第54話 バイク旅はやはり楽しい

バスに乗り遅れた彩葉、愛琉、ローマス校長の3人は、千代田石岡ICから常磐道に乗ると上りの東京方面に走っていく。

彩葉が事前に交通状況を調べておいたので、既に渋滞が始まっている首都高を避けて圏央道から中央道に向かうことになった。

つくばJCTまで来た3人は、圏央道の久喜白岡方面に分岐して埼玉方面へ進んでいく。

ここから久喜白岡JCTまでは対面通行となるので、前に遅い車両が走っていると急いでいる時はストレスでしかないが幸いにも圏央道はガラガラで快適に走行ができる。


「いやぁ、最高ねー!」


愛琉は一人だけ大はしゃぎしながら高速を楽しんでいる。

あまり大きな声を出されるとインカムで繋がっているので愛琉の無駄にデカい声が入ってくるので鬱陶しいが、まぁ騒ぎたい気持ちもわかる。

圏央道に入ってからしばらくすると、ローマス校長が休憩できるPAが自分達が走る区間には菖蒲PAと狭山PAしかないのでどちらで休憩を取るか?と聞いてきたが彩葉と愛琉は八王子JCT付近が毎回渋滞することはわかっていたので、圏央道では休憩せずに中央道に入ってからどこかのSAやPAで休憩を取ることにした。

車やバイクで旅をする上で休憩を取ることは大事なことだが、渋滞しやすいポイントの近くで休憩をしている間に渋滞が始まって逆にストレスや運転による疲労になってしまうこともある。

こればかりは何度も走って経験を積むしかないのだが、関東圏内の高速の渋滞ポイントを何度もバイクで走っている彩葉と愛琉は渋滞しやすい時間帯などは完璧に把握している。

3人は久喜白岡JCTを過ぎて対面通行から2車線になるとさらに速度を上げて一気に進んでいく。

渋滞にハマることもなくあっという間に東京都に入ると八王子JCTで中央道の甲府方面に分岐すると「とりあえず談合坂SAで休憩しましょう」とローマス校長が言ってきたので、彩葉と愛琉もそれに同意する。


中央道をしばらく走った3人は談合坂SAの入口が見えてきたところで、先頭を走っているローマス校長が左手の人差し指で看板を示すと彩葉と愛琉は気づいたのかヘッドライトを1度だけパッシングしてローマス校長に伝えると3人は談合坂SAに入っていく。

バイクの駐輪スペースにバイクを停車させた3人は、とりあえずひと息ついた。


「ここまでスムーズに来れてよかったですね!それにしても如月さんと二階堂さんは高速も慣れてますねぇ、この調子なら岐阜まで問題なさそうですね」


ローマス校長が嬉しそうに言っている姿を見て、生徒とバイクで修学旅行を楽しむ校長先生なんて全国探してもあなただけだと彩葉と愛琉は思った。


「バス組は北関東道のルートから向かってるんですよね?向こうはどのあたりなんでしょうね」


彩葉がそう言うとローマス校長は「あなた達の先生に聞いてみましょう」と彩葉達の担任の新庄先生に電話をしてみた。

ローマス校長は少し離れたところで電話で話しているうちに彩葉と愛琉はジェスチャーでトイレに行ってくることをローマス校長に伝えると足早にトイレに向かった。


「横川とかちらっと聞こえたから横川SAかな?」


愛琉が腕を組みながら彩葉に言ってきたが、確かに修学旅行のしおりにも横川SAに寄ると書いてあったし予定通り行っていればそのあたりだろう。

トイレを済ませると、ローマス校長は既に電話を切って彩葉と愛琉を待っていた。


「如月さん!バスは今、横川SAでトイレ休憩に寄ったそうです!ちなみに我々がバイクで向かっていることは秘密にしてありますよ」


ローマス校長は笑いながら軽いノリで言っていて、彩葉はこの校長はマジで普通じゃないと心底思った。

しかし、それならばこっちとしても好都合だし心置きなくバイク旅を楽しませてもらうことにしよう。


3人は十分に休憩を取ったので再びバイクのエンジンを始動すると、さっきと同じ順番で本線へと戻っていく。


バイクで現れたらクラスメイトや新庄先生はどんな反応をするだろうか?


そう思うとなんだか楽しくなってきた!





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