第2話 夏休み
『続きましてお天気です』
テレビは今日も雨マークの天気予報を映し出している。
今日も雨か。なんて考えることもなくなった。
「
一緒に住んでいる叔母の
朝食はいつも由香が作ってくれていて、メニューはいつも同じベーコンエッグと白米に味噌汁。
僕は今年の夏休み、叔父の
体が弱かった母は僕が一歳になる前に亡くなり、父も中学三年の冬に亡くなった。
それを相続して今は祐樹がひとりで住んでいる。
ふたり曰く「高校二年生なんだから青春しとけ」とのことだ。
ひとりでマンションにいてもいいのだが、一か月もひとりにしておくのは心配らしい。
それに、ふたりには随分と助けてもらっているので拒否するつもりはさらさらなかった。
「大丈夫ですよ。神奈川からここまでもひとりで来ましたし、祐樹さんとも連絡取れますから」
由香は僕の答えを聞いて安心したようだ。
朝食を食べ終わり洗い物をしていると由香が封筒をテーブルに置いた。
「これ新幹線の切符に使ってね。じゃ戸締りよろしく」
それだけ言うとキャリーケースを引きながら慌しく家を出て行った。
皿洗いを終えて中身を見ると切符代以上にお金が入っている。
バイトをしているので切符代はいらない言っていたのだが準備してくれていたようだ。
お礼のメッセージを送ると『楽しんで!!』と手を振っている柴犬のスタンプが送られてきた。
『~に到着です。お忘れ物の無いように……』
最寄駅から新幹線と電車を乗り継いで1時間半ほどで約束の駅に到着した。
夏休みだが田舎の駅なので駅にはまばらに人がいるだけだった。
海風が構内に入ってきて、夏の暑さと雨の湿気をゆっくりと流してくれる。
潮の匂いが懐かしい。
「新太君」
駅を出ると祐樹に声をかけられた。
待ち合わせの時間には少し早かったが先についていたようだ。
茶髪に焼けた小麦色の肌。ガタイもいいのに仕事は在宅らしい。
最後に会ったのは約二年前だがあまり変わっていない様子に安心する。
「お久しぶりです。お世話になります」
軽く会釈すると祐樹は僕の背中を叩きながら「固くなるなって」と笑った。
車の中で祐樹に高校生活の事や、由香との生活の事などを質問された。
話しているうちに見慣れた景色に変わっていた。少しずつ潮の匂いが強くなる。
久々の実家の匂いは心地よかった。居間の畳やテレビ、何も変わってないなと思いながら辺りを見渡す。
祐樹が「ただいまー」と言うと家の奥からパタパタと小さい足音を立てて女の子がやってきた。
僕が居ることに気が付くなりサッと祐樹の陰に隠れてしまった。
一瞬見えた感じまだ小学中学年くらいだろうか。
「こんにちは」
とかがんで挨拶してみるが、女の子は祐樹の後ろから出てこない。
「めい、挨拶して」
祐樹は少し呆れたように挨拶をするように促す。
めいと呼ばれた女の子は
「こんにちは」
と小さな声で挨拶を返し、奥の部屋にパタパタと走って行ってしまった。
「祐樹さん結婚してたんですか?」
祐樹は独身だと思っていたので、家に子供がいることに驚いた。
すると祐樹は「違うよ」と笑った。
「姉さん言ってなかったのか。ちょっと知り合いの子預かっててさ、人見知りだけどよかったら仲良くしてあげて」
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