第28話 みんな大好きあと少しで夏休み!

季節は雨が多い梅雨が明けて、夏本番の7月中旬。

彩葉と愛琉は学校の昼休みに夏休みの計画を立てていた。

クラスメイト達も夏休みのことで頭がいっぱいで勉強なんてそっちのけの様子、まぁ高校生なんてこんなものだろう。


「みんな夏休みのことで盛り上がってるねぇ、夏休みはどうする?バイクでどこか行く?」


愛琉が聞いてくるので、彩葉は「ツーリングもいいけど、そろそろバイトもしたい」とスマホを操作しながら良さげなバイトを探している。


「お二人さん、相変わらず仲良いねぇ」


彩葉と愛琉が顔を上げると、隣のクラスの東山ルナがやってきた。

実はルナは紫岡の生徒に怪我を負わされて、入院をしていたが無事退院してその後は不良の道から足を洗い普通の女子高生として生活している。

派手なロングの金髪だった髪は、ブリーチの影響で傷んでいたのでボブヘアまでカットして暗めのブラウンに染め直して控えめな印象に変わった。

言葉使いもヤンキー女が使うような男言葉でもかなり汚い感じだったが、今では直して今時の女子高生らしい感じになった。


「急に誰が来たかと思ったよ、やっぱ未だに違和感あるんだよねぇルナのその姿さぁ、まぁかわいいんだけど」


彩葉がどこか嫉妬したような感じで言うと「あれあれ〜彩葉さん嫉妬しちゃってるのぉ?」と愛琉が茶化す。

ルナは身長160cmの高すぎず低すぎずの感じで体型は細身だが痩せすぎという感じではない。

顔立ちも可愛らしい感じで、彩葉が少し嫉妬してしまうのもわからなくもない。


「私は彩葉の方が小柄で肌が白くて童顔で可愛らしいと思うけどなー」


ルナはルナで彩葉が羨ましいと思っていて、結局人間は無い物ねだりというやつだ。

愛琉が「ルナは夏休みはどうするの?」と机に突っ伏しながら聞いている。


「私はバイクの免許を合宿で取ってこようと思ってるよ」


愛琉は「まじっ!?」と言いながら身体を起こした。

この発言には彩葉も驚いたみたいで、弄っていたスマホ思わず置いてしまった。


「ルナが免許を取るなら、3人でツーリングするのもいいね」


彩葉がそう言うと愛琉もそれに賛成する、とりあえずルナが免許を取得したら改めてツーリングの計画を立てよう。

ただ免許を取った後のバイクは、どうするんだろうか?


「免許取得後のバイクはどうするの?」


愛琉が聞くと「家に父さんが乗らなくなったゼファーがあるよ」と言うと、愛琉は増々ツーリングが楽しみになってきたのか目をキラキラさせている。

夏休みのことで話してると昼休みの終わりを告げるチャイムがなった。


愛琉達は残り2時限の授業の準備をして、担当教師がくるのを待つ。


「あーめんどくさいなぁ…早く授業終わってくれないかなぁ」


愛琉が突っ伏しながら授業が終わるのを待っている、少しはノートを取りなさいと思った彩葉は消しゴムを少しむしって愛琉の頭に投げると愛琉は身体を起こして渋々ノートを取り始めた。


2時限の授業とホームルームが終わって、下校になると愛琉は「終わったぁぁ!」と身体を伸ばした。

これからホームセンターで買い物する予定があるので、彩葉と愛琉は今日は学校で別れる。


「とりあえず県庁のとこのホムセン行くか」


彩葉はひとり言を呟くとFXのエンジンを始動して、ホームセンターのある県庁方面に向かう。

15分程走るとホームセンターに着いた彩葉は、駐輪スペースにFXを停めると隣に停まってる激渋のSUZUKIのGT380に釘付けになった。

「サンパチ渋いなぁ…」兄の蓮が高校時代にGT550に乗っていたのでそれを思い出した。

GT380を眺めていると、こちらに向かって大量の買い物袋を持った体格が良い女性が、1人の老人の女性と歩いてくる。

いかにも元ヤンな感じの体格の良い女性は、彩葉に話しかけてきた。


「嬢ちゃんわりぃな、ちょっと退いてくれねぇか?このばあちゃんの荷物を原チャのシート内に入れてぇんだわ」


身長170cm超えで男性顔負けの体格の良さでまるでドガ●ンのキャッチャーのような女性は、隣にいる老人の女性の原付バイクのシートの収納スペースに買い物袋を入れると「じゃあ、おばちゃん気ぃつけて帰んなよ」と言うと、老人の女性はお礼を言って原付バイクで帰って行った。


「あのおばちゃんはよぉ、いつもこの辺に買い物に来るうちの近所の人なんだが、最近歳のせいで身体がもう強くねぇんだわ、ガキの頃世話んなった恩もあっからこうやって手助けしてやってんのよ」


体格の良い女性は、そう言いながら帰っていく老人の女性を見ているとホームセンター内の駐車場から急に発進して出てきた車と老人の女性が運転する原付バイクが危うく接触しそうになり、老人の女性は転倒してしまった。

