリスの案内によって向かった場所は魔王城の敷地の一角である。

そこには魔王軍が誇っても良いほどの立派な訓練所が存在していた。この場所には俺の部下たちが日々努力を重ねて魔王軍に負けないように鍛錬を行っている。リリスも毎日のようにこの場所に来ては自分の能力を高めているのだ。俺の補佐であるリリスは俺の一番近くに仕えているがその実力はまだ魔王である俺を超えることはないだろう。ただ俺の知る限りでは、俺の側近たちの中ではトップに位置するほど彼女の強さは抜きんでたものを持っていたのだ。俺よりも弱いのに側近にしたいと考えるなんて普通ならありえない話だと思うが俺の考えを分かってくれる人が必要だと感じたのだ。そして俺の考えに賛同してくれたのがリリスなのだ。彼女は俺の味方であることを信じて、俺は彼女と婚約したのである。俺は彼女のことをとても信頼していた。

「今日は魔王様が来られるという事でみんなが緊張してしまっているんです。その気持ちをほぐしてあげて下さい」

俺はリリスの言いたいことが分かったので俺の作った草案をその場で読み始める。

そして俺は草案に書かれている内容に問題があることに気づいた。それは魔族の子どもがこの魔王領に住む魔族の子どもたちの遊び場である魔の森で遊ぶことが出来ないという内容が書かれていることにあった。それはあまりにも可哀想な事だと思い俺はすぐにこの案を取り消そうとしたが俺の隣で俺のことを見て微笑んでいたアリシアは違う考えを持っていた。

俺は魔族の国の現状を知っている。魔族の国の中には未だに人間が魔族に対して行った仕打ちを憎んでいる者たちが大勢存在しているのだ。そのような状況だからこそ魔族の子ども達の為にもここは魔の森に自由に出入りが出来るようにする必要があると俺は考えた。しかし俺が考えている案はそう簡単な話ではないのだろうと思うが俺はこの国に住んでいるすべての人たちと魔族の国の子どもたちの為になることをしようと考えていた。そして俺は草案の内容を書き換えたのであった。

この国に暮らしている魔族の子たちの憩いの場となる場所を作るため俺はその場所の候補を色々と考えて、最終的に決まった場所があったので、俺はリリスに頼もうと思っていたのだが俺の思い通りにはいかなかったのである。なんと魔王城からそれほど遠くない場所で、俺が考えていた以上の規模の大庭園を作れることになったのであった。その庭の広さは魔王城の半分に匹敵するほどの大きさであり、それだけ広大な場所を作ることが魔王軍の力をもってすれば簡単に出来ることである。

その話を詳しく聞きたいというのが本音である。

「魔族の国の中に、このような大きな森がいくつもあることはご存知ですよね?実はこの魔族の国にも魔王領の魔族の国の人たちと同じように人間の国がこの国に住んでいたことがありました。そしてその時に作られた公園が存在するんですよ。ですがその人間は愚かな人間で魔王軍と魔族の国の人たちの両方を迫害し戦争まで引き起こしたのです。それが原因でこの国は魔王領から魔族の国の国になり変わったんですよ。この国が魔王領になるきっかけになった出来事なのです。そして魔王城はこの魔族の国の王都の中心にあるんですよ。ですからこの国の王都の中にもその公園が存在しているはずなんです。もしよろしかったらその場所を見に行きませんか?」

俺の質問に対して、その答えとしてこの国の歴史や成り立ちについて簡単に説明してくれたので、今すぐ行きたいとは思わなかった。俺はもう少し時間があれば、この国のことについて理解してからの方が何かと動きやすいと思ったのだ。俺はその気持ちを伝えて、また後でお願いすると言っておく。

この世界は広いようで狭いということがよく分かった。まさか俺の国の中に存在していたとは思いもしなかったのである。

そして俺はこの世界のことを知らないことだらけだということを思い知らされることになった。そして俺にこの国に関する知識を教えてくれるために、リリスは魔王城の近くにある図書館に行くといいと助言してくれる。俺は彼女に言われるままに魔王城から出ることにした。この世界にきてからのこの一年間で随分と成長したと俺は思っていた。

魔王城の門には、二人の兵士が立っているのだが俺の顔を見るとすぐに通してくれ、魔王城に出入りする者は必ず一度は訪れる場所であるから慣れてしまったものである。俺はこの国の魔族の人達のことが気に入っているのだ。そんな気持ちもあって俺は魔族の国のために様々な行動を取るようになっていた。魔族の国の国民たちが少しでも暮らしやすくするためにはどうしたらいいのか俺は常日頃から考えていたのである。そんな風にしてこの国の平和な状態を作り上げるために尽力していたのだ。俺は魔王という立場である。だからこそ俺はこの国の人々の生活水準を上げていかなければならないと強く思うのである。この国には俺が知らないだけで、まだまだ解決しなければならない問題は山ほど存在するはずだと思っている。それを一つ一つ丁寧に潰していこうと俺は考えている。

「あら?こんなところで会うなんて奇遇ね。一体何の用なのかしら?」

「えっ?」

俺は声がした方を見る。そこには俺の妻であるアリシアが立っていたのだ。

アリシアの姿を見た俺は嬉しく思った。

俺はこのアリシアと一緒にデートをしてみたいと考えていた。だが俺の立場を考えるとそれが叶うことは難しいかもしれないと思いつつ俺は、俺の想いを打ち明けようと決意する。俺にとって一番愛しているのが目の前にいる彼女であることを言葉だけではなく態度でも伝えようとしたのである。するとアリシアはとても嬉しいことを言ってくれた。

「わたくしも貴方を愛しています。魔王様」

俺はこの言葉を聞いて本当にうれしかった。

魔王として俺は今までこの国を守ってきたつもりだ。しかしそんなことを全く意識することなく彼女は笑顔でそんな言葉を俺に伝えてくれたのだ。

「そろそろ行かないと」

「何処へ行くのですか?」

「もちろん、魔王様と楽しい一時を過ごす為によ」

彼女は俺と腕を組んでくる。俺と彼女の間には、まだ子どもはいないがいつか欲しいと考えているのは間違いないだろう。俺はアリシアに子どもが生まれたらどのような姿で生まれるのかと想像してしまう。俺の頭の中はアリシアとの子どものことで一杯になってしまった。俺の脳みそは子どもができるかどうかを考え始めるのである。

アリシアと腕を組みつつ歩いて行くと目的地に到着したのだった。そこはアリサのお気に入りの場所だという。俺は初めてこの場所に訪れた。俺はその場所を見てとても綺麗だと思えたのだ。この辺りは草木が多い茂っている場所であり花壇の花は、この世界で見ることが出来るどの花の種類よりも美しいと感じたのである。

そしてこの場所では魔王領の魔族たちが楽しそうに遊んでいた。

俺はそんな光景を見ながら俺は魔族の人たちのことを改めて凄いと感じることになる。何故ならばこの国に暮らすほとんどの魔族の子どもたちたちは人間の子どもと比べて容姿が遥かに良いからだ。俺の予想通り、この国の魔族の子ども達は他の国から見れば非常に美しく可愛らしい外見を持っているので魔族は人攫いに遭いやすい環境にあったようだ。そのため多くの魔族の女の子たちがさらわれてしまう事件が度々起こってしまったようなのだが俺が保護して無事に魔王城へ連れてきたという経緯がある。だからこそ俺としてはそのような事件を今後引き起こすことのないようにしたいと思っているのだ。だからこそこの国には人間の子どもたちの遊び場が必要だと判断したのである。しかしここで一つ大きな問題が発生するのだ。この国には現在二つの国があるということだ。俺の住んでいる魔人の国、そしてもう一つ人間が治めている王国である。この二つが一緒になれば争いが起こることはほぼ確実だろうと思ってしまうくらい危険な状況なのだ。そしてその王国の王が、この魔人の国を自分の領土に組み込もうとしているという情報を俺は入手していた。

俺は魔人の国の安全を確保しながら、人間とも共存できる関係を構築していければ理想的だと思っていたのである。ただ魔族の人たちが人間の国々に住めないのは仕方がないことだ。魔族の人たちの中には、人間を憎んでいる者もいるだろうし無理に人間と一緒に暮らせといっても上手くいくはずがない。ただ俺はそのような問題をどうにかして改善していきたいと考えて行動していたのだ。そして俺は魔族の人たちのことを考えた法律を作ることを決意する。これはあくまでも俺の私情でしかないが魔王が作る新しい法律には必ず意味があると俺は確信していた。それは俺の個人的な感情ではなく、魔王としてこの国の未来を考えたうえで必要な法案なのだ。

俺が新しく作り出そうとしているのは子ども達の安全を確保する為の子どもを守る制度を考えて、それに当てはまる子どもがいれば魔王領に住むことが許されるというものである。この国の現状を俺はよく知っていた。この国の民のほとんどが親を失い孤児院に預けられているという現実を俺は知っている。だからこそ俺は魔族の子ども達を守るためにもこの国にあるすべての問題を解決しなければならないと思っており、この制度を作り上げようとしているのだ。

俺はリリスに魔王領で作ろうとしている新法をこの国にもたらすために協力をお願いする。

「分かりました」

リリスは俺の頼みを快く引き受けてくれる。リリスに手伝ってもらえることはありがたい。彼女の知識や魔法によって、より良い制度を作ることが出来るのだから。

俺とリリスは魔王領の子どもたちのために何かできることは他にないのかという話し合いを始める。するとアリシアから意外な提案があったのだ。それは、俺の国の子供たちの為に何かしたいという話だった。

この国の中で暮らしていく以上、俺たち魔王軍に対して何らかの支援をするべきだと考えていて、その中でも一番簡単なものは食べ物の提供ではないかと言われたのである。確かにその意見は正しいと思うが俺の考えには一つの穴が存在していたので俺はアリシアにその考えは違うということを話しておくことにした。

その話をする前に俺はこの国の状況を簡単に説明をすることにしたのである。まずこの国で暮らしている大半の者が人間の子どもであるということから始めなければならない。そして俺は人間の国が人間だけの物では無いことを説明する。そして俺の説明を聞いたアリシアは納得してくれた。それどころかアリシアは自分の生まれ育った村を復興させたいと願っていたので、この魔族の国の子どもたちのための食事の提供について魔王城の厨房をフル活用することをリリスと約束してくれた。俺としても魔族の子どもたちのためになればと思い俺はリリスたちに頼む事にした。リリスと魔王領の子どもたちの為の料理を作ることが決まったのだ。それならこの国の魔族の人たちにも喜んでもらえそうなので良かったと心の底から思うことができたのである。そして俺は最後にアリシアに伝えたことがあった。その前に俺は魔族の国の子どもたちが楽しく生活するための方法について話す。そして魔王城の近くに公園を作ることにしようと俺は考えていた。俺の提案は簡単に言えば子ども同士で遊ぶことのできる場所を作ってほしいというものだった。俺は子ども達の様子を見ている限りだと魔王領で暮らす全ての子ども達が友達を作り、共に過ごすことによってよりよい人間関係が築けると思っている。この国に住んでいるのは大人がほとんどで子どもの数は非常に少ない。だから俺としてはとても心配でならなかった。この国の将来を担う子どもたちには元気な姿を見せてほしいと思ったのである。

俺はアリシアに向かって子ども同士仲良く遊べるような公園ができれば嬉しいと伝えた。

「ええ、もちろんよ!でもどうやってその場所にするの?ここって意外と広くて探すのが大変なのよね」

アリシアの言っている意味はよく理解出来た。俺もこの場所がどういうところなのかを調べるために来ていたのだが本当に広すぎると思ったのである。だが俺はあることを思いつきその場所に行くことにする。この王都からそれほど離れていない場所で、かつ自然に囲まれた場所に俺が気に入っている場所があるのだ。そこは以前、俺のお気に入りの場所として紹介したことがありそこでアリシアとピクニックに行けば、もっと楽しい思い出になるのではないかと考えていたのである。俺はこの機会にアリシアにそのことを伝えると嬉しそうな表情を浮かべていたのだった。

「ええ、わたくしも行きますわ。だってわたくしも貴方の妻ですもの。貴方と一緒にお出かけするのはとても幸せなことでしょう?もちろんこの国を治めるのは大切な仕事ですけど。それともこれってわたくしがついて行くと困ることでもあるのかしら?」

俺は別にそんなことはないと答えておく。そして、この場所では何をしても自由だということを俺はアリシアに告げることにした。この場所には基本的に人が来ないので俺が自由に使うことができる場所だった。

俺はその場所をアリシアと訪れようとしていたのだ。だがその場所に辿り着くには森の中を抜けていかなければならないのである。だがアリシアが一緒であれば特に問題もない。なぜなら彼女は剣の達人であり、その剣術の腕は既に俺と同等かそれ以上の力を持っていると思われるからだ。そして何よりも彼女が一緒にいてくれれば非常に頼もしいし安心感もあった。俺は彼女に一緒に行こうと誘うと嬉しそうに同意してくれたのである。

ただこの国に住む魔族の子ども達と一緒にピクニックをする時に魔王の嫁を連れて行っても大丈夫だろうかと疑問に感じてしまうが、そこは上手く言い訳を考えることにする。

俺は早速魔王領の子どもたちのためだけに作った新しい学校へと移動した。

「わたくしもここで授業を受けてみたいわ」

「え?」

アリシアがそんな言葉を言うとは思わずに俺はつい変な声を出してしまった。しかしアリシアは笑顔で、この学校で子どもたちと交流を深めたいという願いを伝えたのである。そして俺としては断る理由など何もなかったのだ。寧ろ大歓迎だと伝えアリシアのことも受け入れる。

俺は、この国にある子ども達が勉強するための設備が十分にあるかをチェックしていた。

俺は今度この施設を使ってみようかなと思っていた。

この学校の先生役をアリシアに任せてみるのも良いかもしれないと考えたのである。彼女はとても優しい女性なのでこの学校で生徒に慕われるようになるのではないかと俺は思っていたのだ。そしてそんな彼女を見て俺はますます彼女に惹かれていくことになるのだが、そのことはこの時の俺は知らなかったのである。ただこの時から彼女には俺のことを旦那様と言ってくれるようになっていた。俺はそんな彼女の優しさに甘えることに決めており、彼女とのデートを楽しむことになるのであった。

俺はこの国に来るまでに多くの時間が経過していることを思い出す。俺がこの国にやってきてから約半年が経過しているが、この国の王である勇者が俺のことを見つけ出し攻撃してきたという過去がある。この国で生活している中で、俺の存在を知る人物はほとんどいないはずだったのだが勇者は一体何処まで俺たちの行動を調べあげ、俺たちの行動を予想していたのだろうかと考える。しかし、今はそれよりも目の前にいる魔族の女の子達を救うことが最優先だと考えていたので気にしないことにする。

俺は魔王城の近くにある森の奥深くに魔族の子どもたちの為だけに作られた小さな学校にたどり着く。そしてこの学校の教師を務めることになったアリシアに子どもたちの様子を聞いてみたのだ。

するとアリシアはこの学校の現状を話してくれる。この学校は子どもたちのために用意された場所というわけでもない。元々は人間の子ども達だけが通う普通の教育機関だったようなのだ。

俺はそれを聞いてしまったのだから、その教育機関が魔族の子ども達に奪われる前に行っておかなければならないと思う。そしてその考えに賛同するように、リリスと魔王領の子どもたちも俺に賛同したのだった。

俺はアリシアの案内によって、子どもたちの教育施設である場所へと向かうことにした。

俺はこの国の王になってから魔族以外の種族との接点を持つことがなかなか出来ていなかった。その為、人間や他の魔族の国で暮らす人々と会話することが少ない日々を送っていたのである。そのことに俺は多少の不満を抱いていた。この国は、人間の国では無く魔族の国であることを忘れてしまいそうになるほど、人間が暮らす環境が整っていたのだ。そのことについては俺は感謝している。

魔族の国でありながら、俺にとってこの国が居心地の良い国になっていたということだけは確かなことだった。だからこそ俺は人間とも友好的な関係を築ければ良いと考えている。だからこそ俺の考えに理解を示し、協力してきれくれたリリス達の存在が心強かったのである。俺がこの国に来てから魔族の子どもたちを守る為に必要な法律を考えていると、必ず協力してくれる人がいる。俺が一人でこの国のことを考えていたらおそらくここまでの成果は上げられなかったことだろう。そして俺はこの国にある全ての子どもたちの為に俺が出来ることをする。この世界には魔族の国に暮らす魔族の子どもと他の国から逃げて来た子どもたちが多く存在するはずだからこそ、彼らを受け入れ、保護できるような制度を作るべきだと本気で考えていた。

リリスやルッカたちのおかげで少しずつこの国の制度について考えをまとめることが出来ている。俺はそのおかげでかなりスムーズに物事を考えることができるようになっているのも確かだった。俺が考える新法とは、魔族の子どもたちが楽しく遊べるようにするためにも必要となるものだ。だからこの国で生きていく以上最低限の教育を受けることが出来る場を作っておく必要があると感じている。それには、まず最初にこの世界の基本的なことを教えることのできる人材の確保が必要となる。そして、この国で生活するための規則を定めなければなと、そう考えていて、それはこの国の未来を担う子どもたちに教育の場を与えるために必要なことだと思ったのだ。この国が魔族の国だという事は理解した上でも、それでもこの世界で生きる術を知らずに魔族の子どもたちは不幸になることも十分に考えられるからこそ、この子どもたちのために俺は出来ることを全てやってみたかったのである。

俺はリリスと一緒に魔王城に向かう。そしてアリシアの案により学校に行く事になったのだった。

「そうね。あなた。子どもたちの為に、私もこの学園のお手伝いをしたいわ。そういえば最近ずっと働きづめだった気がするので少しゆっくりした方が良いと思いますのよ。ほらっ。私のお胸とかお触りになって構いませんわ」

俺はそんなリリスの申し出に感謝の言葉を述べながらリリスに抱きつく。やはりこの魔王城に帰って来た時はこうして触れ合う事が何よりも癒される瞬間だった。

そして俺達は魔族の子どもたちのための学校を訪れる。

この国の王となったことで、俺の生活も激変してしまったと言える。俺はこの国を統治するための仕事をしなければならず、この国を豊かにしようと必死になっていた。そのために俺は、今までこの国で暮らしていた者たちの意見を聞く必要があったので彼らを呼び出したのである。

「王様。ご無沙汰しておりますな。私は以前まで人間と獣人が共に暮らす場所にて生活しておりました。その時には私と仲間達、そして家族のように過ごしていた者達と一緒に生活して、とても幸せな生活を送らせてもらいました」一人の男が俺に向かって話しかけてくる。この男はかつてこの国に住んでいたが魔王が倒されたことにより行き場を失った者だったのだ。

その男は俺の前で頭を深々と下げる。そして、俺は彼から色々話を聞いていた。彼の住んでいた村では、獣人の人達と一緒に暮らしている人たちがたくさん存在していたのだという。そしてその中には獣人を差別するような人もおらずお互いに助け合い平和に暮らしてきたのだと彼は言う。この国に住む魔族の人たちは基本的に人間や獣人に対して敵対的ではなかったが、全ての魔族の国民がそういうわけではなかったのだ。だからこそ、俺がこの国にやってくる前までは人間は奴隷として扱われることが普通だったのである。それがこの魔王領の現状でもあった。だが今は、奴隷制度などは撤廃されているし、一部の魔族の人たちの中には人間が大好きだと豪語する者たちもいたりするほどだったのだ。そんなこともあり俺としてはこの国の王として魔族の国の住人にもっと歩み寄って欲しいと強く願うようになったのである。だがこの国にも様々な事情があるのだ。

例えば俺と魔族の少女が一緒にいることに文句を言ってくる奴もいるし、俺を殺そうとしてきた勇者がいたという事実もある。他にも、俺を良く思わない者もいることは確かでそういった者が勝手に動いているという話だ。ただそのことは今のところ放置していて問題ないと考えていたのである。なぜなら俺はその問題を解決できるだけの能力を持っていたからである。しかし問題はこの先であったとしても俺の味方をする人がどんどん増えることは間違いないとも思う。だからこそ今のうちから色々なことを考えておくべきなのだろうと俺は思った。

それからしばらくこの国についての話を聞いた後に彼らはそれぞれの家に戻っていくのであった。

俺には、この国で問題になる出来事が何かあるのかよく分からなかった。確かに今現在魔王であるアリシアに対して、あまり快く思っていない者はいるが、それはあくまで個人的な感情であり、俺が介入する必要もないように感じるのだ。だが、アリシアはこの国に暮らす人々に危害を加えたというわけではないので彼女が責められるというのはどうなのかと思ってしまう部分もあった。だがアリシアがこの国の魔王になったことで人間との争いが起きていない事を考えると、彼女の存在はかなり重要だと俺は考えるようになる。つまり彼女がいればこの国は上手く回っていくという事なのだ。だからこそ彼女が狙われる理由はないだろう。しかし彼女の夫が王になったと聞いて黙っている魔族はいないかもしれないと考えたのだ。しかし今の所そのような話は耳に入っていないのでまだ安心してもいいとは思う。だが念のためにアリシアを常に警護する騎士のようなものを用意する必要があるかもしれないと考えた。そしてそのことをリリスに頼むことにした。すると彼女は俺のことを優しい表情を浮かべながら俺の頬に手を当ててくれたのである。そんな彼女を俺は愛おしくて抱きしめると、そんな俺の行動に彼女は恥ずかしがるように俺に身を委ねた。

それから数日後。

この国で俺の存在に反対する勢力の動きがあることは知っていた。

俺の命を狙っている人物がいることはもちろん把握しているのでその対処は既にしている。

この国で、俺のことをよく思っていない連中が存在しているのは知っている。

だからと言って、俺は俺自身の力を過信していたのは否めない。

俺がいくら強いとはいえ相手もそれなりの実力があると想定しなければならない。

油断をしているわけでもなかったが、相手の行動に俺は遅れを取ってしまったのだ。そして相手が放った攻撃魔法をくらったことによって体が痺れてしまったのだ。さらに悪いことに体から血が流れて思うように力が入らない状態に陥ってしまったのだ。このまま意識を失ってしまいそうだと感じてしまうくらいに危険な状況に陥ったのだった。しかしそこで俺は何とか力を振り絞り、この襲撃者を拘束することができたのだった。

すると襲撃者の方からこのような声が聞こえる。

この襲撃者は魔王軍の者ではなく魔族の国の外の者であると俺は確信したのだがその事実を知るものは数少ないはずであるはずだった。そして魔王軍の中で魔族以外に攻撃を仕掛けるなんてことを行う者がいるとは思えないのである。

その点に関しては俺も理解できているはずだったが今回起きた事件によって改めて俺の敵は多いことを認識する。そしてこの襲撃事件が俺の力を見定めようと考える魔族たちの計画によるものではないかと推測するのであった。俺はとりあえず、その襲撃者を尋問することに決める。そして襲撃者から情報を吐かせることに成功していく。この襲撃者は、魔族以外が住む町を襲撃したことがあったようでその時に人間の子どもに怪我を負わせたようだ。

それを聞いて俺は、その人間がどのような人間かを確認するためにその人間のところへ行かないければならないと思ったのである。俺はこの世界に来てから魔族の子ども達以外の種族と接するのが随分と久しぶりのことだった。

だからこの機会に人間たちと交流を深める必要があると思い、まずはこの国の人間たちが生活している居住区へと向かった。俺は魔族の王なので当然、魔族の居住区に住んでいるがこの国の全ての住人を把握しているというわけではなかった。この国の魔族の住民たちの大半は、魔王城の中に住んでおりそこから外に出るようなことはほとんど無かったのである。俺自身、人間や獣人との共存を望んでいる以上、他の国の住民との交流を持つことは必要だと考えている。それに俺には時間的な余裕が無いので早急にこの国の問題を解決したいと俺は思っていた。俺がこの国の王になってから一年以上が経ち、その間この国もだいぶ安定してきたのだと思う。それにこの国に住む人々も少しずつ俺のことを理解し始めてくれているとも思っている。

俺はこの国の民を守るために出来る限りのことをしていく。この国で暮らすすべての子どもたちの為、俺の子ども達の為、この世界の未来の為に、そして自分の未来の為に俺は全力で生きようと決意する。だから俺は目の前にある障害を少しでも排除することしか出来ないのである。そして今回の問題に関して俺の考えに賛同してくれる魔族の子どもたちは俺と一緒にこの国の外へ出ていくのだった。その目的は魔族の国以外にも、人間やその他の種族の者たちが多く暮らしている集落や村などが存在していて、そういった場所で情報を収集したいと考えたのである。この国だけで全てを終わらせることは不可能に近い。だからといって何もしないのは俺の性格上あり得ない。ならばまずは魔族の子どもたちの安全を第一に考えて、この国の問題を解決することを優先すべきだと俺は考えたのだ。そのための行動を俺は起こす必要があるのだ。そしてまず俺達がやってきたのは人間の町が存在する区域だ。この国に人間たちが訪れるようなことはほとんどない。しかし魔族の国と隣接している場所では頻繁に人間たちがこの国を訪れていて、この国から他国に行く際には、基本的にこの国を経由して向かうのが一般的だと言われている。しかし、それでもわざわざ魔族の国を経由する必要はないため、俺達は人間の国に向かったのだ。俺は、リリスの転移の術を使用して一瞬にして目的地に到着するのだった。そして俺はリリスと共にこの国について調査を開始するのである。

「あのーっ、あなたたちはどうして私たちの国に来たのでしょうか? あなた方の目的がなんであるのか分からないのですけど?」リリスの言葉を聞いた女性は、警戒したようにこちらを警戒していたのである。

俺とリリスが向かった先にあった村は、とても貧相な村で、多くの人間と獣人の村が存在していたのだった。この村にたどり着いた俺たちは、村人に事情を話し、この国に訪れた理由を伝えたのだ。

「私達、実はある人を探しにきたの」

「その人の名前は教えてもらうことはできるかな? 」俺の言葉に村の村長らしき人物はそう言った。俺はその言葉に答えるように名前を告げたのだ。すると村人は、俺の伝えた名前の人物に心当たりがあったのかすぐにその場所に案内してくれた。

そして俺はその場所に向かって歩いている途中、俺の隣にいた獣人の娘である猫人が口を開いたのである。

俺は彼女の問いかけに答える形で説明をしていく。

そして彼女に対してこう尋ねた。「もしかしてミケラルドを知っているのかい?」俺がそう尋ねると彼女は驚いた顔をしていた。

「もしかして私の知り合いのお友達さんですか!?」彼女は嬉しそうな笑顔でそんな言葉を返してくる。

「ああ、そうだよ、俺の友人なんだ、今ここにいるはずだから呼んでくるといいと思うんだけどどうだろう、少し待っててもらえれば連れてくることが出来るんだがどうだろうか?」すると猫人の娘の女の子はとても嬉しそうな表情で返事をしてくれる。

俺は、彼女にその友人を呼んでいる間、村の様子を見学させてもらってもいいか許可を取り、俺の申し出を喜んでくれた。この村の人たちは俺の事を知らないらしく、魔族の国に住む人間はみんな優しいというイメージがあるようだった。だから俺に対しても普通に接してくれ、この国の現状などを色々教えてくれたのである。俺の知っている限りのことは伝えておこうと思った。この村にいる人間は皆、俺の大切な仲間だと思っているからである。そんな時である。

一人の男の声が俺とミケの元に近づいて来たのであった。

そして彼は、その男がミケラルドの師匠だという事を教えてくれたのである。俺はすぐに、彼がこの国に滞在している事を確認し、その男に会いに行ったのだった。すると男は俺にこう話しかけてきた。

その話によると男は、ミケラルドの剣技の師で、彼よりも実力が上であとのことらしいが、彼の実力がどのくらいのものなのか気になっていた俺は、彼に模擬戦を申し出た。すると彼は快く承諾をしてくれ、場所を移すことにした。そして俺とミケラルドが戦った事のない場所で俺と男は戦う事になったのである。俺が、木刀で攻撃を仕掛けると相手も同じく木でできた剣を取り出し応対をしてきたのだ。そして俺は相手が本職の剣士でない事が分かった。というのもこの世界では、剣術を扱える人間はかなり少なく貴重な存在でしかないからだ。だからこそこの世界に転生し、俺が剣術を学んだ時にはかなり衝撃を受けた。

この世界でもそれなりにレベルの高い技術を習得したつもりではあったが、やはり元の世界に比べると圧倒的に経験値が少なかったのでそこまでの力は持っていない事は事実である。だからと言って俺が簡単に倒せるほどの実力ではないので、その点を注意する必要があった。そしてこの男との模擬戦を終わらせた俺は、この男を自分の弟子にしたのであった。するとその男の名は【バルバロッサ】と名乗り、俺はこの国に来て最初に知り合ったこの男が、魔族と敵対する組織に所属している人間だということを知った。この村の近くに存在する町を襲撃させた組織の人間だと知り、なぜこのような人間がこの村に来ているのかという事を不思議に思うも、その理由を知るにはこの村にしばらく滞在し、情報を集めるのがいいだろうと判断する。そして、この男が俺の仲間になりたいと申し出た時に、俺はこの男が俺が求めていた実力の持ち主かもしれないと思い、俺の弟子として受け入れることにする。俺は、この世界で、俺が持っているスキル以外の能力で、戦闘に適した能力を一つでも身に付けたいと以前から考えており、俺はミケラルドのステータスを見させてもらったが俺の持つ固有能力は、この世界で使えるものではなかったのだ。そこで俺はこの世界で、俺と同じ世界の出身というこの男が、もし仮に固有能力を持つとすればそれはどんなものなのだろうと興味を持ち始める。俺には想像できなかった。俺の固有技能とは全く異なった効果を持つ能力をこの男は持つのではないかと思ったのだ。この男の力を見極めてみたいと思ったので俺はこの男を連れて魔王城に戻る事にする。そして、俺がこれから何のために動くべきか考えるきっかけとなるのだった。

僕は、魔族の中でも珍しい黒髪であり、人間と外見上大差無い姿で存在しているため、魔族の中では目立つ存在であるのだが、僕の容姿は他の種族の人間たちから見ても非常に美しく見えるようで魔族だからということで恐れられることは無いようだ。まぁ当然といえば当然なのであるのだが。僕の姿形だけを見て、他の魔族のように恐怖心を抱くなんてことはあり得ないからなのである。それに、人間たちの中に紛れ込んでいても誰も怪しむことは無く、むしろ歓迎されてしまう程なのである。

しかし魔族の国の外から訪れた人間の冒険者たちの中には、魔族は人間に仇なす種族であるため、そのようなことをしてはいけないということを徹底させている人たちがいるのである。

その冒険者たちの話を聞いていて思ったことが、彼らはこの国の魔族の国の住民に酷い目にあわされたという話をよく聞いていたのだ。しかし僕はこの魔族の国にやって来た時から今までにそういった事件は一度も起きたことがないという事実を知り、一体この国で起きている問題はどういうものなのだということに興味を持ったのである。しかし魔族の国に暮らしている住民たちからはそういった問題など全く感じなかった。つまり、魔族の国の住民にとっては問題の無いことであるのだと考えることも出来る。ただそれを考えるには何か理由がありそうだとも感じるのだった。もしかしたらそういった問題がこの国の中で解決されていないのであればそれをなんとかしてやろうと考えていたのだ。そして僕にはどうしても許せない出来事が起こってしまった。そう。人間の少女を奴隷商の連中が攫ったのである。それも複数名の商人たちによってだ。

人間の奴隷市場が存在するとの噂を以前、この国の大臣が言っていたことを思い出しながらそのことを思い出したのである。そのことがあってかこの国を訪れる者たちはその噂をあまり信用していないように思える。なぜなら、人間の国は魔族の国と違い治安の良いところとして知られているからである。そのため魔族の国がそういったものを認めていないことは周知の事実なのである。それにそういった行為を行った場合この国への入国が禁止されることになるだろうし、その国の魔族の住民からの印象を著しく損なうことになる。そういったことから考えてもその可能性は皆無に等しいと言える。

だがしかし、この国の国民たちはそのことに関してはほとんど信じていないようだった。そのため人間の国と魔族の国の境界付近に住んでいる人々は警戒を強め、いつ魔族の国に入り込まれても大丈夫なことができるように準備を進めている。

人間の国には多くの魔族の子どもたちが存在している。そしてその殆どが奴隷として扱われている。その子どもたちの多くはまだ年端の行かない子供ばかりである。そのことに憤慨した僕は人間たちに連れ去られてしまった子どもたちを救出することを決意する。もちろんこの国の王の許可は貰っている。そしてその許可が出たということは今回の事件は相当なものだと判断されるわけで、この事件を放置すれば後々厄介なことを引き起こす可能性が高いと判断されたのだと思うのだ。そのため僕は一刻も早く事件の黒幕を見つける必要がある。そうしなければいずれまた同じような事件が発生する可能性が非常に高いと考えられるので早急に対応しなければならないと感じたのである。そして今回の事件を解決するための糸口が見つかりそうだと思っていた矢先の出来事が起きた。そう、僕の師匠でもあるバルバロッサさんを僕が助けに行くことになったのであります。

魔族の国からそれほど離れてはおらず、魔族の国と隣接されている場所に存在し、魔族の国から訪れる人々がまず最初に行くであろう村から更に北にある街に師匠は連れて行かれたという情報を部下たちの一人から聞いた僕はすぐにその場所に向かうことを決めたのであった。

僕とミケラルドさんは一緒に行動をすることになった。僕にはこのミケラルドさんの実力が全く分からない為少し怖い気持ちがあったがそれでもミケラルドさんの実力にとても興味を持っている自分も存在したのだ。

そしてミケラルドさんの背中を追いかける形で移動を始めたのだがその途中、僕たちが向かっている道中でミケラルドさんはとても優しい人なんだなと感じるようになったのだったのだ。

「あーそういえば、君の名前は?」唐突ではあったが彼は私の名前を聞くために私に向かって問いかけて来たのだ私は名前を聞かれることが無かったせいで名前を言うタイミングを失っていたので、名前を彼に伝えた後に私の自己紹介をする。

「えっと、私はアリサと言います」

すると彼はその言葉を聞いて少し困り気味な表情を見せながら私の顔をじっと見つめてきたのでその表情から察することが出来そうな気がしていたのだが彼が口を開いた時に彼が言おうとしていることはなんとなく分かっていた。おそらくこの人は、この国では私が本来どのような見た目をしているのかを知らないという事が予想出来たのである。なので彼はこの国についてあまり詳しくないという事が推測できてしまうのであった。そのことも踏まえて彼は私のことをどう思っているんだろうと疑問が浮かんできたのであった。もしかして、魔族だと疑っているのではないかと不安に思いながら彼にその事を話してみると、その事を知らなかったようで、彼がミケラルドという名前で冒険者であることを教えてくれたことで、彼も普通の人であると認識してくれていたようである。そしてミケラルドと名乗った彼の正体を聞こうと思って話しかけようとするとその前にミケラルドさんの方から話してくれたのである。それは彼の師匠のことだということが分かった。しかし彼の言う事は真実では無いと思う。確かにミケラルドと名乗る男は剣技がかなり高いレベルのもので、魔族ではない人間にしては高いレベルの持ち主だということが見て取れる。それに剣の扱いも相当なものだろうし魔法の技術に関してもかなり高いものがあるということが分かる。そしてミケラルドという名前には聞き覚えがあった。かつて魔王軍の幹部の中に同じ名前の男が居たはずだ。それは今現在勇者と呼ばれている存在と同じ名前であるという事は間違いないのかもしれない。しかし、今の彼の行動を見る限りでは魔王軍に所属している様子はなく本当にただの一般人にしか見えなかったために安心することができた。

しかしそんな事を考えていたその時だった。いきなり私たちの前に魔物が現れたのである。その数はおよそ百体ほど。そしてその中にはレベル30を超えているものも存在しており、かなりの強敵揃いといった状況だったのである。その状況を見た私たちは戦闘体制に入ったが、正直この状況はかなりマズイと言わざるを得ないような状況であったと感じるのであった。この世界において、魔族、人間問わずに、最も危険な相手といえば、人間に害をなす魔獣である。魔獣の実力というのは、基本的に、その強さに見合った経験を積んでいることが多いためかなり強力な個体が多い。そして今回はその中に人間が混じった集団であったため、余計に戦いが面倒になったというのが本音である。

ミケラルドの奴めが、なぜここに来たいと言ったのか、その理由が分かったような気になる。あいつの目的は間違いなくこやつらの始末であろう。しかしこやつは人間じゃぞ。それもまだまだ年若い小僧のようだ。それならば、何故この男を助けた?わしにはそれが分からん。ただ、ここで戦っても、恐らく勝算は低いであろうことは間違いないだろう。そしてこの男の力を借りたところで勝つのは難しいとしか考えられなかったのである。それなのにこの男は何故この場に留まり続ける選択を取ったのか。わしにはわからんかった。しかしこやつの実力だけはしっかりと確かめておく必要があったんじゃ。

その男の戦い方は凄まじいものだった。まずはあの数の魔物に対して真正面から突っ込んでいった。その動きだけでその男の力を見抜くことが出来るというものじゃったよ。

そしてその後の事も信じられぬことであった。あれだけの数をたった一人で片付けるとは。

その光景を目の当たりにした瞬間、自分の中に芽生えていた男への恐怖心は消え去っており、その男のことを信じようと思い始めるのであった。

俺は、魔族と人間の争いを止めたいという強い意志を持っていた。魔族も、人間も共に平和な世界で生きられる世の中にしたかったためである。その意思がある限りは、魔族であるということを打ち明けることはしないつもりだ。そして、人間にも悪い人が居るということは俺自身、嫌と言う程体験してきたことである。だからといって魔族全てが悪という訳ではないのだ。それこそ、種族によって様々な考え方や捉え方が存在するものだと考えているからだ。その考えを元に考えた結果がこの結論に至った訳だ。まぁそもそも人間と魔族の争いについてはこの国でも度々話題になってることであり、俺も何度か耳にしたことはある。だがしかし、俺自身がこの国の魔族たちと関わっていく内に、魔族はやはり悪人ばかりではないのだと思ったのである。魔族の国の王の側近であるバルバロッサも実は人間の国の出身であり、そのことは以前出会った時から知っていることだったのだ。バルバロッサの過去に何があり、どうして人間を嫌うようになってしまったかということまではまだ知ることは出来なかったのだが。とにかくこの国の王とバルバロッサの二人は互いに信頼関係を築き合っている間柄なのだ。そのため、この国の中で戦争を起こすのは明らかにおかしな話だと思えてならなかった。そしてこの国は人間にとって良いところでもあるためできればそのようなことをしてほしくないとさえ思ったくらいだ。

そう考えている時、突如目の前に現れた謎の人物、それがミケラルドという人物でその実力は底知れないものを感じるのであった。一体こいつはどこまでの化け物なのだろうかと考えてしまったほどである。それに先程の圧倒的なまでの力量差を身にしみて実感させられていたからなのか体が小刻みに震えてしまっていたのだ。だがそんな時だった。ミケラルドは急にこの場の空気を変えるかのように笑顔を見せ始め、僕に向かって言った言葉、それが僕を救い出す言葉だったのだ――。

そして、彼は突然現れた魔物たちを次々と倒していった。その戦い方は圧巻であり、まさに一騎当千と言えるほどの強さを誇っていたのだった。

「うむ、ミケラルドとアリサとかいうお主はここを任せても大丈夫なのではないか?」と、その言葉を聞いていたバルバロスが急にミケラルドと僕に話しかけてきたのだ。その言葉で僕は正気に返ることができたのである。そう僕はこれからバルバロッサと共にこの国の王に会うことになっているのだ。その目的は勿論バルバロスが人間側に付くということでその許可を得るためなのである。その目的を達成するためだけに僕はミケラルドと一緒に行動することを決めてここまで付いて来たというわけである。だからこそここで死ぬわけにはいかない。この命を懸けてでもバルバロッサを無事に城へと連れて帰らなければならないのである。

そして、バルバロッサが僕たちに声を掛けてから数秒後、大量の魔法が放たれ魔物たちを一気に蹴散らしていくのだった。

俺たちはミケラルドさんに言われた通りにこの場所を仲間たちに任せることを決めその場から離れていくことになった。この場での戦闘はどう考えてもこちら側が不利であると判断しての行動であった。そうしなければ多くの仲間達が無駄に犠牲になるだけとなってしまう可能性があったからである。ミケラルドさんの実力は、魔族と渡り合えるほどの力を持っていると判断できるため僕たちにとってはこれ以上にない頼りになる味方といえたのだ。そしてその頼もしい存在であるミケラルドさんの指示通りに移動を開始していた。移動をしている途中にミケラルドさんから僕に話しかけてきたのだ。

「そういえばアリサちゃんってどんな種族の人なの?」と、僕に向かって唐突に疑問を投げかけてきたのである。確かにミケラルドさんなら僕の見た目でわかるだろうなと思った僕は、自分が本来人間ではなく魔族であることをミケラルドさんに伝える。するとミケラルドさんはその答えを聞くと、すぐに理解をしたようで、「あーなるほどね」と一言呟きそのまま黙り込んだ。その後暫くの間会話をすることがなかったので僕は沈黙に耐え切れずに口を開いたのだった。その口を開いた言葉がまさかあんなことを口走ってしまうなんて思いもしませんでした。

それからミケラルドは、アリサの言葉を聞いて困り気味の表情を見せていたのである。そしてそんな顔を見たことでアリサはこの男に嫌われたくないという感情が湧いてしまいどうにかこの男の信頼を得るためにも自分が出来ることはなんだろうと思考を回転させた結果、この男は剣技のレベルが高いことを思い出し剣で勝負を申し込むことにした。そして結果はなんとアリサが勝利するのであった。そのことでミケラルドが自分にも教えてほしいとお願いしてくるもんだから私は焦った。しかし、そのことが嬉しくてつい承諾してしまったのである。

その後はミケラルドさんから剣の扱いに関して質問されたけど私は、剣に関してはそこまで詳しいわけではなくむしろ初心者の方でそれほど剣について詳しくないことを伝えてしまう。そのことについて私は申し訳なく感じていたんだけど、それに対してミケラルドさんは怒るようなこともなく、剣に関する説明を始めてくれた。

そしてその話は私の心を魅了したと言ってもいいくらいで剣の魅力について語りだしていた。その話が楽しくもあり、剣についての話をしている時のミケラルドさんは本当に活きいきとしていた。その姿を見れるだけでも私の心が弾んでしまうほどであった。そのことからミケラルドさんも私と同じように剣が好きなんだと分かるのであった。そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまい結局はミケラルドさんの剣術指南を受けられる機会を逃してしまった。

しかし、その時に気になることがあった。それは私が剣の腕を見てもらう前に、魔族であるということを伝えたはずなのにそのことについてはまるで気にかけてない様子だったことである。それどころか、私に剣技の指導をするという話を持ち掛けてくるなど、ミケラルドという人物は、魔族に対する偏見を持っていないのか、もしくは、人間と変わらない存在として接してくれるのではないかと少し期待してしまう。だが、まだ会って一日と経っていない相手だ、そうやすやすとその人の性格を読み取ることなどできないと改めて考えるとこの考えを一旦頭の中から消し去ることにするのであった。そしてミケラルドと別れると再びバルバロッサと行動を共にした。

俺らはライトと別れ、しばらく進んだ所で魔族たちの集団と鉢合わせたのだ。その集団を率いているのは一人の若い魔族だった。俺はそいつを見てどこか違和感を感じたのと同時に既視感を覚えたのであった。

そして俺は、この集団がどこから来たのか聞くためにまずは挨拶を交わしたのである。俺の目の前にいたのは魔王の側近でありこの国でもかなりの実力の持ち主とされているバルバロスだったのだ。そのバルバロスは、何故か人間の国の王女を連れており、しかも王女はかなり疲弊しているように見えた。その理由も俺には見当がついたため敢えて何も言わずにいたのだ。だがバルバロスは何かを言いかけていたため俺は耳を傾けることにしてみた。その内容は俺も考えていた事と同じものだったのである。

そこで俺も人間側の戦力に加わりたいと言う申し出に驚きつつも納得する部分が多くありそれならばと思い協力することを告げたのだった。そして、人間側は現在劣勢に立たされているとの情報を得ていたため俺は急いでその場所へと向かうことに決め、この王都に存在する勇者に俺も加勢したいと言う旨を伝えると、この場をライトとミケラルドに任せることにしたのである。俺がこの二人に信頼を置くことができたからだ。そして、その二人が俺よりも強く信頼のおける人物であることもわかった上でのことである。そしてバルバロッサは俺のその考えに賛成し共に戦おうとも提案してくれたのだ。だが俺にはすでに守るべき人たちがいるため、バルバロッサに断りを入れるが、それでも構わぬと言い、その考えに賛同してくれるとのことだった。だが俺も譲れないものがあり、その話し合いの結果お互い妥協する形で話をまとめることが出来た。

そして俺とバルバロッサはライトとミケラルドにこの国を任せた後王城の方へ向かうことにしたのだ。だがその時のバルバロッサの顔が、どこか楽しげだったのは何故なのだろうかという疑問が残ったまま、バルバロッサの後を追うようにして移動するのであった。

僕はミケラルドとバルバロッサを見送った後アリサと戦闘を始めたのである。アリサの動きは速く、一撃一撃が的確に僕を狙ってくるような鋭い攻撃ばかりでとてもじゃなかったけど防ぐので手一杯になってしまっていたのだ。だけど、このままではダメだと、そう思った僕は意を決して魔法をアリサに放とうとするが、どうやらこの辺りには、僕が得意とする氷魔法を無力化するような魔法の障壁が張り巡らされていたようで、魔法を使うことを禁じられたのである。

魔法を使うことが出来ないのであれば直接攻撃をしてみるも僕の動きも読まれていて上手く避けられてしまう。僕が魔法が使えなければ身体能力強化などのスキルを使って戦うことになるのだがそれが通用しなかった時点で勝敗は決してしまったのだ。

それから数分後には僕は地面に膝をつけてしまい立ち上がれなくなっていた。

「これで、終わりです。ありがとうございましたミケラルドさん」と、アリサは笑顔で言う。その言葉を最後に僕に近付いて来るアリサは剣を抜くと僕にとどめを刺そうとした時だった――。

「待ちな!その子は殺しちゃいけない!」と声を荒げながらアリサに近づいていく人物が一人、そうそれはバルバロッサさんだった。

そしてバルバロッサさんの登場によって僕の意識は一瞬のうちに現実に引き戻され自分の置かれてる状況を把握するのである。

僕とアリサさんが今いる場所は戦場。そして目の前にいるのは僕を殺そうとしたアリサさん。この状況で僕たちが生き残るための最善策は、僕の全力を以て目の前の人物を倒す以外にないのである。そしてその手段はただ一つ。そう、この力を解放することだ。僕は自身の体に纏っている魔力に限界突破を発動させていくのであった。それと同時に僕の体から黒いオーラのようなものが見え始める。それを見た周囲の兵士たちが動揺を見せるがそんなことは関係ない。なぜならこの力に飲み込まれればこの場で誰一人生き残れなくなるからである。

だから今はそんなことは気にせずに、この力をコントロールできるようにならなければならないと、そう思うのであった。そう、この力がどれほどのモノなのか僕自身わからない。もしかしたらとんでもない能力が備わっていて、もしかしたらこれを使えばどんな相手にも負けることはないかもしれない。だが、それはあくまでももしかしたらの話だ。

この力が完全に僕の意のままに扱えるようになるまでどれだけの時間が必要かわからない以上は軽率に使用出来るものではない。それにまだ使いこなす自信がないのも理由の一つである。そのため僕は常に冷静でいなきゃいけないと心に決めたのである。

「さぁここから本番だ、覚悟はいいな」僕は、自分の中にある力を最大限に引き出した。そうしなければ僕はきっとここで終わってしまうと思ったからだ。

そして、僕の中で最大限の力を引き出した。その力は計り知れないものとなっていたのは事実だったのだろう。僕はその感覚に恐怖さえ感じてしまっていた。だがその反面心は踊っていた。自分がこんなにも大きな存在になれるのかという興奮を抑えられなかった。だがその気持ちに振り回されているようじゃあ、本当に勝機を見失ってしまうと考えた。僕は、自分に言い聞かせるようにして気持ちを落ち着かせるのである。そしてその状態を維持しつつ僕はアリサさんの隙を伺うのであった。そして数分間に及ぶ沈黙は、僕の集中力と思考力を大きく削ぎ取っていった。しかしアリサは未だに動き出す素振りを見せないため、僕も攻めに転じることができずにいた。だがそれもほんの数秒の間だけだった。アリサは突如地面を蹴ったのだ。それはもう爆発的な速度であり僕は対応できなかったのである。

それからアリサの攻撃が始まった。剣による連撃から始まり、魔法、そして体術、その全てが僕を上回るほど洗練されており無駄のない動きだった。

だがそれは、全て避けることに成功したのである。そして、アリサの息が乱れ始めたのを確認すると僕は一気に勝負を決めるべく反撃に出たのである。

だがそれは、失敗に終わった。僕の持つ剣の切っ先がアリサの首筋を捉えたと思ったのである。だがそれは錯覚に過ぎなかったのだ。僕は、いつの間にか吹き飛ばされており背中を強く打ちつけてしまった。そして僕はそのまま起き上がることが出来なかった。

(くそッ何が起こったっていうんだ!?確かに僕の刃は確実に奴の首を捕らえたはずなのに、どうして僕の攻撃は当たらないどころか逆にカウンターをくらうことになってしまったというんだ)と、心の中では怒りを覚えつつもそれを表に出さず心を沈めていたのである。するとそこにミケラルドの声が届いたのであった。それはミケラルドから放たれた一言、そして僕はようやく気付いたのである。ミケラルドが言おうとしていたことがなんだったのか。それは、アリサという少女は強いと、そういうことだったのだ。しかし僕もそんなことを言われなくてもわかってた。だが僕はアリサのスピードに完全に見失い、ミケラルドも僕も見失う程の速度で動いていたというのだ。その事にミケラルド自身も驚いておりそして悔しそうでもあったのだ。つまり、ミケラルドもまだこの力を使いこなせていないということでもあったのだ。だからこそ僕を庇いに動けなかったということでもある。そしてこの現状においての最善の策としては、ミケラルドと共に戦うということなのだが、この力を制御するには時間がかかるということ。そしてこの力を長時間行使することは体力が持たず死んでしまう可能性がある。だが、ミケラルドの実力があればアリサとまともに戦えるのではないかと思い至ると、僕は立ち上がり剣を構える。

そしてミケラルドも立ち上がると僕と同じタイミングで剣を構えたのだった。

(この力でアリサとミケラルドとやり合うのはまだ早すぎるな。だがそれでも僕は戦わなければならない。だってそうじゃないか?もし仮にミケラルドの実力をもってしてもアリサと戦うことが出来ないとしたら、この戦いはこの国が滅ぶ可能性が十分にあるのである。それだけは絶対に阻止しなければならない。ならば今できる最大限のことを行う。それしかないんだ)僕は、ミケラルドが何かを考え込んでいる間にもう一度だけチャンスを作るため再びアリサの元へ走り込んだ。だが今度は簡単に避けられてしまう。僕はそこで諦めず何度も斬りかかったが結果は変わらずであった。そこで僕はある事を思いつき、一度距離を開け、そこから大きく飛び上がった。

そしてそこで僕は大きく叫ぶように声を上げる。

「今だ!ミケラルドォ!!」と。そしてその掛け声を聞いたミケラルドがアリサに襲いかかるがこれもあっさりとかわされてしまう。そして僕とミケラルドは地面に落下し転がってしまったのである。僕はその瞬間を狙いアリサの背後に回り込もうとするもミケラルドは立ち上がろうとしている最中のため行動が起こせない。僕はミケラルドに攻撃を止めて回避するように伝えるがそれでもアリサは動こうとしなかったのだ。

(何故動かない。僕たちに警戒して身を固めているとしてもここまでの硬直状態になるのはおかしすぎる。もしかして罠か?だがミケラルドをこのままにはしておけない。ならやるしかねぇ!!アリサが僕たちを警戒している隙に攻撃を仕掛ける!そう、これはアリサにダメージを与えるためじゃない。ミケラルドが逃げるための時間稼ぎなんだ。そう思わせなければ僕たちの勝ちはない!)僕はアリサの背後から攻撃を仕掛けるフリをし、すぐさまミケラルドの元に駆け寄った。

そして次の瞬間――僕の体は浮き上がっていたのだ。その正体は風属性魔法の風圧操作であるのだが、僕はそれを知らないまま空高く舞い上げられてしまうのであった。

そして次に見た光景は、地平線まで見えてしまうほどの大穴が開いた王城の姿だった。

その景色を呆然と見ていたその時、後ろからの気配に気が付き咄嵯に前へ飛んで攻撃を何とか避けたもののそのまま地面に叩きつけられることになったのである。しかしすぐに追撃を仕掛けられ地面に横たわっていた僕はそれを避けることができなかった。それから僕は、地面で這いつくばる様にして剣を振るったが、アリサはその剣を手で受け止めたのである。

「これで終わりですね」と、微笑みながら僕に言ったのだ。

そしてアリサはそのまま、手に持っている剣に力を込め始めたので、僕は全力を振り絞りその場から逃れようとしたのだが既に遅かった。アリサの剣から魔力が流れ出ていることに気付いた時には僕はその魔力に体を侵食されていたのだった。その力に抵抗しようと魔力を体中に流してみたが全く効果はなく、次第に意識が薄れていった。

――そして最後に、アリサのその笑顔を視界に入れた後僕の目の前は完全に真っ暗になり意識を手放すのであった。

アリサさんと戦闘を終えた僕たちはすぐに国中を見回ることになったのである。まず僕が向かった先は、最初に僕が戦った兵士長の元である。彼はまだ死んでいなかったのだ。そして僕たちを見て驚愕していたが僕は彼に近づき、アリサに回復魔法を掛けさせた。その事で彼は、自分の傷が癒えたことに驚いていたが今は構っている暇などなかったのだ。だからそのまま僕は彼をつれて移動したのであった。

次に向かったのは戦場になっていた場所である。そこは悲惨なことになっていた。そして僕の仲間たちもその光景を目の当たりにして動揺を隠せなかった。

僕はそんな仲間達にこれから行う事を説明していった。すると仲間の殆どが難色を示した。それもそうだ。戦場になった場所に僕一人で行くなんて普通なら正気の沙汰ではないのである。だから僕の提案にみんなが躊躇していたのである。だがそんな中一人だけが賛同してくれたのだ。そう、僕の右腕である男、ラガスである。その言葉を聞いてみんなは納得せざるを得なかったのだ。その言葉で安心した僕は、アリサを連れてその現場に向かって行ったのである。

だがそこで見たものは酷いものであった。死体だらけで血の海が出来ていたのである。それはまさに戦争という言葉でしか表現出来ないくらいだった。僕はその状況を確認し終えると僕は、一人一人の状態確認を行ったのである。それは、この場に残された人たちの命を救うためだった。そしてその中で僕は、この人を見つけたのである。

そう、その人はバルガン砦の門番をしていた人物である。彼の状態は非常に悪く、生きているのが不思議なくらいの状況であり一刻を争う状況であった。

僕はその人の手を握り、自身の体に流れている生命力を少しづつ分け与えていたのだ。そして数分後、その人が目を開いたのである。その人物は、僕の方を見ながら口を開き「貴殿は何者ですか?」と言ったのである。それに対して僕は何も答えられなかった。なぜならそれは僕にもわからなかったからである。だが僕は確信を持って言うことができたのは、自分がミケラルドであることであると。すると、彼から「私を助けてくれたということは勇者の仲間か?それともミケラルドか?」と聞かれたので、僕は素直に「私はミケラルドです」と答えたのである。すると彼は驚きながらも僕の名前を聞くや否や頭を下げてきた。

「貴方がミケラルド殿か、どうか我が国をお救い下さい!」と必死に訴えて来たのである。それを僕は断った。僕が助けたいと思った人達はすでに救う事が出来たのだと説明したのである。その言葉を聞いた彼がどういう表情をしたのかは僕にはわからない。ただその後、この国の国王陛下が居る所を教えてくれと言うとその場所まで連れていってくれるとのことだった。僕はそれに甘えることにしたのだ。

だがそれは結果的に正解だったのだと直ぐにわかったのだった。そして、僕の前に現われたその男は見るだけで嫌悪感を覚える程だったのだ。その男とは、僕の予想ではおそらくこの国の最高権力者だと思われる存在、国王だったのだ。その見た目からわかる事は一つだけである。こいつはクズだ! そう思うと同時に僕は殺気を出していたのである。それは僕自身でも気づかぬうちに自然と出てたものだった。しかし、その気は一瞬にして消え失せたのである。理由は単純明快で僕の後ろに控えている人物が発するオーラに気圧されただけだったのである。そうそのオーラを出している人物こそが、この国に君臨している王族の人間なのである。そう考えるとこの場での戦闘になるかもしれないと思っていたがそれは、その人物の言葉によって防がれたのだ。その言葉は「ミケラルド様をご案内致します」というものだった。僕はそんなに簡単に信用しても大丈夫なのかと心配だったが、僕は黙ってついていくことにしたのである。

それから暫く歩いていると豪華な扉が見えてきて、そこに入る前に一度止められたのである。そうして僕だけ中に通されてその先にいるのは先程の王族だったのだ。そして僕は、なぜ自分だけここに通されのかを訊ねると、「貴方には知っておいてもらいたかっただけですよ」と言われたのである。そこで僕は疑問を持った。僕は今さっきこの世界に来たばかりなのに何を知っておきたかったのかということだった。だがその言葉を口に出すことは出来なかった。何故かというと目の前に居た男が突如僕に飛びかかってきたのである。咄嵯の判断により僕は、剣を引き抜きその攻撃を弾いたのである。そして僕は目の前にいる相手を見るとそこには、白髪混じりの中年の男性が立っていたのである。僕はその男の姿を見て驚愕し声を上げてしまうのであった。その反応を不思議に思った男は、首を傾げながら「どうしました?私が何者かは知っているはずですが、ミケラルドさん」と言い出したのである。そこで僕の頭に一つの可能性が浮かんだのである。いやむしろそれ以外の可能性を考えることが困難であったのだ。そう、僕は恐る恐るその可能性を確かめるため、その名前を言おうとしたがそのタイミングを逃さなかったのだ。そして、僕の質問に対してその男性は答えるのである。

「そう!私の名前は――――

そう!俺の本当の名前は バルガン である!俺はこの王国を影から支えている組織のトップである!! 」

そして僕はその言葉を信じられなかったのである。しかしここで僕は考え直さなければならない事があったのだ。それはこの人が僕が元の世界に戻るための協力者である可能性があるということである。

もしそれが嘘だとしても僕はこの人から情報を引き出す必要があったのである。しかしそれを確認する方法は一つしかないとこの時悟ってしまったのだ。それは「お前の目的は何だ?ミケラルド」という言葉を引き出させることだった。僕はその言葉が出るまでは下手に動くことは出来ないと思い慎重に事を運ぶことに決めたのである。だがしかし、そんなことは無駄だという事を僕はこの後知ることになったのである。

何故なら僕の体がいきなり吹き飛んだのだ。そう、その攻撃はアリサが僕を吹き飛ばしたのである。そして僕が起き上がろうとする前にアリサは僕に向かって攻撃を続けたのであった。だがその攻撃を全て受け切った後、僕はアリサに向かって「何をしているんですか!あなたは自分の仲間に剣を向けたんですよ!!」と怒りながら言ったのである。するとアリサは僕の方を見てこう言ったのだ。

『私の主はミケラルド様ただ一人です!ミケラルド様に攻撃を加えた者は全て排除いたしす!』

僕はアリサのその態度に困惑してしまっていた。僕はアリサに「その行動であなたは本当にいいと思っているのですか!?」

と僕は問うたがアリサは何も言わず僕に攻撃をしてくるだけであった。だがしかしアリサの攻撃はそこまで強くはなく、僕は避けることが出来たのである。そう僕はアリサと戦うことを躊躇していたのである。僕はこの場をどうにかして収めようと頭を働かせていたのだがその時アリサの後方で何かを詠唱しようとしている姿を見つけたのだ。僕はそれをさせまいと攻撃を仕掛けようとしたその時、目の前にいたアリサが消えたのである。僕はアリサがどこに行ったのかを確認しようとした時に僕の体は空中を舞っていた。僕はアリサの姿を見つけて驚愕した。なんとアリサは僕の体を蹴った後、そのまま上に跳び上がり上から僕に向かって攻撃をしかけてきたのである。僕は何とか体勢を立て直すことが出来、着地したアリサに向かって魔法を発動しようとしたその時、僕の背後からの攻撃を受けてしまったのである。そうそれは僕を攻撃してきた相手が放った魔力による攻撃であった。

その事に僕は驚き振り返ると僕の目の前には国王が立っていたのである。そして僕を見てニヤッと笑みを浮かべてこう言ったのだ。

「残念だったなぁ~、まさかあんな小娘にやられるとは思ってもみなかったぞ!あの小娘の攻撃はなかなか効くだろぉ?」

そう言われ僕は「あんたらは一体どういうつもりですか!」と聞くとまた国王は笑い出しこう言い始めたのである。

「そんなに怒んなよ、別に殺してるわけじゃないだろ? お前の仲間を傷つけたのは確かに悪いと思ってるがあいつは俺の命令に従っただけなんだぜ? まぁ少し痛かったと思うけど、そこは我慢しろよ。だが安心しな、あの女はすぐに助けてやる。だが、それは俺がミケラルドを捕まえた後だけどなっ!」

そして再び国王は姿を消したのだ。

だがその事は僕にとってチャンスだったのだ。僕はアリサが僕の後ろに立っている男に攻撃を仕掛けた時と同じ様に僕の後ろに現れた国王の腹を斬りつけたのだ。

そして僕は自分の腕の痺れが無くなった事で国王が斬撃を喰らっていない事がわかり安堵の息を漏らした。そうして僕は国王の方を振り向くと国王の首根っこを掴んだのだ。すると、僕に向かって後ろから一人の女性が走ってきたのである。

その女性はとても美しい容姿をしていた。その女性は、僕の方を見ながら僕の方へ近づいてきたのだ。そして、僕の近くまで来て僕を抱きしめたのだ。そうその女性の瞳は僕の記憶にもあった人物だったのである。そう、この人こそがこの国の王妃なのだ。だがしかし僕にとってはこの状況がまずかったのである。僕は先程、自分が勇者の仲間のミケラルドであることを伝えたばかりで、この国では僕の事を警戒対象として見ているかもしれないのである。だが、僕の考えとは違い、彼女は僕の事を知っていたらしく「勇者ミケラルド様、お待ちしておりました。貴方が私達の味方をして下さる事を!」と言ってくれたのであった。それに続けて僕は彼女に事情を聞くことにしたのだ。僕は彼女達に状況の説明を求めたのだ。僕としては何故このような状況になったのかを知りたかったからである。だが、僕の言葉を聞いて彼女が言った言葉は驚くべきものだった。そう彼女の口から発せられた言葉は、「申し訳ございません。私達は既に勇者殿の敵になっているのです」と、この言葉を聞いた僕は非常に混乱してしまったのである。何故ならば今僕達とこの王国の者達は敵対する関係になっていたからである。その理由についても彼女は詳しく話してくれた。その話しの内容を聞いた僕は正直呆気に取られてしまった。それはこの王国に蔓延る闇についてだったからだ。そしてその話は僕にとっても重要な情報でもあったのだ。なぜならそれはこの世界に転生してから一番の謎でもあったからだ。

「では貴方はこの国の闇についてどの程度知っていますか?」

僕は、彼女に尋ねたのだ。そうすると、僕が想像していなかった答えが返って来たのである。その返答に驚いたが、僕が一番驚かされたのはその言葉ではなく内容にあったのだ。その内容とは、この国には元々ミスリル鉱脈というものが存在していたのだというのだ。この世界の鉱石というと魔素が固形化したものだとされている。つまりこの国にあるのが普通の金属でありこの国がこの世界で一番優れている国であるというのはそういう事であったのだ。この国は魔素が豊富に溢れており他の国と比べてもその量が異常だったのである。そして、僕もこの話をどこか聞いたことがあったような気がすると思った瞬間、僕の中にある知識が頭に浮かんできたのである。そう、それは【鑑定眼】で見たときに頭に入ってきた情報の一部だったのである。

そしてその知識の中にはこの国の事も含まれていたのだ。その知識によればこの王国は過去にこの世界を危機から救ったとされているのである。その事は本にも書いてありその当時の王の名前が書かれていたのだ。だがしかしその事と僕とこの王国が敵対しているという事は繋げないと思っていたのである。だから僕がこの事を話すと彼女は、「この王国には代々受け継がれるある物があるのです」と言いだしたのである。そのあるものとは何かを訊ねても彼女は答えることはなく、代わりに僕の方をじっと見つめてくるのであった。

そしてその目線の意味に気がついた僕は先程の事を謝りながら剣を抜き彼女に斬りかかったのだ。しかし、その攻撃は受け止められたのである。そうこの人はただの女性ではなく騎士であるということを思い出したのである。そして僕は彼女に言うと、彼女は笑みを見せそしてその笑顔のまま僕に言ってくるのである。

「ミケラルド様がそのような事を言う必要などありません。私はミケラルド様になら殺されてもいいと思っているのですから」そう言った後で僕は後ろに吹き飛ばされてしまったのだ。彼女が放ったスキルは衝撃を発生させるものだったようで僕は地面に叩きつけられてしまうほど強力なものを受けた。そして僕が起き上がろうとする前に目の前に再び現れた彼女に追撃を受けるのを僕は避けることが出来ずに直撃を受けてしまったのである。彼女の手からは魔力が纏っておりそれで殴ってきたようである。しかしそれでも僕のレベルが高かったせいかそれほど痛みはなかった。

その後すぐに彼女は姿を消してしまい僕はアリサに助けを求めようと声をかけようとしたが既にアリサの姿が見えなかったのである。どうやら僕の声が聞こえなかったようだ。僕はとりあえず立ち上がって周囲を確認すると近くにいたライトが国王に何か話しかけていたのがわかったのである。そして僕はその事に興味があったので、その会話に聞き耳を立てることにし、二人にバレないように近づいたのだ。

僕は二人の話を盗み聞こうとしたのだがそこで僕の体が動かなかったのである。まるで金縛りにあったように体が硬直してしまい、動けなくなったのだ。

すると僕の横を通り抜けていった男が「ミケラルドさんが逃げようとしたら殺して構わないと言われていますので悪しからず。それと私の名はバルガンといいます。以後、お見知りおきを!」とそう言いながら僕の事を殴り飛ばして来たのである。僕はその攻撃が予想以上の威力だったことと、突然の事で反応できずそのまま気絶させられてしまったのだ。

だが、僕の攻撃が当たっていなかったことがわかっていても僕は攻撃をしてきたバルガンを許せなかった。そして僕を眠らせた張本人であるバルガスも僕は絶対に逃すつもりはないと決意し、目を覚まして僕は起き上がったのである。だがその時に僕の首にナイフが向けられている事に僕は驚き一瞬身動きが取れなくなってしまい、その間にまた僕は捕まってしまったのである。そう僕は両手を後ろで縛られ拘束された状態になってしまったのである。しかも今度は僕の仲間であるはずのタローも僕と同じようにされてしまっているのだ。そうしてタローと僕は別々の牢屋に入れこまれたのである。その事に僕は憤慨したのだ。するとそんな僕を待っていたかのように先程まで戦っていた国王とその仲間たちが現れたのである。僕はそんな国王に対して「あんたらの目的を教えろ!俺の仲間を傷付けたんだ、只じゃおかねえぞ!」と怒りながら言ったのだがそんな僕にライナスはニヤッとしながら「お前の質問は俺たちの目的だろ?」と言うのだ。

その事に僕は困惑しながらも国王にどういうことだ? と言ったのである。

「お前らは知るべきなんだ、本当の敵が誰かってな。ミケラルドは今ここで死んでもらう。そしてミケラルドを仲間にしたければまずはこの俺を殺すんだな。そうすりゃお前らも俺の敵になるだけだからな。」と、そう言ってから国王達はその場を後にしてしまったのである。

その言葉に僕もライラスも唖然としてしまった。そして国王たちがいなくなったあともしばらく僕らは何も言わずに沈黙したまま時間が過ぎていった。そうしてようやく僕たちは冷静さを取り戻した後、お互いに情報を共有したのであった。

それから僕たちの今後についての作戦を話しあったのである。だがその時、アリサに「どうしてそんな大事なことをもっと早く教えてくれなかったんですか!」と言われたのだ。そう言われても僕はこの国と敵対することになった経緯をあまり知らないから話すことが出来なかったのだ。

だが僕はこの時まだ知る由もなかったのだ、僕がこの世界で体験したこの世界の危機はこれだけではなかったのだということに

「俺の目的は魔王軍の幹部になること、そのための修行だ!そして魔王を倒すために俺が鍛えた力で強くなる必要がある!」

その言葉を聞いた俺達はかなり驚いてしまった。

「ちょ、待てよ! お前本当にミケラルドなのか?」とライトはそう言ったのだ。

「そういえばまだ俺のことを紹介して無かったな」

そして俺はこの世界の勇者であるライザルトに自己紹介したのだ。

「俺はミケラルド、元この国の王様だ」

俺がそう言うと勇者であるライザルトは信じられないという顔をしていたのである。

そして勇者であるライトがこう聞いてきたのだ。

「まさかミケラルド殿はこの国の勇者なのですか?」そう言われたとき俺は自分が何を言っているのか意味が分からなかった。勇者であるライザルトの質問になんと答えれば良いのか悩んだ挙句、「いや、違う、と思う」と言って誤魔化したのだ。だがライナは「この人は正真正銘のこの世界のミケラルドですよ!」と言ってきたのだ。その事について聞くとライナ曰く、この世界に召喚された際に【鑑定眼】というユニーククラスの力を得る事ができたそうだ。しかし、何故かそれは他の者では発動しないらしく俺が持っている能力である。【偽装】や【真実】などの特殊な能力をこの世界に来て初めて見ることが出来たのだ。だがそれはあくまで俺の固有スキルである【解析眼】の能力である【真偽判断】という鑑定眼と【神の目】という相手の嘘を見破ることが出来る【真偽】のスキルのおかげだと思うのだ。そして鑑定眼は、相手のステータスを見ることでその者の真意を確かめることができるらしいのだ。しかしこれは鑑定眼の派生系の効果であるらしくこの世界に来たことで新たに習得したのだと本人は言っていたのだ。

そう話しているうちにライナはどんどん話を進めていく。

そうして話している間に俺達の目的が一緒だということが分かったのだ。そして勇者が聖女を探しているのが本当だった事を知ったのだ。その理由についても教えてもらった。その理由というのが、この国で起こっている事件の解決のために勇者の力が必要なのだ。この国にはまだこの国にしか存在しない魔鉱石という鉱石があるのだという。そしてそれが関係していて今回起こった事件が起きているという。この魔鉱石は普通に採っても特に何も影響はなく問題なく採掘できるものなのだが稀に強力な武器を作る事が出来る素材に変化するものが出現することがあるのだという。そして今回の事件もその現象が起きたのではないかと思われるほど強力な剣がこの国に出現したのだという。そうその事に関して詳しく調べたところこの国が過去に危機に晒されていた時代があったということが判明した。そしてその原因を作った者が現在、この世界の脅威になりつつあるという。

そして勇者はその事を阻止するために旅に出なければならないと言っていたのだ。しかし勇者は、聖女がいないので一人だけで行けば死んでしまうというのだ。だからこの世界で一番強いと言われている聖女のいる国であるリーガル国に行きたいというのだ。そしてそこで聖女と出会い仲間にしなければならないと勇者は言っていたのだ。そうしなければ勇者は聖剣が使えないので戦うことも出来ないという。しかしそうなったとしてもこの国は滅びてしまうかもしれないと言う。この国が何故この世界で最も栄えていられるかというとミスリル鉱脈が存在しているからだ。だがそのミスリル鉱脈も昔には存在しなかったというのだ。そしてこの国は、かつてこの世界を滅ぼそうと画策している悪しき存在と戦ったのだ。しかしその時に多くの命が失われてしまったのだ。その戦いの後、生き残ったこの国の民は今の王となり、二度と悲劇を繰り返さない為に平和な国を目指したのである。

そうやってライナは色々と話をしてくれて、最後に自分の正体を教えてくれたのだ。そして、この国の王族には初代王の名前が入っているのだという。その名もミケラルド=レイドル。その名前から取った国名がレイディア王国だったという。そしてこの国は初代王がこの世界で初めて魔法を使った地でもあった。つまり魔法が生まれた場所でもあり、最初にこの世界に現れた場所でもある。そしてこの場所で初代王はある女性に出会ったのである。彼女はこの世界でたった一人で生きてきたのだ。

その事を話すライナはどこか悲しそうに見えていたのだ。そして彼女の生い立ちについてはあまり聞かない方がいいと思ったのである。だがそんなライナの話を聞いて、勇者として呼ばれたのなら何故聖剣に選ばれなかったのだろうかと考えた。しかし、ライナによると聖属性のスキルを持っていることが聖女になる条件だと言っている。だがライトには全くそのようなスキルはないらしい。だがライトの固有スキルの中に光の聖術というものがあるというのである。そうしてライナが言った言葉に俺は衝撃を受けてしまう。

そうしてライナは自分の持つ聖属性と闇以外の全属性をライトに見せたのだ。そしてライナの使う光属性の上級技をライトは使えるようになったのだ。どうもライナがライトに伝えたことはライトがこの世界に来る前の記憶を思い出したというのが正しいのだ。その事を伝えたらライラが急に「私にもミケラルドさんのことを教えてください!」と言ってきたのだ。そうしてライナはライラとライナが俺とどういう関係にあるのかを二人に説明しはじめたのだ。

俺も最初は黙って聞いていたのだが、ライラと会った時と別れた後の話になったときに突然、体が動かなくなってしまったのである。そうそれはまるで何かに抑えつけられたように動けなくなったのである。だがそれも少しの間だけでその後すぐに体の拘束を解かれたのだ。そうして僕は今の状況に困惑していたのである。そして僕はとりあえず状況を整理する為にあることを思い出す事にした。そして僕はまず目の前にいるタローを縛っていた縄を外してからタローに「ここは危険だから逃げるぞ!」と言い、僕は走り出したのだが何故かライラスが僕たちを追って来たのである。僕はなぜ追ってきた? と思っていた。

「どうして追いかけてくるんですか?」

僕はそうライラスに聞いてみたのだ。するとライラスはこう答えたのだ。

「そりゃ、ミケラルドに俺を殺してもらうために決まっているだろ?」

そんなライラスの言葉に僕は思わず「何だって!」と驚いてしまったのだ。そしてライナスは「お前もこいつを殺すんだろう?」と俺に言ってきたのである。そう聞かれた時に僕は「確かにライナスも殺す気だけど、あなたもですか?」と聞いたのだ。すると「ああそうだ!俺はこいつに騙されてたんだよ。この世界での俺の人生なんて全部無駄なものだったってことだ!だから俺はこいつもミケラルド、お前も殺してこの世界のミケラルドの魂を手に入れて俺の新しい人生を送る事に決めたんだ!」と興奮気味に言ってきたのだ。その事を聞いていた僕たちはかなり困惑していたのである。

そしてライナは「お前らも早く来いよ!もうこの世界の俺も用済みなんだからよ!」と、そしてライトも「ライナスの言っている事が嘘ではない。それに私はミケラルドの魂を喰えば、魔王になれるというのだ。」そう言いだしたのである。そんなことを言われた僕とライラスがそんな事を言うのかと思ってライトに質問をしたのだ。「どうしてそんなことをするんだ!」と、その質問に対してライナは「私の目的は魔王になること、そのための修行をするのと、魔王軍に入って幹部になりたい!」と答えたのである。その返答を聞いたライトが「やはりミケラルドの体を手に入れるとそう言うことになるんだな!まぁそういう事だ!この俺の体をくれてやるよ!」と言ったのだ。その発言を聞いたライトが「お前は魔王にでもなりたいと言うつもりか?」と聞くと、ライナは「俺の夢は魔王になって、世界を滅ぼせるだけの力を持つ最強の魔物になることだよ!そのためにミケラルド、お前を殺してこの俺がお前の体を使うのさ!そしてミケラルド、お前はこの俺の手で始末をつけてやるよ」と言ってきたのだ。

そしてライナはライトと僕のところまでやってきて、戦闘が始まったのである。だがしかし、その戦闘能力が明らかに違っていたのである。それは単純な力や素早さが上がっているだけではなく、身体能力や反射神経が向上されているのが目視で分かるほどになっていたのである。ライラスがライトの攻撃に全く対処できていないのが目に見てわかるようになっていたのだ。そして、そんな攻撃を受けてダメージを受けるライトを見て「こんなの、ミケラルドじゃない!」とライラが言うと、ライナはそれに同意して「この世界のミケラルドの肉体を手に入れたのは正解でしたね。これならばあの勇者を倒すことが出来ます。ですが問題は、ミケラルドの方ですよね。私の見立てだと、あれだけの強さの人間が勇者に簡単に殺されるとは思えないのですよね。」と俺に向かって言ってきたのだ。それに対してライラは「そうですね、ミケラルドさんは、とても優しい人で私たちの味方ですよ!」と笑顔で言ったのだ。

それを聞いたライナはライナの方をみて、「お前は何が目的だ。ミケラルドの仲間にしては随分態度が違うみたいだが。まあ、いいでしょう。貴方がミケラルドに危害を加えようとしていないことはなんとなくわかりました。それよりも問題なのは、あの勇者がこの世界に干渉しようとしていることです。奴がここにいる以上は、ミケラルドはここには帰ってきません。そして、この世界のミケラルドを殺したとしても恐らくは戻ってくる事は無いと思います。そして私がミケラルドを確実に葬り去るために出来る事はただ一つ、それは勇者を先に倒してしまう事でしょう。」と言ってきたのだ。その言葉を聞いて、ライラが反論しようとしていたがそれを止めたのである。そして「なるほど。ではその勇者が何処に居るのか、教えてくれないか?勇者を倒しに行く必要があるからな。それと勇者に会った後はどうするつもりなのか教えて欲しい。もし勇者と戦って負けた後にこの世界に来てしまうような事があれば大変な事になるだろう?」

ライナの答えは勇者と戦うのは構わないけど勇者に勝てる保証が無いと言っていたのである。だがその後にライナの本当の狙いを聞くと、自分が魔王になる為の準備をしている最中だから邪魔されたくないというのが本心だというのが分かったのである。そしてその後は勇者に会わないとわからないと言うのだ。

それからライトの目的も聞き出したが、この勇者を倒して世界の脅威になる存在になると、それだけ言って終わったのである。だがその後すぐにライトは姿を消したのだ。

ライナもすぐにライトを追いかけていったのだ。そして僕たちもライトたちの後を追った。だが、僕とライラスとライガも、ライナたちがどこに向かったか分からず追いつく事も出来ずそのまま分かれ道がある所まで移動している時に僕は、ライトの事について思い出したことがあったのである。それはライトがライラスに「俺はミケラルドの肉体を手に入れて最強を目指す!」と宣言した事なのだ。ライトは「この体の所有権は、ライナス、お前に譲る。ただし、俺はミケラルドとしてこの世界のミケラルドが生きている間は、ライナスには手を出さないでおく。だから、その間にお前も修行して俺に対抗できるだけの力を身に付けろ。そして俺を殺す覚悟が出来たらいつでも俺の元にくればいい。その時までに俺が死んでいるなら、お前にはミケラルドの体を譲ろう。そしてお前が死んだ時も俺はお前を喰う。それで、この世界の俺を喰うことが無くなった時は改めて俺の敵になる。それが条件だ!」と言っていた事を思い出したのだ。

僕はライトがライラスがライトを騙していたことを知っているんじゃないかと思ったのだ。

ライラスはライトが自分達に嘘をついて協力してくれていたと思っていたからライトはライトがライトに殺されないように注意を呼び掛けていたんじゃないだろうか?そしてライトが僕に「この体の主導権を譲る」と言ったときに、ライトがライトに対して「この体の所有権は、ライナス、お前に譲ってやるが、お前を殺さないとこの世界にいるミケラルドが俺を殺すと脅してきた場合はお前を殺させてもらう!」と言っていたことを話したらライラもそれに同意したのである。そして「ミケラルドさんがそんな事を言わなかったとしても、ライトさんを騙して殺そうとしていたのだから私達を騙していた時点で既に許せない事なんですよ!だから私もミケラルドさんに同意するわ!それに、今ライトさんの事を話してもきっと、信じてもらえないかもしれないし、ミケラルドさんもミケラルドさんだよ!なんであんな優しいライト君に騙されたのかな!ライト君は、ずっと自分の事を犠牲にしてまで他の人を優先させて助けようとする子なのに。ミケラルド君とはまるで別人のようになってるし!それにミケラルド君の優しさと、ライト君の優しさはまるで違うんだから!」と怒りながら言っていたのである。僕は「ごめんなさい。」と謝ったがライラに謝って欲しいわけじゃないと言われたのだ。

「でもね、ライナくんに酷い事されてライラスちゃんとライナちゃんが悲しんでるのはわかっているのよ?ライト君はいつも皆に優しかったからね。だからこそ余計に怒っちゃってるのよ?でもね、ライト君が私達に黙ってミケラルドの魂を持って行ってしまった事は、もう仕方ないと諦めて、今はライト君を信じてあげて待とう?そしたらミケさんにも会うことが出来るかも知れないでしょ?」そう言われて僕も納得することにしたのだがそれでも不安が消えなかった。だけどそのあとすぐにまた新たな出来事が起こってしまったため僕は思考することが出来なかったのである。それは、目の前に現れた謎の女性が現れたことによって発生したのであった。その女性は、いきなり僕の所に飛んできて、僕を殺そうとしてきたのである。僕はすぐに避けたのだがその行動は僕にとって不利な事になりかねない状況になっていくのである。そうそれはその女性の攻撃が僕にしか通用しなかったのだ。ライナやライナは攻撃をかわすことが上手くて僕に攻撃が当たってもそこまでのダメージは無かったのだが、僕の場合、その攻撃を受ければ即死だったのである。だが、僕は何とかその女性から距離を取ることができて攻撃を回避することが出来たのだ。だがそれも一時しのぎに過ぎず、このままだとやられると分かっていたため、僕は聖属性の魔法を使って僕が持っている剣に光を付与したのである。その効果は相手の魔力を無効化することであり、相手からの攻撃を弾くことができるものだった。だがその攻撃さえも相手に防がれてしまい効果がなかった。そんなとき、ライラの精霊魔法の援護により、ようやく互角の戦闘が出来るようになりどうにか時間を稼げるようになっていた。だがそれも長くは続かずすぐに均衡は崩れてしまったのである。そしてライナはライナの攻撃を防ぎきれずにダメージを受けてしまっていたのだ。

それからも何度も僕の攻撃を避け続けられ、ライラの詠唱の時間さえ確保できなかったのである。そして僕が最後の一撃を放つと女性が急に僕の方に飛び込んできており僕の腹部目掛けて腕を突き刺そうとしたのだ。

僕はその瞬間その女性がライラスの攻撃を受けて倒れたのである。そして倒れながらも必死に立ち上がろうとしたがそのときにはすでに息絶えていたのだ。その後すぐ僕は、その女性の顔を見たがどこかで見たことがある気がしたのだ。しかし誰だったのかは結局分からずにそのまま気を失ってしまう。だが目を覚ましたら何故かそこは見慣れぬ場所にいたのである。しかもライナスが居なくなっていて僕は少しだけ寂しく思ったがすぐにその感情を消すことにした。だってライナスにこれ以上負担をかけさせることは出来ないと思えたからだ。

すると、扉の向こう側から声が聞こえてくる。「ライラ?そこに居るのはライラでいいのよね?ライラ!」そう言ったのである。そして僕は扉を開けるとその向こう側にライラの姿があったのだ。だがそこにはライナの姿も見えたのだ。ライナの方も驚いているようで目を見開いてこちらの方を見て固まっていた。

ライナの方はライラが無事だったことに安堵して、ライラの方も嬉しそうにしていたが、やはり、まだライナは自分がライトに入れ替わっていることを隠していたのだろう。ライナはそのことを追及した。そして僕が、ライトの記憶がある事をライナに伝えたのだ。それからはお互いの情報を交換し合うことになったのである。「それでライナはどう思う?あのライナという子が言った事?」ライナは僕に問いかけてきた。そしてそれに対して僕は何も答える事が出来なかったのだ。僕が知っているライトは、この世界でライトの肉体を手に入れる前のライトであり、その前にこの世界にいた時のライトとはほとんど会話を交わしていないのだ。だがあのときのライトは確かにこの世界のミケラルドを殺すと言っていたのは確かだと思うのだ。だが今のライナにはそれを言うのはまずいと思ったのである。だから「ライナスに確認する必要があるんじゃないかな?」と言ってライナがライナスに会いに行こうとしていた時に僕はそれを止める事にしたのである。ライラにライナをライナスに会わせるのは危険だと判断したからこそである。ライラはそんな僕を不思議そうな顔をしながらもライナに会わせたのであった。ライナがライトの事を聞いても特に変わった反応を見せること無くライナに接していたが僕はライナの質問を遮るようにライナを褒めまくったのである。だが、それを聞いたライナはとても恥ずかしかったのだろう。そして僕はこの里の問題を解決するべく行動することを決めたのである。だがここで大きな問題が発生したのである。それは僕のレベル上げが全然できていない状態だった。この世界に転生する前と比べて大幅に上がっているとはいえ元々の能力が低かった。

僕はまずレベルを上げる方法について考えていたのである。それはライナスが僕に渡してくれた巻物を読めばある程度理解できると思ったからである。

そこでこの森に生息している魔物と戦って経験値を稼ぐのが効率が良いと考えたので早速動き始めたのであった。その結果この森ではスライムしか出て来ず、倒す度に僕のレベルが一つ上がっていったのである。スライムを倒す事で経験値が入るとは思いもしなかったのでとてもありがたかった。そして僕はこの世界で強くなる為にもっと経験を積まないといけなかった。この森に来てからは一日一食の生活をしており僕はこの体になってからもあまりお腹が空かないがそれでも食べる量はかなり増えているのである。なので、この身体に馴染んでくれればいいと思っていた。

それから数日経ってようやくレベルが5にまで上がることが出来た。これでこの森の中で遭遇した魔物なら倒せるだろうと確信が持てるくらいには強くなったので今度は里に出現するようになった魔物を狩る事にしたのだった。この日も魔物を倒してすぐに戻ろうとしていた時に運が悪い事に魔物に遭遇してしまうのだった。そしてこの世界のモンスターの実力を確かめる意味で戦おうとしたのだったが、その敵はこの世界の魔物ではなく、魔人族のようだったのだ。

僕は急いでこの場から離れようとした。しかし相手の方が速かったのだ。僕はその攻撃をなんとか避ける事が出来て反撃をする。

「ファイヤーボール」

僕が初めて使った魔法であり一番初めに使えるようになった火属性初級魔法のファイアーボールをその敵に向けて放つと、敵の胸を貫通し、さらに燃え上がり、敵は絶命する。僕は自分の力がこの世界の人間よりも優れていることに驚きつつ先に進む事を決める。そして僕はすぐに次の敵を探しに動くとこの先に何か大きな気配を感じたのである。そしてそちらに向かうとドラゴンが眠っていたのである。

僕がドラゴンと戦う事を決めてすぐに戦闘態勢に入るとドラコンが僕の存在に気付き目が開く。

その瞳が僕を捉えると、すぐに僕を殺さんとするばかりに爪を伸ばして襲いかかってきた。僕はそれを剣を振って受け流す。僕はすぐにドラゴンの背後に回って剣を振りかざす。だがそれが通じない事はわかっていたため僕はその場から距離を取る。案の定ドラゴンが後ろを振り返ることなく僕に炎を吐いてきたのである。その攻撃を僕は間一髪のところで回避して再び攻撃を仕掛ける。それから数合打ち合いをしているとようやく僕の攻撃が通るようになっていたのだ。僕は剣を両手に持ち変える。

そしてその剣を思い切り振り抜く。だがその剣撃が通らずに逆に腕の骨が砕けてしまった。僕はその痛みを感じながらも即座に後ろに下がる。だがそんな隙を与えてくれないほどに敵の攻撃が速く鋭い攻撃だったのだ。

僕はすぐに剣をしまいアイテムボックスに手を入れるとあるものを取り出したのだ。それは剣では無く槍でも無いものだった。そう、それは棍棒と呼ばれる武器であった。僕はその棍棒を構えながら走り出し一気に飛び上がったのである。そしてそこから棍棒を振り下ろしてドラゴンの頭を叩く。すると面白いように吹っ飛んだ。そしてドラゴンはすぐに立ち上がってきたのである。

僕はすぐに棍棒を捨てまた剣を取り出そうしたが間に合わず僕はその拳で殴られ吹き飛ばされる。

そして僕はそのまま意識を失ったのである。僕はこの時完全に死んでいたのかもしれない。そうでなければ今こうして考えることも出来ないはずなのに僕はなぜか冷静に現状を把握しようとしていた。それはまるで他人を見ているかの感覚であった。その視点が変わり僕の目線が映し出したものはなんとライナスだったのだ。僕はそのライナスの記憶を覗くとライナの記憶も僕と同じように体験していることに気が付き僕達は二人とも死んでしまったのだと思い知る。だが、僕はこのまま死ぬわけにはいかないと思ったのである。何故ならば、僕が死んだ場合この世界にいるライナまで消滅してしまうからだった。そう、このままでは、世界が滅ぶとわかったのだ。

僕は、ライナの記憶の中にあった聖魔法の魔法陣を使ってみることにした。

そして魔法を行使するとその魔法が成功し、目の前に巨大な女神が現れると、僕のことを祝福してくれたのだ。僕はその女神様に対して質問をした。するとこの世界に神として君臨していたのだがその役割を終えた為、他の世界で新たに生を与えると約束してもらえたのである。それから僕たちは異世界へ召喚されることが決まったのである。そして僕とライナは女神の導きの元新たな世界に旅立ち新しい人生を歩もうとしたのだった。

俺は、ライトが魔人を瞬殺した光景を目の当たりにして驚いた。なぜならあのライラスの攻撃を受けて倒れていたにも関わらず、いつの間にかに起きていてライナスも気づかないうちに倒されていたのだった。そしてその後ライラスに事情を説明したあと、ライナスがライラをライラスの自宅に連れて行くと言ってから俺と一緒に里を出たのである。

そしてしばらく歩いていると、ライナスの家に着く。だがその時の俺の心の中に不安があったのだ。もしかしたらライラに何か危害を加えるのではないか?という疑問があった。

そして家にライラを連れていくときにライナは必死になってライナを止めていたが、結局止められずに連れていくことになったのだ。そしてライナの家の前に着いたが中々扉を開けようとしなかったのだ。その理由を聞こうとすると、ライナがライラの方をじっと見つめてから「やっぱりなんでも無い」といって家に入って行くのであった。その様子を見ていた俺は嫌な予感を感じていた。それはもしかしたら自分が殺される可能性を考えていたのだ。だがそれはあり得ない話だと思っていた。だがもしかしたらという可能性があるために、俺自身もこれからはもっと慎重に行動をしないといけないと感じたのである。それからしばらくして家から出てくると、ライナは何故か嬉しそうな表情を浮かべて帰って来たのである。それを見て俺はまだ何も知らないふりをしながらライナスと話して帰ることにしたのだ。

そして家に帰る途中で俺に衝撃的な出来事が起ころうとしている事を知りそしてそれを防ぐために全力を尽くすことを決意する事になるのであった 私は今とても驚いている事がある。私達の住んでいた里では、人間以外の存在がいる事が信じられていなかった。だけどあの魔人族との戦いを見ていて里長の娘のミケラルドさんが魔人と互角以上に戦える実力を持っていることが発覚したからである。

それにしても魔人の一撃でミケラルドさんの片腕が折れてしまっている。その事がショックだった。私が今まで見てきた人間は弱い生き物であり強い力を持てばそれだけ自分勝手に振る舞う事が多いのである。だからこそライラが心配したのだ。だが今のミケラルドさんを見ていると、自分の身を案じているという事がよくわかる程落ち着いておりミケラルドさんの強さの片鱗が窺えた。そして何より驚くべきはライナの実力だった。

「なぁタロー。あれ本当にお前の妹なのか?」

「あ、当たり前だろ。あいつこそ本物のライトさんだよ」

「そうか、そうだよな」

「あ、あんなライト兄ちゃん見たことないぞ。魔人にだって負けやしないんじゃねぇのか!?」

「いや、どうだろうな」

「え?どゆことだタロ助」

「んーま、色々と規格外って感じだぜ!」

そんな事を話していたがそんな二人の会話が聞こえてきて、私は思わず笑ってしまった。

でも、確かにライトは強すぎると思うわね。そしてライナが里の人間じゃなくて良かったと思った瞬間でもあったわ。もし、あの子がこの里にいたら大変な事になっていたはずだもの。

「お姉様!そんな奴らの事気にすることなんてありませんよ!!」

ライナが突然大声を出してこちらに向かってきたのである。その事にビックリしていた私たちにライナはそのままの言葉をぶつけて来たのである。それは里を潰すと脅されそうになったことだったり、その事でライトたちが殺されかけたという話をしていたのだけれど正直に言ってこの世界の人間がどれだけの力を持つのか私には全くわからないから判断することが出来ないというのが本音である。だけど私の家族に手を出す事は許さない事だけはすぐに言えるけどね!!だがその時私は気付いたことがあった。そう、ライナは私たちのために怒ったということを! だからライナはいい子だと再認識する事が出来たのでライナの頭を撫でながらありがとうと言ったのである。その行為が意外だったのか、ライナは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたが、とても可愛いと思ってしまったのだった。それから私たちはライトの作った料理を食べてそれからライナの家に泊めてもらったのである。

だがその時に事件は起きたのである。ライナは疲れて寝てしまい私達もそろそろ眠りに着こうとしていた時であった。誰かの気配を感じたのである。それも里の外にいる人間のものだったのだ。私はそれを確かめようと思い外に出ようとした時に外から声が聞こえてきたのでそれを盗み聞きすることにしたのだった。すると、やはりというべきかこの森には盗賊が住み着き獲物を探しているようだった。そしてその中には魔人も混じっていたのでこれは見逃せないと思ったのだ。なので、この家を留守にする理由を作ってしまえば、盗賊がこの家を襲いに来ることはなくなるはずなのだから。

私はこの家にいる皆にその事を伝えるとライトが一緒に戦おうと言い出し、それを断ると少し不機嫌そうにしながら了承してくれ、そして魔人を倒しに行った。

そして、魔人を倒したライトとミケラルドが戻ってきてその話を聞かせてくれるがその話はにわかには信じがたい事ばかりだったのである。まず、ライトはこの世界で神として君臨していたという。そこで私は思ったのだ。それは神が作り出した世界の者だというのに何故そのような力を持っているのだろうと。もしかして、神が作ったのではないのかという疑問が生まれたがそれは違うと断言された。そしてライトともう一人の女性と、その仲間と共に世界を作り変えてしまったという。しかもそれを一人で成し遂げたというのだから驚かずにはいられなかった。そしてそれからというもの、私達は、ライトたちの戦いに巻き込まれていったのである。だがそれでも悪い気がせず、楽しいと思えるようになった。それからも色々と大変だったがようやくここまで来ることが出来たのだった。そういえばこの世界に来たのに、まだこの世界の名前を知らない事に気づいた。

この世界をなんと呼ぶのか聞くとそれは地球という名前だったのであった。それを聞いた瞬間驚きを隠せなかった。この世界が地球と呼ばれている事もそうだけどその名前が同じだったことが一番びっくりしたことだったのだ。そのことについて聞いてみると、ライナの口からとんでもない話が出てきて更に驚いた。なんとこの世界に転移して来た人たちのほとんどがこの世界の元地球人だったというのだ。つまり、この世界に来ている異世界の人間は地球の出身だということだった。まさかこの世界を作った神の生まれ変わりかもしれない存在と同じ名前の場所があるなんて思ってもいなかったのである。そしてそのことを話すライナの目には悲しみの気持ちが宿っていたのに気が付いたがその理由を知ることはなかった。

だが、その時からライナのことが頭から離れなくなったのだった。その理由を自分でもよく理解出来なかったのだがライナは私の初恋になった相手となったのであった。

「お、お前。一体どういうつもりなんだ」

(何を言ってるの?貴方はもう死ぬ寸前なのよ)

「う、嘘だ」

(なら見てみなよ。その腕。動かないんでしょ?)

俺がその言葉を聞くとすぐにライラスは自分の左腕を確認するとそこにあるはずの左腕が無かったのである。それを見たライラスは絶望した顔つきになりその場に崩れ落ちたのである。ライラスの傷はかなり深いものであり回復薬も既に切れておりこれ以上の魔法は俺にも使えずこのままだと死に至るはずだったのだ。そして俺は最後の力を振り絞り魔人を追い詰めると、そのままトドメの一撃を喰らわせたのだった。そして魔人を消滅させたと同時に俺も意識を失ってしまうのであった。

目が覚めるとそこは知らない天井でベッドの上である。どうやら俺は完全に回復する事が出来たようだ。俺の怪我は治ったとはいえ魔力まで完全に戻ったわけではないので、しばらくの間は戦闘に参加する事はないと思われる。だが今回の戦いを見て、俺自身もこれからもっと強くなる必要があると感じていた。そのためにも今は体を休めて修行に励む事にしたのである。「ライト。調子はどうかしら?」

そう言って部屋の中に入ってきたのは母上であるメイだった。その手には食事を乗せたお盆を持っていた。俺はそれを見ると起き上がるために体に力を込めるがまだ思うように動かず、再びベットの上で横になる事になったのだ。

「無理して動くことはないのよ」

と、優しく言ってくれたので俺はそれに甘えることにして母上の持ってきた食事を食べることにした。だが食べてみるととても美味しく、これ程までに俺の好みに合った料理は食べたことがなかったのである。それからも次々と食事を運んできた母上に礼を言い、全部の食べ物を食べきった所で改めて挨拶をした。そして俺が起きたのを知った父上や他の者達も駆けつけてきてその全員が嬉しそうな表情をしていて俺は照れくさくなったのであった。そして暫くすると他の皆は仕事に戻り俺は暇を持て余していた。そんな時ふと自分のステータスを見てみることにしたのである。

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タロウ LV 21/100 ランク A HP 50/5210 MP 10/15000 筋力 1 耐久 5 素早さ 880 知力 9800 体力 3600

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かなりレベルが上がっているが未だにA級の冒険者には追いついていない状態が続いていた。だが俺も諦めてはいない。今回の経験を活かしてこれからもっと精進しようと思っている。そんな時扉をノックしてから入って来た人物がいた。

「お、タロちゃん。元気かい?」

そう言いながら部屋に入ってきたのはギルドマスターであるリーザさんだった。彼女は何か用があって来たのであろう。そんな彼女の後ろからひょっこりと顔をだしたのはライナだったのである。だがライナの顔色は余り良くないように見えていて、ライナは少し申し訳なさそうな顔をしている。それにライナは昨日家に帰ってからあまり眠っていなかったので体調が良くなかったのだろうと思う。そんなことを考えていると二人は何の躊躇もなく近づいてきてライナはライナスの腕の治療を行い始める。その様子を見て、本当にいい親子関係だと再確認したのだった。

それから暫くの間ライナは俺に話しかけて来て、ライナに好きな子はいないのかなど色々聞かれた。そしてその事をライナに伝えるとそれを聞いたライナは頬に手を当てニヤケながら喜んでいた。そんな様子もライナにとっては幸せな事なのだと思う。

「そうだ!タロちゃん。お昼は私とライナちゃんで作るんだけど、お弁当いる?作ってあげよっか?」

「え!?お、お願いします!」

俺はライナの提案に乗り、ライナが料理を作ってくれると言うのでそれを受けてしまう。だが、その会話を盗み聞きしていた者たちによってそれは実行されてしまったのである。その者は当然母上である。その事を知った俺は断ろうとしたが結局流されてしまい三人分の昼食を用意するということになった。だが、母上はライナはライナスの妻であると伝えておきながら二人だけで昼食を取らせようとしたためそれは却下することになった。それで納得してくれなかった為、仕方が無く俺が一緒に食事をする事を条件に出した。

それから暫く時間が経ち皆が戻ってくるとその知らせを聞き急いで帰ってきたというのだ。その者の正体が気になったので鑑定を使い調べたところそれがクレア様だと知り、驚きながらも出迎えるとそこには何故かミックもいた。その後、食事の時間となり母上の料理を食べ終えると今度は父上とミックに呼び出され、今後の話をする為に食堂に集まってほしいと言われてしまった。

それから少しした後俺達全員は集まり話し合いを始める。最初に口を開けたのはミックだった。ミックの話はこうだった。ミックは自分がここにいる間にこの世界の情報収集を行ってくれていたという。その中で気になった事があるようで、それは魔王と勇者の伝説である。この話は既に知っている事ではあったが、改めてミックに聞こうと思っていたのだ。その話を聞かせて貰おうとしたのだが、まず初めにミックは謝りを入れてきたのである。それは、今から約一万年前に突如現れた一人の男がいたというのだ。そしてその男こそ、後の魔王だったのだ。そして、その男の能力は神と同等以上のもので当時の世界のバランスを壊してしまいかねない存在だったという。そこでミックが言うには、魔王を倒すには勇者しか存在しないと言われたのだというのだ。そして勇者が魔王を倒す事で初めてこの世界の均衡が保てるということだ。しかし、神はその均衡を保つ事は出来なかったというのだ。その理由については俺にもよくわからなかった。そして、神は世界の創造を別の者に頼んだということなのだがその者の名は伝えられていなかったという。つまり俺の父であるアルスは、その勇者の生まれ変わりかもしれないということなのである。そのことを聞いて驚きはしたがどこかしっくりする所があり否定することができなかったのであった。

(まぁそれは今はいいとして)

それから俺は、何故ここに来たのかを話す事にした。最初は母上達がどうしてこの世界に来たかという話をしてくれた。

どうやら母上の方はメイと一緒に召喚されて、母上とメイ以外の仲間はこの世界に来た時には既に死亡しており一人だったようだ。母上曰くそれは凄く辛い事でいつも泣いていたとの事だ。それを聞いたライナはとても悲しい表情をしていたが涙を流すことはなくただ黙っているだけだった。そしてライナスは、元冒険者のパーティーにいたのだが、ある日ダンジョン内で行方不明になってしまったらしく、それをずっと探し続けているのだと言うのだ。その話を聞いた時、その人は生きてはないだろうという事がわかった。そして、その捜索は諦めた方がいいという事も伝える事にした。

だがそれでもライナスの表情が変わることは無かった。それはライナスにとってその人はそれほど大切な人だったのだと思えたからだ。それから話は進み、俺も知らない過去の話が出てきたのである。ライナは元々そのライナスの妹であったのだと言うのだ。だが、その頃のライナスの年齢は二十代であり妹といっても血が繋がっているわけではないらしいのだ。そしてライナスの妹の名前はラミーという名前だという事がわかるがそれ以上のことはわからなかったという事である。

そんな話を聞いていたら父上からの質問が来た。それはどうやってあの場所に入ったのかということであるが俺が気を失う直前の出来事を説明した。父上に説明が終わると俺が倒れてからのことについて教えてくれたが、やはりその時の記憶は無くなっており気絶してからすぐに目が覚めたのだという事だった。そして父上が言っていた気を失ったというのは、俺に攻撃が通じず魔人が俺に怯えているのを見て体が勝手に動いていたのだという。

それを聞いて、俺は驚いた。なぜなら俺には全く記憶がなかったからだ。それについて詳しく話すとどうやら魔人との攻防中に俺は無意識に氷属性を使っていたようなのだ。俺はそれを聞いても全然思い出せなかった。だが、ライナがその事を話し始めてくれたのである。

どうやらライナはライナスから魔法に関する書物をもらっていて魔法に関する知識をある程度は持っていたのだ。そしてその中に氷魔法についても書かれていたようだ。俺はその魔法の存在を忘れてしまっていたようだったが、それを思い出すことができればもしかしたら使えるようになるかもしれないと言ってくれたのである。その日から俺は、寝る間を惜しんで特訓を行う事にしたのである。その結果どうにか習得することができた。

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タロウ LV 31/100 ランク A HP 56/5210(+300×10/1020×2)

MP 50/15500 筋力 2 耐久 3素早さ 560 知力 9999 体力 3600 INT 9998 +100 運の良さ 100 SP 5 固有技能 <言語理解><成長促進>

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ステータスの方は少し上昇しているだけで特に変化はしていない。だがこれで少しづつだがレベルを上げて行けばいずれはライナと同じレベルになれるはずである。それと魔法の使い方だがイメージすることで発動することができるとライナに教わった。だが、それだけではすぐに限界を迎えてしまうと思ったので毎日魔力操作の練習も行うことにしている。

俺は自分のステータスを確認するために家の中に誰もいないのを確認して外に出た。それから俺はステータスを開くと俺の能力値は一気に上がり続けていた。

そして俺はその能力値を見て愕然とした。そのステータスを見た俺は一体どれだけの化け物に俺はなっているのだろうと恐ろしくなったのである。

俺は、とりあえず自分の能力を数値で把握するために、自分の身体能力を確かめることにしたのである。そして自分の体を鑑定してみることに決めて早速自分の体を対象に使ってみた。

すると自分の体のステータスを確認できたのだ。それから、俺は試しに力比べをしてみることにしたのである。結果は予想を遥かに超えるものになっていた。だがそれは当たり前のことだったのである。今の俺なら人間を相手にしたら簡単に倒せる程の力があるのだと実感した。それから俺は他の人間のスキルがどのような物か気になったので鑑定を発動させて確かめていくと様々な種類のスキルを持っているのを発見した。それから少し経って全ての人のスキルを見ることが出来たのである。

まず父上だが、俺とライナを足したぐらいの強さがあったのだ。しかも父上の職業の適性を調べると剣士、槍士、戦士、騎士、賢者という六つのジョブを持つことができるという。そんな規格外の力を持った父上を見て、これは本気で俺に剣術や格闘術を教えてくれと頼むべきだろうと思うようになっていたのである。

母上は水と風、雷の三つの属性を使うことが出来るのだ。そしてライナも三つ使う事ができるようで二つの属性を扱うことができた。その事を考えると俺は四つ使うことができることになる。そしてその事から俺は四種の上級魔法を習得したということになるのでこれからの生活で活用できそうだなと思っている。それにしても俺は本当に天才なのか?と思い始める。ライナの話を聞く限りでは普通は二つで、三つ以上の人はなかなか現れないという。それが俺は三つもあるわけだから相当なものだと思ってしまう。それに俺のレベルもかなり上がってきており、今では200を超えた。これに関しては異常すぎるほど上がっているのだ。

(だが、この世界ではそれくらいは珍しいことではないんだよな)

そして、ライナはというと母上と同じように複数の属性を使うことができている。だが、母上と違い回復系の属性は一切使えずに、その代わりに土と闇、光といったものが使っており、それはもうチートに近いほどの性能であるとライナは自負していた。そして俺の一番興味が引かれた能力は、空間属性と時間属性の二つだ。ライナは空間を捻じ曲げることや時間を戻す事が出来ると言ったのである。

それは凄いことではあるのだが、実際にやってみなければわからないのである。俺がそう思い、その事を伝えて実演するようにお願いをしたところ、母上は難なくとやってのけたのだ。俺はその光景を見て驚愕したのだった。

それから俺が習得した技能はというと、俺には時空と次元というスキルが発現していてそれは空間に穴を開けるということだった。俺はこの力をどうすればいいのか悩んでいると母上が自分の持つ武器庫とこの家を繋げばいいのではないかと提案してくれた。それから、この家での訓練は母上達がいない時に行う事になったのである。そして俺はその事を伝えるとライナスは俺にこの里から出て行くのか?と訊ねてきた。それについて答えるのは難しかったのだが、正直なところもう少しこの世界に居たいと思えるようになっている自分に気がついていた。なので、もう少しの間だけこの世界に留まるつもりだと伝える事にした。ライナスはそれを承諾したのだがライナスの気持ちを考えて出来る限り早く戻ろうと考えているのだ。

俺は皆んながこの世界に来てからのことや魔人との戦って来た経緯などを聞いていたのだ。それから暫く時間が経ち夜も更けてくる。すると父上からお開きにして明日に備えるという事で今日はこの場をお開きすることになったのである。そして俺達はそれぞれの部屋に戻ろうとしたときアルスに声をかけられてしまったのだ。そしてアルスは俺に付いて来て欲しいというのである。

(まぁアルスが俺に伝えたいことがあるんだったらついて行ってもいいかな)

俺はアルスの言葉に了承することにした。

そして俺はアルスとライナスと別れるとアルスは先に部屋に戻って行った。俺はそのあとすぐにライナスが俺に向かって言ってきた言葉が頭から離れないのだった。

「ライナスが言っていた、魔人とはなんなんだ?」

ライナスは確かに魔人と言っていた。だが俺は、魔人と呼ばれる者がいる事は知っているがライナスの言っていた魔人とはどうやらその魔人とは違う存在のように思えたのである。魔人とは何か俺は考えたのだが俺の答えは一つしか思いつかなかった。それはこの異世界において、魔王と呼ばれるものの事ではないかと。俺は一度父上のところにいき、そのことについて聞いてみようと思っていたのだ。それから少しして、父上の部屋にたどり着くと扉をノックしてから入室する。それから父上に魔王についての話を聞いてみると意外な返答が返ってくる。

そして父上から教えられた情報はやはり思っていた通り魔王とは異世界における最強の生物のことを指すようだが詳しいことはわかっていないようだ。だが俺の考えが正しいのであれば魔王とはこの世界のどこかにいる可能性が高いようだが今現在生きているかは不明だということだったのである。だが父上も見たことがないような化け物が存在していることからその考えは間違ってはいないと思うがもしいたとしたら相当厄介だとは思うが俺がどうにかできる問題でもない。俺はそれから父上の部屋を出ると今度はライナスに会いに行くことにしたのだった。

そして、俺はライナスの家に着くと中に通されてライナスの話を聞こうとしていた時だった。俺が中に入ると同時にいきなり俺に襲いかかってきて剣を突きつけてきたのである。俺も咄嵯に腰から神装を取り出そうとしたがそれを止めた。俺は、もしかしたらこの男は自分を襲わせるための演技かもしれないと感じたからだ。俺はそれからライナスに対して敵意がないことを伝えると、どうやら演技ではなく本当に攻撃するつもりはなかったようなのである。

俺は、なぜこんなことをしてきたのか聞くと、ライナスは自分の妹であるラミーについて俺から何か情報がないか聞きたかったようだ。ライナスの妹の年齢は俺の一つ下で十歳の女の子なのだ。

だがその妹のことが心配だからと言っていきなり攻撃を仕掛けるのはさすがにどうかと思ったので、俺はとりあえずライナスに説明をしてもらうことにしたのである。それからライナスの話を聞いて俺が分かったのはまず俺とライナスが会っているのがラミンとばれているらしいということだった。ライナからは、俺のことをライナスの弟と紹介したらしく、それで納得したということだ。

そして俺のことに関してライナスはライナーには絶対に話すことはできないと言ったのだ。だが俺としてはどうしても教えてもらいたいことがあった。それは、この家の周りで魔物を狩りまくっている人物についてだ。俺の記憶ではそんな事をするような者はいなかったはずだ。だがライナスはそのような人物がいることは知ってはいるが顔を見たことはないのだという。ただライナはその男の名前も知っていたので一応伝えておいた。そして俺はそいつに会う方法を知っているか尋ねるとそれは無理だと一蹴されたのである。

(うーんやっぱり自分で探すしかないよな)

そう思いつつ俺はまだこの世界に来て日数がそれほど経っていないのにそんなにうまくいくわけもないなと思ったのである。そこで俺に新たな問題が降りかかってきたのである。俺はライナにこれからどうするべきかと尋ねたときに、俺は自分の実力を測るために外に出ようとしていたがそのタイミングで再び邪魔が入った。俺は一体何事かと思った。その相手はというと、先程会ったばかりのアルスだったのである。

アルスはライナスを外に連れて行くと俺は二人を見送ろうとするとなぜか俺は二人に止められたのだ。そして俺の肩に手をポンと置くと、お前はライナス達と一緒に行けという。そして、ライナスと俺は俺の知らない場所で修行を開始するのであった。

それからライナスは俺とアルスが離れていくのを確認すると急に立ち止まったのである。俺は、一体どうしたんだとライナスに質問をしようとしたとき、突然目の前にいたはずのライナスの姿が消えたのである。だが俺はライナスが消えたという事を認識することはできなかったのだ。なぜなら俺は意識が刈り取られたかと思うほど一瞬のうちに地面に叩きつけられていたからである。俺はその痛みに耐えながらも立ち上がろうとしたがライナスに腕を踏まれて俺は起き上がることができなかった。それからライナスが俺を殺さない程度に足に力を込め始めた。俺はライナスが俺を殺すつもりはないと思いつつも抵抗しようとしたが全く意味がなかった。それから俺はライナスが本気を出すと言ったことに気がつく。ライナスはそれから本気で蹴りを入れてきた。俺はその瞬間、本当に死を悟ったのである。そしてライナスの脚が迫ってくるが、その前に俺は意識を失っていたのだった。

それから数時間後、目を覚ますとそこは俺のベッドの上であった。俺はライナスによって助けられたという事が理解できた。それからライナスは俺にもう手加減しなくて大丈夫だからといって去っていったのである。俺はその言葉を聞きながら、この世界の人間は皆強いという事を痛感させられた気がした。そして俺が気絶した間に、父上がここに訪れており、ライナスとの話を終えていてその後母上と共に戻ってきた。

そして、ライナスとアルスも一緒に帰ってきていた。俺は父上から、どうしてあのような事態になっていたのかと聞かれた。それに俺はライナスと戦ったこととその結果を話したのだ。

それから母上もライナスと戦いどのような結果となったか聞いた。ライナスは素直に母上に謝ったのである。それを見た父上はライナスを許したのだ。それからライナスから妹であるラミンの話を聞いたのだが、俺は全く覚えがない事だった。

(まぁ、小さい頃って記憶なんて曖昧なものだよな)

俺が子供の頃を思い出すと大体の事を覚えていない事が多いのを思い出したのである。なので俺もライナスとアルスを許し許してもらう事にした。そこで俺はアルスに何故あんな行動をとったのか理由を聞くことにした。すると、ライナスが言ったように、俺は昔からある事情により人見知りなのだそうだが今回の場合は俺が悪いということで気にする必要はないが念のために自分にも警戒心を持って接してくれという感じの事を言ってきた。だがライナは、アルスが俺を襲うとは考えずらいとはっきりといったのである。

そして俺達はそれからしばらく話していたのだが父上からは明日は里の中を見て回ろうと言われている。そのことについて俺は母上達に了解の返事をしてこの日はそのまま寝ることになったのである。そして次の日の朝になる。今日も訓練をするため早めに起きたのだ。それから準備を始めると、ちょうど父上とライナスも起きたようでそれから母上達の部屋にも向かい挨拶をした。

それから皆で食事をとると、俺達は里の中を見回ることにする。

俺は今日初めて他の住人を目にすることになったのだ。

俺達が里の中で歩き回っていると何人かの住人から挨拶をされるようになっていたのだ。だが、中には俺を見ると逃げ出す者もいた。

それから少し歩いていると、俺は前から歩いてきた女性と目が合う。その女性は、昨日のアルスのように何故か俺を見るなり固まっていたのだ。そしてアルスのようにその人はその場を走って行ってしまったのである。そしてその人が走っていった方向から一人の男性がこちらに向かってやってきた。俺はその男の人をよく見てみる。その男性は、金髪碧眼で顔は整っており美男子と言える容姿をしている人だった。そしてその男からは俺に対して敵対心を剥き出しにしているように見えたのである。

俺はこの男が何なのかライナスから説明を受けた時に思い出そうとした。

だが俺は、その名前を聞いた途端に、忘れようと努力してきた名前だったことに驚き思わずその名前を呼んでしまったのである。そしてその男に、俺は声をかけたのだが、その男はその言葉を無視されて再び走り出したのである。俺はこの男が誰なのか思いだしたくなかったがそれでも俺は思い出してしまったのであった。俺は父上とライナスに声をかけるとこの男性を追いかけることにした。そのあとすぐに、父上やライナスから、あの男は誰なのか教えて欲しいと頼まれる。だが俺自身あまりいい気分ではなかったため、とりあえず父上にはアルスの婚約者だと言うことを教えておいたのだ。それから少し走ると、先程の男は、俺が追いかけていることにやっと気づいたのか俺と目を合わせるがまた逃げ出そうとする。そしてその男が逃げる先を予測して俺はその先に向かった。俺と父上とライナスはその男の行き先に向かう。そこには先ほどの男性のほかにも女性が一人いて、俺の予想通り、アルスと先程俺とぶつかった女性の二人が言い争いをしていたのである。

それからしばらくして、その三人の間に俺が割り込む形で止めに入った。俺はその三人を止めることに成功するが結局三人共俺について来てしまったのである。俺は仕方なく三人とも俺の家で話しをすることを伝えたのである。

そして俺はこの男に改めて、名前はなんというのか聞くことにした。

それから俺はこの男の名前はライナスの従兄弟であり俺の叔父でもある。

それから俺の本当の父親の弟であることを知ったのである。

それから、俺はこの男の母親が俺の母親の姉であることも知ることになる。

そのことから俺はそのライナスの従姉弟の子供がライナスだということを知った。だが、そのことを知った時はかなり衝撃的であった。

それから俺はアルスとその二人の女性の方に向くと、その女性はアルスが好きな人とわかったのである。俺とアルスがその話をしている時もライナスがアルスの方を見ながら俺に視線を送ってきたので俺とライナスの間で、無用な争いが起きるかもしれないと思い、俺はアルスには申し訳ないがその気持ちに答えられないと言ってしまったのである。それからアルスはこの二人を連れて帰ると言い出して、俺にアルスのことを頼んできたので、アルスのことを俺が責任を持つと言って了承したのである。それから俺はアルスのことを引き取るためアルスの手を握って俺の家に連れて帰ろうとしたが、ライナスに腕を捕まれて動けなくなってしまったのである。そして俺はこのままアルスが連れ去れるよりはと思ってライナスに俺の家に連れて行くのを止めてアルスのことを頼むことにした。

その言葉を聞いたライナスが、アルスは俺の妻なのだがという言葉を言ってから、その二人は俺達の会話を聞いて納得したようだ。そこで俺達は一度俺の家に戻ることにしたのである。だが、ライナスは、まだ何か納得できないような表情をしていたが、この話は終わったのであった。

それからライナスと俺は二人で修行を開始したのである。

それから二ヶ月ほどが経ち俺はようやく体術と剣術の二つを同時に使えるようになっていたのだ。そして俺の剣技は父上には敵わないとはっきり言われた。だが、父上のレベルに達することができただけでも十分だと思い、俺が修行をやめようとしたら、これから毎日一対一の試合をすることにするとライナスに言われる。俺は正直、勝てる気など全くしなかったのである。それからは、朝に父上とライナスが戦っているところを見学し、昼に俺とライナスが試合をする日々が続いたのであった。だがライナスとの試合の時はいつも引き分けという結果になっていたのである。だがライナスとの練習のかいもあって俺はライナスとの試合ではほぼ負けることはなくなったのだった。それから一週間後、ライナスは俺を家に呼んだのである。俺は、何かあるのだろうと思ったのである。それからライナスは俺に頼みごとがあると言ってきた。その内容は、魔族を束ねて人間に対抗させようという話を持ち掛けてきていたのである。そして俺がそれに反対しようとすると、ライナスに俺に拒否権はないといわれ俺はライナスに従うことにしたのだった。

それからさらに一週間が過ぎていった。その間も、アルス達がこちらに戻ってくることはなかったため俺とライナスが家に戻るとアルス達が戻ってきていて、俺達が帰ってくるまで待っていてくれたのだ。それからはライナスがこの国の王になったことを皆に報告すると、その話を聞くために王城に集まることになったのであった。ちなみに俺はその話が終わるまでの間アルスがどこに行っていたのかライナスに聞いたのだが、アルスの方はライナスの方をじっと見ていた。そしてアルスは俺の言葉を無視してずっとライナスの顔を見て微笑んでいたのだ。その様子は明らかに今までと様子が違うように思えたのである。それからアルスはライナスと婚約をしたらしいということを聞き驚いたと同時にやはりなという思いもあった。俺はアルスになぜアルスが突然こんなことを言ったのかと尋ねるがアルスが顔を真っ赤にして何も喋ってくれなかったので、代わりにアルスの隣にいた女性のうちの一人の女性が自分の口から説明し始めた。

それによるとその女性、名前はミリアさんといって、この国の第一王女であることが判明した。それでミシアは第一王女という立場から、俺とアルナの身分を知っており自分の身を守るために婚約者にならなければいけないと考えていたという。だからその事をライナスに相談した結果ライナスから提案がありそれを受け入れて、アルスは自分の気持ちを抑えていたのだが、今回のライナスの話で、ライナスに好意を持っていることがばれてしまう。

それを聞いていたアルスの様子から、アルス自身も本当はライナスに好意を持っていたのだろうと推測できるがアルナはライナスの事を俺に任せると言っているのである。だがアルスはアルスなりに俺がどうするか悩んでいるということをわかっていたのだそうだ。それからはライナスからの提案を受け入れることしかできず、俺は受け入れるしかないと考えアルス達にそのことを話したのである。そして俺はライナスと一緒にその事を伝えるとアルスとアルンとルアの三人はライナスの事が好きになっていることがわかった。そのため、ライナスは三人の女性と結婚することになると聞いた。それからアルナだけはその結婚に反対すると思っていたが俺の思った通りで賛成する側に入ってくれたのである。

俺はライナスに、どうしてそんなことをするんだと問い詰めようとしたが、ライナスの真剣な表情を見た時に俺は何も言えなくなってしまったのであった。それからライナスの話が終わるとアルスから俺達はもうすぐ出発しなければならないと聞かされたのである。俺はその理由を尋ねた。

その理由は、俺の持っている神獣を欲する国が多く、俺をどうにかしようとする国が後を絶たないということだった。俺はこの世界にきた当初、魔王の加護の影響で、俺を狙うものがいたのを思い出していた。だが今は魔王の力を失った俺なので襲われることはないと思い安心していた。しかし俺の考えとは裏腹に、いつ俺を狙ってくる奴が現れるかわからないので、その前にこちらから攻め込むことにしたのだという。だがこの国にはあまり時間をかけるわけにもいかず俺達を呼び寄せたという。

俺が、なんでその三人を選んだのかと質問したところアルスやアルナはライナスの妻になるためだと言われてしまった。そしてアルンは、アルスとアルーナさんの従姉妹だということである。

それから、俺達は明日この城を出発すると決めてからその日は終わりを迎えたのであった。それから、俺はこの部屋に一人残って考えたいことがあると言い、ライナスと父上は別の部屋で話し合いをするということで俺がこの部屋の見張り役を買って出たのである。そしてその日から二ヶ月の間、ライナスは俺にほとんど会うことができずにいたのであった。だが、それでも俺はなんとかアルスやライナスと会話を交わす機会を見つけていたのである。そんなある日の夕食後にライナスがこの城を出るということになり、俺は見送りに行ったのであった。

俺がこの城の門に向かっている時である。ライナスの後ろに隠れながらアルスが歩いていたのが目に映ったのである。俺もアルスに声をかけようと声をかけようとするがライナスに先を越されてしまう。だが俺はその後すぐにアルスの前に回り込んで俺は、俺の目の前に現れたアルスに向かって話しかけることにした。俺はアルスと話すことができた嬉しさを噛み締めていたが、俺はその時アルスと二人っきりで話したいという衝動にかられたのである。

それからしばらく時間が経ち俺はアルスとの別れの時を迎えていた。そして俺とアルスの間には少しの距離ができていてアルスも何かを決意したかのような表情で俺のことを見るだけだった。だが俺はアルスに、これからのことについて聞いてみるがアルスは何も答えてくれなかった。それからは俺は自分の気持ちがアルスに伝わらないことを理解した俺はその場から離れようとした。だがアルスはそれを引き止め俺に対して告白したのである。それはアルスのアルス自身の本当の気持ちだった。そしてアルスはその言葉を俺に伝えた瞬間泣き始めてしまい、それを止めるために俺は抱き寄せようとしたところで意識を失うこととなった。

その日の夜中俺は目を覚ますとそこにはなぜかライナスがいたのである。そこで俺はこの世界のどこかにいるかもしれない母上を探す旅についてくることになったのだと言うのだ。俺はこのライナスの話を聞き俺は自分が思っていたよりもとんでもない状況に立たされていることを理解し始める。なぜならこの世界を救わなければならない存在になっていたということだからだ。俺はそんな話をいきなりされて困惑していたが俺はとりあえず考える時間をもらうことにしたのである。そうしないと頭の中で混乱して何をしでかすかわからないと思ったからだ。それにしてもどうしてこんなことに俺は巻きこまれてしまったんだろうか? そして翌朝目が覚めるが俺は起き上がることができないでいたのだ。そして俺を看病してくれたアルスが俺に、一緒に来て欲しいと言い出した。俺がその事に了承すると、それからしばらくしてライナスがこの部屋に入ってきた。俺はそれから俺はライナスに、アルスに付いていくことにしたと告げた。だがライナスに俺の意思では止められないぞと警告されたが俺は、それを受け入れた。そして俺は、ライナスと二人っきりになる。そこでライナスが俺の頭を撫でてくるのであった。そして俺はライナスの手を払い退けたがそこで俺はあることを思い出す。

俺はアルスを俺の従者として連れて行くことに決めたのである。俺はそこでアルスの方に振り向くとそこには既にいなかったのである。それから数時間後アルス達は荷物をまとめており、出発の準備は整ったようなので、俺はアルス達とともに旅に出るのであった。それから俺は馬車に乗り込み王都を出発し、魔族の国を目指して走り始めた。

俺はアルス達の乗っている荷車の横を並走しながら俺は、俺達が向かう先には一体何が待ち受けているのかという不安感を抱きながらもアルス達のことを信頼することにし、俺は、魔族が暮らしている場所がある方向をただ真っ直ぐに見つめていたのである。それから三日後の夜のことである。魔族がいると思われる場所に近づいていきあと一日も歩けば到着するであろうというところまできた。

だがそこで俺は違和感を感じるとライナスは立ち止まり何かを感じ取っているようだった。俺がそのことをライナスに尋ねると、ライナスは俺が何か感じ取れたら教えてほしいと言ってきた。そのライナスの態度に疑問を持った俺は何か隠しているのではないかということを考えてしまうが今考えてもその事はわかりそうにないため俺は、この魔族が住んでいると言われている山に近づくと何かが動き始めている気配を察知できたため俺はそのことをライナスに報告すると、俺はそのまま進むように指示を出される。そしてそれから俺達は警戒をしながら慎重に進んでいったのである。そしてその正体はすぐに明らかになった。俺はアルスの方を向き指示を出すがアルスはまだ俺の事を疑い続けているらしく俺の言うことを無視して勝手に一人で進み始めて俺がそれを静止しようとするが、その隙をついて魔物が現れて俺は、そいつらの対処をしなければならず、俺はその対処をしている間に俺が止めようとしているのに気が付いたのかアルス達は逃げ出そうとするのが見え、アルス達がこのまま逃げきれればよかったがそこに巨大な魔物があらわれたのを見てライナスは急いで戻ろうとするがライナスは途中で力尽きてしまう。そしてその強大な力を持つ魔物はゆっくりとアルス達に近寄ってくるとライナスを食い散らかしていくのである。俺はアルナと二人で、巨大生物をなんとかしようとするが全く歯が立たない。俺はその圧倒的な力を見せつけられたことで、アルナと共にこの場から撤退し、少しでもこの情報を持ち帰ってライナスを助ける方法を練ろうと考え俺はライナスを見捨てることを決める。だが、ここで一つ問題があるとすれば俺が、ライナスを助けに行く際に足手まといになってしまえば意味がないということである。それから俺はこの事をタローに伝えるために一度森に戻ってきた。タロには、すぐに助けに行って欲しいと言われたのだがまずは状況を説明する必要があるので俺はそのことをタロンに話したのである。それで俺はライナスの救助のために動くことになったのだ。それでタロウにアルスとアルナと合流してもらおうと思ったのだがタロウはすでにいなくなっておりアルスとタローンの姿だけが見える状態だった。俺はその理由がなんなのかを聞くとその二人は、ライナスを助けたい一心からライナスの元へ向かってしまったようである。だがそんなことをすれば死ぬ可能性の方が圧倒的に高いということを知りながらの行動だということがわかるともう俺の心の中には怒りしか残っていなかったのである。

俺はこの二人をどうにかできないかと考えた時、一つ思いついたのはライナス達と合流することである。そのため俺達三人組は合流を果たしそれからライナス達の元へと移動を開始する。

そして俺はこの世界で最強の魔法を発動させることにする。

俺は自分の体が耐え切れるギリギリの力を使い自分の体に結界を発生させると俺が発動した神獣化の威力を確かめるためにその力で、アルスとアルン、それからルアと俺が合体して作った技を繰り出したのであった。俺は神獣化した時の自分の強さを確かめようとこの行動を取ったが俺は、想像以上のダメージを受けていたのであった。その結果として俺は神獣化しなくなると俺は地面に倒れ込んでしまい意識を失うことになる。俺が最後に見たのはこちらに全力疾走してくるアルスと俺の方に向かってくるアルナの姿を目にしたのであった。それから俺は気絶したままの状態で運ばれていったらしい。それから二日間眠り続けてようやく目を覚ます。

だが目を覚ました俺の側にはなぜかアルとアルナーが座っておりなぜかライナスもいた。

俺はそのことに不思議に思いアルスに聞いてみることにした。

アルスは俺が目覚めると俺の手を握ると涙を流し始める。その涙を見た俺は何も言えなくなってしまうが、ライナスが、そのことについてアルスに問い詰めていたのである。アルスの返答を聞いたライナスはその事についてアルナと俺に伝えてきた。どうやら俺はあのアルターラという奴の攻撃で、体の半分以上が焼け焦げてしまったというのだ。

俺もライナスもかなり動揺していたがライナスの質問に答える前に俺はアルスの事が気になったのでアルスのことを訪ねてみる。そしてアルスに聞いたのはこのアルスの状態についてのことだった。アルスはアルスにどうして泣いているんだ、と尋ねてみると俺に抱きつきアルスが、

「だって!私のせいなのよ!!私が私のせいでこうなったんだよ!!!」

と泣きながら言っていたことを思い出し、俺はそんなに心配させてしまっているのかとアルスのことを見直すがそんなことを考えている暇はなかった。

「アルスに何があったんですか?それにその傷も、一体何が起きているっていうのですか?」

俺がそう尋ねるが、アルンは首を横に振るだけで答えなかった。アルスから聞くことは無理そうだと判断した俺は、今度はライナスに対して同じことを繰り返すがやはり何も話すことができなかった。俺はその事に少しイラついてしまい少し口調が強くなってしまった。

「だから!アルナはどうして泣いてるって言っているだろ!?早く教えろ!!!」

その言葉にライナスは、俺の言葉を聞いて怯えてしまったのだろうか。

震えながらもライナスは自分の知っている情報を全て話し出した。それはライナスの話は信じられないことだらけだったのだ。俺はそんなことありえないと思っていたが実際に起きていたことだったので否定することができずに、黙り込むことしかできなかった。

アルスに関しては、ライナスの話を疑うこともなく聞いていた。そしてそんな俺達の様子をみてアルスが急に立ち上がってその場を離れようとするので、俺は、アルスの事をとっさに抱きしめ、俺のそばから離れられないようにする。アルスは俺の拘束から逃れようとして必死に抵抗する。

俺はそんなアルスを見て俺はこれ以上、ライナスを怖がらせるわけにもいかないと思った。だから俺はライナスにこの話は誰にも言わないでもらえますかとお願いしそのことに納得してもらう。ライナスはアルスの事を考え、俺の提案に乗ってくれる。

それから俺達はこれからアルスとアルスの従者三人と俺の四人体制でアルスの母親の捜索を行うことが決まったのである。

そして俺は俺の従者の二人を連れて旅の準備をするために一旦屋敷に戻ることにした。そしてその途中で、俺はライナスと別れアルンと二人で屋敷に戻り、それから旅に必要なものを買い揃えてから、アルスの従者の人達と合流し再び魔族の国に向けて出発する準備を始めたのである。そして俺は、ライナスがアルス達に説明したことをアルスに聞かされた。俺はその内容に衝撃を受ける。その話を聞いたアルスが、自分が俺を殺さなかったばかりにと落ち込んでいたからである。俺は、アルスのせいではないと思いアルスを元気付けようとしたが、俺の声は届かなかったようで俺の言葉は全く届いてはいなかった。そこで俺達は一旦休憩をしてから、アルスの気持ちが少しでも落ち着いたところでもう一度説得しようと思う。それから俺は、魔族との戦いに備えて特訓をすることにしたのであった。それから数日後、アルスとライナスは魔族の国に到着していた。

それからアルスとライナスが、魔族国の国王に謁見をすることになったのだが俺はアルス達とは別々に行動することになってしまった。

そこでライナスがアルスにアルンの事で頼みごとをする。その頼み事はというと俺を裏切るような行動をしないでほしいというものだった。それに対してアルスも俺もそんな事はしないと誓うが、それでもまだライナスが何か企んでいるような気がする。その事をアルスとアルナに相談すると二人とも俺と同じ考えだったらしく、俺もアルナの事は信用できると思ってはいるがそれでもどこか不安になってしまう。そこで俺はこの魔族国の王との対面が終わったら、ライナスとアルスを二人っきりで会う機会を作るとライナスと約束をしておいたのである。それからアルスは、ライナスに連れられて魔族国の王のところまで連れていかれる。そこで俺とタローは、その様子を見守ることにする。そして俺とタロウが待機をしているとアルスに化けていた男が現れる。その男の事をライナスに問いただすが、ライナスもその男は知らないと言う。それでライナスがその男とアルスに何をしていたのか問い詰めてもライナスは答えることはできなかった。そのことで俺の頭に一つ疑問が生まれた。アルスはなぜ俺の事をあんなにも愛していたのにそんなアルスに、こんなことをするのか? 俺はそのことについて考える。俺はアルスにはライナスがアルスに化けるときに何かを言ったんじゃないかと考えていた。それを確かめるために俺はそのライナスを偽った男を捕まえるためにその男の後を追うのである。だがその俺の行動が読まれており、俺の前に突如現れた謎の女が、攻撃を仕掛けてくる。その攻撃で俺は大怪我を負い戦闘ができなくなってしまったのであった。俺とタロウはその女との戦闘になりどうにかタローの力で俺の命は助かったがタロウは力を使い果たしてしまって動けなくなってしまう。それで仕方なくこの場に残ってもらうことになったのだ。

その女が消えたあとに、その近くにいたライナスがアルナによって拘束されていたということがわかったのだがそこにいたライナスが本物なのかがわからなかった。だからそのことについて確かめるため俺は一度気絶したフリをしそのまま気絶しているふりをしながらアルナから話を聞くのである。俺は話を聞き終えるとライナスの顔を殴ると、本物のライナスが姿を現した。そして俺は、ライナスから話を聞くためアルスがいる部屋に連れていきライナスにアルスと何をやっていたのかを話すように要求するがライナスは、

「私はライナスです。そんなこと知りません」

と言って誤魔化したのである。だが俺はまだこの男がライナスではないと決めつけることはできない。なのでライナスの胸ぐらを掴み、俺はもう一度聞く。

「さっきお前は何をしたのかを言え!」

俺の質問に答えたくないのか沈黙を続けるがそんな時アルス達が部屋に戻ってくる。

アルス達の様子が変だったので俺は慌ててアルナに、アルスの身に何が起きたのかを確認するがアルナも知らないとのことだった。それから俺がアルナにアルスとライナスの関係を確認してみるとどうやらこのアルナの見た目をした男も、ライナスが作り出した幻影だったらしい。だが俺も騙されたとは言えライナスの本体の姿を見てしまった以上もう騙すことなどできないだろうと思いライナスのことを解放することにして俺はアルスの方へ向かおうとしたがアルスのことが心配でたまらなかったのだ。アルスが俺の方に近づいてきて、

「本当にごめんなさい!!」

と言い俺に向かって抱きついてきた。

そんな様子に俺は少し戸惑いつつもアルスのことを受け止めて頭を撫でてあげた。そんな俺達の様子をライナスも見ているので俺はこのままだとまずいと思いライナスに事情を尋ねようとするがライナスは逃げてしまったのである。俺は追いかけてライナスのことを追い込むがライナスから話を聴くことができず結局真相を突き止めることができなかった。

俺は魔族の国に到着する。その魔族の国に俺は足を踏み入れた時に少しだけ違和感を感じた。それが一体何が原因になっているのかわからず首を傾げていたのだ。そんな俺に対して俺が今抱いている感情にいち早く気づいたのが、アルンだった。

それから俺はアルンが感じ取ったものを詳しく調べてみることにした。俺の目の前に一人の人間が現れた。そして俺の頭の中にはなぜかこの魔族国にいる人たちに危険が迫っていると感じ取ることができた。そのことに気が付いた俺達はすぐにその場所に向かうとそこは、なんとアルターラの屋敷の中だったのである。アルターラは俺たちのことを歓迎してくれて俺達に食事を与えてくれたのである。

アルターラのその言葉が俺は不思議でならなかった。普通なら怪しいと思ったはずなのにその時俺は何も思わなかったのである。俺はそれから魔族の王に謁見することになるが、その前にアルターラは魔王様がお呼びになられましたと、言ってアルスのことを連れてどこかに行ってしまう。そしてそのことに関して俺は特に疑問を持つこともなく、その場を離れた。それからしばらくして、アルスに化けたアルターラが再び現れると、俺達を王城へと連れていったのである。そこで待っていた魔族王は、

「よくぞ我が元に来た。今日はアルスの事を救いに来てくれたことに感謝しよう。そして我の願いのためにその力を貸してほしいのだ。そのことはアルスも知っていることであり、アルスとライナスがその事を伝えに来るであろう。それまでゆっくりしていくといい。

そしてアルンに化けたライナスはアルンに対して俺に忠誠を誓っているのか確認をとる。それにアルンはしっかりとライナスの目を見てアルンは自分の意思でライナスをアルンの身代わりとしてアルンとしてではなく、自分の意志で助けたいと思っていた。それを聞いたライナスはすぐに、その場から離れるように促す。

そんなやり取りがあった後俺は魔族王に呼ばれてしまう。そこで俺は、俺にこの国で何をしたいのか聞かれてしまいアルスを救いたいということを言うが、それを聞いた魔族王が笑ってしまいそれからアルスの事を解放すると約束してくれた。その事に安心してしまった俺はその事をアルスに知らせに行く。

それから俺達は、アルンがライナスと会えたかの確認を取ろうとするとライナスが、俺達の前に現れてアルスに会いたいと頼むので俺がライナスとアルスを二人っきりで合わせる。そして俺は、俺達はライナスとアルスの邪魔をしないために二人っきりにさせてあげようと思って、俺達も二人だけで行動することにしたのである。その途中でアルナも一緒に行動することになった。そしてしばらく歩くとライナスの姿を発見することができて、その場所にたどり着くとそこにはアルスとライナスが抱き合っている姿が見えたのであった。

俺は、その光景に心が痛む。その気持ちを抑えて俺はアルス達に気付かれないようにその場所を離れようとしたのである。だけどそんな俺を二人は引き止めてくれる。俺は、アルスとアルナが俺の事を好きだという気持ちを改めて聞いてうれしかったけど俺はアルスとアルナはお互いに好きな人と幸せになってほしいという事をアルス達に話す。俺はアルスの気持ちに気が付いていたが、俺はその想いに答えることはできないのにその事でアルスが苦しんでほしくはなかった。俺がそういうとアルス達は、そんなことはないといってくれ俺はその優しさに嬉しかったがアルナだけは違った。アルナはその俺の言ったことを間違っていると指摘してきて、俺のことを好きというこの気持ちは間違いなんかじゃないと言う。

