第五章 一人の人間として

「アントンさん! アントンさん! いらっしゃいませんか!」


 スタジオ・アントンのドアをクラウスが強くノックする。すでに閉店していたが、クラウスはお構いなしにノックを続けた。横にはユリカもいた。二人は一緒になってアントンの名を呼んでいた。


「はい、ただいま……おや? ユリカ様。それにクラウスさんも」


 ドアを開いてアントンが顔を出した。クラウスたちのいきなりの訪問に目を丸くしていた。


「どうしました? 写真はお送りしたはずですが、何かありましたか?」


 何か失敗しただろうかとアントンが不安な顔を見せるが、クラウスは首を横に振った。


「いえ、そうではないのです。アントンさん。あなたに仕事を依頼したいのです」


 その真剣な顔に、ただ事ではない何かを察したアントンは、二人をスタジオに招き入れるのだった。




 客室に招かれたクラウスたち。彼らと机を挟んで、アントンが向かい合う形で椅子に座った。


「それで? 仕事を依頼したいということですが、また写真を撮影したいということですか?」


「その通りです。ですが、撮ってほしいのは、この前のような肖像写真ではないのです」


 その説明にアントンは首を傾げた。そんな彼にクラウスは話を続けた。


「アントンさん。あなたもご存知のように、グラーセンとアンネルとの間に戦争が起きようとしています。その戦争を前に、あることをやろうと思うのです」


「あること、ですか?」


 アントンの質問にクラウスはすぐには答えなかった。彼は一呼吸置いてから、その答えを口にした。


「国王陛下による開戦演説です」


 開戦演説。それは歴史上何度も行われてきたものだった。戦争が起こる時、歴史上の君主と呼ばれる者は、臣民に開戦を命じるための演説を行ってきた。


 開戦は君主による大権でもあり、演説は君主からの勅命なのだ。


「ほう……陛下による演説ですか」


「はい。今、国内は戦争が近づいていることに不安が広がっています。国民は戦争を恐れ、世論が揺らいでいます。そこで陛下から演説を行ってもらい、国民に団結を求めようと思うのです」


 そこまで言い終えて、クラウスの瞳がアントンを捉えた。



「あなたには、その演説の場面を写真にしてほしいのです」



 腰を浮かしかけたのはアントンだった。その言葉の意味を前に、彼は衝撃を受けていた。


「陛下の演説を……写真に?」


 呆然とするアントン。そんな彼の様子が面白いのか、ユリカが笑みを浮かべながら口を開いた。


「すでにスタール宰相も動いております。まだ陛下にはお伝えしておりませんが、これから陛下に演説をしてもらうよう働きかけるつもりです。あなたが撮った写真は新聞に使われ、その写真は陛下の御言葉と共に、グラーセン国内はもちろん、帝国統一に参加することになる構成国にも配られることになります」


 壮大な計画にアントンは今度こそ言葉を失った。降って湧いて出た話に、自分の写真が使われることになる。驚き以外の何物でもなかった。


「アントンさん」


 クラウスの声にアントンが顔を上げる。衝撃を受け止めきれないアントンに、さらに語り掛けた。


「あなたは仰いました。写真は世界を変える力があると。途轍もない力があると。写真が持つその力を、どうか祖国のために使わせてくれないでしょうか?」


 写真には世界を変える力があるとアントンは言っていた。確かに写真にはすごい力があるとクラウスは感じ取っていた。


 スタールの屋敷で彼は、カール国王の演説の場面を描いた絵画を見ていた。その絵には、心を揺さぶる力があった。


 国王陛下の演説の光景を写真にする。その写真は何枚も生み出され、国民一人一人の手に行き渡ることになる。


 遠く離れた多くの人々に、君主の言葉が伝えられることができるのだ。


「私の写真が……世界に広まる、と?」


 想像もしていなかったことにアントンはそれだけ言うのがやっとだった。それだけクラウスの話が大きかったからだ。


 呆然とするアントンに、クラウスがにやりと笑みを浮かべて伝えた。


「アントンさん。あなたがこの仕事を引き受けてくれたなら、あなたが得られる報酬は三つあります。一つは、あなたとあなたの写真は歴史に金字塔を打ち立てること。もう一つは、あなたの写真が世界と歴史を変えること。そしてもう一つ」


 クラウスは一瞬間を置いて、重々しく言葉にした。



「あなたは歴史上初めて、この国の君主の姿を、写真に納めるという名誉を得ることができます」



 今までに国王の姿を写真に撮影した者はいない。間違いなくそれは歴史上初めてのことになるのだ。


 もし彼がこの仕事を引き受けたなら、彼の名前と写真は間違いなく、歴史に記されることになるのだ。


 それはクラウスが言ったとおり、まさしく金字塔と呼ぶにふさわしいものだった。


「もしこの報酬で足りなければ、何か別のものを用意しますが、どうでしょう?」


 軽口を叩くクラウス。それまで聞いていたアントンはしばし沈黙した。


「……はは」


 少ししてから、アントンが我慢できないとばかりに笑い出した。目の前に差し出された名誉に、笑うしかなかった。


「あなたという人は、とんでもないことを考えますね」


 アントンの言葉を、クラウスはこれ以上ない誉め言葉とばかりに笑って受け取った。そして、アントンは立ち上がってクラウスを真っ直ぐに見つめて言った。


「やらせてください。あなたが提示した三つの報酬。全ていただきましょう」


 アントンが手を差し出す。クラウスはその手を握り返し、二人はお互いに笑みを交わすのだった。それを横で見ていたユリカも、面白そうに見つめていた。



「まずはこれで、写真については準備ができるわね」


 スタジオ・アントンから帰る途中、馬車の中でユリカが笑った。それに釣られるようにクラウスも満足そうに笑う。


「ああ。新聞社とも協力を得られれば、計画は成功する。新聞社にとっても、ありがたい話になるはずだ」


 国王の写真を載せた新聞が世界に広まる。新聞社にとって、これ以上ない仕事となるに違いなかった。


「あとは陛下に演説のお願いをするだけだ。陛下から了承を得られれば良いのだが……」


 少し不安そうにするクラウス。写真や新聞についてはある程度準備は進んだ。しかしまだこの時点で、国王に演説についての話はしていなかった。もし国王であるフリードから了承を得られなければ、計画は水の泡となる。


 これまでにない計画なのだ。頓挫したとしてもおかしくはなかった。


 そんなクラウスの不安をユリカが笑い飛ばした。


「大丈夫。おじい様からお話してもらうことになっているし、きっと陛下も了解してくれるはずよ」


 スタールとフリード。宰相と国王として、長く共に仕事をしてきた二人。スタールならきっとフリードを説得することができるはずだ。


「ああ、そうだな。きっと大丈夫だ」


 そう。何も不安はないはずだ。きっとフリードは演説をしてくれるだろう。


 その演説は写真として記録に残り、世界に国王の言葉が届けられる。そうして国民の心は一つになる。


 その光景を夢想するクラウス。胸の奥で何かが熱を帯び始めていた。


 そんな彼にユリカが笑いかけてくる。


「さあ、私たちも行きましょう。陛下の下に」


 二人を乗せた馬車が街を走る。馬車は二人を載せて、フリードがいる王宮へと急ぐのだった。



 もうすぐ夜になろうとしていた。王都・オデルンも茜色に染まり、街は夜の装いに変わろうとしていた。


 そんな夜の中、王都の中心にある宮殿が、一際威容を放っていた。


 宮殿の前で馬車が一台停まる。その馬車からクラウスとユリカが出てきた。二人は国王の前に立つため、正装に身を包んでいた。


 そんな二人をスタールが出迎えた。


「やあ、よく来てくれた」


 スタールもまた正装を着用していた。白い軍服に輝く勲章を胸元に付けた、今まで見せたことのない姿だった。スタールがクラウスたちに話しかける。


「すぐに陛下と会談することになる。準備はいいかな?」


 クラウスたちを気にかけるスタール。対してクラウスの心臓は跳ね上がるように高鳴っていた。


 一度その御前に立ったとはいえ、こうして国王と対面しようとするのだ。緊張するなという方が無理な話だ。


「はい。大丈夫です」


 それでもクラウスは胸を張って言った。おそらく嘘だと見抜かれているはずだ。それでも、ここで自分だけ退くわけにはいかなかった。


 それが勇気なのかやけくそなのかは、彼自身にもわからなかった。そんな彼の心情を察したのか、ユリカが彼の手を握った。


「大丈夫よ。今日も惚れ惚れするほどの色男よ。陛下も気に入ってくれるわ」


 いつものユリカの軽口。それがどんな力を持っていたのか、クラウスの緊張も幾分か和らいだ。


 いつもながら不思議だ。他の誰かに同じことを言われても、こうはならないだろう。それなのに、ユリカに言われると何故か心が安らぐ。


 何か魔法でもかけられたのだろうか? そんなことを真面目に考えてしまうクラウスだった。


「さあ、それでは行こうか」


 スタールの言葉にクラウスたちも同じように頷くのだった。



 三人が通されたのは、国王フリードの個人的な部屋だった。個室に通されるというのも、スタールの地位あってこそなのだろう。そのスタールを先頭に三人は部屋に入った。


「陛下。スタールです。それと、クラウス殿とユリカもここに」


 スタールが挨拶すると、奥で椅子に座っていたフリードが立ち上がった。


「……よく、来てくれた」


 立ち上がったフリードの姿に、クラウスはやはり緊張した。以前スタールの屋敷で会った時もそうだが、やはりその軍服姿からは君主というより、厳格な軍人という印象の方が強かった。だからこそ、彼の威容はより高まっているように思えた。


 緊張するクラウス。そんな彼の前でスタールは、いつもと変わらぬ物腰でフリードに語り掛けた。


「陛下、いきなりの訪問に応じていただき、感謝申し上げます。実は陛下にお願いしたいことがあり、こうして馳せ参じました」


 粛々と語るスタール。その言葉を受け止めるフリード。君主と宰相が語り合うというこの状況に、自分が立ち会っている。クラウスは変な感覚を覚えていた。


「なるほど。して? 君の言う願いとは、一体何かね?」


 先を促すフリード。それに応じるようにスタールが口を開いた。


「はい。実は陛下には、国民に対し、開戦演説をしていただきたく思っております」


 開戦演説。その言葉にフリードがピクリと反応した。


「開戦の、演説かね?」


「はい。戦争が近づいている今、国民の間で不安と動揺が広まりつつあります。そこで陛下に演説をしてもらい、国民の不安を解消し、戦争に立ち向かう勇気を与え、共に戦うために団結を促していただきたいのです」


 スタールの屋敷で見た、カール国王の演説を描いた絵画。その時と同じように、君主の言葉で国民が団結する。それこそ彼らが思い描くものだった。


 フリードの言葉なら国民は勇気をもらい、共に立ち上がるだろう。そんな未来をクラウスたちは描いていた。



「……すまないが、それはできない」



 そんなクラウスたちに、フリードはただ一言、できないと答えた。


 一瞬何を言われたのか、クラウスはわからなかった。横に立っていたユリカも同じだった。


「……失礼、何故でございますか? 陛下」


 フリードの答えはスタールにも意外だったのか、わずかに動揺が見え隠れしていた。そんなスタールの問いかけにもフリードは淡々と答えた。


「私は君主ではあるが、国政の決定は議会に委ねられている。君主が国政に関わるのはあまりよろしくない。開戦の決定はあくまで国民と議会によるものでなければならない。私が国政を左右するようなことがあってはならないのだ」


 そう言って、フリードは首を横に振った。彼は国政を国民の物であると考え、自らが大権を振るうことがあってはならないと答えた。


 それが彼の考える、君主の正しき姿だと。


 クラウスの背中に嫌な汗が流れる。フリードが演説をすること。それこそが国民を団結させる力があると信じていた。


 そのフリードが演説を拒否してきた。予想外の出来事に、クラウスは膝が震えていた。


 だがスタールもここで引くことは出来なかった。彼はフリードに語り寄った。


「陛下。この不安な時代にこそ、陛下の御言葉を国民は必要としております。君主の言葉で薄暗い雲と深い霧を取り除き、皆の視界の先にある道を示す必要があります。陛下の御言葉で、その道を国民に示していただきたく願います」


「……すまないが……」


 フリードはなおも首を横に振った。彼の意志は固かった。その様子をスタールはただ見つめた。


 その様子を見て、クラウスは何かを思い出す。今のフリードの姿は、どこかおかしく思えた。まるで何かに迷うような、そんな雰囲気があった。


 そう感じた時、クラウスは思わず口を開いた。


「陛下。陛下が演説を拒否なさるのは、本当にそれが理由でございますか?」


 フリードとスタールが振り向く。横ではユリカが驚いたように顔を上げる。


 自分でも畏れ多いことだとはわかっている。それでも、クラウスはフリードに問いかけずにいられなかった。


「どういう意味かね?」


 フリードの言葉にクラウスが話し続ける。


「陛下。陛下は何か、迷っているように思います。私には、陛下はもっと別の理由で演説を拒否しているように思えるのですが……」


 クラウスが真っ直ぐに質問をぶつける。その質問を受け止め、フリードがじっとクラウスを見つめる。


 気圧されそうになるクラウス。フリードの視線がクラウスを射抜く。少し気を抜けば、その場に座り込んでしまいそうな、そんな圧力を感じた。それでも、クラウスは立ったままフリードを見つめ返した。


 少しそうしていると、フリードがため息を吐いて口を開いた。


「戦争を前にして国民が不安になるように、私が不安にならないと思っているのかね?」


 そんなフリードらしくない言葉に、クラウスたちは耳を疑った。君主として、常に堂々たらんとしているフリードが不安を抱くなど、考えられなかった。


 驚くクラウスたちに、フリードが口を開く。


「国民に愛する家族がいるように、私にも大切な家族がいる。その家族が戦争に行くかもしれないのだ。私だって、不安なのだよ」


 静かに語るフリード。その時、スタールが口を開いた。


「それは……ヴィクトル王太子殿下のことですか?」


 その問いかけにフリードは何も答えなかったが、その沈黙は肯定を意味していた。


 ヴィクトル王太子はフリード国王の息子であり、時期国王と目される人物だった。そのヴィクトルは今、師団を指揮する少将として、陸軍にいたはずだ。


「私もかつては軍で生活したことがある。国を統治する者。国民の君主たる者の責務として、軍で訓練に明け暮れた。雨と泥の中を走り回り、砂埃と汗にまみれたこともあった。いつか戦争が起きた時、王族として、戦友と共に戦場へ行くことを覚悟していた。それが当然だと思っていた」


 かつて君主は自ら軍を率い、銃弾や怒号、悲鳴と砲弾が飛び交う戦場に立った時代がある。彼らは軍旗を持って先頭に立ち、将兵たちを鼓舞し、共に戦場を駆け巡った。


 高貴なる者の義務。祖国と国民を統治する者として、彼らはそれに見合う義務を果たしてきたのだ。


「王太子を将兵と共に戦場に向かわせるのも、君主としての務めだと理解している。しかしだ」


 そこで一旦言葉を切るフリード。少ししてから、彼はもう一度顔を上げた。


「一人の息子を持つ父として、ヴィクトルに戦争に行ってほしくないとも思ってしまうのだ」


 胸の内を吐露するフリード。その時、彼にいつもの堂々とした態度は消え、不安に震える一人の人間としての姿があった。


 それは君主としてのフリードではなかった。それは軍服の下に隠れていた、家族を想う一人の父親としてのフリードだった。


 フリードがそんな姿を見せるのは、おそらく初めてだったのだろう。スタールが驚いた様子でフリードを見ていた。その様子を、クラウスもユリカも呆然と見つめていた。


「君は私に、国民に共に戦うよう演説してほしいと言ったな?」


 フリードが笑いながら問いかけた。その笑いは、自分を嘲笑うような、そんな空気が混じっていた。


「君主として戦争に立ち向かおうとしていながら、息子が戦場に向かうのを怖がる父親だ。そんな私が国民に語り掛ける資格などない。それに、そんな迷いを持ったまま演説などしても、そんな人間の言葉に価値などあると思うかね?」


 演説とは信念の言葉。人々の心に唱え、魂に訴えかける言葉。そこに強い意志があってこそ、その言葉に力が宿る。


 以前、スタールも王国議会で演説したことがある。その演説でスタールは人々の心を揺さぶり、魂を熱くし、人々の中に眠る愛国心を呼び起こすことに成功した。それは彼の言葉に力があったからだ。


 だが、フリードは自らの迷いを知ってしまった。そんな彼が自分の言葉に力が宿るはずがないと言った。力なき言葉は空虚さの中に消えてしまう。それだけだ。


 フリードの迷いも当然のものだ。そのような心境で演説など、できるはずがなかった。


 そこまで言って、フリードがもう一度スタールに顔を向けた。


「演説は諦めてほしい。わかってくれ」




 帰りの馬車は暗い空気に満ちていた。クラウスもユリカも。それにスタールまでもが沈黙したままだった。


 フリードに演説を断られたというのもある。しかし、それ以上にフリードの言い放った言葉に、彼らは呆然自失としていた。


 国王であるフリード自身が、戦争に対して迷いを抱いている。それはクラウスたちに衝撃をもたらすのに十分な意味があった。


 君主は国民を統治し、守護し、導く者。絶対の権威を持ち、人々にその威光を示す者だ。


 その君主たるフリードが迷っている。クラウスたちだけが知るフリードの姿に、彼らは驚愕した。


 フリードの言う事ももっともだ。国民を主導する立場であるフリードが弱さを見せては、国民を迷わせてしまうだろう。事実、そんな彼の弱さを知ってしまったクラウスたちは、大きく動揺していたのだから。


 ただ、これでフリードの演説で国民の意思を団結させるという目的が達成できなくなってしまった。それがどれほどの痛手か、彼らの沈黙の深さがそれを物語っていた。


「アントンさんにも、謝らないといけないわね」


 ユリカが呟く。何か呟かないと、この沈黙に耐えられそうになかったのかもしれない。


「そうだな……せっかく張り切ってくれていたのに、申し訳ないな」


 歴史に残る仕事になるとアントンは喜んでいた。ぬか喜びになってしまったことは本当に申し訳なかった。


「まあ、仕方あるまい。何か他に手立てを考えよう」


 そう語るスタールだが、その言葉にいつもの力強さはなかった。彼にとってもフリードの言葉は辛かったようだ。


「でも、不思議よね」


 その時、ユリカが呟いた。


「不思議とは、何がだ?」


「国王陛下も、息子を持つ父親なんだなって。それがなんだか不思議なのよ」


「そうか? そんなにおかしなことだろうか?」


「ええ。だって陛下があんな顔をするのは初めて見たわ。あの人が父親の顔をするなんて、思ってもみなかったもの。そう思うと、私のお父様と同じように、家族がいる一人の人間なんだって思ったわ」


 確かに彼女の言うとおり、フリードもヘルベルトも、同じように家族を持つ父親だった。立場や地位は違っても、二人とも父親としての顔を持っていた。


 だが、確かにあの厳格な空気を纏うフリードが、父親としての悩みを見せるとは思ってもいなかった。


「ねえ? あなたのお父様はどんな人なの?」


 唐突にユリカが問いかける。クラウスは実家にいるであろう父親のことを思い出す。


「そうだな……不器用な人だよ。本当は優しいのに、笑顔を作るのが苦手で、当主の仕事を真面目にこなして、家族のことを大事にする、良い父親だったと思うよ」


 もしかしたら自分の無愛想な表情も、そんな父親から譲られたものなのかもしれない。そう思うと、ありがた迷惑な贈り物だと苦笑いした。


「ほう。一度だけ会ったことがあるが、意外なことだ。真面目だとは思っていたが、不器用とはね」


 スタールが頷く。確かにスタールなら、クラウスの父に会っていたとしてもおかしくはなかった。


「でも、お父様とはお話しているの? 戦争のこととか。軍属をやめるように言われなかったの?」


 ユリカが心配そうに覗き込む。きっと父親から反対されていないか、心配しているのだろう。


「ああ。大丈夫だ。手紙で心配そうにしていたが、立派に働いてくれと言われた。無理せず無事に帰ってくるようにだけ言われたよ」


 元々シャルンスト家も武門の一族だ。家族が戦争に行くということを、一族の宿命と受け取っているのかもしれない。


 そんな話をしたら、ユリカがにっこりと笑った。


「良いお父様ね」


 身内のことを誉められるというのも、けっこう照れるものなのだと、クラウスは初めて知った。彼は照れ隠しにユリカに話しかけた。


「君たちもいい親子じゃないか。ヘルベルトさんも君のことを応援していたし。背中を押してくれるじゃないか」


「あら? もしかして、お父様が話したのかしら?」


「ああ。色々話してくれたよ。私のことを誉めてくれてたようで、ありがたいよ」


 クラウスが皮肉交じりに答えると、スタールが楽しそうに笑った。


「楽しく話ができたようで、私も嬉しいよ。息子も君のことを気に入ってくれたみたいだし、いいことだ」


「光栄なことです」


 でも、確かに悪い気はしなかった。それにユリカは必ず帰ってくるとヘルベルトに伝えた。そのヘルベルトからは、二人で無事に帰ってきてほしいとも言われた。


 あの人にそう言われるのは嬉しいし、絶対に帰ってこようと思えた。


 ユリカの言葉はヘルベルトの心を動かした。そんなユリカのことをヘルベルトは信じることができるのだ。


 きっと、家族というのはこういうものなのだろうと、クラウスはぼんやりと思った。



 そんなぼんやりとした思考は、一気にクラウスの脳を覚醒させた。



「……そうだ。もしかしたら……」


 クラウスが呟く。その様子をユリカたちが怪訝そうに見つめる。


「クラウスくん。どうしたのかね?」


 スタールが問いかける。しかし、その問いかけに答える前にクラウスが声を上げた。


「閣下! あの方は今、どこにいますか!?」




 夜もすっかり深くなっていた。王都はすっかり静かになり、人々の姿も少なくなっていた。


 王宮も眠りに入る準備をしていた。そんな王宮の一室で、フリードが一人過ごしていた。


 フリードは先程のスタールたちとの会話を思い出していた。国民に演説し、団結を呼びかけてほしい。それは確かに君主としてやるべきことかもしれない。彼が背負うべき責務かも知れない。


 戦争が近づいている。それはわかっている。君主となった以上、戦争が来ることは覚悟していた。国民を戦場に向かわせること。多くの国民に苦しませてしまうこと。それは君主が背負わなければならない覚悟だし、フリードもその覚悟はしていた。


