第14話 私の魔力を披露する事になりました

「コホン、それで、ラクレスたちが作った魔石なのだが、早速病院に提供しよう。それから、ハリー。お前も念のため、身につけておきなさい。せっかくカトリーナ殿が、お前の為に魔力を提供して作ってくれたんだ。お前が付けなければ、カトリーナ殿が浮かばれないだろう」


ハリー様に負けず劣らず優しい陛下。しっかり私の顔を立ててくれている。


「わかりました、カトリーナからのプレゼントとして受け取ります。でも、基本的に俺はカトリーナから、直接魔力の提供を受けますので。カトリーナもそれでいいよね?」


「はい、これからもハリー様には、直接魔力を提供させていただきますわ」


もしかしたら、まだ半信半疑なのかもしれないわね。まあ、直接魔力を提供するのも特に負担になる事はないので、問題はない。


「それでは陛下、早速魔石を増産し、他国に輸出しましょう。以前作った機械を動かす魔石もかなり需要がありましたし、今回も色々な国から取引が持ちかけられるでしょう」


「そうだな。それじゃあグラス、お前に貿易に関しては任せていいかい?」


「もちろんです!任せて下さい!」


息を吹き返したグラス様。


「それじゃあ、早速グラスには他国に営業に行ってもらいましょう。いいよな?グラス?」


「え?私自ら行くのですか?」


「ああ、そうだ!いいだろう?」


ニヤリと笑ったハリー様。なんだか悪そうな顔をしているのは、気のせいかしら?周りはグラス様を、気の毒なものを見る目で見ているし。


「それじゃあ、私はカトリーナ殿と一緒に、増産に励みましょう。さあ、カトリーナ殿、早速今から増産を始めましょう」


何とも言えない空気をぶった切ったラクレス様に、腕を掴まれた。


「おい、ラクレス。勝手にカトリーナを連れて行くな!いいか、これからは俺の許可を取ってから、カトリーナを塔に連れていく事。わかったな!カトリーナも、これからは勝手な行動は慎んでくれ」


「「はい、わかりました(わ)」」


珍しく声を荒げたハリー様に驚き、つい返事をしたのだが。なぜかラクレス様と被ってしまった。


「ラクレスとカトリーナ殿は、随分と気が合うんだね。ねえ、僕も魔力を入れるところを見たいのだが、見学させてもらってもいいだろうか?」


クスクス笑いながらそう言ったのは、王太子殿下だ。


「もちろんです。では、早速参りましょう。さあ、カトリーナ殿も」


私の腕を掴み、今度こそ歩き出したラクレス様。後ろから王太子殿下も付いてくる。


「おい、勝手にカトリーナを連れて行くなと言っただろう」


急いでハリー様も付いてくる。


「私もせっかくなら見たいわ」


「私たちも」


結局真っ青な顔で立ち尽くしていたグラス様以外、全員がついてきた。魔術師たちの研究所でもある塔に入ると、研究をしていた魔術師たちが飛んできた。


そのまま奥の部屋へと入って行く。


「これが魔石の元になる石です。この石に魔力を入れたら、完成です。ちなみに魔力量は、機械などを動かす魔石と同じく色で分けられています。さあ、カトリーナ殿、早速魔力を込めてみて」


石を渡され、早速魔力を込める。すると、いつも通りエメラルドグリーンに変わった。


「おぉ!エメラルドグリーンに変わったぞ!エメラルドグリーンなんて初めて見た」


「本当だ。それにあれほどの魔力を石に込めたのに、カトリーナ殿は息一つ上がっていないではないか…」


「そうです。彼女の魔力はかなり高いのです。よくここまで魔力の高い人間を、この国に招き入れられましたね。本来なら、国宝として大切に扱われてもおかしくはないのに」


「確かにそうだ。マレッティア王国の国王は、バカなんだ…」


なぜか悲しそうにそう呟いたのは、陛下だ。陛下は何か知っているのかしら?


そもそもマレッティア王国の国王は、とにかく王妃様に頭が上がらない。いくら私に魔力があろうが、王妃様に気に入られなければ私の価値はないのだ。


でも、そんな事は言えない。


「さあ、カトリーナ殿。どんどん魔力を込めて下さい」


再び石を渡され、魔力を込める。そのたびに、周りから歓声が上がる。さすがに4つ目の魔力を込めたところで、魔力の使い過ぎで頭がフラフラしてきた。


「カトリーナ、大丈夫かい?こんなに魔力を使ったんだ!もういいだろう。さあ、疲れただろう。部屋に戻ろう」


すかさずハリー様に抱きかかえられた。王族だけでなく、この国の貴族もいるのだ。さすがにマズイ。


「これくらい大丈夫ですわ。自分で歩けますので…」


「何を言っているんだ!今ふらついていたではないか。さあ、早く部屋に戻ろう。きっとこの3ヶ月間、ラクレスに無理をさせられていたに違いない。もう大丈夫だよ。これからはずっと俺がそばで監視してあげるからね」


何を思ったのか、私を強く抱きしめて来たハリー様。すぐ近くに、美しいお顔が…


一気に心臓の音がうるさくなる。でも、それと同時に、温かい気持ちに包まれた。


「あらあら、ハリーは随分と嫉妬深いのね…」


「そうだね。僕より先にハリーの方が早く結婚するかもしれないね」


なぜか王妃様と王太子殿下が、意味の分からない事を言っている。


結局このままハリー様に抱っこされたまま、部屋に戻ってきた。部屋に着くなり


「今あの場で、君の魔力が国宝級である事が皆に証明された。もしかすると君の魔力を狙って、君を誘拐する者が現れるかもしれない。とにかく、君を守るために護衛騎士を付けさせてもらうからね」


「あの…私は国を追い出された人間ですので、誰も誘拐なんか…」


「それは君の父親が大馬鹿者なだけだろう!とにかく、護衛騎士を付けるから。いいね。わかったね。それから、絶対に俺がいない時に塔に入ってはダメだからね。念のため、塔の周りにみはりを付けよう。君が黙って入り込まない様に!」


なぜか鼻息荒くそう宣言された。私の魔力って、そんなに凄いのね。でも、こうやって大切にしてもらえるのは悪くはない。


「わかりましたわ。ハリー様の言う通りにいたします」


「そうか、それはよかった。さあ、少し遅くなってしまったが、早速畑を見に行こう」


「はい」


その後、2人で仲良くレタス・イチゴ・ラベンダー畑を見に行ったのであった。



※次回ハリー視点です。

よろしくお願いいたしますm(__)m

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