WONDERFUL WONDER WORLD (改訂版)

隅田 天美

プロローグ 1 夢で会いましょう その一

 夢は淡いものだ。

 目が醒めればどんな大冒険も、どんな恋愛も、掌の雪のように消えてしまう。

 それまでの『現実』が『幻想』だったと気が付いたときは、ほんのわずかな時間だが、大半の夢を忘れている。

 だが、世の中には、その『幻想』つまり夢をコントロールできる者がいるという。


 男は豪奢なホテルの中にいた。

 エントランスのカフェで一人だ。

 いや、このホテル自体、異様なまで静寂を称えている。

 本来いるはずの店員やドアボーイ、案内係、客……


 窓から差し込む、陽の光は温かい。

 理想の世界だ。

 誰もいない、という夢だと男ははっきり理解していた。

 騒がしい観光客も、煩いベルの音も、鳥の鳴き声すらしない。

 全てが完璧な世界だ。

 男は、この理想郷をより完璧にするために、少し目を閉じた。

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