第3話 七柱の女神会議 Side:女神たち
~ ドラヴィルダ ~
惑星ドラヴィルダには7つの大陸が存在している。
① 竈と燻製の女神ラヴェンナが管轄する最大のゴンドワルナ大陸
② 弓と純潔の女神エルフリンが管轄する森深きラミニスタ大陸
③ 秩序の女神ラーナリアが管轄する豊かなるフィルモサーナ大陸
④ 知識の女神トリージアが管轄する最先端文明があるトゥカラーク大陸
⑤ 闇の女神シャリンが管轄する暗黒のミコラシア大陸
⑥ 戦いの女神ヴァルキリエが管轄する戦を貴ぶファフナール大陸
⑦ 融和の女神フランソルが管轄する八百万諸島
それぞれの大陸を司る7柱の女神は、緊急の女神会議を開いていた。会議を招集した女神ラーナリアがほかの女神たちに状況を伝える。
「みんな聞いて! 聖樹ミスティリアが倒れたのは、悪魔勇者が二人も召喚されたことが原因みたいなの!」
悪魔勇者という言葉を聞いた女神たちの顔が、一斉に青ざめる。戦神であるヴァルキリエでさえ、その顔に暗い影を浮かべていた。
「悪魔勇者ですって!? そんなのが一人でも現れたら、この世界が崩壊しかねない脅威だというのに、二人もなんて……」
闇の女神シャリンがもともと暗い表情をさらに暗くしてつぶやいた。
「それだけじゃない。片方の悪魔勇者は、12人の眷属を引き連れて召喚されてるみたいなの」
女神ラーナリアの言葉を聞いて、その場の全員が一斉に息をのんだ。
「とにかく! 私たちは早急に手を打つ必要があるわ。聖樹ミスティリアが倒れてからというもの、妖異たちの侵入頻度が急激に増えてるのよ!」
「問題は数だけではありません。わたくしの島々には、明らかに以前より高位の妖異が出現するようになっています。もはや既存の勇者による対応だけでは苦しくなってきている」
「悪魔勇者たちの召喚場所はどこ?」
「わからないわ! 悪魔勇者のものと疑わしい召喚が、ほぼ同時期に全ての大陸で行われているの!」
「ラヴェンナもラーナリアも、召喚した勇者が行方不明になってなかった? 怪しいんじゃない?」
「もしかすると、悪魔勇者に殺されてしまったのかもしれません」
「それは疑ってかかるべきね」
「二人とも勇者召喚したばかりでしょ? ということは、しばらく新しい勇者を呼べなくなってしまったということよね」
「
「それじゃ駄目よ。この世界の理に縛られた神命勇者では力不足だわ。悪魔勇者はもちろん、彼らに引き寄せられる妖異にだって勝てるかどうか。だいたい……」
「ちょっと待って!」
知識の女神トリージアが銀縁の眼鏡をクィッと引き上げて声を上げる。
「いま最優先にすべきは悪魔勇者を排除することでしょ? でも、おそらく普通の勇者じゃ手に負えない。よしんば勝てたとしても、おそらく長く激しい戦の末ということになるでしょうね」
「そんな時間は掛けてられないわ! 討伐までの時間が長引くほど深淵の眷属たちが引き寄せられるというのに!」
「それだけじゃない! ドラヴィルダの地下深くに封印されている妖異どもも目を覚ましてしまうかもしれない!」
「そんなことになったら、もし悪魔勇者を討伐できたとしても……」
「この星は生命のない荒野になってしまうでしょうね」
女神たちがバラバラと発言し続けるのを、女神トリージアが制止する。
「聞いて!」
全女神の視線が女神トリージアに向けられた。
「私たち全員が力を合わせて強力な勇者を召喚するの! 合同召喚なら、勇者召喚枠がなくなったラヴェンナとラーナリアも参加できるわ!」
「その方法があったわね!」
「早速、はじめましょう!」
その場で女神たちは輪になって手をつなぎ、勇者転生の合同召喚術式を編んだ。光で描かれた複雑な紋章が輪の中に浮び輝きを放ちはじめる。
そのとき――
「あっ、誰よ、転生トラックなんて申請したのは!?」
「えっ? いけなかった?」
「別に悪くはないけど、いくらなんでも10トンって大きすぎない?」
「派手に行きましょうよ! ……って、誰? 転生ターゲットに変なイメージ入ってるよ?」
「あらら、それって最近シャリンがドハマリしてるネトゲじゃない?」
「ちょっ、ま、待って、いったん中止に……」
女神たちが合同召喚を中断しようと目くばせをしたとき、女神ラヴェンナがとんでもない一言を発する。
「あっ、やっちゃった!」
女神ラヴェンナの一言を機に、光の紋章が急激に輝きを増し、まばゆい光が周囲を白一色で包み込む。
チュドーーーーン!
爆風が女神たちに吹きつけた。
「「「ラヴェンナァァァァ!!」」」
「ひぃぃぃ! ごめんなさいぃぃぃ!」
しかし女神ラヴェンナの失敗にも関わらず、女神たちによる合同召喚は無事に終了していた。
そして――
女神たちによって仕事を委任された転生トラックは、ちょうど補給を終えて出港しようとしていた、護衛艦フワデラの艦首に出現する。
こうして――
護衛艦フワデラ及びその乗組員は、異世界ドラヴィルダへと転移させられたのだった。
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