第44話 女神クエストの報酬
現在、護衛艦フワデラは港湾都市ローエンからリーコス村へ戻る海の途上にいる。
古代神殿の破壊後に派遣した調査チームは多くの魔鉱石を持ち帰ってきた。
フワーデと補給科が算出すると、魔力転換炉で燃料や電力だけでなく水や乳酸菌飲料に変換しても、おそらく1年分には相当するだろうということだった。
CICでメガネ男子の黒淵補給科長の報告を聞いた私は、思わずホーッとため息をつく。補給問題はいつでも私の胃をキリキリとさせていた。いつも無意識のうちに負担を感じていたのを自覚する。
「でもでも弾薬や兵装の複製にはすっごく魔力を消費するから、戦闘が続くと一気に無くなっちゃうかも!」
「そ、そうか……そうだろうな」
ようやく癒されかけた私の胃袋にフワーデがキリキリブローを叩き込んできた。そのとき突然フワーデのアホ毛が真っ直ぐに立った。
ピコンッ!
「フワーデ? どうした?」
「女神クエストの報酬が降りてきたみたい! モニタに出すね!」
≫ 〇 妖異ミ=ゴの基地を破壊せよ!【達成】 報酬:EON3憶ポイント
≫ 〇 妖異ミ=ゴの狩猟【89体達成】 報酬:EON6230万ポイント
「あと、クエストとは別に討伐報酬として2億ちょっとポイントがもらえたよ!」
「それを入れても明らかに赤字ですね……」
モニタを見ながらメガネ男子の黒淵補給長がため息を吐いた。それを聞いて私は思わずうなだれる。
「タクティカルトマホーク10発も撃っちゃったしなぁ。こりゃ女神クエストってそれほど美味しいものではないな」
隣に座っている平野副長が
「確かに基地破壊クエストについては大きな赤字ですが、ミ=ゴの狩猟についてはそうでもないのでは?」
と言うのを聞いた黒淵補給長が電卓を取り出してポチポチと計算を始めた。
「確かに狩猟クエストだけに絞ってみれば、ギリ黒字になってますね」
黒淵の言葉を聞いたフワーデが電卓を覗き込む。
「つまり黒字にできるかどうかは、クエストの内容と対応次第ってことだね!」
「むやみに女神クエストを受注するのはよろしくないってことだな。それはともかくクエスト達成は達成だ。とりあえず今日のところは皆で祝おうじゃないか」
私は黒淵補給長に
「レッツパーリィィ!」
その日、フワデラの食堂では乗組員たちに豪勢な食事が振る舞われた。さらに、一人一万円まで
結果、大量のスナック菓子が艦内に溢れかえることになった。
~ 再開の個別面談 ~
リーコス村に残っている乗組員たちとの通信が再開できるようになるまで、私は個別面談を進めることにした。
士官室では私と平野副長、イケメン男の草壁医官、そしてフワーデが、緊張でカチコチになっている土岐川早苗二等水兵を前にしていた。
「土岐川二等兵のスキルは……【チョーウける真偽判定】ですか。これはどういうものです?」
平野副長からの質問に土岐川二等水兵は身体を強張らせながら答える。
「は、はい! 自分のスキルは所謂『ウソ発見器』のようなものです」
「ウソ発見器? 相手が嘘をついているかどうかを、そのスキルで見分けることができるということですか?」
「そ、その通りであります! 対象は一人! 発動から30分継続するであります!」
「ふむ……。では試してみても良いかしら?」
「はい! 事前に指示があった通り準備はできています! どうぞ! であります!」
「それでは……」
と平野副長は考える仕草をしながら、私と目を合わせる。
「艦長……」
「お、おう? どうした?」
「艦長は見た目は幼女ですが、中身は元の艦長のままですよね」
「あぁ、そうだが?」
「ふむ……」
平野副長が土岐川二等水兵に目を向けて彼女の表情を確認する。その土岐川は緊張で額から汗を流し始めていた。おいおい大丈夫かと心配になるくらいの汗だ。
平野副長が私の方に目を戻す。
「艦長……」
「お、おう? どうした?」
「リーコス村で屋外入浴装置を設置したとき、確か女湯に入っていましたよね?」
「そ、そんなわけないだろ!」
「チョーウケルぅぅぅう!」
突然、土岐川二等水兵が私を指さして爆笑する。なんじゃこいつ!? 頭がおかしくなったのか!? と思うくらいの変化だった。
ただ土岐川の目は笑っていなかった。自分がトンデモないことをしてしまっているという恐怖がその瞳に浮かんでいる。
「あわわわわわわわわ! も、もうしわけありません……こここれスキルのせいなんです、いいい一度発動するとささ30分はこの状態が続きますでする!」
「そう……まだまだ尋問できるのね」
「はぁ!? 平野! これは面談であって尋問ではないぞ! というか誰をじんもn――」
「艦長……土岐川二等水兵にはこの面談の前に艦長にスキルを発動してもらっています」
「なん……だと……」
平野副長の絶対零度の冷い声に私は思わず固まってしまう。
「女性乗組員の入浴時間に合わせて、水陸機動隊の幼女と一緒に紛れ込んでいましたよね?」
「そ、そんなことするか!」
「チョーウケルぅぅぅう!」
土岐川ぁぁぁぁぁあ!
こうして私はそれから20分近く尋問された。
土岐川二等水兵はずっとチョーウケテていたが、私の方はずっとチョー泣けていた。
「艦長、デバガメ仲間たちと一緒にお尻ペンペンの刑か、奥様への詳細レポートかどちらが良いですか?」
「……お尻ペンペンで」
結局、両方の刑に処せられた私であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます