35 夜這い?

※そういう展開が苦手な人はご注意ください。

―――――


 夜、寝入りかけたところで、俺は人の気配を感じて目を覚ました。


 俺の部屋の扉が、外からがちゃがちゃといじられる。


 扉の鍵がひとりでに回り、扉がそっと開かれた。


 扉から入ってきたのは、二つの小柄な人影だった。

 窓から射し込む月明かりに照らされ、二人の姿が浮かび上がる。

 うす紫の肌に水色髪の少女と、もじゃもじゃした赤毛の巻きヅノ少女。


 要するに、リリスとレヴィである。


「何やってんだ、おまえら」


 俺が扉の死角から声をかけると、二人がびくっと飛び上がる。


「な、なんじゃ。起きておったのか」


 レヴィがこっちを振り向いて言ってくる。

 害意はなさそうなので、俺は手にしたハンドガンをひとまず下ろす。


「眠りかけたら人の気配がしたもんでな」


「なるほど、セイヤはパイロットとしてのみならず、兵士としても優秀なのですね。これはますます楽しみです」


 今度はリリスがそう言った。


「で、なんでおまえらはそんな格好をしてる?」


 レヴィは黒いキャミソールとレースのショーツ、リリスは真っ白なビスチェを身につけてる。


 ……正直、目のやり場にとても困る。


 まぁ、レヴィは十歳くらいの見た目だし、リリスも十代後半くらいにしか見えないので、ガキの裸ではあるのだが。


「むう。奇襲は失敗か」


「のようです。どうしましょう。捕らえますか?」


「そうじゃの。二人がかりで押し倒してしまおう」


「なっ、おい、何をする!」


 扇情的な姿でにじり寄ってくる二人に、俺はおもわずあとじさる。


「ご覚悟!」


「うおっ!」


 飛びかかってくるリリスをかわすと、そこにレヴィが抱きついてくる。


「ええい、大人しく朕に抱かれろ!」


 下半身に組みつくレヴィを剥がそうとするが、レヴィはやたらと力が強くて剥がせない。

 そのあいだに、リリスが俺の背後に回りこむ。


「くっ!」


 苦し紛れに肩から後ろに向けたハンドガンを、リリスの手がすばやく絡め取る。

 リリスはその手で俺の頬を撫で、首筋をなぞり、鎖骨や胸を確かめる。


「うあっ! なんなんだよ!」


 抵抗できないでいるあいだに、俺の下半身ではレヴィが俺のズボンを下ろしてる。

 俺のアンダーウェアの上から、レヴィが敏感な部分を撫でてきた。


「おい、やめろ! 冗談じゃ済まないぞ!」


「冗談のつもりはありません。私も陛下も本気です」


「さようじゃ。このような好機は見逃せぬ」


 リリスが後ろから顔を乗り出し、俺の頬に舌を這わせ、レヴィは俺のアンダーウェアを下ろそうとする。


「ちょ、待て、おまえら! これはまさか夜這いとかそういう――!?」


「なんだ、わかっているのではないですか」


「そうじゃ。魔族の女は、これはと思った男を見逃さぬ。しっぽり精を搾り取って子を孕むのじゃ」


「孕む!? そんなの、簡単にやっていいことじゃ……」


「心配しないでください。私は竜の頭で大公爵。陛下に至ってはこの国の王なのです。セイヤとの子どもは立派に育ててみせます」


「朕とおぬしの子どもはさぞや優秀なパイロットになるであろうな。いまから楽しみじゃ」


「だ、だからやめ――」


 そこで、戸口に気配を感じた。



「どうしたんですか、セイヤさま! って、きゃああああっ!」



 俺の部屋の前に来たエスティカが悲鳴をあげた。


「な、何をなさってるんですか!?」


「お、襲われてるんだ、助けてくれ!」


「だめじゃ。おぬしは朕のものとなれ」


「なんならエスティカ姫もご一緒しますか? 私はかまいません」


「え、えええ! そ、そんなのダメに決まってます!」


「とにかく離れ……ああもう!」


 俺はレヴィの腕をなんとか外し、前方宙返りしてエスティカの前に着地した。


「ああっ……」


「私たちの精が……」


 レヴィとリリスが手をさまよわせる。


「ふぅ。助かったよ、エスティカ」


「そ、そそそ、それはようございました、セイヤさま」


 なぜか、エスティカが顔をそらしながらそう言った。


「ん? どうかしたのか? 顔が赤いぞ。もしかして疲れで熱が出たんじゃ……」


 正面に回りこんで顔を覗きこむと、エスティカはますます赤くなった。


「い、いえ、そういうことではなくてっ……せ、セイヤさま、そのお格好は目の毒です……」


 消え入りそうな声でエスティカが言う。

 俺は自分の格好を見下ろした。


「Oh……」


 リリスに上着を脱がされ、レヴィにズボンを脱がされ、最後の砦だったアンダーウェアも、さっきレヴィから逃げた時に脱げていた。


「ほほう、なかなか立派なものです。いや、殿方のものは初めて見ますが、聞いていたよりも大きいですね」


「うむ。ピンと張りつめてお腹を元気に叩いておる。これは期待できそうじゃ」


「――あああああああああっ!」


 ……そのあと、どうやって事態を収拾したのかは覚えてない。

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