5/31(火)対チーターズ敗戦 0-1 【25勝28敗1分け】

5月31日(火)21時半——。鳴尾浜球場


「……さて、帰るか」


試合終了を見届けて席を立つ。スコアーは0-1。相手は今年入ったばかりの新人だから勝てると思ったのだが、むしろ、新人だからこそ、データーが乏しく負けてしまったともいえる。それに、初甲子園と言っていたから、ひょっとしたら張り切ってしまったのかもしれないな。


まあ、それでも、目標であるAクラスまであと2ゲーム差。首位とは7.5ゲーム離されているものの、自力優勝が消滅したわけではない。まだまだこれからだ。


「あ……百南球団社長だ」


む……記者に見つかってしまったようだ。


「社長。今日は完封負けでしたが、何かコメントは?」


「折角のたこやきゲーム。相手に楊枝がついてしまったのは残念でしたな。明日こそは、うちのスコアーボードに楊枝を並べてくれることを期待しましょう」


たこやきゲームとは、スコアーボードに「0」が並ぶことで、楊枝がつくとは「1」の数字、つまり得点が入ることを意味する。そのことに気づいたのか、記者が笑った。


そして、ふとスタンドを見る。お客様は静かに席を立ち、列を作って家路に向かっていた。そこには怒号や罵声などはない。いつものように、ゴミ拾いをしてくれているファンすらいる穏やかな風景だ。


(もし、あのとき矢崎監督を強制的に休養させていなければ……)


そう思うとぞっとする。すでに辞任を決めて目標を失っていた彼では、ここまで盛り返すことはなかっただろう。もしかすると、今日の敗戦で自力優勝が消滅して、ファンの怒号と罵声が聞こえる中で、さっきの記者に自分は頭を下げてお詫びの言葉を述べらされていたかもしれない。


(ああ、おそろしや……)


まあ、それはあくまで仮定の話だ。考えても仕方ない。

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