第24話 いざ、ラーレン領へ1

 荷物は少し多い。

 なんせ何日の旅になるのかわからないからな。

 リュックには1週間分の食料。

 1週間分積んではいるが、出来るだけ道中で調達していこうと思う。

 飲み物は魔法で出せないのか? と思うかもしれないが、魔法で出したものは魔力に汚染されていて、飲むと腹をくだす。

 食料の多くは栄養剤だ。

 道中の獣肉ばかり摂っていたら、栄養が偏り、病気にかかるかもしれないからだ。

 フォーリンはトリス王国付近の領地生まれなので、案内はフォーリンに頼んでいる。

 というか、フォーリンの方から「任せてください!」と言ってきた。

 不安ではあるが、私も一応地図を持っているので大丈夫だろう。


 当初の目的地は、ブレイブ領だ。

 そして、ブレイブ領で最終準備を経て、目的地であるニーナのいるであろう、悪魔の住まう廃墟へと向かう。


 ブレイブ領に行くまで当初は馬車を使う。

 ブレイブ領へと行くにはそれが一番早い。

 当初はラーレン領までだ。

 ラーレン領まで約1日。

 そしてラーレン領からブレイブ領まで約1日。

 計2日で着く。

 そこからはフォーリンの出番だ。


 現在馬車乗り場にいる。

 集合時間までまだある。

 なぜ早く来たかというと、フォーリンより遅くに来るのは癪だから……それだけだ。


「すみません。待ちましたか?」


「いや、私もさっき来たばかりだ」


 本当は20分近く待ったが、それは私が早く来過ぎているだけなので言わなかった。


 フォーリンは昨日買っていた服装に大きな杖。

 そしてポーチといういたって普通のスタイルだ。

 ん待て、こいつ食料とかはどうするつもりだ?

 そのポーチに入っているとは考えられない。

 もしや、私頼りなのか?

 できないことはないが、こいつ冒険を舐めてないか?


「おい、荷物はどうした?」


「? ここにありますけど……」


「違う! 食料といったものはどうしたと聞いている!」


 つい強く言ってしまった。

 私の物言いにビビってしまっている。


「す、すみません。あ、あの、これに入ってます」


 そう言って巻物を見せてきた。


「これは空間魔法が埋め込まれていて、中に食料などが入ってます」


 何!? そんなものがあったのか……

 こんなに荷物を持っている私がバカみたいではないか。


「あの、レイク様のお荷物も入れましょうか?」


 フォーリンが気を遣ってそう言ってくる。

 少し恥ずかしいが、これからそんなこと言ってられない。

 ありがたく、利用させてもらおう。


「済まない、少し強く言ってしまった。よろしく頼む」


「わかりました」


 フォーリンはそう言うと、巻物を開き、私の荷物を巻物に当てて「コネクト」と言った。

 その瞬間リュックが巻物の中に入っていった。


「必要になったら私に言ってください」


「あぁ、ありがとう」


「お客さん、そろそろ行きますよー!」


 馬車の操縦手が私達に言った。

 これから1日間揺られ、ラーレン領へと行く。

 蛇足だが、この馬車には魔除けの加護がついている。

 文字通り魔物が寄りにくくなる。

 どうしてついているかと言うと、ガラハ王国付近になると魔物の数が多くなるからだ。

 この世界的に魔物が少ないのはランス王国ぐらいなのだ。



ーーー



 魔除けの加護のお陰が魔物が一体も寄り付いてこない。

 お陰で順調な移動が行えている。

 ただ、そのためかなり暇だ。

 ここ最近ずっと忙しかった為、より暇に感じる。

 まだ1時間しか経っていない。


 フォーリンもそうなのかうつらうつらとしている。

 そして私の肩に寄りかかってきた。

 まあ、この1週間はとても忙しく、今朝も早かったため眠くなるのは仕方ない。

 気持ちよさそうな寝顔だ。

 よく見るとまつ毛がとても長い。

 肌は傷も汚れもない透き通る白だ。

 つい見惚れてしまった。

 肩に程よい重さを感じる。

 不思議とその重さが心地よい。

 寝ているフォーリンを見ているとこちらも眠くなってきた。

 まあ、何かあったら馬車の操縦手が起こしてくれるだろう。

 そう思い、私は寝ることにした。

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