08 不明VS不明(1)
鎧兜の騎士には、ちゃんと中身がいるらしい。
バイザー――
……中身ががらんどう説やバイク本体説は否定されたな。
本気でそう思ってたわけじゃないんだが。
俺の腕の中から、お姫様が騎士?に言う。
「~~~~~~!」
『『あなたたちについていく気はありません!』ですね。』
今度は、騎士のリーダーが言った。
「~~、~~~~~~~~!」
『『ならば、力づくでもあなたをお連れするまでです!』』
クシナダの芝居がかった翻訳に苦笑する。
「ふむ。要するに、このお姫様は騎士たちの上長から逃げてきたってことか。犯罪者でお尋ね者って線は、見た感じなさそうだ」
『そう判断した根拠をお伺いしても?』
「このお姫様からはキリナに似た感情波を感じるんだ。騎士たちの態度もそれを裏づけてる。重要人物の娘だから、外面では敬意を払っちゃいる。だが、この騎士たちの忠誠は、お姫様の親である重要人物のほうを向いている」
『では、どうするおつもりで?』
俺とクシナダが囁きあってると、話しても無駄と見られたのか、騎士のリーダーが近づいてきた。
お姫様を奪おうと手を伸ばしてくる。
俺は、さっと跳びのいて手をかわす。
俺はお姫様を片腕で抱えながら、手にしたハンドガンを騎士に向ける。
「動くな。撃つぞ」
と警告したが、騎士は気にせず動いてきた。
しかたなく、騎士の足元に銃を撃つ。
さすがに、今度は動きを止めた。
これはひょっとして……
「銃がどういうものかわかってないみたいだな」
地面から浮かぶバイクや大型のバギーなんかがあるってのに、銃はない?
っていうか、さっきまでお姫様に向かって使ってた雷や火の玉はなんだったのか?
最初は特殊なテイザーガンか焼夷グレネードかと思ったのだが、銃が知られてないような文明水準で、テイザーガンやグレネードが先に発達してるってのは違和感があるよな。
そこまで考えたところで、ヤバい、と感じた。
攻撃的な精神波が飛んでくるのと同時に、騎士の一人がこっちに手のひらを突きつける。
ただの手のひらにしか見えなかったが、
「ちぃっ!」
その手のひらに、俺は何かちりつくものを感じた。
そのちりつくものが凝固し、差し迫った脅威へと変わっていく。
何が来るかはわからないが、何か危険なものが来るのは間違いない。
俺はお姫様を抱えたまま、リーダーめがけて飛びかかる。
虚をつかれて動けないリーダーの顔面に、飛び蹴りをかます。
倒れるリーダーの腕を取り、俺とお姫様の盾にする。
直後、手のひらをこっちに向けた騎士から、何の前触れもなく稲妻が走った。
「ぎゃああっ!」
稲妻に直撃され、騎士のリーダーが悲鳴を上げる。
『『ぎゃああっ!』と推測します。この推測は確度が高いですよ。』
空気を読まず、冗談を言ってくるクシナダに、
「んなことより、あの武器は何だ!?」
騎士たちに囲まれないよう飛びのきつつ、俺はクシナダにそう叫ぶ。
『不明です。相手を戦闘不能にするためのスタンガンのようです。何も持っていなかったはずなのですが……。体内に発電器官でも備えているのでしょうか?』
「何も持ってないように見えても、このエイリアンどもは放電したり火炎放射したりできるってことか!?」
『そういうことでしょう。地球のウナギにも放電するものがいますからね。』
「鎧の中身はウナギかよ!? 蒲焼きが食えなくなるな!」
そんなことを言ってるあいだに、騎士たちが立ち直る。
半数が剣を構え、残りが剣を
「前衛と後衛か。ってことは後ろのやつらが電気ウナギなんだな」
もちろん、前衛も実は放電できますという可能性もある。
俺はおもわず舌打ちした。
「……めんどうだな。どこまでやっていいんだ?」
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