キジ君とコウモリ君~鳥たちのケンカの、お話~

久坂裕介

第1話

 昔々の、お話です。小さな島国にキジとコウモリが住んでいました。キジとコウモリは、とても仲良しでした。

 コウモリは昔、獣の一族と鳥の一族の戦いの時、どちらにもいい顔をしてしまいました。それで戦いが終わると、ひきょうもの、と呼ばれて、どちらからも仲間外れにされました。


 でもキジは、そんなことは気にしませんでした。なぜならキジは、とても優しかったからです。キジは、よく言っていました。

「君は昔は、ひきょうもの、だったかもしれないけど今は、そうじゃないから」

 だからキジとコウモリは、とても仲良しでした。




 そんなある日、北の大陸で、ゴシキヒワと隣に住んでいるヨーロッパコマドリがケンカを始めました。


 ゴシキヒワは言いました。


「お前は、ハクトウワシとチョウゲンボウとグルになって、俺とケンカをするつもりだろ? だから俺の仲間になれ。仲間になるまでケンカを続けるぞ!」


 ヨーロッパコマドリは答えました。


「分かったよ。ハクトウワシ君とチョウゲンボウ君とは、仲良くしないよ。だからケンカは、もうやめよう!」

「信用できん! お前が完全に俺の仲間になるまで、ケンカは続ける!」

「えー? 僕は一体どうしたらいいんだ?!」




 この話を聞いてキジは悲しくなりました。キジはケンカが大嫌いだからです。そこでコウモリに相談してみました。


「ねえ、コウモリ君。どうしたら2人のケンカを止められるかなあ?」


 少し考えてから、コウモリは答えました。


「うーん……。キジ君。君は、ひきょうもの、になる覚悟はあるかい?」

「え? 僕が、ひきょうもの、になれば2人のケンカを止まられるの?」

「うん。多分ね」

「うん、それで、いいよ! 僕、ひきょうもの、になるよ! だって、もう見ていられないよ! ヨーロッパコマドリ君とゴシキヒワ君はケンカを続けたせいで、もうボロボロなんだもん! 」


 コウモリは告げました。


「だったら、こうするといいよ……」




 キジは、まずゴシキヒワの家へ行き、言いました。


「ねえねえ、ゴシキヒワ君。ヨーロッパコマドリ君が言っていたよ。

『ゴシキヒワ君には、かなわない。完全にゴシキヒワ君の仲間になる。だからヨーロッパコマドリのお兄さんの家で話し合いがしたい』って。

 ねえ、どうする。ゴシキヒワ君?」


 ゴシキヒワは喜びました。


「そうか。そういうことならヨーロッパコマドリの兄貴の家に、行ってやろう」


 キジは次に、ヨーロッパコマドリの家に行って言いました。


「ねえねえ、ヨーロッパコマドリ君。ゴシキヒワ君が言っていたよ。

『ヨーロッパコマドリ君と仲直りがしたいから、ヨーロッパコマドリ君のお兄さんの家で待っている』って。

 どうする、ヨーロッパコマドリ君?」


 ヨーロッパコマドリは喜びました。


「ありがとう、キジ君。大事なことを教えてくれて。僕もすぐに、お兄さんの家に行くよ!」




 そしてヨーロッパコマドリの兄の家に、ゴシキヒワとヨーロッパコマドリがきました。


 さっそくゴシキヒワは聞きました。


「おい、ヨーロッパコマドリ。ついに俺の完全な仲間になる気になったようだな」


 あわててヨーロッパコマドリが答えました。


「え? 違うよ! ゴシキヒワ君が仲直りをしたいって言ったんじゃないの?」


 2人はキジに詰め寄りました。


「おい、どういうことだ! キジ!」

「そうだよ、ちゃんと説明をしてよ、キジ君!」


 するとキジは不敵な笑みを浮かべて、言い放ちました。


「ふっふっふっ。僕は、この時を待っていたんだよ。僕は実はゴシキヒワ君とヨーロッパコマドリ君も、両方とも大嫌いなんだよ。

 2人がケンカをしてボロボロになった今なら、どっちも倒せると思ったんだ!」


 するとキジは突然、ゴシキヒワとヨーロッパコマドリを口ばしで激しく、つつきました。


「いたっ、痛いぞ、キジ!」

「そうだよ、痛いよ、キジ君!」


 しかしキジは、つつくのを止めませんでした。

 2人は、ついに怒ってしまいました。そしてキジは、ゴシキヒワとヨーロッパコマドリに激しく、つつかれました。


 キジは音を上げました。


「うわー、やられたー! しょうがない、今日のところは、これで引き下がろう。

 でも憶えておいてね。2人がケンカをしてチャンスがあったら、またくるから!」


 そしてキジはヨーロッパコマドリの兄の家から、飛び立ちました。


 2人は、叫びました。


「待てー! 逃げるな、ひきょうものー!」

「そうだよ! キジ君は、ひきょうもの、だよー!」


 少しして、ゴシキヒワがヨーロッパコマドリに話しかけました。


「これはもう、俺たち、ケンカをしている場合じゃないな……」

「うん、そうだね……」

「よし! ヨーロッパコマドリ! お前は完全に俺の仲間にならなくてもいい!

 その代わりケンカをやめよう、そして2人でキジのやつを、やっつけよう!」

「うん、2人で協力してキジ君を、やっつけよう!」


 するとヨーロッパコマドリの兄が口を、はさみました。


「ちょっと待ってよ、2人とも!」


 ゴシキヒワとヨーロッパコマドリが聞きました。


「うん? 何だ、ヨーロッパコマドリの兄貴?」

「そうだよ、何だよ、お兄さん?」


 ヨーロッパコマドリの兄は答えました。


「確かにキジ君は、ひきょうもの、だよ。でも、だからってケンカで、やっつけるのはどうかな? ここは1つキジ君のようすを見るのは、どうだろう? ようすをみてから、やっつけるかどうかを決めたらどうだろう?

 それにまずは、ゴシキヒワ君と君の仲直りが先じゃないかな?」


 2人は顔を見合わせました。そして握手をしました。


「そうだな、もうケンカはやめよう。俺たちの敵はキジだからな……」

「うん、そうだね……」


 こうしてゴシキヒワとヨーロッパコマドリのケンカは、終わりました。




 キジは自分の家に帰ると、寝ころびました。


「うー、痛いよう……。でも本気で、つつかないと2人は協力しないからなあ……」


 コウモリは、キジの傷の手当てをしながら聞きました。


「どうだい、キジ君。ひきょうもの、になった気分は?」


 キジは答えました。


「うん、悪くないよ」



 そのあとゴシキヒワとヨーロッパコマドリは、キジが2人のケンカをやめさせるためにウソをついたことを、コウモリから聞きました。

 それを聞いたゴシキヒワとヨーロッパコマドリは、キジと仲直りをしました。


 さらに、ゴシキヒワとヨーロッパコマドリは、ハクトウワシとチョウゲンボウはグルになってゴシキヒワとケンカをするつもりはないことを知り、ハクトウワシとチョウゲンボウとも仲良しになりました。




   おしまい

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