酒飲み魔法少女は夢を見る
桜花
1章 決別の井戸
1-1.新入り魔法少女は夢を見る
「緊急事態発生、緊急事態発生。
空腹が満たされ、ゆっくりと眠気に
住民たちは通帳等が入ったカバンを持って速やかに避難所に向かっているが、その顔からは緊張感は感じられても焦りの表情を浮かべている者は誰一人としていなかった。
「ねぇ、お母さん。このお菓子食べていい?」
「いいから早く逃げなさい! お菓子は避難所に着いて食べればいいから!」
母親に連れられながら避難をしている6歳ぐらいの少年は、食べかけのポテトチップスの袋を両手にしっかりと持ち、人々の波に身を任せながらてくてくと歩いていく。
彼にも場の緊張感は伝わってきているのだが、彼にとって
「うぇ、なにあれ。腕がタコみたいに動いててすごく気持ち悪いんですけど。あたしたちあんなのと戦わないといけないの……」
「落ち着きなさい、ダリア。これは私たち『フラワーズ』にとって大事な1戦。一瞬たりとも気を抜くことは許されない。……あと、あの
「ローズさん、気にするところはそこじゃないです! 早くしないとこの街がめちゃくちゃにされてしまうかもしれないんですよ。しっかりしてください!」
マリーは
既に住民の避難は終わらせているはずなので住民への被害はないだろうが、それでも自分たちが住んでいる街が破壊されている様子を見ているのは気分がいいものではない。
連合から報告を受けている
しかし、彼女たちが魔法少女として
「うっし、気合入ってきたー。マリー、ローズ。準備はいいよね」
「当たり前。むしろあなたを待っていたんですが、早くしてくれない。
「おっ、言ってくれるねぇ。ローズこそ、あたしに後れを取らないようにしてよ。わざわざ待ってあげたりとかはしてあげないんだから」
ダリアはローズに向かって挑発するような笑みを浮かべ、
『フラワーズ』にとって、格上であるCランクの
連合から与えられた任務は
しかし、彼女たちはこの命令が下された時から
「ローズ!!」
「いちいち言わなくていい。あなたこそ、攻撃の手を緩めないで。じゃないとやられる」
ダリアは身をひるがえして相手の攻撃を躱し、ローズは魔力を流した剣で相手の攻撃を受け流す。
敵の攻撃が弱まったら攻撃に転じるつもりでいるのだが、2人だけの力だけでは
「…………!! 準備できました、2人とも避けてください」
はっきりと言うならば、ダリアとローズの力だけではこの
しかし、マリーの魔法であればこの
「
マリーが魔法を放つと同時、2人は視線を交わして大きく跳躍する。
拳や刀に魔力を流しながら戦う近接戦闘タイプの2人に対し、マリーは杖の先端に魔力を溜めて放出する遠隔戦闘タイプの魔法を得意としている。
魔力を溜めるのに時間が必要になるのがこの魔法の難点だが、魔力を溜めれば溜めるほどこの魔法は威力を増す。
その準備ができるまでは命を危険にさらしてでもマリーの邪魔をさせない。
それが前線に立って戦う、ダリアとローズの覚悟だった。
「やっ、た……? ……やりましたよ、ダリアさん! ローズさん!」
マリーが限界まで魔力を溜めた魔法は
先ほどまで猛攻を振るっていた
「マリー、後ろ!!」
自身が放った
マリーの
予期せぬ方向から攻撃を受けたマリーはそのまま壁へと叩きつけられ、思わずうめき声をあげた。
「だ、大丈夫です。私はまだ、やれますから……」
駆け寄ってきてくれたダリア達を心配させないようにとマリーは見栄を張ろうとするが、足がおぼつかずにその場でへたれこんでしまう。
壁にぶつかる寸前に自身の身体を魔力で包み込んだのでなんとか致命傷を避けることはできたが、全身から感じる痛みで意識を保つのがやっと。傷の回復をしようと試みるが、思うように魔力の制御ができない。
とてもではないが、もう
ダリアとローズは先ほどの戦闘で全身あざだらけ。マリーは意識を保つのもやっと。ほぼ壊滅状態にまで追いやられた『フラワーズ』だったが、当初の目的である魔法少女が来るまでの時間稼ぎには十分すぎるすぎるほどの役割を果たしていた。
「ダメじゃない、目の前の相手に全力を出しちゃ。少しでも相手が強いと思ったら迷わず逃げること。これ、魔法少女として長生きするための鉄則だから」
「……た、隊長!!」
今にも『フラワーズ』に飛びかかろうとしていた
魔法科学連合5番隊隊長、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます