【No. 007】アーベルとエラと森の魔女【残酷描写あり】
森の魔女は百人の女を
エラが森の魔女に
エラは近隣の村のどこにでもいるような女だった。ふわふわとした小麦色の髪に、緑色の瞳、日に灼けた頬にはそばかすが浮いていた。働き者だから手だって傷だらけで荒れていた。水汲みでよく歩くから、
それでも、アーベルにとっては、誰よりも可愛らしい愛しい妻だった。同じ村で同い年で仲良く育ったアーベルとエラは、十六の年に当然そうなるように結婚した。
森の魔女に
アーベルはエラを取り戻すため、剣を手に入れ、森の魔女の元へ向かった。
彼の他にも女を取り戻そうと何人もの男が森の魔女を殺しに行ったが、誰も戻らない。それを知っても、アーベルはエラを諦めることができなかった。
エラが
どれほど
森の魔女はこれまでに
アーベルの目の前に、女の顔が入れ替わり立ち替わり現れては
アーベルを
女の顔も、胸も
アーベルの周りには、何人もの女の
ああ、そしてようやく、アーベルはエラの指先を見た。
働き者の傷だらけの手。アーベルに向かって伸ばされたその腕を掴んで引っ張れば、その向こうから小麦色の髪の毛と緑色の瞳が見えた。日に灼けた頬にはそばかすが浮いている。
その胸、
折り重なるたくさんの女の
「エラ、エラ、会いたかった、エラ」
きつく抱き締められたエラは、その唇に笑みを浮かべる。
「アーベル、ええ、アーベルなのね、ここまで来てくれて嬉しいわ、わたし、とっても嬉しい」
ふと、アーベルは腕を
エラはアーベルを見上げて、それはそれは美しく
「アーベル、わたしまたあなたと暮らせるのね、嬉しいわ」
確かにその顔はエラだった。その声もエラだった。けれど、それを
そのことに気付いて、アーベルはエラを突き飛ばして剣を振り上げた。
突き飛ばされたエラは、地面の上から剣を構えるアーベルを見上げた。その笑みはやはり、どこまでも美しかった。
「せっかくまた会えたのに、どうしてなの、アーベル」
アーベルは口を開いたが、何も言わずにまた唇を引き結んだ。剣を握る手に力が入る。
エラの顔が
「わたしの中に
振り上げたままのアーベルの剣先が、力の行き先を
エラの両腕がアーベルに向かって差し伸べられる。アーベルを
「アーベル、わたしは優しい
エラの顔で、エラの腕で、エラの胸で、
剣を振り下ろせば終わるのだと、アーベルは悟っていた。けれど、アーベルの剣先はまだエラの頭上で
「お前はエラじゃない、お前はエラじゃない」
「わたしはエラよ、そうでしょう、アーベル、
「違う、エラじゃない、お前はエラじゃない」
アーベルはそして、その剣を振り下ろしただろうか、それとも手放しただろうか。
森の魔女は百人の女を
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