(三)-2
「うん……、それはそうなんだけど。間違いなく彼女だった」
妙に断言するわね。確かに彼は運動部で視力は良いのかも。球技をやっていると動体視力も良くなるって聞くし。
「どうして。どうして加奈江だって断言できるのよ。視力がいいから?」
「違う。俺にはちゃんとわかったんだ。だって……、俺、八木のことが好きだったんだ」
私は声こそ出さなかったが、その思わぬ返事にびっくりしてしまった。そうだったの? それじゃあ、屋上で加奈江は立木君にフラれたってわけじゃないってこと?
「だけど、ホテルに入る姿を見て、俺、すごいショックだったんだ。ずっと言えないでいたんだけど、だから、あの日彼女を呼び出したんだ。そうしたら、彼女は俺のことを好きだって言ってくれたんだぜ」
(続く)
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