第27話 2人の初ツーリング&二郎ラーメン

ルナが入院している病院を後にした彩葉と愛琉は、2台で並走しながら県道52号線の石岡城里線を走っていた。

マップを見たら国道6号線がそれなりに混んでいたため、県道を走って渋滞を回避することにした。

2人でこうして走ってみて思ったことがある、意思疎通が取れない…

バイクでツーリング経験のある方は当然知ってると思うが、バイクで走ってる時は走行風で会話なんてできたものではない。

信号で停まった際に「コンビニ寄ろう」「休憩したい」などを決めておくしかないので、彩葉はバイクに乗りながら会話ができるインターカム(通称インカム)を導入したいと思った。

石岡市に入った彩葉と愛琉は、国道6号線に出ると左側に出てきた有名コンビニ店に入る。

愛琉は大慌ててでヘルメットとグローブを脱いでハンドルロックをすると「トイレーー!」と言いながら小走りで店内に入っていった。

やはりこうなるので、早めにインカムを導入した方がよさそうだ…

咄嗟にお店に寄りたい時に、意思疎通が取れないのはツラいものがある。


「あー漏らすかと思ったぁ…」


愛琉はスッキリした顔で店内から出てくると、トイレに行ってる間に彩葉が2本買っておいたアメリカ発祥のエナジードリンクの1つを愛琉に渡す。

「お、ありがと」とエナジードリンクを受け取るとぐびぐびと体内に流し込む愛琉。


「意思疎通が取れないのはなかなかキツイね、早急にインカムを導入しないとなぁ」


彩葉もエナジードリンクを飲みながら愛琉に言うと「Bluetoothマイクイヤホンでいけるかな?」と言い出した。

確かに予めLINE通話状態にして耳に装着してヘルメットを被れば理論上では可能ではあるが、走行風を受けながらでも正常に動作するのだろうか?

彩葉が早速スマホで調べてみたが、実際にBluetoothマイクイヤホンで試した人の記事があった。

結論から言うと、Bluetoothマイクイヤホンでは走行風などに妨害されて全然ダメらしい…まぁ当然だ…


「ケチらないでちゃんと買おう…」


彩葉がそう言うと愛琉も頷いている、そろそろ出発することにした2人は次の休憩ポイントのコンビニを予め決めて各々バイクのエンジンを始動した。

再び彩葉を先頭に走り出すと少し交通量が増えてきた6号線を東京方面に向かって走る。

しばらく対面通行が続く為、道路の流れはイマイチだが渋滞という程ではない。

千代田石岡ICを過ぎて順調に進む彩葉と愛琉、後ろを走ってるのが飽きたのか愛琉は加速して彩葉の前に出る。

バイクツーリングの楽しいところは、抜いたり抜き返したりポジションを自由に入れ替えることができることだろう。

土浦市に入り中貫工業団地の交差点の信号の先から2車線となるので流れもよくなるだろう。

2車線の右側をピーな速度で走る愛琉についていく彩葉、そんなスピード出して大丈夫か?と思った矢先速度取締機が現れて慌ててスピードを落とす愛琉を見て「馬鹿だなぁ」と苦笑いする彩葉。

調子に乗ってスピードを出して公道のカメラに撮影されてテンション下がった経験のある方もいるのではないでしょうか。

このまま愛琉が前を走ってたらそのうち撮影されかねないので彩葉が前に出ると、察したのか大人しく愛琉は後ろについた。

順調に進んだ2人はあっという間に休憩ポイントに決めていたコンビニについた。


「ここまで来たから、あと少しだね」


愛琉が体を伸ばしながら言うと「ここからはラーメン屋までノンストップで」と彩葉がマップを確認しながら店内に入った。

お互いにトイレ休憩を済ませると、ダラダラ休憩してると運転する気力が無くなるので10分程で再び走り出す。

牛久沼を過ぎて藤城、取手市街に入った2人は取手駅西入口交差点を守谷方面に右折する。

住宅街の通りを15分程走ると、目的地の二郎ラーメンの店に到着した。

自転車が停めてある近くにバイクを停めると、人の行列の中に並ぶ。


「混んでるなぁ…時間大丈夫かな」


現在12:45、お昼の部は14:00で終了なので2人は焦っていた。

ここまで来て食べられないというのはなかなかツラい…彩葉も愛琉も完全に空腹の限界がきている。

30分くらい待つとようやく食券を買えるところまできた、彩葉と愛琉はうずら卵、モヤシ増し増し、にんにくたっぷりと二郎らしいトッピングをして注文する。


「そんなにトッピングして大丈夫?ちゃんと食べられるよね?」


彩葉が心配して愛琉に言うと「大丈夫!余裕だよ!」自信満々だが、本当に大丈夫なのか…

むしろそっちこそ大丈夫?と彩葉に言いたそうな顔をしているが、愛琉は彩葉の大食いっぷりに度肝を抜かれることになる。

15分くらい待ってると店員さんがやってきた。


「へい!お待たせしやした!!」


店員さんが2人のラーメンを運んでくると、想像以上のてんこ盛りに愛琉が「お、おぉ…」と圧倒されている。

2人は両手を合わせて「いただきます!」と言うと、早速増し増しのモヤシを口に運んでいく。

この手のラーメンは食べるのを止めてはいけない、ひたすら口に運んでは食べるに限る。

食べ始めて5分経ったが、モヤシが多すぎてなかなか麺が減っていく感じがしない…

愛琉はモヤシをほぼ食べ終えると、今度は麺をすすっていく。

やばい…最初のモヤシがかなり効いてきてる…

10分経過して愛琉は麺をすするペースが少し落ちてきた、完食できるか心配になってた。

そういや彩葉の方はどうだろう?と思い隣を見て愛琉は信じられない光景を見ることになる。

なんと彩葉は既に麺を全て食べ終え、残ったうずら卵をデザートを食べるが如く「うずら卵って病みつきになるぅ〜」と幸せそうに食べている。

さらに脂ギトギトのスープまで飲んでいるではないか…

とても小柄な体格からは想像もつかない食いっぷりだ。


「ま、まじか…アンタ化け物なの?…一体その小さい体のどこに入っていくわけ…」


愛琉が食の化身を見るような感じで話しかけると、彩葉は「え?まだ食べ終わってないの?伸びちゃうよ?」とまだ食べれそうな感じだ。

愛琉は己にムチを打って、麺を再びすすり始めた。

腹が苦しいと言うよりこのギトギトの脂に食欲を削がれた感じになったが愛琉はなんとか完食することができた、彩葉はとっくに完食している。


「うっぷ…く、苦しい…」


愛琉は吐きそうな感じで言うと「だから大丈夫なの?って忠告したのに」と彩葉が隣で笑っている。

とりあえず外で待つお客さんもいる為、店内から出た2人はバイクの所へ戻ると愛琉はヨンフォアに寄りかかるように座り込んで言った。


「正直舐めてたわ…まさかこれほどなんて…これから水戸まで帰ると思うと地獄すぎるぅぅ」


彩葉は「自業自得だね」と軽く一蹴する。

とりあえず胃を休める為に、休憩することにする。

愛琉は「トイレ行きたい!」と言うのでラーメン屋の隣にあるスーパーに駆け込む。

やれやれ…大丈夫かな…

しばらくすると愛流が戻ってきた。


「ふぅ…少しは落ち着いたよ、しばらく二郎ラーメンはいいかな…美味しかったけどねぇ」


この様子だと愛琉は、しばらくラーメンは食べなそうだ…

とりあえずそろそろ帰ることにした2人はバイクのエンジンを始動した。

帰りのルートは、彩葉は八郷なのでつくばの市街地を抜けて帰るつもりだが愛琉は早く帰りたいのか谷和原ICから高速を使って水戸まで戻るらしい。


「それじゃここでお別れだね、お互いご安全に!」


彩葉がそう言うと愛琉は手を振りながら「バイバイ」と言って別々の方向に走り出した。

今日は楽しかった、1人でソロツーするのもいいけど友達とツーリングするのも楽しいね。


ちなみに愛琉は、彩葉と別れて国道294号線を走ってる最中にまた腹痛に襲われて谷和原IC手前のコンビニのトイレで格闘してたのはここだけの話。


皆さんもフードファイトする際はくれぐれも自分のキャパを理解した上で臨みましょう。






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