第180話 旅立つ船は~♪
~ 第二次悪魔勇者討伐開始 ~
田中の結婚式が無事に終わり、各国使節団との交渉も一区切りついたことで、我々は二人目の悪魔勇者討伐について本格的に動き始めた。
これより護衛艦フワデラはトゥカラーク大陸へ、護衛艦ヴィルミアーシェはゴンドワルナ大陸へと向かうことになる。
こうして二つの大陸に出向かなければならなくなったのは、天上界が悪魔勇者の所在を特定できていないからだ。しかも、いくつかある候補の中で、急速に勢力を伸ばしつつある魔族がいるというだけで選ばれているに過ぎない。
最悪、どちらにも悪魔勇者はいない可能性もあるのだ。それでも、何も手掛かりがない以上、我々としては二つの大陸を調査するしかない。
古大陸とも呼ばれているゴンドワルナ大陸については、護衛艦フワデラが一度訪れたことがあるので、それなりの知見が積み上がっている。おそらく古大陸にいるミライやガラムからは協力を得ることができるだろう。
それに古大陸には帝国からの転生者が二人もいる。彼らの力も借りることができるかもしれない。転生者のひとりは、ボルヤーグ連王国の貴族の息子だ。彼の協力があれば、王国との接触もスムーズに運ぶだろう。
田中の結婚式が行なわれている最中、シュモネー夫人が平野に、ボルヤーグ連合王国の宮廷魔術師長宛の紹介状を手渡していた。どういうわけか私は紹介状が本物であることを確信しているのだが、平野には一応、ロイド伯に確認してもらうよう言っておいた。
それにしてもシュモネー夫人ってホント何者なんだろうか。古大陸では凄い冒険者だということだったが……うん、あまり考えないようにしよう。
政治工作が中心の護衛艦ヴィルミアーシェに対し、護衛艦フワデラは未知の大陸を探索することになる。天上界の情報では大型の妖異が多く発生しているということだし、戦闘が発生する蓋然性は高いだろう。まぁ【幼女化】スキルが使えるシンイチがいるので、それほど心配はしていないが。
両艦共に出航から三カ月後に一度リーコス村に帰還することになっている。もし悪魔勇者が見つかっても、護衛艦ヴィルミアーシェには直接の戦闘を避けるように指示している。
悪魔勇者には護衛艦隊の全力を持って戦いに挑むつもりだし、できれば前の悪魔勇者と同じく、シンイチに【幼女化】してもらった上で討伐したいところだ。
~ 護衛艦ヴィルミアーシェ出航 ~
先にリーコス村から出航したのは、平野艦長率いる護衛艦ヴィルミアーシェだ。私たち護衛艦フワデラは、その三日後に出航することになっている。
そして今、護衛艦フワデラの後甲板では、音楽隊による演奏が行なわれる中、護衛艦ヴィルミアーシェが出発するのを見送っていた。私はヴィルミアーシェ村長と並んで、後甲板から手を振り続けている。
「さらば~♪ リーコス~♪ 旅立つ船は~♪ ミサイル~♪ 護衛艦~♪ ヴィルミアーシェ~♪」
私の隣では、ヴィルミアーシェさんが真っ赤なスカーフを一生懸命に振っていた。
護衛艦ヴィルミアーシャの甲板では、並ぶ乗組員たちが整列し、見送る我々に向って手を振っていた。
きっと男性乗組員の大半は、ヴィルミアーシェさんに手を振っているのだろうな。
「タカツ司令、それでは行ってまいります」
インカムから平野艦長の通信が入る。
「任務の成功を祈る。向こうに着いたら、ミライに愛してると伝えておいてくれ。あとミーナ嬢にもな」
「了解しました。お二人と奥様に必ず伝えます」
「おいぃ! 勝手に伝える対象を増やすな!」
音声だけの通信なので、平野の顔を見ることはできないが、彼女がニヤリと笑っているのが目に浮かぶ。
これからしばらくの間、平野とこうした漫才が交わせないのは寂しい。
「まぁいい。だが必ずお前が伝えるんだぞ。忘れるな! この作戦において最重要目標は……」
私は、護衛艦ヴィルミアーシェの艦橋に向けて一生懸命に手を振りながら言った。
インカムから平野の声が聞こえてくる。
「私たち全員が無事に帰ってくること……ですね。司令こそ、これから未知の大陸に向かうのですから、目標を忘れないようにしてください」
この会話を最後に、護衛艦ヴィルミアーシェは水平線の彼方へ消えて行った。
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