死ぬ理由
死ぬ理由を求めていた。
この身に流れる流氷のような真っ赤な血が灰のように散り消えていく様を、私は求めていた。誰かが死ぬんじゃない。誰かが命を絶つんじゃない。私が、私を殺す。その理由を求めていた。
生きて居られているだけマシ。もっと辛い生活を強いられている人がいる。我々は幸福なんだ。いじめ如きで死にたいなんて口にするな。お前の辛さはあの人たちの辛さとは比較にならない。生きていく大変さも社会も知らないあなたにそんなことを言う権利はない。君の辛さはよくわかる。だけど、同じくらい辛い思いをしている人たちもいるんだ。けっして君だけじゃない。お前だけじゃない。あなただけじゃない。
嗚呼、くそったれだ。
わかるはずがない。わかれるはずがない。他者の気持ちも考えも誰かが理解できるはずがないんだ。私たちは人間という種族。それでも、『私』という個体。
他者とどうして比較されなければいけない。別人の別人格の別次元の人間と、どうして比べないといけない。意味がわからない。
どうして私の気持ちがわかる?どうして私をこけにする?どうして私を認めない?どうして、私に死ぬ権利をくれない?
私の痛みと誰かの痛みが一緒であるはずがない。
私の苦しみと誰かの苦しみに優劣が付くはずがない。
私の感情と誰かの感情が繋がるはずがない。
なのにどうして、私の気持ちを決めつける。
ふざけるな。私は私で、あなたたちの所有物じゃない。
嗚呼、死にたい死にたい死にたい死にたい。それすら許されないこの世界なんて滅んでしまえばいい。
嗚呼、死にたい死にたい死にたい死にたい。私を強制する人間なんて死んでしまえばいい。
私は死ぬ理由を求めている。
この肌に潤う生命力が尽きることを求めている。もしくは、視界のすべてが闇と赤だけに染まることを。
人間なんて滅んでしまえばいい。そう、何度も思いながらそれでも死ねない私は死ぬ理由を求めている。
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