不幸の始まり ※公爵視点

くそっ!メアリーのやつ、一体何様のつもりなんだ!?仮にも夫婦だった相手にここまでするなんて……。


メアリーに呼び出された時は、面倒な社交界の愚痴か何かの話だと思っていたのに、まさか不倫がバレて離婚にまで発展するなんてな。周囲に何て説明すれば良いんだ?不倫で離婚だなんて……誰かに知られたら恥じゃないか!


俺だって反省して、これからは上手くやっていこうと言ってやったのに、彼女はそれを拒絶した。話し合いにも応じないなんて、非常な女だ。

確かに俺も少しは悪かったが、文句があるなら最初の不倫の時に言えば良かったじゃないか。こんな請求書まで用意して、金貨6000枚も強請るなんて強欲な女だな!


ブティックで言い負かされた時は俺が悪い気もしていたが、段々と腹が立ってきた。

こんな請求、不当だ!無効にしてやる!


「おい、帰ったぞ。誰か酒を持ってきてくれ!強いやつだ!」


家に戻り、メアリーから渡された請求書を机に投げ捨てて叫んだが、返事をする者は一人もいなかった。


「おい……誰かいないのか?……本当に使用人達がいない」


慌てて家中確認したが、誰もいなかった。それにメアリーや使用人達の部屋が空っぽになっている。さっき言ってたことは本当だったのか?


おいおい、冗談だろう?俺はこれからどうやって生活すればいいんだ?


……よし、一旦落ち着こう。とりあえずハロルドに連絡して手を貸してもらおう。あいつは仕事が出来る優秀な部下だし、口も堅いから大丈夫だろう。





「残念ながら私にお手伝いできることは何もありませんよ。もうあなたの部下ではありませんので」


俺が恥をしのんでハロルドに相談に来たというのに、ハロルドは素っ気なかった。


「どういうことだ?お前は俺の領地に住む男爵だろう?俺の部下でなくなるなんて……ふざけているのか?」


俺が困っているのに冗談を言うなんて、見損なったぞ。


「メアリー様から何も聞いていないのですか?ラングトリー公爵家の保有していた領地は、全てメアリー様に譲渡されたのですよ。それに伴い、私もあなたの部下ではなくなった訳です」


は?俺の領地がメアリーの所有になっただと?何を言っているんだ?


「そ、そんなこと……あるもんか!」


「今日メアリー様とお話をなさったのでしょう?でしたら領地権利書の控えをもらっているはずですよ。お渡しすると言っていましたから」


「馬鹿な!俺は領地を譲渡した覚えがないのに……」


「元々、領地の所有者は貴方のお父様、つまり先代の公爵のままだったのですよ。爵位を贈与された時、確認しなかったのですね。貴方のお父様からメアリー様に譲渡されたのでしょう」


父上がメアリーに譲渡したのか?なぜ……?俺には一言の相談もなかった。


「お前、なぜそんなに詳しいんだ?」


「あぁ、この件に関してはメアリー様や、先代の公爵様からご相談を受けていましたから。公爵、貴方の素行の悪さには、困っている人がたくさんいたのですよ。私もその一人です。仕事を全て丸投げして遊び惚ける上司に従う者など、おりませんよ」


メアリーだけでなく、皆グルだったってのか?俺は嵌められたのか?!

俺は……こんなの、絶対に認めないぞ!

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