第29話 オレたちのエピロ―グはこれじゃない。
『え~っ、只今
『只今被疑者3名。ラ―スロ公国から提供された映像を元に捜索を継続中です。進展があり次第ご報告いたします――本日お集まり頂いたのは、報道過熱に伴い異例ではありますが情報提供を行います。質問等は後程執り行います――』
『ラ―スロ公国皇女殿下襲撃事件でその場に居合わせた―15歳男性、斎藤…順一さんに対しての誤った情報が拡散されております。彼に対しての逮捕、拘束の事実はございません。繰り返します。逮捕、拘束の事実は一切ございません。また、斎藤さんを連行した写真が出回っておりますが、明らかな
『また、斎藤さんがこちらに来た用件は傷害事件に対する被害届提出の為、ご家族同伴で来ております。被害者として、来られた。それが事実です』
『――それからですね、退学に関して――事件翌日に斎藤さんご本人と妹さんがこちらに相談に来てます。その時対応した警官が理由をですね、退学の理由を尋ねております『暴力行為に対して逮捕されたため』と学校側から回答があったと。先ほども申し上げましたが、逮捕の事実はありません』
『相談を受けた警官ですがその後、私立
『報道各社に対してのお願いです。斎藤順一さんに関して逮捕の事実はございません。皇女殿下に危害を加えるのを阻止しただけです。私見ですが、逮捕を根拠とした退学であるなら――事実に反しております』
□□□□
冗談じゃない、こんなので――こんなので終われるわけない…―
「舞美、ちょっと来い――」
オレはリビングから舞美を連れ出した。リビングにいる面々は今何が起きたかピ―ンときてない。はっきり、くっきり理解出来てるのはオレと――
「出て来いよ『マイたん』」
こっちの妹だけだ。オレは部屋に入るや否や『マイたん』を呼び起こした。
「なによ、乱暴ね。兄さん何か問題でも?」
「はぁ? 何か問題でもだ? 問題だらけだ!! どこに問題がないと言える?」
「八方丸く収まってるじゃない。兄さんは遅かれ早かれ、
「お前は……お前はこれでいいのか?」
「これってなに? 主語がないとわかんないんだけど?」
「めんどくせえ妹だな!」
「ごめんなさいね?『あの子』なら何でもわかってくれるもんね? バッカみたい! せっかく波風立たないように仕掛けしてやったのに! 利いたでしょ、警察に相談に行ったの。相談の履歴を作っとけば、いざという時根拠になるでしょ! 何がご不満?」
「不満だらけだ。オレはお前らがしてくれたこと知ってる。泣きながら動画作ってオレの無実を訴え続けてくれたこと、頑張っても全然視聴伸びなくて、落ち込んで眠れなくて――でもあきらめなかったお前らを、オレは知ってる。オレの
「いいわね、いつも『あの子』ばっか、思ってもらって。理解してもらって私はいつも……我慢ばっかじゃない!!」
「お前はあいつで、あいつはお前。どっちも大事な妹だ。胸に手を当てろ、自分の中にざわざわしたモンあるだろ? なんでそれ無視すんだ!? お前が悪い訳でも、アイツでもオレでもない。お前にそのざわざわしたの感じさせたヤツ、ぶっ飛ばすのがオレの、アニキの仕事だ!」
「アニキの仕事なの?……怒ってくれるの?『こっちの』私のためにでも?」
「当たり前だ。兄妹だろ? お前らは分け隔てなくオレの妹だ。どっちもかわいい妹だって――たまに思う……」
「兄さん……今の『たまに』ってなに? いらないよね? 言い切ればよくない……?」
「えっと……さすがに、ちょっと冷静になったら恥ずかしくなってきたりで……ちょい熱くなりすぎて…恥ずかしいと申しましょうか―」
「うわっ、肝心なトコでぐだぐだ!! なに言ってんの? この流れ、今からベロ―チュでしょ? 恥ずかしがってどうすんの!」
「えっ!? 兄妹で―――べ、ベロ―チュはダメだろ! 法律的に!!」
「はぁ!? うちらラ―スロ公国に行くんでしょ? あっちじゃ、もうバンバンよ! バンバン!! たぶん!」
「え!? バンバンなの? 兄妹で? ときにバンバンって何がバンバンなの? たぶんってなに?」
「え? いや、ノリで言っただけだからわかんない!! きっとあれやこれやとバンバンなのよ!! しかも兄妹で!!」
「マジか……たぶんなのに…」
「マジ…兄さん。もしその…バンバンが普通ならバンバンする?」
「まぁ…何て言うかお前がいいなら……って言うかバンバンってなに?」
「わかんないけど、最初のバンバンは私とだよ?」
「わかった。よし! いや、バンバンが何かわかんないけど! 取りあえずリビングだ!! 意気消沈してる連中をバンバンけしかけるか?」
「そうね。バンバン、ケツ蹴り上げて目を覚まさせないと。反撃の狼煙を上げるわよ」
そう、オレたちのエピロ―グはここじゃない。ましてや誰かに決めてもらうものでもないんだ。何回でも言ってやる!
『仕切り直しだ!
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