第40話 再び夢の中で
40-1
バルドが最初に合格をとった数日後私は再び白い空間にいた
「…ゼノビア?」
そう声をかけるとゼノビアが姿を現した
しかもなぜかレイの姿まで見える
「サラサ、ここって?」
レイが困惑しながら私の側に来て肩を抱く
「神界、つまり神の世界みたい」
「神界?何で俺が?」
「それは…ゼノビアにしかわからないと思う」
そう言いながらゼノビアを見る
「礼を言いたかったんだ」
ゼノビアは苦笑しながらそう言った
「礼?」
「彼の心を救ってくれたこと、感謝する」
「…やっぱりバルドのことであってたのね?」
「そうだ。彼が救ってほしかった魂だ」
「その礼ならサラサだけで充分だろ?なんで俺まで?」
「そなたにも礼が言いたかった」
「何の?」
レイは首を傾げながら尋ねる
「彼のような悲しい運命を持った魂は2つ目だったと言えば伝わるだろうか?」
「…」
私とレイは顔を見合わせた
「まさか…」
「私も…?」
「そうだ。彼とは少し違うが」
ゼノビアはあっさり肯定した
「どう違うと?」
「彼は悲しみを背負う輪廻の中にいた。あなたの中には苦しみを選択する呪いを受けた魂があった」
「苦しみを選択する呪い…?」
「数万年前のもう滅んでしまった世界で受けた魂への呪いだ。簡単に言えば2つの選択肢があった場合、より不幸な方を選択するもの。孤独の中を歩む人生を押し付けられた魂だ」
「なぜそんな呪いが?」
「戦乱の世ではよくあることだが一方が喜べば他方は悲しむ。それが戦乱の理だ。ある時代の王が敗戦国の魔術師にかけられた呪いだった。本来であれば血脈に受け継がれるはずの呪いが魂を縛った」
「そんなことがありえるのか?」
「通常はありえないことだ。だがそこには滅ぼされた世界を管理していた神が関与していた」
「…その王は世界を亡ぼした者の魂を受け継いでいた、ということ?」
現実味がないにもかかわらず恐れだけが膨らむ
「苦しみの中自ら命を絶つことを選べない。死を迎えるまで孤独と苦しみに追い詰められる人生を送ってきた」
「だから私は死なずに育った?生まれる前も生まれてからも、母がどれだけ殺そうとしても死ななかったのはそのせい?死んでしまえばそれ以上苦しみも悲しみも無いから…?」
あの中でよく生き延びていたと驚かれる環境だったのだ
あの時に死んでいれば私はその先のあらゆることを知らずに済んだのかもしれない
やりきれない何かが自分を包み込んでいる気がして背筋がゾクリとするのがわかった
「サラサ…」
レイが肩を抱く手に力を加えるのが分かる
大丈夫だと
今はレイがいるから大丈夫だとなんとか自分に言い聞かせた
「あの日、あの事故であなたが命を落としたことでその魂が輪廻から弾き飛ばされた」
「どういうこと?」
「もともと魔術師が呪いの解呪方法として組み込んだのは他者の為にその身をささげることだった。その時点で次の生から普通に暮らせるはずだった」
ゼノビアはそこで言った言葉を切った
「これは予想でしかないが…神が関与したことでその魂が解呪されたことに反発が起きた」
「つまり…神がそれを許さなかったと?」
「おそらくそれほどの憎しみが込められていたのだろう」
世界が滅ぼされたのならどれだけの命が失われたのか…
その恨みや憎しみが大きいのは仕方がないのかもしれない
「その神はもう消滅している。ゆえに我らは話し合った。あなたの魂を見極めようと」
「見極める?」
「あえて創造のスキルを持たせ、その世界でどのように過ごすのか、どのような影響を与えるのか」
「もしかして…前に話していた核兵器云々で世界を亡ぼしたというのは…」
「過去にあなたの魂を持っていた者がした所業だ」
「私に話したのは試す為だった?それだけの可能性のあるスキルと知った上でどうするのか…」
その問いにゼノビアは頷いた
「もちろんあらゆる神が何があっても影響がないよう準備をしていた。幸い全て無駄になったが」
「…レイ達に、ミュラーリアの人達に影響がないならよかった」
「あなたらしい言葉だ」
「え?」
「試されたと怒ることも出来るだろうに」
ゼノビアはそう言って複雑そうな笑みを見せた
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