ジンパパ感想19-2-21 家族もどきが壊れたら

19-2-21 家族もどきが壊れたら

https://ncode.syosetu.com/n0141ik/22/

の感想を書かせていただきました。

#ジンパパ感想

#ジンパパ感想19

#書き出し祭り

#書き出し祭り19


 「家族」をテーマとした文芸作品ですね。


 あらすじを読んだ時はちょっと驚きました。登場人物四人の台詞が切り出されているのですが、半分くらい、誰の台詞だかわからない。なので、最初は随分と不親切なあらすじだなと感じてしまいました。

 しかし、後で読み返してみると、物語自体の情報を抑えつつ、物語の雰囲気だけを伝える、面白い方法だなと思い返しました。映画の特報のようですね。なるほど。なるほど。


 さて、本文に入ります。互いの自我がぶつかり合い、共同体としての機能を著しく欠いた状態に陥った波良はら家の各人の視点を移動しつつ、人間模様を描いた作品です。特徴的なのはこの視点移動。一話ではカメラが前半の母視点から、後半の妹視点に変わります。その視点移動は「二人の声は、土砂降りの外にまで漏れ聞こえる。」という場面転換を挟むことでスムーズに行われます。そして、視点が寄ると個々の心情が透けて見え、抱える不満がつまびらかになります。心情が見えると同情したくなるあたり、今後、理不尽に妻に怒りを向けているだけのように見える父や、家を出て距離を置き妹を心配しているようでいてどこか無関心な姉にしても、視点が移り心情が見えてくると、また印象も変わるのかもしれません。


 気になったのは、「家族もどき」という言葉。血の繋がりの無いことを指すのか、単に家族としての機能が失われていることを指すのか。ちなみに、後者だとすると第一話時点での私のヘイトは、父を差し置き、お姉さんに向かっているかも、しれません。


 というのも。家族というものは、共同体として機能しているかどうかだけでは計れ無い繋がりを内包しているように思うからです。まして、戸籍を抜くといった、表面的、形式的な行為でバラバラになったりするとは思えないからです。先日、弟と死別して益々、家族というものを深く意識するようになりました。家族が本当にバラバラになるのはきっと、死別した時だけですね。


 その事に波良はら家も、一度壊れて、再生して気が付くのでしょう。そのプロセスで伴う痛みが、修復可能なものであることを願うばかりです。


 こちらの作品、コロナ禍の真っ最中に時代を設定していて、波良はら家もコロナ禍を食らってしまうのかもしれませんね。共に乗り越えた障害は、繋がりを強めますからね。今後の展開が楽しみです。


 以上です。感想依頼、ありがとうございました。

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