第5話 花梨ちゃんの家訪問
俺は緊張していた。
だって憧れの花梨ちゃんに話しかけられ、家に招待される事になったんだ。緊張しない訳が無い。
緊張して、魔王イリスティラの手を握る俺の手も汗ばんできていた。
「のう……レモン……手が濡れておるぞ?」
汗だよ!?汗!
「あ……ごめんな?どうも緊張しちまってな」
「うむ……しょっぱい」
舐めないで!?それ汗だから!!
魔王イリスティラは、俺の手を嘗めて嬉しそうな顔をしている。塩分でも不足してるのか?
手汗は気になるけど、迷子になると困るので手は離せないし……。
「抱っこじゃ」
「え?」
「むぅ……抱っこを所望する」
魔王イリスティラは、抱っこを要求して来た。疲れたのか?幼女の姿では仕方ないか……。
俺は子供を抱っこする様にイリスティラを抱き抱えてやった。すると……イリスティラの両手は俺の首に回され、俺は頬にキスされた。
イリスティラの顔は俺の顔の横にきているので、丁度口が当たったのだろう。
「歩き疲れたのね?もう寝ちゃってるわよ?重くない?」
「そんなに重くないので大丈夫ですよ?」
イリスティラは俺の耳元で寝息を立てていた。
服を探すのにあちこち連れ回したからな……。
「今度はレモンが迷子にならない様に、手を繋いであげようか?」
花梨ちゃんはそう言うと、俺の左腕に腕を絡めて来た。
俺の手はイリスティラを抱っこするので塞がっている。なので手を繋ぐことは出来ない。
だからと言って、腕を組むか?
いや、そもそも俺が迷子になる事は無いと思いたい。
「え!?」
花梨ちゃんの柔らかな感触が伝わってきて……これは!まさか……おっぱいか?
ちらりと俺の左腕を見ると……ふにゅんと、花梨ちゃんの胸が俺の腕に当たって変形していた。
こ……これは……どうすればいい?当たっていると指摘した方がいいのか?それとも……気付かないふりをして、恋人のように振る舞えばいいのか?
「着いたわよ?ここが私の家よ?」
俺が悶々と考えているうちに、目的の花梨ちゃんの家に着いてしまったようだった。
花梨ちゃんの家は、新興住宅街にある屋根の青い一軒家だった。
「さ、入って?狭い家だけど……」
「ど、どうもお邪魔します……」
「おい、イリス?着いたぞ?」
「む……うむ……おはようの……ちゅーじゃ♡」
「はいはい、ちゅーな?はい!チュー」
俺は、魔王イリスティラを優しく起こしてやり、チューしろと言うのでほっぺにチューしてやった。
「……うむ……悪くない」
イリスティラは、顔が赤くなっていたけど、風邪引いてないだろうな?
そして、俺はついに……花梨ちゃんの家に!入ることが出来たんだ!
やばい!緊張する!
花梨ちゃんの家に入った途端にいい匂いがしてきてクラクラしてくる。これは……俺、耐えられるのか?
「私の部屋……恥ずかしいけど入ってみる?」
「え!?いいの?」
「だって、家に上がってもらったのに……部屋に入れないってちょっとね?」
何がちょっとね?なのか分からなかったけど、花梨ちゃんの部屋に入れるなら俺は本望だ。
「むぅ……我も入るぞ?」
「ええ……イリスちゃんもどうぞ?」
そして、俺は花梨ちゃんの部屋に入る事が出来たんだ。やばい!俺の心臓の鼓動は、ものすごくドキドキしていた。
「何か飲む?」
「甘いのがいいのじゃ!」
「俺はいいよ……」
「遠慮しちゃダメよ?イリスちゃんはジュースね?レモンは紅茶にする?レモンティー?」
「なんか、上手い事言ったとか思ってる!?」
「ごめん!それじゃ適当に持ってくるね?」
「うん、ありがとう花梨」
しばらく、いい匂いのする部屋を眺めながら待っていると、花梨ちゃんがお盆を持って戻って来た。
「はい、どうぞ」
「うむ……」
「ありがとう、花梨」
それから、花梨ちゃんは押し入れの奥から昔の服が入っている衣装ケースを出してくれた。
「これなんかどう?イリスちゃんに合いそう」
「どうじゃ?レモン」
「うん!可愛いと思うよ?」
「うむ……そうか?可愛いか?」
魔王イリスティラは、本当に花梨ちゃんの服が似合っていて、どうみても可愛い幼稚園児にしか見えない。いや、小学生にも見えなく無いか?低学年の……。
「すっごく、可愛いよ?」
「結婚したいくらい……可愛いか?」
「そりゃもう!」
「うふふ……おませさんね?私もイリスちゃんくらいの時は、お父さんのお嫁さんになるって言ってたかも?」
「そうなんだ?よし、じゃあイリスも花梨もお嫁さんにしてやるぞ?なーんて……」
「「嬉しい……」のじゃ」
「え!?」
今、なんて?え!?
「私……レモンのお嫁さんになってもいいよ?」
「カリン!我がお嫁さんなのじゃ!」
「ええええええ!?」
どういう事!?何で二人とも?
そうか……これがおままごとというやつなのか?
それなら納得がいく。ふぅ……びっくりしたよ。
「分かったよ?じゃ、二人とも俺のお嫁さんだな?」
おままごとなら、俺がお父さん役だな?
「うん、今日からよろしくね?はい!ここにサインしてね?」
ん?婚姻届け?本格的だな……。
「よーし、ここでいいのか?」
「いいよ?印鑑はこれ使って?」
ん?俺の印鑑まで用意してあるなんて、おままごとってすげーな!?
「ありがとう花梨」
「我も書くのじゃ」
「イリスちゃんも書く?それじゃこっちに書いてね?」
イリスティラも何か書き始めたけど、俺には魔王の字は読めなかった。なんて書いたんだ?
「婚姻の儀式じゃ」
魔王の国には、特別な儀式でもあるのかもしれないな?
よく分からないけど、イリスティラは婚姻届けに魔法陣を描き始めた。
「イリスちゃんは絵が上手なのね?」
「結婚魔法陣は、いっぱい練習したのじゃ」
「凄いじゃないか?イリスは絵の才能あるかもな?」
「完成じゃ!」
「うん、よく出来てるよ?イリス」
俺がイリスティラを褒めると、魔法陣が光りだして、俺達は光に包まれた。
「契約完了じゃ♡」
「凄いな、魔法陣ってこっちの世界でも通じるのか?」
「あ、そうそうちょっと役所に行ってくるね?」
「何か用事でもあった?」
何だろうな?でも今日は休みじゃないの?
「休日でも窓口は開いてるから出してきちゃうね?」
郵便局かな?確か郵便局なら開いてるか。
「一緒に行かなくて大丈夫?」
「恥ずかしいから一人で出してくるよ」
「なら気を付けてね?」
「うん、すぐ戻ってくるね?」
それから、俺は花梨ちゃんの家でイリスティラと待つ事になった。
1時間もしないうちに花梨ちゃんは帰ってきた。
「ただいまーあなた!今日からよろしくね?」
「うん?」
おままごとは、まだ続いていたようだった。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。
こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます