ブルーの貝殻
白い薄雲のかかった空
太陽は見えない
シーズンオフの海
砂浜に人影はなく
クーラーボックスに
腰掛けた僕の耳に
波音だけが
ただ聞こえていた
プシッ
缶ビールを取り出し
ゴクリとひとくち
喉に感じる泡が
目の前の白波のようだ
初めて職場の歓迎会で
一緒に飲んだ君が
酔っ払った先輩に絡まれて
助けてあげたっけ
そんなことを思い出し
苦いビールを飲み干した
プシッ
何本目かのビールで
だいぶ酔いが回ってきて
恋人のいない僕に
誰か紹介してよと
頼んだあの日の
喫茶店のこと
思い出そうとして
でも
そのお店はもうなくなって
頼んだコーヒーの味さえ
今はもう思い出せない
プシッ
最後のビールを傾け
一度だけカラオケBOXに行った夜を
思い出す
なんで私の好きな歌ばかり歌うの?
そう聞いた
少し年上の君は
まるで少女のようにあどけない顔で
嬉しそうに笑った
座っていられなくなった僕は
砂も気にせず大の字になって寝転ぶ
白い薄雲のかかった空
まるで花嫁のベールのようだね
知らないよ
ただ僕が好きだった歌を歌っただけさ
寝転んだ僕の耳に
波音だけが
ただ聞こえていた
今ごろ君は
どこでチャペルの鐘を聞くのだろう
波音に消えていくメモリー
ブルーの貝殻だけを残して
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サムシングブルー(青いもの)は、聖母マリアの色で「二人の結婚が幸せなものになりますように」「花嫁が幸せになりますように」という象徴です。
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