第6話 山家花梨の事情
私、山家花梨には小学校の時から好きな人がいる。
でも、同じクラスになった事は一度もない。
その男の子の名前は、夕切レモン君。
好きになった切っ掛けは小学校2年生の時、いじめられていた私をレモン君が、体を張って助けてくれたから。レモン君は覚えていないと思うけど、私はその時……レモン君に恋をした。
でも、レモン君は他のクラスの男の子だったので、お礼も言えず……中学になっても同じクラスになれなかった。でも必死になってレモン君が受ける高校を突き止めて、頑張ったけど、同じ高校にも入れなかった。
諦めかけていた時、偶然にもレモン君が大学受験をする事が分かったので、私も同じ大学を受験して、やっとレモン君と同じ大学、同じ学部になる事が出来た。
大学はクラスというものがなくて、学部で分かれているだけだったので、私にもやっとチャンスが巡ってきた。
チャンスを逃さないように、私は婚姻届けに自分の名前を書いて、予備に何枚も婚姻届を準備しておいた。
このチャンスは絶対に逃せない。
でも話しかける切っ掛けがなくて……、一年が経った。
私っていつもダメなのよね……。
愚痴を言いながら、いつものショッピングモールに買い物に行った時、レモン君が小さい子を連れて子供服を探しているのを見かけた。
これだよ!レモン君が困っている。今しかない!
私は勇気を振り絞って、レモン君に話しかけた。
「あら、レモン君?」
「花梨ちゃん……こんにちわ」
え!?花梨ちゃんって!?私の名前知ってるの!?もう大好き!レモン君!もう結婚するしかないよね!?
「ええ……こんにちわ。今日は買い物?」
「まぁ……そんなトコです。こいつの服を買いに来たんですよ」
こいつって、この可愛い幼女の事よね?やっぱり服選びに悩んでいるじゃない!?チャンスよ!
「あら、可愛い子ね?」
「我は、今日は……レモンとデートなのじゃ!」
はぁ!?幼女のくせに私のレモン君とデートですって!?私だってデートした事無いのに!
「ええ?そうなの?良かったわねぇ」
くぅ!胸なんか張っちゃって、この子……私を挑発してるの!?
「いや!違うから!こいつは親戚の子で、預かってて!」
レモン君が慌てているけど……本当にそうなのか怪しいもんだわ!?
「何そんなに慌ててるの?服を買いに来たんでしょ?私も一緒に選んであげるわ」
「あ、ありがとう。花梨ちゃん」
うーん、花梨ちゃんって呼ばれるのもいいけど、私はもう大人だから、レモン君には呼び捨てして欲しいな?
「レモン君……その花梨ちゃんって子供みたいで恥ずかしいから……花梨って呼んで?」
「え?いいの?」
「私が良いって言ってんだから、いいのよ?」
「じゃあ……花梨よろしくたのむ」
「ええ、レモンよろしくね?」
レモンって言っちゃった!もうコレ結婚したも同じよね!?
キスしてもいいかな!? キスしたいなぁ……。
でも、まだ我慢よ……。ここで嫌われたら台無しよ?
「それじゃ服を買いましょうか?」
「おー!」
そう言えば、そのおませな幼女の名前聞いてなかったわね……。
「ところで……その子のお名前は?」
「我は、魔王イリスティラじゃ」
え?
「いや、違います!こいつはそう、イリスっていうんです!」
「我は、まぁイリスっていうんじゃて言ったんだよな?な?」
そ、そうよね?私の聞き間違い……だよね?
「イリスちゃん?いい名前ねぇ」
「むぅ……」
この子の不満そうな顔は何?可愛い名前だと思うけど?
イリスちゃんには、フリフリの子供服が似合うと思うのよねぇ……可愛いし。
「これなんか似合いそう」
私が選んだのは、ちょっと値段はするけど、ピンクのフリフリのワンピース。
「うん、可愛いじゃ無いか?」
でしょ?絶対似合うと思ったんだよね。
「すまん……金が足りない」
ええ!?そうなの!?
