第76話 引き続き、日本です
どこから書きましょうかね。いろいろありまして、日記を書くのすら数日間忘れていた私です。みんな元気でやっております。
北海道は、本当に行ってよかったです。ぜひまた行きたい場所です〜。「広いのでオーストラリアと似てるかも」と数人のかたに言われていたんですが、個人的には「ぜんぜん似てないじゃん……」と思いました(笑)。
どこが違うかっていうと、密度ですかねぇ。北海道は、どこへ行っても山や緑が多かったです。加えて、最大一時間もドライブすれば町や街があります。
オーストラリアは、海も山もありますが、砂漠も多いので、何時間車を飛ばしても人っ子ひとりいなくて、見えるのは地平線のみ、みたいなところがあるのに比べ、北海道は広いといえど、山や海や湖や農地など、常に地平線以外の何かしらが視界にありました。
北海道もオーストラリアも広いので、その中でもいろんな場所があり、一概には言えないんですけどね。
ただ、北海道は本州と比べると、札幌のような都市でも道幅が広く、ペースもゆっくりで広大だなぁと思いました。そこが共通点といえば共通点ですかねぇ。おもしろかったのが、車の運転が、みなさん時速制限よりも20〜30キロオーバーなことです。
オーストラリアだと、5キロオーバーで二万円以上の罰金なので、みんな割と時速制限を守るんですよ。
地元(佐賀)では、時速制限を10キロはオーバーしないと周りのドライバーにイラつかれる、という不文律があるので、北海道でも10キロオーバーくらいで運転していたら、他の車にヒュンヒュン追い抜かれてびっくりしました。
70キロの高速で90キロ出してたのに、牛を何頭も乗せた大きなトラックに追い抜かれた時は驚きましたよ。「家畜を乗せたトラックが110キロくらい出してる!」と。
北海道に行った主な理由は、北海道に移り住んだ叔父に会いに行くことでした。母の兄なのですが、非常におもしろいキャラクターで、衝撃エピソードの宝庫です。
叔父は、東京でエンジニアとして、満員電車にぎゅうぎゅう詰め込まれて通勤する生活を長い間していたそうなのですが、本来は自然が大好き。実は、数十年前に一度、オーストラリアをひと月くらい旅をしたことがあります。
タスマニアの田舎のほうまで、ゲタを履いてカランコロンと小さな漁村を訪ね、宿の主と仲良くなって、一緒にロブスターを釣りに行ったそうです(とまあ、そんなキャラです)。
オーストラリアで農家をやりたくて土地を探して回ったそうなのですが、日本には奥様と三人の娘がいて、ビザや仕事、子どもの教育など、現実的なことを考えて断念したのだとか。
農家をやりたいという気持ちは、それからも消えることはなく、退職した叔父は福島県にある山を買い、子牛農家をやっていました。山を切り崩して農地にするところから始め、やっと軌道に乗ってきたところで福島原発事故があり、その影響で農地を手放せざるをならなくなりました。その時点で六十代後半。
そこから新天地を探して北海道へ。北海道の真ん中よりちょっと東よりの奥地に土地を買い、そこで今は暮らしています。
雑木や雑草が生い茂る土地を、木を切ってブルドーザーで土地をならすところからスタート。業者も入れず、ぜんぶひとりでの作業です。
住める家もないので、当時、奥様は本州で暮らしていました。叔父は北海道のご近所さんが貸してくれたボロ屋に滞在。どのくらいボロいかというと、床がズブズブで抜けそうなくらいだったそうです。
土地をならしたところで、今度はドーム型の作業所を作りました。北海道の農地に行くと、ドーム型の建物がたくさんあるんですが、中がビニールハウスになっていたり、物置だったりします。
叔父は、そういう建物が取り壊された後に出る資材を安く購入し、作業所として建て直しました。高さが6メートルくらいあるので、いったいどうやって、ひとりで作ったんだろうと思って聞いたところ、クレーンを使って骨組みを作ってから、下から順々に足場を作って……、と説明してくれました。
ぶっちゃけ、なんとなーくしかわからなかったんですが(笑)、ものすごーく大変そうなことはしっかり伝わりました。
作業所ができたら、今度は家を作ります。家もひとりで建てたそうです。元・エンジニアですが、大工さんではないので、全て独学。
一般的に日本の家屋は、土台の次に柱を建て、梁を上に乗っけて、その上に屋根をのせ、それから壁を作るらしいのですが、柱と梁がぴったり合うように作るのは非常に難しく、素人ではとても無理なのだそうです(叔父談)。
そこで叔父は、欧米でよくみられるツーバイフォー工法を適応。メリットは、素人でも家が建てれるところ(叔父談)。デメリットは、壁を先に作ってから屋根を乗せるので、建築中に雨や雪が降ると大変なところ。
冬の北海道は雪がすごいので、雪解けから初雪の間までに、壁を作って屋根まで載せないと、建てかけ中の家が雪に埋もれてしまいます。
ということで、作業所で延々と壁やらドアなどを事前に作っておき、土台ができたら大急ぎで壁を組み立て、雪が降る前に屋根を乗せるところまでいきました。
冬の間は床や内装をやります。夜はマイナス30度になることもある土地柄。日中でもマイナス10度。暖房もなにもない中、冬の北海道でコツコツとひとりで作業を続けたそうです。
そんなふうにして、二年がかりで、作業所、家(二階建て、トイレ三つ、バスルーム二つ、ゲストルーム付き)、ヤギの飼育小屋、それからヤギの産室まで完成させたのでした。繰り返しますが、これ、七十歳間近の人間が、たったひとりでやったんですよ。自分の叔父ながら、うへえ! と感心せざるを得ません。
ゲストルームに泊まらせてもらったのですが、親が泊まる部屋はオンスイートのバスルーム付き。子ども用ベッドルームが二つに、卓球台までありました。ドアノブが、ゴムホースを切って釘で打ったやつだったり(インテリアにかける費用がなかったらしい)、壁も階段もぜんぶ木材そのままだったりしたのも楽しかったですね。
ヤギは乳を絞ってチーズを作りたかったらしいのですが、実際に乳を絞る段階になると、子ヤギには人工乳を与え、子ヤギが飲むはずの乳を横取りすることになるわけです。そんな実態を知ってしまうと、どうにも複雑な気持ちになり、断念。
五十頭くらいいたヤギも、いろんな理由で多くを売ってしまったそうで、私が訪問したときは五頭に減っていました。干した野菜クズやかぼちゃ(叔父が作っている)をおやつにしているので、私もあげてきました。ヤギ、めちゃくちゃかわいかったです♡
とまあ、珍しいキャラの叔父さんですから、奥様もおもしろい方なんですよ。ちょっと長くなってしまったので、続きはまた今度。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます