第30話 バイトがしたい

夏休みの初日。


彩葉の父・啓司が残したKawasakiの名車z400fxを乗るようになって思ったことがある。

それはいろんなところに出掛けるようになってお金を使うことだ、毎月蓮が生活費とバイクの燃料代や基本的なメンテナンス代(オイル交換など)としてある程度纏まったお金を用意してくれるが、生活の為の乗り物だけではなくなったバイクにかかる費用を蓮に出してもらうのも気が引けてきた…

彩葉も立派な高校生でアルバイトができる年齢になったし、そろそろ自分でお金を稼いでバイクの維持費やツーリング費用を賄っていきたいと思った。


だがバイトと言ってもいろいろあるが、具体的にどういう職種を選べばいいのだろう?

自分に合った職種?それともお洒落な職種?時給が高くてそこそこ稼げる職種?彩葉は何を選べばいいのかよくわからない。

とりあえずスマホでバイト求人情報を調べてみることにした彩葉はリビングのテーブルの上に置いていたスマホを手に取った。

高校生のバイトの定番であるコンビニバイトを調べるが、彩葉の家の周りにはコンビニなんてあるわけないのでコンビニの案は自ずと没になる。

一応、北海道をメインで展開している地方コンビニはあるが求人の募集をしている様子はない。

それではお洒落な職種で探してみたが近くにカフェがあるわけでもないしお洒落な職種を探すのも困難な為、この件も没となる。


バイト探しで途方に暮れていると、スマホの着信が鳴った。

彩葉はスマホの画面を確認すると小中一貫校時代の担任の京香からだった。


『もしもし、しばらく連絡しなかったから様子が気になって電話したんだけど元気にやってる?』


京香は彩葉の事が気になって電話をかけてきた、彩葉は「ちゃんと元気にやってますよ」と言うと京香は少しホッとしたような感じだった。


「実はバイトをしたいと思っていて…なかなか良いのがなくて…先生何かいいバイトないですかね?」


彩葉がダメ元で京香に言ってみると「それなら父さんのバイク屋でバイトしてみたら?」と予想もしてなかった返答が返ってきた。

ちょうど京香の父・剛のバイク屋は、人手が欲しいと思っていたみたいでバイクが好きな若年層の人を雇いたかったみたいだ。


『もし、うちのバイク屋でバイトしてみるなら父さんに言ってみるけど?彩葉ちゃんなら知り合いだし、私から言えば即採用だと思うわよ』


バイク屋でバイトをすれば整備の知識やスキルを得ることもできるし、自分のバイクだって点検や修理をすることができる。

彩葉は「先生の実家のバイク屋でバイトしてみたいです」と京香に言うと、父の剛に伝えておくと言って電話を切った。


電話を切ってから数分したら再び京香から電話がかかってきて『OK!採用だそうよ!今からうちにこれる?』とあっさりバイト先が決まってしまった。


彩葉は「今から伺います」と電話を切ると、玄関の鍵を閉めてガレージに停めてあるFXのエンジンを始動する。

季節はすっかり夏なので5分ほどの暖機で十分なので、ヘルメットとグローブを身に着けると京香の家までFXを走らせる。


京香の家の隣でやっているバイク屋に着くと、京香と剛が事務所スペースの椅子に座っていた。

剛が彩葉が店内に入ってきたことに気づくと、椅子から立ち上がって事務所スペースに手招きする。


「おう!いらっしゃい!早速バイトについて説明すっからこっちに座んな」


彩葉はペコッと会釈すると事務所スペースの椅子に座る。

剛はバイト内容の説明を始めた、まず彩葉がやることはバイクの洗車や磨き、店の掃除、近所の人から修理依頼され修理が終わった車両の自走による返却をすることだ。

ただ、彩葉は普通二輪免許しか所持していないので2tトラックによる輸送や大型バイクの自走は不可なので400cc以下に限られるが…


「とまぁ…こんな感じだな!なんかわかりにくかった説明の部分とかあったか?特にないならシフトを決めようか」


彩葉が「大丈夫です」と言うので剛は早速、シフト表を彩葉に渡して出勤できる日を決めてもらう。


「休みたい日があったら遠慮なくシフト表に書いておいてくれよ」


彩葉が休みたい日は、ルナが普通二輪免許を取得する予定の数日後。

日光に彩葉、愛琉、ルナの3人でツーリングする予定になっている。

とりあえずシフトは決まったのでシフト表を剛に渡すと、出勤日と休日を確認した。


「よし!とりあえず決まりだな!早速明日からよろしくな!彩葉ちゃん!」


剛が握手の手を差し伸べると彩葉は「よろしくお願いします」と握手を交わした。

京香がコーヒーを飲みながら2人の姿を見ながら「彩葉ちゃんがバイク屋かぁ…」と想像しながらボソッと呟いた。


とりあえずバイト先は決まった、明日から早速頑張ろう!

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