【未完成】思人は静かに去く
淡風
一 絶望
メランコリヤを患ったらしい、幸福の樹が実を結ばぬままメランコリヤを患ったらしい! 絶望は――これは
絶望がメランコリヤを患ったらしい――それはまるで隣村の葬式のように冷たく無関係に聞えた。それはたしかに絶望の〈世界〉が凍結していたということでもある。絶望の〈世界〉はただメランコリヤによって一切の変化を拒んでいた。しかし絶望の〈世界〉は常に外部からの変化――例えば小規模な時代の変化――に晒されており、あるいは〈世界〉は変革せねば頽廃する。
そもそも絶望はずいぶん前からメランコリヤを患っていた。抗鬱薬を何錠も重ね重ね口に運ぶように、絶望は自らのメランコリヤを随分と厚く重ねて〈世界〉を覆わせていた。今回のメランコリヤもその外周に過ぎないのだ。
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