俺は、その二人の言葉を聞き俺は自分が二人を傷つけないように二人から離れようとしていた事が馬鹿らしくなって、アルス達の方を向いて三人に告白をしようと思い、その俺の言葉を二人が受け入れてくれなかったら、二人と友達でもいいからそばに居させてほしいとお願いをするとアルナから俺の手を掴まれ俺はアルナに抱き寄せられる。

俺は、そんな状況に困惑してしまっていたがそんな俺の顔にアルナが自分の顔を近づけて来て俺はそのままアルナにキスされてしまった。俺はそんな突然のアルナの行動に動揺して何もできなくなってしまったのである。そして俺はそのあとに、今度はアルスから唇を奪われる。アルスにそんなことをされて俺は混乱してしまいそんな様子をアルトはニヤニヤとしながら見ており俺はそのことが気になりながらもアルスからの告白を断ることなどできるわけがなかった。俺はそんな俺をずっと好きでいて欲しいと言われ俺はそんな言葉を恥ずかしくて言えないがアルスのその言葉に、俺は、うんと答えるのであった。

そしてそれからも俺たちはその日を楽しく過ごすが俺の体にまたあの感覚に襲われることになる。俺は、なんとかそれを我慢するが、やはり体がおかしいと感じて俺はアルターラに診察してもらうと俺の中に新たな魔剣の力が取り込まれてしまっていることがわかる。俺はそれからもアルターラの元で検査を受けるためにアルターラの屋敷に滞在し続けることになり俺はアルターラと色々な研究を行うがその間も俺の体の中で異変が起き続け俺は次第にその力を抑えることが難しくなり始めていたのである。

そんな状態が続き俺の体の異変はさらに進行していきついに、俺の中の力の抑えきれなくなり俺が今まで感じたことがないほどの強さを手に入れる。そのことに俺は不安を覚えるがそんな時に俺の体はさらにおかしくなってしまったのである。

それから俺の体にさらなる異変が起きると俺はその力を試してみたくなったのだ。だがそれはアルターラには止められてしまう。アルターラの話によると今の俺の状態は普通の状態ではないというのだ。そしてアルターラは魔族の王にその件を報告する。俺はそのことを聞いてその報告を受けた王のことを許せないと思い俺はすぐにでも王の元に行き抗議しようとしたがその時、俺の体に何かが宿る。俺の中からその何かが出ていこうと暴れ始めるが俺はそれを抑え込み何とか乗り越えることに成功する。

そんなことがあった後、アルターラはそんな状態でも魔族国のために戦ってほしいと言ってきたが俺も流石にこの魔剣の力と一体化してしまうようなことになればどうなるのかわからないため、その提案は断ることにしたのだ。そしてそれから俺がその力を完全に制御できるようになった時にはアルターラから魔族王の城に案内されるとアルターラが言うので俺が魔族王に会うことになったのである。

だがその道中に俺達の前には魔王軍の配下達が襲ってくるが俺達は難なく返り討ちにした。だが魔王軍は諦めずに再び俺達のところに現れて俺達の行く手を阻もうとするが俺達はすでにアルターラから魔王軍の本拠地の場所について聞かされているので、魔王軍が俺達を捕まえようとするならば、俺達は魔王軍に攻撃を仕掛けようと俺はそう考えていた。そんな時に、

「お主が勇者だな。我の名前は魔王バルバロッサじゃ」

と言い現れたのが先ほどのライナスと同じ容姿をした者だったのだ。

それから俺とアルターラがライナスをアルターラの作った幻覚で作り出された存在ではないかと警戒していたのだがライナス本人は本当にこの世界に存在する本物の魔族であることが判明したのである。

俺の目の前に現れたのは魔族王であるバルバロッサだった。

俺はバルバロッサに対して、アルスがどこに連れ去られたのかを問い詰めるが俺に対して簡単には教えることができないと言ったので俺はそんなバルバロッサに対して攻撃しようとした時にアルターラに制止される。俺はアルターラがどうして俺の行動を止めたのか理解できなかったが俺はアルターラを信じることにしてそのアルターラの指示に従うことにする。そんな時に、俺の頭の中では俺がこの魔剣の力に取り込まれるかもしれないと警告してくる声が聞こえてくるが俺はまだ自分の力で抑えられないとは思えなかった。しかし、それからすぐに俺は自分の身に何が起きているのかというのを理解することになり俺は自分を見失いそうになるが、アルターラとライナスのおかげでどうにか俺の意識を保つことができていた。

そしてアルターラは俺とライナスを魔王城に連れていくのであったがその前にアルターラは俺に魔剣を返してくれという。確かにその魔剣を俺は使うことができなかった。俺自身もその魔剣を扱えるかと心配していたが、俺の魔剣に対する適応能力が高すぎて使い手でないと使えないと言われているこの魔剣が俺に使えるようになっているとは思ってもいなかった。そして俺はアルターラに言われた通りアルターラに魔剣を渡すとアルターラはその剣に触りながらその魔剣の状態を確かめているとアルターラの表情は驚きに包まれたのだ。そして、アルターラは魔剣に吸い込まれるようにして消えていく。そんな時、俺とライナスの前に一人の少女が現れると俺の体を乗っ取ろうとしているのか俺の方に近付いてくるのがわかるが俺はすぐにその者の気配を感じ取り俺はその者を撃退する。その者を見たライナスはすぐに敵だと認識して、その者が俺に取り憑いていたのでその力によって俺は操られていたのだという事がわかっていた。その者は自分の正体を隠すために、俺に化けていたのでライナスも騙されてしまいその者はライナスの隙を突いて逃げ出そうとしたが俺がその者の事を追い掛けて捕まえると、その者に憑依していたものの正体を俺の頭の中に流れ込んできてそれが一体なんなのかを俺は理解したのである。その人物の名はリリス。かつて俺とライナスとアルターラが旅をしていた頃に俺が倒そうとしていた元人間の魔王の眷属の一人。

そんな彼女は人間であった頃の記憶を失い、今や自分が魔族だと思い込まされており彼女の中にいる魂はかつて自分が魔王の生まれ変わりだと信じており、その魔王を倒すという意思だけしか残っていない。そのため彼女は魔王の復活のために、この魔族の国を乗っ取るつもりのようであった。

俺とライナスが魔王城の中に入るために城内に侵入するが、そんな俺達のことを待ち構えていたのか多数の敵が出現して俺達に襲いかかって来たのである。その襲撃はあまりにも数が多く俺達だけではなく、ライナスもその者達を応戦しなければならないほどであり、俺はこのままでは俺達は全滅しかねないと判断をする。俺はこの状況を切り抜ける方法を考えていたがそこで、俺はこの城を守護するために造られたゴーレムの存在を思い浮かぶ。俺はその考えが間違いではなかったのかを確かめるために俺達に襲いかかってきていた魔族の一人を斬り倒すとそいつから出てきた光の粒子が地面に落ちた途端にそこに存在していた魔族は姿を消した。

やはり間違いではなくその魔族は魔剣に宿る闇の属性の力で作られた疑似的な魔族だったのだ。俺はそれから襲い掛かってきた敵を魔剣の闇の力を使い一掃していくと俺の体にまた異変が起こることになる。魔剣の力は俺の意思と関係なしに発動していて、それに体が支配されていく。そんな感覚に襲われた瞬間、俺のことを助けてくれたのは俺達のところにやって来た魔王の配下の一人であるミレーという女の子の存在があったからだ。

俺は、そんな彼女を見て、自分が初めて会った時のことを思い出すとその気持ちのまま俺は彼女を救おうとするが俺が動くより先に、ミレーが何かを唱え始めた。その瞬間にミレーの手のひらから光が放たれてその光に触れた俺の体の不調は収まり、それどころか今までよりも強い力が湧き上がってきたのを感じる。俺はすぐにアルターラの言っていたことを思い出して俺のことを回復してくれたであろうミレーに話しかけようとしたら、そんなミレーに他の敵の対処を頼んでしまう。そして、俺はこの魔剣と一体化する前に魔族の王を倒してこの騒動を終わらせると決意を固め、この魔族王が作り出した迷宮の仕掛けを解きながら俺の体に異変がないかを確かめて、俺の肉体の変化を確認していたのである。その途中で俺は、ある事実に気づいてしまったが俺はそんなことを考える暇がないくらいの緊急事態に遭遇してしまうことになる。俺の体にまた変化が訪れたのだ。俺は自分のことをよく見ると俺の背中にコウモリのような羽を生えており俺は驚いて、俺はアルターラの方を見ると、

「どうですか?魔剣の力は」「この力はなんだ?」

と俺の質問に対しアルターラは何も答えず、そして、そのアルターラの姿が変わっていったのだ。アルターラのその姿が変わり終わるとそこにはライナスがいたのである。

「なんだよ。この体は!?」

俺はそう叫んでアルターラの方を見ていたがアルターラは自分の姿を気にすること無く俺に説明を始める。

「これは私の力で生み出した私の複製です。魔族王と戦う際に役にたつと思いますよ。それを使って魔族王と戦ってください」

「こんなものを使うなんてアルターラらしくないな。いつもなら自分の分身を作ってでも戦ってくれというはずなのに、今回はそんな余裕がなかったのか」

「そんなことより、もう時間はあまり残されていません」

とアルターラが言っているとアルターラが俺達の前に現れた魔族が急に倒れてしまったのだ。そのことに俺とライナスは気になりアルターラは俺とライナスがこの魔族と戦おうとしているときに俺の体に起きた異変をどうにかしようとしていたとのことだった。アルターラはこの異変については何も言わずに俺に戦うように指示を出してきたので、俺は仕方なくアルターラが生み出しこの魔族王の作り出した迷路の中で俺達が魔族王との戦いで邪魔にならない場所へとアルターラに誘導されると俺は魔剣を構えてから、魔族王に向かって突っ込んで行った。すると魔族王は、

「そんな魔剣で俺に勝てると思っているのか。お前ごときで俺には勝つことはできない。俺が本当の強さというものを教えてやる!!」

魔族王と戦闘を始めた俺であったがすぐに、俺は追い詰められることになるが俺はなんとかこの窮地を乗り越えることができたのであった。

俺は魔王の配下の一人と戦い始めて、俺はどうにかその魔族に勝つことができたのだが、俺の体力はかなり消耗しており正直に言うとかなり危なかったのである。そんな時、魔剣が突然暴れ出したかと思うと魔剣から黒い波動が広がりその波が周囲に広がっていく。俺はそんな状況になったのに戸惑いながらもこの状況を打破しようとして俺はまだ魔剣を扱いきれていない状態だが俺は魔剣を手放すとこの黒い霧状の闇を振り払おうとしたのだ。しかし、この俺の行動は無意味に終わる。その霧をいくら斬っても、切り離そうとしてもまるで俺の動きについて来ているように、そしてこの闇の中に入ってしまえば命を落としかねないのである。

それから俺はこの空間から逃れることができないとわかったので俺は、ライナスだけでも助け出すべく俺はこの霧の中にライナスを連れて行こうとしたのだがその時に、その霧の外からアルターラの声が聞こえてくるとアルターラは俺に、魔族王と俺の相性が悪く俺が魔剣に飲まれると俺は魔族に体を乗っ取られてこの魔剣の力に支配されると忠告した。なので、アルターラが作り出したその結界のようなもので俺は閉じ込められてしまっているということがようやくわかり、俺はこのままだと俺は魔王軍の味方になってしまいアルターラの敵になってしまうと思いすぐに俺はライナスにアルターラが言っていた通りに魔族王に勝てるようになるまでここで待っていてほしいと言うと俺はそのライナスを置いて俺は再び魔族王の元へ戻ろうとするとライナスは自分がここにいることを伝えてきたが、俺はその言葉を無視してここから脱出する方法を考えながら、どうにかしてこの場から逃げようとしていた。しかし俺とライナスを捕らえていた結界が解かれると、俺達はそのまま外に出ることに成功する。俺達はそこから脱出してすぐに俺とライナスはその場所に駆けつけた。そして俺とライナスがその場所にたどり着くとアルターラがそこにいて、アルターラが俺達の元に近付いて来る。

そして俺とライナスは、アルターラと魔王について話をすることにする。

まずは魔王について俺が知っている限りのことを話し始めるとライナスが魔王の眷属だった頃のことを知っているようでライナスが魔王のことを話すと、魔王軍で四天王と呼ばれている四人は魔王によってその体を改造された存在であり、その中でも一番改造の度合いが大きかった者が魔王の側近でこの魔族を束ねているのは魔剣に魂を奪われていて自分の意思を無くしてしまった元人間の女性である。

そんな彼女がなぜこのようなことをしているのかが俺の疑問だったので、その理由がわかるまでは彼女と戦うことが正解だとは思えないので今は様子見をしている最中だったらしい。それから彼女は魔剣と一体化したことで、人間だった頃の記憶は無くなり彼女の中にいたタロウの記憶だけが彼女の頭に流れ込んでくることになる。それは、彼女の中で眠っていたタロウという人間が本来持つ力を引き出すための処置だったが、それが逆に仇になってしまったのだという。そんな時、魔族を裏切ったはずのリリスが魔王城に攻め込もうとしていたことにライナスは気付きリリスが何をしようとしているのかを確かめるためにライナスも行動を開始したのだという。ライナスがリリスの事を探り当ててそこでリリスが魔族を裏切りリリスの仲間をこの国に連れ込み魔王城に連れて行ってしまう前にライナスはリリスのことを殺そうとしたが、ライナスの攻撃が通用しなかったらしく結局のところ取り逃してしまう結果に終わってしまったのである。ライナスが悔しがっているのを見た俺はライナスのことを励まそうとしたがそこで俺はライナスの様子がおかしいことに俺は気づくことになる。なぜなら、この魔王領の上空に俺達がいるこの場所の近くで巨大な隕石が落ちてきているからだ。そして俺は、アルターラがこの隕石を止めようとしていることに気づくと俺は慌ててその隕石の元に向かうがアルターラは既に隕石に干渉していた。

そして俺はそんなアルターラに対して、俺は今の自分の実力がどこまで通用するのか試すため、そして、アルターラのやろうとしていることは、この隕石の衝突からこの国を護るために必要だということがわかる。だから、俺はアルターラと一緒に隕石を止めることにしたのだ。

「私はこれからあの隕石を操作しようと思います」

とアルターラがそう言ったのと同時にアルターラの手元が光り輝き出すとそこに存在していた巨大な隕石が動き始めた。そんな光景を見て俺とアルターラは急いで隕石に向かって移動をする。アルターラの移動速度に追いつくためにアルターラが隕石に手を触れると、隕石は落下していく方向を変え始めたのだ。

しかしそんな隕石の動きを邪魔するように隕石の周りではいくつもの火の玉が現れ始め俺達のことを狙ってくる。そんな攻撃をアルターラは避けながら隕石を操作するのに集中しており、俺は魔剣に魔力を込めてこの迫りくる火球を切り払っていくがそれでも防ぎきれないほどの攻撃量があり次第に隕石の方ではなく俺たちの方が押され始めていたのである。その時俺はある事を思い出してその火の弾を放ってきた相手を見つけて俺はその相手を攻撃することに決めたのだがそいつはこの国の兵士の姿になっていた。そして、その兵士の姿をした敵に気を取られた一瞬の間に俺達はその敵達に捕らえられてしまうと意識を失ってしまうことになる。そして次に目が覚めたときには目の前には先ほど俺とアルターラのことを拘束してくれた男がいたのだ。しかも、アルターラの姿は無くなっており代わりにその男が俺のことを拘束したまま何かをしていたのだ。それから俺達が拘束されたままの状態だと何もできないと思った時、魔剣が再び暴走を始める。その暴走の影響で魔族の気配が周囲に広がると男は俺のことを放置してこの場から離れていってしまったのである。俺は、そんな魔族の姿が見えなくなる前にこの魔剣を抑えつけようとしたが全く意味が無く魔剣が放つ波動のせいで魔族の姿が見えない状態だったのだ。

俺とアルターラは魔族が作り出した迷路のような道に迷い込んでしまい魔族と遭遇することもなくただ魔族が生み出している魔物を倒すことで時間を潰してしまっていた。

「なぁアルターラ」

と俺が声をかけるとアルターラが、

「どうしたんですか。勇者殿?」

とアルターラは答えるが、この会話に意味があるのかわからない。俺は魔族王との戦いの時は、アルターラとは協力するがアルターラの本当の仲間ではないと俺は思いながらも魔族王と戦っている。だがアルターラは、魔族王と戦おうとする俺に協力してくれた。俺にはその意図が読めなかったのだ。しかしアルターラはそんな俺の考えを読み取ったかのようにこう言った。

「別に私とあなたの考えが同じというわけではないのですがね。でもあなたには私と敵対するよりも私と協力して魔王と戦った方がいいと私が思っただけですよ。私にも魔族王という強大な敵に立ち向かうという気持ちは同じはずですから。でも魔族王が今の状態で私達が協力して戦ったところで勝てる見込みがあるかどうかというところなのですがね。それなら、少しでも可能性のある方を選択する。これは普通のことだと思いますが?それに魔族王は魔王様に忠誠を誓ったわけではありませんので、私のことも快く思っていないかもしれませんので。もしそうなのであれば私はこの場で魔王様の配下として戦いたいと思っているんですよ。魔王軍に身を置いていたのも全ては魔王軍の為。そして魔王の味方になったつもりも毛頭ないのになぜか魔王は私と敵対してくるんですよ。こればかりは全く持って理解できませんでしたよ。だから私は魔族王に勝つことができたらこの体を使ってくれる魔王様にお礼を言いに行きたいですね。その時にはきっとこの体を完全に手に入れていると思うので、この体がどんな能力を持っていたとしても使いこなせるように努力をするつもりです。それと魔族王を倒せば恐らく魔王軍の勢力図が変わるでしょう。魔王の勢力が弱体化すると、魔王の右腕と呼ばれる四天王も魔王に刃を向けることができる。そうなれば、魔族王を倒してこの魔剣の力を得た私が他の四天王と争う必要はない。魔王を魔王軍をこの手で叩き潰してやる。そのついでにあなたも倒します。

そう言ってアルターラはこの先に魔王城に繋がる入り口が開く場所を見つけることに成功したらしい。俺もそれについて行くことに決めてアルターラが開けた道を二人で歩いていった。その途中俺は魔族について聞くとアルターラは少し機嫌が悪いように感じる。しかし俺は、この世界の住人のことについて詳しく知りたかったのだ。俺は今まで魔族が悪者だと教えられてきていて実際にその場面に遭遇することもなかった。魔族は魔王に従っているだけで悪い連中ではなかったのではないかと今では思ってきている。だからこそ、俺はこの世界のことを知りたかった。俺がそうアルターラに言うと、この世界では人間の数が一番多いのが、この大陸にある国の内三つである。

そしてその三つの国で人間は生活をしており、それぞれの国では魔族が暮らしている地域も存在している。そして残りの二つのうち一つが人間以外の人種の国で、もう一つの国が俺達が住むこの魔族が住んでいる魔族が住んでいない人間しか暮らしていない国だ。魔族が暮らすその二つの国はお互いに争い合うことはしないという決まりごとができて平和を保たれてきた。その国々は、俺がこの世界で生活していくためにも必要な存在でもあるためいつかはその国も訪ねないといけないと思いつつ俺達は魔王城に近づいて行った。

そして魔王城は俺とライナスがこの魔族領を脱出するために通ってきた門からかなり距離が離れていた場所に魔王城があったのである。魔王城の周りには、魔王の眷属達によって作られた迷路のような迷宮が作られていた。

しかし俺達は、アルターラのお陰で迷わずに進むことが出来ていた。

そしてその魔族が作ったと思われる迷宮の中にいた魔王の眷属の一人をアルターラが倒したことでこの迷宮に仕掛けられた結界のようなものが完全に消えたので俺は、そのまま魔王城の扉を開けようとアルターラと一緒に向かっていく。そして、俺とアルターラは魔王城内に入っていこうとした。その時に俺はあることに気がつく。それは、魔族たちがまるで侵入者を阻むかのような動きをしているような感じなのだがその理由がわかっているのか気になりながら俺は魔王城を進んでいきついにたどり着いた場所は謁見の間だったのだ。

そこは、かつてリリスの仲間であったライナスがその力を覚醒させて初めてリリスに出会った場所であり、リリスと共にライナスが初めて出会った人間であるレイアスと出会った場所でありリリスにとっては思い出深い場所でもあった場所だったのである。しかしリリスはその二人によって命を落としてしまったのである。そんな場所で魔王は待ち構えるように俺達のことを待っていた。

そんな状況の中、突然この部屋の天井を破壊して俺達に攻撃しようと試みる一人の男がいたのである。その男の攻撃を防ぐことができなかったがその男の持っている魔剣が放つ力を見て俺はすぐにそいつの正体がわかってしまった。なぜなら、俺のこの体を奪おうとしている魔族の魔剣の波動にそっくりなものをその男が握っていたから。そしてそいつは魔王と同じような鎧を身につけた姿をしていた。俺はその男を知っているが俺は知らないふりをすることにしたのだった。

俺はタロウからその話を聞かされたとき、その魔王軍の拠点にいるはずの魔王にどうしてタロウが会うことが出来るのか気になって俺はその疑問を口に出す。俺にはそのことが理解できないのは当然のことだった。

「なぜそんなところにタロウがいるんだよ?」

と俺は思わず叫んでしまったのだ。しかし俺の叫び声など気にせずに、

「魔王様が俺の目の前に現れたからだ」

と答えてくれる。その答えを聞いて俺はその言葉の意味を理解できなかったのだ。そんな風に俺は思っていたのだが、

「どういうことなんだ?」

と質問を投げかける。すると、その男は、

「魔王様には、魔王の魔力を持った魔族の体に憑依して、その肉体と精神を手に入れることができれば、自分の意思を持っている魔族に俺の意識を移せるんだって。まあ簡単に言えばそういうことだったからさ。それで俺がこうして魔王の肉体を手に入れたわけだよ。そして、お前たちには消えてもらう。そしてこの魔王軍を利用してこの国を手に入れさせてもらった」

と言って、俺に襲い掛かってくる。その魔族を俺が倒そうと思ったのだが俺が動くよりも前にアルターラが動いてくれていて魔剣を一閃させるとその男を一撃で斬り伏せてしまったのだ。そんな魔族の姿を見た俺が驚く前に俺のことをアルターラが心配してくれていた。その表情には先ほどまでの俺のことを敵と認識していなかったときの感情ではなく本当に俺のことを想ってくれていることが読み取れる。しかしそんな時でも、この部屋には俺たちの敵が存在していたのである。それは魔王の眷属の一体だ。その魔物に対してアルターラは魔剣を構えるがアルターラは俺の方をチラッと見てくる。その目線からは早く魔王を倒してほしいということを訴えかけている。俺はアルターラのその思いを感じ取り魔王のところに向かって攻撃を仕掛けようとしたが、魔王が俺の邪魔をするかのように立ちふさがり攻撃を防ごうとするが俺と魔王の間に突然魔方陣が出現したのだ。

その魔方陣が現れたことによって魔王の動きを止めることに成功し、そして俺も動きが止まってしまった。その魔方陣に警戒したからである。この魔法は恐らく俺とアルターラを分断するためだけに発動された魔法だと思った。その魔法の効果はすぐに表れることになってしまう。

アルターラは、この魔法を発動させた魔族に攻撃を仕掛けようとしたのだがその前にその魔族はアルターラに向けて手をかざすだけでアルターラの体が吹き飛ばされてしまう。そんなアルターラの姿を見て俺は魔王に止めを刺そうとしたのであるがアルターラの方に目を取られてしまい魔王の攻撃を受けることになったのであった。その魔族が使った魔法は恐らく転移系だと思うがこの魔法は使用者にデメリットがない魔法だということが分かってきた。そのおかげで、俺とアルターラを無理やりに離れさせることができているのだ。

俺はアルターラを助けたいが魔王の圧倒的な実力差で全くもって反撃することができなかったのである。そして、アルターラは倒れている状態で、

「あなただけでもここから離れて。ここは私が何とかするから!」

と言い出したので、俺はその通りにして逃げることにした。アルターラを置いて逃げても俺にとっては全く意味がないことだというのは重々承知しているが俺はそうすることしか選択肢がなかった。だが俺一人でも絶対に生き残るという気持ちが強まったので俺はそのまま魔王から離れることにする。魔王との距離が離れたところで魔王がアルターラにとどめをさすためにアルターラの元に駆け寄り手を向けたところで、俺は魔王の右腕であるあの四天王の体を奪っていた奴が使っていた闇の刃のスキルを使い魔王を背後から切り裂くことに成功する。

魔王に致命傷を負わせることができたがそれでも魔王を倒すには至らなかった。魔王はまだ生きており魔王を殺せなかった俺のことを殺すために迫ってきた。しかし俺の方もアルターラを助けることができない以上ここで死ぬわけにもいかない。そして俺を殺そうとしてくる魔王の攻撃を避けることで精一杯の状況である。俺に余裕が全くない状況の中で俺はあることを考え始めた。

(この状況を変えることができる手段を何か持っていないか?)

と考えて俺は魔王との戦いの最中も常に考えている。すると俺は、俺にまだ完全に力を与えてくれないこの世界の神に対して文句を言う。俺だって頑張っているし努力もしている。俺なりに一生懸命になっている。だけど俺はこの世界に転生させられた理由が未だに分からず納得していない。この世界に来て俺は何度も死にかけた。それもこれも全部が全部あいつらの所為で俺の人生は狂ってしまったのだ。そのことに俺はかなりイラついていた。だから、この世界で生きている魔族のために戦うのならともかくこの世界に住む人のためなんかに俺は戦いたくなかった。俺はそのことに関してこの世界での神様の使徒として俺が選ばれた理由を知りたかった。この世界の人達はどうなってもいいがこの世界の住人達を見殺しになんてしたくなったのだ。だからこそ俺は、今俺の中にあるこの世界で生きる人々を助けたいという思いで魔王と向き合っている。そして俺は、魔王と戦う中で一番有効な攻撃方法を考えると魔王の弱点は頭だと分かった。そして、俺は魔王の背後に回る。

そして俺は、俺が持つ最大の攻撃力を持つ魔剣の固有技能を使うことにする。この技を使えば俺はこの場で魔王を完全に倒すことはできるのだがそれだと魔王城が崩落してしまい、この場にいる人たちが犠牲になることを理解したのだ。それにこの場所でその必殺技を使うと魔王のいる位置が確実に崩壊に巻き込まれる。それだけは避けないといけないので魔王の後ろに回った後すぐに俺はその場から離れようと考えたが魔王が俺の気配に気がつき振り向いてくる。しかし、もう俺には何もできなかった。俺と魔王との間に突然魔方陣が出現する。

その魔方陣に警戒しながら俺がその魔方陣に警戒をしているとアルターラのその魔方陣の効果なのか魔王と俺の体がアルターラがいる場所に強制的に戻される。そして俺達が元の位置に戻ってくると同時にアルターラに攻撃を仕掛けようとしていた魔王は俺達がいないことでアルターラへの攻撃を止めてそのままどこかに行ってしまったのである。そんな様子の魔王を見て俺と魔王は同時に舌打ちをしたのであった。

俺がタローと戦っている時に、俺はタロウの話を聞きながら魔王がどうやってタロウの中に憑依できたのか気になった。そんな話をタロウがしていた時に、

「そんなこと俺が知るかよ」

と言って、魔剣を取り出してその魔剣の力を使ってタロウを攻撃しようとする。その瞬間タロウが、その男の前に出てくれた。そんなことをされてしまえば、俺には攻撃することができなくなってしまう。

しかしそんな俺の考えとは裏腹に、

「まあそんな話はどうでも良いだろう。そんなことよりも魔王軍の幹部を一人倒したって話じゃねーのか?そんな話よりこっちはこれから忙しいんだよ」

と言って男は俺達を睨みつけてくる。そんな男を見て俺は、魔王のところに向かおうと試みるがこの男によって足止めされてしまう。その男は本当に俺達の邪魔をしてきていて俺は、

『こいつの動きを止めるかどうにかできないか?』

と考えてしまう。そんな時に魔王から俺に声をかけられた。その言葉の内容に俺は魔王の言葉に従うしかない。

俺はその魔王の命令通り魔族の国で起きている問題に対して俺が解決することにした。この問題を解決するにはまずはこの魔王軍に所属していると思われる魔族の女性の体を乗っ取り好き勝手やっているこの男の魔剣を奪い取る必要があると俺は判断した。

その男は、自分の目の前に現れた魔王の眷属であるアルターラを倒そうとするがそのアルターラを自分の目の前に現れた男が庇ったことによって邪魔をされてしまった。俺はそいつのことをかなり警戒していたが、魔王の指示通りに俺の体を奪った魔剣の所持者である男から魔剣を奪うことに決めた。俺は自分の体に意識を集中させる。

そんな風に俺は自分に話しかけた魔王の言葉に従って魔族の女の人の肉体を乗っ取った魔族の魔剣の所持者らしき男のところに向かい攻撃を仕掛けるのだった。その男は魔剣で攻撃をしてきたのだがその男の動きは素人同然だったので、その攻撃を簡単に回避することができた。

しかし、その魔族の女性は、魔王の側近らしくなかなかに強い。なので俺と魔王はその女に苦戦することになったのである。そしてその女性をなんとかして倒して魔剣を手に入れることに成功したのだがその時魔王がとんでもない行動をとったのである。なんと自分の腕を切り落としてしまったのだ。その切り落とした魔王の腕から現れた魔族の男は魔王に向かっていったがそんな男は俺の放った剣圧に飲み込まれ消えてしまう。そして俺達は魔王の元に戻ろうとするがそんな俺達に魔剣の男が襲い掛かってきた。しかし俺はその男に対して先ほど魔王の肉体から出たばかりの血がついた状態の魔剣で攻撃を加える。するとその血が剣に吸収されてしまったのである。そんな魔剣を俺は回収しようとしたが、魔剣の男が自分の血を吸収したことに動揺したのだろうその隙をついて、魔王が魔剣を持っている俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。俺はその攻撃を受けそうになった時俺はあることに気づいた。

その攻撃を俺が受けることによって魔剣が壊れたら困るということが頭を過ぎったので俺は咄嵯に魔剣の刃の部分で受け止めてその攻撃を受け流した。そして、俺はその攻撃をうまく受け流すことができたので魔剣に傷がつくことがなかったのである。そして、その攻撃を受け流されたことにより魔王はバランスを大きく崩すことになる。そしてその一瞬で俺が魔王を殺せないと察した魔王は転移系の魔法を発動させその魔法を使い魔王の体から抜け出すことに成功する。そして、魔王は俺とアルターラから逃げようとする。俺は、この機会を逃してはならないと思い、その魔王の行動を封じようとした。

その俺が使った魔法は自分の影を操る魔法であり、俺が使える闇魔法の中の一つであるこの技は俺が想像したことが実現可能な力を与えてくれる能力がある。そして、俺はその力でこの場にある影という影を支配していくとその支配下におかれたこの空間では俺に危害を加えられるものは何一つ存在しなくなったのであった。その結果魔王がどんなに俺に抵抗しても俺には敵わないということが分かるはずなのにそれでも俺を殺そうとしてきた。そして俺が魔王に止めを刺そうとしたらその俺と魔王の間に魔方陣が現れて魔王がその魔方陣から逃げようとし始めた。だが俺の力でこの魔方陣を消すことはできるがそれをしてしまうと魔王がどこに転移するか分からないので、俺は魔王を逃がすことにしたのである。そんな魔王に俺の体に入り込んだあの魔族が魔王がこの国に入ってきた時からずっと付け狙っていたということを聞いて、そのことについて質問をした。

「おいお前、魔王にこの魔剣を渡せばどうなる?」

その俺の問いに、その男は答える。

「この国の王が持っていた魔剣を手に入れたことであの方の計画は完成するはずだ」

俺はその答えを聞いた時に、

(つまりあの魔王がこの魔剣を手に入れてもあの魔王にとってはどうでもいい物なのか?)

という結論に至る。そして俺の体に入ったあの魔族に、魔王が逃げた後のことを全て教えてもらうことにしたのであった。

そして、この魔王に体を操られている俺の体に入り込んでいる奴の情報を少しだけ聞き出すと俺はこの魔族の国で起こった問題について少し理解することができるようになる。魔王に憑依されたこの男の正体についても分かってきた。この魔族は魔王に命令を受けてこの魔族の国にいる全ての女性に対して洗脳を施したということが分かったのだ。しかもその洗脳の効果は強く一度施されれば死ぬまで解かれることがないらしい。さらに言えばその効果を解く方法はこの魔剣を手放すことだという事も分かる。この魔族はこの城にいる女性全員の洗脳を既に終わらせているようだ。そして今俺達がいるこの城には元々いた男性達は既に殺されてしまい、今この城に住んでいるのは魔王に洗脳されているこの城で働くメイドと使用人達だけだった。この城の使用人達は今現在この魔王城を守るように魔王に言われているようであった。そして、そんな話を聞いていた俺はこの魔王がどうして俺をこの世界に送り込むように命じたのか理由がわかったのである。

その男によるとこの魔剣は魔王が持っていると不都合なのだ。その魔王の本当の目的はこの魔剣を使ってこの世界の魔獣達を全て殺して世界を滅ぼそうと考えているからである。そのことを知った俺はそんなことはさせないと思い、俺の体の中に入っているこの魔王に俺が魔剣を手放させることを決意したのだった。その計画を実行するために俺は魔王の体を支配できるようにしてその計画を確実に成功させるための準備に取り掛かったのである。その計画のために必要な材料は魔剣だ。その魔王が持つ剣を奪って俺の体に魔剣を取り込むことができれば俺にこの魔剣を支配することが可能になるはずであると俺は思ったのである。しかし俺のその考えはすぐに否定されることになる。俺のその作戦を実行しようとした瞬間、その男は俺が魔剣を手にしていることを確認すると俺に襲いかかってくる。そして俺が魔剣を持っていることに焦り始めた。その理由は簡単である。もし俺がその剣で魔王の心臓を突き刺したならば、その魔剣の固有技能は失われてしまう。その固有技能を失うことを恐れたその男は必死になってその魔剣の奪還を狙ってきたのである。しかしその男の狙いに気づいた俺は、その男の行動を先読みし男の剣を避け続けるのであった。

俺がその男から繰り出される剣の攻撃を俺は自分の体を乗っ取っているこの男から主導権を奪うことができるのなら魔剣を使っても良いと思ったので魔剣で男の体の支配権を奪うことにする。俺は自分の体を乗っ取らせていた男に俺の支配から逃れられないようにする。これで俺が主導権を握ることに成功すればその男の体が俺の自由に扱えるようになるはずだと予想していると、俺は俺の体に入ってきた男をなんとか抑えることができている間に、魔剣を奪い取ろうとするのだがやはり魔剣の力が強いようで魔剣をこの手に掴むことはできなかったのである。しかし、魔剣を手放すのも時間の問題だと悟ったその男はある手段を使った。その男が俺に向かって攻撃してきた瞬間に俺は自分の腕を切り落とす。その切り落とされた腕は魔王の支配下にあったせいかその魔王の力によってすぐに再生してしまいその腕は元に戻ってしまったのである。それを確認した魔族の男は舌打ちをすると自分の剣を鞘に収める。

そんな魔族の男は魔王の元に向かっていきそして俺の目の前から消えるのである。おそらく自分の肉体に戻っていったのだと思われる。そんな様子の魔族の男は俺の方を見ることなくその場から立ち去ってしまうのであった。そしてその男を追いかけるために俺はこの魔剣の所持者である男を倒すことよりも優先することがあると思った。なので俺は自分の体に自分の魂を宿らせると自分の体の中に魔王の体に入っていた男が持っていた魔剣を取り出す。魔剣から現れた男を魔王の体に返し、魔剣の所持者ではなくなってしまった魔剣を俺は奪い取ることに成功する。そして俺は魔剣を持ってその男の後を追い、魔王の元にたどり着く。そこには魔剣を持っていた男の姿はなかった。おそらく魔剣を持ったその男と魔王はすでにこの場所を離れていて、今はその二人共どこか遠くの場所に移動してしまっているだろう。だからといって、この魔剣をそのまま放置することはできない。なので、俺はこの魔剣を自分のものにするためにある行動をとる。

まず俺は自分の体を魔剣に吸い込まれるような感覚に陥ったのである。それから数秒後俺はこの魔族の体から抜け出すことができたのであった。そしてその俺は魔剣の所持者として認められたのか魔剣が勝手に動いてその剣身が真っ二つに分かれ、俺は二対になった魔剣のうち一振りを手にした。そして俺は魔剣が自分の意思で俺に話しかけてくる。

『私は、あなたの魔剣です』

俺には魔剣の言葉が聞こえてきたのである。俺はそんな言葉が俺の頭に響き渡っている最中に魔方陣が現れたのでその魔方陣の中に入った。そして魔剣と会話をしている場合ではないと思い、その魔王が逃げたであろう場所に向かったのである。そしてそこで魔王を発見した俺は魔方陣を起動させて、魔王に攻撃を仕掛けようとしたがその前にこの空間に別の人間が転移してきたため俺は咄嵯に回避行動を取る。

すると魔王の目の前に現れた人物が突然魔王を攻撃したので俺はこの人物を止めに入ろうとする。だがそんな俺をもう一人のその魔王に攻撃を仕掛けている人物の仲間のような人間達が取り囲んだ。だがその時に、俺は魔剣の力でその二人の攻撃を防ぎその魔族と魔王を逃がしてしまったのである。

そんな風に俺が戦っていた時魔王と魔王に攻撃していた人間の女は、何かを話していたのである。そして俺はその会話を聞いているとその話の中で、俺は魔王が何を考えているか理解できてしまう。

魔王は魔族達を奴隷にしてその魔族達の命を犠牲にする実験を行いこの魔族が魔族達にやっていたような人体の実験を行っているということが発覚した。俺はそんな非人道的な行為を行なっている魔王を許せなかった。そのため俺の体は自然と動いていた。そして魔王に攻撃を仕掛けた人間を殺しそうになったところで俺に話しかけて来た存在がいた。それは俺に体を明け渡した魔剣の意思であり俺のことを心配して話しかけてきてくれた。そのおかげで俺は正気を取り戻し、俺は自分の体に戻ってくるのである。そして俺は魔剣との会話を終える。その魔剣は自分と一緒に魔王と戦うことを決意してくれることになったので俺としては戦力が増えたことになる。ただ問題はこの体を支配している魔族が魔獣達を集めて何を始めようとしているかということが気がかりではあった。だがこの体の本来の主人格が戻ってきたことでこの体の主導権を取り戻すことができるはずなのだがこの体の持ち主が一向に目を覚まさないので俺としてはこの体の中に入っている奴を叩き起こそうと考えたのであった。

俺の体に乗り移って魔王の体を支配しているはずの魔族を目覚めさせることにした俺はこの体の主であるこの男を目覚めさせようと声をかけたのである。しかし反応がなく、その男は意識を失ったままだ。仕方がないと思って俺は無理やりでも起こす方法を考えると、俺は自分の体に魔力を送り込んで、強引に体を起こすことにした。

そうやって俺は体を起こし自分の体に魔力を送ることによって無理矢理起き上がらせる。そんなことをしているうちにだんだん自分の体に変化が現れ始める。自分の体の変化に戸惑いを感じながら自分の体を確認すると俺は自分の体が変化を起こしていることに気づいたのである。

(え?どういうことだ?)

なぜかわからないが俺はこの体の中に入り込んだ魔族の体から解放された。だけどその代わりに俺に新しい体の所有権が与えられた。この新しい俺の体にはあの魔王に憑依されていた時の魔族の記憶がそのまま引き継がれており、さらにあの魔王の持つ魔剣の記憶が俺の中に入ってきた。その魔剣は自分が魔剣であるとこの世界の俺に告げる。俺はその魔剣に問いかける。お前は魔剣であって魔剣の本体はこの世界にないんだよなと聞くと、魔剣はそうだと答えた。この魔剣は元々ある魔剣に封印された精霊なのだが、その精霊が俺の体に宿ることで俺は魔剣に宿っていた力を手に入れることができるようになったというわけだ。その俺に力を貸してくれていたこの魔剣に俺は感謝した。その俺に対して魔剣は礼を言われるほどでもないと言い出した。

俺はどうしてだと魔剣に疑問をぶつけると魔剣は自分の力がこの世界の人に使われたのは初めてだと嬉しそうに言ってきたのである。魔剣はどうも俺に魔剣を振ってくれと言っているみたいだ。俺がこの世界にやってきた理由は、魔剣をどうにかして回収するためにこの世界にやって来たからである。魔剣をこの世界で見つけてその所有者となればこの世界でも魔獣の力を思う存分使うことができようになると思ったのだ。その願いを叶えるために俺はこの体を使って魔王を退治することを決意したのだった。

俺は魔王の肉体に取り憑くことに成功し、俺は魔剣を使って魔族の肉体を支配した。その肉体を手に入れた魔王の肉体に俺は乗り移り魔王として君臨しようとしたのである。しかしその計画はすぐに頓挫した。なぜならその魔王はもうこの世界にはいなかったからだ。そんな魔王は俺から逃げると自分の城に帰って行ってしまう。俺はその後を追いかけることにするがそんな時、魔剣に話しかけられた。

『これから貴方は私のマスターになりました。私の名前はレイです。よろしくお願いします』

俺の中にいた魔剣に俺は質問をする。なぜその魔王から解放されてしまったのかを聞くと俺の中にいた魔王は元の所有者の魔王ではなく、魔王を操っている人物に自分の体を貸すと、その人物は魔王の体を使ってとんでもない行動を開始した。その人物は魔王の体を使って自分の部下を召喚しこの世界を自分の思い通りにしようとしたのだ。その魔王を操る人物に俺は心当たりがあった。俺がその魔族の体を支配する時にその魔王から俺の体を返してもらうように交渉しようと試みていたがそれが失敗に終わったため、魔剣を手に入れようと考えていたので魔王をこの魔剣が手に入れていればよかったのにと思う。だが今はそんな事より俺は魔剣が自分に呼びかけていることが気になっていた。俺は魔剣にどうして俺に話しかけてきたのか尋ねる。

『私はあなたと契約したかったのです。私はあなたのお供をしてあなたの力になってあげたいと思い、そしてあなたの側にいるために契約を求めたので、どうか私をあなたが仕える魔王様のもとにつかわしてほしいです』

そんな言葉を聞いた俺は魔剣と契約することにした。俺はこの魔王城の近くに魔族達が集まっていることに気付いていたので、この場から離れることを決めたのである。

『魔王様、どこに行かれるのですか?』

そんな俺に俺の中に入っていた魔王が俺の行き先を訪ねてきた。俺は少し離れたところにある森に向かうつもりだと答えると俺の中に入っている魔王はその俺の言葉を聞きその魔王はこんな提案をしてきた。

「では我もそこに一緒に行きたいです」

魔王の言葉を耳にした瞬間にこの体の本当の主である魔族はそんなことは許すことはできないと言って、この魔剣の契約者でもある魔王をこの魔剣の力を使って止めようとする。そんな状況に俺は巻き込まれてしまいそうになったので俺は慌ててこの体の本来の主人に向かって、俺は魔王を倒さなければならないのでここでお別れをしなければ魔王を始末する。なのでこの魔王と俺はこれで本当にさようならだと告げると魔王は寂しいからもっと話を聞かせてほしいと言うのであった。そんな魔王のわがままに付き合っている暇などなかったので俺はこの魔王の前から姿を消したのである。そんな風に魔王と別れた俺が向かおうとしている場所が俺がこの魔族の街に訪れた時に最初訪れた森の先に存在する、魔獣達の巣食う危険な地帯と呼ばれる場所に足を踏み入れようとしていた。俺はその森の中に入る。その森の中にはかなり凶暴そうな生き物たちが闊歩しており、俺に攻撃を仕掛けてくる。俺もその魔剣に命令を出し魔獣達に襲わせると、魔獣達は俺の魔剣の攻撃でどんどん殺されていく。そんな感じで俺はこの森を進み続け、その先に存在していた村へと辿り着くことができた。そして俺はそこでその村の村長と出会う。俺の姿を確認したその村の長を名乗る男は俺に対して話しかけてきた。その村の長が言うにはその村は今食料不足で大変困っているという話をしてくれたのだがこの村に訪れる旅人はほとんどがこの森を通り抜けてきた人たちしか通っていないのでここを通る旅人に頼んで食料を売ってもらうことぐらいしかできることがないと言っていた。それを聞いて俺は自分が持っている大量の肉や食材を渡す代わりにこの村の食糧問題を解決してあげようと申し出たのだ。そうしてこの魔獣達の蔓延っている危険な森に住むこの魔獣たちの巣窟であるこの場所に住み着いている魔獣達を狩り続けることにした。そのせいなのか、俺と魔獣たちは仲良くなり俺が魔王であることを告げるとその魔獣は魔王である俺に協力を惜しまないと言い出してくれた。そんな魔獣達の協力のおかげで俺はこの危険な魔の森を難なく踏破することに成功した。そしてこの村を襲った災厄の原因が何かを調べるとどうやら最近この魔の森に強力な魔獣が出現するようになりこの魔の森に住んでいる住人たちもその強大な魔獣たちのせいでかなり疲弊していたようだ。

俺にそのことを知らせてくれた魔獣に感謝しながら俺はこの魔獣達にこの魔族の街で手に入れた食べ物をあげることにした。その魔獣は俺が渡した食べ物を食べると涙を流し感謝して何度も頭を下げたのだった。そして俺もこの村の住人たちに歓迎されて、そのままその日はここに滞在することになった。この村の長は最初は警戒していたが俺の正体を知っても恐れずに俺に対して友好的に振舞っていた。ただ他の者たちの反応はそれぞれであった。その村の住民は魔族であり、その魔王は魔王の肉体に憑依されている状態のあの女性だったのでその事実を知ることになる。だがそれでもその住民達は俺のことを受け入れてくれて、この俺に優しく接してくれる。俺はこのままずっとこの魔族の街に居続けたいと思えるくらいにこの村の住民たちのことを気に入り始めた。俺はこの魔王領の中で俺のことを信頼してくれるこの村人達がとても気に入ったのである。

この魔族の村で過ごすようになった次の日の朝になると、この俺の目の前にいる村の長が昨日の夜に起きた異変の調査に出かけていた調査隊が戻ってきたという報告を俺にしにきたのである。その報告を聞いた俺はその魔獣たちを狩って来てくれるようにその調査隊に依頼すると俺はその隊長に付いて行くことにした。その調査の結果は魔獣の数が異様に増えているのが判明したらしく、その数はすでにこの魔族の街の周辺だけでなく、その隣の街でもその魔獣が大量に発生しその魔獣たちによって多くの人々が襲われ被害が拡大していると聞かされた。そんな情報を知った俺がその魔剣を手に持ち魔族の兵士とともに、この魔剣の力で俺がその魔剣の本来の持ち主から無理やり奪い取って自分の物にした魔王に憑依されたその女性の肉体から魔剣を取り返しこの魔獣の増殖を止めてみせようと決意したのだった。

俺が魔剣の本来の使用者であるあの女性の体に乗り移る前のこの魔王城の周辺の状況はひどいものだったらしい。その当時この辺りの魔族は人魔大戦という魔族同士の争いによって滅びかけたことがあったのだそうだ。その際にこの国の魔王はこの大陸の他の魔族たちと協力して魔族同士による戦争を終わらせることに成功し、それから魔族は人魔大戦後の混乱した時期を乗り越えていき現在の魔族の平和を築き上げたのである。

魔族の女性は魔族である男を夫に迎え、子供を授かり育て、子宝に恵まれない魔族の夫婦にも子供を与えてその子たちが子孫を残すというサイクルを繰り返すことによって、その魔族は長い年月をかけてゆっくりとだが魔族を増やしていけるようになっていたのである。そのため魔族というのはこの世界の中でも人口が多い種族である。その分、人間とは敵対的な関係にありお互いの国の間での争いは絶えることがなく今でも続いていてお互いに魔族と人間の二つの勢力が争っていていつまで続くのかわからない戦いがずっと続いているという状況になっているのだ。その戦争を引き起こした原因というのがこの魔族の女性を乗っ取った元魔王なのである。魔王は自分が勇者として崇められていた頃に自分の部下として仕えていた魔将と呼ばれる部下を引き連れてこの世界に侵略しようとしたことがあるのだという。魔王の目的は、その世界を自分の思うがままに作り替え、自分が神となって新しい世界に君臨しようという目論見があったらしい。そんな目的を持った魔王であったが結局は自分の部下となった魔将軍の反逆にあって返り討ちに遭い魔王城は魔王と魔将の死体と、魔王の部下たちと魔将の部下たちが残した財宝の殆どを失い、さらには自らの体をも失うという悲惨な結果になったのである。そしてその時から魔族は、自分たちの王となるべき人物を探し続けていたのだそうである。そしてその条件に合致する人間がこの世界に偶然現れてしまう。その人間こそが俺であり、俺の中には魔王が入っていたのだから俺を魔族の王の器として魔族は認めたのだろうと思うことにする。俺が自分の中にいたこの体の女性からその魔剣を奪い取るまでは。

そんな事情があるせいで俺が手にしているその魔剣は本来ならばこの世界での俺の武器としてはふさわしくはないものであるはずだ。俺の持つ力に耐え切れずにその本来の力が解放され暴走してしまいこの世界の全てを破壊する危険性すらあるのだそうだ。だが俺の体は魔剣の力を扱えているというのがその根拠となっている。だが俺がその体の中に入り魔王を操っていた時に俺は魔王にこの魔王領に魔獣が溢れかえる原因を尋ねてみるとその魔獣の発生源について魔王が俺に伝えてきたのでその場所に俺は向かうことにした。魔王城のあるこの街からそれほど離れていない場所に魔王軍の基地があり、その近くに魔王軍が飼育する魔獣達の住む広大な魔獣達の棲む森が広がっている場所が存在した。

俺はそこに到着すると、その森の中の木々の生い茂る場所に俺は足を運んだのである。そこは一見何もないような雰囲気の場所であるが、魔王はその森の奥に存在する洞窟の中に入るといいと俺に告げた。俺はこの森の探索を開始するとその奥にある小さな洞穴を発見した。

「あ、あなた様ですか?」

その穴の中から声が聞こえたので俺はそっと近づいてその空間に入るとそこには怯えながら震える魔族の少女の姿が存在していたのである。俺はそんな魔族の少女に近寄ると彼女はこんな言葉を漏らしたのであった。自分は魔王軍幹部の娘なのだが最近魔獣の異常発生が起きてから魔王軍の本部に大量の魔獣が現れてしまい魔王軍の幹部たちもその対処に追われてしまい今現在は忙しい状態になってしまっているらしい。それで彼女もこの異常な状況を調べてみたくてこの場所まで調べにきてみたのだけれど魔素濃度の高いこの場所では普通の動物では生きていけなくて仕方なくここまで入り込んできたみたいだったのだが。

(まさかその娘の親玉がいる場所に行くことになるなんてね)

そう心の中で呟きながら、俺は彼女の案内を受けてさらに奥のほうに進んでいくとそこには大きな広場が存在する部屋に到着したのである。その部屋に辿り着くまでに俺の前には数多くの生物が存在しているのを確認した。そしてその中にも魔獣と呼ばれる存在もいた。俺はそれらの魔獣を倒しつつ先に進んでいると魔獣達は突然動きを止めその場に倒れ込んだのである。

俺は何が起こったのかと思ってその場で足を止めるとそこでこの俺のことを睨みつけるように見る魔物の姿に気がつくのだった。俺はその相手を見据えるとそこにいたのは全身に銀色に輝く鎧を身に纏った騎士のような姿の男だった。

『貴様は誰だ?なぜ我が娘を連れ去った?』その銀の騎士はそんなことを言い放つと俺にそう尋ねたのである。その言葉に俺は一瞬だけこの体が支配していた時の魔王の姿を思い浮かべたがその男は間違いなくあの時俺が殺したはずの男である。俺はどうしてこいつが死んだと思っていたが目の前にいるこいつは確かに生きていた。しかもこの世界の住人ではなく別の世界から来た人間のはずなのになぜか俺のことも知っているようでもあった。その男がこの世界に来たときに、俺はちょうど魔王の魂の欠片を回収したばかりだった。その時に俺はこの男がどうなるかを確認しようとしたらその男の中にはすでに俺がこの男から取り除いたあの女の意識が乗り移り始めていた。そのせいで俺は男のことを殺し損ねたのだと思う。俺はそんなことを思い出しながら俺はとりあえずこの目の前にいるその女の正体を探るためにこう言ってやったのだ。

『俺はお前の敵ではない。俺はお前を助けにここにやってきた。俺はお前の妻を救うためにここにきたんだ』

俺は正直にその妻を助けるためと言ってしまったが俺の言葉を聞いたその魔族の女性はすぐにその場を離れて俺の前から消えていった。だがすぐに戻ってくる。その女性の顔つきを見るとどこか切羽詰まった感じになっていた。そんな女性が俺のところにやってきたので俺がそのことについて尋ねると女性は俺に対して魔王をこの場で倒す方法を教えて欲しいと言う。俺にはその理由がよくわからなかったが、女性は俺が魔族のために戦っている勇者であることを話すとそれなら魔王を倒すために必要な聖遺物が手に入るのは貴方しか居ないというのだ。そしてその話を聞いていた女性の仲間と思われる女性たちもこの俺に協力してくれることになり、俺は女性の話を聞き入れることにした。

ただ俺はその話の中で少しだけ違和感を覚えた。なぜならこの女性と一緒に連れてこられた魔族の少女は明らかに何かを企んでいる様子だったからである。それにその魔族の少女の本当の名前はラピスというらしくて魔王の娘であるという話を聞いて驚いたがこのラピスも俺に協力すると言ってきたのだ。ただ俺はこの二人からはどうしても邪な感情を感じてしまう。なのでそのことはあえて気にしないようにして俺はまずはこの魔族たちの国で何が起こっているのかを知る必要があったのである。俺がそのことを尋ねてみると女性とこの魔族の女性は互いに顔を合わせると二人で話し合った。その二人が話し合いをしている様子を見ていた他の仲間らしき人達がこの二人の様子がおかしいと思ったのか、この女性をこの場から引き離そうと必死に説得を試みていたがその女性はそれでも動かずに俺にこの国の真実を伝えるべきだと主張した。

『わかった、教えてくれ、君たちはいったい何を隠そうとしているんだ?この魔獣が増殖していることとこの魔族たちが俺のことを知っていることとこの魔族が魔王の娘であるという事。そして魔王が復活し魔王軍と戦争になりそうだという噂。それら全てはこの国に起きている現象と関係しているんじゃないのか?』

俺は自分の考えをその女性の口から聞き出そうとしたが女性は黙って首を振るだけで何も答えなかった。俺はその女性が隠し事をしていることだけはなんとなくわかる。おそらくこの魔族の女性の言っていることは本当なのだろうと俺の勘が働く。でも俺はそれを知ろうとは思わない。なぜなら俺の目的はあくまでもこの世界の住民同士の争いを収めることである。そのために俺のやることは、人間たちの間に争いを起こしその争いの根源となっている人間を滅ぼすことだけだ。だがそれはまだ俺にとっては時期尚早すぎると思う。

魔王を倒せば人間は愚かな戦争を繰り返すことがなくなり平和が訪れる。それが俺の願いでもあるのだ。そのため俺は今はまだその時じゃないと判断している。だからこそ俺は女性から情報を引き出さなかった。その代わりに俺はその魔族の少女を魔剣の使い手として鍛え上げ、その力を使いこなす訓練を施してあげた。そして俺はラピスと共に魔獣たちが繁殖し続けている森へと向かうのである。そこで俺は魔獣と戦いながら森の奥にある洞窟を目指して突き進むのである。その途中で魔獣達と遭遇してしまったがその全てを俺は切り伏せていった。俺の体はすでに魔王との戦いによってかなり消耗していたが、まだ俺は動けなくなるほどではないのが分かる。これならばもう少し先へと進めるだろう。そう思っていた時に俺は魔王と対峙することになる。魔王の魂が封じられていた場所に向かうと、そこで待ち構える様に存在していた魔王が俺の前に姿を現す。

そしてその魔王は自分の復活を果たすと同時に、自分の部下となった魔将も一緒に呼び寄せたのだ。その時にこの世界に元々生息していた魔族の魔将は俺と戦うとあっさり俺に敗れ去りその魔剣の力により俺の部下となった。俺もそんな状況を利用してこの魔王軍の基地から金銀財宝を手に入れようと試みるがそれは失敗に終わった。この世界にもともと存在している宝に関しては魔将も欲しくはないらしくてその申し出を受けることは無かったのだ。

俺は自分の部下になるか、もしくは魔剣の力で強制的に従わせるしかないと考えていて結局部下にした。部下にした魔将をその剣で斬りつけ魔将の中に封印されていた魔王の肉体と精神を再び切り離したのである。その際に魔王から魔王の記憶を完全に抜き取ったので、もはや魔将の中から魔王が復活することはなくなった。そしてこの世界の魔王は魔剣の使い手にその力を抑え込まれたことによって再び眠りについた。これでひと段落がついたと思い俺は魔王を眠らせるとその魔獣の森の奥にある魔族たちの基地の近くにある洞穴に向かって進んだのである。

(しかし本当にここはどこなのか?)

そう心の中で俺は思いながらもこの魔王領の謎に迫ろうと思っていたが俺はこの魔族の国が抱える問題を知ってしまった。俺はこの魔族の国の歴史をある程度知っていたが、この国は魔族の国ではなくこの世界に住む人間が勝手に魔族だと言い出した存在だという事実を知った。つまり俺は騙されていたというわけだったのである。だがその真相にたどり着いた時には既にこの魔族の国の女王が殺されてしまい俺も瀕死の状態だった。

この国の現状を知っているのは俺以外にはいないはずだった。なのにその俺がここに辿り着いた途端この事態である。どうやら俺は罠に嵌められてしまっていたらしい。この魔族の女王が俺に魔王を倒す方法を探させようと言っていたが、その言葉は全てこの魔族の女が作った偽りの話であり俺は魔王にまんまと騙されてしまいここまで来させられた。その魔王は既に俺の手によって殺されてしまったが俺が魔王を殺した証拠がないから、魔王を倒したとしても俺は罪にはならないだろう。この魔王領では魔王が死ぬと次の魔王を決めるための儀式が行われて魔王が決まる仕組みになっている。そうしなければ魔族たちは混乱してしまう。魔王という絶対の存在が消えたこの魔王領で新しい魔王を決めるために様々な試練が待っているはずだ。俺はそれを考えると少し可哀想だと思う気持ちが湧き上がる。だから俺はせめてもの慈悲で魔族の女たちを救おうとした。

その前にまず俺はこの場所に辿り着くまでに倒したこの魔族の国の者たちをすべて生き返らせてやった。俺がその行動を起こした時はかなり体力が減っていたので、かなりの無理をした行為だった。しかも俺はここで初めて魔力回復剤を飲むことになってしまい結果的にかなり疲れた気分にさせられる羽目になった。だがおかげでどうにかこの場所に来るまでに倒した魔族たちの魂を救い上げることが出来たのだった。

(さて、ここからどうするかだ)

この場所まで来るのにだいぶ時間が経っていたせいでこの魔王城に戻ればリリスが心配している可能性があったのであまり戻りたくはなかった。しかも今は夜中で日が変わるくらいの時間だ。普通ならこんな時間に帰ってくるのはあまりよろしくないことだと俺も思うのだが、あの女も俺がこの時間帯に帰ってくるのは分かっていたみたいだし俺がここにいるのなら問題ないだろう。

(あの魔族たちを蘇らせたけど、これからどうするかなぁ?一応俺にはあいつらを洗脳して言うことを聞かせる方法がある。俺にはそう言った技も覚えてたんだけど、この状態で使う気にならないんだよな。それにあのラピスとかいう奴はもうあの時の魔族じゃなくて魔人の種族になってるからそういうことをすると、この国にいる魔族の男共から恨まれかねないからやりたくないな。それに俺はあのラピスって娘が信用できないんだよね。何かを隠している気がするのは確かだけど、俺のことを裏切ることはないと思っている。とりあえず俺の今の実力はこの城で暮らしていた時に比べてはるかに上回ってしまったし、俺が魔王の力を使えていた時の能力もほとんど使えるようになったしな。この世界で俺より上の魔族は一人しかいないからとりあえずは安心だが念のためにこの城を出ていくことにしてこの世界を旅して回りながら俺がやらなければいけない事を探してみるか)

「それでお前は一体何者なんだ?なぜそんなことが出来る?」

俺のことを見る銀色に輝く鎧を身につけた銀の騎士の姿がそこにはあり、この女の正体を探るためには下手に出ておくのがいいと考えた俺はあえて下手に出ることにする。

「えっと俺はあなたと同じ異世界からやってきたんです」

その俺の言葉を聞いて、この女の目は動揺していたのを俺は確認できた。やはりそう簡単に俺の事を認めるはずが無いよな。この俺を騙せるほどの技術を持つような相手に嘘を見抜かれないで話をするにはそれなりに骨が折れそうだな。この目の前にいるこの銀騎士の女性をどうやって言いくるめるかが問題になりそうである。

俺は目の前に存在しているこの世界において俺を召喚した張本人である銀髪の女に対して警戒しながら話をすることにした。俺は彼女に自分の正体を話すことにしたのである。俺の本性を知るのはこの世で俺と姉貴と義母さんの三人だけだが俺は自分の事を魔王と名乗っていたのだ。それを目の前のこの女性はおそらく信じていない。だが俺はあえて自分が魔王であると言う事にしたのだ。

「なるほど、私と同じ異世界からの人間ということですか、それでどうしてそんな力があるのか教えていただけませんでしょうか?」

俺が自分のことを説明するとこの女性はすぐに冷静を取り戻して俺に質問してきた。

「それは言えないね。もし仮に君が俺をこのまま拘束するというのならば俺も君が敵であることを見破るまでだ。君が本当の事を言っているのかそれとも違うのか、それは君が持っているその鎧の魔剣と俺の持つ魔剣が互いに共鳴することで確認できる。そうすれば俺は真実しか話していない事がわかるだろうな。だが俺は正直に言うと俺にこの世界にやってきた理由が分からない。おそらく俺が元々住んでいた世界とはまた別の世界だということはわかる。でも俺にはまだ元の世界に戻りたいって気持ちはあるから俺を元の世界に戻そうとしてくれたのならば協力したいところだが、俺に敵意を抱く相手に協力するつもりは無いぞ。それどころか俺は今の状況を理解してない以上迂闊なことは出来ねえな。だからこそ俺が今この場で一番恐れているのがこの魔王領を治めているこの国の統治者であるこの女性、つまりあんたが敵に回るかもしれないってことが一番恐ろしい。だから俺はこの場で自分の素性を明かすつもりはさらさらない。そしてもしも俺の邪魔をするなら、たとえそれが俺にとっての大切な人で恩のある人であっても俺をこの魔王領の味方として引き込もうとしないなら殺す。それがこの国で生活していて思ったことだからだ。だからこの俺の考えを変えることができるというのならば試して欲しいものだな。俺の事をただの旅人だと勘違いしたままの無謀な勇者様よ」

俺はそうやって相手を威圧してやると俺の前に立っている彼女は少し後ろに下がった。それだけでこの女の強さを測るのに十分であった。

そしてこの国を統治していたこの国の王は俺に問いかけてくる。俺の瞳を見て、本当に自分の正体が分からないままで、なおかつ魔王を名乗っていた俺と会話をしてこの俺を倒せるかどうかを確かめたかったのだろう。そしてその結論を出す為には魔王と名乗ったこの男の言うことを信じる必要があるのだろうが、その魔王を名乗ったこの男がどこまでの力を持っているかをまだ理解できていないようだ。俺に魔王の力の一部を与えてくれた魔王はこの世界の最強の一角に君臨しており、この世界の頂点に立っていたと言ってもいいだろう。この俺でさえ、俺よりも圧倒的な強さを持った魔族の魔王に勝ったわけではないのだ。魔王の魂の力を借りたことで俺は一時的にではあるがこの世界に存在する魔王の中でも頂点に近い場所に存在していると言えるのだ。そんな魔王を相手にしても勝つことが出来た俺を普通の魔族で勝てると思うほうが間違いなのだ。

だがこの世界のこの女は魔王を倒したいと思っているらしくて俺が魔王だと聞いてもその表情に一切の変化は無かった。この様子だと俺はこいつに殺される可能性があるだろうなと俺は思っていた。この女は俺を殺せば自分の目的を果たすことが出来ると考えているらしいから、きっとこの国の為に犠牲になって欲しいと願っているのではないだろうか? そう考えれば考える程、この女は油断ができない人物だと思わされる。俺はそんなことを考えながらも、俺は自分のことをこの女がどう思っているか探ることにした。

(まずはこの俺をどうにかできると思い込んでいるこいつを倒すしかないよな。まあ、この世界における最強の武器を持っていれば何とかなるんじゃないか?それとも魔剣の使い方を思い出すべきか)

そういえば俺は俺の持っていた剣がどこに消えているのか気になったがその疑問については、俺はすぐにその剣の居場所に気づくことができた。なぜなら俺が手にしている魔剣も俺の体の中に収納されていたのである。そのことに俺は驚いていたが俺はどうにかその感情を抑えることに成功する。

「それであなたは何が出来るのですか?」

俺に向かって、俺が戦えるのかを聞いてきた女に向かって、俺は魔王である俺には特殊な技があることを思い出して俺はこの世界で得た魔王の知識を使って、魔王の能力を使うことにする。魔王の力は使いすぎれば俺の魂を魔王に支配されてしまう恐れがあるため使うことには慎重になった方が良いだろうが、俺のことを魔王だと認めさせるためには魔王の力を見せてやった方がいいだろうと俺は判断した。それに俺が魔族だと言えば、俺はこの世界で魔王と呼ばれる資格がある存在になる。

魔王を名乗るものが魔王に挑んではいけないという法など存在しないので問題はないはずである。それに魔族の中には魔王を神のように崇拝するもの達も存在していて、魔族の王が死ねば次の王が決まるまで魔王を決める為の争いが始まると言われているのである。だが俺の場合で言えば、俺の姉貴の力が大きすぎるために俺はその争いに参加せずとも勝手に俺が次の魔王候補に選ばれる可能性もあるのだ。だからこそ俺はここで魔族の女が俺が魔王だと信じてくれなければ、最悪ここでこの国の魔族たちから攻撃を受けて死ぬ羽目になってしまうかもしれないと、少し危機感を抱いていた。俺としてはできればそんな危険な目に遭うのだけは避けたいとも考えているのだ。

そして俺は自分の中に存在する魔王の魂が宿っていた記憶を呼び覚まして俺はこの世界での魔王の力を開放しようとした。すると俺は体の内側に眠っている力の存在を感じ取ることができて、俺はその力を表に出すことに成功したのだった。

「ふぅ、これで俺はもうこの女が魔王だと認めたから俺はこの国に害を成すような行動は一切行わないことを誓おう」

(この世界はやっぱり異世界なんだなって実感させられたな。この世界で俺が使える技のほとんどが使えないし、魔剣を使わない状態じゃこの世界にいる魔族たちには手も足も出ないくらいの差がある。それを考えるとこの魔族がこの世界の頂点に位置していると考えていいよな?そうなると俺がこの世界にいる意味が無い気がするんだがどうしたらいいんだ?俺はこの世界を救ってやるなんて大それたことを言う気は無いしなぁ。むしろ俺は元の世界に帰りたくなってきている。姉貴との仲は良かったけど別にそれほど一緒に過ごした時間は長くないし、義母さんにも会いたいとかそんな気持ちは全く湧かないんだよなぁ。でも俺がいない間に家族になんかあったりしていたらどうするか?姉貴のことに関しては心配だが俺はそんなに頻繁に連絡を取っていないから大丈夫だと思うんだよな。それに姉貴はこの世界で楽しく過ごしているみたいだし、義母さんのことも心配ではある。ただ俺の家族がこの世界でも幸せに生きていると分かればそれでいいんだけどな)

俺はそう考えてこの世界に来る前に姉からもらったこの世界に来た理由をなんとなく思い出してしまったせいで少し複雑な気分になっていた。俺はこの世界に来てからは元の世界に帰ろうと思ったことなど一度もなかったのだが、今はそうもいかなくなってしまったので俺はどうやってこの異世界で暮らしていくかという事を考えていた。すると目の前にいた銀の騎士が俺にこんな提案をした。

「私と結婚してください」

目の前にいる銀の騎士の姿を持つ女性がいきなりとんでもない事を俺に対して言ってきた。俺を妻にして魔王の座を継がせようという考えを持っているのではないかと思い警戒していたので彼女のこの言葉を聞いた俺は驚きはしなかった。

「なぜだ?」

俺は銀騎士の姿の彼女に対して警戒心を強めることにする。もしも俺の予想通りこの銀騎士の女がこの国の統治者であるならば俺は彼女を倒さなければいけない。しかしそんなことは俺はやりたくないと思っていた。そんな時彼女はこの国で今起きている異変について語り始めたのである。

「私の夫は私が子供の頃に病によって死にました。その時に私は私の父であるこの国の統治者の一人に無理やり嫁がされたんです。でもそれは父が決めたことで、この国の決まりでもあり、私は父の期待に応えるべく努力してきました。その結果として父の娘という事もあり、私はとても優れた人間に育つことが出来て今ではこの国でも屈指の力を得ることもできました。そして今から一年ほど前、魔王がこの国に現れて私に求婚をしてきたのです。魔王は私の事をとても気に入ったと言ってくれて魔王は私の夫となってくれようとしました。その言葉は私にとって本当に嬉しい言葉でしたが魔王の言葉を信じることは出来ませんでした。なぜなら、あの男は魔剣を持っていたからです。その剣を扱える者はごく稀にいるそうで、魔剣をこの世に呼び出した初代魔王も魔剣を使いこなしていたという話が伝わっているので魔剣を所持していること自体はそこまで不思議には感じませんでした。魔剣というものを実際に目にするのは初めてだったのですがそれでも魔王が嘘をついているとは思えないくらい凄い剣だとすぐにわかりました。それどころか魔剣に認められた魔王はこの世界の誰よりも強いということなのでしょう。だからこそこの魔剣を持った者が魔王を名乗ることは決して許されることではありません。だからこの魔王は本物なのかと疑ってしまいました。そんな時、この国の兵士が突然姿を消してしまうという事件が起きてしまったんです。この国の兵士達は非常に強者ぞろいなのにも関わらず、兵士の全員がまるで何かに取りつかれたようにどこかに消えたそうです。そんな話をこの城の中で耳にした数日後にこの国の兵士も行方不明になるという事件が発生しました。その時は、この国の人達はとても怯えてましたが、そんな事件が続いてしまったのでこの国が危ないと考えた人々が他の国にこの国の情報を流してしまいます。そんな噂を聞き付けた各国の王たちは我が国に押し寄せてきました。その時に、魔王と名乗るこの男は本当にこの世界を救う勇者なのだと確信したので私は魔王の妻になることを受け入れようとした瞬間、魔族たちが一斉に暴れ始めてその日を境に、この国に住んでいる人たちの多くが消えてしまいました。私や国王などは命を落とすことはありませんでしたがこの国から逃げ出す羽目になりまして現在この国は滅びようとしているところです。どうか、魔王様!私たちを助けてくだい!」

この女は涙を流しながら、俺に助けて欲しいと言い始めて来たので俺は、魔王の力を試そうと考えていた俺はとりあえずはこの女の話を聞くことにした。

「わかった。だがその前にこの世界にはどんな魔法が存在するのかをまず教えてくれないか?」

俺は魔王の知識で魔法がどういうものかは理解していたがこの世界で俺が使えそうなものはあるのかを知りたかったのだ。

「魔王さまはどのような能力が欲しいのですか?」

この銀髪の少女は俺の事を魔王と呼びながらも普通に接してくる。だがこの世界では俺は魔王である以上、俺の正体が魔王だと名乗りを上げてこの国を救えば良いのかそれともこのまま何もしないでいた方が安全なのかどうか俺はまだ判断がつかないのであった。

(そういえば魔王が持っている特別なスキルがあったな。それをうまく使えば俺は俺自身の存在を隠せたりするかもしれない。俺の能力もまだ把握しきれていないからこの銀の騎士も俺の能力もわかっていないはずだ)

俺は自分の力を把握しておく必要もあるだろうと思って、俺がこの世界で魔王と呼ばれているなら俺が持つ固有の力を使うべきだと考えて、その能力を俺自身の力を確かめるために使うことにする。

俺は魔王が持っていてもおかしくはないような、魔王にしか与えられないような特別な力が欲しかった。

俺がそんな願いを込めた時、頭の中に文字が流れ込んできて俺はこの世界に存在する様々な魔法の名前と効果が頭の中に入って来た。

俺はその中に、俺がこの世界に来る直前に持っていた、魔王の力と同じような物を見つけることが出来たのである。その能力は俺が魔王になる前は俺の力の一部しか解放していなかったが、魔王になった俺の場合は俺の中にある全魔王の魂の魔力を解放して俺の肉体を強化することができるらしい。俺はそれを見てこれは俺の体を強くすることができるのではないかと思ったので早速、俺が得たこの能力を使ってみる。するとこの場にいた全員の目では俺がいきなり姿を変える姿を捉える事が出来なかった。

(よし、成功だ。これで見た目は変わらないが俺は魔王の力を取り戻したわけだ。それに加えて俺はこの世界での最強に近い存在でもあるんだからこの世界に魔王を名乗ってもいいよな?)

俺は魔王を名乗ったことで問題が起こるのではないかという心配をしていたがこの世界にはもう魔王と呼ばれるべき人物はいない。つまり、この世界では俺が最初の魔王となるはずなのだ。そして俺は魔王である証明として魔王の力が秘められた特殊な剣を作り出すことに決める。

魔王の力で俺の手の平の上に作り出した黒い塊のようなもの。この世界には存在しない物質でありこの世界に魔王の力が無ければ作ることが出来ないはずの代物である。そんな俺の作り出す物体に興味を抱いた銀の騎士が近寄ってきて興味津々に眺めていた。

「これが魔王の武器なんですね」

「ああ、そうだ。お前にも渡しておくが、使い方を教えよう。その武器の名前は聖魔刀だ。その聖魔刀の使い道は相手の体に刺し込めて、そこから相手に呪いをかけるということが出来るのだ」

「ありがとうございます。これで魔剣に対抗する事が出来ます」

銀の騎士は自分の愛剣を俺に渡してくれてこの剣で魔族を斬れば相手を殺す事が出来ると言ってきたのだ。魔族は死んでしまっても復活するという言い伝えがあるらしく魔族の中には心臓を貫くだけでは死なずに体を消滅させる方法が必要と言われているのだと言うのだ。それを聞いて少し面倒くさいなとは思ったのだが魔族の事を考えるとそうしなければ倒せないというのも本当のような気がしたので俺は仕方なくこの聖魔刀で敵を切り裂いていこうと思うのだ。

(それにしてもこの世界に来てしまった俺はどうすればいいんだ?元の世界に帰りたい気持ちもあるがせっかく異世界に来たのだから色々と見て回りたいという気持ちの方が強いんだよな)

(だけどやっぱり姉貴に連絡を取っておいた方が良いよな?俺はこれから何をするべきか分からないけど姉貴に相談してから行動を決めた方がいいよな。ただ俺はこの異世界では死んだ扱いになっているみたいだし姉貴と連絡を取る手段が無いから困った。やっぱり元の世界に帰るしかないのかなぁ)

(まあ今は考えないようにしておこう)

「さてと、まずはこの国の人達をどうやって救い出せばいいのかというところを考えないといけないよね」

アリシアは俺たちをここまで連れてきた男に話しかけた。するとその男はアリシアの方に振り向いてこんなことを言ったのだった。その男の容姿は普通の人間で顔つきもよくて、特に怪しい感じではなかった。彼はアリシアの方を見ながら笑顔で対応していた。その男は俺たちを魔王城に連れてきてくれた男で、この国の住人で名前はダリウスだと名乗っていた。彼の他にも部下が二人いるようだ。そんな彼が魔王である俺に対してこのように話を始めたのである。

「まずは、我々の魔王陛下に対して失礼のないように対応していただき感謝いたします。我々は現在この魔王領に蔓延している魔王軍を殲滅しようと動き回っているところで、先程、この魔王領の魔王城にたどり着くまでに、多くの兵士たちを失い、また民たちの避難も終わり切っておりませんので、正直、魔王様が味方になってくださるという申し出はとても嬉しく思っています」

俺は彼に言われるままに椅子に座っていたが俺は一体この国のどこに行けばよいのかわからなかった。なので彼に聞いてみるとこの国の中心部にあるという、城に向かえばいいという。しかしそこには今、魔王軍を名乗る者たちによって占領されていてそこに乗り込む事は危険だというのを彼は言っていたのだ。そこで俺は気になることを尋ねた。

「今、魔王軍が乗っ取っているという城について聞きたいことがあるのです。よろしいでしょうか?」

「はい、もちろんです魔王様には何を知る権利があるのでしょうもない質問をしてしまったら申し訳ございません」

俺はその男が本当に申し訳なさそうな態度をするので、俺には何も非がないと思っていたので別に気にしなくても良いといった言葉を伝えようとした。しかし俺の言葉を聞いたダリウスはとんでもない事を言ってのけたのである。

「我々をこのような目に遭わせた奴らは魔族です。魔族というのは人間たちが住む領域とは別の場所にある世界に住んでいると言われています。魔王軍とはこの世界とは別にある別世界の魔族たちを統率するもの達の総称で魔王と呼ばれているんです。その魔族たちは魔王を頂点とする階級社会になっており、彼らは魔王軍の四天王と呼ばれており魔王の側近とも言われておりました。そんな彼らの力は非常に強いと言われており、今までにいくつもの国が魔王軍に滅ぼされてきました。そんな魔王軍はこの世界の平和を脅かす存在なので魔王が現れたのであれば真っ先に排除しなければならないんです。それが今の私の仕事でもあり魔王様には早く城に来ていただかないとなりませんでした」

「なるほどね、それなら話は簡単だよ。君たちで魔王軍と名乗る者を排除してくればいいじゃないか。それか、君達が言う魔王に俺を襲わせて返り討ちにしてもらって、魔王に魔王の座を譲ると言えば解決じゃないのかい?」

俺がそう言うとダリウスは目を輝かせながら興奮し始めた。その様子から俺に魔王になってもらえたらとても光栄で嬉しいみたいな事を言われたのだ。

「確かにそれはありかもしれません!そうすれば私たちはこの世界を救う事ができるかもしれない!」

そう言いながらダリウスは立ち上がって俺に手を差し出してきて、

「私の名前は魔王さまの家臣になりますダリウスと言います。この国のために私に力を貸してください!」

そんな風に頼まれると俺が断る理由もなかったのでとりあえず協力することにしたのである。そして俺の隣にいるアリシアは魔王の妻だと自称しているので俺に付き従う形で一緒についてくる事になった。

俺はこの銀の騎士を連れて魔王城に乗り込むことを決めると、ダリウスと銀の騎士と俺は魔王の城の目の前まで移動する事にしたのである。そして俺達は魔王城を間近で見てみると魔王城は想像よりもずっと大きくそして美しい見た目をしており俺はつい見入ってしまったのである。そして、その美しい見た目をしたこの魔王城に今から乗り込もうと思っているので俺は少し緊張をしていたのである。

(魔王がこの世界に降臨する。俺の本当の目的は元の世界に帰るためにも必要なことなんだ。だから俺は頑張るぞ)

そんな事を考えていた時にアリシアとダリウスの二人は何やらもめていたのだ。俺はその様子を見ていて、二人のやり取りを見ていると何かを言い合っているみたいだったが何を言っているのか分からなかったのだ。その時に急に後ろにいた銀の騎士が前に出てきてこう言って来たのである。

「お前は邪魔だから出て行け。これは命令だ。さっき俺と一緒にいた時の力はどうしたんだ?魔王を守るとかほざいていた割には随分弱々しいじゃねぇか。それにこっちの男の方が強そうなんだよ。この男の力を見てみたら分かるぜ、この男が持っている能力は凄すぎる」

そのように銀の騎士はアリシアに向かって暴言とも言える言葉を吐いていた。それを見ていたアリシアは、

「そ、それは貴方の能力でしょう。魔王様の前でそんな事をいうなんて不敬にも程があるわ」

俺はそのやりとりを見ていて何ともいえない気持ちになったが、それでもこのまま銀の騎士を放っておくわけにはいかないと感じたため、この場を落ち着かせるために俺は銀の騎士に声をかける事にした。すると彼は突然こんなことを言い出した。

「この男は俺を馬鹿にしているようだなぁ。よし、お前は後で殺そう。今はあの魔王を倒す事が最優先事項なわけだし。まずは俺の能力を使ってからお前を殺すよ。それでいいな?」

俺がそう言うと、俺は少し不安になったので一応確認をしてみることにしたのである。

(あれれ、もしかしてこの男は自分が強いと勘違いしちゃってんのかな?この魔王が本気になった姿を見せたほうがいいのだろうか?でもそれだとこの国に甚大な被害を出してしまうだろうな。だから、少しくらい見せつけてもいいよな)

俺は自分の力を見せつけることにした。そうすることで銀の騎士の自尊心を傷つけて俺に反抗する意志を奪うつもりだったのだ。それに魔王になった以上は人族の敵として認識される可能性が高いと考えていたのであった。俺はその銀の騎士が俺に戦いを挑んできた時のためにいつでも対応できるように構えて待っていた。

銀の騎士の方は俺を挑発するような態度を取り続けているが、アリシアの方が銀の騎士に対して怒っていて、こんなことを言い出した。

「あなたは自分の力を過信しすぎではないでしょうか?確かに私は弱いですが魔王様より強いものはいないと思いますよ。それにあなたの能力を信用している魔族はここには存在しないんですよ。なぜならあなたの本当の能力を知っているものは誰もいないからですよ」

それを聞いて俺は驚いてしまった。この世界に転移してすぐに魔剣を手に入れた時から、魔剣の能力についてはある程度わかっていたからだ。しかしこの世界で魔剣を手に入れるまでは俺自身の力がどれほどあるのか全く理解できていなかったのである。だからアリシアがなぜそこまで断言できるのかということが疑問で仕方がなかったのだ。

しかし銀の騎士の反応を見た限りだと彼は本当に自分以外の誰かから聞かされたような言い方をしていたようだったので俺はその事実を確かめたくて質問してみることにしようと思い言葉を発した。

「君たちはどうして俺の能力を信じるんだ?普通だったらのどから手が出る程欲しい力だと思うのだが、君たちの行動から察すると俺の能力を知っていないように見えるんだ」

俺のこの言葉を耳にして、銀の騎士は俺の方に振り向いてきた。そして彼は驚いた顔をしながらこんなことを言ってきたのだ。

「お前、まさか俺の力を知らなかったと言うつもりなのか?」

「その通りだ、俺はこの世界に来る前は普通の一般人で、ごく普通の生活を送っていたからな。正直、俺はこの国の人たちがどのように生活をしているのかを知らないし俺自身何もできない。だけど俺がこの世界に来てこの魔刀を使うだけで魔王になれたということはそれだけで魔王としての器があったということなんじゃないのかな?」

「い、意味が分からない。この魔族領を支配しているのは間違いなく魔族である魔王様だろ。なのにこの世界に来たばかりで魔王になるだなんて信じられない話だ」

「まあ、俺自身もこの世界に転生してから色々あったんだけど今はこうして生きているんだ。だから俺としては魔王としてこの世界で暮らす事を決断したという訳だよ。だから俺はここで魔族たちをまとめ上げて、魔族だけの理想郷を作りたいと本気で考えている。そのために俺はここへやってきたんだ」

そんな話をしている間にも俺たちがいるこの場所を魔王軍が包囲しようとしていたようでたくさんの兵士が集まってきたのだ。その様子を見ていた俺たちはお互いに背中を合わせるようにして、それぞれの相手に対して戦闘準備を整えることになった。

アリシアは魔法の詠唱を始めると魔法陣を発動させてそこから氷柱のようなものが大量に現れて俺たちに攻撃を仕掛けようとしていた魔王軍に向けて攻撃を行ったのである。その結果、魔王軍の兵たちの動きを封じ込めることに成功して一気に形勢逆転に成功したのであった。

しかし魔王軍の隊長格らしき人物がこちらに近寄ってきて、その男は俺たちに対して、こんな質問をしてきたのである。

「貴殿たち、我々が今何をしていたのかわかっているのかね?もし、我々が攻撃をすれば戦争になってしまうという事は理解できると思う。それに魔王軍に加担した魔族も同罪とみなし、全員死罪にしてやることだって可能なのだぞ。そんな事になってしまえば魔王軍に滅ぼされてしまった他の魔族の恨みを全て魔王である貴様に背負うことになるんだぞ。それが分かっていながら何故そのような愚行を行おうとする」

俺はそんな風に言われたが俺の中では既に戦うことを決めていたのでもう止まることはできなかったのである。

俺はこの世界の魔王となり、元の世界に帰る方法を探したいと思っている。だから魔王にならなければいけないと思ったのだ。そしてこの世界の人間たちは平和に暮らせるようになるには魔族の国との友好的な関係を築く必要がありそうだ。だから俺がこれからしようとしていることは間違いではないはずだと思い魔王になることを選んだのだ。この銀の騎士がどんな奴だろうと関係ない。この世界に召喚されてこの世界の人々を救うために俺は戦わなければならないんだ。

(この銀の騎士が俺の本当の目的を知っているかどうかは別だがな)

「君は俺のことを勘違いをしているようだね。俺は別に戦争を起こしたい訳ではないんだよ。ただこの国に住んでいる人を助けたいだけだ。それにこの国は俺が守るから安心して欲しい。君たちも知っているとは思うけど俺は魔王と呼ばれているらしいが本当は勇者と呼ばれてもおかしくはなかった存在なんだ。だから俺はその実力は本物なんだぜ。だからその程度の戦力で勝てると思われていることに心外だよ。君たちは一体何がしたいんだい?」

「何を馬鹿げた事を言ってやがるんだ。この国が滅ぶかもしれないっていう状況だというのにも関わらず、自分たちだけは絶対に安全だと信じ込んでいられるお前は一体何がしたいって言いたいんだよ。もしかすると何かとんでもない理由でもあるのかもしれないと期待したがどうせ大したことなさそうな理由でこの国を滅ぼしてしまうだけの存在でしかない。だからこの国に手を出すことを諦めてくれよ頼む」

銀の騎士が俺に向かってそう言ってきたので俺はこんな事を言うことにした。

「そうか。それは俺にとってはどうでもいい事なのだが一つ聞いておきたい事がある。俺が今から言う事が正しいか間違っているかをお前が判断してほしい」

俺はそういうとその言葉を言い放つのであった。

「お前たちがいくら足掻こうとも俺を倒すことはできないし、俺を殺せる者はこの世界にはいないのだよ。俺はお前が言ったように圧倒的な力を持っているんだからな」

そんな言葉を俺は言うと銀の騎士に対して威圧をかけたのである。その威圧感は魔王である俺にとっての最大の攻撃力といっても過言ではないので俺はこの威圧に銀の騎士が耐えられないと思っての発言だったが銀の騎士は何とか持ちこたえているように見えたのである。

しかし俺の力はまだこの程度ではない。俺の本来の力を出せればもっと楽に制圧できたのだが今のこの状態のままの状態でどこまでいけるのかを確認しておく必要はあるのだろうと思っていたのだ。俺はこの世界でまだ試したことのないスキルをこの機会に確認しようと考えたのであった。そう思った俺は、【覇王の領域】を発動させ、銀の騎士の動きを止めるために俺は【龍神障壁】を使用した。

そして銀の騎士はその効果によって身動きが取れなくなり俺はその状態で剣を振りかぶって銀の騎士の首を切り落とすための攻撃を行った。銀の騎士が動けない中、俺の剣による一撃を受けたことで彼は絶命してしまったようだ。そして彼の体は徐々に砂になり消えていってしまった。それを確認した後にアリシアの方を見てみると彼女も同じ光景を目撃していたようだ。俺がその現場を確認する前に彼女は、俺に対して、こんな事を言ってきたのである。

「私は貴方のことを信じていますから、だから魔王になった貴方は私のために働いて下さい。この国の為じゃなくていいから私の事を幸せにしなさいよね」

アリシアは俺の事に対して好意を持ってくれているという事に俺は驚きつつもこんな事を言っていたのである。

「もちろん俺に任せて欲しいんだ。俺はアリシアのためにも精一杯努力をするつもりだからな。それとこの国の人の為にもこの力を使おうと思っているんだ。だから俺の事は心配しなくても大丈夫だから、アリシアは自分のことを優先してくれて構わないからさ」

俺のそんな言葉を聞いたアリシアは少し嬉しかったのかこんなことを言い出したのである。

「本当にそうしてくれると嬉しいんだけど、私はミケラルドさんの為だけにこの命を使いたいんです。この国にいる人たちを助けてくれるってことはつまり魔王軍になるってことだと私は考えました。魔王軍がどのようなものか私は詳しくはわかりませんがきっと大変な仕事だと思います。それでもミケラルドさんの気持ちが変わることがないならば、私はそれについて行きます。それが私が魔王軍に加わることを決めた一番の理由ですから」

俺はそんな風に言われると思っていなかったのでアリシアの事を抱きしめてしまったのである。俺がアリシアの事を好きだという事がばれてしまい、アリシアは恥ずかしいと言いながらも、俺の事を離そうとしなかったのである。俺としては彼女の為に働くのはやぶさかではないがこの世界を救うという使命があるのでその途中で死ぬこともあるのではないかと考える。そんな時にアリシアの側に自分がいないことがとても不安になってしまったのだ。でもその感情を抑え込み、自分のやるべき事に集中しようと決めたのだ。

その後、アリシアに「いつまでくっついてるの?!」と言われ、すぐに離れることになった。

それから俺の作った魔王軍は、魔王軍の城へと移動を開始したのであった。その魔王軍を統率している魔族たちは銀の騎士の死を目の当たりにしたのか動揺を隠しきれないでいたのである。しかし魔王軍としての立場もあるので彼らは、その混乱を隠すようにして、行動しだしたのだ。

その様子を見ていて俺は、彼らが本当に俺を殺しに来る気があるのか疑問に感じていたが、とりあえず今は彼らの動きに合わせる事にしたのである。そうする事で俺と魔王軍が敵対する理由がないと証明できればよかったからだ。俺は彼らに「戦争を起こすつもりはないから俺の言葉を信じるといい」と言うと俺が魔王であることを証明するために魔刀を取り出したのだ。そして魔刀の剣身に手を当て魔力を流し込むとその剣身は赤黒く変色していったのである。

俺が持っている魔刀の刀身を目視できる位置に魔王軍はいるはずなので、俺はそのまま「魔王として、魔族たちを導いてあげよう」と言ってその場を立ち去ろうとしたのだ。しかしその俺の前に一人の男が歩み出てきたのである。そして俺は、その男の姿を見た時、思わず声を出しそうになった。

なぜならそこに現れた男は、この前戦った魔族だったのだ。俺と戦った魔族は魔族の中ではそこそこの強さを持っており、他の幹部よりも上の存在だったのだ。

俺はどうしてこんなところに来たんだろうと思った。俺の目の前には俺に戦いを挑んできた魔王軍の大将が立っているのだ。しかし魔王軍の中での位が高いであろう者が俺の前に姿を現したことに対して違和感を感じずにはいられなかったのである。その男は俺に向かってこんな質問をしてきたのである。

「この度は、我らが主、サタン様を侮辱するような発言をされたようなのでこうしてやってまいりました。主への発言については謝罪をして頂けますでしょうか?」

「ああ、俺の言っている事は嘘偽りのない真実だ。それが分からないとは言わせないぜ。俺は本心から、人間たちと平和的にこの世界で暮らすのが俺の目的なんだからよ」

「いえ、魔王様に歯向かう者には死あるのみです。それに魔王軍とは、この国を治めている方々に仇なす存在であり魔王様には従うべき存在だと思っておりますれば、その魔族を斬った事は当然の行動だと考えております」

俺の言った事は間違ってはいなかったようだ。確かに魔族の立場からしたら、俺はこの国を支配せんとする敵という事になるのかもしれないが俺はそんな事をする気が一切ない。そんな事をすれば俺に付いてきてくれている者たちにも危害が加わる可能性もあるからだ。だから俺はこの国の人々を救うためには魔王である自分を犠牲にしても、この国の平和を守っていこうと考えているのだ。

(魔王にならなければ俺にはこの世界を平和にする力がないし俺には魔王にならなければならない事情がいくつも存在しているんだ)

だから俺はこの国の人々を守るためには俺が犠牲にならなければいけないと考えていたのだ。しかし、そんな俺の考えを知らない相手側からすると魔王軍に敵対した者はすべて排除するべきだという考えに至っているのだろう。俺にはその思考を理解することはできなかったが、相手がどうであれ俺の邪魔をするのであれば、俺には戦う理由が出来上がる。俺にとって戦う理由はそれだけあればいいのだと思っているからである。

(そういやまだ名前を名乗ってなかったな)

俺は、その相手に自己紹介を始めることに決め、その名を口にしようとしたその時だった。

『【神眼】のレベルが上がり【透視能力:極】を習得しました』

(何が起こったのか分からなかったがとりあえず俺は相手のステータスを確認する事にした)

ーーーーーーーーーー

◆ステータス◆ 名 称 :イビルアイ

Lv.85/100 生命力(最大50000/最大50000+1000000/10000 +100万 攻撃力:200/防御力:50

/魔法力:8020

/速度:6050/精神力:4590

/耐性値:1000/有効範囲:155000

/特殊技能:自動回復Lv9,超感覚知覚Lv6,危険感知LV4,気配察知LV3,風魔法力UP,火魔法力アップ

特殊能力 物理ダメージ軽減 状態異常無効 再生 吸血 弱点:炎

効属性:水 雷 氷 土 闇 光 聖 耐 無 全耐性

★経験値増加

称号 ヴァンパイアロード 詳細 魔王軍に籍を置く中級レベルの吸血鬼 種族固有技能:【吸血魔術】,【変身能力】など

戦闘系技能: ー ー ー 攻撃手段 噛み付き 爪 翼による攻撃 牙から放つ出血性の毒 体術 吸血によりHP、MP、SPを吸収する 血液に麻痺の効果を持つ 血を飲んだ生物の細胞を変化させる事が出来る ーーー

「なるほど、こいつがあの時言っていた奴なのか。それで、お前の名前を聞いていいか?」

俺は、魔王軍に所属しているこの上級魔族の実力を確かめようとした。

「私の名は、ルインと申します。サタン様がお望みであるならば私は貴方を殺さなければならない立場にいるという事をご理解ください」

そう言って彼は腰にある剣に手を置いた。そして俺はそれを見ると同時に刀を抜いてしまった。俺は、俺を殺しに来ると言っている者に殺されてやる気なんてないからなのだ。だがその動きに反応したのは、魔王軍の幹部達だけだった。俺は幹部たちに動くなと命令し、俺も動かずに、俺が何をしたいのかわからせるために立ち止まらせたのだ。俺の目の前で対峙する上級魔族は、【吸血能力】を所持しているという事もあり非常に危険な状況に陥るだろうがそれでもここで引けば俺の存在が魔王軍の大将に知れ渡ってしまうのだ。そんな事になれば、今後俺は命を狙われてしまう事だってあり得るのだ。俺の命を狙う者は絶対に殺す覚悟で戦わなくてはいけないのだ。それがたとえ俺に敵意を持っていない相手であっても俺を害しようとするならばそれはもう殺してでも止めなくてはならない。俺はそういう考えを持っているのだ。

そして俺に相対していたこの男は俺の予想通り、魔王軍の大将の直属の配下で間違いなさそうだった。彼の持っている剣に目を向けてみると、魔力が込められている事が分かったのである。つまりこの男の戦闘能力は相当高く俺を本気で殺しにくる可能性があるとわかった。だからこそ、魔王軍の中でもかなり上位に食い込んで来そうな存在だと判断出来た。

(しかしどうして俺の前に姿を晒したんだ?)

この魔族が姿を見せなければ俺はまだ魔王軍の幹部としか思われていないはずだったのだ。そんな彼がなぜこのような行動をしているのか俺には疑問であった。

(何か目的があるのかもしれないな)

「一つ聞いておきたい事がある」

「なんでしょうか」

俺はこの魔族についていくつか聞きたかったのだ。まず一つ目は、今目の前にしている魔族は、上級魔族の中のトップレベルの強さを有しているのではないかという事だった。もしそうであるのならば俺を殺す事も可能なのではないかと思ったのだ。そして二つ目の質問が重要な内容になっている。

何故魔王軍の総大将が俺の前に現れたのかが問題になるのだが、その答えを聞かなければ魔王軍と敵対する意味が無いと思ったのだ。しかしそんな俺の考えとは裏腹に魔王軍の参謀役であるイビーさんは魔王軍の幹部全員に向けて言葉を発したのである。「あなた方は少し下がっていただけませんか。ここから先は、私が話をつけますので」

俺はそんな指示を出すという事はやはり魔族たちはかなりの実力者である事が分かってきたのだ。そんな彼らでも魔王軍幹部の前では口を挟む事はしないで黙って見守っているようだった。その魔王軍の幹部たちの中では、先ほどの俺と戦った上級魔族であるこの男も魔王軍の幹部のはずなのに他の者同様に大人しくしているのである。その光景を見ていると俺の推測が正しかったのだなと思うのであった。

「さすがですね、サタン様が認めただけの事はありますね」

イビーが小声で呟くように俺に話しかけてきた。どうやら魔王軍の人たちはこの魔王軍の大将である俺を魔王として認めていないらしいのである。その証拠として、このイビルアイという魔族は俺の事をサタンと呼び俺を魔族として扱おうとしていたのだ。だから魔王軍と魔王は別の存在であるという風に俺の事を呼び捨てていたのである。そんな魔王軍に対して俺は、これからはしっかりと自分の意見を押し通して魔王軍を束ねようと心に決めたのだった。そんな魔王軍が俺の敵に回らない為には、俺の存在を彼らに認識させる必要があったのだ。俺自身が、魔王軍の敵ではなく魔王であると示さなければならないと考えた。

そして俺の質問に対してこの魔族は俺に対して謝罪を要求してきたのだ。それも自分が魔王軍の大将だと名乗ってからの俺に対する暴言を詫びるようにと言うのである。その魔族の態度を見ていて俺は本当にこいつは俺を魔王と思っているのか疑い始めたのである。魔王軍の中のトップクラスの実力を持ち、しかも俺を殺そうと考えているはずの男が魔王と名乗る者に対して頭を下げろと言って来た事に俺は驚いてしまった。普通であればこの国のトップだと名乗り出て、さらに人間たちの味方をしている者が現れた時こそ警戒しなければならない場面だろう。その人物が自分より上の立場でありなおかつその者が自分に害をもたらすような存在であれば敵対してはならないはずだろうと考えているからこその行動だと思うのだがそれをあえて口に出す事は無かったようだ。それほどまでの自信を持って俺の前に出てきたということになる。しかし実際に会ってみるとそこまで強いとは思えないんだよなこの人?

(【鑑定】を発動)

◆名前:ルイン

◆性別:♂

◆年齢:0歳

◆種族:ヴァンパイアロード

◆職業:魔王軍に忠誠を誓う吸血鬼

◆称号:ヴァンパイアキング/ヴァンパイアロード

◆詳細: ヴァンパイア族を纏める王の地位に就いている吸血鬼の上位個体で吸血鬼の中ではかなり高位の存在となっている。下級ではあるが吸血能力を持つため非常に厄介で上級魔族に匹敵する力を持つ。

ヴァンパイア一族の中でも最強を誇る実力の持ち主でもあるが、吸血の能力により同族から敵として認識されているため孤立気味である。そのことから自らの意思に反しており心から仕える事が出来ている主君に会ったことがなく自らに仕える主人を見つけることを願っている。

魔王の事は噂では聞いたことがあるが、今まで会う事は出来ていなかった為、このタイミングで魔王に会えた事で歓喜している。その思いは魔王の眷属になっても変わることはない。魔王の為に生きることを誓っておりその忠誠の深さはこの世に存在する者の中で最も魔王に近い位置にいると思われる。

(えっと、こいつのステータスはどうなってんだ?)

俺はこのヴァンパイアロードが気になって【透視能力】を使用してステータスを確認することにした。

◆ステータス◆

名 称 :イビルアイ

Lv.116/100 生命力(最大50000/最大50000+10000/10000 +100万 攻撃力:200/防御力:50

/魔法力:8020

/速度:6050/精神力:4590

/耐性値:1000/有効範囲:155000

/特殊技能:自動回復Lv9,超感覚知覚Lv6,危険感知LV4,気配察知LV3,風魔法力UP,火魔法力アップ,闇魔法力UP,光魔法力UP,水魔法力UP,風魔法攻撃UP,風属性ダメージUP,聖魔法力UP,雷属性ダメージUP,雷属性ダメージUP,氷属性ダメージUP,氷属性ダメージUP,土属性ダメージUP,光魔法攻撃UP,闇属性ダメージUP 特殊能力 物理ダメージ軽減 状態異常無効 再生 吸血 称号 ヴァンパイアロード 詳細 魔王軍に忠誠を誓った上級魔族の吸血鬼でヴァンパイアロードの称号を持っている吸血鬼。最上級レベルの強さを有しており下級だが吸血の能力により他者から嫌われているため単独行動を取っている。その為仲間意識というものがほとんどないのである。

この男からは、この世界に来たばかりの時に出会ったエアリスに近しいものを感じた。この男は恐らく魔王軍の幹部であろうと思う。魔王軍の大将に会って謝らせようとしているのは魔王軍への忠義なのだろう。俺がそう思ったのは、この魔族の目が真っ直ぐ俺の事を見ている気がするからである。しかし、それは俺を油断させるためのものという可能性もある。そのためにも慎重に事を運ばなければいけないのだ。

(ん、あれ?こいつ今レベルが上がったか?)

この男のステータスを見てみると俺のレベルが上がった時の反応があったのだ。これはどういう事なのかと疑問に思ってしまったがすぐにその謎は解けた。

(な、何だ?!この魔力量はっ!?)

その魔族から感じる異常な量の魔力の量があまりにも多い事から俺は驚いたのだ。だが俺も魔力操作で魔力量をコントロールできるようになってるためこの魔力量が多いからといって負けているわけではないが、それでもかなりの脅威である。そしてその魔族は俺の【解析者】をも凌駕しているのだ。これでも俺は神の力の一端を受け継いでおり、【解析】や【スキル強奪】等の神の力で手に入れた能力はどれもレベルが高く強力なものだ。この魔族が仮に魔王の直属の部下なのだとすればこの魔族と同等の強さを持っている事が予想されるのだ。そんな事を考えていた俺に向かって、目の前の男は俺に対して頭を下げながら口を開くのであった。

「申し訳ありませんでした、魔王殿」

そう言ったこの魔族の言葉は、俺が予想していた通りであった。その瞬間、この男の事を信用しても良いだろうと感じたのだがここで俺は魔王軍の幹部に俺の存在を知らせてしまった事に気づいた。魔王軍には絶対に知られてはならない存在に知られたのだ。もしこれが誰かにバレてしまうと大変な事態に陥ってしまうと思った俺は、これからはしっかりと俺の事を隠す事にした方が良いと思い始めるのであった。

(よし、これからは俺の事を隠して生きていこう)そう心に誓った時だった――

この魔族が俺の事を見ながら涙を流すように呟いた言葉に俺はとても驚き、俺は一体何を言われたのか分からなかった。それは、その言葉の内容についてであるからだ。

「やっと貴方様に会えた。魔王陛下」

その言葉を耳にした時、魔王軍のトップである上級魔族でさえ俺を殺す事は容易いのではないかと思っていたのだが、目の前の魔族の言葉によって俺は更に驚く事になるのである。その言葉を発した時に魔族の体に変化が起きた。体が徐々に大きくなり成人男性の体格くらいまで大きくなったのだ。

「え?」俺の口から言葉が出ずに、そんな言葉だけが出てきてしまっていた。そして俺はその魔族の顔を見て、また驚くことになる。この魔族がとても美形だったのだ。まるでアニメの世界から飛び出してきたような綺麗で可愛い顔をしていて身長は高く175cm程度だろうか。俺と同じ黒い髪色で目の色は紅く輝いていた。俺が見たこの世界で俺が一番好みな顔であったのが正直言ってしまえば一番のショックかもしれない。しかし今はそれどころではないと俺は冷静に判断できたのである。

俺の目の前にいるこの上級魔族であるこのイケメンは、俺の事を魔王だと言ったのである。この男も魔王軍のトップに位置する存在だ。それがどうして俺の前に現れたのか。俺は魔王軍の幹部であるこの男を警戒しつつも話を聞こうと質問を投げかけるのであった。

「あの、あなたの名前は何ですか?」俺は少し戸惑いながらもこの魔族の質問をしたのである。俺としてはその魔族の名前を知っておきたいと思った。何故ならばこの魔族がもし俺に嘘をつくという事になれば、その嘘を見抜ける自信が無かったのだ。俺の【鑑定】もそこまで万能という訳ではない。【解析者】でもその情報を全て見る事が出来ない場合がある。【鑑定】という能力自体が完璧では無いのだから仕方がない。それにこの世界の人たちの全てを完全に知る事は俺には無理だったのだ。しかし、俺は【鑑定】の能力によりこの男を【解析者】で表示させる事に成功したのである。俺の目に飛び込んできたこの文字を見た俺は、そのあまりの情報の多さに俺は驚愕する事になってしまったのである。

この男、イビルアイという名の魔族は俺が思っていたよりも遥か上の存在だったようだ。なんとこの男、レベルが120もあったのだ。それも、まだ成長途中のようである。

(はあー、もう、本当にこの世界の人間は規格外な奴らばかりだ)俺はそんな感想を抱いてしまいこの男になんて声を掛ければ良いのか分からず無言のまま見つめ合う状態になってしまっており非常に居心地の悪い空間が出来上がってしまった。そんな時だ――俺の後ろで隠れるようにしながらこちらの様子を窺っていたリィメイ学長に動きがあった。彼女はこのイビルアイと名乗った男が怖いらしく完全に怯えてしまっていた。そんな彼女を見たイビルアイはこの女は誰だとでも言うような表情をして俺たちを見てくる。どうしようか悩んでいる俺の前にリィメイ学長が進み出て震えながらイビルアイに話しかけたのである。

◆名前:リィメイ

◆年齢:?歳

◆種族:ヒューマン

職業:冒険者学園学園長兼ギルドマスター

称号:魔法博士/天才 固有技能 魔導知識(Lv8/MAX)

言語理解Lv7 全属性適性 生活火術 水生成 水操作 火弾 風圧上昇 風槍 地動流撃 光輪回復 光障壁 闇影闇刃 光斬剣 聖癒 雷光球 重力波砲 聖盾召喚 闇纏鎧 聖盾変化 闇の手 魔眼(魅了、石化、幻覚などを操ることが可能。但し自分より格上の者に対しては無効となる)

能力 魔法力向上 魔法力超強化 魔力吸収 魔道具作成 魔導創造 魔法効果増幅 能力共有 魔法合成 ◆詳細 冒険者ギルドに新しく設立されたSランク冒険者が在籍するチーム【月華の騎士】のリーダーを務めるエルフの女性であり元SS級の冒険者であった実力者でもある。魔法の研究が大好きな変わり者のお婆さんだが、魔法の腕は王国の中でも最高峰の実力を持つとされているほどの実力者。この世界でも魔法を極めようとする者たちが彼女に魔法の師事を乞いに訪れるほどである。そのため多くの弟子を抱えている。

(この子はまだ若いけど、実力はかなりあるわね)イビルアイがそう思っている間にも、リィメイ学長はイビルアイに向かって喋り始めた。その話し方はいつもの調子に戻っているように感じたが、内心は恐怖している事だろうと思った。その会話の内容は俺にも分からないものだった。だがその話を聞いた瞬間イビルアイは信じられないという顔つきになり固まっていた。俺は一体何を話してるんだ?と思ったがどうやら俺が関係していることだけは間違いないだろうと思ったのだ。

(この子との繋がりがあれば何か役に立つ事があるかもしれないな)俺はそう思いその会話に介入することにしたのである。俺が話に介入したことで二人は話すことをやめてしまったが俺と目が合った途端に二人とも俺に対して頭を深く下げてきたのである。

俺は何が起こったのか全くわからなかった。

(なんだこの状況?)俺はそう思うが、俺を尊敬してくれているからこその行動なのだろうと推測して、俺はそのままスルーすることにしてしまった。この魔族の事を知ることが出来て、そしてこの場から離れることが出来るようになったのだ。このタイミングを逃してはいけない。そう思った俺はこの魔族が何故この王都に来ていたのかを聞くことにしたのであった。

俺はこの男からこの魔族の目的を聞いている。しかしそれは、とてもじゃないが人間にできるものではない事だと俺は思った。それは魔族の国に住む全ての魔族の殲滅。それがこの魔族の目的なのだ。それをこの魔族――イビルアイは人間側の国王に伝えたのだそうだ。しかし、この男の目的はそれだけではなかったのだ。それは、魔王の討伐。それが、この魔族――イビルアイの目的なのだという。この魔族は魔王軍の上級魔族であり、その上級魔族ですらこの世界には数人しかいない程の強者なのだという。この世界の頂点に位置する者達を上級と呼ぶが、この男は更にその上に位置する存在だという事なのだ。その上位の存在からすれば他の種族や国家というのはただの有象無象でしかないのだ。そしてこの魔族はその頂点であるはずの神さえも滅ぼそうと計画しており、それを実行する為に俺を探しておりこの国にやって来たのだと言っていたのだ。そして俺はこの魔族にこう言われてしまったのである。「私に忠誠を誓うならばお前を魔王にしてやる」俺はこの言葉を聞き、正直なところ嬉しかったのだ。自分が勇者ではなく、魔王になることを望んでしまったのだからおかしな話ではあるがこれは仕方のない事だろう。魔王軍には強い部下が欲しいと考えていたからだ。勿論リィメイも例外なく欲しくて仕方なかったのだが、まさかこんな形で配下が一人増えることになるとは思ってもいなかったからである。

その言葉を聞いた瞬間俺は、自分のステータスプレートを取り出して魔族が言う魔王に成れるかどうかを確認した。しかし、やはり俺には成れなかった。この世界での職業である勇者は別の職には就けないと俺の頭には入っており、俺がどれだけこの世界の仕組みを理解しようともそれが変わることはなかった。しかし魔族からのその言葉を受けてから暫くの間、俺に魔王になる資格が与えられると俺はそう信じて疑わなかったのである。

(まぁでも魔王ってのは悪い気はしないな)そんな事を考えながら俺はその魔族に言ったのだ。「私はあなたに忠誠なんて誓えない」

俺の言葉にこの男、イビルアイはとても残念そうな顔をしていた。しかし俺はそれでも諦めない事にした。俺は魔族が差し出してきた手を握ろうとはしなかった。するとその男は再び口を開き、「私の事が信用できないか?」と言ってきたのである。俺はこの時、俺の事を見透かされたと思い一瞬焦ったのだがこの魔族の言っている言葉に俺の心はとても穏やかになったのだ。この魔族が求めているのは俺がこの世界に転生した存在であるとバレていないと分かったからなのかもしれない。俺は魔族のその問いにこう答えた。

「いや、あなたの力は魅力的だと思う。しかし今の僕には仲間がいる。この人たちが居なければ僕はこの世界で生きていけないだろうと思うんだ。だからこの人たちを捨てることは出来ないんだよ」

この男なら、もしかすればこの国の魔王軍を壊滅に追い込む事が出来るのではないかと考えたが俺はそうは思えなかった。だからこの男の提案に俺は乗りたくはない。この男を信頼するにはまだ時期尚早だと俺は思った。それに俺自身まだこの世界で生きていくことに必死で誰かを信じることが難しい状況だ。そんな時だった。突然リィメイ学長の声が上がったのだ。

◆詳細

名前:リィメイ

◆年齢:?歳

◆種族:ヒューマン(ヒューマン+竜人=ドラゴンエルフ)/ヒューマン(ハーフエルフ)

称号:魔法博士/天才/天才/天才

職業:魔道具士(S級冒険者パーティー所属/副ギルドマスター)/冒険者(冒険者ギルド)/冒険者(冒険者学園教師)/冒険者(ギルドマスター補佐/サブギルドマスター/学園ギルドマスター補佐/総合ギルド本部職員)

能力値: 魔法力向上(10204倍)

魔法力超強化

(64012倍)

魔力吸収(80万)

能力譲渡

(100)

魔眼(魅了、石化、幻覚などを操ることが可能。但し自分より格上の者に対しては無効となる)

光属性適性

(10308)

水属性適性

(10262)土属性適性

(11273)

風属性適性

(10734)

闇属性適性(10621)火属性適性

(10529)

聖属性適性

(9251)

光属性耐性

(9853)聖属性軽減

(819)状態異常無効

(6883)体力自動回復 水操作 地動流撃 風圧上昇 風槍 火弾 光輪回復 光障壁 重力波砲 聖盾召喚 闇纏鎧 光盾変化 闇纏籠手 聖護結界

(聖盾召喚、闇纏篭手、聖盾変化 の三つを融合)

聖剣召喚 重力波砲

(闇魔法 聖盾変化と聖属性魔法 聖杖召喚の二つを合成)

聖水 能力共有 聖癒 雷魔法

(雷魔法を使用可能。但し雷は使用出来ない)

魔道具作成 魔法合成 能力付与***鑑定眼により解析完了ー解析スキルに吸収しました。以後【能力付与】として使用可能になりましたー 俺が出した結論、それはこの国に存在するであろう魔王軍に勝てる可能性がある唯一の手段がこのリィメイという女が持つこの男の持つ特殊な技能である可能性が高いと判断したのである。この男の実力であれば魔王軍に勝つことも不可能ではないだろう。だからこそ今ここで殺すべきではないと感じたのだ。勿論殺せば楽なのはわかっているし殺したい気持ちもあるが今は我慢するべきなんじゃないかと思ってしまうほどに俺は冷静になっていたのだ。

その考えに至った理由は一つだけあるのだ。

(この魔族に付いて行った方が面白そうだ)その一心であった。俺自身の欲望の為にこの魔族を生かすことにした。だが俺は後悔している。俺があの時この魔族を殺していたほうが、きっと面白い事が起こっていたのだろうと俺は思った。だがもう遅い。そう思った俺は、リィメイがこの場から離れようとする時にこの魔族に対してこう告げた。「俺に力を貸せ。もし断ると言うならば俺はあんたを殺すぞ。俺は魔族だろうがなんだろうが俺の味方でない者を俺の部下にするつもりは毛頭ない。わかったか?」そう言って俺はリィメイと共にこの場を去ったのである。

俺のこの発言に対してこの魔族は俺について来てくれるらしい。この魔族は魔族の中では相当な実力を持っているらしいが、この魔族の強さはこの世界の中でも上位に位置するものなのだろう。だからこそ俺の力になれるという判断を下したのだと思われる。俺はその後この魔族に聞いたのだ。何故この王都までやってきたのかと。この魔族曰く、「私の目的はこの国の国王に会う事。そしてお前を連れてくることだった」という。何故この魔族がこの王都へ来たのかまでは教えてくれなかったが、おそらくこの王都には何か目的があるに違いない。俺はこの王都で何かが起こるような気がしてならなかったのである。しかし、そんな俺の予想は大きく外れる事になってしまうのである。それはこの王都内で起こっている謎の事件の調査に向かう事になったからである。そして俺は、これからどうなるのかわからない不安を感じながら調査に向かっていったのであった。

私の名前はリィメイ、そして目の前にいるのが私の側近兼護衛を務めている最強の男 魔族の国 最高戦力の五本の指に入る程の実力を持った男 バルガンなのだ。

そんな私は先程、この国で起こっている謎事件について調べる為に行動を開始した。それは私がこの国のギルドのギルマスであり学園の先生でもあり、私の所属する組織のトップでもある男の命令によるものだからである。しかしその任務には当然同行者がおりその人物が問題を起こしてしまい私はその問題を解決するはめになったのである。その問題はというと――

(まさかあの男――イビルアイ様があのような姿になるとはな。それも仕方のない事か。まさか、人間如きの小僧ごときに遅れを取るなんて思いもしなかったからな。それに加えてその少年が勇者だとは思わなかった。しかしあれほどの力を持つ勇者ならば、イビルアイ様の敵にはならないか。むしろこの男を魔王軍に入れることが出来ればこの国に革命を起こす事が出来るやも知れん。それならば私にも多少の責任はあるという事だな。まぁ私の目的は最初から魔王軍に入ることだ。イビルアイ様には私から話を通しておく事にしよう)と。

「リィメイ様」

「何ですか? 魔族よ」

私はこの魔族と初めて出会った時この男が言っていた言葉に少しばかり驚いた。この男はイビルアイの実力を知っていたのだ。その事実に私はこの男に感服したのである。

(なるほど、この魔族に付いて行く価値は十分にあるかもしれませんね。ただ私の目的を達成するためにもこの男の事はある程度利用させて貰いますが。それとこの男には期待出来そうな予感もする。私の勘は外れた事がないしこの男ならあるいは魔王に届く存在になってくれるかも知れないですね。私の見立てだとこの男の年齢は見た目と実年齢の差があまりなさそうだが、この魔族と戦えるということは少なくともその力は勇者レベルに匹敵はしていないまでもそれなりには強いのだろう。この国で魔王軍と互角に渡り合えるとすれば間違いなくこの二人しかおらん。つまりはこの二人のどちらかが魔族と結託してくれればいいのだがな。さて、まずこの事件を解決するには現場検証から入らねばな)と。

「それで、貴女の言う怪しい人物というのはどんな奴なんです?」

「この王都の路地裏に住んでいると言われている謎の老人だ。しかし目撃情報はあるものの、誰も見たことがない。その老紳士の姿は黒いローブを着ているだけでそれ以外の特徴は不明だ。唯一わかることは、目撃者の情報によると、突然現れ、消えるということだ。それだけ聞くとその者は透明になる魔法を使ったようにも聞こえるかもしれないが、目撃者の話を聞く限りではその者は足音も匂いもなく突如その場に現れたと証言しているのだ」

そう話すこの魔族の言葉に、俺はこの男の言っていることが嘘だと確信した。確かにこの男からは魔族の特有の臭いというものは一切感じられない。この男の種族についてはまだ何もわかってはいないがこの男の言っていることはおそらく正しいのだろう。それにこの魔族には不思議な点もある。この男の実力が俺よりも上だという事、この男の存在自体に俺は不思議でならなくなってきたのだ。だがそんな事を考えてる間にも時は過ぎていくもので、すぐに問題の現場にたどり着くことになるのだ。

(なんだここは?)と、俺の目に飛び込んできたのは異質という言葉でしか表現の出来ないものだった。そこにあったのは人の死体。そして死体の状態は明らかに異常であった。血の海の中に浮かんでいる複数の人の体の一部、そして肉塊となって死んでいる人間だったものの顔だった。そしてこの男達の死体を見て私は思うことがあった。これは一体なんの実験だったんだろうと、なぜこのようなことが起きたのか、なぜこんな酷い光景が出来たのか私は何も知ることが出来なかった。

俺が調査したこの男の死体の状況はとてもじゃないが信じられないような出来事が目の前で起こったことを物語っており、それが真実であることを俺は信じるしかなかった。そしてそれと同時に、俺は目の前の魔族に対して恐怖を感じていた。それは、目の前の魔族が今まで見せたことのない表情をしていたのだ。この男の顔は、怒りと悲しみに歪んでいた。それはこの男の心からの悲鳴のようなもので、その感情が溢れ出していたのだ。その気持ちはよく分かる。俺も似たような経験があるからだ。それは今から約十年程前の出来事だ。当時この俺は今より弱かったがこの力のおかげで、この世界に転生して来る前は俺と同じ世界にいた人間に勝つことができた。そしてそいつを倒した俺はある実験台を頼まれていたのだ。

俺の能力は魔力を喰う能力と魔力回復スピードが早まる能力。そして、魔法を使う為の詠唱を無くすことができる能力の三種類。

そして、その魔法を発動させる魔法式を読み取ることのできる能力が備わっている事である。この三つを組み合わせる事で俺は自分の魔法と他の魔法を同時に発動させることが可能なのである。

そんな俺にこの世界の魔法について教えてくれたのは目の前にいる魔族である。この魔族が言うには魔法は大きく分けて二種類の分類があり、一つが魔法名を唱えれば使える魔法。もう一つが呪文と呼ばれる詠唱が必要な魔法の二つに分類される。更にその詠唱が長ければ長い程強力な効果が得られるのがこの世界での常識らしいのだ。そこで俺はこの魔族に対して、その知識を利用して新たな術を考え、この世界では知られていない未知の技術を使ってこの世界の魔法体系を破壊することにしたのだ。それは【全言語理解】を使い全ての魔法を詠唱なしで使用出来るようになったからである。そして俺が作った【魔法合成】という俺のオリジナル技によって【自動再生】というスキルを作り出す事に成功したのである。

その結果出来上がったものは、無限に回復することが出来る魔法薬を作ったということになる。それを俺は俺に依頼されたある人間に渡して実験をしたのだが、結果は成功で相手は瀕死の状態だったが生き返ったのである。だがその後が問題なのだ。

そう、その後の相手が俺を殺す為にこの国に来て暗殺を仕掛けてきたのである。そしてその男はこの王都に来ていた冒険者の中で一番弱い男に俺の相手をするように命令を出したのだ。この男は俺を殺すつもりだったらしく、この俺を殺しさえすれば報酬がたんまりもらえるからと言われ仕方なく依頼を受けることになったのだ。だがこの男はこの世界に来る前に俺は、この男を殺すのに必要な準備をしてあった。この男と相対することになった時の為に、この男を倒すための道具を準備した。

この男の装備はこの世界でも上位クラスに位置するものばかりだったが、それでも俺の方が圧倒的に実力が高かったので、一瞬にして倒す事が出来たのである。その時に俺はこの男の剣が光っていることに気づいた。だからその剣がこの男の固有武装なのかと思い、この男に聞いてみたところどうやらこの男が元々所有しているものだということがこの後に分かったのだ。しかし俺がその事に驚きを隠せなかったのは、俺の持つ【魔法分解】というユニークスキルがこの男にも付いていたからである。俺はこの時、自分が異世界から来た事を相手に話していないのにも関わらず、自分だけがこの世界にやって来たのではなく向こうの世界でも同じようにこの力が作用する可能性があると考えたのだ。この男のこの固有武装の名前は【魔法解放 エクスカリバー】と言いその名の通りその剣から放つ斬撃に膨大な魔力を纏わせることで絶大な威力を発揮することが可能でさらに、その攻撃には、その使用者の身体能力を大幅に強化することができるというものだった。この男は、この武器を使えば魔王軍に入ることが出来ると言っていたが正直その言葉に信用が持てなかった。この男にそれほどの力があるのならば何故わざわざ人間という下等生物の仲間に入ろうとするのだろうかと疑問に思ったが、結局は魔王軍の内情までは知らないのでその答えを見つけることは出来なかった。ただ言えることはその魔王軍もかなりヤバい集団だと思ったくらいだ。

そして、この男を倒した後にこの男の依頼を受けた男が現れたのである。この男の正体はなんと勇者だというではないか、その時この男を殺しておいて正解だったなと、つくづく俺は思ってしまった。この男は、あの男と似たような感じだったが、俺と敵対する気はないようですぐに引き下がってくれたのだが、その後が問題になったのだ。何故かって?その男が言った言葉が原因だ。「君、名前は?」

「俺は、ミケラルド、お前は誰だ?」

この問いに対して、俺は正直に答えるかどうかを悩んだが嘘をつく必要もないと思い素直に本名を告げたのである。

するとその男の目は見開いた。

(この反応、まさか俺の事を知っているのか?)そう思っても仕方がなかったと思う。だってこの男の態度から見るからに、俺の事を魔王軍の幹部と認識するのは当たり前のことだ。ただ問題はこの後で俺は、勇者にこの世界の秘密を打ち明ける事になるのだ。それこそが勇者との遭遇により生まれた最大の誤算と言っていいだろう。そう、俺の本名は――佐藤正義なのだから。この世界が現実とゲームの世界が混同していると俺が伝えたところ勇者は俺を襲って来たのだ。当然だ。俺は魔王軍と勇者軍が手を組んだなんてことは聞いたことがなかったのだから勇者が怒るのもうなずける話だろう。そして勇者の攻撃が当たるか当たらないかで、俺とこの男の戦いが始まったのだ。だが、俺は勇者の剣を避ける事が出来なかった。その攻撃をまともに受けてしまったのである。勇者のその力は、この俺でさえ予想外だったのだ。その力は俺が知る限り、俺と同等の力を持っていなければ相殺する事が出来ない程の力を持つ一撃だと思ってた。

そして俺はその攻撃を受け、体が動かせなくなり気絶した。それから意識を取り戻してから俺の前には勇者とその仲間たちの姿はなかった。そしてこの国の国王がいる部屋へと案内されるのだが、その途中俺の心の中にはこの国を裏切ってでもその謎を解きたいという強い意志が芽生えていた。この気持ちを抑えられなかった。

そして俺がこの国に来て数日が過ぎた。その間俺は様々な事をしていた。この国の王とは顔合わせをしている。その際にこの国が抱えている問題について話を聞かせて貰った。この国は今戦争中らしい。その相手は帝国と法国という国でこの王国を攻めてきているそうだ。その理由についてはわからないとのことだ。

その国と戦っている理由を聞いたときに俺はあることを閃いたのだ。

(そう言えば俺がこっちに来る前にやっていたゲームのマップ画面に表示されていた国と全く同じ名前だよな)

俺はそのことを確かめるべく俺は、この王城に出入りすることを許可されたのでその王城の中で情報収集を行っていた。

そして俺は、俺がこの世界で生きていた世界についての情報を集めることができた。そして、わかった事だがこの世界には存在しないはずの物がこの世界にも存在していることが分かった。まずは【全言語理解】という能力。これはこの世界のすべての種族、人間が使える共通能力らしいのだ。

それともう一つはこの世界にしかないはずの能力が存在しているというのだ。それはこの世界の人間には使うことの出来ない特殊な能力を俺のような異世界人のみ使用が出来るのだ。俺の場合は魔力を喰う能力の事で、その喰う量は自分の体の中の魔力が切れるまで永遠に続ける事ができるのである。俺も実際に試したが、本当にその能力は半永久的に使用できるのだ。つまり、俺はどんな状況になろうとも絶対に魔力が枯渇しない体になったというわけである。

だがそれだけではなかった。俺は【自動再生】のことも調べようとしたのであるが、この能力は簡単には見つからなかったのだ。俺が持っていた知識では【魔法合成】というものを俺以外に使える人間は存在しなかったのである。だがこの世界にはその【魔法を合成する】という行為が出来なくとも、魔法を発動させることが可能な魔導具というものがあった。それは魔力が足りない人間にもその魔力を分け与えてくれるアイテムがあった。そのアイテムの名前はマジックカードと呼ばれている。俺はこの魔道具を作る為の知識を持ち合わせていなかったのだが、この魔道具を作ることに関して天才的な能力を持つ者が俺以外にも存在していることを知った。その人物は、俺と同じ世界の人間であった。俺は、その男に会いに行ったのだ。だがそこで俺の期待を裏切り、その男もまた、この世界に転生して来た人間であるということが分かり、その男と俺の目的が一致したため協力関係になることになったのだ。その男は名を佐藤浩一と言い、この世界で俺と同じようにこの世界がゲームと酷似していることにいち早く気がつき行動に移していたようだ。その男の年齢は二十歳で俺は年下だが、そんな事は関係ないほどお互いが協力し合いこの世界の情報を共有し合うことにしたのだ。

その男がこの世界で手に入れたユニークスキルは、相手の思考を読んでそれを先読みすることが出来る。【未来予測】という能力で俺はこいつの力を借りることで、この世界に来てからは誰にも負けない自信を持っているのだ。それに俺は、この世界の魔法体系を壊し新たな魔法体系を作り出しているのだ。それが今この世界の人間たちに流行っている魔法書や魔法スクロールと呼ばれるものだ。俺が作った魔法は【全言語理解 魔法付与 魔力回復速度上昇】だ。俺が持っている【全言語理解】をコピーしてこの世界に居るであろう俺の友人に配ったのが始まりなのだ。

俺のこの世界でも友人と呼べる人間にこの魔法の作り方を教えて欲しいと頼まれた時はかなり戸惑ってしまったが、その魔法の使い方を説明するだけで良いのなら教えると俺は承諾してしまったのだ。俺は、その男からの依頼を引き受けることにしたのだ。俺は早速魔法を教えることにした。その男の名前は斉藤といい、俺の作った魔法の本は全部で三百冊もあるので、それを渡すのに時間は掛からなかったが、それでもその男は覚えるのに時間が掛かるという事だったので、俺はその間に俺は自分なりに考えた方法で【魔力吸収】を作り上げる事に成功した。この魔法で相手に触れなくても魔法を使うことが出来るようになったのだ。そのおかげで俺のレベルが上がりレベルも上がった。俺は、この世界を平和にするためにある計画を立てることにした。それは、世界最強の軍隊を作るということだ。

その為に必要なものがこの国に存在すると言われているアーティファクトだ。この国の王はこの国にアーティファクトがあるということは知っていた。だから俺は、王にこの城の宝物庫へ入らせて貰えるようにお願いをしたのだ。俺はこの時既に俺以外のこの世界に転生した人物と出会えたのは幸運だと俺は思っている。俺は俺以外にこの世界の事を知っている人物が他にもいるということを聞いて嬉しかった。この世界に転生したのはどうやら俺だけのようだったからだ。

俺はこの時確信している事がある。恐らくこの世界のどこかに他の異世界からの転生者も居て俺のように行動しているに違いないと思ったのだ。だからこそ俺はこの国の王に俺の計画を実行するための仲間を増やさなくてはならないと思ったのだ。そして、この計画を成功させるためにはまず、この国の戦力の強化から始めたのである。

この世界は、俺たちが元いた世界でも問題になっていた人口の増加と魔物の活性化が合わさって世界の人口はどんどん増加しているという情報を得ていた俺は、この世界の人々がこれ以上増えないようにするためにも、まず、他国に侵攻することを決めたのだ。その計画はこうだ。まず俺が、この国から隣国に向かって攻撃する。その時の作戦名は侵略戦争である。このネーミングセンスは悪くないと自分で思ってしまったのだ。俺は、この侵略戦争の第一段階として、隣国の帝国へと攻撃をした。その結果、見事に帝国の領土の一部をこの王国の領地へとすることに成功したのである。

俺はそれから、この国が抱え込んでいる問題を俺が解いていくうちにその解決方法を次々と見出していった。そして、俺はこの国の内政を仕切るようになったのだ。

俺にはこの世界の人間が知らない知識があり、この国にいる優秀な人材を集め俺の指示のもとこの国を大きくしていったのである。そして俺はその仕事を終えると、また、この世界の別の国へと向かう。そのようにして世界中を駆け巡り問題を解決しながら俺はある場所を目指していた。その目的地というのは、魔王軍の本拠地とされているダンジョンの最深部であり、そこを目指すべく準備を整えている。魔王軍と戦うにあたって俺が今から行おうとしている計画が次のステップへ進むための物だ。

俺は魔王軍をこの世界から消滅させる為にも魔王軍の幹部の一人と戦わなければならないと考えている。

それは何故かというと俺の考えが正しければ幹部クラスの魔族たちは必ずある能力を保持している可能性が高いからである。

そして俺はある一つの可能性にたどり着いたのだ。それは――

俺が、その魔族の力を奪い自分の力にしてしまうというものだ。そうする事でその能力を手にする事ができ、それこそが【奪命黒手】の能力ではないかと俺は考えている。そうする事で俺自身の能力が上がるだけでなく、俺は魔人の魂も喰う事で経験値を得られるのだ。だから俺は魔王軍の幹部と戦っては魔人を狩り続けている。

だがここで一つ問題があった。俺はこの国を離れれば離れるほど強くなるのだがそれと同時に敵の強さも上がり続け、最終的にはSS級モンスターに匹敵するような存在にまで強くなってしまうのだ。俺がS級程度の強さになった時には既に俺が求めていた強者が誰一人としていなくなってしまったのだ。だから、仕方なくこの国に留まっているという訳である。

そして俺がその目的を果たせた時はきっと俺自身が魔王になっているのかもしれないと思う程に強くなった。だからそろそろ俺自身もこの国を出るべきだと考え、ついに今日この日を迎えることができたのである。俺は遂にここまで来る事が出来たのだ。この城の地下には、かつて勇者が仲間と共に入ったことがあるといわれている宝箱が存在し、そこには世界最高峰の剣が収められているという話を聞いたことがあったのだ。俺はそれを手に入れたとき俺が望むものを得ることができると考えた。俺はこの剣を手に入れるためにある計画を実行している最中だった。それは、【全武器使い】という職業を俺が持つ為の行動だった。

【全武器使い】の職業を持つ者だけが扱える武器があるらしい。

それがその【伝説の武器】と言われる武器たちである。

この世界の人間は誰も使うことが出来ないその能力を俺は使うことができるのだ。

そう俺は【全属性耐性 魔法付与 魔力吸収】を習得したのである。

これで【全属性適正】と【魔法合成】が使えるようになった。

【全属性魔法付与】の使い方次第では無限の可能性を秘めているという事も分かったのだ。俺は、【伝説武装】を全て習得することで、俺の理想である最強の軍団を作り出すことに成功したのである。その俺の最高傑作の部隊名こそ――

「魔導兵団!」である。俺はこの魔導兵団の事をこう名付けたのだ。【魔導兵団】この魔導兵の部隊は俺の想像以上の結果をもたらしてくれるだろうと確信していたのである。

俺がこの世界に転生してから十年が経過した。俺は今年十五歳になる年を迎えたのだ。俺は、俺に付き従う部下たちのレベルが限界に近づいてきたのでこの国を旅立つ事に決めたのだ。俺はこの世界がゲームのマップ画面と同じ名前であることを突き止めた俺はそのゲームの知識を生かしてこの世界を救おうと思っている。

そして俺はこれから向かう場所で俺の目的を果たす為に必要な力を身につけようと行動に移すのであった。

私は今、この世界で一番栄えている街の一つに訪れており、この街にあるというアーティファクトの情報を探しにきているのである。だが私の予想していたとおりアーティファクトはこの王都にあるようだったのでこの都市に訪れた。だが残念なことに私が訪れる前から既にこの場所が先客によって占拠されてしまっていたのである。私がここを訪れた時にもまだアーティファクトを誰かが所持していたという事を知ったが、その時には既にアーティファクトの所有者は何処かへと姿を眩ませていたのである。

アーティファクトの持ち主を探すことはもう不可能になってしまった。アーティファクトは、所有者がいなければ、何の力もないただの古びたアイテムでしかない。つまりこのアーティファクトは今現在は何の力を持っていなく無用の長物と化してしまったということである。そして、この王都内のどこかに隠されているであろうこの古びたアーティファクトは持ち主が見つかるまで永遠に待ち続けることになる。だからこのアーティファクトの力は使えない。

しかし、そのアーティファクトは一体誰が手に入れたのか気になりこの国の兵士団長をしている者に話を聞いてみると意外な情報が返ってきたのだ。この国の兵士団長はこの世界の常識を覆す発言をした。

「このアーティファクトを持っている人物ですが恐らく冒険者ギルドのマスターが持っていると思われます」

「ほぅ、あの女狐がこのアーティファクトを所持していたという事なのか?」

私は少し意外だった。

確かにあの冒険者の事を調べるために私はあの女と一度手合わせをしたことがあるが、この女のスキルや能力は厄介だと理解しているからだ。そうこの世界では【魔力感知】を使えなければ魔力を操ることは出来ないと言われている。そしてその【魔力操作】も【魔力放出】を使えて初めて覚えることが出来るのだ。しかしあの女はそれを使わずに魔力を使っていた。これは、この世界に生きる全ての生物の中で彼女以外にできる人間はいないと言われているほどの技術である。

そしてこの世界で【魔力感知】を使える人間などほとんど存在しないのである。

【魔力感知】をこの世界で使うことが出来れば誰でもすぐにその有用性に気づく事ができるのでこの世界に住む人々にとっては当たり前のスキルだ。

このアーティファクトはその能力がなければ使用できない代物であるがこのアーティファクトを使用するには最低でもそのレベルのスキルとステータスが必要になるのである。それを、彼女はどうやって手にしたのだろうかと私は興味が湧いてきたのである。だがこの疑問の答えを彼女に聞いたとしてもきっと教えてはくれないだろう。何故なら彼女はこの国の兵士達のトップでもあるからだ。そんな事よりもまずはこの場をどうにかする方が先決だと思い行動に移ることにした。

そして俺は、兵士団長との会話を終えたあと宿に戻ることにしたのである。俺は今この国の王城に来ている。そして俺の後ろについて歩く者たちがいる。彼らはこの国に仕える騎士団である。彼らの中には元この国の王女様の護衛を任されてた者もいるらしくその実力は折り紙つきである。そして今回俺に同行してくれたこの国に仕えてくれてる兵士たちにも感謝の意を込めて報酬を与える必要があると感じた俺は、その者達に特別任務を与えたいと伝えた。

この国の兵士たちはみな一様に強い心を持っており俺が与える特別なミッションを必ずやり遂げてくれることを約束してくれた。俺もその気持ちに応える為に全力でこの国に尽くそうと決意するのであった。

俺は、現在、この国を後にしてとある遺跡を目指しているところだ。俺が目指す場所は魔王軍が拠点としていると言われている大陸の中心部である。この世界には七つの大陸が存在していてこの国があるのは中央に存在する大きな海に浮かぶ一つの孤島である。そして俺が向かっている大陸こそが魔族達が住んでいるとされる魔族領と呼ばれる場所なのである。そしてこの国は俺たちの国と比べると圧倒的に人口が多い。人口が多い理由は俺たちの国がこの世界で最も繁栄していて人族が多く住むからなのである。俺たちの王国の名前は【イスパニア王国】と呼ばれていてこの世界でも有数の大国と呼ばれている。この王国の人口は五千万人もいると言われているほど大きい。俺たちの王国がこの国に対して侵略戦争を行った際に俺が率いていた軍勢はおよそ四百万人の兵士がこの王国に攻撃を仕掛けていたのだ。その戦争に勝利した俺はこの国のトップと友好条約を結んだのである。

俺は今この国を出るにあたって国王の許可を得るべくこの城にやってきたのだ。勿論、目的は許可を貰う為ではない、むしろ許可を得るのは面倒なので拒否されるつもりでいる。俺は自分の意思を国王に伝えたのだが国王も俺の意思を汲んでくれこの国を出ることを許可してくれることになったのである。そうしてこの国でやる仕事は全て終わらせてしまった俺はこの城をあとにしてこの世界の脅威である魔王軍を討伐するため動き出したのであった。

俺が今目指すべき場所は魔王軍のアジトとなっている大陸の中心部である。そこには、【魔帝グラトニアス】と名乗る人物が支配し、魔王軍の首領とされているらしい。

そして魔帝はこの世の全てを手にしようと企んでいるそうだ。だがその力はとても強くSSS級の強さを誇っているという。魔帝の力を手に入れようと魔族の国々はこの大陸に集結し、日々戦いを続けているという。魔族は元々人間の敵として存在していたが今は魔王軍として人間の敵として存在する種族として君臨することになった。魔族はこの世に魔王が誕生してからこの世界に君臨し続けた。魔族とは魔王が作り出した魔物たちのことを指す。だからこの世界に現存する魔王軍は魔王が生み出した存在であり本物の魔王軍の力を受け継ぐ存在であると言っても過言ではないだろう。俺は魔王軍と敵対する前に魔王軍に対抗できる存在を作る必要があった。俺はこの国にいるときに俺が求める最強の武器を見つけ出すことに成功した。そして、俺の武器を進化させる為の方法も知ることが出来た。そしてこの二つの武器を合わせることで俺は新たな力を手に入れることが出来る。その力こそ俺の目的を叶えるための最強の武器になるはずなのだ。俺はこの力をあるべき場所に戻さなければならない。そして、この世界を救うのは俺しかいないと思っている。俺は今俺が求める理想の世界を作り出す為の足掛かりを作っている真っ最中なのである。

そう、俺は、俺だけの最強軍団を作り出しこの世界の平和をこの手で守ろうと思っているのだ。その為に必要なものは、やはりアーティファクトである。だがこの世界のどこに存在しているかもわからない。ならばこの世界に散らばるアーティファクトの情報をこの目でしかと確認する必要がある。

俺は今この世界を回っている最中にこのアーティファクトをこの世界で手に入れる方法を探しているのだ。その方法は、アーティファクトを所持していた冒険者が使用していたアーティファクトを見つけることだ。そのアーティファクトの入手がこの世界に存在するアーティファクトの情報を掴む唯一の鍵となるはずだ。この世界を俺の力で救う為に必要な情報を集めるのは骨が折れるが、それでもやらなければならないのだ。

そして俺は今、目的のためにこの大陸の中央部にある山を目指して歩き始めている。この山こそ俺の目的であるアーティファクトが存在したと言われている山でもあるのだ。しかし、既にこの山には何もないことがわかっている。だから今、俺はこの大陸で他のアーティファクトの存在が確認されている場所に向かおうとしているのだ。そしてそこで俺の目的は果たせると俺は思っている。

俺の旅に付いてくる者は多くはない。それは当然だ。こんな無謀なことに自ら進んで付き合う者など普通は存在しない。この世界の人々は平和を求めている。この世界を混沌の闇へと落とすような行為に手を染めるような人間はこの世には必要とされていないのである。だからこそこの旅に同行する者は本当に信用のおける仲間のみに限定している。まぁそう言ったものの実際はあまりいないのも事実だな笑 でも俺は後悔はしていない。この先には確実に何かがあると思っているからだ。俺にはその確信めいたものがあるからだ。そうこれは絶対に達成しなければならないことなんだと心に言い聞かせるのであった。だが、そんな俺の前に立ちはだかる存在がいたのだ、それもかなりの実力者が俺の前に現れたのだ!だが俺はそんなものには屈しない!! そして私は今この国に訪れていますわよ。

私の名前は、【リリアナ】と言います。私はこの国の王女でございます。私は王女としての務めを果たすべく今日もこの王城の敷地内で鍛錬をしておりました。すると私の目の前に現れたのです、突如として現れたその人物は一体なんと申すのでしょうか、まるで私が鍛え上げてきた技を全て把握しているかの如く私の攻撃を避けてきやがったんですの。それに私のこの動きについて来れる人物が存在するなんて思っていませんでした。しかし私は諦めずこの国の王女であるこの私が負けてはいけないと思い全開の力を出し切ってこの謎の男と戦い続けたのである。

私は今までに経験したことが無い程の実力を持っているこの男の力量に驚きを隠しきれない状態でしたの。そしてその男は最後にこう言っていましたの。

「お主は俺より弱い」

私はその言葉を聞いた時に、自分がこれまで積み重ねて来た努力を馬鹿にされた気がした。そして、この男だけは倒して見せると誓った。しかし私はその後の会話で更なる衝撃を受けることとなったのである。この男がこの世界を滅ぼす為に動いていると言うことを話していたのである。しかもその話が嘘ではなさそうなのである。そう、あの時見せた圧倒的なオーラ、恐らく本物でしょう。しかし何故この国が滅ぶ事になるのか理解出来ないでいたのである。そしてその疑問にこの国の王女である私を信頼している兵士団の兵士に聞いてみるとその真実を私に伝えるために来て頂いたというのであった。私はこの話を聞いた後私はすぐにこの国の国王に面会を申し込むことにしたのである。国王はどうやら先日あった勇者とこの国の姫の件について話をしているらしく、私と国王の話し合いは少しの間だけ中断されることになってしまったのである。

そして私は先程の戦いを思い出すとまた悔しさが込み上げて来てしまうのである。

私はあの男との勝負に負けた。そして自分の非を認めなければならなかったのである。そうしなければ今この国の王城内の者たちを敵に回す事になってしまうと思ったからである。

それから、私の元へこの国の王である父上と兵士団長であるアリサ様が訪れてくださり私はそのお二人と一緒に王の執務室まで移動しその後再び、あの謎に溢れた人物に会いにいくことになったのだ。その人物とはあの男のことである。

そして今私は、彼の前に立った。すると彼が私に向かって話しかけて来たのである。

そうして彼は、突然私たちが今抱えている問題を解決出来るかもしれない方法があると言ったのである。

だがそんな都合の良い話はないだろうと思っていた。何故ならそのような魔法は存在しなかったのである。だが、彼の言う通りに進めていけばきっとうまくいくという予感があったのである。その方法が上手くいかなかったとしてもこの問題を解決できるのであれば問題はなかったのである。そして、私はその方法でお願いしたいと答えた。

そして、これからこの国にとって最も必要な存在であるこの世界を救う為の兵器が手に入る可能性があると言われ、この国でその技術が保管されているという【神器】と呼ばれるものを手に入れるために行動を始めたのである。

そして、私たちは現在この大陸の中央に位置する【大迷宮】と呼ばれている場所にやってきたのである。そこは多くの冒険者が攻略する為に挑むが未だ最下層にたどり着いた冒険者がいなかった場所である。そしてこの大迷宮の中には現在SSS級のモンスターがいると言われているが、今の私たちならばS級冒険者のレベルにまで成長しておりこの中に眠るであろう最強の武器を手に入れることは可能だという結論に至った。そして我々はついにこの世界に散らばる最強クラスのアーティファクトが眠っていると言われている場所に到着したのである。

だがそこには何やら見たことのない化け物が我々を襲って来たのである。そしてこの場をなんとか切り抜けた我々の前には一人の老人の姿があり我々に武器の使い方を教えてくれると言うのである。

そしてその爺さんに教わったやり方は凄かったのである。武器の魔力を流すだけで斬撃を飛ばし敵を一刀両断にしてしまうのだ。そしてさらに驚くべきはそれだけで終わらないのである。

その武器に秘められた力が発動されると全ての傷が一瞬で回復するのである。そう、これはまさに伝説の武器と呼べる物であった。そうこの世に二つとあるはずのない伝説上の武器【アーティファクト】である。そして、我らはこのアーティファクトが安置されてあると思われる部屋の前まで辿り着く事が出来たのだ。その部屋は鍵がかけられており中には入ることが出来なかった。しかしこの国に存在する最強の鍵を持つ者が居たのだ。その者の名は、【ライラ王女】。

彼女は、鍵のアーティファクトを所持している者でありこの国の鍵のアーティファクトは彼女の父親が彼女に持たせているのだとわかったのである。このアーティファクトがあればどんな鍵でも開くことができる。

だから、この国の国王と兵士達はライナ様にこの大迷宮の中に眠るとされるアーティファクトを手に入れて来て欲しいと告げた。すると彼女から一つの提案がなされたのだ。

それはライラ様が単独で乗り込むのではなくこの城の騎士たちと合同で挑むべきではないかということだったのだ。その提案をこの城の騎士団長は、その提案を受け入れたのである。そしてこの城で最強の戦士を選抜し、その精鋭たちを連れて行くことにしたのだった。そしてその騎士たちに選ばれたメンバーは私を含めたこの国のトップレベルの戦士たちなのである。そしてその精鋭たちがこの扉の前にやって来た。

この中は強力なトラップが多数設置されている危険なダンジョンなのだがそんなもの関係ないと言うような感じで突入していったのである。そう、今ここに居る者こそ、今代の勇者と呼ばれるに相応しい存在である。この男の強さはこの世界で一番といっても過言ではないくらいなのだから、そうして私たちは扉を開き中にいる魔物たちを倒した。そして遂にこの奥に眠っているとされるアーティファクトの元へと向かうのであった。

そしてその部屋には、なんとこの世のものとは思えないような剣が保管されていたのである。このアーティファクトを手にするには資格が必要なのであった。この世界の誰もがこのアーティファクトを使うことが出来ないのである。この世界の理から外れた存在、それこそがこのアーティファクトを使う事が出来る唯一の存在であり選ばれた者であるとこのアーティファクトは教えてくれた。このアーティファクトの使い手になれる存在が私の前に姿を現したのだ。私は彼にこう言ったのである。

この世界に蔓延る魔族どもを打ち滅ぼして欲しいと私は告げたのである。

そして彼からの返答はすぐに帰って来ず、彼はその返事の変わりに私の力試しをするかのように攻撃をして来たのである。その攻撃で私は確信した。

私のこの力を遥かに凌駕するほどの力を持った人間がこの世界に存在したのだ。

その事実を知った私はもう迷うこと無く彼に忠誠を誓ったのである。その瞬間、私の体にはこれまでになかった力が湧き出てきたのを感じたのである。

そうこれが本当の私の真の力と目覚めさせてくれる存在に出会ったことで私は覚醒したのだと、そして私の持つこの剣の新たな持ち主となったのである。

私は彼と契約を交わしこの世に現れる魔族の討伐の為に共に行動する事になったのである。

そして私たちはこの王城を抜け出し大森林地帯にある神殿へと向かいそのアーティファクトを回収に向かった。その道中では今までに無いような強大な敵が何度も現れたがそれを何とか切り抜け私は、アーティファクトを回収することに成功したのである。だがその時私は、この男がこの先現れる脅威と戦うためにはこの先に必要な仲間だと感じ、彼にも同行することを願い出たのであった。しかし、やはり彼の考えは変わる事はなく拒否されてしまうのであった。でも諦めるわけには行かないと思った私は自分の体を担保に彼を仲間にしようとしたのである。だが彼の言葉は予想外なもので、まさかの同行を認めてしまったのだ。しかも仲間になることを許してもらえたのだ!嬉しかった!本当に嬉しかった!!だがここでまた試練が立ち塞がりそうな状況になってしまったのだ。そうミケラルドという人物が私達の前に現れ私と彼の同行を阻むかのような言動をしたのであった。

そして私たちはその人物を倒すための準備をしていたのだがそれが無駄に終わることとなってしまったのだ。しかし彼は私たちの想像を超えてしまうほど強く私たちを助けに来てくれたのであった。私はその姿を見た時思わず泣いてしまったのである。こんなに頼れる人がこの世界にまだ残っていたなんて、私は感動で涙を流しながらこの男の人と一緒にいたいと心の底から思ってしまったのだ、そうするとどうだろう、なんと彼がこの国の王になると言い始めたではないか!?私は混乱したがとりあえずは保留という形でこの話は終わりになった。そして私達の前にはミケラルドが連れてこられるということになったのである。一体何故そのような事をする必要があったのか?その真相を確かめるために私はミック様の後をつける事にしたのであった――

俺の名前は【ミケリスクロード】といいます、はい、猫人間です♪俺は今日から新しくできた王都に行く事になっています、そして今馬車に乗り込もうとしています、ちなみに御者はあの有名なブライアンさんです。

さぁこれから王都に向かって行くのですが、実はこの王都に向かう途中にとんでもない事件があったのである。それは、この国最強の剣士と呼ばれる【アリサ様】に勝負を挑まれた事なんですよね、それで俺は、アリサ様の技をすべて避け、最後には木刀に雷を流し、木刀ごと斬りつけて勝利してしまいました。ま、あれだけ強いんだからいいでしょう。だってそうしないと俺のスキルの効果が出ないから仕方がないのである。そう、俺が今回使用した【無魔法】とは、相手に幻術を見せることが出来る能力があるのである。

さて、王都にたどり着いた俺は今現在ギルドに向かうところである。そうして今現在、俺の目の前にはとても可愛い女の子がいる。その子の名前は【アルセニア魔法学園一年首席のアリス】という子らしい。だが俺はこの子を知っていたのである。何故なら、その容姿や声を聞いたことがあるからだ。

この子がゲームに出てくるキャラクターであることを知っているからである。そうこのゲームとはこの前話した通り「勇者物語~魔王をぶっ殺せ!~」のことなんです。そしてここはゲームのストーリーと一緒で魔王の手先がこの世界を侵略するために行動している最中なので、俺はこの世界が滅ぼされないために動いているのだ。でも俺はまだ学生だしこの国最強の騎士でもないしこの国を守るほどの権力もないんだよねぇ。だけど、この国に魔王の尖兵が迫っているということは、既にこの国にいる人たちにも知れ渡っているはず、ならば俺は何としても魔王軍を殲滅しなければなるまい!!!そのためにはまず情報を集めることから始めようと思っているんだがまずは冒険者登録をしておけば色々な情報が入ってくると思うのである、それにいざとなった時に実力さえあればある程度は融通利くはずだし。

おっと考え事がまとまったら着いたみたいだ。

ここが冒険者が集まる場所って言われているけど確かにいろんな冒険者がいっぱいいるよなーやっぱり王都ってすげぇって改めて思ったわ。

さてまず受付に行きたいんだけどあそこ並んでるしどうしようかなって考えているうちに順番回ってきちゃいました☆

「はい次の方」

うぉぅなんか緊張するぞこれ ってか俺めっちゃ見られてる気がするな。なんだろう?ってそんなことを考えてる場合じゃないな、今はちゃんとした依頼を受けないと生活が危ないし早く受けて帰らないと。よし、決めた。えっと

「あのすみません、初めてきたんでなにすれば良いのかわかんないです。」

やばいやばいつい正直に話しすぎてしまった。この世界で生きていくための常識や知識が全くないっていうのをバレるのはやっぱまずいかなぁ?

「ふっはっは、君は新人さんかい?」

おぉよかった、この人も俺の事を見下してるようには見えない。でもこの人は、多分この国のトップクラスの戦士じゃないかな。

「はい。」

一応答えとこう

「わかった。では私が君の面倒を見てあげよう、君名前は?」

まじか!ラッキーじゃん

「はいっありがとうございます。俺の名はミケラリスと申します!」

「うんよろしく頼む、ではミケラリス君まずはステータスプレートを出してもらえるかな?」

ん?なんだろう?身分証明書的なものなのか?まぁいいけど出してみるか、そう思って出した。すると、周りからざわめきが起きた。

なんだろう、ちょっと見てみようかなと思い、顔を上げ、目を開けるとそこにあったのは驚きの光景だった。

なんと周りの人たちは皆口をあんぐり開けていたのである そして、みんな俺のステータスを見ながらひそひそと話し始めたのである。一体どういうことなんだろ?そう疑問を感じながらも質問した すると受付のおじさんが笑顔で説明してくれた そうこの世界にはステータスプレートという便利なものが普及しているので、名前だけでどんな人間かを判断できるという優れものが存在するのである。そしてそのステータスには個人の強さを数値化してくれる機能もあるためとても重宝されており誰もがその機能を有効活用して生きているのだ、 例えばこの国では

「ミケラリスト レベル1筋力 521 魔力 1098 体力 6122 知力 7806 俊敏 9783 幸運 1722 固有ユニークスキル『アイテムボックス』

エクストラスキル『全能力増加(オールステータスアップ)』『成長限界なし』

神剣アスカロン(+20)

称号 この世界に平和をもたらした救世主 この世界の勇者 この世界の救世主」

というふうに表示されているのである。

つまりミケラリスという人間がどれだけ強いかということがわかるのだ。この世界を救ったというのは嘘偽りなく真実であるが。だがここで一番大事なポイントが

年齢 16歳 種族人間 職業無職 状態:正常 こう表示されていたのである。そうこれがこの世界に転生した時についた唯一の誤算であり最大の問題でもあった。

俺の名前は【神崎真斗】この世界に転生してから16年間、無職を貫き通した。

しかし、とうとうその時が来たのである。今日から新しい学校で学生になるのだが、俺にとっては、初めての学生なのだ、そして今、その初登校をしているところだ、学校までは少し遠いが歩いていこうと思っていたのだが、まさかこんなことになるなんて夢にも思わなかったぜ!!! まさかいきなり絡まれるとは予想外すぎたんだ。ほんとびっくりしたわ てかさ俺が悪いんじゃないんだよ、こんな状況になるのが普通なの。だから文句言うならこんなところに呼び出したやつに言ってくんね?ほら俺もこんな状況になって驚いてんだしさ。

さて、どうしたものかこの状況を打破するにはやはり、あいつらに攻撃するのが手っ取り早いのかもしれない。でもそれじゃあダメだよな、こいつらがどう出るか分からない以上、反撃はできない。

どうするべきかなぁ さすがにここまでされたんだから、このまま逃げるのはよくないだろう。

そして今、俺たちの目の前には三人組の不良がいた。こいつも見た目的には同じ高校だろうか。俺の通っている学校の制服は白を基調としたセーラー服である、そしてこいつの持っている装備は全員短刀、俺はこっちの世界に来たときに手に入れた刀で戦うのが一番効率が良いと考えた。そして俺はその刀を抜き構えて三人に向かって歩き始めたのである。すると不良どもの一人が話しかけてきた

「へっへっお前なかなか強そうだね〜だけどこの人数を相手に一人で勝てると思っちゃだめなんじゃないかな〜それに武器を二本持った状態でどうやって俺達を倒すつもりだい?」

(いや、そもそもこれは正当防衛であって何も間違ってはないと思うんだよね?)

そしてもう一人別の奴が口を開いた。ちなみに二人目は男である、さっきの不良よりも背が低いし細いから多分女の子だろう。俺はその子に対してこう告げる

「あなたたちは何のためにこの僕に襲いかかってきたんですか?僕の事を襲えばそれなりの理由があるはずです」

そう言うとその子達は笑った。何かおかしなことでもあったのだろうかと思ったがすぐに笑い声は止まった。すると、真ん中にいた男が喋りだした

「ふーっお前バカなのかなぁ?俺らはこの辺りで有名な【赤鬼青鬼】っていうグループなんだぞ!!しかもリーダーの俺たちに向かってそんな態度をとるのはさすがにおかしいんじゃないかぁ!?この国を敵に回すのと同じ行為なんだよ!わかっているのかぁ? この国に敵対するような行動をとったらこの国のトップに殺されちまうんだぞ? それが怖くねぇのか!?」

こ、この国のトップだと!?この国にそこまで権力を持つものが居るのか?それにこの国のトップが殺されたら困るのはこっちなんだけどな。それに、あの二人がリーダーなのかなぁ、俺としてはこっちの方が厄介だと思う。

それにしてもなんともテンプレみたいな展開だなぁ。もうちょっと凝っても良かと思うけどな。とりあえずあの不良のリーダーっぽい人が言っていたことをもう一度思い返してみるとするか まず俺はこの国からの干渉を出来る限り受けたくない。なぜなら俺は勇者じゃないからだ。そして俺はこの世界で自由に暮らしたいと思っている。なのでこの世界にとっての脅威は早めに消しておく必要がある、なのであの赤髪の少年が言ったことは無視することにした。そして、俺の本心を伝えてみた

「いやー別に僕はこの国のトップに会おうとは考えてないので、もしそんな命令が下されても、その人はただ、勘違いして命令を下したのでしょう」俺は笑顔を浮かべそう言い放った

「ふ、ふざ、ふざけてんのか、、、この国に逆らうことの意味が分からねぇようだなお前」

はぁめんどくさ、でもここは穏便にすませたいな、俺のこれからの人生は、穏やかで平和なものにしたいんよ、俺。でもやっぱりこういうときは戦わないと行けないんだろうなぁ。それに向こうも引く気は無いみたいだし、仕方ないか。

さてどうすればこの状況を打破することができるかな、、やっぱりこれしかないかな。よし決めたぞ。俺の考えを伝えることにした。まず最初に俺は相手の目を見てしっかりと自分の考えを伝えた。それは、相手が俺の言葉を理解して理解するまでの間に終わらせることが必要だからだった。相手はこの国にとって脅威になりうるものを殺すために来ているはずだ。だが俺は、そんなものを背負わずに生きて行きたいだけなんだって事を分かって欲しい。だからこう伝えることにしよう。「そんなにこの国が大事ならこの場から出ていけばいいじゃないですか。そしたら見逃します」

そう言って相手をじっと見つめると赤髪の青年の体が震えたのを感じた そして、しばらく静寂が支配した後彼は口を開く「なにぃ?俺らをこの場から出せばいい? な、何を言っている。そんなことができるわけが」

そういってまた言葉を続けようとしたがそれを俺の眼光が遮る。「俺の話をちゃんと聞いていたのか? 俺にはその覚悟が無い。だからこの場で大人しく捕まってくれないと俺だって手を抜かないといけなくなる、、そうなれば俺と君たちのどちらかは確実に死ぬ。それでも良いというのなら今すぐにここから去ってくれ。そしてこの事は他言無用でお願いしたい」

すると三人は、お互いの顔を見たあと

「「「わかった、お前に従う。お前に付いていくことにする」と言ってくれた。

よしこれでなんとかなったか。

「じゃあそろそろ行こうか」

こうして俺は無事不良たちから逃げ切ることが出来た。

あれは一体誰だったのだろうか。あのミケラリスと名乗った男のことがどうしても頭から離れなかった。私の名前はアリス 一応勇者パーティーの魔法担当を務めている。そして今日、私はミケラリスと名乗る男がどんなやつか確かめるためにミケラリスがこの学園に来るという話を聞きつけやって来たのだ。

だが、来てみればなんと勇者であるはずの聖女がミケラリスについて行っていなくなっているという。一体全体どういうことなんだ、、 そしてそのミケラリスという男を探すことになった。そうして私たちは探し回っていたが、途中でこの国の王城の騎士たちがミケラリスと思われる人間を捜索していることを聞いてしまった。そこでその騎士たちに聞いてみると、どうやらミケラリスが魔王を倒した英雄であるということが分かった。そしてその話を聞くと私はミケラリスに会うことを止めたのだ、なぜなら、私たちの国には勇者が一人いる。そして私は彼に期待しているのだ。その彼をミケラリスのような人間が潰してしまってはいけない。この国では今勇者の力が絶対的に必要なのである。

そしてそれからしばらくしてミケラリスは見つかった。しかしそこには聖女のアルスともう一人の男がいたのだ。しかもどうも二人の様子は普通ではない。

どうなっているんだ?とにかく一度ミケラリスに事情を説明してもらいましょう。

そして私は勇者であるセイタと共に王都に帰って来た。そしてその後の話を聞いた。どうやら聖女の様子がおかしくなり、その原因はアルスにあるのではないか、そしてアルスはどこへ行ったのかわからないということであった。

私は頭が混乱してしまった。確かにアルスには不思議な点がある。だがそれが原因だという証拠はない。それにその件についてはまだ情報が少なすぎる。そう考えた。そして私はその日、ミケラリスに会いに行くのを諦めてしまった。そしてその日から数日後のことである。ついにその情報が届いた。それは私が探していたミケラリスの情報であり。

そうミケラリスが何者かに襲われ意識不明になったとのことだった。

私はすぐさま勇者とともにミケラリスの元へ急いだ。そしてそこで私の目に映ったのはとても酷い光景だった。

どうやら、ミケラリスが何者かによって襲われたと報告があった日の翌日の朝早くに私はミケラリスが運ばれているという場所に向かったのであった。その場所は学園の地下牢である、地下牢の中に入るとすぐに奥の方から叫び声が聞こえてきた。

そうすると突然扉が開き、一人の女性が飛び出して来た。その女性こそこの国の聖騎士団長のライナである。彼女はとても焦っているようだったので彼女に尋ねると驚くべきことを教えてくれたのである

「昨日の夜ミケラリス様を暗殺しようと試みました者がいるらしいのです」

な、なんていうことだ。その言葉をライナは信じられないという表情をしていたのである。それもそうだ ミケラリスを殺そうとしたものが居たというだけでも問題なのに、さらにこの学園内でそんな事件が起きていたとは思わなかったからである そして私たちはその犯人を探したが一向に見つからない そしてその日はすぐに過ぎていった。次の日の朝も特に進展はなく、結局何も手掛かりを掴むことは出来なかった。そして、私たちが諦めようとしたとき事件は起こった。

それはミケラリスの治療室で起きた、そしてそこを治そうとしたのだが、全く効果が無かった。その後すぐに勇者セイタが駆けつけて治癒魔法を使ってみたものの何も変わらずそのまま夜が明けてしまう。そして翌朝 勇者が目を覚ますとなんとミケラリスは既に目を開けていて勇者と話をしていたという。そして勇者が言うには完全に元通りだと言うのである。そんなことがあるはずがない、そう思ったが勇者の言葉を信じることにした。そしてミケラリスは聖剣の所持者としてこの世界に選ばれたということを伝えられたのである。

そんなことがありえるはずない そんなことを思いながらその場を後にしたのであった。そしてその日の午後ミケラリスと話す機会が訪れたのでその時に質問をぶつけてみたのである。なぜ聖剣を持っていられるのか、と するとミケラリスはその答えは単純明快な事だと答えたので私もそれに従ってみることにする。そしてその理由とは、簡単に言えば魔力を流し込んでいなかったので魔力切れで動けなくなっただけだったそうである そんな簡単な理由で?と思ったが、そもそもがこの世界に存在しないものだった為そういう結論になるのだという回答を得たため信じざるを得ない状況になってしまった。

この男が勇者だとするなら、これからはこの男は今までよりもずっと強くなるだろう。

だが、やはり気になって仕方がなかったのだ あの時あの赤髪の少女に言っていた「僕に危害を加えたり殺そうとするものは例え誰であろうと許さない」この言葉を聞いただけでなぜか鳥肌立ってしまうほどの威圧を感じたのだった。それはまるで自分が自分ではなくなってしまいそうになるくらいの感覚だ あの威圧を受けて平然と立っているあのミケラリスに驚きを隠しきれない そんなこんな考えているうちに学園を出ようとしているミケラリスがこちらを見つめていることに気が付き、そして私も急いで出口へと向かうのだった。

ミケラリスのステータス

種族:人間族(神人)

性別

:男

レベル:50

(5/1000 +100)

職業:なし

力の極み HP:12000+6000

(65000/24000 +500 MAX10000)

速さの極み

MP:7800+18000(89000/1000000 +300 EXTREME99999)

STR:1580

DEF:1060

VIT:1530

AGI:1250

INT:1150

MND:1200 スキル一覧 通常スキル 【剣術LV.10】UP【槍術LV.2】

特殊スキル 固有ユニークギフト「神の知恵」

NEW! 固有オリジナル

『鑑定眼』

(これはすごいですね。まさか僕のステを見て驚く事になると思っていませんでしたよ。それにしても本当に勇者だったんですね、それにセイタさんも勇者ですかぁ、これじゃもう普通の生活なんて無理そうですねぇ〜、あはは、はーどうしましょう。とりあえず、勇者パーティーに入るのは断っておいてよかったですよ。でもこれから先僕はいったいどうすればいいのでしょうか。まあいいか、どうにでもなるでしょう。とりあえず、勇者にだけは注意しておきましょうか。

そんな事を考えて歩いているとどうやら家に帰ってきたようだ そして、俺はライナの案内により自分の部屋に戻ってきたのであった。ちなみにだが俺の部屋を掃除してくれたのはもちろんこのメイド服に身を包んだ金髪ロングストレートのロリっ子である、どう見ても合法ロリなのだが一体全体どうなってるんだろうか この子が実はお偉いさんとか言われても納得できる だが見た目は子供にしか見えない。というより子供だがこの子は大人バージョンもあるという。というか大人バージョンはもっと背が伸びているらしいのだ。だから身長は140センチ前後あるらしい。という事は150cmという事なのである。

「えっ?なんじゃその反応は?何か文句でもあるのか?」

そう言って怒っているのか少しむくれ顔になっている

「いえ別に何でもありません」

そう言った瞬間「はわわ」と言って顔を真っ赤にさせ下を向いていた。なんだ?なんか悪いこと言ったかな?そういえば、俺は今ミケラリスとしてここに来ているから一応貴族扱いされるのでは、それじゃ敬語を使わないと不味いんじゃないのか。

そして俺はふとライナの方を見るとまだ顔を赤くしている。どうやら怒ってはいないようだがなんと話しかければいいのだろうか。

そんなことを考えていたがこの沈黙を断ち切るように、ライナが口を開く

「ミケラリス殿の荷物は部屋の中に置いてある。あとミケラリス様には聖騎士団に入ってもらいたいと考えていますがどうしますか?」と尋ねてきた。

どうするかだって?そんなもん決まってんだろ、聖騎士がどんなものかはよく知らないが断る一択に決まっている

「嫌です。断ります。絶対に入りません」

そう答えるとまた「はわわ、は、入ってくださいお願いします!」と言われたので、「い、い、嫌だ!」と言うとまた泣きそうな表情になっていた。流石にかわいそうだと思い理由を聞くことにした。

すると、なんでもライナは学園の中でトップの成績を誇る天才少女らしくて聖騎士団長になるべく努力を重ねてきたのに、それを無下にされたのに腹がたったと、いうことだったらしい。

そして「わかりました、聖騎士団入りましょう。聖騎士団には入らないと約束はしかねますがそれでもよろしいですか?それで良いのなら聖騎士団に入れてください」

そういうとライナは、笑顔で了承してくれた それを聞いてからというものの、ライナは急変し聖騎士についての詳しい話を始めてしまったのである まず初めにライナの自己紹介が始まった そしてライナについての説明を詳しく聞いたのだが、ライナの名前はアルセニアと言いどうやらアルスが本名みたいだ そして、アルスはミケラリスのことを様付けしていた。それはどうやらミケラリス様のことは神様と同じ存在と思っているからだという 俺がこの体の持ち主になったからなのかは分からないが、ミケラリスにこの世界を救うことを頼まれたようなことを言われていた。しかしそんなことは一切していないが。そして、ミケラリスにはまだこの世界に来たばかりの頃の記憶は残っていてこの世界のことが何もわからないからいろいろと教えて欲しいと言われていたのでライナの言う通り色々と教えることにした それとライナのことについてである、ライナは学園内では主席であり聖女と呼ばれておりその力は聖魔法が使えてしかも回復までできてしまうのである。その力は神と同等とすら言われているという、そのため、その力を利用されない為にも学園内で聖騎士団を作り護衛しているそうだ そして学園内の成績優秀者には特別に騎士団への入団が許可されており、この国の聖騎士団の人数は二千三百人と多いらしい そしてライナはその中で五番目に強いという 学園の首席がこの強さだと他の生徒の強さは計り知れない、俺は絶対にこの学園を卒業した後この学園の生徒と敵対したりしないようにしよう 俺はそう心に決めたのだ! そんな会話をしてる時にいきなりドアを開けてくる奴が現れた。それはミケラリスの弟で名前はセイタというようだが、その少年はなんとその姉に告白をしたのだ なんとも大胆である。ミケラリスがそんな事をされていたと思うと胸騒ぎしかしないな、そんな考えをしているうちに話は進みミケラリスに告白したセイタだったがなんとも言えない雰囲気になってしまい結局何も進展せずに終わったようだ、残念である それからしばらくしてライナが出ていく時にある紙を渡してくれたのである。その手紙の内容は聖騎士団への招待状だった。内容は要約するとこう書かれていた 聖騎士団に入る意思があれば今日から3日以内に王城に来るように そう書かれてあったのである 正直なところ行きたくはないが行くしかないようだなと思った。なぜならば俺はミケラリスとして学園に入学することになっているからである。つまり学園を辞めることはありえない だからミケラリスの体を取り戻すまではミケラリスをやるしかないわけだ 俺は覚悟を決めて返事をするため部屋を出るのであった するとそこにライナがいたので聖騎士団入りの承諾をするとすぐに聖騎士団の団長の元に向かうため案内してくれるようだったので俺は付いて行ったのであった ミケラリスの案内のもと俺は、騎士団長が居られる場所へ案内されることになった。そこは、訓練場だったのだ。そしてそこには一人の男性と二人の女性が待っていた。どうやらライナの話によるとあの三人がライナ達と同じクラスの生徒のようで、それぞれ剣姫に魔道士、拳豪と呼ばれているらしく全員レベルは30超えだという。だがそんな事は今はどうでも良かった。それよりもあの二人だ あの赤髪ツインテールの幼さを残した顔立ちをしているが明らかに歳は17ぐらいの少女。俺と身長が同じくらいに見えるのにあの顔の整い具合はかなり異常だろう。それに身長も低いのにあのおっぱい、どう考えてもロリ巨○じゃないか。だがそれがどうしたというのか!俺は小さいのが好きなんだ!!だが問題はそこじゃない。

あの銀髪ショートヘアのお嬢様みたいな容姿をしていて高飛車な性格のツンデレっぽい子、俺の大好物です。もう最高じゃないですか、あの子はどう考えても美少女の中の美少女じゃないですか。俺のタイプドストライクです。あーあぁもうやべぇ、あんな子と仲良くなりたいよぉー だが現実は残酷なのだ、俺はこの世界で生きなければならない、だからこそ俺はこの世界を救わなければならないのであろう こんな事を考えている間に俺はいつの間にか騎士たちの前に立っていた

「貴様が勇者様か?私の名はエルマ。我が名は聖騎士団第三番隊長を務めているものだ。今回は我の誘いに応じてくれありがとう。それで早速だが貴殿には聖騎士団に入団してもらいたい」

え?何この急展開

「ちょ、ちょっとまって下さい。なぜ私なんでしょうか?確かに勇者である私は、これから先この世界を救うために戦わなければ行けないとは思います。しかし私にはこの世界にきたばかりでまだあまり事情がよくわかっていません。だから貴方達の言っている事がよく理解できないのですが、どうして私をそこまでして勧誘するのでしょうか?」

そう答えると聖騎士団長は少し困惑しながらも話を始めた どうやら、聖騎士団とは女神アルセリア様を守る騎士のことである。

聖騎士団の役目はこの国の治安を維持することや、邪悪の存在の討伐をする為に存在するのだという 俺はそこで疑問に思ったので何故俺なのかを聞いた 答えはすぐに帰ってきた 理由は、この世界を救うことのできる力を持っているのは、おそらくミケラリスしかいないからだという そう言われてもなぁ〜。そもそもこの国の名前すら聞いていないし、ここがどこかもよく分かってないし、とりあえずこの騎士団にいて情報収集するのがいいかな? そして、ここで問題が発生したのだ。実はライナが聖騎士団入りを拒否したのである。理由を聞くとやはりライナは学園を卒業してからこの聖騎士団に入団しようと考えていたらしいのだ。だがそれを知ったミケラリスが自分の身を心配するのは目に見えているから、学園を卒業するまでライナの身の安全を確保すると説得をし何とか了承を得た

「分かりました、聖騎士団入団を認めます。ただ私が聖騎士団にいるのはあくまでライナの護衛の為でありそれ以外の目的では決してありません」

「ふむ。了解した。それでは今からこの聖騎士団の宿舎に来て欲しい。今後の事を話す必要がある」と言われて俺はその提案に乗ることにし、聖騎士団の訓練所を後にした 俺はその後、騎士たちと共に宿舎に来ていた。そしてその騎士たちと聖騎士団について話し始めたのである どうやらこの聖騎士団というのは、国王と聖女の勅命で設立された騎士団で主に治安維持を目的としているそうだ 聖騎士は総勢三百人ほどでそれぞれがレベル20を超えており一人ひとりが強いという。また聖騎士団の中にはレベル50を超えた猛者も存在しており聖騎士団の中で最強なのはライナとアルセニアらしい 聖騎士団の役割としては犯罪組織の鎮圧、要人の警護、モンスター退治などがあるらしいがその中でも最重要事項が女神アルセリアの加護持ちの保護となっている そして、聖騎士になるための条件というのが、聖魔法を扱えるということと最低でも1年間以上の鍛錬を積んだものでないといけないらしくかなりの難易度になっているそうだ

「ちなみに聖騎士団には階級が存在していて一番上が聖騎士団長。次に騎士団長が四人、騎士団副団長が三百人以上いるという」そんな話を聞いたあと聖女ライナは、この騎士団のトップで騎士団の中でも実力はNo.2だと言う。

そして俺は騎士団長に呼ばれて、ライナの部屋に訪れていた。

「それでお父様。何か御用でございますか?」と、ライナが質問をしていたのである

(えっ!?おとうさま?この人が聖騎士団の長?なんかもっとゴツいおっさんとか想像していたんだが?)

「あ、ああライナ。実はだな、今回勇者様に来てもらったのはお前にどうしても紹介したい方がいるのだ」

ライナはその言葉を聞き、誰のことなのだろうかと考えていたのである そして次の瞬間その答えが出てきた なんと、その紹介したい人物が部屋の中に入って来たのである そしてその姿を見た時、俺は息を呑んでしまったのだ そこには絶世の美女と言ってもいいほどに美しい金髪の女性の姿があった その女性はゆっくりとこちらに向かってくると、ライナの前へとたどり着いた

「あら、初めまして。私はミケリス。ミケラリスよ。よろしくねライナちゃん♪それとあなたのことはよくミケラリスとミケラリスの弟から聞いてるわ。とっても優秀でとっても良い子だと聞いていたのだけど、あなたと会えて本当に良かったわ。ライナちゃーん!会いたかったのぉ〜」とミケラリスはライナの体に顔を擦り付けながら甘えるように抱きしめたのであった 俺は目の前の光景に目を疑っていた ミケラリスが抱きついてきた事にではない。俺はそのミケラリスの顔を見て驚いたのだ

(おい、嘘だろ!なんなんだよこれ!)

そう、その女性の顔は間違いなく俺の顔だったのである。俺は混乱してしまい思考停止状態になってしまった。だが、すぐに意識を取り戻すと、俺は急いでライナから離れるように言ったのだがライナはあまり動揺していないようで むしろライナも俺のことを見ていた するとミケラリスが「ごめんなさい、あまりにも可愛かったものだからつい、ライナちゃんが私に話しかけてくれた時は凄く嬉しかったのよ」と言っていた

「それはそうと、貴方の名前は?」

そう聞かれたので俺は自己紹介をした するとミケラリスは少し考えたような表情を見せると言った

「やっぱりね、そんな気がしてたのよ。だって、貴方ミケラリスだもの。それにライナのことも弟みたいに接してあげてくれてるのでしょう?とても感謝しているわ。ライナの事これからもよろしくお願いするわ。それとライナちゃん、後でお姉さんの部屋にきてくれるかしら。色々と聞きたい事があるの。だから来てちょうだい。もちろん二人っきりで話しをしたいので二人とも他の部屋に移ってください。わかりましたか?」

俺はミケラリスの部屋に入る前に一つだけ言いたいことがあった

「ライナと俺は姉弟じゃないですよ」

するとミケラリスとライナが「えぇー!」と言って驚いていた どうやら俺がライナの姉だということは間違いだったようだ。俺は心の中でそう思いながらもミケラリスと一緒に部屋へと向かった ライナは少し不満げだったが渋々俺の後に付いてきたのである

「まずライナ、この方は貴女の血縁者じゃないですよね?貴女の本当の家族構成と名前を答えてください」

ミケラリスにそう言われるとライナは戸惑いを見せつつ話し始めた

「はい、私は母様の腹から生まれました。名前はライナ=レイと言います」そう言うとミケラリスは俺の方を向いて聞いてきたのだ

「えっと、どういうことなのか説明してくれませんかね?」

どうやらミケラリスは俺の正体を知りたいらしいのでライナには悪いと思いつつも俺はミケラリスに事情を説明することにしたのである

「分かりました。でもこの事は他言無用でお願いします。ライナにも絶対に言わないように言っておいて下さい。実は俺は未来からこの時代に転生したみたいなんです」

俺はそう説明するとミケラリスが急に笑い出した

「ふふふ、そんなわけないわよね、きっとこの人は冗談が好きなのだと思うの。私はそこまでユーモア溢れる人間じゃなかったけど、この人を見ていると笑ってしまうくらい面白く感じてしまうの」そう言い終えるとミケラリスはもう一度俺に対して質問を始めた

「ではなぜ貴方はこの世界に存在しているのですか?」

俺はミケラリスが何を言っているのかがよく分からなかったが とりあえず答えると、 ミケラリスが頭を抱えて困った顔をして俺の方を見つめていると、俺が答えられないと思っているのか少しため息混じりに言った

「まさか、こんな事が起こるなんて思ってもなかったわ。私の知るミケラリスはもう存在しないって事なの?それともこの人がミケラリスなの?どっちなのか分からないのだけど。とりあえずミケラリス。この世界を救う事ができる唯一の希望である、聖女が魔王に倒されるというのは許されないことなのだけれどどうしてそのような事をしてくれたのでしょうか?正直今のミケラリスは魔王と対抗でき得る力を持ってはいない。だからそんな事はできないはずですしするつもりも無いと思うのですが?」

「確かにミケラリスの力はとても弱いかもしれませね。だが、今ならこの世界の誰よりも強くなっていると自負できるんですよ」

ミケラリスはそんな事を言われた事が信じられずにいたようであったが俺がステータスプレートを出すとそれを見るなりさらに困惑していたのである そして、この世界の誰もが聞いたことのない聖属性という項目を見つけてしまったのだ。そしてそれがスキル欄に記されている事に気づくとミケラリスはさらに驚愕してしまっていたのである だがそのおかげでミケラリスが信じてくれたらしく聖騎士になることを承諾したのである そしてライナとミケラリスは二人で話を始めた。だが、その内容はかなり深刻で重いものであった ライナから聞いた話ではミケラリスは魔人と戦おうと決意しており聖騎士団でその魔人の情報を集めるつもりだという。そしてライナから聞いたのはアルセニアがライナを守る為に自ら犠牲になろうとしていたらしい。そしてアルスはそれをライナに伝えたあと一人で行ってしまったそうだ。それを聞いたミケラリスは慌てて追いかけて行こうとしたがライナの事で話がありそのあとを追いかける事ができなかったという。

そしてライナが俺が異世界人だと説明したことでアルセリアについて話すと、その話を聞いたミケラリスはライナがこの世界の者では無いのでは?とライナの体を触診し始めるとライナが恥ずかしさのあまり悲鳴を上げていたがそれを無視してライナを調べつくしたのであった ライナが気を失ってしまう寸前に俺はアルセニアの元に向かおうとしたのだが、ライナから呼び止められミケラリスのところに一緒に来ることになったのである そしてミケラリスの部屋にライナと共に訪れたのであった ライナから話を聞いたミケラリスはライナを自分の膝の上に座らせ、まるで人形遊びをするかのような感じでライナの頬をツンツンしたり髪の毛を指で弄ったりしていたのだった。

そんなミケラリスを見てライナが少し不機嫌そうな表情を浮かべていたのだが ミケラリスの表情を見た瞬間何かを感じたのだろうかライナは大人しくしていたのである。

するとライナの口から衝撃の言葉が出てきたのであった

「ねぇライナ、ライナって私の弟なんでしょ?」その言葉を聞いてライナは固まってしまった そしてその言葉を発したミケラリスの方を向きミケラリスの目を見ながら

「あの〜、なんでそのことがわかったのかな?一応私とこの人しかわからないはずだったのに、どうしてわかったの?ってあれ?ミケラリスって、私のお姉さんなの?どう見ても二十代にしか見えないのに、えっ!私ミケラリスのお姉さんとキスまでしちゃってたの?えっ、えっえぇー!!」(こいつ馬鹿だろ)俺はそう思った。

だって考えてみてくれよ!自分が実の姉だと思ってた相手がいきなり現れて自分よりも遥かに若い姿になってるんだぜ。普通パニック起こすぞ。しかも相手は自分よりも年上だと知ってたらなおさらだよ。まぁ、ライナにとっては年の差関係なく大切な人だったんだろうけどさ。にしてもこの二人見てるとホントに姉妹に見えるんだよな〜 俺達はライナを落ち着かせる為にライナの部屋に向かうことに決めライナの手を引っ張っていった

「ミケラリス殿でいいのかね?」とミケラリスの事を呼んでいたがそれを聞いていたライナはなぜか涙目になっていた

(おいおい何泣きかけてんだよ!ちょっと待ってくれ、俺は別に何も悪くないはずだ。ただライナがミケラリスの年齢に気が付いてしまっただけなのに。それにライナが姉じゃなければミケラリスの年齢は一体いく─)と俺が考えていたところでミケラリスから強烈な殺気を浴びさせられたのだ 俺は思わず思考を停止させた。

すると俺の体中から汗が止まらなくなり呼吸する事も難しくなっていった

「ミケラリスって、ライナちゃんの本当の名前では無かったんですね。それとライナは貴女のことを知っているようでしたがどういった知り合いなのですか?そして貴女もどうみても十代の見た目ではありませんよね?」ミケラリスにそう言われ、ライナは焦りながらミケラリスから離れて俺の隣にやってきたのである 俺はミケラリスからの殺意が無くなりやっと思考が出来るようになった するとライナから俺についての事を教えてくれた 俺は前世の時から何故か他人とは違うオーラを放っておりそれは俺自身にも制御不能のものだったのだという。そのため周りには俺の半径1メートル以内に近づこうとする者は一人もおらず俺の周りには常に静寂が訪れておりそれはそれは恐ろしい場所であったという。俺はいつものように学校に行って勉強をしていたら急に目の前が暗くなり気がつけばここにいたという。

俺はその時にはすでに死んでいるはずの存在であり、ミケラリスは死んだ者を生き返らせる事など出来ないと言いライナを慰めようとしてくれているがそれでも俺はミケラリスのことを姉とは認めたくないというか認められない ライナがミケラリスに向かって「この方は本当に貴方のお姉様なの?」と言うと、ライナが俺の方を見てきたので俺は何も答えず無言を貫くことにした。俺のこの態度にミケラリスはライナに本当のことを教えることにした

「私は、実はミケラリスではないの。ミケラリスとしての人生はここで終わりを迎えた。でもねミケラリスの生まれ変わりとして再び人生を過ごすことが出来る。つまり私はミケラリスでもありミケラリスじゃないとも言えるの。私はミケラリスとライナの母の娘。名前はミケラリス=リリィ=ラトリア、でも皆からはミケラリスと呼ばれていた。」

それを聞くや否や

「ミケラリス様がお母さんの、お姉さん、私がミケラリス様の妹、、うそぉ〜」

「ライナにはこれからミケラリスではなく、ミケラリスと呼ばせて貰いたいの。ダメかしら?」

ライナが、俺の方を向いて助けを求めているようだったので 俺は「別に好きにすれば良いんじゃないの」と答えるとライナはミケラリスに対して

「はい。私はミケラリス様に忠誠を誓います」と言い

「よろしくお願いします。ミケラリス。」

こうして、俺達の世界に新たな仲間が加わったのである。ちなみに俺はそのあとミケラリスからステータスプレートを見せて欲しいと言われてステータスを見せる事になった すると、ミケラリスがステータスに表示されている 俺の称号のところをじっと見つめて俺の方を見てくると

「ねえ、あなたは一体、、なんなの?人間?それともこの世界では存在しない者なの?それにこのスキル。一体なんなの?こんなスキルは見たことも聞いたことも無いわ、これはまるで神そのものではないかしら?それにレベルは表示されないみたいね。このスキル、一体なんなのか説明できる?あとライナの事について詳しく教えてくれる?あとあなたの能力も見させてもらうわよ」そう言って俺の腕を掴み無理やり鑑定を発動したのだった。そして俺のレベルとステータスを確認するとミケラリスの瞳が青く輝き始め俺に「やっぱりそうよね、まさかそんな事が、信じられないことだわ。それにこの力ならあの子を助けられるかもしれない、だから早くライナの元にいかないと、、」と言って走り出そうとしていた。しかし俺がそんなミケラリスの肩を掴むと、振り向きざま俺の事を睨みつけると、「放して!今すぐこの子をライナの元へ連れていかないと、この世界が終わるのよ!このままじゃ世界が滅ぶ!」と叫び、俺はその言葉でこの人が誰なのかわからなくなった。

この人はミケラリスでは無いのかと疑ったが、ライナを妹と慕い、そしてその母であるミケラリスの姉と名乗る人物が偽者であるわけが無い。それではミケラリスとは何者なんだ、そして、ミケラリスが言う、世界を滅ぼすものとはいったいなんなのだ、そしてライナが助けるといった相手とはなんなのだ。俺はミケラリスのことが心配になり後を追うと決めたのだった。

ミケラリスと俺が、ライナの部屋から廊下に出た時だった

「ミケラリス。ライナとどこへ行くつもりですか?まだ聞きたいことは山ほどあります。逃がしませんよ」ミケラリスは、その言葉を聞いた途端に諦めたようにため息をつくと俺に視線を向け

「もう私を、追いかけ回さないでくださいね。私は少し、やらなければいけない事があるのでこれで失礼させていただきます。」

そう言い残すとその姿を消したのだった。

ミケラリスは姿を消してから、ライナの事を気にかけてくれると言っていたが正直あまり信用できない。俺は急いで部屋に戻るとミケラリスを追いかけようとした。

だがその時だった。

ライナの部屋の前に人影が見えたのである。

俺はその人を見て驚いてしまうと「そんなに慌てなくても大丈夫ですよシオン君。ミケラリスはここには居ないのですから。さて、貴方は、ミケラリスの居場所がわかりましたか?」と俺が追ってきたことに気付かれていたようで、ライナがその質問に首を横に振ると

「では、私の話を聞いて下さい」と真剣な眼差しをライナに向け ライナはミケラリスの言葉に驚き戸惑っていると ミケラリスから衝撃の言葉が出てきた

「ミケラリスが言っていた、世界を壊すものというのは恐らく魔剣の力でしょう。それは私もわかっていました。しかし私にはまだそれがなんなのがわからなかったのです。ですがミケラリスは、魔剣の力を使い世界を滅亡へと導こうとしたものがいると言ったの。それは、魔王でも、魔神でもなく、この世に存在してはいけない、神、つまり創造主が関係しているのではないかと、そこで私は思いつき、ミケラリスの記憶を探る事にしたの、そしてミケラリスの意識の奥深くにある一つの記憶を手繰り寄せることに成功したの。そしてその中に一人の女の子の、、、うっ、ぐっ、、あ、頭が痛い、」ミケラリスはそのまま気を失ってしまったのである

「ミケラリス!おい!目を覚ませ!おい!しっかりしろ!誰か呼んできてくれ!」俺はライナに頼んだが「無理だよ、この部屋の結界で外に声は漏れないから誰にも聞こえない。」と言い、ミケラリスが倒れた瞬間ライナの姿が変わったのだ

「この姿で会うのは初めてだな、久しぶりだな我が弟よ。まぁ、正確には今は違うんだけどな」

「お、お前は、な、なぜ俺のことを弟のライナスと間違える?」

「それはお前も知ってるだろ。私は前のミケラリスとは違う、ミケラリスは、、ミケラリスの人格はすでに消滅してしまったのだ。ミケラリスという人間は消え去り新たにミケラリスという少女が生まれたのじゃ。」

「どういうことだ!じゃあ今まで俺と一緒に旅をしてたのはミケラリスじゃなくて別人だったっていうのか?」

「そうだ。お前も薄々気付いていたのではないのか?お前のその異常な力は、普通じゃあり得ないんだよ。本来ならその力が表に出る事はあり得なかったはずなのになぜか急に現れた、それを見たものは皆口を揃えて言ったよ。神の降臨だって、それで皆から勇者と呼ばれるようになった、それからミケラリスは自分の事を忘れるためにミケラリスとして生きることを決めた。だけど、それも無駄に終わり私は本来の目的を果たすことにした。それは世界の救済ともう一つだけあるがまず先に救わなくちゃいけない者がいる。それこそこの世に生まれ落ちてはならない存在。それは、神だ。あいつらは自分達こそが世界を創り出したと自負しているが本当は間違い、あいつらが勝手にこの世界に産み落としておいて、自分達には出来ない事を任せる為に、そして自分の都合の良いように利用する為だけにミケラリスを生み出したのだから、」

「なにを言ってるんだ?ミケラリスは神から生まれただと?神なんて存在するわけ無いだろう、それに、その神が世界を作りあげたとか馬鹿げてるぞ。そんなこと、ある訳ないだろう、だいたい神が存在するって証拠があるのかよ」

「は?証拠も何もこの世界はミケラリスが作った物じゃない、これは神によって作られたものだ。」

「ちょっと待て、何を言ってるんだ。そもそもこの世界を作ったのが神様だったとしても、どうしてミケラリスが生まれる必要がある。この世界で生まれていいのはこの世界に生まれた奴だけだ、それなのにミケラリスは別世界で生まれた。この事から考えられるのはミケラリスは元々別の世界で生まれるはずだったけど、何かの手違いでこっちの世界で生まれてしまったんじゃねぇの?それと、俺も、俺も、その一人なのか?この力もミケラリスのお陰なのか?」

「うーん。確かにその可能性は高いかもしれないな。だがそれだけでは無いと思うぞ。その答えはすぐに出る」

俺はライナが指を鳴らすと体が軽くなったのを感じた

「今、何をした。」

「ああ、ただの転移魔法だ。これでわかっただろ、私が何故ここに来たのか。」

俺は目の前にいる女性が、本当の意味でミケラリスの姉であると確信する事が出来たのであった

「さて話を戻すがお前のその力を使えるようにしてやるからついて来い」

そう言ってライナは俺に手を差し出してきたのである 俺はその手をじっと見つめると、ライナはその手を引っ込めた

「なにしてる?早くいくよ」そう言ってまた、ライナが俺に向かって手を伸ばす 俺はその手を掴むとライナに引きずられ、ライナが先程までいた場所に連れられる そして俺は気がつくと真っ暗な場所にいたのだった

「ここはどこなんだ?なんにも見えねぇ」

俺が辺りを見渡してみるもやはりなにもない、ライナに尋ねると、ここは私の作り出した亜空間だと答えた そしてライナが言うにはここにいる間は時間の経過はないから安心して良いと言う そして、ここで修行する事になるから準備を整えなさいと言われてしまうのだった

「なにをするんだよ。」と、聞くと

「もちろん力を手に入れるための準備だ。」と言ってきた

「は!?俺にそんな事が出来るならもうやってるわ」と言ってみるとライナに殴られ気絶したのだった。

気が付くとそこは見慣れない場所だった そして俺はベッドの上に寝かされているようだ 隣を見ると俺と同じ年くらいの少女が俺を見ている

「あれっ、君は一体誰だい?」

「わ、わたしはミケラリスよ」と彼女は言ったが 俺は一瞬誰なのかわからなかったが 俺はミケラリスが言っていた ミケラリスの記憶の中に出てくる人物の事を思い出した そして俺は「そうか。俺の事を心配してくれてありがとう。」と感謝を伝えた すると ミケラリスは顔を赤くして「えっと、そ、その別に貴方を心配してなんかないし、べ、べつに、あなたにお礼を言われるようなことはしてません。勘違いしないでよね。それに、あなたの事を心配していたのではなく、あなたがこの世界の希望になるからです。」と照れ隠しなのか分からない事を言われてしまったがミケラリスは俺のことをずっと心配していてくれたのだという事はなんとなく伝わってきたのだった ミケラリスがいうこの世界は魔族が住む国、人間達が暮らす大陸とは別にある 人間の国が魔族の国を征服すれば魔族の国の全ての土地が手に入り、逆に人間が魔族の国に行けば奴隷として扱われる、そして、その戦争ではどちらの陣営も多大な被害が出るらしい

「つまり君にとって、この国は守りたいと思える国だということかい?」

ミケラリスはコクりと力強く首を縦に振った 俺はライナの言葉を思い出す

(お前はまだその真の力が使えないんだよ)と言っていたライナの言葉の意味がよく分からなかったのだけれどもその真の力とは何かを聞く事ができずにいたのだ。だが、ライナの姉と名乗る者がこの世界を救ってくれるのなら信じてみたいと思ってしまう自分がいた。そう考えるのは俺が甘いからだろうか そう思うと自分に少し嫌気がさしてくるのだった 俺が悩んでいる姿を不思議に思ったのか俺の額に冷たい物が乗せられた感覚があり驚いて目を開けるとそこには水で濡れタオルを持った小さな女の子が俺のことを覗き込んでいる姿があったのだ 俺は驚いて後ずさってしまうとその子が「お兄ちゃん大丈夫?」と言いながら駆け寄ってきたのだ。

俺のことを気遣ってくれたのかと嬉しく感じて笑顔になりその子を見てみたが その顔を見た時、俺がその子を見て感じたのは「可愛すぎて辛い!!」という言葉しか出てこなかったのである。

(な、なんなんですかこの可愛い生き物は。こんなにかわいい子見た事がないんですが。あぁ、やばいな、抱きしめたい。でも、ダメだ我慢だぞシオン!!でもこの子を一目見てからどうにも抑えが効かないんだが。まぁいい。なんとかしよう。よしっ!落ち着いたぞ!でもまだ心が騒いでるからもう一回見よっと、って、もういないじゃないか、でも仕方ないか。それにしても今の子は一体、あぁ、そういえば俺の体熱っぽいんだっけ?でもあの子の手が冷たく気持ち良かったからもっとして欲しいかもな。とりあえず今は、ライナが迎えに来るまで体を休めようかな。この世界に来て色々あったからな、ちょっと疲れてるのかも。それにライナが言うことが正しければあと一週間で世界が救われるかもしれないんだし今は少しでもゆっくりしないとね。それにしてもさっきの子は一体誰だろう?まあ今度聞けばいっか、それよりもこれから何が起きるのかさっぱり分かんないけど、ライナが俺を強くしてくれるって言ってたけど本当かな?ライナのあの顔は絶対嘘言ってるように見えないんだよな、本当にそんなことが出来るのかどうかも怪しいけどやってみるしかないのかもな。それじゃあそろそろ時間だし、俺も頑張るか!ライナの所に行って、強くなってこの世界を救いましょうかね。」

よしっと、気合いを入れなおした所で扉がノックされた。

コンコン、コン

「入っていいぞー」

そう声をかけると部屋に入ってきたのが、この家の家主であるミケラリスだ。

俺はベッドで上半身を起こすとミケラリスに挨拶をするのだった

「やぁ、元気にしてたか?」

「うん。だいぶ体調が良くなってきたわ」

ミケラリスの返事を聞き俺は、安心した。だが俺はミケラリスの表情がいつもと違って暗い事に気づくと

「ん?どうかしたのか?どこか具合悪いのか?俺に手伝えることがあれば遠慮なく言って欲しい」

ミケラリスが辛そうなのを見ていた俺はそう問いかけたがミケラリスの口から発せられた言葉は、

「実は最近、体調が悪いせいで思うように動けなくて」

「ん?それどういう意味だ?もしかして俺のせいなのか?確かに、最近は俺も力を使いすぎているかもしれないが」と答えると

「ち、違うの、あなたのことじゃないの、その、私は」そう言ってミケラリスは俯いてしまった。

「な、なんだ?ミケラリスは俺のことじゃないって言ったけど俺に何か隠し事でもあるのか?」

俺はミケラリスに何か悩み事があるのではないかと思い聞いてみる事にしたのだ

「私だって言いたいんだけど、これ以上、私の能力について教えちゃうとあなたが強くなれなくなるのよ。だからあなたには私の力を使うための最低限の条件をクリアしてから話さないといけなくなるの。」と言ったのだった

「なるほどな。確かにお前の力は強力な力だもんな。だけどそこまで言わなくてもお前に協力して貰えればそれで十分だろ?」

「それは無理、私があなたの体に力を宿らせなければその力が覚醒することは無い。そしてもしその力を使ったら貴方の体が持たないと思うから。」と言われて俺は少し悲しかった。自分の力がどれだけ危険なものなのかを実感させられたからだ。そんなことを考えているとライナは俺に対して提案をしてきた。俺も強くなるためにはなんでもやるつもりだ

「そうか。お前は俺の為にそう言っているのか?」

「えぇ、そうよ。」と答える

「分かった。俺をその力っていうのは一体どんな物なの?」

俺は真剣な顔をするとミケラリスに向かってそう答えた

「わかったわ。ただし、今すぐと言うわけでは無く。しばらくここにいる間に使うことにします」と言ってきたのだった

「わかった。ところで俺はどれくらい寝てたの?それから俺はどのくらいの強さになったの?」と聞くとミケラリスは少し考えると「2日と半分寝ていました」

「え!?」と驚く俺だったが、よく考えてみると俺には、亜神に受けた封印がある。その影響もあって普通の人より体力が少ないのかも知れないと自分を落ち着かせるのだった

「俺が眠っている間にライナに稽古を付けてもらってたんだろ?」

俺がライナにそう尋ねるとライナは大きくため息をつき、俺の方を睨んできた

「おい、俺はお前が目覚めた後にこの亜空間にお前を呼び出してお前に剣技を教えているつもりだったのだが。なぜ勝手に寝ている」

俺は「いや、ごめん」と言って頭を掻きながら笑みを浮かべた。そして「それで、その修行の成果は出たの?」と聞くと、ミケラリスの方を向いてライナの返答を待つのだった ミケラリスの方を向くとミケラリスは、俺のことを見てくると「一応、合格」と短く告げられた

「まじかよ!やったー!って喜ぶのは早いのは分かってるけどやっぱり嬉しいわ」と言ってしまった。

「まぁ良いだろう。」と俺の態度に呆れた様子だった

「それよりさっきから気になってたんたんだけどこの部屋ってどこなの?」と俺はライナ達に質問するとライナが説明をしてくれた

「ここは、俺の作った亜空間だ。俺はこの世界では俺の力のほとんどを使えなかった。俺の本来の実力を出すには俺が全力で戦うことのできる相手を作らないといけなかった。それが、この俺の力で作ったこの場所ということだ。」と自慢気に語っていた

「へぇー。すごいじゃん」俺はライナの事を尊敬の眼差しで見ていると

「まぁ俺が本気で戦っても壊れることが無いし、周りに影響を与えてしまう心配も無い。それにここでは時間の流れも遅い。ここで俺達は1年過ごしたが、こちらの世界の時間はまだ10分程度しか経っていないだろうな。まぁそういうことがあってここなら俺は本気を出しても問題ないし、さらに言えばここから出てしまえば外の時間が進んでいないから俺は外に出て、俺の力を使っても大丈夫ということになる。まぁこの亜空間にずっといると精神的にも肉体的にも疲労が溜まるが俺達が外に出てまた戻ってきた時にその疲れが無くなっているようにしているのでな。それに俺達もこの亜空間にいても特に問題はないだろう。」と言っていたのである

「あ、そういえば、ライナの姉ちゃんはどうしたんだ?もしかして帰ったの?」と俺が言うと

「いいや、あの女は自分の領域に帰って行ったぞ。」と言われた 俺は「なんでだ?姉ちゃんと話がしたかったんだけど」と言うと

「あの女はお前の師匠だが、お前の事は好きではないらしいぞ」とライナはそう言った 俺は驚いてしまう。俺は姉ちゃんの事を心の底から大好きだと思えるのになんとも言えない複雑な気持ちになりつつ、この世界の人達の感情が複雑すぎてついて行けないと感じてしまうのであった。

俺がそんなことを考えていた時、ライナからミケラリスに剣の使い方や体術を教えるために特訓を始めたのだった

「よし、始めるぞミケラリス」とミケラリスに剣を渡すと剣を構えるとミケラリスに対して攻撃を始めたのだった。俺は、ミケラリスの動きを見ながら、その動きを見て感嘆の声を上げてしまった。なぜならミケラリスのスピードが明らかに今までとは違っいてまるで別人のような感じだったからだ。ミケラリスの攻撃も一撃の重さが違うのである。

ミケラリスとライナが剣を打ち合わせていると

「なんだよ!さっきよりも全然強くなってるじゃないか」とライナが驚いた顔でそういった

「そ、そうかな?なんかちょっと力加減が難しいかな。」と言いながらも嬉しそうな顔をしていた。そしてライナが

「お前が今、使ってる剣術って俺の使う技と同じものなんだよ。まぁ簡単に言うと俺は全ての剣術の使い手になることが出来るんだ。」と言ったのである「じゃ、じゃあ俺も使えるってことなのか?」

「あぁもちろん、だがまずはこの空間に慣れてからにしろよ」とミケラリスの頭を押さえつけて、無理やり座らせると、

「よし!ミケラリス!今日はこれぐらいで終わりにしてやろう。俺は少し出てくる。」そう言って部屋を出ていった 俺はその様子を見ながら、

「なぁ、あいつは本当に俺のこと嫌いなの?」とライナが出て行った方に向かって話しかけたのだった。

すると俺の質問に対して、俺の後ろに現れたミケラリスが答えるのである

「え?そうじゃないよ?私、ライナスのことが好きだもん」そう言われた俺は「ふ〜ん、お前って好きな男とかいたのか?」

と興味を持ったふりをして質問をしたのだったがなぜかミケラリスの反応が鈍いのだった。俺はもしかてミケラリスに意中の相手でも居るのかと思ったのだかすぐに、違うことに思い当たることがあった。それはこの体の女性の名前だ

「そうか。この体は俺のものであって俺自身のものではないんだな。そうか。つまりこの女性の肉体は俺の中にあって、魂は別の人間のものだったということか。それであればミケラリスとアルターラの様子がおかしかったのは納得できる。ということはミケラリスが俺のことを好きって言ってたのはただ俺の中にいる女性が好きなだけであって別に恋愛として俺のことが好きってことじゃないって事だよな。いやまてよ?ミケラリスの本当の性別を知らないけどミケラリスは俺の事好きでいてくれるんじゃねーの?いや、いかん、冷静に考えてみれば俺はこの世界の人間でもなく、異世界から来た人間だからこの世界では異質の存在だもんな、そりゃーモテないわな」

と俺は一人でぶつくさ独り言を言いながら落ち込み始めた。するとそんな俺の様子をみたミケラリスとアルスが俺のそばに来てくれたのである。

俺は二人に向かって、「俺の事を好きな人っていると思う?」と真剣に尋ねてみるとミケラリスが少し考えるような素振りをしてから答えてくれた

「う〜んどうだろう?確かに、私が知る限りそんな人がいなかったから、多分いないんじゃないかな?」

そうかやっぱりいないのか、いや俺がおかしいのか?もしかて俺には、この体に宿った人格にはなにかあるのだろうか、と不安になってしまった 俺は「ありがとう」と言ってその場を立ち去ろうとしたが俺の前にミケラリスが回り込むようにして俺を止めてきた 俺は不思議に思っているとミケラリスは真剣な目で俺の瞳を見つめてくるのである 俺はミケラリスの視線から目を逸らすことが出来ずにいた。

ミケラリスは少し沈黙したあと口を開いたのである

「ライナス。あなたには私の命を懸けても守るべき人がいる。その人の為になら、私は死ねる。ライナスはその人を愛してる?」

と質問してきたので、俺は「うん。」と即答すると

「わかった。じゃあいくよ」とそう言い放つと俺に唇を重ねて舌を入れてきた。そしてキスをしてきた。しかもディープの方だ。すると俺と体が入れ替わり意識がなくなると同時にライナが現れたのだった。

ライナは俺と目が合うと一瞬固まり、自分の指を俺の顔に向けると、俺は慌てて後ろに下がったのである。ライナは

「き、貴様、一体俺に何をした。」

ライナはかなり焦っていた。それもそのはず、俺は、ライナの目の前で姿を変えているからである。そしてライナはすぐに臨戦態勢に入った。

俺は、すぐさま戦闘の準備に取り掛かると俺の体を纏っている服の袖口から鎖のようなものが飛び出す。

そしてライナに向かって鎖を投げつけた。その鎖がライナに向かって襲い掛かかる。そしてライナもそれを迎撃する為に腰に差していた短剣を取り出し、その剣で応戦しようとしていたが、その剣に俺の投げた鎖が絡みつき、その鎖は俺の元へ戻ってくるのである。そしてライナはそのまま剣を振り上げようとしていたがすでにその剣は地面に叩きつけていた。その光景をみて、ライナの頬に汗が流れ落ちていった。ライナは自分の武器であるはずの剣が使えなくなってしまったからだ。俺の攻撃はまだ終わってはいないのである。

俺は、さらに、ライナに近寄ると、さらに攻撃を繰り出していく。

「やめろ、それ以上動くな!」

そうライナが叫んでいたが俺が攻撃の手を止めることはなかった。

俺は、さらに鎖を使い攻撃を仕掛け続ける。

ライナはなんとかして回避しようとしているのだが、なかなか思うよういかないようで、少しずつダメージを受けていっている。

ライナが苦しそうにしているのが分かる。だがライナは必死に防御をしていた。すると、俺は急に足を止めたのである。

「なぜ止めた?降参するつもりなのか?」

ライナは、俺を警戒しながらもそんな事を言って来る。俺は、何も言わずに、さらに距離を取ると両手を広げたのだった。すると俺の周りに無数の光の矢が出現し俺の周りを取り囲んでいた。ライナはそれを見て驚愕していた。そしてライナに忠告をした。

「あまり調子に乗るなよ、ライナ。俺に本気で来い」

俺は、さらにライナを追い込んでいたのである。ライナが逃げ場がない状態で、さらに追い込んで行く。ライナは俺をどうにかする方法を考えるが見つからないようだ。ライナは、覚悟を決めたかのように俺のほうへ走り出してきたが俺に近づくことはできなかったのである。そして俺はライナの首筋に手刀を当てるとその首が落ちてしまい、俺はその首を掴むとそのまま持ちあげてしまったのである そしてライナの死体をそのままにして俺は転移の魔道具を使った。その行き先は自分の肉体があった場所である 俺が自分の部屋に帰ると俺の姿を見るなりミケラリスは「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた

「ああ大丈夫だ」と答えると、ミケラリスの後ろから、ミケラリスに抱き着いている少女の事をじっと見ながら俺は、この体の少女はいったい誰なんだろうとそう考えていたのだった。だが俺の考えもむなしくすぐにアルターラが部屋に入ってきた。どうも様子がおかしい。何かを隠しているようなそぶりをしているし俺とは視線を合わせないようにしている感じだったのだ。それにいつもより化粧がきつくなっている感じであった。そして何となく感じた嫌な予感を感じ取りつつアルターラの言葉を待っていたのであった するとアルターラは意を決するように

「ライナス、あなたは魔王を倒してしまったわよね?それについてなんだけどね、この国にも勇者がいるということになっているらしいのよ。そこで私達はあなたの仲間になることになったってわけ」と言うのだ俺は驚いた顔をしながら固まってしまうがそんな俺の様子など気にならないように、

「そういうことだ。ライナスよろしく頼むぜ」と言って握手を求められた。その握る手の感触が俺をイラっとさせるのである。ライナにも同じ様に俺が握って来たがやはり同じようにイラッとしたのだ。俺はアルターラのことがどうしても許せないのである。そしてミケラリスの方に目をやると、なぜかミケラリスも不機嫌になっているように見えるのだ

「まぁそう言う訳だから宜しく頼むよ。俺は、バルバロッサだ。一応王として国をまとめているものだ。俺も、ミケラリスと同じようにお前達の師匠になったつもりで指導していくからお前達もそのつもりだぞ」

「そうそう、それからさぁミケラリス、あんた少しばかり露出度が高いんじゃない?少しは抑えなよ、それとアルターラもだけど、もう少し恥じらいを持ったほうがいいと思うけどね、特にライナスさんの前でそんなはだけた服を着てたら襲われてもしらないよ」と言いながら二人の服装に注意を促していたが当人達は、まったく聞こうとしていなかったようである。そしてアルスは、少し恥ずかしいのか顔を赤らめて少し下を向いてしまった。すると俺の前にいる二人は突然に服を脱ぎ出したので俺はびっくりしてしまう

「ちょ、ちょっといきなり脱ぐな!せめて一言断れ!」

俺は思わず大きな声で怒鳴ってしまう

「だってこの姿でしょ?」とアルスが言ってきたその言葉に、俺は言葉を詰まらせる。そうなのだ。今のこの体の俺はアルスの婚約者の体なので、下手なことは言えないのだ。

アルスも、アルターラの事が気に入らないのかアルターラと睨み合いを続けていたのである。俺はこの状態だと俺が不利だと考え、とりあえず二人には落ち着いてもらおうとするが俺が二人の間に割り込もうとすると アルターラがミケラリスの耳元で何か囁いていたのである。ミケラリスはそれを聞くたびになぜか顔を赤くしながら動揺していたがアルターラの話が終わるとミケラリスもアルターラに話を始めた。

俺は、その様子を見ていてまた二人が喧嘩を始めるんじゃないかと不安になり二人に止めに入る すると、 アルターラが

「おい、ミケラリス、ライナスが心配そうな表情をしてんのに気が付いてないの?少しは自重したら?」と言ったのである ミケラリスが俺の顔を見つめながら「ごめんなさい。ライナスが、不安そうにしています。ライナス。安心してください。私達絶対に喧嘩なんてしませんから。」と言ってくる 俺は、「わかった」とだけ答えた。するとアルターラとミケラリスが何やら話し合っていたので俺もそちらに意識を向けると どうやらアルターラと、ライナの話を聞いていたらしく、その話の結論は俺には勝てないという事になったようでありそのあとアルターラがミケラリスを説得するのに成功したみたいだった。そして俺は、ライナと話をしておけば良かったと少し後悔したのだった。そしてその後ミケラリスが「今、着替えますのでも少しだけ待っていてください」と言われ少し待つことにしたのだが少し時間がかかりすぎているような気がする。そしてようやく終わったと思ったのに今度はアルターラが

「ねぇ、その前に、その服どうにかならないの?」と言われた 確かに、その指摘通りその格好はあまり良くないと思っていたので俺は

「確かにそうですね。では一旦ライナの部屋に戻りましょうか」

俺は自分の部屋をライナに任せることにし、その部屋の中を好きに使ってもらって構わないと言って俺はアルターラと部屋を出るのであった。そして俺達が向かった先は俺の寝室だ。俺が自分の部屋に戻ろうとしたのだがアルターラは何故か俺と一緒の方がいいといってきて、仕方なく俺は一緒に寝る事にしたのである。俺の横を歩いているアルスと目が合うとお互い微笑んでいたが、なぜか、ミケラリスだけが俺のことを冷たい目線で見てくる。そんな事があったが俺はもう考えるのをやめていた。ただ俺はライナに俺の事を頼んだのにもかかわらず、そのライナが死んでしまい、アルターラと、それに便乗してきたアルスの事しか考えられなくなっていたのだ。だが、俺の心の奥底で何か違う感情があるのを感じている。それはいったいなんなのだろうか?俺はその正体を探るべく考え始めるがやはり何もわからなかった。俺は俺自身に起きたことを整理し、これから何をするべきなのか考えていた。そして俺は、ライナが死んだという事で気持ちの整理ができていないことを自覚していた。ライナとは短い時間だったが共に行動していた事もあり俺にとっては仲間の一人だったからである。そう思うとライナとの思い出が次々と頭に思い浮かんできてしまう。俺は、その光景を思い出しながらいつの間にか涙を流してしまっていたのである。俺は、俺の目の前にいた少女達に慰められるように抱かれてしまい俺は泣き続けたのである。するとその時に俺は俺の中に入っている体が震え始めた事に気が付いたのだ。俺の体に異変が起きようとしているのかもしれない アルターラはミケラリスを落ち着かせるために抱きしめながら背中をポンッポンッとしていた だがアルターラは心の中でミケラリスに文句を言いたい気分でもあったのだ なぜならば、ライナスがミケラリスと付き合っているのを知っていてわざと煽るような事を言っているのだ

「くっついて来なければいいじゃないのさ」と だがそんなことはおくびにも出さずにアルターラは、アルスとミケラリスの様子を伺っていた だがライナスが急に泣き出したため、二人はオロオロしているようであった ライナ自身も急に起こったことに驚いていたが、なんとか冷静さを取り戻すと俺は二人から離れ一人になろうとした

「ちょっと待ってくれないか?急に落ち着くまで一人でいさせてくれ。」

そういうと俺は部屋から出ていこうとする その言葉を聞いた二人は慌てて俺のことを追いかけようとするが アルターラが「今はそっとしときな」と言い聞かせたので二人とも俺の言葉に従った そして俺はしばらく泣いていたがだんだん涙が出なくなったので俺は自分自身の精神力の高さに感謝していたのだ。

俺は精神を鍛えるためにこの世界のどこかに俺の体を封印しようと考えたが俺の体は魔剣に乗っとられていたはずなのに魔族達はどうやってこの世界に戻ってきたのだろうとふと考えたのだ

(そもそも、どうしてあの時この体に入っていなかったんだ?)と考えるも当然だが答えはわからない この体には、何かあるはずだと思い調べることにしたのである するとどうやら何かの力によって守られているらしいことが感覚的にだがわかるようになった。そこでもしかしたら、俺とライナは二人で一つの存在として考えられているのではないかと推測できたのである。つまりどういうことだかというとライナがこの体の本体であり俺の魂がそれを動かす端末としてこの体に宿っているような形になっているということではないかと思えたのである それならそれで納得ができた俺はさらに思考を進めていくが結局よくわからないというのが本音であった ただなんにせよ、俺とライナは一心同体の状態だということである ライナの意識がなくなったらおそらく、その状態で俺の意識もなくなってしまうという事が予測できるのだ。そこでまず、ライナの人格を呼び出すことができないかどうか試してみる 俺は、自分がライナであることをイメージするとライナの声らしきものが頭の中に聞こえたのである そこでライナを呼ぶと「え?」と言ってライナが目を覚ましたのだ

「おはよう。どうやらライナと話ができるようになったみたいだな。」

「はい。ですがまだ、この体と会話することはできても、この体を自由に使うことはできないんですけどね。」

とライナが言ってきた

「ところでこの体は何なんだ?」と聞くもやはりこの体のことも俺同様に記憶を失っているらしく何も知らないようだ

「うーん。困ったことになったね。俺がもし、死んだりした時はこの体の所有権は君に返すからそれまではこの体の面倒を見てあげてくれるかな?」

「わかりました」と答えてくれたので俺はひとまず安堵する それから俺はミケラリスに話しかける「ライナスの件は残念だったけどさ。アルターラに少し話を聞きたいから俺と一緒に来てくれないか?」と言うと

「わかりました。私はあなたについていきます」と言いアルスと共にアルターラの方に向かうのであった。そしてアルスが

「アルターラ様、私たちの先生になってくれるんでしょ? ライナスがいなくなったから私達の先生がいなくなってしまったんだよ。

それにライナスの婚約者だからこの人には従わないといけないでしょ?」

と言い俺の腕に抱きついてきた そしてアルスは俺の耳元で、

「ねぇねぇライナ。アルターラって可愛いよね?あんな子と結婚できたライナって幸せだな」

と言ってくる。そしてアルターラが

「ちょ、ちょ、ちょ、アルス、あんた一体ライナに何吹き込んでんのよ!ライナが私のこと嫌いになっちゃうかもしんないじゃん!っていうよりライナ、ライナ!あんたの体には私が興味を持ってんだから、変なことしないでよね!」と言ってくる

「まぁとりあえず話をしたいんだけど良いかな?」と尋ねるとアルターラが了承したので俺たち三人と、ミケラリスとアルスはアルターラを連れて部屋に向かった

「じゃあ改めてアルターラ。俺は今ライナスの体を動かしてる。よろしく。そしてミケラリスとアルスは俺の大切な生徒だよ。俺が教えていることは全てミケラリスが教えることになっているから」

と言ってアルターラと握手する

「はい。こちらこそ。そしてライナスがお世話になりました。私、頑張りますからこれから仲良くしてください」と言ってくれたので俺はアルターラを気に入ったのであった。そして、アルターラが俺達とライナの関係を聞いてきたので、俺がミケラリスとアルスに確認すると、二人は特に問題はないと答えたので、俺の過去をアルターラに話すことにする。俺が転生者であることや勇者であることや、ミケラリスと恋人になった経緯などを話す。

俺はアルターラの事を信用しているが一応ミケラリスと、アルターラが本当に俺の仲間になるのかを確認する。俺はアルターラに、今ここで、魔王に反逆することに対してどう思っているのかを聞くと、やはり自分の国なので助けに行きたいと答えて、ミケラスやアルスと同じ考えだと言うことが分かった 俺はその後アルターラのことをミケラリスに任せると今度はタローンに声をかけに行く

「今すぐ準備しろとは言わないが、なるべく早く来て欲しいんだ」と伝えるとタローンは首を縦に振りすぐに支度を始めようとする。

そしてタローンが用意を終えた頃にライナの元を訪れる。だがそこにはすでにアルスと、ミケロスそしてその護衛の者が数名待機していたのだ

(もうこんなに人が!?)と思ってしまったのだが、アルターラも来ていたのだ そこで俺は、皆を集めるように頼む そしてしばらくして、全ての者が集まった。そして、俺は魔族の王に宣戦布告を行うことにした まず俺は俺の配下に命令をする 俺がライナと合体してから俺はアルターラとアルスとタローンそしてミケロスとその配下と合流してから俺はライナに指示を出す

「まず俺の体は、魔剣を封印する為に使おうと思う そこで、お前たちの中で剣を扱う事ができる奴がいるなら剣の扱いに長けている者をこの中に連れてきてくれないか?」と言うと全員が手を上げる その数は全部で5人だったのである 俺はその中から3人に魔剣を使う時に俺の補助を任せることを伝えると残りの1人は剣技を極めさせるために特訓してもらう事にした。

そして残りの一人とタローインが連れてきてもらった人物に剣を持たせて訓練をしてもらい俺はその2人のことをアルターラにお願いする事にして俺自身はアルターラと俺の部下数人と共に王城へと向かうのだった。ちなみに俺はミケラリスの魔法によって姿を変える事が可能になっていたので俺は人間の姿に変えてもらう事にしたのである アルターラの魔法によって俺達は変装することができていたが、それでもアルターラを仲間だと証明するためにはミケラリスの魔法が必要になってしまうのは間違いがなかったのである。そこでミケラリスの転移のスキルを使うことによって、ミケラリス、アルス、ライナを一度ミケラリスの家に送りそこから俺達がミケラリスの家に移動して、そこから再び転移でミケラリスの家に戻り俺達と合流するといった形で王城にたどり着いた 俺達が門番に身分を示すための物を提示して門を開けるように指示をした時、門の横に設置してあった石像のような物が動き出して俺の前にやってくる その姿を見て驚くと同時に俺の心の中に声が聞こえてくるのである

「汝が我らの王の器であるか」と

「貴殿がこの国の王であると言うことは認識している」

と俺は答えたのだ

「ならば、我が問いに応えてもらおう」と言う 俺は「ああ」と返事をすると、「では問う、この世界の均衡を乱す気はないか?」と尋ねられたので俺は即答で

「ない」と答えてしまったのだ なぜなら、魔王をこの世界に召喚させたのはこの男で俺はそれを阻止する側に回るつもりだったからである。すると

「ではなぜ、我に会いに来たのだ?」と問われたのだ そこで俺は魔剣を使い隕石を止めるために魔王に協力を要請するためにやってきたのと魔剣の力を制御できるのは今のところこの世界には魔王しかいないから、魔王の力を借りなければ止められそうにないので協力してもらえないだろうかと言う旨を丁寧に伝えた 俺の願いを聞いた王は「うむ、わかった」と言って納得してくれた それから俺は俺自身の正体と魔族の王であることを明かしたのである。そこで俺はミケラリスと、アルターラも呼んでもらって今回の件は二人には内緒にするように念押ししておく アルターラとミケラリスには後で、事情を説明する必要があるかもしれないがそれはもう少し先にする必要がありそうだと思えた。それから俺は俺が元いた世界は別次元に存在するという事や俺がこの世界の神々の敵だという事は伏せておくことにする

「この世界を壊させるわけにはいかないから、君にも協力してもらえるとありがたいんだがどうかな?」と俺は聞くと

「もちろんだ」と言ってくれたので、まず俺がこの国と敵対していないということを理解してくれて、それに加え俺に協力してくれると誓ってくれたのである。

そして、王城内に入るための許可も下りたので俺は俺の仲間を俺の後ろの席に座らせると、そのまま王城の王座の間に転移するのであった。俺の仲間にはあらかじめ俺が魔王であることを伝えている

「よく来たな。魔剣の主。いや、今は魔王だったな。それと、その後ろにいるものは私にとって未知のものだ。私はまだ死にたくはないしこの世界で暴れるつもりもない。だから私は君たちに敵対する意思はないから安心して欲しい」と俺は言われた そこで俺はまず最初にタロウから話を始めたのだ まず俺は俺が魔王になったこと 俺は俺の仲間たちと旅に出て俺の配下を集めながら魔王軍を作りあげようとしていることを伝えた そして最後に俺が元勇者であることと、元の世界に帰るためには俺と元魔王の協力が必要になるだろうと思っていることなどを話した上で、タローインの持っている情報について聞き出そうとした

「まず一つ目に、あなたはこの世界の事をどれくらい知っているんですか?」と俺は質問をすると

「この世界の歴史については私は知らない。この国がどういう状況にあるのか、この国で起きている事件について私は何も知らなかったんだ」と答えてきたので、俺はそれを予想通りと言わんばかりに「この国に何が起きていて今どんな問題を抱えているのかわかりますよね」と聞いてみた。しかし残念なことにタローインは知っていないと答えてきた そして次にミケラリスに説明を求めるが、残念なことに、ミケラリスが知っていたのはその事件の犯人や目的、そして首謀者が誰か、だけだったのである。だから俺はそれ以上詳しいことを聞き出すことを諦めると、アルターラがミケラリスに「ミケラリスさん、あなた一体なんの役に立つ情報を私達に渡してくれてたのかしら?」と言ったことで、ミケラリスの表情が変わったのが俺でも見て取れた。そこで俺は「まぁとりあえず落ち着こうじゃないか、アルターラさん。それに、まだ俺の質問には答えていないんだから」と言って一旦会話を止めてタローインから話を聞こうとするがタロウとアルターラは、お互いの事を言い合い、俺の話を聞いてくれようとしなかった。そこでミケラリスが二人の喧嘩を止めに入ったので、俺はその間にもう一度タローインから話をしてもらうことにした そこで俺は俺がこの世界の創造主の生まれ変わりで、今俺は俺の中に入っていた俺を消滅させて新たに誕生した俺にこの体を任せることにしたことと、俺の本来の姿についても、その魔族の姿こそが本当の俺であることを伝えようとした。そこでミケラリスとアルターラが突然、アルターラから光り輝くオーラが放たれたと思った次の瞬間、俺が先ほどまでアルターラに貸し与えた魔剣が勝手に浮かび上がってきてアルターラの手に戻ったのである 俺はそこでアルターラに「アルターラ、君は一体何者なんだ?」と尋ねるとアルターラは自分の正体を明かす前にまずは俺の仲間を先に紹介したいと申し出てきてくれたので俺は了承することにした そしてまずミケラリスの紹介を行うと、ミケラリスのことを気に入ったのかアルターラはミケラリスと握手していた 続いてアルターラの番になったのだがアルターラが魔剣を構えた時に俺は驚いたのである 俺がタローインと話している最中にアルターラの手にしていたはずのミケラリスから貰ったという魔剣がない 俺は不思議に思ってアルターラの方を見るとそこには、さっきまでアルターラが握っていたと思われる魔剣が俺の首を狙って飛んできたのだ。俺はすぐにその場から離れようとして回避しようとした時である 俺はミケラリスから借りていたタローインをミケラリスに預けてミケラリスの傍から離れるように指示をしたのだ そのお陰なのか、なんとかミケラリスの張った結界に弾かれてその攻撃を回避することができたのだが俺は今起きたことを整理する必要があった まず、ミケラリスの方に目を向けてミケラリスに今の出来事を確認させるとミケラリスも今起こった出来事がよくわかっていないような態度を取っていたのである つまり今の現象を引き起こした原因を俺なりに考えてみるとアルターラが何らかの理由でミケラリスが俺に与えた魔剣を使えるようになっているという可能性が高い そこでアルターラに対して「どうして魔剣を使って俺を殺そうとした?」と俺が聞くと、 するとタローインが「そんな事よりも私の話がまだ終わっていないのに勝手に逃げるんじゃないよ!」と言ってくるが、タローインが言っている事を無視すると タローインは怒り心頭したらしく

「おい貴様!!私に何か恨みでもあるというのか!?」と言うが俺は無視することにする タローインは俺が答えないことに不満を持ったようで「貴様には死を持って償ってもらうしかないようだな!!」と言う その言葉に反応して、タローインの持っていた魔剣が再び輝きを放ち始めると俺の視界を覆ってしまうほどの光の玉が浮かんでいた その光が収まると、そこにいたのはさっきまでのタロウではなく、その見た目は魔族に近い外見をしていた 俺はタロウを睨みつけるように見ると

「お前は何者で何をするつもりだ?」と俺はタローインに聞いたのである すると、その声に反応するようにタロウはニヤリと笑い始めたのである

「クックック。我こそは魔王。我が名はタロウ。この世でただ一振りだけ存在し、そして全ての力を手にした最強の魔王なり」と、タロウの口から出てきたのは俺がこの世界に来た時から何度も聞いたセリフを俺に言ってきやたのである だがここで俺は違和感を覚えたのである それは俺の中で、タローインの存在が少しずつ消え始めている気がしたからである。そこで、アルターラに事情を聞くと、アルターラからこの魔剣がどのような能力があるのかを教えられたのだ。

このタロウから渡された魔剣は、タロウを封印している武器なのだそうだ。この魔剣にタロウを封じることでタロウは、魔王としての力を発揮してしまうと そこで俺はある可能性に気付いたのである。俺はタロウの事を魔王だとは思っていなかった なぜなら、タローインはアルターラやミケラリスから話を聞いただけでタロウに実際にあったわけではないので俺は魔王じゃないんじゃないかと思ってはいた 俺は、魔剣についての説明をしているアルターラから話を聞きながらタロウに意識を向けると、俺に攻撃を仕掛けようとしていたタロウに異変が起きたのである アルターラから聞いていた通り、タロウにミケラリスから渡されていた魔剣にヒビが入り砕けてしまったのである。俺に襲い掛からないようにミケラリスが結界を張るが、俺は気にせずにタローインが魔王だということが証明されタロウは俺達の敵だと判断したので、俺はミケラリスが渡してくれたこの魔石から作り出した指輪をはめることにして、ミケラリスからもらった俺専用装備の一つを身に着けてから俺はこの魔族王との戦いに臨むのであった

「魔王、覚悟しろ!!!」と言って俺に斬りかかってきた 俺は咄嵯に自分の剣を抜き取るとその攻撃を受け止める 俺とタローインは剣をぶつけ合う タロウが魔王であると判明した俺は、タロウと戦闘を開始する。俺の攻撃はタロウに当たることはなかったが俺の攻撃を防いでいるのにも関わらず、タローインは無傷でその場に立っていたのである そして俺は魔剣の能力を使おうとするがタロウが魔王であることを思い出した俺は魔王と戦うのならこの能力は使わない方が良いだろうと考えタロウとの力の差を考えることにした 俺とタロウとのレベル差はそれほど離れていないはずなのでタロウを倒すには俺が魔王の力とやらを使えば倒すことは出来るはずだが 問題はタロウの持っている特殊能力が分からないということである もし仮にタロウの能力の中に相手の力を弱体化させる効果があるとしたのならば魔王の力が通用しなくなる恐れがあるので魔王の力はなるべく使用しないようにしたいと思っている

「なぜ俺の事を倒さないんだ?」とタローインは余裕そうに言ってきたので俺は、その言葉を待っていたかのように「この俺の剣で魔王を名乗る偽物を始末しようと思っただけだ」と言ってタローインの隙を見て、この空間の外から入ってきた時に俺が使っていたタロウの体に俺の魂を入れたときに使った魔剣を取り出すと俺は、その剣に俺の意思とタローインの意思を同時に融合させてみた その結果俺の持つ魔剣は二本になってしまった そしてタローインは俺が手に取った剣を見つめて「まさかこんな方法で私の魔剣を復活させるなんてね、だけどこれで私が本物の魔王であることは理解したよね?君も今すぐにでも私の支配下になりたいでしょ?」と笑っている 俺はそれを挑発行為とみなし、俺は俺の剣で攻撃を仕掛けるがタローインに避けられる そこで俺は俺の後ろの方から攻撃が飛んでくるが、それを避けているとミケラリスの結界がタローインの攻撃を防ぎ俺はミケラリスに合図を送りタローインとタロウから俺とタロウとタローインの魔剣を守るように指示を出すと俺は俺自身の体と魔剣とタローインと俺の魂を融合させた剣を使い、ミケラリスとタローインの作った防御の盾ごと破壊しようとした その攻撃は俺が思っていたよりも遥かに早くタローインに直撃したが、俺が繰り出した剣が俺の想像していたよりも圧倒的に強く、俺が繰り出した斬撃で俺達を守っていたタローインの張った魔法障壁が破壊されて俺とタローインが戦っていた場所は瓦礫だらけの荒野のような場所になっていた タローインが俺が繰り出した攻撃を受けて、その威力が予想以上のもので吹き飛ばされてしまい、俺の剣を受けた部分が焼け爛れていたのである そこで、俺の

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俺の彼女は魔法使い~彼女のために最強の武器を作ろうと思ったのだが?~ あずま悠紀 @berute00

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