劣等生の虚言

八二羽 敦

第0話 僕らの昔話

 昔々、ある山の小さな村に優しい青年がいました。

 青年に親はいませんでしたが、決して独りではありませんでした。青年は優しく、心がきれいだったので、村の子供達に好かれていました。

 そして、村の大人達から、と呼ばれる子供達にも青年は励ましたり、話し相手になっていたため、悪の子達にも好かれていました。

 朝は畑仕事をし、昼は子供達と遊び、夜は疲れて眠る。青年はこの繰り返す日常を幸せに思っていました。 


ペラペラ…


 ですが、ある日を境に村に雨が降らなくなり、村の作物は枯れ果て、水不足になり、村では数少ない食料の奪い合いが発端で、争いが起こっていました。

 そんなとき、誰かが言いました。

「…神が怒っておるのだ。贄を出さなければ」


ペラペラ…

 村の偉い大人達は、悪の子達を贄にすることにしました。

 しかし、問題がありました。

 大人達は誰も、子供を殺して、自分の手を汚したくないと言うのです。

 そのとき大人達は思い出しました。

 丁度良い人材がいることを。

ペラ

 青年は毎夜泣いていました。大切な友達をたくさん殺してしまったからです。

 偉い大人達に、悪の子を殺さなければ、村中の子供を殺すと脅され、青年は頷くしかなかったのです。

 青年は独りになりたくなかった。

ペラペラ…

 朝は畑仕事をし、昼は子供達と遊び、夜に子供を殺して泣く。

 青年はこれが日常になっていました。

 ですが、ある日の夜、子供を殺し終わった後、いつもどうり神社で泣いていると、一人の綺麗な髪の長い女が話しかけてきたのです。女は自分を神だと言いました。

 女はこう言いました。

「この村を平和にしてあげましょう。ですが、一つ約束してください。もう人は殺さないと。さすれば、あなたが死ぬまで、この村は平和であり続けます。そして、あなたが死ぬ前に子孫を残し、その子孫にこの村の平和を願わせなさい。

 …もしも、約束を破ったら、あなたの周りの人が死にます。贄のように…」と。

 青年は女の話を信じ、村が平和になるよう強く願いました。そうして、村には元どおりの平和な日常が戻ってきました。

 青年は村を救った英雄となり、青年には村がある山の名前が授けられました。

 その名も、 ×××

ペラ


 青年は神社で会った、神と名乗る女と結婚し、一人の男の子を授かりました。後にその男の子は村の長になり、平和を願いました。

 そして、また村は平和になりました。


ペラペラペラペラ…


「…へぇ、だから俺たちはー」



 





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