第一声

久田高一

第一声

 ロロン星の宇宙探検隊は、800光年の旅路の末、ようやく目的地の「地球」を発見した。ロロン星の誇る大天体望遠鏡で初めて地球が観測されたとき、そのあまりの美しさに、火山と鉱物で覆われたロロン星の住人たちは夢中になった。そして、地球には知的生命体が存在する可能性が高いことがわかると、ロロン星人たちはいてもたってもいられなくなった。地球と友好を結び、いつでもこの美しい星に出かけられるようにすることが、ロロン星人達の目標であった。

 「隊長、どの辺りに着陸しましょうか。いっそのこと地球人が1番集まっているところにしましょうか?」

最年少の隊員が興奮した様子で言った。

「それはいかん。我々はまだこの星の言葉を知らない。意思疎通ができないばかりにつまらないトラブルが起きては敵わん。なるべく地球人の少ないところに降りて、情報を集めよう。」

 隊長の指示通り、宇宙船は人気のない夜の田舎街に着陸した。船外作業着に着替え、地球に降り立つ。辺り一面に田んぼが広がっており、夜のひんやりとした空気が隊員達を包みこんだ。

「なんて素晴らしい気候なんだ。これなら船外作業着は必要なさそうですね。おや、これは何だろう。」

そう言って隊員の1人が、中心に穴が開いている、薄くて平たいものを拾い上げた。裏返すときらきらと月明かりを反射している。隊長が解析機を近づける。

「ふむ。これは一種の記録媒体のようだ。この星のことがわかるかも知れない。早速再生してみよう。」

隊長は腕に巻いた万能装置に記録媒体を読み込ませた。すると、大きな建造物を背景に、地球人が何かを話している映像が再生された。しかし、記録媒体に傷がついていたのか、映像は20分ほどで途切れてしまった。

「途中で終わってしまったようだ。しかし、おかげで地球人の言葉を研究することができるぞ。さあ船内に戻ろう。」

 こうして3日間ほど研究し、すっかり地球人の言葉を話せるようになったロロン星人達は、ある都市の真ん中に降り立った。そして、野次馬の1人向かって、隊長は意気揚々と話し掛けた。

「初めまして。可愛いね。何歳ですか?初体験はいつ?………」

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第一声 久田高一 @kouichikuda

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