第194話 美少女神フワーデ
私のVRフワーデゴーグルには、フワーデが見ているダゴン教徒たちの驚愕の表情が映し出されている。ゴーグルをズラして艦橋のモニタを見ると、そこにはドローンによる映像が映し出されていた。
モニタ映像には、群がるダゴン教徒の先頭に立つフワーデの姿があった。
「フワーデの合図に合わせて、教会を破壊する。主砲発射準備!」
「主砲発射用意! 目標、ダゴン教会!」
ステファンの号令で、フワデラの主砲が教会に向けられる。
私がゴーグルを付け直すと、フワーデがダゴン教徒たちに向って声を張り上げていた。
「あなたちの神、ダゴンとヒュドラは、わたしによって撃ち滅ぼされた!」
フワーデの声が周囲に響き渡ると、ダゴン教徒たちが一斉に動揺する。
「もはやダゴンもヒュドラも、あなたたちを守ることはない!」
フワーデの腕がゆっくりとダゴン教会に向けられる。
「真の神であるわたしは、ダゴンとヒュドラの痕跡も残さない!」
フワーデの手のひらが大きく開かれる。
「滅びよ!」
フワーデの言葉に合わせて、主砲が発射された。
「ってぇぇぇぇえ!」
ドンッ! ドドーンッ!
教会の上部が吹き飛び、そのまま崩れ落ちていく。
「滅びよ!」
「ってぇぇぇぇえ!」
ドンッ! ドドーンッ!
ドンッ! ドドーンッ!
ドンッ! ドドーンッ!
護衛艦フワデラのMk.45 5インチ砲が立て続けに発射される。発射の度に教会の建物は崩壊し、その瓦礫が海面へと落ちていった。
ダゴン教徒たちは、フワーデの言葉に合わせて、教会が崩壊していくのを見て、呆然としていた。
「滅びよ!」
「ってぇぇぇぇえ!」
ドンッ! ドドーンッ!
ドンッ! ドドーンッ!
ドンッ! ドドーンッ!
そして、教会は跡形もなく崩れ去った。
「「「!?」」」※ダゴン教徒
いつの間にかダゴン教徒たちは、ダゴンやヒュドラに対するイアイアを止めていた。全員が膝を屈し、怯えた目でフワーデを見つめている。
桜井船務長が、ドスの効いた声を張り上げた。
「これが真の神、女神フワーデの力である! 頭が高い! 皆ひれ伏すがよい!」
「「「ギョギョーッ!」」」
ダゴン教徒たちが一斉にフーワデに向って頭を下げた。
「「「ギョギョーッ!」」」
桜井たちの近くにいた三人の半魚人たちも、同じようにフワーデにひれ伏す。
ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ!
「か、艦長……アレを見てください」
インカムを通じて桜井の声が聞こえてきた。
アレというのをフワーデに見て貰うと、VRフワーデゴーグルを通して驚くべき光景が見えて来た。
海面から半魚人たちが次々と上陸し始めている。
ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ! ヌチャ!
「「「ギョギョーッ!」」」
最終的に総勢50名程の半魚人が、フワーデの前に並んでひれ伏した。
「こ、これは……」
驚く私の声をよそに、フワーデが元気よく声を上げる。
「信者を増やすチャンスね!」
「はぁ?」
困惑する私の隙をついて、フワーデがその場にいる全員に向って声を張り上げる。
「わたしは美少女神フワーデよ! わたしの怒りに触れたダゴンとヒュドラは、緑の血を巻き散らして海の藻屑と消えたわ!」
「「「おぉぉぉお!」」」
ダゴン教徒たちが、一斉に恐れおののいた。
後の調査で分かったことだが、ダゴンとヒュドラが緑の血であるという事実は、ダゴン教の秘蹟の一つだったらしい。高位の神官たちは、このときのフワーデの言葉を聞いて完全に心が折れたということだった。
高位の神官たちが、地面に完全に崩れ落ちるのを見て、全てのダゴン教徒がフワーデを畏れるようになった。
「今後は真の美少女神であるフワーデを崇めなさい! わたしはあなたたちに生贄を求めない! わたしが求めるのは、あなたたちの賞賛よ!」
「「「ギョギョーッ!」」」
「さっきの気持ち悪いイアイアは今後一切禁止よ! これからはわたしを称える歌とダンスを奉納しなさい!」
ダゴン教団と海から上がってきた半魚人たちが、一斉にフワーデに頭を下げる。
インカムからフワーデの通信が入ってきた。
「タカツ! イタカを4体飛ばして良い?」
「別に構わんが……何をする気だ?」
と返事をする間もなく、護衛艦フワデラからスピーカーを積んだイタカが飛び立った。
ジャン♪ ジャン♪ ジャーン♪ ジャンジャンジャンジャジャーン!
海上から大きな音を立ててイタカが、フワーデの元へと近づいていく。
ジャン♪ ジャン♪ ジャーン♪ ジャンジャンジャンジャジャーン!
港にいる者全員が、何事かと上空から近づいてくる音源の方を見上げていた。
VRフワーデゴーグルを通してフワーデの会話が聞こえてくる。
「えっと……この中だとフワーデダンスを踊れるのはシンイチとライラだけね。シンイチ! ライラ! みんなにダンスを教えてあげて!」
「へっ!? お、俺が? ナンデ!? というか、ちょっと自信ないんだけど……あんまり覚えてない……」
「シンイチさま! わたしはちゃんと覚えてますので、わたしの後ろで続いてください」
「さっすがライラ! シンイチ! ライラのマネをすればいいわ! ちゃんと踊れなくてもいいからね! こういうのは勢いが大事なの!」
「えっ……えぇぇっと……艦長? 桜井さん?」
シンイチが私たちに助けを求めるようにインカムを通じて言ってきた。
フワーデが何をするつもりなのか知らないが、ここはもう任せてしまおう。
「シンイチ……すまんがフワーデの言う通りにしてやってくれ」
「は、はぁ……」
シンイチの溜息を吐きつつも、ライラに手を曳かれてフワーデの前に出ていく。
ダゴン教徒と半魚人たちの視線が、シンイチとライラに集まった。
ジャン♪ ジャン♪ ジャーン♪ ジャンジャンジャンジャジャーン!
ドローンが、フワーデの上空に到着した。
「いい! これから二人が美少女神フワーデを称える歌とダンスを奉納するわ! みんなも一緒に歌って踊って覚えていってね!」
ジャン♪ ジャン♪ ジャーン♪ ジャンジャンジャンジャジャーン!
ライラが手をくるくると廻しながら、ダンスを開始した。
幼女ライラの動きはキレッキレで、めちゃくちゃ可愛い。
少し遅れてシンイチも続くが、その動きはまだまだ照れがあって、微妙にテンポに乗り切れていない。
スピーカーから歌が流れ始める。
『フッ、フッ、フワーデ、フワーデのー 乙女のハートがときめくのー!』
VRフワーデゴーグルに、カラオケのように歌詞が表示された。さらに視界の右上に小さな字で、
『作詞作曲、ダンス振付:山形P』
「またおまえかーい!」
私は思わず声を上げてしまった。
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