「あら、そっか学生だものね……」
「むぅ……我はこのワイシャツで良いぞ?」
そのワイシャツ……レモン君のじゃない?ダメだよ?サイズ合ってないじゃない?
「うーん、それなら私のお古で良かったらあげるわよ?」
「え!?いいの?」
仕方ないじゃ無い?レモン君のワイシャツなんて着せてたら私が困るもん。
それにこれを口実に、うちに連れ込んで……。どうしよう?部屋片付けたかな?
いいかとりあえず、連れ込んでから考えるよ?
「うん!それじゃ、うちに行きましょう?」
うちに連れて行く途中、イリスちゃんは疲れて寝てしまった。
しかもレモン君に抱っこされてるのよう。
羨ましい……。
「歩き疲れたのね?もう寝ちゃってるわよ?重くない?」
「そんなに重くないので大丈夫ですよ?」
降ろしてくれないのね?だったら……。
「今度はレモン君が迷子にならない様に、手を繋いであげようか?」
私はレモン君の腕を絡めて、わざと胸が当たるようにした。負けないよ?
「え!?」
レモン君は、気づかないふりでもしているのか、こっちを向こうとしない。気付いてるよ?緊張してるの……。もっと私を意識して欲しいのよ?
結局、レモン君は我慢して指摘してこなかった。意気地なし……。
「着いたわよ?ここが私の家よ?」
やっと着いたわ。イリスちゃんがいたからちょっと歩くのも遅かったし、でもレモン君を初めてご招待出来るなんて夢みたい!でもちょっと恥ずかしいな……。
「さ、入って?狭い家だけど……」
「ど、どうもお邪魔します……」
「おい、イリス?着いたぞ?」
イリスちゃんはまだ寝ていたのでレモン君が起こしてくれていた。
「む……うむ……おはようの……ちゅーじゃ♡」
え? チューって? え?
「はいはい、ちゅーな?はい!チュー」
は!?何してくれてんの?イリスちゃんにキスするなら!私にも!!
「……うむ……悪くない」
でしょうね!!いいなぁ!幼女特権ってやつ?もう!
さて、家に上がって貰ったのは良いけどこれからどうしよう?
取り合えず、飲み物出すのは定番よね?
リビングに通す?あ、リビングは駄目!見せられないわ!
こうなったら、私の部屋しかないじゃない?
「私の部屋……恥ずかしいけど入ってみる?」
「え!?いいの?」
リビングは駄目なんだよ……。
「だって、家に上がってもらったのに……部屋に入れないってちょっとね?」
私は、自分の部屋にレモン君を案内した。さぁどうぞ?う……恥ずかしい。
「むぅ……我も入るぞ?」
「ええ……イリスちゃんもどうぞ?」
なんとかレモン君を私の部屋に入れ、一安心した私は、次に定番の飲み物を用意する事にした。
「何か飲む?」
「甘いのがいいのじゃ!」
「俺はいいよ……」
ええええ? 飲んでよ?レモン君?せっかく私が出してあげるって言ってるのよ?
「遠慮しちゃダメよ?イリスちゃんはジュースね?レモンは紅茶にする?レモンティー?」
あ、今私……上手い事言っちゃった♡レモンティーだって♡
「なんか、上手い事言ったとか思ってる!?」
何で分かったのレモン君!?ひぃ!恥ずかしい!!
「ごめん!それじゃ適当に持ってくるね?」
「うん、ありがとう花梨」
あぁ……もうレモン君ったら、私の心を読まないでよ?でも心が通じ合っているのかな私達?やっぱり、もう結婚してるも同じよね?
私は、アイスレモンティを二つ作って、イリスちゃんには適当にジュースを入れて来た。
「はい、どうぞ」
「うむ……」
「ありがとう、花梨」
そうそう、こんなことしてる場合じゃないのよ?