 しかし、それは君主としての彼の理性の話だ。彼の中にいる、父親としての彼は悩んでいた。


 軍務に就いている息子を戦場に向かわせてしまう。それは父親である彼には辛いことだった。


 王族である以上、国民と共に責務を果たすのは当然のことだ。だが、君主であるフリードがそう唱えても、父親であるフリードはそれを受け入れることができないでいた。


 そんな自分が国民に団結を説くなど、そんな資格があるとは思えなかった。


 自らを律し、自分に対しても厳格であるフリードには、そんな弱い自分を許せないのだ。


 ため息を吐く。スタールには申し訳ない気持ちもあった。しかし、自分が迷いを抱いたままなのに、国民に苦しみを強いるなど、それこそフリードにはできなかった。


 自己嫌悪が彼の中で渦巻いていた。彼は嫌な気持ちから逃れようと、もう寝ようと立ち上がった。


「陛下。まだ起きていらっしゃいますか?」


 その時、ドアの方から声が聞こえてきた。それはスタールの声だった。


「宰相か? 何かあったのか?」


「申し訳ありません。もう一度お話をさせていただけませんでしょうか?」


 宰相の言葉にフリードは怪訝に思った。すでに断っているのに、まだ自分を説得しようとしているのか。おかしいとは思ったが、フリードは

入室を促した。


「開いている。入りなさい」


「失礼します」


 ドアを開いてスタールとクラウス、それにユリカもいた。


「……何?」


 その時、フリードは目を疑った。彼らの後ろにいる人物を見て、何故彼がここにいるのか、一瞬理解できないでいた。


「失礼します。父さん」


「ヴィクトル? ヴィクトルなのか?」


 そこにいたのは、フリードの息子であるヴィクトル王太子だった。


 フリードによく似ていた。真面目そうな印象は父親譲りで、同時に柔らかさも持ち合わせた人物だった。そんな彼を前に、フリードが明らかに動揺していた。


「どうしてここに? 駐屯地からここまでやって来たのか?」


「スタール閣下たちが駐屯地まで私を訪ねてきたのです。私に頼みたいことがあると」


 王都にある陸軍の駐屯地。フリッツはそこで軍務に就いていた。彼も駐屯地で消灯の準備をしていた時、スタールたちが彼を訪ねてきたのだ。


 駐屯地からそのままやって来たのだろう。ヴィクトルの軍服が少し乱れているのがわかった。


「君たちがヴィクトルを連れてきたのかね?」


「申し訳ありません。ですが、どうしてもお二人に話をしてほしかったのです」


 フリードの問いかけにクラウスたちは謝罪した。本来なら罰を受けてもおかしくなかった。しかし、そうまでしてでも、ヴィクトルをここに連れてきたかったのだ。


「……それで、話したいこととは何かね?」


 フリードはそれだけ質問した。その問いかけにヴィクトルが一歩前に出た。


「彼らから聞きました。父さんは私を戦場に向かわせることに迷っていると」


 ヴィクトルの言葉を受けて、フリードの視線がクラウスたちに向けられる。話してしまったのかと、非難めいた視線だった。


 その視線を受け止めて、クラウスが一歩前に出た。


「申し訳ありません。陛下。ですが、私はどうしてもお二人に話をしてほしかったのです」


「話、とは?」


 フリードの視線が真っ直ぐにクラウスに突き刺さる。それを受け止めてなお、クラウスはフリードに立ち向かった。


「ヴィクトル様の御言葉を、ヴィクトル様の心の内を知ってほしいのです。殿下のお気持ちを、どうか聞いてあげてほしいのです」


 クラウスがそう伝えると、ヴィクトルがフリードに近寄った。


「父さんは、そんなに私のことが心配ですか?」


 ヴィクトルの言葉が投げかけられる。その言葉にフリードの顔が歪む。


「……心配に決まっている。大事な家族が戦争に行ってしまうのだ。戦争は恐ろしいものだ。人間同士で銃を向け合い、殺意をむき出しにし、死神が闊歩する戦場を駆けるのだ。そこでは常に死神の大鎌が命を刈り取ろうと狙っている。誰も彼も関係なく。死神は唐突にやって来るのだ。そんな戦場にお前を行かせるなど、私は恐ろしい」


 戦争は誰に対しても平等だ。そこでは死神が目を光らせ、誰かを連れて行こうと狙っている。身分や生まれも関係なく。死神はどこにでも現れ、誰であってもその大鎌で命を刈り取っていく。


 過去に多くの王族が戦場に向かい、そこで命を散らしたことがあった。ヴィクトルが彼らと同じ道を歩まないとは限らないのだ。


 フリードの声が少し震えていた。それは大切な家族を想うからこそ出てくる言葉だった。


 その時、ヴィクトルが前に出た。彼は真っ直ぐに父を見つめ、語り掛けた。


「父さん。ありがとうございます。心配してくれて」


 静かに、微笑みながら語り掛けるヴィクトル。その笑みを絶やさぬまま、彼は父に伝えた。



「父さん。私は戦場に行きます。みんなと一緒に、戦いに行きます」



 あまりに自然と伝えられる言葉。そこに悲壮感といったものはない。それが当たり前だと言わんばかりの自然さだった。


 その言葉を聞いたフリードが動揺していた。


「……何故だ? 怖くないのか?」


 思わず訊き返すフリード。すると、ヴィクトルが微笑みを浮かべながら口を開いた。


「怖いです。とても、怖いです」


 戦争が怖いと、彼は言った。それは当たり前のことで、誰もが同じように抱く感情だ。


 しかし、それでもヴィクトルは微笑みを絶やさなかった。


「戦争は怖いです。でも、それ以上に私は、この戦争を乗り越えたいのです」


 その言葉にフリードが顔を上げた。フリードがヴィクトルを見ると、そこには力強く笑みを浮かべるヴィクトルの姿があった。


 ヴィクトルの顔に滲み出ていたものがあった。それは勇気と呼ばれるものだった。


 ヴィクトルが語る。彼の中にある勇気を言葉にして、彼は父に語り掛け始めた。


「父さん。あなたは私に色々な話をしてくれました。この国の歴史を。この国の素晴らしさを。あなたがどれだけこの国を愛しているのかを。自分はその話が好きでした。自分が生まれ育った国はとても素晴らしくて、父はそんな国を愛していて、そんな大事な国をずっと守ってきたのだと。私はその話を聞くのが楽しくて、この国がとても好きでした」


 グラーセンは何人もの国王によって統治され、栄えてきた。かつてのクロイツ帝国と共にあった時代も、繁栄した時も、敗戦によって危機に直面した時も、その度に君主は祖国と国民を統治し、共に同じ時代を生き抜いてきた。


 フリードもグラーセンを統治してきた。彼の父から受け継いだこの国を、今日この日まで守ってきた。そんな話を聞かされて育ってきたヴィクトルが、フリードに伝えた。


「私は、あなたが守ってきたこの国で生きていきたい。あなたが守ってきたこの国を、私も守りたい。あなたが守ってきたこの国を、あなたと共に歩いていきたいのです」


 その言葉にどんな力があったのか、フリードは弾かれたように顔を上げた。そんな父の顔を見て、ヴィクトルはさらに続けた。


「父さん。私には夢があります」


「……夢、だと?」


 フリードの視線が釘付けになる。その視線を受け止めて、ヴィクトルが笑って答えた。


「この戦争で終わった後にできる新しい国。私たちが作った国を、あなたと一緒に生きていきたいのです」


 その言葉にフリードが目を見開いた。その言葉の持つ意味に、フリードが顔をこわばらせた。


 この戦争に勝てば、かつてのクロイツ帝国の統一が果たされるだろう。そして、それは新たに生まれる国となる。


 それはつまり、ヴィクトルたちが作った国となるのだ。


「私たちが作った国を、あなたと共に歩きたい。あなたと共に生きていきたい。あなたに私たちの国を見てほしい。それが、私の夢なのです」


 ヴィクトルは言った。共に生きたいと。それが自分の夢なのだと。そんな彼の夢を聞かされて、フリードはどう思ったのだろうか? 彼はただただ、ヴィクトルの想いを受け止めていた。


 そうして、ヴィクトルは最後に言った。


「だから、私は絶対に帰ってきます。私の夢を叶えるために」


 自分が戦場に行くのは、夢を叶えるためだと。そのために絶対に帰ってくるのだと。


 それは夢であり、願いであり、そして、絶対に帰ってくるという決意だった。


 そう語るヴィクトルをじっと見つめるフリード。


 彼が受け取ったのは、息子の言葉であり、大事な想いだった。


 フリードが息子であるヴィクトルを想うように、ヴィクトルもまた、父であるフリードを想っているのだ。


 彼の願いは父であるフリードのためであり、それを叶えるために戦場に向かうのだ。


 そして、彼はその願いを叶えるために、ここに帰ってくると言った。


 その想いを、言葉を受け取ったフリードは、その言葉を噛み締めた。彼は目を閉じて、じっと黙り込んでいた。


 少しの間そうしていると、彼は胸元に手を入れた。彼が手を取り出すと、その手に何かが握られていた。彼はそれを大事そうに息子の前に差し出した。


 フリードが差し出したもの。それは勲章だった。勲章としては位の高いものではない。むしろ国王であるフリードが身に着けていたことに、見ていたクラウスは意外だと思っていた。


 その勲章を宝物のように見つめながら、フリードが言った。


「これは私が若い頃、軍務に就いて最初に授かった勲章だ」


 歴代の国王は王太子時代に軍務に就くことになっている。それは当然、フリード国王も同じだ。彼もまた王太子だった時があり、軍にいた時代があったのだ。彼の手に握られていたのは、その時に叙勲された勲章だった。


「これはその時に、はじめて演習に参加した時にもらった勲章だ。位の高いものでもないし、勲章としては大した価値のあるものではない。だが、初めてもらった勲章は、私にとって一番の宝物なのだ」


