私が恋愛に至らない理由
縁乃ゆえ
出会い
不思議な力
それはいつの事だったろう。
私は知らぬうちに人を知ってしまっている。
まだ何も知らないうちから――。
時は明治大正、片田舎。
男の名は
私の名は
それだけ知れば、あとは自然と出来るのだろう。
人もする、いや、人だからこそする『恋愛』というものが――だが、私にはそれができない。
「どうした?」
この人はそう言う前から知っていた。
とても噓をつく人ではないことくらい分かっていた。
私の予想を超える事など決してない。
何事もすでに決められている。
洗脳とは違う時点でもうすでに進んでいる。
予想が出来る。
だから――。
「いいえ、何も」
私はこの人とは恋愛をしない事にした。
した所でこの人はこういう――にかぁ! と笑う明るい陽気な話し方をする
「ちょいっと、あんさんには手こずるねぇ~」
「それはどうも! 俺はお前みたいなのが嫌いだ!」
そう言って、この人はその人を手に持っていた刀で斬って捨てた。
叫べば良かったのだろうか、分からない。
無言のままそれを見ていた私にこの人は言う。
「大丈夫か? お化けは嫌いか?」
そういう事ではなく、心配してこちらを見るが、心配する所が違う。
「お、お化け?」
やっとのことで声を出した自分に春成は言う。
「ああ、この屋敷にはそれがうようよいるんだ。だから、化け物退治だな! それからだ、気楽にここで暮らせるのは!」
あまりに訳が分からなくなってしまった。
「どういうこと?」
それ以上、声の出せなかったか弱い自分に春成は言う。
「言っただろう? 都で会った時に、お前にお化けを見ることはできるか? って。それでお前はできないと言った。だが、自分には不思議な力がある。それが何なのか知りたいって」
「え、そんなこと言いましたっけ?」
「言った。夢の中でだがな」
そう言って、彼は笑った。
ちゃんと人の目を見て言う彼に苦笑いもこちらは出なかった。
夢の中の話をされても困る。
「あなたが私に手紙を出したのはそういう理由ですか?」
「――ああ、君のその不思議な力に俺は興味津々だ。だから、俺は君の住所を調べ上げ、手紙を出した。ここに暮らしませんか? と言って、ひょいひょいと来る君も君だが、お化けが見れない君でも分かるらしいからにはそういう類いの力はあるとみた。だから、俺は気兼ねなく好きに出来そうだ」
こちらもこちらで何やらあるようだし。
「私の住所はどうやって?」
「昔から付き合いのある忍びの末裔というものを使ってな、まあ、君を殺しはしないさ、これは霊験あらたかな――」
よく分からない話を聞く気にはなれなかった。
この人物、侮れない。
それしかもう感情が沸き上がって来なかったからだ。
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