5/20(金)影の内閣

5/20(金)10時半——。大阪


「しかし、『統合作戦本部長』って、なんか名前はすごいけど、詰まるところ何をするんですか」


モニターの向こうの島谷が笑いながらそう言った。川玉も紅星も笑っているところを見ると、同じ意見のようだ。


「まあ、いわゆるアレよ。毎年同じピッチャーに同じようにやられてるやろ?あれを何とかするってことよ。……知らんけど」


自分ではうまく説明できたつもりだった。しかし、画面の向こうではどいつもこいつも大笑い。いつも寡黙な上柳やマイペースな丼川までもが笑っている。


「……つまり、スコアラーが集めてきた情報を解析して、その上でどう戦うのかを首脳陣並びに選手たちにわかりやすくアドバイスを行う部署……そういうことなのですね」


おお、さすが島谷。まったくそのとおりだ。伊達に早生田を卒業してはいないな。


「一応、球団には多くの人を雇うことは伝えてある。1チーム辺り5名を配置させて情報収集させるつもりだから、12球団あわせて60名……」


「60名?それはまた大規模な……」


紅星が驚いている。まあ、いつも渋ちんの球団の姿勢を思えば、無理からぬ話ではない。人は、出身チームを問わず、元プロ野球選手を対象に求人を出す予定だ。


「しかし、12球団って……うちのチームも?」


「ああ、そうだ。アドバイスを与えても、いつも全員がそのとおりにできるわけじゃないだろう?できなかった点を振り返って、分析することも大切だ。うちのチームを担当する者にはそういった仕事をしてもらう」


そういうと、画面の向こうから「たしかに」とか「なるほど」といった声が返ってきた。


「……で、その中で我々の役割は、上がってきた情報を整理して方針を決める。そういうことですか?」


「そうだ。だが、目的はそれだけじゃないぞ。俺は、来年このメンバーで戦いたいと思っている。その上で、この1年間を使って他球団の情報を研究して臨むのは悪くないと思ったわけだ」


今の辛井監督代行は、どのみち今年までなのだ。最近、元スネークスの越智が色気を見せてあれこれしているようだが、今回の一件で実績を残すことができれば、次期監督は間違いなく俺で決まるだろう。


いつかの悔しさを栄光で上書きするためにも、失敗は許されない。会議はその後も続いた。

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