応募作品
5月1日 公開分
【No. 001】私の彼はあなたに染まり【性描写あり】
初恋は忘れられない。特に女の子の場合はそうだ。
中学の頃、初めて好きな人ができた。遅い方だと思う。
ただ幸運にも、と言うべきか、その男子は人気者タイプじゃなくて、どちらかというと飄々とした、一人を楽しむタイプだった。私は彼と仲良くなれた。それが私の初恋の、唯一のラッキー。でも卒業を機に、彼とは会わなくなった。それでよかったのだと思う。思い出という真空パックの中にしまっておけるから。
その後、私は高校で告白してきた男子と付き合うことになり、一緒に受験を乗り越え、晴れて大学生になった。彼は違う大学だったけど、週に三度、バイト終わりや休日に会って、デートをする仲だった。彼とは色々な初めてのことをした。楽しかったし、気持ちが穏やかになれた。付き合ってよかったとも思う。
でも、そんな安寧も、あの人に会うまでだった。
大学の、食堂で。
チキン南蛮の定食を食べていた時、急に私の前の席に「ここ、いいですか」と言って座ろうとしてきた男子がいた。食堂は人でいっぱいで、特に断る理由もなかったので、「あっ、どうぞ」と応じた。そこで箸が止まった。
彼だった。私の初恋の彼。彼にそっくりな男子が、私の前に腰かけたのだ。
彼はラーメンを食べていた。思わずその顔に見入る。だが、あんまり見つめても……と思い、私は定食の味噌汁で顔を隠す。いや、そんな、まさか、でも、ここで?
その日から、食堂に行くのが大変になった。
また彼に会いたい。彼が思い出の彼か確かめたい。そう思いながら以前彼に出くわした時間帯に食堂に行くことが増えた。そして、何度か会えた。友達と食事しているところ、一人でテキストを広げているところ、女子と親し気に……ああ、憎らしい……話しているところ。色々見た。そして彼が同じ大学の経済学部で学年も同じであること、サークルはバドミントンであることを突き止め、いよいよ私の初恋の彼疑惑が濃くなったところで、私は止まらなくなった。まず付き合っている彼に言った。
「髪、伸ばしてみたら?」
「何で?」
「流行ってるみたいよ」
嘘だった。ただ初恋の彼の髪が長かっただけ。
「こういう服はどう?」
「経済について勉強しようよ」
「バドミントンしよう」
最高だった。私の方から彼を求めることが増え、彼としても嬉しいのだろう、会うたびに肌を重ねた。
彼にのしかかられながら、あるいは彼の上に跨りながら、私は歓喜する。
初恋の彼に染まった彼。彼は今、私だけのもの。
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