 フリードが初めて王太子という役職を脱ぎ捨てて、一人の軍人となった時代。多くの戦友に囲まれ、共に食事を取り、同じ宿舎で寝泊まりしていた。彼にとって初めての体験で、忘れられない青春の思い出だった。


「この勲章を受け取った時、私はとても大きな勇気をもらった。どんな困難にも負けない。誰にも負けない無敵の力を得たような気がした。この勲章は私が一人前になれた証で、多くの戦友との絆、そのものなのだ」


 フリードはそう語り、その宝物をヴィクトルに差し出す。


 その勲章を受け取ったヴィクトルは、その勲章をじっと見つめた。フリードが口を開く。


「お守り代わりに、お前に貸してやろう。きっと戦場で、お前を守ってくれるだろう」


 その言葉にヴィクトルが、そしてクラウスたちが顔を上げた。彼らの前でフリードが微笑んだ。


「無事に帰ってきてくれ。お前たちが作る国を、私に見せておくれ。約束だ」


 それはおそらく、ほとんどの人間が見ることの叶わない微笑みだ。


 フリードが浮かべる微笑みは、国王としての物ではなく、家族を想う父親としての微笑みだった。彼は初めて、父親として微笑みを浮かべていたのだ。


 父の言葉を受け取ったヴィクトルが、力強く笑った。


「絶対に帰ってきます。みんなと一緒に、絶対に帰ってきます。どうか、待っていてください」


 その言葉がフリードにどう響いたのだろうか。彼はその言葉を受け止め、微笑みを返すのだった。


 息子を見守る父。返ってくると約束する息子。


 彼らは何年かぶりに、親子として笑みを交わすのだった。


 その光景をクラウスたちはじっと見つめていた。きっと二度と見ることのできない、奇跡の光景に違いない。彼らはその光景を自らの記憶に刻みつけようと、じっと見つめるのだった。


 しばらくそうしていると、フリードがクラウスたちに向き直った。


「スタール宰相」


「はっ! 何でしょうか!」


 そこにいたのは、この国を統べる君主であるフリードの姿だった。彼にはもう迷いはなく、ただ責務を果たさんとする、君主としての姿しかなかった。彼は決意ある顔を見せていた。


「開戦の演説、承った。すぐに日程の調整を頼む」


 その言葉にスタールも、クラウスたちも顔をほころばせた。フリード国王による開戦演説が実現する。君主から国民に語り掛けられる。


 計画が実現することに、彼らは静かに喜んでいた。


「はっ! 直ちに調整に入ります」


 スタールの答えに頷くフリード。その時、フリードがクラウスに顔を向けた。


「息子を連れて来てくれたのは、君かね?」


「は、はい! 勝手なことをしてしまい、申し訳ありません!」


 王太子を連れ出すなど、処罰が下されてもおかしくはなかった。だが、フリードにそれを咎めるような雰囲気はなかった。


「いや、、君には感謝しなければなるまい。戦場に向かう者の気持ちなど、考えたこともなかった。彼らがどう思っているのかを、考慮しなけ

ればならなかった」


 フリードはそう言ってクラウスに頭を下げた。


「息子を連れて来てくれて感謝する。息子と話をしなければ、私は何も知らないままだっただろう」


 父に倣うように横にいたヴィクトルも礼を述べた。


「私からもお礼を。クラウス殿。ありがとうございます」


「い、いえ。お役に立てたのなら光栄です」


 クラウスはそう言うと、後ろにいたユリカを見た。


「? 何? どうかした?」


 見つめられて首を傾げるユリカ。本当ならクラウスは、彼女とヘルベルトにお礼を言いたかった。


 フリードとヴィクトルを会わせる。それはヘルベルトの話を思い出したからだった。


 ユリカを心配していたヘルベルト。しかしその心配はユリカの話で消え去ったと彼は語っていた。行く者と待つ者。戦いへ赴く者の想いもまた、知るべき言葉なのだ。


 その話を思い出して、クラウスはフリードたちに話をさせることを思い付いたのだ。


 息子のヴィクトルの言葉なら、フリードの心を動かせるかもしれない、と。


 もしヘルベルトと話をしていなければ、今この場にいることは出来なかっただろう。


 これもヘルベルトとユリカのおかげだった。クラウスはユリカを見つめた。


「何? 本当に何かあったの?」


 困惑気味に笑うユリカ。クラウスは何も言わず、内心でだけ感謝した。




 フリードによる開戦演説が行われることが決定すると、その知らせは王国全土に広まった。


 スタールは日程の調整に入り、大急ぎで準備に取り掛かった。また、演撮影を依頼されたアントンは写真機の準備に入り、念入りに計画を立てた。


 そうして、演説の日が来た。演説の舞台は参謀本部だった。

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