第44話
ミットライトの寝室に、書きかけの手紙があった。一番上には、「ヴィーレへ」と書かれている。
「ヴィーレへ
君を騙してすまないと思っている。
もうすぐ、私は死んでしまうだろう。それまで君は、君の知らなかった世界を見てくるのがいいと思ったんだ。
君と過ごした日々は楽しかった。僕はずっと人間だったことを後ろめたく思っていた。けれども君のおかげで、そんなことはどうでもよくなったんだ。
何度も書き直していて、この手紙も何を書けばいいのかわからないけれど 」
ゴミ箱には丸められた紙がいっぱい詰まっている。
二つの墓を造った。一つは僕らの伝統的なもので、小さな四角い箱にハードディスクの一部を入れて埋めた。もう一つは人間の一般的なもので、ミットライトに残っていた人間の部分を木箱に詰めて埋めた。
自分の墓も作っておこうかと思ったが、埋める人がいないことに気がついた。ミットライトの墓の前に、はげ落ちた自分の部品の一つを供えた。
一人きりの夜が来た。天窓の向こうには、星空が広がっている。僕はミットライトの使っていた椅子に腰かけ、いつまでも空を見続けていた。
この世界に最後の一人。それを受け入れる覚悟はまだできていない。けれども、それはちっぽけなことのようにも思えた。終わっても、またどこかで始まるのだろうから。
あの星のどこかにも、僕のように一人きりで空を見上げる者がいるだろうか。
データの中のみんなは、今後どのようになっていくだろうか。
このぐちゃぐちゃな想いはいつになったら整理されるだろうか。
「誰か教えてくれよ、イェ」
夢の中へと落ちていく。
「ヴィーレ」
呼ぶ声がする。誰のものか、知っている。
「頑張ってるかい」
問いかける。
「ええ……。あなたは」
「そうだね、僕は……」
「会いたい」
「えっ」
「会いたい」
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