イリスちゃんの洋服を出さないと……たしか押し入れに仕舞っていたはずだから、この衣装ケースだったかなぁ?
あった!やっと見つかったよ?これでありませんでしたって言ったら、レモン君はもう来てくれないかも?
「これなんかどう?イリスちゃんに合いそう」
「どうじゃ?レモン」
「うん!可愛いと思うよ?」
私の着ていた服だもん可愛いに決まっている。
「うむ……そうか?可愛いか?」
「すっごく、可愛いよ?」
「結婚したいくらい……可愛いか?」
「そりゃもう!」
はぁ?何言ってるのこの子!?ませてるにも程ってもんがあるでしょ?
でも、あれね……将来お父さんと結婚するのってやつね?きっと!
「うふふ……おませさんね?私もイリスちゃんくらいの時は、お父さんのお嫁さんになるって言ってたかも?」
「そうなんだ?よし、じゃあイリスも花梨もお嫁さんにしてやるぞ?なーんて……」
「「嬉しい……」のじゃ」
嬉しい!今聞いたよ?私をお嫁さんにしてやるって聞いたよ?録音してあるからもうお嫁さんにしてもらうよ?
「え!?」
「私……レモンのお嫁さんになってもいいよ?」
「カリン!我がお嫁さんなのじゃ!」
いいえ!私がお嫁さんよ?幼児は引っ込んでて!
「ええええええ!?」
えええって?そうよね?幼児は結婚できないものね?
「分かったよ?じゃ、二人とも俺のお嫁さんだな?」
は?何が分かったのよ?幼児と結婚する気?それなら、私にも考えがあるわ!
私は、すでに自分のサインが書いてある婚姻届を出して来た。
「うん、今日からよろしくね?はい!ここにサインしてね?」
「よーし、ここでいいのか?」
「いいよ?印鑑はこれ使って?」
この時の為に、レモン君のハンコを買っておいて良かったわ。
「ありがとう花梨」
「我も書くのじゃ」
何を書くつもりかしらないけど?私はイリスちゃんにも、予備の婚姻届を渡してあげることにした。
「イリスちゃんも書く?それじゃこっちに書いてね?」
「婚姻の儀式じゃ」
イリスちゃんは絵を描き始めた。うふふ……やっぱり子供ね。
「イリスちゃんは絵が上手なのね?」
「結婚魔法陣は、いっぱい練習したのじゃ」
なにそれ?魔法陣?美味しいの?可愛いなぁ子供って。
「凄いじゃないか?イリスは絵の才能あるかもな?」
「完成じゃ!」
「うん、よく出来てるよ?イリス」
うわぁ良く分からないけど?上手に描けているみたいね?
「契約完了じゃ♡」
「凄いな、魔法陣ってこっちの世界でも通じるのか?」
二人が何言ってるか分からないので、私は婚姻届を提出しに行く事にした。
「あ、そうそうちょっと役所に行ってくるね?」
「何か用事でもあった?」
「休日でも窓口は開いてるから出してきちゃうね?」
婚姻届けは、土日でも裏口を使って受け付けてくれるので大丈夫なのよ?
「一緒に行かなくて大丈夫?」
「恥ずかしいから一人で出してくるよ」
「なら気を付けてね?」
「うん、すぐ戻ってくるね?」
二人で行ったら、もう心臓が破裂しそうなくらいドキドキしてるのでちょっと一人で落ち着きたいの。この幸せをかみしめて落ち着いて出してくるわ。
お役所まで自転車で行って戻ってきたら、もう婚姻届けは提出済。
これで私と、レモン君は夫婦になったのよ?うふふ……。
「ただいまーあなた!今日からよろしくね?」
レモン君と私の結婚生活が今始まったのよ。そして今日は……結婚初夜?
キャー!!どうしよう!?何の準備もしてないよ?ゴムはいるのかな?
買ってないよ?
そんなの買えるわけないでしょ?
あうう……恥ずかしいよぉ……。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。
こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます