ジンパパ感想19-1-02 鏡映しの忌み子と、鰐の花婿

19-1-02 鏡映しの忌み子と、鰐の花婿

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の感想を書かせていただきました。

#ジンパパ感想

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#書き出し祭り

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 まず謎めいたタイトルから。「鏡映しの忌み子」。「忌み子」の正体は謎ながら、双子の存在を感じさせます。そして「わに」。日本では古来、「さめ」を指して「わに」と言っていましたし、あらすじによると、ヒロインの名は「卯咲うさ」。因幡の白兎が何か関係あるんでしょうか。

 さて、本文。

 怪しげな村の祭りの場面から始まり、場転後に主人公登場。この主人公、控え目にいって変わっていて、ぶっ飛んでます。


 まず、図書室で偶然ぶつかった女性の髪色だけで、自分と縁浅からぬ女性だと思い込み、思い込んだだけならいざ知らず、我に返って「首元から手を離」すことになるような行動……、つまり、彼女の首元を掴んで吊し上げちゃってます。

 さらに、別人だという説明を受け入れたのも束の間、入学したてのゼミ配属前の学部生が図書室になんの用だと詰問したり、かと思うと、髪色のせいで過酷な人生を送ってきたであろうことを想像し……女性をいきなり抱きしめる。


 感情むき出しで直情的な言動の数々に驚かされます。ちょっと想像してみてください。主人公をジンパパに置き換えてみましょう。私がいきなり見ず知らずの女性に

「髪の色で知ってる人かと思ったー!」と首を絞め、

「違ってたー! でも、なんでこんなとこにおんねん!」と言葉攻め、

さらに、

「その髪色綺麗だよー!」と抱きしめる。

 はい。事案一直線です。ポリスメーンされます。被害に合われた女性に、深刻なトラウマを植え付けかねない、大変な事案です。言い逃れできません。お巡りさんと嫁さんにこっぴどく叱られてしまうのは必至、必然というものです。


 ところが、この主人公、戌成いぬなりには、それが許されている。また、こんな仕打ちを受けていながら、ヒロイン、卯咲うさもケロッとしている。トラウマが残った気配はありません。それどころか、戌成いぬなりを自分の家に連れていきます。

 もちろん、それは卯咲うさ側にも理由(夢の話や数珠の話)があるからなのですが。


 どうにも突飛な言動と展開。でも、そこには理由があるはず。

 まず、戌成いぬなり。本人の言葉通りに、単に「文学部史学科郷土史専攻の博士課程後期二年」の普通の大学生なわけはない。恐らくは名が体を表している。どういう因果が巡ってそうなっているのかはわかりませんが、卯咲うさにその面影を見た悠巳ゆうみ卯咲うさの飼い犬だったのではないでしょうか?

 そう思って読み返すと、なるほど言動すべてが犬っぽい。

 だから、卯咲うさ戌成いぬなりを受け止めることができている、と。


追記

 いや……。犬じゃない。タイトルにある

わにの花婿」が片鱗すら出てこないって、おかしい。

 ってことは。戌成いぬなりわに(=さめ)なんだ。獰猛なさめの化身だと思って見れば、突飛な行動もわかる気がするし、因幡の白兎のわにを騙した兎と、騙されたと仕返しを被る兎を瓜二つの姿の悠巳ゆうみ卯咲うさに分けてみると……。

 ま、本当のところはどうなのか、わかんないんですけどね。


 まだまだ謎の核心に至る手前。物語も動き出したばかりですが、色々と仕掛けが凝らされている、そんな印象の作品でした。

 以上です。

感想依頼、ありがとうございました。

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