第18話 これぐらい倒せば受かりそうですか
「ギギェアッ!」
「ギュオッ!」
「ギュエェッ!」
巣の中を進んでいくと、早速ゴブリンの集団に遭遇した。
訳の分からない声を発しながら襲い掛かってくる。
「「「ギャッ!?」」」
剣を一閃、まとめて両断する。
「い、今なにしたのっ!?」
「剣で斬りました」
「剣筋がまったく見えなかったんだけど!?」
メレナさんの声が洞窟内に反響する。
そんなに速く斬ったつもりはなかったんだけど……まぁ薄暗いからあまり見えなかったんだろう。
それからも続々と湧いてくるゴブリンを倒しつつ、洞窟を奥へ奥へと進んでいく。
「あ、そこ気を付けてください。罠が仕掛けられてるみたいなんで」
「えっ? よ、よく分かったわね……」
「原始的な罠なので簡単ですよ」
そのとき暗闇の奥から躍りかかってくる影があった。
ガキンッ!
振り下ろされた剣を受け止める。
「っ! ゴブリンソードマン!? 上位種じゃないの! やっぱり危険よ! すぐに撤退するべきだわ!」
「え? もう倒しましたけど」
「……は?」
僕の足元には胴体を輪切りにされたゴブリンソードマンが転がっていた。
普通のゴブリンより一回り身体が大きくて、剣を使うゴブリンだ。
「い、いつの間に……」
剣を受け止めたときにはもう斬っていたんだけど。
ヒュンッ!
今度は矢が飛んできた。
剣で弾き落とす。
「な、なに今の!? 矢!?」
「どうやら奥にゴブリンアーチャーがいるみたいですね。数は六匹」
「ね、狙い撃ちにされるわよ!?」
「あ、大丈夫です。もう倒したので」
「えええっ!?」
岩の陰に隠れながら矢を放とうとしていたけど、〝縮地〟を使って接近し、岩ごと両断しておいた。
さらに進んでいくと、少し広い空間へと出た。
奥に魔法の杖を手にしたゴブリンの集団がいる。
「あ、あれはゴブリンメイジだわ! 魔法を使ってくる厄介なゴブリンよ!」
メレナさんが叫ぶが早いか、ゴブリンメイジたちが一斉に魔法を放ってきた。
複数の火の玉が飛来する。
「っ! に、逃げてっ!」
「ただのファイアボールだよね?」
ブンブンブン!
僕は剣を振ったときの風圧だけで火の玉をすべて掻き消してやった。
「な、な、な……」
唖然としているメレナさんを後目に、僕は驚き慄いているゴブリンメイジとの距離を詰めると、全員まとめて斬り倒す。
「えっと……先に進みますよ」
メレナさんがしばらくフリーズしていたので、声をかけた。
するとハッとしてから、
「ま、まだ行くつもり!? ていうか、このゴブリンの上位種の数! どう考えても普通の規模の巣じゃないわ! もしかしたらゴブリンロードがいるかもしれない!」
ゴブリンロードはその名の通りゴブリンたちの王だ。
大規模なゴブリンの群れを率いており、しかもそれが尋常ではない繁殖力によってさらに巨大化していく危険性があるという。
「確実にいると思いますね」
「何で分かるのっ?」
「明らかに他とは違う気配がこの奥にあるので」
「意味が分からない!」
あれ?
魔物の気配を感じ取る練習って、学校でやらないのかな?
「近づいてきた敵くらいは〈気配察知〉スキルを習得すれば分かるようになるけど……」
「その範囲を広げるだけですよ? 頑張れば三百メートルくらい先まで分かります」
「さ、三百メートル……?」
「さすがにお父さんには遠く及ばないですけど」
「あなたのお父さん何者!?」
やがて僕たちは巣の最奥までやってきた。
そこで待ち構えていたのは、百匹近い数のゴブリンたちだ。
ホブゴブリンなどの上位種もいる中、ひと際強い気配を放っているゴブリンがいた。
「貴様ラガ、侵入者カ。我ガ子供タチヲ随分ト殺シテクレタヨウダナ」
「ゴブリンが喋った!? まさか、あいつが……」
「ええ、ゴブリンロードだと思います」
ゴブリンロードと思われるそのゴブリンは、ホブゴブリンほどの体格ではない。
だが細身ながらも発達した筋肉の鎧に覆われており、すごく俊敏そうだ。
「同胞達ヨ、奴ラニ報イヲ与エヨ!」
「「「ギャァァァァッ!」」」
ゴブリンロードの命令に汚い雄叫びで応じて、ゴブリンたちが一斉に躍りかかってきた。
「ひぃぃぃぃっ!?」
メレナさんが悲鳴を上げる。
うん、確かに、これだけの数のゴブリンが押し寄せてきたらちょっと怖いよね。
なにせゴブリンは見た目が醜い。
Gが大量に迫ってきたと言えば、その悍ましさが伝わるかもしれない。
とはいえ、嫌悪感は抱いても、恐怖するような相手じゃない。
だってたかがゴブリンだし。
メレナさんが涙目で今にも逃げそうになっているのは、きっと生理的な嫌悪感のせいだろう。
僕だってゴブリンに取り囲まれるのは御免だ。
なので近づかれる前に対処しよう。
「〝神空斬り〟」
「「「~~~~~~ッ!?」」」
斬撃を飛ばすと、先頭集団の胴体がまとめて泣き別れる。
それでもゴブリンたちは止まらない。
怒涛の如く押し寄せてくるゴブリンに、僕は〝神空斬り〟を連発した。
ゴブリンの死体が山のように積み上がっていく。
「死ネェェェッ!」
そんな同胞たちの犠牲の陰に隠れながら、密かに距離を詰めてきていたゴブリンロードが、僕の死角から剣を振り上げ飛びかかってきた。
ザンッ!
「バ、馬鹿、ナ……」
もちろんそんなことには最初から気づいていた僕は、ゴブリンロードの剣を躱しざまに首を斬り落としてやった。
するとその威光が途切れたのか、死を恐れず特攻してきていたゴブリンたちが急に怯え始めた。
「「「グギャギャッ!?」」
蜘蛛の子を散らすように逃げていくゴブリン。
狭い穴の中に飛び込んだりしながら、あっという間に数が減っていく。
あれをすべて追いかけて仕留めるのはさすがに大変そうだ。
僕はメレナさんの方を振り返って訊いた。
「どうですか? これぐらい倒せば受かりそうですか?」
「巣に入る前から十分だったわよぉぉぉぉっ!」
……あれ?
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