急に発進してきた黒塗りのセダンに乗る、痩せたチャラい金髪の男が老人の女性に因縁をつけていた。


「おい!ババア!どこに目をつけてやがんだぁ!轢き殺されてぇのか!!」


黒塗りのセダンからは、もう一人小太りのオラついた男が出てきて笑ってみている。

体格の良い女性が「あの馬鹿野郎共何をす…」と言いかけた時に、彩葉は全力で老人の女性の元へ駆け寄る。


「アンタ達!やめなさい!さっき急に発進してたのそっちでしょう?このおばあさんは悪くないよ!」


彩葉が強めの口調で言うと「あぁ!?うるせぇよ!クソガキ!殴られてーのか!?」と声を荒げて痩せたチャラい金髪の男が彩葉に近づいてきた。


「おい!テメーら!アタイの近所のおばちゃんに因縁つけやがって、ぶっ飛ばされる覚悟出来てんだろうなぁ??」


体格の良い女性が男達にとてつもない剣幕で歩み寄ると、小太りの男が「なんだとこのアマァ!!」と殴りかかってきたが、体格の良い女性は男の拳を左手で鷲掴みすると男のみぞおちに強烈なパンチを食らわして一発KO。

小太りの男はその場に蹲り、胃にダメージを受けたのか嘔吐した。

痩せた男は「ひ、ひぃぃ…」と震えながら苦し紛れに近くにいた彩葉を人質に取るような真似をして、ジャックナイフを取り出して彩葉を取り押さえると首元にナイフを近づけてドラマでよく見るようなことを始めた。

体格の良い女性は、やばい!という少し焦りの表情を浮かべる。


「う、動くな!このガキの可愛い顔をホラーにされたくなかったらな!!」


うわぁ…なんだこの男…今時ドラマでもこんなシーン撮影しないんじゃないか?と彩葉は思いながら呆れた顔をしながら体格の良い女性に「私は大丈夫です」と余裕の表情を見せると、男の脛を足の裏で思いきり蹴ると男は脛を抑えて痛がりながら彩葉を離した。

「くっ…このガキ!」とナイフを構えた瞬間に彩葉の速い左の蹴りが右手に炸裂してナイフを蹴り飛ばす。

蹴られた右手を抑えながらしゃがみこんだ男を彩葉は「飛べ!」と言うと男の顔面を蹴り上げて男達が乗っていた黒塗りのセダンのボンネットの上に蹴り飛ばした。

ドシャン!と鈍い音が響き渡ると、駐車場周辺で彩葉が人質?みたいな感じの状況から見ていたホームセンターの客達による拍手喝采が起こる。

警備員が警察を呼んでいたのかサイレンの音が近づいてきてパトカーから警官がおりてきて事情聴取されることになったが、幸いにも老人の女性が因縁をつけられて助けに入った彩葉達を目撃していた人や警備員もいたことや、彩葉の場合は刃物を突きつけられ抵抗したことによる正当防衛になるので罪に問われることはなかった。

とは言え、女性が男性をKOするなんて例は極稀なのだが…

体格の良い女性の方も、老人の女性を助ける為の行為と言うことで大目に見てもらえた。

警察の事情聴取が終わると、男達は「すみませんでした…」と謝罪してボンネットが凹んだ黒塗りのセダンで帰っていった。

原付バイクの老人の女性も彩葉に「ありがとね、お嬢ちゃん」と言うとゆっくり走って帰った。

体格の良い女性は、彩葉の華麗な蹴り技を見て称賛する。


「いやぁ今日イチ驚いたわ!嬢ちゃんなかなか良い蹴りしてんなぁ!見事だったぜ!人はみかけによらねぇとはこのことだ!、そういや嬢ちゃん名前は?」


名前を聞かれた彩葉は、「彩葉…如月彩葉です」と言うと如月という苗字を聞いた時に女性が一瞬何かを思い出したような顔をした。

体格の良い女性は「彩葉チャンか、アタイは橘 友紀子だ!ヨロシクな」と自己紹介をした2人はバイクを停めてある駐輪スペースまで戻ってくる。


「彩葉チャンは、ここまでチャリで来たんか?」


友紀子が聞いてきたので、「バイクで来ました」とFXの方を指を差した。


「単車の免許持ってんのか!?しかもフェックス乗ってんのかよ!渋いなぁ…ますます気に入ったわ!」


友紀子はかなり彩葉を気に入った様子だった、彩葉の小柄で可愛らしい見た目からはバイクなんて想像もつかないだろう。

友紀子は時計を確認すると、「やべぇ!そろそろ帰らねーと」とGT380のエンジンを始動した。

集合チャンバーの音が凄すぎる…


「それじゃアタイはそろそろ行ってみるわ、またな!」


そう言うと凄まじい音を響かせながら友紀子は帰って行った。

今日もいろいろあったしホームセンターで必要なものを買ったらすぐ帰ろう思った彩葉は、早速店内に入ると必要なものを買って店内から出てくる。


彩葉はFXのエンジンを始動して少し暖機すると、帰路についた。



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