第22話

 地面との軽い衝撃はあったものの、機体は無事に着陸した。今更だが、これだけの荷重に耐えうるタイヤも開発されているのだ。今に巨大戦闘ロボットでも出てくるんじゃないか。そうなれば驚愕の、ご先祖様との対面だ。

「まさか、ここに来るとは」

 ヴェルタは眉をひそめ、周囲を見渡している。びくびくしている、という形容があっているようだ。凝視してみると、フューレンも少し表情が硬い。これは緊張という状態だ。

「大丈夫でしたでしょうか」

 機体の状態を確認すると、フューレンは後部座席の後ろから小さな壺を取り出した。表面はつややかで黒く光っており、ふたはぴかぴかした素材の布でしっかりと密閉されている。二人は何も口にしないが、その中に何が入っているのかは聞くまでもない。返事はない。僕に聞こえていないだけかもしれないが。

「はやく、行かないとな」

 ヴェルタが、振り向いたその時だった。銃声が鳴り響き、鮮血が宙に舞った。

「ぐぁっ」

 射抜かれたのは、右足だった。うずくまるヴェルタ。

「……くそっ」

 血は止まらない。流血というのは見た目にもいかにも痛そうだ。

「味方がいると思ってたんですが」

「正確にいえば、中立地帯……のはずだが」

 自然と、ヴェルタをはさんで僕とフューレンは背中合わせになり身構えていた。逃げ場がないのでどうしようもないのだが、それでも二人の思惑は一致していたようだ。族長を守らなければならない。フューレンの腕の中あるのは、僕にとっても希望なのだ。

 人数は八人。皆、黒く長い帽子をかぶっていた。手には異様に長い、動物を追う時に使ったとされる「猟銃」のようなものを携えている。顔には深い皺が刻まれているのが、ここからでも見てとれる。

「ヴェルタ、どれぐらい痛む」

「言い表せねぇよ!」

「急所ならば苦しまずに済んだ。殺す気はないと信じたいね」

 ちらりと振り返ると、ヴェルタの額には脂汗がにじんでいた。顔色も悪くなっている気がする。

「今度こそ逃げるのは無理だな。すまない、私の力不足だ」

「フューレン……」

「あとは、最善を祈ろう」

「僕には残念ながら祈る対象がないので、最善を願うことにします。いいですね、イェ」

「……かまわない」

 フューレンは壺をゆっくりと地面に置き、両手を挙げた。僕も、それに倣った。

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