第34話 全てが終わりました
「君がずっとカトリーナを連れ戻そうとしていた張本人だね。色々と聞きたい事があるが、まあいい。君はカトリーナを愛していたのだね。だから、カトリーナを連れ戻そうとしたのかい?」
「そうだ…カトリーナは僕にとって、全てなんだ!でも、どうして僕が犯人だとわかったんだい?」
「あの王女がカトリーナに絡んできていただろう?あの時、君は明らかに好意を持った目で…いいや、執着と言うのだろうか…そんな目でカトリーナを見つめていたからね。あぁ、あの男もカトリーナが好きなんだ。きっとあの男が、カトリーナを取り返そうとしているに違いない、そう思ったんだよ」
「なるほど。さすが第二王子だ。それじゃあ、僕がセリーヌをそそのかして、今回事件を起こした事も、知っているのかい?」
「いいや、そこまでは掴んでいなかったよ。でも、きっと君が絡んでいるのだろうと思った。あの時、カトリーナが犯人となれば、彼女はこの国にいられなくなる。堂々と国に連れて帰れると思ったのだろう?」
「そうだね。でも、きっと君は阻止してくると思っていたよ。だから、セリーヌを追放するためと言った方がいいかな?僕はね、可愛いカトリーナを嵌め、僕から彼女を奪ったあの女が許せなくてね。どうしても、一泡吹かせたかったんだ…」
「なるほど。それにしても、君の魔力は凄いね。俺もすっかり眠らされていたよ。護衛騎士たちも、夢の中だし。まさか俺の腕の中から、カトリーナを奪っていくとは思わなかった…さすがにショックだったよ」
「夜中が一番攫いやすいからね。でも…カトリーナは僕を拒否し、君を選んだ…それは紛れもない事実だ…でもね、僕はどうしても、カトリーナを君に渡したくはないんだ…ごめんね…」
ニヤリと笑ったダーク様。すると次の瞬間、ものすごいスピードで私の元にやって来た。
「カトリーナ、僕と共にあの世で永遠の時を過ごそう」
えっ…
次の瞬間、ダーク様に抱きしめられたと思ったら、ものすごい光に包まれた。そして、体中に魔力がぶつかって来る。
「しまった!止めろ!!!カトリーナ!!」
私の方に向かって必死に走って来るハリー様の姿が見えたが、一気に頭がクラクラしだし、そのまま意識を手放したのであった。
♢♢♢
う~ん、まだ頭がぼーっとする。でも、瞼をあげないと…
ゆっくり瞼をあげると、そこには目を真っ赤にしたハリー様の姿が。
「カトリーナ、よかった!意識が戻ったんだね!」
ギューギューハリー様に抱きしめられる。ハリー様の後ろには、心配そうな顔のお義父様とお義兄様、さらにハリー様と同じく目を真っ赤にしたお義母様の姿が。
「ハリー様、私は一体…」
確かあの時、ダーク様に抱きしめられた瞬間、すごい魔力が襲い掛かって来て、それで…
「カトリーナ、あの男はね。全ての魔力を解放し、君を巻き添えにしようとしたんだよ」
「それじゃあ、ダーク様は…」
通常私たち魔力持ちは、全ての魔力を使い切ると、生きる事は出来ない。全魔力を解放するという事は、そういう事だ。
「そんな悲しそうな顔をしないでくれ…君はあの男に、殺されそうになったんだよ。でも、君の意識が戻って本当によかった」
再びギューッと抱きしめられた。
「いやぁ、それにしても、あの男、かなりの魔力持ちですね。カトリーナ殿の命を奪えるほどの魔力を放出するなんて。あの男の魔力、もったいなかったな。我が王宮魔術師にスカウトしたいくらいだった」
何を思ったのか、ラクレス様がそんな事を呟いている。さすがに皆、ドン引きしている。
「ラクレス、お前は何を言っているんだ!カトリーナの命を奪おうとしたんだぞ!あの男のカトリーナへの執着は異常だった。そんな男を、我が国の王宮魔術師になんて、受け入れられる訳がないだろう!」
「これだから殿下は!いいですか?あれほどの魔力を持った男、そうそういらっしゃいません。国の発展の為に、私情を挟むのはよくありません」
「私情を挟んでいるのはお前だろう!そもそも、第二王子でもある俺の婚約者に危害を加えたんだぞ!」
かなりヒートアップし始めた2人。そんな2人をとめたのは、お義兄様だ。
「いい加減にしろ!カトリーナ殿は、今やっと意識が戻ったところだぞ。それなのにお前たちは、目の前で喧嘩をして。恥ずかしくはないのか!」
「ごめんなさい」
「申し訳ございません」
さすがにお義兄様に怒られ、シュンとする2人。
「とにかく、今はカトリーナちゃんを休ませてあげましょう。さあ、カトリーナちゃん。ゆっくり休むのよ。うるさいのは連れて行くからね」
そう言うと、皆を引き連れ出て行ったお義母様。
「カトリーナ、ごめんね。さあ、もう少し眠るといい。俺が抱きしめてあげるからね」
いつも様に、ギューッと抱きしめてくれたハリー様。やっぱりこの温もりが心地いい。なんだか急に眠くなってきたわ…再び眠りについたのだった。
※次回最終話です。
よろしくお願いいたします。
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